注)この話はHeroes of Heartに登場するオリキャラ……闇舞北斗のストーリーであり、本編開始前の外伝的内容となっております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――1971年3月11日――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの……闇舞先生!」

 

今年も無事に1人の留年生も出さずに卒業式を終えたその日の午後、私立如月学園高等学校の社会科担当教師、闇舞北斗は、突如として背後からかけられた声に思わず身構えた。

ポケットに忍ばせた小型ピストルに手をかけながら振り向く。

 

「……どうしました、夏目先生?」

 

警戒を解いて、北斗はポケットから手を出す。

やや頬を紅潮させながら俯きかげんに北斗を見るのは夏目光。

北斗と同じく社会科担当の教員で、まだ如月にきて1年しかたっていない新米教師だ。

一応、同じ科目でわりかし年齢も近いということもあり、北斗は彼女の教育係的な役割を担っていた。

もっとも、それも今日までだ。

去年の4月に如月にきた彼女は、この1年を通して逞しく成長してくれた。まだ若干の不安は残るものの、もう彼女は立派な教師としてやっていけるだろう。

一介の教育者として、同じ教科を担当する同僚として、それは喜ばしいことだった。

 

「えっと…闇舞先生は、これからお時間は?」

「ええ、大丈夫ですが」

「そうですか」

 

途端、なぜか嬉しそうな笑顔を浮かべる光を見て、北斗は怪訝な顔をする。

引き締まった精悍なマスクが、かすかに翳りを帯びた。

 

「じゃ、じゃあ…今夜、食事でもどうですか……?」

 

最後の方はかすれて聞こえなかった。

悪いとは思いながらも北斗は聞き返そうとして、180センチはゆうに超える長身をグラリと揺らした。

なにか絶対的に強力な力に引っ張られ、体勢を低くさせられる。

 

「……どうしたんですか、闇舞先生?」

「ひぅっ…ううっ……うっ……」

 

スーツを引っ張りながらすすり泣くのは闇舞留美。

北斗の4つ違いの妹で、同じく如月学園の数学科教師をしている。

彼女が泣いている理由は至極単純で明快だった。

今年初めて受持ちの、それも3年生のクラスを持った彼女は、今日の卒業式に不覚にも泣いてしまったのだ。

 

「卒業なんてこれから何度もあるんですよ? ほら、顔を上げて、涙を拭いてください」

「うっ…うっ……ハンカチ…ひぅっ……忘れました」

 

北斗は溜め息をついてポケットからハンカチを取り出して留美に手渡す。

 

「それで夏目先生。先刻はいったい何を言おうとしていたんです?」

「あ、い、いえ! なんでもありません」

 

慌てて両手を振り、光は答えた。

北斗は頭上に疑問符を浮かべながらも、それ以上の追求はしなかった。

 

「もう! 夏目先生ったら……そんなことじゃ、闇舞先生のハートはゲットできませんよ!!」

 

先刻までの涙はどこに枯れたのか、留美はもの凄い剣幕で怒鳴る。

 

「闇舞先生、俺のハートをゲットする……とは?」

「はぁ…分からないんですか、闇舞先生?」

 

真顔で首を傾げる北斗に、呆れた視線を向ける留美。

揃って同じように『闇舞先生』と呼んでいるためややこしいが、これは学校では互いに苗字で呼び合うよう、2人の間で取り決めた約束事だった。教鞭を振るう2人の教師が兄妹であることは、如月学園に通う生徒・教師であれば誰もが知っている。幅広く知られた関係だけに、2人とも公私の区別はしっかりするよう常日頃から心がけていた。

もっとも、かえってそれで迷惑し、混乱する人も少なくはなかったが。

 

「あの……闇舞先生?」

『どうしました?』

 

2人の闇舞の声が重なった。

 

「……もう、いいです」

 

溜め息をついて、光は項垂れた。

ふと、窓の外を見てやる。

新たな門出を祝うには相応しい、天高く太陽が昇る日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Heroes of Heart外伝

〜漆黒の破壊王〜

―――奪われた誇り―――

第二話「裏切りの刃」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――1971年3月12日――

 

 

 

 

 

「護衛……ですか?」

 

卒業式の翌日。

久々の休みを満喫しようとしていた俺は、突然の呼び出しに応じて、〈ショッカー〉日本支部のその場所に来ていた。

――仕事か? という疑念もほどほどに、俺の予想は見事に当たった。どうせならば競馬か何かで当てたいところだが、それ以上の利益の上がる仕事だ。断るわけにもいかない。

司令室に通され、今回の任務とやらの資料を受け取り、俺は眼を見開いた。

内容は護衛だったが、昨年の12月に英国議員を護衛した時よりも、遥かに規模の大きい仕事だったからだ。

約10トンものマンガン塊。それが、今回の護衛対象だった。

 

「……察しのいい貴方のことでしょうから分かると思いますが、近々ヨーロッパの方で〈ショッカー〉の大々的な作戦を展開する予定です。そのためには、どうしてもこのマンガンを輸送しなければならないんです」

 

資料を見ると、このマンガン塊には多量の銅とコバルトが含まれているようだった。

コバルトは、軍事的にはコバルト爆弾の原料となり、医療では癌などの放射線治療に広く使われている。またマンガンそのものも、1.4〜1.8%混入した鋼材は強靭な艦艇鋼材となり、12〜14%混入すると耐摩耗性の大きな鋼材が出来上がる。

 

「……文字通り、宝の山というわけですか」

 

ある意味で万能とも言えるマンガンが、10トンも一度に運ばれるのだ。

それは護衛とて必要だろう。問題は、その輸送ルートにあった。

 

「しかし、空輸するというのはいただけませんね」

 

米国が使用しているKC−135Rストラトタンカーを改造し、空中給油と輸送の両方を可能にした機体でマンガンをヨーロッパまで運ぶ……はっきり言って、無謀な計画としか言いようがない。

ストラトタンカーの航続距離を考えれば不可能なことではないだろうが、それはソビエトの領空に侵入し、一直線に飛んだ場合でのこと。当然領空を飛んでいる間はソ連軍のレーダーを避けるため低空飛行になるだろうし、ジャミングもかけるだろうが、それで世界最強のソビエト空軍を誤魔化せる保証はない。

なにより、空輸の護衛ということは、必然的に俺もまた戦闘機に乗らなくてはならない。自分の手足と違って戦闘機という乗り物は、時に融通が利かないことがままある。

正直なところ、あまり引き受けたい仕事ではなかった。

 

「……俺以外のメンバーは?」

「あなたの他に〈壱番〉、〈三番〉、〈十番〉、〈十二番〉の4名がつきます」

 

さすがに規模が規模なので、〈イレイザー〉を5人も1度の導入してきた。

ここまで期待されては、俺も嫌だとは言えなかった。

 

「“我らが偉大なる首領ショッカー”に伝えてくれ。この任務、引き受けました……ってな」

 

 

 

 

 

 

――1971年3月16日――

 

 

 

 

 

 

