『時空を越えた超戦士−Remake−』

其之二十 事件解決……そして

 

 キャロ達はバーダックの変化に戸惑っていた。

 大猿に関してはともかく、あのような金色に変身する事は聞いていなかったからだ。

 

「…サイヤ人……どこまでもとんでもない民族だ」

 

「ただでさえ強いのに……あんなにもパワーアップするなんて…」

 

 今までの価値観を今回の事件で根こそぎ破壊されたクロノ達は、しばらく精神的に立ち直れそうになかった。

 そしてキャロはバーダックに向かって駆け出した。

 

「おとうさ〜ん」

 

 そんなキャロに気付いたバーダックは、超サイヤ人から元に戻ると、そのままキャロを迎えようとした……その時。

 

「キャロ!離れろ!!」

 

「動くなバーダック!」

 

 なんとコーンがバーダックに駆け寄ろうとしたキャロを捕らえたのだ。

 

「私かここから離れるまでに動くと、この娘の命はないよ!」

 

 コーンは逃げる為にキャロを人質に取ったのだ。

 

「キャロ!」

 

「しまった……僕の失態だ」

 

 キャロが人質にとられた事にフェイトは動揺し、最後の最後で油断してしまった事をクロノは悔やんでいた。

 

「人質とはな……堕ちたなコーン。テメーの方がサイヤ人の面汚しだな」

 

 自らの命乞いのために人質をとるなど、サイヤ人としてはあるまじき行為である。

 バーダックの息子であるラディッツもかつて人質をとった事があるが、それは言う事を聞かない|弟《カカロット》に言う事を聞かせる為の手段としてであり、戦いの最中その命を盾にした事はなかった。

 これまでのバーダックのコーンに対する評価は、キャーベの部下である以外、それほど悪いモノではなかった。

 あの時、自分を笑い者にした1人ではあるが、その事に対し謝罪すれば、バーダックは許していただろう。

 しかし、この行為がコーンに対する評価を下げる事となった。

「うるさい!このガキの命が惜しければ…ぐはっ!!」

 

 コーンは脅迫の台詞を最後まで言うことは出来なかった。

 バーダックが、一瞬の内にコーンの眼前に移動し、その顔面に拳を叩きつけていたからだ。

 

「馬鹿か!自分の手で確実に救い出せるのに、馬鹿正直に言う事を聞くとでも思ったのか!」

 

 人質を取られても、それが目の前で行われた行為である以上、結果はごらんの通り、コーンがキャロを殺す前に易々と救出が可能である。

 それくらいの実力の開きがあるのであるのだ。

 もし、これがバーダックの手の届かない所で人質に取られたのならば、対応できなかっただろう……。

 つまり、コーンは選択を誤ったのである。

 前にキャーベに進言した通り、バーダックに侘びを入れて許しを請えば、命は助かったであろう。

 エリート戦士はともかく、下級戦士は仲間意識が強いのだから…。

 しかし、コーンはバーダックの超サイヤ人化を見て、その圧倒的な戦闘力を見て恐怖に駆られ、冷静さを失っていた。

 

「ひ…ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 自分を睨むバーダックに震え上がり、そのまま逃亡を謀った。

 そんなコーンにバーダックはため息を吐くと、一瞬で追い付き、その頸に蹴りを入れた。

 

ゴキッ!

 

 コーンは頸の骨を折られ、そのまま絶命した。

 こうして第6管理世界における、『サイヤ人事件』は終わったのだった。

 

「…バーダック…さん」

 

 フェイトはコーンにトドメを刺した後のバーダックの表情を見た。

 何の高揚感もなく、ただ虚しさを感じさせる表情だった。

 フェイト達は知る由もないが、その顔はナメック星においてフリーザを倒した時の|バーダックの息子と同じ表情であった。

 

 ★☆★

 

「バカバカバカバカ!クロノ君のバカ!!」

 

 アースラに帰還したクロノは、自分の補佐であり、婚約者であるエイミィに抱きつかれ、その胸を何度も叩かれていた。

 

「ごめん……エイミィ…」

 

 クロノは何も言い訳せず、エイミィのしたい様にさせていた。

 先ほど、部下を逃がす為とはいえ、エイミィを残して死ぬ事を選んだのだ。

 この部隊の責任者として、自分の命を盾にしてでも部下の命を守ろうとしたクロノが間違っていたわけではない。

 キャロの真竜召喚がなければ、勝つ事が出来なかったのは間違いないのだから。

 しかし、それでも結婚を控えた婚約者を残して、逝こうとしたのはだから文句を言われるのは当たり前だ。

 それにこんなにも自分の身を案じてくれた事も嬉しい。

 

「もう……私を残して逝こうとしないで…」

 

「……ごめん」

 

 クロノはエイミィの懇願に答えず、腕を背中に回して抱きしめた。

 

 

 

 

 

「わぁ…」

 

「…………」

 

「…フッ…」

 

「…いやはや…」

 

 抱き合うクロノとエイミィを見ていた面々がいた。

 通信士シャリオ・フィニーノニ等陸士と、本局管理補佐官グリフィス・ロウラン陸曹長、ブリッジオペレーターのアレックスとランディである。

 

「いいなぁ…私も恋人ほしいなぁ…」

 

「…その為にはまずその性格を直さなくてはな」

 

「いや、シャーリーって結構、エイミィさんと性格似ているぞ」

 

「まあまあ、ここは2人っきりにしておいてやろう」

 

 皆に見られている事に気付いたクロノとエイミィは、真っ赤になりながら体を離した。

 

「あれ?もう終わりですか?」

 

「シャーリー!」

 

 つまらなさそうなシャーリーをグリフィスが嗜めた。

 

