その日は半分授業にならなかった。
特に午後など、バレンタインのことでみんな頭がいっぱいである。
イベントに参加しないものも、それぞれ意中の相手を考えていた。
ホームルームも先生は簡単に済ませると教室を出た。
それからはプレゼント交換をする者、イベント会場に動くものとさまざまだ。
恭也も聖と一緒にイベントの本部になっている薔薇の館へ行こうと思ったのだが、聖は既にいなかった。
先に行ったのだろう、そう思って恭也は赤星や藤代と共に薔薇の館へ向かった。
館には、聖と蓉子を除くメンバーと三奈子、その妹の真美がいた。
蓉子は今日が受験日らしく、もうそろそろ帰ってくるとの事だった。
「ごきげんよう皆様、カードはもう隠されましたか?」
三奈子の言葉に3人は頷いた。
「お疲れ様です。それではさっそくですが人も集まっているようですし・・・・・・」
そう言って恭也たちを外の特設会場に促した。
恭也たちが特設会場となったお立ち台にある椅子に座ろうと台に昇ると
「きゃーーーーーーー!!」
と、割れんばかりの歓声が響いた。
3人が椅子に腰掛けると、マイクを持った三奈子が開会の挨拶をした。
『皆さま、ごきげんよう。本日はバレンタインイベント『絆を結ぶカード』にご参加いただきありがとうございます』
三奈子がマイクで話し始めると、会場は水を打ったように静まり返った。
『では、ルール説明をいたします。リリアンかわら版に書いてあるとおり、普段出入りできるところが捜索範囲になります』
そして、色々な補足説明を加えて・・・・・・
『以上ですが、質問のある方がいらっしゃいましたらどうぞ』
中から手がひとつ挙がった。
『もしカードを2枚見つけるようなことがありましたらどうなりますか?』
『カードは1枚限り有効とさせていただきます。欲しいカードだけを手にして持ってくるよう願います』
『カードを誰も発見出来なかった場合はどうなりますか?』
『このイベントにおいて、その方のスールは発生しないことになります』
そして、赤星はふと疑問に思ったことを口にした。
『えっと、すみません。参加条件は全員と言うことなのですが、俺が高町のカードを探して持ってきても・・・・・・?』
その質問に、会場がどよめいた。
「勇吾さまと恭也さまが・・・・・・!?」
「そ、そんな・・・・・・」
「でも・・・・・・それも綺麗ね・・・・・・」
『え、えっと・・・・・・仮に勇吾さまが恭也さまのカードを見つけた場合・・・・・・そうですね、仮に恭也さまのカードが見つからなかったり、恭也さまも勇吾さまのカードを見つけた場合に限りOKとします』
その言葉に、想像をして立ちくらみをする者が出た。
恭也と赤星の絡むシーン・・・・・・なるほど、確かに悪くない。
魂の義兄弟・・・・・・ひとつに重なるシルエット・・・・・・
女性にはいいかも知れないが、恭也は想像をして一瞬吐き気を催した。
「あ、赤星・・・・・・頼む、絶対俺のカードは見つけないでくれ」
「・・・・・・大丈夫だ。これでお前のカードを見つけても絶対に無視することに決めた」
恭也と赤星は互いに苦笑いしていた。
藤代は・・・・・・というと、なにやらメモをしている。
あれは後ほど回収しておかないといけないような気がする・・・・・・
『他に質問が無ければ・・・・・・いよいよお待ちかね!ゲームを開始したいと思います』
真美が陸上競技用の、雷管ピストルを空に向けて構えた。
会場全ての瞳が真美に集中する。
それはほんの1秒か2秒の時間だったが、とても長い時間に感じられ
ピストルの轟音が鳴り響き・・・・・・ゲームが始まった。
少女達は、それぞれ思い思いに散っていく。
欲しいカードを目指して・・・・・・
Epilogue
<恭也編>
窓を開けて・・・・・・
半欠けのロザリオ
華はまだ咲かないけれど
しあわせの誓い
<赤星編>
姉と妹とあなた
ありのままで
隠していたもの
<藤代編>
不器用な優しさ
遂に最終話。
美姫 「この時が来てしまったわね」
うんうん。寂しいが、先を読みたいという欲求が…。
美姫 「という訳で、選択肢の次を読みにいくわよ〜」