――そして北斗は今、空の彼方にいた。

見事なまでの快晴の青空に、KC−135Rの黒いボディが流れ、その背後を2機の戦闘機が追う。

ターボ・ジェットエンジンから炎を発しながら飛ぶ3機のうち、2機の護衛機は、どこの国のデータベースにも乗っていない、〈ショッカー〉が独自に開発した戦闘機だった。

――SF−09。

ターボ・ジェットを起用していながら、わずか6年前に開発されたばかりのハリアーのペガサス・エンジンを上回るVTOL性能を有し、それでいて可能な限りのステルス性を搭載した、マッハ3.2という驚異的超高速で運用が可能な、〈ショッカー〉の主力戦闘機である。後に米国が誇る世界に誇る、“世界初”のステルス技術を採用した作戦用航空機であるF−117Aナイトホークが完成したのはこの10年後のことで、その最大速力はマッハ1にも及ばない。マッハ以上の速度を出すと、ナイトホークのステルス性は著しく低下してしまうためだ。

とはいえ、いくらSF−09がステルス性能を有しているといっても、当然ながらそれには限界がある。また、SF−09はステルス機だが、空中給油機であり輸送機もある巨大なストラトタンカーは違う。図体の大きさに伴ってレーダー反射面積も大きい。

地上1000メートルの位置をキープしながら空を駆ける3機は、明らかにソ連空軍の地上レーダーを警戒していた。ペイロードに余裕のあるストラトタンカーにはレーダー波を妨害する特殊な装置も搭載され、あらかじめソ連軍に流した偽の情報との相乗効果が、どれほど発揮されるやら……。

SF−09は複座で、2人乗りの機体だった。

2機のSFにはそれぞれ〈弐番〉と〈十番〉、〈壱番〉と〈十二番〉が乗っていた。各々の翼に、27、28とペイントされていた。

〈参番〉は空中ハイジャックの危険性を考慮してKC−135Rのコックピットで戦闘に備えている。

KC−135Rには、〈参番〉の他に2人のパイロットが乗っていた。

 

「……大丈夫か?」

 

27号機の前部座席に座っている北斗――〈弐番〉の声が、後部座席でへばっている〈十番〉のレシーバーに伝わった。

 

「……離陸の時は、腸が飛び出るかと思った」

 

ぐったりとした状態の〈十番〉に、航空ヘルメットの下で〈弐番〉は苦笑する。

いかに頑強な改造人間の肉体といえども、離着陸の際に生じる圧力は尋常ではない。特に離陸の際にはエンジンの出力をマックス・パワーにするため、体にかかるGは普通に生活しているときの何倍にも増幅する。

現在はKC−135Rの速度に合わせているのでそれほどではないが、この分だとSF−09がマッハ3.2を出したら、どうなることやら。

 

「でも“兄貴”、よくこんなん操縦出来るよな」

 

去年の12月の事件以来、〈十番〉は〈壱番〉を父のように、〈弐番〉を兄のように慕っていた。

どうやら2人のあまりの強さに惚れ込んでしまったらしい。

別段迷惑をかけるでもないので、〈壱番〉も、〈弐番〉も放置している。

〈弐番〉に関しては悪い気がしない……というのもあるらしい。

 

「慣れれば意外にどうってこともない。それと、任務中だ。兄貴は止めろ」

 

後部座席は同時にレーダー手の席だった。

敵の接近を知らせる以上に、レーダーは文字通り戦闘機にとっては『眼』だ。

高速機同士の空中戦では、人間の頭脳による反射作用でミサイルのボタンを押していては間に合わない。

レーダーとコンピューターの指示に従って、攻撃に適した地点まで戦闘機を操縦していけばよいのである。あとは、レーダーとコンピューターが正確に狙いを定めて、自動的にミサイルを発射する仕組みになっている。

もし1秒でも目を離していれば、それだけ敵の接近に気が付かないし、攻撃が難しくなる。

もっとも、SF−09に乗り込む彼らは改造人間である。

五感や反射神経も常人の数倍に強化されているし、反応速度も早い。

そして、今、彼らがパイロットスーツの代わりに着ている“戦闘服”に搭載された超小型バッテリーは電流を放出することで筋力を強化すると同時に、神経細胞の伝達をスムーズにする機能を有している。

一般的に人間の反応から行動までにかかる時間は0.5秒かかると言われているが、彼ら〈イレイザー〉――特に〈壱番〉や〈弐番〉はそれを僅か0.05秒で行なうことも可能なのだ。

ミサイルの発射システムにしても、やろうと思えば肉眼で敵機を捉え、撃ち出すことも出来る。

 

『…了解。ところで、あとどれぐらいで着くんです?』

 

彼らの目的地は、ソビエト国境を越えて、ソビエトを中心としたワルシャワ条約機構と対立する、NATO加盟国のイタリアに設置した〈ショッカー〉の秘密空港だった。そこでマンガンを降ろして、陸路でヨーロッパ支部まで運ぶ。

それがこの計画の全容である。

イタリアの秘密空港までは東京から一直線に約14300キロ。

SF−09ならば約3時間半。KC−135Rに合わせての飛行ならば約14時間半の距離だ。

彼らはすでに、12時間以上フライトし続け、黒海の上空にいた。今のところ、ソ連機との接触はない。この分だと、発見されることなく領空を越えられそうだ。

 

「あと2時間と半時ほどだ。……フライト総計約12時間。明らかに、労働基準法違反だがな」

 

〈十番〉はまだ高校生である。高校生のバイトは法律上午後10時までと禁じられていた。

 

「〈ショッカー〉がバイトになるかどうかは危ういな……」

『なんです?』

「いや、気にするな」

 

言いつつ、〈弐番〉は操縦に集中した。

 

『間もなく、ソビエト上空を越えます』

 

KC−135Rより入る通信。〈参番〉の声だ。

頷くと、27号機、28号機は少しだけKC−135Rに接近した。

 

『イタリアに入ったら警戒を怠るな。NATO……米軍が動くぞ』

 

さすがの〈壱番〉も緊張していた。

米軍の脅威に対しては、この場にいる全員がよく知っていた。

実際に米国によって改変された歴史は少なくない。

圧倒的な軍事力を持つ米軍は、同じく圧倒的軍事力を持つ〈ショッカー〉をして、唯一脅威とも言える存在なのだ。

 

『イタリア政府に潜伏しているネオナチに働きかけて、イタリアは介入できないようにしてあります。あとはとうの米……!!』

 

〈参番〉の言葉が途切れ、ついにソビエト上空を通過した。

異変が起きたのはその時だった。2機のSF−09がKC−135Rを追い越し、上昇していった。

2機の戦闘機のコクピットのレーダー計は、1万5千メートル先に戦闘機サイズの航空機の影を等しく捉えていた。全神経を最大限まで解放して、28号機の〈壱番〉が叫ぶ。

 

『敵機接近! 敵機接近! 距離は14000、数は5。機体は……F−4Nファントムが2機と、AV−8Bハリアーが2機! 最後の1機は……くそっ。ウルトラホーク3号だ!!』

 

〈壱番〉の緊迫した叫びに、〈イレイザー〉全員が震撼した。

F−4NやAV−8Bは予想範疇内の兵器だったが、ウルトラホークの存在はまったく考えていなかったのだ。

――ウルトラホーク3号。

地球防衛軍(Terrestrial Defense Force Ultra Guard)通称、TDFの精鋭部隊……ウルトラ警備隊が誇る、最強のジェット機である。

20世紀最大の発明とも言われるレーザー兵器を搭載したウルトラホークは、数多の星人や怪獣と戦い、勝利を収めてきたという。

その伝説の名機が、〈弐番〉達のSF−09に牙を向いたのだ。

 

『こちらTDFウルトラ警備隊ウルトラホーク3号。貴君の所属と、機体名称を名乗れ!』

 

