『Dear』




「「「いってきま〜す」」」

「おう」

朝ごはんを食べ終わり学校に向かうため、家を出たと同じ時間に
前にあるマンションから

「三人ともお早う」

彼は麻神彰。
中学からの友人で今年は別のクラスになってしまったが、
それで何かが変わる訳ではないでしょう。

「お早う、彰。今年は別のクラスになりましたね」

「いや、クラスが別になった位で」

「あたしたち以外とは人付き合い、少ないでしょ」

「あまり見ませんね、彰さんが私達以外と話をしている所は」

彰は人付き合いが苦手で、しかも喋り下手であるためか
私達以外に友人がいないので心配になるのだが。

「いい加減に直さなきゃいけないし、何時までも頼っていちゃ
いけないからね」

「ならいいけど」

「話は歩きながらして行きませんか。始業式だからと言っても
遅刻は拙いですし」

「そうだね」「うん」「そうしましょう」

高校までは別に遠い訳ではない。幾ら遅くても二十分は掛からないけど・・・

「今年はどのような人がいるんでしょうか」

「と言うか、始業式に毎回転校生が来るなんて普通は無いんだけど」

私達の通っている高校“上伊那高校”はかなり変わっている。
校訓は“学校を壊さない”“警察沙汰を起こさない”
この二つしか無いが、創立五十年を迎えた今年まで
文武ともに優秀な成績を収めている。
制服はあるが、どのような髪型でもよく
(度が過ぎた物は流石に駄目だが)
大抵の事はOKと、かなり自由な高校である。
そして始業式に転校生が来るのはもはや恒例になっている事である。

「流石に来たとしても、僕のクラスや翡翠たちのクラスには来るとは
決まっている訳では無いんだし」

「むしろ、来て欲しくないです」
「それは同感」

「なんでですか?」

「「もしかすると、ライバルになるから」」

「??」

意味が解らない。

「やっぱり気付いていないんだ・・・二人とも頑張って」

「何の話ですか?」

「何でもない」

やっぱり解らない。












そんな話をしながら歩いていたら直に高校に着いていた。

「それじゃ、また後で」

「はい」

二年のクラスの三階で彰はA組に私達はC組に向かった。
クラスではまだらではあるが何人か席に座っていた。
其の内の一人、既に眠りにつき掛けているもう一人の友人を
挨拶とついでに起こす事にした。

「お早う、雫。眠るのは早いんではないですか」

「ん、ああ朝錬で早く起きてな。寝たりん」

彼は水城雫。
見た目は華奢だが二年で男子剣道部の部長を務めるほどの
腕前で全国大会でベスト十までいった事がある。
そんな彼には少し困った趣味があり、それが・・・

「それで勝ったの、負けたの?」

「少しは勝った」

「雫さん。いい加減に博打は止めたほうが・・・」
「無理でしょ。数少ない趣味なんだから」

そう、雫は博打好きでしかも必ず分の悪い方に掛けたがる
傾向があるのだが、それでも勝率が七割あるのだから凄い。
事実全国大会の時も博打めいた事を平然とやり、
ベスト十に入ったのだから。

「別に良いだろ」

「まあ、儲け分を部活や私たちに使ってくれてるんだから」

雫は欲が殆んど無い。
お金が入っても友人や私達に使ってくれる。
時々悪乗りする人もいるがそのような人は手痛い一撃を受けてしまうから
大丈夫であるが。

「そういえば」

不意に雫がなにかを思い出したようだが、

「何かあったの」

「うちのクラスに恒例に転校生が来るらしい」

「へぇ、そうなんでs「「えぇ〜〜〜??!!」」ふ、二人共どうしたの?」

い、行き成りに慧、マナの驚きだしたが・・・何故?

「そ、それで!!」

「来ることしか知らん」

「何で知ってるんですか!」

「顧問の先生から」

「「性別は!?」」

「だから知らん」

何故二人は其処まで必死なんだ?

「少しは気付け」

「???」

「まあ、いい。そろそろ始業式だ。体育館に行くぞ」

話をしている合間に時間になり教室には私たちしかいなく、
まあ、始業式と言っても数分で終わるのだろうけど。






















ものの数分で終わった始業式。(本当にいいのかな?)
その後のLHR、其の時は来た。



「知っているとは思うが、転校生が来ている。」

「先生、男ですか!女ですか!?」

「男子は喜べ。女だ」

「「「「「「よっしゃーーーーーーーーーーーー!!!!!」」」」」」
よ、喜び過ぎではないかな・・・

「翡翠」

「はい?」

「頑張れ」

「はい????」

行き成り先生が訳が解らない事を言い、

「そんじゃ、転校生。来てくれ」



その転校生を見た時、感じたのは違和感だった。
太陽みたいな赤に近い茶色い髪を後ろで縛っている姿は
不意に懐かしさを感じた。

が、

あ、あの〜〜慧さん、マナさん?
物凄く怖いんですけど・・・(汗)

その子は先生と何か話してるのだが、
不意に話し終えると真っ直ぐに私に・・・てっ、えぇ!!

ガバッ!!!!



「翡翠!!!」

行き成り抱きついてきた!!

「!!??」←翡翠

「「なっ!!!」」←慧、マナ

「「「「「「なに〜〜〜〜!!!!」」」」」」←男子

「「「「「「えぇ〜〜〜〜!!!!」」」」」」←女子

「・・・ぐう」←雫(爆睡)

「雫、お前凄いな」←担任(呆れ)








「と、言う訳で自己紹介宜しく・・・疲れた」

「えっと、真田癒里香です。宜しく!」

「「「「「「「「「宜しく!!」」」」」」」」

さっきの騒動が嘘のようになく、自己紹介をしているが・・・

「で、真田さん」
「お聞きしたい事が」

この二人から出ている気はなんでしょう・・・怖すぎます。

「少しは気付け」

「??」

やはり解らない。

「?、なんですか?」

「先ず、翡翠さんの関係から」

二つ以上あるの・・・なんかクラス全員が固唾をのんでるような気が・・・・

「えっと、簡単に言えば幼なじみかな・・・翡翠がえっと・・・」

真田さんが何かを言おうしているが、おそらく孤児院の事を言いたいの
だろうが、言って良いのか困っているのだろう。
私は伝わるかどうか解らなかったが、言って良いと合図を出してみた。
すると、伝わったのか、

「翡翠が孤児院に居た頃に出会って、一緒に遊び、練習をしていましたが
ある日突然孤児院から居なくなって、院長さんに聞いたら養子に出たと
聞いたんです。まだ約束を果たしていなかったのに・・・・」

約束?

「それで、去年。此処に翡翠がいると知ったので此方に転校してきたのです。」

「「「「「・・・・・・・・」」」」」

沈黙が続いていた。奇異な目で見られても仕方ないか・・・

「そ・・・」

「?」

「「「「「「「「「そーーーー言う事かーーーーーー!!!!!!」」」」」」」」」

「!?」

「なぜコイツがこんなにも、もてているのは」
「この様な暗い過去があって」
「心を奪っているからかーーー!!!」

何か訳解らないけど

「何か誤解しません!?私は一度も・・・

「「「「「「「「「煩い!!!鈍感野朗!!!」」」」」」」」」

酷い・・・





相当な鈍感みたいだな、主人公くん。
美姫 「これから彼の周りで騒動が起きる予感がするわ」
どんな展開になっていくのか。
美姫 「それでは、この辺で」
ではでは。



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