全てがモノクロの世界。
 己以外の全てが遅くなった世界。
その中で、普段よりも僅かに遅くなった速度で疾走する。
 目の前には車と、その車に次の瞬間には、弾き飛ばれる運命にある女の子。
女の子の恐怖に引きつった顔が見えてしまう。
 必ず助ける。
 そう自身に言い聞かせながら走る。
 そして長くなった数秒の時間で、少女の間近まで迫った。
 だが、分かってしまう。
 もうこの世界を維持することができない。
 そう理解した瞬間、世界に色が付く。
それでも女の子の方へと飛び込む。
 しかし女の子を抱えていては間に合わない。
 ならばと、女の子を突き飛ばす。
 弾き飛ばされた女の子は、危険のないところで尻餅をついた。
 良かった。
 そう思いながらも、正面をみれば女の子に襲いかかるはずだった鉄の塊がこちらに迫って来ていた。
 自分はかわすことができない。
 一瞬の間で、そう諦めた。
 そして、何となく連れの姿を見れば、そこには金色の羽根が二つと白い翼が見えた。
 何度見ても綺麗だ、と場違いなことを思った瞬間、意識が途切れた。




 高町恭也改め不破恭吾の高町恭也(小)育成計画

 第一話 二人の恭也





「っ!」

恭也は意識を取り戻して、すぐさま身体を起こした。
 それから辺りを見渡す。

「臨海公園?」

 辺りを見渡してみれば、恭也がよく来る臨海公園だった。そこの芝生の上で眠りこけていたらしい。
 しかし、こんな所で眠った覚えは恭也にはない。
 そしてすぐに先程のことを思い出した。
 なのはと……なぜか途中で忍に知佳、フィリス、リスティ、他諸々の方々と出会い、着いてきたのだが……買い物をしていたとき、一人の少女が車にひかれそうになるのを目撃。
神速を使ってもかなり微妙な距離で、それでも恭也の身体は勝手に動き、彼女を助けるために疾走した。
少女を突き飛ばして救い出したものの、恭也は車を避けられそうになかった。
そこまで思い出すが、痛みなどはないし、腕や足が動かないということもなかった。
さらに先を思い出してみると、一緒についてきていた知佳たちが、翼を広げていたのを思い出す。
 つまり、

「知佳さんたちが助けてくれたのか」

おそらくは車が衝突する前に、三人が能力でここに送ってくれたのだろう。
 後でお礼をしなくはならないな、と思いつつも恭也は立ち上がった。
意識を失っていたようなので、あれからどのくらいの時間が経っているのかはわからない。まずは自宅に戻ってなのはを安心させてから、さざなみ寮に行き、知佳たちに会いに行こうと決め、恭也は歩き出した。
 しかし、しばらくして恭也は唐突に足を止める。
 どうにも歩きづらい。
 そう思って足に視線を向ける。
 歩きづらいはずだった。
 ズボンの裾が長くて、それが歩くのに邪魔になっている。靴も少し大きいように感じた。さらに上着の袖も長い。

「いや、待て」

 そもそも恭也は動きづらい格好などしない。今日とていつも通り黒だが、動きやすい格好であった。
 だが服や靴が全体的に大きくなっている。
 理由がわからず恭也は首を傾げるが、再び家に戻るために歩き始めた。
 だが、さらなる違和感を覚えた。どうもいつもよりも少し視界が低いような気がする。
それに気づきつつも、今度は立ち止まらない。
 どうなっているのか。
 そんなことを思っていると、自宅に着いた。
 着いたのだが、

「庭に誰かいる……が」

 知らない気配だ。
だが、何か違和感を覚える気配。
もしや強盗か何かかと思い、とりあえず持っている武器を確認する。
 飛針が数本と小刀が二本、鋼糸が太めのもの。
 これだけあれば何とかなるだろう。
 恭也は気配を殺して庭へと向かう。
 そしてそこにいたのは……。