レシーバーから微妙な発音の英語が飛び込んできた。野太い、男の声だ。

それがウルトラ警備隊一の怪力の持ち主、フルハシ隊員であると気付いたのは、〈イレイザー〉でも〈壱番〉と〈弐番〉だけだった。

 

『フルハシ隊員、あれは米軍のKC−135Rストラトタンカーです。あれは米軍では?』

 

レシーバーの奥の方から、日本語で別の男が喋っている。

今度は〈壱番〉、〈弐番〉も誰だか分からない。

ウルトラ警備隊一の頭脳をもち、大気圏内外で運用可能なロケット兵器……ウルトラホーク2号開発プロジェクトの主要メンバー、アマギ隊員だった。

 

『馬鹿野郎! だったらあの2機はなんだ? 米軍があんな戦闘機を開発したっていう話は聞いてないし、あんな見るからに高性能の機体、TDFの技術支援なしで出来るわけがねぇっ!!』

 

当然である。開発したのは〈ショッカー〉なのだ。

〈弐番〉はチラリと28号機に視線を送った。

2機の間隔は200メートル以上離れていたが、〈壱番〉と〈弐番〉にはそれだけで充分だった。

2機のSF−09が、静かに、しかし確実に速度を上げ、編隊に接近していく。

F−4NとAV−8Bの4機からなるダイヤモンドフォーメーションの中心にウルトラホークを挟んだ5機編隊は、2機の戦闘機の接近に気付いてはいたが、特に警告はなかった。

それも仕方のないことで、なぜなら2機の戦闘機はレーダーに映っていないのだ。機影がレーダーに映らない以上、レーダー波を使っての照準は不可能だから、警告したくても出来ない。

SF−09が発見されたのは、通常の輸送機であるKC−135Rと一緒に飛んでいたからである。単独でSF−09が飛行すれば、まず見付からなかっただろう。

レーダーが使えないとなると、残る照準手段は赤外線か、肉眼しかない。赤外線誘導は精密だが、太陽などを背にされた場合、より高い熱を持った惑星の方へと照準されてしまう。

5機編隊は確実性を求めて後者の照準手段を取った。しかし、その選択は間違っていた。

ウルトラホークらに乗っているのは普通の人間だ。対して、こちらは視力を圧倒的に強化された改造人間である。

TDFの誇る航空部隊がSF−09の存在を肉眼で確認した時には、すべてが遅かった。

2機のSF−09が、先頭のF−4Nに格闘戦を仕掛けたのだ。

 

『!?』

 

F−4Nのパイロットはずいぶんと驚いていたようだった。

27号機が、やはりF−4Nなどに搭載されているM61A1型機関砲よりも強力な25mm機関砲で攻撃を開始した。

M61A1の2倍……秒間200発もの連射力を持つ機関砲で、F−4Nは真正面から弾丸の嵐を浴びた。

1秒と経たず、紅蓮の炎を上げて爆発四散した。

TDF航空部隊に、戦慄が走った。

ダイヤモンドフォーメーションの一角を崩された編隊は、2機のハリアーが先行し、SF−09に格闘戦を挑んだ。

――が、それは無謀な行為だった。

たしかに、レーダーに補足できない以上、戦う手段は格闘戦しかない。

だが、世界初のVTOL機構を備えたハリアーにも弱点があった。

ハリアーは、滑走路なしで離着陸を可能とするVTOL機構を完成させるために、ロールスロイスペガサス・エンジンを採用した航空機だ。

ペガサス・エンジンは離着陸を可能とするだけでなく、同時に全身移動をも可能とする画期的な物だったが、機構が複雑すぎたために、エンジン重量は結果としてかなり重くなってしまっていた。

ハリアーは機体そのものがエンジン……と言っても過言ではない設計をしていた。ゆえにハリアーは、ハリアー以上の重量を飛ばすことができなくなり、重装備を不可能とし、軽薄な装甲になってしまったのだ。

そしてなにより、ハリアーはエンジンの構造上アフターバーナーが使えない……つまり、速度の期待出来ない代物になってしまったのだ。

事実、目の前のAV−8Bの最高速度は時速1080キロ。亜音速なのである。

SF−09は、その3倍強のスピードを持っていた。AV−8Bは果敢に接近戦を挑もうとするが、その速度に追い着けず、無駄弾を放ち続けていた。

 

『142…3、4、5……6、7、8、9……ラスト!』

 

レーダーを見ながらAV−8Bの攻撃を見ていた〈十番〉が叫ぶ。

AV−8Bの搭載する30mmアデン機関砲の総弾数は150発。対して、すぐ傍にいるF−4Nの20mm機関砲の総弾数は638発。その差は歴然だった。

弾丸を撃ち尽くしたのを確認して、27号機と28号機は急旋回し、ほぼ同時にサイドワインダー(赤外線誘導ミサイル)を放った。

閃光を上げ、2機のハリアーが砕け散った。

 

(……残り2機)

 

〈弐番〉がそう思った時、すでに〈壱番〉の操縦する28号機がマッハ3.2の超高速でF−4Nを追い、バルカン砲を掃射した。

数秒の後、最後の亡霊が破片を撒き散らしながら炎となって、墜落した。

 

『ラストッ!』

 

威勢の良い〈十番〉の声。

〈弐番〉は、そのラストが問題なんだとは口にしなかった。

閃光が、空を裂いた。

ウルトラホーク3号に搭載された、化学レーザーである!

2機のSF−09が急旋回して、それを躱そうとする。

――が、レーザーはすなわち光速の速さを持つ兵器だ。

到底、躱せるものではなく、直撃をま逃れたとしても、完全回避は不可能である。

 

『…掠っただけでこれか!』

 

〈弐番〉が、かすかに煙を放ち、融解したウィングを見て毒づいた。

 

『アマギ!28って描いてある奴を追うぞ』

『了解』

『っ…させるかっ』

 

ホーク3号が、SF−09を超えるマッハ3.5という超高速で28号機を追う。

27号が、それを追った。

 

『兄貴!こっちのスピードじゃあいつには追いつけないぜ!!』

『追い着いて……みせるさ!』

 

戦後稀に見る、ドッグファイトが始まった。

 

 

 

 

 

勝負は意外な形で終曲を迎えた。

突如として、ホーク3号が煙を上げたのだ。

 

『ど、どうしたアマギ!?』

『金属疲労だ!TDFの研究所から整備なしで持ってきたから……クソッ。いくらホーク3号でも、ぶっ続けで18000キロは無理か!』

 

あろうことか、その通信は、回線を開いていたSF−09両機にしかと聞こえていた。

そして、その瞬間を逃す〈イレイザー〉でもなかった。

 

『…〈壱番〉!』

『ホークの運動性が著しく落ちている。サイドワインダーで援護を。28号機は格闘戦を仕掛ける!』

 

本来ならば、対怪獣用に設計されたホーク3号に、通常のミサイルや弾丸は通用しない。

しかし、金属疲労を起こしているということは、撃墜とまではいかずとも、敵を不時着させることぐらいなら可能なはずだ。

ホーク3号相手ならば、それだけでも重要な価値がある。

 

『〈十番〉!レーダーをよく見ていろっ』

『了解!……あと右に15度、下に4度機体をっ』

『承知』

 

反転・旋回・急降下と、あらゆる技巧を凝らしてホーク3号を追尾する。

金属疲労を起こし、著しい性能の低下を見せているとはいえ、ホーク3号の運動性は素晴らしいものだった。

〈壱番〉から命じられたサイドワインダー発射のタイミングが、掴めない。

機体のスペックか、それともパイロットの力量か。

ウルトラ警備隊の名は、伊達ではないのだろう。

しかし――

 

『〈イレイザー〉の名も……伊達ではない!』

 

〈弐番〉の叫びに呼応するかのように、SF−09が加速した。

そしてその照準が、ホーク3号の右翼を捉えた時、〈十番〉が叫ぶ。

 

『あと3度右に』

『いやっ!このまま発射する!!』

 

操縦桿を握り、手動でミサイルを発射する。

 

“バシュッ”

 

ミサイルを固定していたアームが外れ、天を裂く矢に、炎が灯る。

マッハ6.5を上回るミサイルは、直線移動のみだったが、確実にホーク3号を捉えていた。

ホーク3号が反転し、ミサイルを躱す。

――と、その時、ホーク3号の目の前に28号が現れた。

 

Good Luck !