「……どういうことだ」

思わず壁に手をつけて呟く。だが気配は殺したままでいられた。
庭にいたのは、一心不乱に剣を振る幼い少年。
汗だくで、手元を見れば血豆がつぶれたのか血が柄から滴っている。はっきり言って端から見れば身体を虐めてようにしか見えない。
その少年が誰なのか、恭也にはすぐにわかった。

「俺……?」

 そう、無茶を通り越し、無謀な鍛錬を重ねていた自分自身。
恭也は驚いた顔を張り付けたままだったが、すくに首を振り、庭から離れた。

「どう……なっている」

呟き、恭也はフラフラとした足取りで来た道を戻っていく。
 どこをどう歩いたかも覚えていないが、恭也は臨海公園にまで戻っていた。
 そしてベンチに座り込み、深々とため息を吐く。
先程のことを思い出すが、本当に訳がわからない。
 どうして自分がもう一人いるのか。それも幼い自分がである。
何となく……何となくではあるが、どういう状況に陥ってしまったのか、わかっているのだ。それでもどうなっているという言葉が出てしまう。
視線を横に向けると、誰かが捨てていったのか、ベンチの上に新聞が置かれていた。
 恭也はそれを自然な動作で取り、両手で広げた。
 記事に興味はない。すぐに恭也は今日の年月日を確認する。
 そして、

「父さんが亡くなって……少し経った年?」

 何となくわかっていたことだったが、それでも恭也は目を見開いてしまった。

「過去に戻った?」

 今まで散々不思議な事に巻き込まれ、そういったものに慣れてきてはいたが、これはさすがにどうしていいのか。
 というよりも、どうやって元の時代に戻ればいいのか。
やはり知佳たちに助けを求めるべきだろうか。
 とはいえ、この時代では面識などない。

「……いやしかし、この時代の俺はまだ膝を壊してはいなかったな」

 元の時代に戻れる保証はない。
それに戻る手段も検討がつかない。この時代では、恭也が頼れる者もほぼいないと言っていい。
だからと言って、悲観的になりすぎていてもしょうがない。そういうふうに考えられるのも、ある意味慣れのせいなのか。

「俺が俺に御神流を教えたらどうなるんだ?」

 父を失い、恭也はほぼ自己流で御神の技を覚えた。そのため使えない技も多かった。
 今の恭也は叔母との再会により、その失ったはずの技をほぼ体得している。
 しかしそれでも膝に爆弾を抱えているため、剣士として完成することはない。
 だが、この時代の自分は?
そして、今の恭也ならば御神の技の全てを教えられるし、相手は自分自身なのだから効率よく鍛えてやることができるのでは?
 
「ふむ、元の時代に戻る方法があるのかわからんし、知り合いもまったくいないのも同然だしな」

 そう呟いて恭也は笑った。

「少しぐらいハメをはずしてみるか」

 恭也はタイムパラドックスとか、そういう難しいことを考えることもなく、すでに過去の自分をどうやって鍛えるかに集中していた。
そして暫くするともう一度立ち上がる。
今一度高町家へと向かおうとするが、先程壁につけた時のせいか、少し手が汚れていたことに気付く。
 一度トイレに入り水道で洗うと、持っていたハンカチで手を拭く。
 そのまま視線を鏡へと持っていき……固まった。

「……若返っている」

鏡に映る恭也は、先程までよりも、多少幼さを残していた。別段、先程まで老けていた訳ではないから、幼くなったと言った方がいいかもしれない。
服が大きかったのはこのせいだった。いや、服が大きくなった訳ではなく、逆に恭也が縮んだのだ。視界が低いのも身長が低くなったせいだ。
知佳たちの能力のせいなのかはよくわからないが、間違いなく若返っているようだ。
見た目的には十四、五か。

「まあいいか」

自分が小さくなったことをそれだけで済ませてしまえるのもどうだろう。やはり慣れの問題か。
とにかく恭也はもう一度幼い自分に会うために歩き出した。




高町家に戻り、恭也は家全体を眺めた。
 先程は気付かなかったが、やはり恭也が最後に見た時よりも、その家は幾分か新しく見えた。まあ、そんな気がするというだけであって、本当にそうなのかはわからないが。
そして、恭也はなぜか先ほどのように気配を消して、家の庭へと向かった。
そこにはやはりまだ一心不乱に剣を振る幼い恭也の姿があった。
 その昔の己を見て、恭也は深々とため息を吐く。
 あんなやり方では確かに身体を壊しても仕方がない。端から見ることによって、自分の無謀さがよくわかる。
恭也は気配を消したまま、幼い自らの後ろへと周り、振り下ろされた柄を握っている幼い恭也の手を止めた。
そしてそのまま柄を取って、小太刀……八景を二刀とも取り上げる。

「そこまでしておけ」
「なっ!?」

突然現れ、背後に回られた上に武器を取られたため、幼い恭也は驚きで目を見開きながらも、すぐさま恭也から距離を取った。
そして服の中に仕込んでいたであろう飛針を恭也に向かって投げつける。
 だが恭也は奪った八景で、それを簡単に弾いた。

「待て、この家の者たちに危害を加えるつもりはない。
 俺はお前の無謀を止めたかっただけだ」

証拠に、と呟いて奪った八景をすぐさま幼い恭也に返した。
それを受け取りながらも、幼い恭也は警戒心をまったく緩めない。それは当然であって、恭也も何か言うつもりはない。
幼い恭也は返された八景を構えながらも口を開く。

「無謀、とはどういう意味ですか?」
「自分でわかっていないのか?」

そう聞き返しながらも、そういえばわかっていなかったかもしれないな、と心の中で恭也は苦笑した。

「そんな鍛錬を続けていれば、そう遠くないうちに壊れるぞ」
「そんなことはない」
「ある」

 それは断言できるのだ。
その未来の姿こそが、今の己なのだから。

「とう……士郎さんが亡くなったことで、強くならなきゃいけないと思い込んでしまうのは仕方がないかもしれん。だが、そのやり方は間違っている」

士郎の名前が出たからか、幼い恭也が目を細めた。

「あなたは誰ですか?」

 士郎を知っているということで、ようやくその質問が出てきた。

「俺は……」

恭也は一度頷くが、しかし言葉を詰まらせてしまった。

(……全然考えてなかった)

ここに来るまで、幼い自分を鍛えることしか頭になかったので、どうやって高町家に入り込むかなんて考えていなかったりした。
しかしここで幼い自分から信用されなくては話にならない。

「俺は不破恭吾だ」

てっとり早く名前は親友の一文字をもらうことにした。

「不破!?」
 
聞き覚えのありすぎる名字に、幼き恭也が驚愕の表情をみせた。
ここは一気に畳みかけようと、未来の恭也はすぐさま次の言葉を用意する。

「うむ、君の父親、不破士郎の弟、不破一臣の『隠し子』だ」

爆弾発言だった。
しかしもうなんていうか、今までの冗談や嘘のように、本当に自然に言っていることが恐ろしい。
 きっと一臣は草葉の陰で泣いて……睨んでいることだろう。

「つまりは君の従兄だ」
「い、従兄……か、一臣さんはいつあなたを」

まあ確かに、士郎と一臣の年齢差は結構あったはずである。なのに弟の方が先に子供を作るのは……

「一臣さ……父さんは早熟だったんだ。十代だった、とだけ言っておこう」

もう草葉の陰から睨むどころか、殺気すら叩き込んできそうな答えだった。 

「ま、まあそのことはいい」

一臣の殺気でも感じたのか、未来の恭也……恭吾は冷や汗を流しながら話をそらす。

「つまり俺も君と同じ御神の人間だということだ」
「俺たち以外に御神の生き残りが……」
「士郎さんは俺のことを知っていた」

 完全に信用されてはいないだろうが、士郎のことを聞かれれば、なんでも答えられる。だからできるだけ士郎に話しを繋げようとする。

「その士郎さんに自分に何かあったら家族を頼むと言われていた。それと息子に御神流を教えてやってくれとも」
「父さんが……」
「ああ。俺も色々あって来るのが遅くなったがな。
 もう一度、その小太刀を貸してくれないか? できれば鞘ごと」