 

〈壱番〉は台詞と同時に、右足でバルカン砲のスイッチを踏み込んだ。無数の弾丸が、白い筋となってホーク3号に吸い込まれていく。

だが、発火はしない。

ただ、ホーク3号から立ち上る煙が濃くなり、高度が見る見るうちに減少していくだけだ。

 

『ふ、フルハシ隊員!!』

『クソッ!アマギ、不時着するぞ!!』

 

いかにフルハシ、アマギの両名とて、この事態には対処できない。

まさか空中でホークを分解し、修理して組み立てるわけにもいかないのだ。

もっとも、補助ブースターを使えば黒海までは辿り着けるだろう。浮力を利用すれば、助からないこともない。

ホーク3号を撃墜したことで、全員がほっと安堵の溜め息を洩らした。

 

『〈参番〉、荷物は?』

『無事です。マンガンは1グラムの欠損もありません。あと1時間と少し……頑張りましょう』

『……念のため給油したい。2機連続になるが、頼む』

 

基本的にNATO軍航空機を踏まえて設計されたSF−09は、KC−135Rからぶら下がったプローブとホースから、プローブ・アンド・ドローグ方式で空中給油することが出来る。

思わぬ戦闘によって燃料を消費してしまったため、2機は、順番に空中給油を受けた。

 

『……しかし、連中はホント俺達の正体を確かめるために来たんでしょうかね?』

 

給油を受けながら、後部座席の〈十番〉が〈弐番〉に言った。

 

『おそらく違うな。こっちの国籍を確かめるだけなら5機も戦力はいらない。F−4Nだけで済んだはずだ。十中八九……この作戦の妨害だろう』

『じゃあ、なんで、〈ショッカー〉の極秘作戦を知ることが出来たんです?』

『さぁ? そこまでは分からん。裏切り者がいるのか、それともスパイでも潜り込んでいるのか……』

 

無意識に口から出てきた『裏切り者』という言葉に、〈弐番〉は妙な引っ掛かりを覚えてしまう。

ホースが外れ、SF−09が元のフォーメーションを組む。

〈壱番〉が、鋭い視線でKC−135Rを睨み付けていた。

 

 

 

 

 

 

秘密空港は文字通り秘密の空港だった。

どこにそんなスペースがあったのか。

半径10キロ内に人の姿はなく、2キロほどの滑走路にKC−135Rは降りた。

俺達の乗るSF−09はVTOL機能を有しているので、そのまま着陸だ。

世界初の実用VTOLジェット機として1966年に完成したハリアーだが、その5年前に、ターボ・ジェットVTOLの技術を完成させていた〈ショカー〉は、VTOLの使い方をよく分かっている。

まさにVTOLのために用意されたような滑走路を抜け、俺達は十数時間ぶりに地上に足を着いた。

それから3時間ほど、俺達は仮眠をとった。

その間に10トンのマンガンは、半分に分けられ、5台のトレーラーに積み込まれた。

1台1トン。大荷物である。

俺達はこの大荷物を、イタリアからスイス国境付近まで持っていけばいい。

地球防衛軍という、全地球人が一致団結した組織を作ってなお、スイスはECに加盟していない。

なぜかと聞かれれば、それは〈ショッカー〉が圧力をかけているからだ。

そう、〈ショッカー〉ヨーロッパ支部とは、スイス山中に存在するのである。

 

『〈壱番〉、間もなくスイス国境付近です。一旦、停車しましょう』

 

落ち着いた〈参番〉の声。EC加盟国同士の入国に関しては自由に行なえるが、加盟国ではないスイスへの入国には審査が必要だ。

その準備のためにも、俺達は一旦停車することにした。

かつてはローマ帝国という大国が栄えたイタリアも、外の方に近付けば辺鄙なところになっていく。一応、道路は綺麗に整備されているものの、周囲の雑木林などが、俺達のトレーラーを隠してくれた。

トレーラーに乗ってすでに数時間が経過していた。

俺達は一度トレーラーから降りて、体をほぐす。

ずっと同じ姿勢でいるというのは体に良くない。もっとも俺達の場合、肉体以上に精神がキツイのだが。

肉体面で強化された改造人間だが、精神面では未熟な人間のままだ。精神と肉体は密接な繋がりを持っている。片方がダメージを受ければもう片方にも影響を及ぼす。けれども“上”はそんなことおかまいなしに任務をくれる。

いかに1度で何百万ドルもの収入が得られようとも、それだけでは精神の栄養ドリンクとしては不十分だ。

 

「〈弐番〉……」

 

〈十番〉が眠そうな表情で俺を呼んだ。

照明はなかったが、相手の表情は充分に読み取れた。

隣りに座り、ともに空を見上げる。

 

「兄貴は……〈弐番〉は、どうして教師になったんだよ?」

「何故そんなことを聞く?」

「ん…なんとなく」

 

そう言って、〈十番〉――いや、浩平と呼ぶべきだろう――は、俯いた。

……因果な商売である。

浩平は仮にもまだ学生だ。将来への不安もあるだろうし、毎日が死と隣り合わせのこの世界では、未来のことなどに構ってなどいられない。

そんな世界で生きてきたからだろう。

浩平は同年代の何倍も老けており、また何倍も幼かった。

 

「…伝えたかったんだろう……な」

「え?」

「伝えたかったんだろうな。赤子だったとは言え、俺は戦前の生まれだからな」

「あ……」

「戦争が終わってからしばらくの日本は地獄だった。制定された憲法の拘束力はあまりにも弱く……政治は、あまりにも未熟だった。新しく組織された警察も米軍の後ろをチョコチョコと着いていくだけの、カモの子供だったよ」

 

俺はまだ子供ではあったが、その光景は鮮明に記憶している。

今でこそ世界で唯一の平和憲法と賛辞される大日本国憲法だが、当時戦争の余韻が冷めぬこの国では、拘束力は皆無に等しかった。

大部分はやはり戦争の余韻で疲弊しきっており、何もする気力が起きないか、新しいことをしようという活力に満ち溢れていたが、その影で犯罪をする者もまた少なくなかった。

特に、戦争で親を、親族を殺された子供達が生きていくには、犯罪に手を染めるしかなかったほどだ。

頼るはずの警察は脆弱で、頼みの綱の米軍も言語が分からなかったのだ。

頼れるのは自分のみと、当時の子供は誰もがそう思っていた。

座るべき椅子などないこの森の中では、必然的にその辺りの切り株に座るか、地面に直接座るかしかない。

俺の話を聞きながら、体育座りの浩平が、顔を膝に埋めた。

 

「俺の身の上は知ってるな?」

 

浩平が膝に顔を埋めながらも頷いた。

 

「頼れるのは己のみ。裏社会に身を置いた俺は、とりあえず東京に向った。酷かったよ、あの街は。金と麻薬と力。あとは女か……。それだけが全てを握ってるようなもんだった。いかに天皇のお膝元と言えど、天皇が地に堕ちた時、すべては変わってしまった。当時10歳になったばかりの俺には、金も、麻薬も、女も……何もなかった。あるのは、力だけだ。“例の抗争”の時に奪った拳銃が役に立ったよ。4人殺したら、上手い具合にヤクザが食いついてきてくれた」

 

あの時はとにもかくにもバックが必要だった。

裏社会に身を置く……と言っても、後ろ盾がなければ無理な話だ。

ヤクザの雑用係になった俺は、次第に力を蓄え、鉄砲弾に狩り出されるようになった。

 

「苦労したぞ。留美にヤクザの仕事なんてさせるわけにはいかんからな。キッズポルノ行きは目に見えていたし……。あいつの分まで、働いて、働いて、働きまくって……やっと、鉄砲弾に狩り出されるようになって、20人も殺した。頭領はずいぶんと評価してくれたよ」

 

中学を卒業するまでに100人以上を殺した。

卒業してすぐ、都立の高校に通い始めた。それと同時に、俺は所属していた事務所を壊滅させた。誰1人として、始末洩れはなかった。

 

「高校では極力目立たないようにしながら、勉強と仕事を両立させてきた。留美からは散々言われたが、生きていくためには何でもやるしかなかった。金持ちのマダムに、体を売ったこともあったな。……そうしていくうちに、連中が俺に接触してきた」

「〈ショッカー〉……」

 

俺は頷き、遠い目で夜空を見上げた。

 

「道が開けたと思ったよ。同時に、世界はこんなにも眩しかったのかって、思った。皮肉だな。〈ショッカー〉という、力ある裏の組織が、俺に希望を与えてくれた。力を得た俺は、後ろを振り向いたり、世間に目を向けたりする余裕が出来たんだ。その時だな、教師になろうと思ったのは」

「…………」

「生きているってことは素晴らしい。世界はこんなにも希望と喜びで満ち溢れている。反面、それと同等の負の部分を持ち合わせている。だが、世の中というのは大抵、二律背反の基に成り立っている。何もおかしな事ではない。お前達若者が、それを悔やむ必要はない。この世界を創ったのは古からの先人達や俺達であり、お前達が悔やむべきは、お前達が創ったものだけでいい。目先の事に囚われるな。もっと広い視野を持て。世界は、こんなにも輝いているんだから……」

「…………」

「それを伝えたかったんだろうな。こんな裏の世界を知ってしまったからこその、俺の自己満足だ。せめて俺の生徒にだけは知ってほしい。道を……踏み外すなと……な」

「世界は輝いている……か」

 

呟き、浩平は夜空を見上げた。

雲ひとつない、溢れんばかりの星が輝く夜だ。

だが対照的に、俺達の未来は暗く、濁っている。先が、見えないのだ。

それが俺達の生きている世界。

だが――

 

「兄貴……俺……」

 

俺達の住む世界は暗闇だ。

矛盾が満ち、懐疑に満ち、理不尽に満ち、絶望が満ち、残酷に満ち、欲望が満ち、怨念が満ち、憎悪の満ちた世界……。

 

「……俺、教師になるよ……」

 

しかし、そんな中にも希望はある。

 

「……そうか」

 

要は、その希望を見つけられるか否かなのだ。

 

「なら、俺がお前の教育係になってやる」

 

言って、俺達は夜空に浮かぶ月を見詰めた。

 

 

 

 

 

 

「……ああ、そうだ。今、スイスの国境付近にいる。あと5分後だな。オーケー…………」

「……何をしている?」

「!?」

 

突然後頭部に突き付けられた銃口。

通信端末を地面に落として、〈参番〉は固まった。

Assassinのトリガーに指をかけた〈壱番〉は、冷徹な顔に怒りの色を混ぜながら、淡々と語る。

 

「おかしいと思っていた。今回の任務は〈ショッカー〉内でも第一極秘事項のはず。この任務の存在を知っていたるのは俺達〈イレイザー〉か、この作戦に直接関わるメンバーしか知らないはず」

「で、でも、それだけじゃ俺が裏切り者ってことにはならないですよね?」

「……墓穴を掘ったな。俺は何もお前が裏切り者だとは言っていない。それに、俺はこう続けるつもりだったんだ。ファントムにならば偶然見付かることもあるかもしれんが、ホーク3号に見付かることはまずありえない。あの機体は……完全な戦闘用の機体だからな。星人相手の偵察以外には、出てこない」

「くっ」

 

刹那、〈参番〉の体が一気に沈み、〈壱番〉の脇腹を抉るように蹴りを放った。

〈壱番〉はそれを難なく躱すと、Assassinを連射する。

 

“ババババババババスッッ!”

 

消音機器によって消された音。

怒涛の8連射が〈参番〉を襲い、彼は、手痛いダメージを受けた。

 

「…ぐっ!!」

「貴様に言っておこう。〈参番〉!お前はこれよりSIDE〈イレイザー〉から追放する!!」

「なっ…!?」

「さぁ……勝負だ。〈参番〉……いや、スレイブ・ガーランド!」

 

〈壱番〉の叫びとともに放たれた45ショッカー弾を躱しながら、〈参番〉――スレイブは、バトルナイフを抜いた。

 

 

 

 

 

 

「…………おかしい」

「兄貴……?」

「〈十二番〉」

「……………………42人」

 

〈十二番〉は爆弾工作のエキスパートだった。

爆弾を設置する際にもっとも注意すべきは何か?

それは周囲の人影である。

爆弾を設置している最中に人に見付かっては元も子もない。よって、本来ならば設置作業は護衛や見張りの意味も兼ねて1人付き添い、2人で行なうべきなのだ。

しかし、〈十二番〉が得意とするのは爆弾工作であって爆弾の設置ではない。

工作作業とは、本来少数で行なうもの。そんな体よく2人で行なえるはずもない。

ゆえに〈十二番〉は己の感覚を鍛えに鍛えた。さらに〈ショッカー〉から受けた改造手術によって、その五感は最高の域にまで達している。

 

「42人……米軍か?」

「そこまでは……ただ、足取りからして装備は通常の歩兵のものかと」

「大口径重火器は?」

「2・3人ほど。……すでに、囲まれています」

「……〈十番〉」

 

呼び方が番号に戻り、浩平は一瞬ビクリとする。――が、すぐさま〈イレイザー〉の〈十番〉の顔つきになると、周囲の兵士達を刺激しない程度に、動いて、トレーラーのシート下から細長いバッグを3つ、各々に渡した。

ファスナーを開け、中身を確認する。

――320式型自動小銃。

〈ショッカー〉御用達の、高性能アサルト・ライフルであった。

 

「こいつならば相手の射程外から攻撃できる。まぁ、この地形じゃ用は足さんだろうな。だが、こいつならそれなりの距離から射撃が可能だ。ナイフや円匙に注意する必要はない」

 