恭也も背後に回られた事から、恭吾が自身よりも上であることはわかっている。ならばそう簡単に武器は手放せない。
しかし殺すつもりか、危害を加えるつもりだったなら、恭也の意識はすでになかっただろう。それに一度返した武器をわざわざまた奪っても仕方がないだろう。
 少し信用したのか、恭也はゆっくりと八景を恭吾に渡した。

「すまない」

 恭吾はそれを受け取って鞘ごと腰に差す。
腰に下げられた八景の重みが、なぜか恭吾には懐かしく思えた。朝の鍛錬を行っていた時に持っていたはずなのに。

「俺が御神の者だという証拠になるかはわからんが……」

 そう言って、恭也は高速で抜刀。
抜刀の速度を乗せ、そこから腰の回転と突進を加えての四連撃。
今の恭也の目では完全には追いきれないであろう剣閃。
 それでも恭也の目に、四つの剣は捉えられた。
 それは四つの剣。恭也の目には四つの斬撃が同時に見えたのだ。

「薙……旋……」

 その技を見て、恭也は呆然と呟いた。
恭也の父がもっとも得意としていた奥義。
そして、恭也の未来で一番の得意技となり、彼を支えていくはずの奥義だ。
つまりは恭吾が放った薙旋は、恭也の薙旋の完成系とも言える。
 いや、今から恭吾が鍛えていけば、それすら越えていくかもしれない。

「まだ足りないというのなら虎切でも使うか? 射抜でも虎乱でも、他のものでもかまわんぞ」
「奥義を全て、使えるんですか?」
「一応はな。もっとも俺が得意とするのは抜刀系だ。それに流石に閃や正統奥義は使えない」

 閃に関しては、一度だけ撃ったことがあるが、それ以後使えたことはない。

「俺とそれほど年が離れているようには見えないのに……」

恭也の口から呟かれた言葉を聞き、精神年齢は倍近くだかな、と心の中で呟き、苦笑する恭吾。

「それでも四、五年の年は違う。剣の道において、一年という時間すら長すぎる」

本当はもっと差があるのだが、今の自分の姿を考えて恭吾はそう言った。
だが、恭也の顔を見る限り、恭吾が御神の人間であることは信じたようだ。
そして恭吾は恭也に向かって、八景の切っ先を向けた。

「恭也」

 そう呼びかけるが、自分自身を呼び、さらにやはり自分の名を自らで紡ぐのは違和感があった。
だがそれをおくびにも出さず、恭吾は続けた。

「お前は何のために剣を握る? 剣を振る? 
 そして、何のために強くなりたいんだ?」
「俺は……」
 
恭吾に問いかけられ、恭也は一瞬口ごもる。
何のために……。

「誓いを守るために。そして美由希を強くするために、美由希に御神の剣を……」
「やめろ」

恭吾は恭也の言葉を途中で遮った。
本当は恭吾に何かを言う権利などない。
その間違いの先に、今の恭吾がいる。止まる時すらも間違えて、色んな人を悲しませて、そんな道をすでに歩いてしまった恭吾には、過去の恭也に何も言う権利はない。
 そんなことはわかっている。
 だけど、その間違えていた自分自身を見て、恭吾は己を罰するために、まだ未来が定まっていない幼い自分のために、あえて言葉にする。

「そんな理由で剣を振るというのなら、今すぐに剣を捨てろ」
「なっ!?」
「そんな理由で強くなろうとして、自分の限界さえも越えて鍛錬を積んで、本当に強くなれたとしても、いつかお前はそれを後悔し、その剣を呪い、憎むことになる。
それに、その限界を超えるはずの鍛錬を、お前は妹にすら強いるのか?」
「それは……」

まだ絶望を経験していない幼い自分は、自身が壊れると言われても止まるわけがない。
 だから、その在り方を思い出させてやる。
 何のために剣を握り、剣で何をしたかったのか。
恭吾がそれを取り戻した時は、きっと遅かった。でも、それでも完全に遅れてしまったわけではなくて、完全とは言えなくても、その想いを取り戻すことができた。

「お前の父は何のために死んだ? 何を誇りにしていた? 死したとしても、それでも何を残した? 
父の言葉を、御神の理念を忘れたのか? そして、お前が本当にしたかったことを忘れたのか?」

恭吾の言葉を聞いて、恭也は大きく目を見開く。
士郎は護って死んだ。
 フィアッセを、大切な人を。
 でも、そんな仕事を、そんな剣を、誰かを護ることができたことを誇りに思っていたはずだ。
自らが死んでも誰かを護りきった。
 その後に悲しみを刻ませてしまったが、それでも士郎は護りきった。でも本当は生きて帰りたかったはずだ。みんなを悲しませたくなんてなかったはずだ。
士郎はいつも言っていた。
 御神の剣は護る剣だと。
御神の剣は、大切な人たちを護るためにあると。
そして、本当に恭也がしたかったことは……。

「今のお前を見て、士郎さんは何て言うだろうな。今のお前を見て、悲しんでいる人はどれだけいるだろうな」

新たな娘だけを残して夫が逝き、それでも微笑んでいた恭也の母。
 だけどそんな母が、今の恭也を見て、必死な顔で止めてきていたはずだ。あの笑みを消して、泣きそうな顔で、もうやめてと。
美由希も自分のために無茶を重ねる恭也を見て、悲しそうな顔をしていた。
この頃はなのはのことを抱き上げてすらやっていない。
そんな今の恭也を見れば、士郎はきっと激怒するだろう。
恭也だってそんなことを望んでいたはずではなかった。

「俺が護りたかったのは……」

恭也は血豆が何度も潰れ、血みどろになった己の手を見つめた。
この手で護りたかった……。

「大切な人たちの笑顔を護りたかった」

たとえ綺麗なものではなくとも、血に塗れ、呪われた剣でも、頑張っている人たちや、周りの人たちの笑顔をきっと護ることはできるから。
 だから恭也は剣を握っていた。その意思を御神の人たちから、士郎から教えられた。
 最初はたぶん士郎への憧れから生まれた想いだった。だが士郎が死に、それは本当に受け継がなければならないものとなった。
 だが、それを忘れてしまっていた。
その言葉を聞いて、恭吾は八景を下ろした。
 そしてそれを鞘に戻し、恭也の手の上に置く。

「ならばその笑顔を護れ。お前自身が悲しませるな。
無茶をするなとは言わん。適度な無茶なら俺もよくやる。だが、お前の身体が壊れれば、そのときはお前が家族の笑顔を壊すことになるぞ」
「…………」
「強くなりたいというのなら、俺が持てるものをお前に全てを教えてやる。俺はそのためにここへと来た。それを使って、お前は家族を……大切な人たちを護れ。だが、急ぎすぎるな。
 お前が本当に完成した御神の剣士になるまでは……それまでは俺がお前の変わりに、お前の家族を護ろう。だからお前はゆっくりと強くなれ」

 そう言いながら、恭吾は心の中でよく言うものだと、自分自身を嘲笑う。
一度壊した自分。
 悲しませた自分。
護衛の仕事から帰れば傷だらけで、その度に悲しませている自分。
 今も元の時代の家族たちが心配しているかもしれないというのに。
戻れないことをいいことに、元の場所に戻る方法を考えもせずに、ここにいようとしている。
 幼い自分が……別の可能性の自分がどこまでいけるのかを見てみたいと思っている。
それは明らかなエゴだろう。
 だがそれでも、恭吾は見てみたいと思ってしまったのだ。