〈弐番〉の声に、2人が頷く。

突如出現した謎のバッグに、周囲を取り囲む兵士達の動きが変化した。

その間にも、〈イレイザー〉は着々と準備を整え始めていた。

羽織っていたジャケットのファスナーを降ろし、闇色の戦闘服を露わにする。

日本ではすでに春だが、ヨーロッパではさすがにまだ寒い。耐熱性はあるものの、防寒性はあまりない戦闘服に、〈十番〉が震えた。

 

「寒いか?」

「少し…」

「安心しろ。すぐに暖まる」

 

刹那、それまでの空気が一変し、雑木林からはいくつもの殺気に満ち溢れた。

並みの人間では発狂しかねないほどの殺気である。

 

「……重火器を持っている奴が3人……動きました。前面に出てきます」

 

〈十二番〉の言葉に、バッグの中に手を入れた2人が緊張する。

 

「…………来ます!」

 

瞬間、3人の顔が強張った。

かすかな発射音と同時に、遠くの方から、空を裂く音が聞こえてくる。

それがパンツァー・ファウストの弾頭が飛ぶ音だと知った時、〈弐番〉の反応は早かった。

 

「散開っ!」

 

言うが早いか、3人はバッグの中から320式型自動小銃を取り出し、バラバラに散開した。

直後、先刻まで3人がいた場所が爆発し、炎上する。着弾地点が離れていたおかげか、強化アルミニウム合金製のトレーラーに被害はない。

〈弐番〉は命中の直前、チラリとそちらを一瞥していた。

 

(RPG−7か……どこの国だ?)

 

――RPG−7。

ソビエトが1960年に開発した個人形態可能な肩付け式対戦車/軽装甲火器である。

第二次大戦中にドイツ軍が使用したパンツァーファウスト150のソビエト版PRG−2の改良型で、命中率、射程の大幅な向上を成功させている。

320ミリの均一装甲を300メートル先から貫通するその威力は、改造人間にとっても絶大な脅威である。

世界で最も広く使われている対戦車兵器で、それゆえにどこの軍隊か判断がしにくい。ソ連と対立する米軍ですら、一部の部隊は使っているのだ。

だが〈弐番〉のその疑念は、すぐに晴れることとなった。

 

“ガガガガガガガガッ!!!”

 

〈弐番〉を弾丸の嵐が襲う。

それを避けながら、〈弐番〉は、その超人的な感覚能力で、敵の武装を探った。〈十二番〉ほどではないにしろ、〈弐番〉にもその程度ならば出来る。

 

(5.56mmの45……NATO制式弾丸か。……米軍か?)

 

木々を壁に躱し続け、包囲網を突破する。自身が囲まれている以上、まずはその包囲網を突破することから考えねばならない。

不利な状況を対等な状況にもっていくのは、スポーツでも同じことだ。

そしてそれは、〈弐番〉の超人的身体能力ならば簡単なことだった。

包囲網を抜けると、直後。〈弐番〉は320式型自動小銃を構え、連射した。

何人かの悲鳴が上がって、その分だけ気配が消えた。

兵士達が10数人、こちらに迫ってくる。

飛び交う銃弾を躱し、後退しながら、〈弐番〉はライフルを撃ち続けた。

30秒もすると、敵の攻撃は勢いを衰えさせていった。

それが何を意味するのか、〈弐番〉は知っている。

〈弐番〉が、ようやく攻勢に回った。

 

 

 

 

 

 

 

「それで終わりか……」

 

ショッカーブレードを構えた〈壱番〉が、冷徹に言い放つ。

バトルナイフを折られたスレイブは、予想以上の〈壱番〉の戦闘能力に内心舌打ちをしていた。

〈壱番〉は、まだ自身の能力の5割も使っていないのだ。

それで、この劣勢。

 

(こいつは……化け物か!?)

 

普通の人間から見れば、不可視の速度で戦っているこの2人ともが『化け物』である。

 

「はぁっ!」

 

〈壱番〉の肉体が、一条の黒い矢となってスレイブに襲いかかった。

スレイブが米軍制式のコンバットナイフを抜き、応戦する。

ナイフが唸り、ブレードが闇に躍った。

二振りの刃がぶつかって、火花が散る。

2人の体が、パッと離れた。

 

「ぐぅっ…!」

 

スレイブが右腕を押さえる。

深々と切り裂かれた右腕は、スレイブの利き腕だった。

 

「さぁ……どうする?」

 

やはり冷徹に言い放つ。

だがスレイブは、利き腕を失ってなお、戦う意思を失いはしなかった。

その瞳には、いまだ戦意が宿っている。

 

「……まだ秘策があるのか?」

「ククククク……ありますとも。とっておきの切り札がね。気付いているはずですよ」

 

スレイブが狂気の瞳で言い放つ。

そう、〈壱番〉は気付いていた。だからこそ本気は出さずに、極力体力を温存しながら戦っていた。

……自分達の周囲を取り囲む、百人以上の気配に。

 

「総勢368名……戦力の9割をこっちに割きました。光栄でしょう?あなたは、それだけの実力者と認められたんだ。〈壱番〉……いいえ、ランバート・クラーク少佐。ここにいるのは、あなたと同郷の人達ですよ」

「違うな」

「……はい?」

「俺は今でこそ米軍兵士などやっていたが、俺の故郷は、アメリカではない」

「……どちらでもいいことだっ!抜けられますか!?この包囲網を!!!」

 

スレイブの蒼白の顔が狂気に歪み、唇から赤い鮮血を撒き散らす。

刹那、数百人分の殺気がどっと押し寄せ、プレッシャーとなって〈壱番〉を襲った。

しかし〈壱番〉は、特に意に介したようでもなく、ただ一言。

 

「……退屈凌ぎにはなるかな?」

 

呟いて、彼は戦闘を開始した。

 

 

 

 

 

 

「これはっ!?」

「チクショウッ!連中、まだこんなにいやがったのかよ!!」

「〈壱番〉が危ない!行くぞ!!」

 

〈弐番〉の声に、〈十番〉と〈十二番〉は大きく頷き、走り出す。

〈弐番〉は、すでにスレイブの裏切りに気付いていた。

SIDE〈イレイザー〉内でも稀少な予知能力者である〈壱番〉と〈弐番〉は、数秒先ではあるが、未来を読むことが出来る。

それは自身の未来ではなく、他人の未来。

〈壱番〉はスレイブが米軍と極秘に通信をしているところを。

〈弐番〉はスレイブが裏切り、〈壱番〉と戦闘に陥っているところを。

2人は、それぞれで予知し、スレイブの裏切りを知ったのだ。

〈弐番〉達と〈壱番〉はずいぶんと離れていた。

改造人間でも走って1分はかかるような距離。しかも、ここは雑木林である。

入り組み、遮蔽物の多い場所では、必然的にスピードもある程度抑えなければならない。結果として、3分と見積もるべきであろう。

そしてその3分の間、〈壱番〉が生き残れる保証はどこにもないのだ。

 

「……先に行くぞ!」

 