「俺は……強くなれますか?」
「なれる。絶対に俺よりもな」

それは確実な未来。
恭吾の限界など、この恭也は……止まることができて、間違えをすでに知った恭也なら越えられる。

「お願いします」

そう言って、恭也は恭吾に向かって頭を下げた。

「俺を強くしてください。今度こそ間違えないように、俺に御神の剣を教えてください」

その恭也を見て、恭吾は少しだけ笑う。

「ああ、わかった」

こうして恭吾は、恭也の……過去の己の師となった。







 さて、始まってしまったタイトルが長い作品ですが。もっと軽めの話にするはずが、いつのまにか恭吾が偉そうなことを言っている。
エリカ「連載増やすなんて」
あー、これ息抜き用ということでゆっくりと。
エリス「また滅茶苦茶な設定だけどね」
ごめんなさい。また注意っていうか、改変している場所があります。いや、すでに恭吾が改変してるんですけどね。設定として改変があります。
エリス「黒衣のなのはみたいに、なのはの歳が違うとか言わないでよ」
 いや、黒衣のなのはの場合は少しでも恭也との年齢差をなくしたいという自分のわがままなんだが、こればっかりは改変しないと話が成り立たない。
エリス「で、なに?」
 えっととらハ2の時代から見て、とらハ3は七年後らしいのだけど、それを六年後にしてます。つまり1から見て五年後……そして。
エリス「そして?」
 なのはがやっぱり早く生まれてます! つまり本編よりも早く桃子と士郎が出会い、士郎が早く亡くなってます! 正確には出しませんが。
エリス「ちょっと、やっぱりまたなのはなの!?」
 じゃないと話の展開的に年代が合わなくなるんだ! いくら調整してもダメだった! こうなると改変しか手がないんだ!
エリス「なんでそんなになるの!?」
恭也を留年させるためにはそれしかなかったんだ! というかこの作品は元より無茶がある!
エリス「他の話だってそうでしょうが!」
げばぼばっ! ご、ごめんなさい。本当に息抜きで、勢いのまま書いてるんで。粗や矛盾がありまくりだと思います。
エリス「やっぱりそれも他の話だってそう」
 うぐぅ。黒衣はどのくらいあるんだろう。とりあえずこの作品の場合は、わかってるだけで、恭吾の戸籍がねぇだろうが! とか、なんで知佳たちにテレポートさせられたら過去に行って、さらに若返るんだよ! とか、恭也が元の『世界』の家族たちを考えなさすぎだろが! とかがありそう。
エリス「自分で言うことじゃない」
どれもご都合主義になってしまうかもしれません。ちなみに恭吾は多少若返っていても、膝は治ってません。そのへんのことは次回でやるつもりですが。
エリス「すいません、また滅茶苦茶な設定になってしまいます」
一応恭吾介入とらハ3編まで考えてあるけど、そこまでいくのにどれぐらいかかることやら。しばらく修行編かな。次回は違うけど。武者修行編とかも考えてある。他に風芽丘入学編とか恭吾介入とらハ2編とか。年代別だから、いっそのことバラバラでやってみようかと思うのだが。
エリス「やめときなさい、あんたの腕じゃ順番に書いていかないと矛盾とかいっぱいでてきちゃうから」
……そうだね。とにかくこちらも黒衣の大河編同様ゆっくりやっていきます。
エリス「それでは今回はここまでで」
それではー。






まさか、本当に連載化して頂けるとは。
美姫 「いやー、瓢箪から駒ね」
うんうん。恭也はこれによってどう成長していくのか。
美姫 「非常に楽しみよね」
次回も首を長くして待ってます!



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