〈弐番〉は駆けた。〈イレイザー〉最強の2人のうちの1人である彼は、〈十番〉や〈十二番〉では考えられないような速さで雑木林を駆け抜けた。

やがて、1体の死体を見つけた。

先刻まで自分達も戦っていた、米軍の兵士である。

そしてその数が1体、また1体と、徐々に増えていく。

死体の数が100人を越えたところで、〈弐番〉は数えるのを止めた。

5分も走ると、開けた場所に出た。

辺り一面に広がる、赤。朱。紅。赫。

足元は夥しい血の沼となり、しばしば〈弐番〉の足元をすくおうとした。

そして、その沼に浮かぶ浮島……死体という浮島も、〈弐番〉の足元をすくおうとする。

そこは血の臭いで満ちていた。

周囲の木々には幾つもの穴が穿っていたり、切り傷があったり、紅に染まっていたり、砕けていたりと、数十年後問題になる森林破壊の先見のようだった。

しばらくぶりに見た、まさに死体の山。そして血の川。

〈弐番〉は、その中をズンズンと進んだ。

そして、とある大木の前で立ち止まる。

1人の男が、もたれかかったその大木に……

 

「む、〈弐番〉か……」

 

弱々しい声で、〈イレイザー〉最強の男は言った。

 

「〈壱番〉……」

 

何を言うべきか分からず、〈弐番〉はただ、男のコードネームを呼んだ。

男は珍しく苦笑しながら、

 

「……やられたよ。気付いていると思うが、〈参番〉……スレイブが裏切った」

「喋らないで下さい、〈壱番〉!」

 

〈壱番〉の体はボロボロだった。

夥しい量の出血と、数千もの傷。赤黒い血からは無数の弾丸が流されていた。

その四肢はすでに四肢として機能しておらず、脇腹は見事に抉れていた。

そして、焦点の合っていない眼と、掠れた声。

誰が見ても、もう助からないことは明白だった。

改造人間とて、不死身ではないのだ。

 

「なんだ?どこかでジェット機の訓練でもしているのか?お前の声が……よく聞こえんぞ」

「……〈壱番〉」

「ハハハハ。200人を殺したところまでは数えたんだがな。それ以上は、面倒くさくなって止めた」

 

まるで少年のように、〈壱番〉は笑った。

目が見えないと知っていながら、〈弐番〉も合わせて微笑を浮かべる。

 

「こんなに燃えたのは久しぶりだった。太平洋戦争で、朝鮮戦争でも何度も死地に遭ったが、それ以来だな。ハハハハ……」

「まだですよ〈壱番〉。これが終わったら〈ショッカー〉はきっとヴェトナムに介入します。まだまだあなたには、燃えてもらわないと」

「ふむ。そうだな……それにしても今日は天気が悪い。“北斗”、お前の顔が見えん」

「今は任務中ですよ、〈壱番〉」

「任務? 何の事だ?」

「……いえ、なんでも」

 

〈弐番〉は――北斗は悟った。

もう、『この人の任務は終わったんだ』と。

 

「……それより北斗、一寸、手を俺の頭に載せろ」

「手を……ですか?」

「そうだ……こう、頭の上に、な」

 

言われて、北斗は恐る恐るランカークの頭に触れた。

刹那、北斗の中で何かが駆け巡った。

 

「!?」

「ハハハハ!驚いたか」

「今のは……一体!?」

「ふむ。どうやら死の淵で予知の他にもう1つ能力に目覚めたらしい」

「……!!」

 

今、この男は何と言った?

『死の淵』と、そう言ったのか?

ランバートは構わず続ける。

 

「これは『移植』という能力でな、脳の神経を繋げて、自分の情報を相手に移すっていう……まぁ、簡単に言えば、今、俺はお前に俺の力を送ったんだ」

「力を……送った?」

「そうだ。文字通り、な。今のお前は力に満ち溢れているはずだぞ。なにせ、俺の力を上乗せしたんだからな」

 

たしかに、北斗は自分の体に起きた異変に驚愕していた。

拳を振るえば以前より速く、そして強力なものを打てるだろう。

言葉通り、北斗とランバートの力が、そのままプラスされたかのように。

 

「……選別だ。こんだけの力があれば、お前1人でも、ここを潜り抜けられるだろう」

「俺……1人?」

「……気が付かなかったのか?〈十番〉と〈十二番〉の気配を探ってみろ」

「これは…!!」

 

言われて、周囲の気配を探った北斗の表情が愕然とする。

何も感じない。

何も…………

 

「北斗、お前は母国が好きか?」

「ランバート少佐……?」

「北斗……お前は…………生きろ………………」

「ランバート少佐……」

「どんなに無様でも……………………生きて、日本の大地を踏め」

 

「お前には待っている人がいるんだろ?」そう付け加えて、偉大なる軍人は目を閉じた。その双眸から流れる血が、涙を思わせた。

 

「…ランバート……少佐……」

 

北斗の頬に、何か熱いものが流れていた。

涙、だった。

知らず、北斗は敬礼していた。

偉大なる軍人に対して、最大の敬意を篭めて。

北斗は、ただ静かに敬礼した。

 

 

 

 

 

 

スレイブはただ1人、林の中を駆け抜けた。

その表情は、恐怖と狂気に満ち、破顔している。

そこに、かつて〈ショッカー〉が誇る最強の特殊部隊SIDE〈イレイザー〉の〈参番〉だった頃の面影は微塵も感じられない。

スレイブは怯えていた。

走りながら、300人以上の兵隊と戦って、そのうちの350人を殺してやっと死んだ“男”のことを思い出して、恐慌していた。

利き腕の右腕から走る痛みが、かろうじて彼の意識を留めていた。

こんな状態の彼が、〈十番〉と〈十二番〉の2人を相手に勝てたのは偶然が重なったからに他ならない。

まず、〈壱番〉を相手に奇跡的に生き延びた16人の兵士達を捨て駒に使ったからだ。この時点で、彼に部下が残っていたのはまったくの幸運だった。しかも、1人はグレネードランチャー……U.S.M79を持っている。

40mmグレネードの直撃を受けては、いかに改造人間とて無事では済まない。

最初の1発で2人に命中し、戦力が低下したところを17人で襲いかかった。

しかし、それですら16人を殺して2人は事切れた。

 

(付き合ってられるかっ!)

 

スレイブは内心毒づいた。

自身も、彼曰くの『化け物』であるというのに、スレイブは恐れていた。

『改造人間』という存在に。

そして、いまだ生死不明の〈弐番〉に。

 

“パキッ”

 

不意に、背後からそんな音がした。

冬の外気に晒された木の枝は乾き、踏んだだけで小気味良い枯れた音がする。

スレイブは反射的に立ち止まり、背後を振り返った。

 

「……〈壱番〉は誇り高き軍人として散っていった。俺に、偉大な遺産を遺してな」

 

〈弐番〉……否、北斗は静かに告げた。

右足を一歩前に出し、続いて左足を前に進める。

 

「……〈十二番〉とはあまり話した事がなかったが、あいつとは昔酒を飲み明かして以来の飲み比べ仲間だった」

 

ゆっくりとした、けれども確実な歩み。

逃げようと思えばいくらでも逃げられた。

しかし、北斗の全身から放たれる殺気に足が竦み、スレイブは動けないでいた。

 

「……〈十番〉は俺と同じ教師になると言ってくれた。あいつは、紛れもなく俺の生徒だった」

 

また一歩。また一歩と近付く。

それだけで、スレイブは無様にも失禁してしまった。

 

「〈ショッカー〉の掟は知っているな? 裏切り者には……死を!」

 

反射的に、スレイブはナイフを抜いていた。

長年染み付いた、戦士の対応である。

しかし、北斗の反応はそれ以上だった。

当然である。

〈壱番〉が死ぬ間際に遺してくれた遺産は、北斗の中に確実に存在するのだ。

今の北斗は、SIDE〈イレイザー〉最強とまで詠われた2人が、1つの肉体を持ったようなものだった。

不可視の速度でブレードを振るい、ナイフを弾き飛ばす。そしてガラ空きになった胴に向けて、これまた不可視の速度で拳を叩き込んだ。

 

“バキィッ!”

 

スレイブが、声にならない悲鳴を上げた。痛みはない。しかし、それは感覚が麻痺してしまっただけで、人体は深い影響を与えていた。

北斗の拳はキロの領域を超え、トンの領域に達していたのである。

北斗が砕いたのは鎖骨だった。

鎖骨は拳で殴れば簡単に折れ、激痛が起こって折れた側の腕全体が使いものにならなくなる、言わば相手の牙を奪うためのウィークポイントだ。

そんな箇所を、数トンもの破壊力の拳で打ち砕かれたのである。

スレイブはパニック状態に陥っていた。

 

「楽には死なせん。苦しみ……悶えながら死ね!」

「はひ……はひ…」

 

もはや、その言葉すらも届いていないのかもしれない。

その後も北斗はスレイブを殴り、切り裂き、貫いた。

目。

鼻。

頭蓋。

耳。

顎。

首。

喉。

顎先。

肩。

背骨。

手。

膝。

肋骨。

上腕。

脇下。

太股。

鳩尾。

股間。

それはまさに地獄のような拷問だった。人体にあるという18箇所の急所を、死なない程度に傷付け、痛めつけたのである。

すでにスレイブは、自分から痛覚を閉ざしていた。

最後に、北斗はブレードをスレイブの方から引き抜いて、

 

「……これで、終わりだ」

 

そのまま刃を、心臓へと一突きして、彼の今宵の戦いは終局を迎えた。

 

 

 

 

 

 

――1971年4月2日。

 

 

 

 

 

 

サナトリウムを思わせる緑色の平原と、そこにそびえるいくつもの白い石の彫刻。彫刻には名前が刻まれ、年号が彫られている。

ローマ郊外に位置するその霊園の片隅にある、小さな墓標。

その白い墓石に、花束を添える2人の男女がいた。

闇舞北斗とバネッサ・キースリングである。

2人は『ランバート・クラーク』と刻まれた墓碑をしげしげと眺めて、北斗は念仏を唱え、バネッサは十字を指で切った。

なんとも変わった墓参りである。

 

「……まさかあの人がイタリア人だとは思いませんでした」

 

遠い過去を懐かしむような表情でバネッサが言った。

北斗は無言で、優しげな視線で墓石を見詰める。

 

「……よくよく考えたら、非経済的なお墓参りですよね」

「3人が3人とも、国籍がバラバラで、祖国に埋めてきてしまったからな……」

 

ランバートはイタリア。

浩平は日本。

〈十二番〉ことミハイル・セレネスはアメリカ。

皆バラバラの国籍で、墓参りをするにも地球1周分かの距離を飛ばなければならない。北斗は苦笑しながら数珠をしまい、バネッサも首から下げていたロザリオをしまった。

 

「……そろそろ時間です」

「今日の標的は?」

「P・ベレッタ社の社員です。我々に武器を横流ししてくれていたんですが、ソ連にも流出していたそうです。CIAとMI5に目を付けられました」

「……いつも通りで頼むぞ、“〈四番〉”」

「ええ、分かっています。“〈壱番〉”……」

 

 

ふっと微笑んで、北斗……〈壱番〉は歩き出す。

刹那、彼の脳裏に、妙なビジョンが浮かんできた。

別にたいした事ではない。

“いつも”の、予知能力によって見えてしまう、未来のビジョンだ。

 

(……白いバイクに乗った……髑髏仮面の男?)

 

何のことかはまったく分からなかった。

ただ、〈壱番〉の胸中で、言葉では言い表せぬ不安が波を打っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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設定説明

 

“SF−09”

 

〈ショッカー〉が独自に開発した戦闘機。

常に数十年先の技術をいく〈ショッカー〉の兵器だけあって、実用化されてまだ6年しか経っていないVTOL機構や、10数年後に実用化されるステルス機能を備えている。

また、VTOLでは不可能なはずのアフターバーナーを可能としており、マッハ3.2もの高速を出すことが出来る。

製造はすべて〈ショッカー〉の息のかかった企業で行なわれ、噂では、三菱でも一部の部品が製造されているらしい。

基本設計はNATOの戦闘機を踏まえている。

 

全長:17.8m 全幅:11.4m 全高:5.2m

最大離陸重量:19.5t  力:15.2t 最高速度:3916km/h

実用上昇限度:25000m(パイロットの身体的強度次第ではもっと高い高度を取れる)

航続距離:14000km

 

 

ちなみに、とうのハリアーやステルス機のスペックは以下の通り(航空機に興味ない人はつまんないかも)。

 

 

“GR−7ハリアー(ハリアーの最新鋭機。1990年より英国空軍採用)”

 

全長:14.36m 全幅:9.25m 全高:3.55m

最大離陸重量:14.061t 推力:9.773t 最高速度:1065km/h

実用上昇速度:15km 航続距離:2202km

 

 

“F−117Aナイトホーク”

 

全長:20.3m 全幅:13.3m 全高:3.8m

最大離陸重量:23.814t 推力:9.818t 最高速度:1040km/h

実用上昇速度:不明(アメリカが公開してくれない)

航続距離:空中給油を受ければ無限

 

 

“ウルトラホーク3号”

 

全長:19.5m 重量:25.5t 最高速度:M3.5 乗員:3名

 

ご存知ウルトラセブンの防衛組織TDFが誇る精鋭部隊ウルトラ警備隊の所有する強力兵器。

通常の兵器は勿論、化学レーザーを応用したビーム兵器や、対怪獣用の麻酔弾なども搭載している。

劇中を見る限り、ジェットビートルやウルトラホークで酸素マスクを付けている隊員はいないので、コクピット内はB−29と同じで与圧されていると思われる。また、隊員達は高高度でも平気でコクピット内を立ち歩いているので、わりと内部は快適と思われる。

 

 

なお、実際の化学レーザーが実用化されたのは1985年9月。

 

化学レーザーとは、文字通り化学反応を利用したレーザーシステムのことで、例えばフッ素と水素を化合させると発熱反応が起こり、これによって生じた強い赤外線レーザーが出来る。

これをそのままレーザー発振器に入れ、波長と位相が揃った赤外線レーザーが完成する。構造がシンプルなおかげでかなりの高出力が見込める。

1985年9月、TRW社が開発したものは、出力2.2メガワットの赤外線レーザーで、「ミナクル」と呼ばれ、ニューメキシコ州ホワイトサンズにおいて、ミサイル「タイタン」の第2ブースターに向けて照射され、見事にこれを破壊した。

 

 

 

 

 

 

〜あとがき〜

 

外伝二話、お読みいただきありがとうございました。

なんかやたらとバトルの多い外伝ですが、それでもご贔屓願えれば幸いです。

さて今回、珍しく戦闘機同士の格闘戦を書いてみました。いやはや、難しいですね。

人間を動かすのと違って、自分はパイロットでも何でもないただの(多分)民間人ですから、本職の方が読んでたら「なんだこりゃっ!!」かもしれません。

あと、多々判りづらい箇所があります。これは時間と容量の都合で削除した部分の名残です。実はこの話、元々Word書きで80ページ近い容量だったもので、なんとかここまで縮めた次第であります。

ではでは、「Heroes of Heart」本編ともども、よろしくお願いします!






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