「ゴホン……艦長。本局への報告書なんですが……」

 

「ああ。そうだな」

 

 今回のサイヤ人の件をどう本局に報告するか……バカ正直に報告しても信じてもらえるか…。

 クロノは頭が痛くなっていた。

 

 

 

 

 

 結局、クロノの気苦労は徒労に終わる。

 信じられない事に、本局はサイヤ人の件を信じたのだ。

 食堂でバーダック達と食事をしていたクロノは唖然としていた。

 

「信じられない…あの頭の固い本局が…」

 

 魔法史上主義達の巣窟ともいえる本局が、魔法を使わず魔導師を凌駕する存在を信じた事に驚きを隠せなかった。

 

「それがね……ミッド地上に現れた男が原因のようだよ」

 

 エイミィがクロノの疑問に答えると、空間モニターに表示した。

 それは人とは思えない姿をした異形の男。

 

「フ……フリーザ!?」

 

 モニターに映った男を見て、バーダックは顔色を変えた。

 本人ではないが、その男はバーダックにとって、最も憎しみの対象である男。

 惑星ベジータを滅ぼしたフリーザに似ていた。

 先祖であるチルドを倒したとはいえ、バーダックはフリーザに対する恨みを持ち続けている。

 

「この男の名はフローズといって、ミッド地上の108陸士部隊が遭遇した男で、魔法は使えないけど凄まじい力の持ち主で、管理局が不干渉を決めたらしいよ。敵対さえしなければ無害だから…」

 

「なるほど……サイヤ人の様な存在が既に現れていたから、本局もこちらの報告を信じたのか…」

 

 そのフローズという男だけでも厄介なのに、サイヤ人というそれに近い存在が現れたのだ。

 しかも、こちらは管理局に対し敵対行動を起こしてきた。

 本局からすれば、悪夢だっただろう。

 

「とりあえずバーダックさんの事に関しても、本局とは思えないほどの対応だったよ。管理局に敵対さえしなければ、こちらからは何も強制しないそうだよ。無論、ある程度の規則は守ってもらう事になりますけど……ってバーダックさん?」

 

 バーダックはずっとフローズの映像を睨み付けていた。

 

「お父さん…?」

 

「……すまねぇ…」

 

「この男の事を知っているのバーダックさん?」

 

「…………」

 

 フェイトの質問に答えよう口を開けたその時。

 

【艦長!大変です!!】

 

 空間モニターにシャーリーの顔が映し出された。

 

「どうしたシャーリー?」

 

【地上本部に収容していたコーンというサイヤ人の遺体が盗まれました!】

 

「何だと!?」

 

 

 

 

 

 

 結局、捜査の甲斐も無くコーンの遺体を盗んだ者は判明しなかった。

 コーンは完全に生命活動を停止していたので、彼女を復活させる事はできない。

 しかし、何らかの違法研究に使われる可能性が高いので、管理局は捜査が続けることが決定した。

 そして、キャロは約束どおりフェイトが保護責任者となり、召喚士の能力を有効に使える自然保護隊に嘱託として配属された。

 その能力を生かせる事に、キャロはとても喜んでいた。

 バーダックは、基本的には前にいた1世界同様、賞金稼ぎを生業とし、管理局が梃子摺っている次元犯罪者や人に害を及ぼす危険生物を狩る仕事を行っている。

 時折、キャロの下を訪れたり、一人の少年を連れたフェイトの訪問を受けたりしているらしい。

 

 ★☆★

 

「どうだ……スカリエッティ」

 

「素晴らしい素体だよ」

 

 コーンの遺体を盗み出したのは、サイヤ人たちのスポンサーをしていた犯罪組織の人間であった。

 この男は、裏で広域次元犯罪者ジェイル・スカリエッティと繋がっており、スカリエッティが欲するモノを調達することも担っていた。

 

「魔力資質はまるでないが、この肉体自体に宿る|潜在力《ポテンシャル》は、興味深い。人造魔導師の素体には向かないが、いい研究になりそうだよ」

 

 満足そうに頷きながら、遺体ケースに入っているコーンから視線を外し、空間モニターに向ける。

 モニターには大猿と化したサイヤ人キャーベの姿が映っていた。

 

「満月を見て、化け物に変身する…。まるで伝承にある|狼男《ワーウルフ》のようだね」

 

 その躍動感にスカリエッティは目を奪われていた。

 

「しかし、これほどの化け物をあっさりと倒してしまった男も気になります」

 

 目を輝かせているスカリエッティにそう意見するのは、彼を補佐するウーノという名の女性である。

 

「確かにね……あの男に関する情報は?」

 

 スカリエッティはブローカーの男に訪ねるが…。

 

「さあな。キャーベは奴に関しては何も語らなかったからな…。ただ、凄い恨みを持っていたようだよ」

 

「まあ、姿を見るに同族である事はわかるけどね」

 

 キャーベを倒した男にも、彼らと同じ尻尾があるのだから。

 

「今はまだ手が出せない。でも何れ縁があるだろうね」

 


後書き

 

真一郎「こちらへの投稿が遅かったな」

うん。これからはこちらには編ごとに纏めて一括投稿しようと思って

真一郎「この話のスカリエッティは、『時空を越えた黄金の闘士』と違って改心していなんだな?」

話が似過ぎる可能性があるからね

真一郎「次回から悟飯サイドの話になります」

では、これからも私の駄文にお付き合い下さい

真一郎「お願いします」




切り札は大猿へと変身する為の物だったのか。
美姫 「確かにそれで戦闘力が上がるけれど、バーダックには届かなかったわね」
ああ。クロノたち管理局側はかなり危うい状況になったりしたけれどな。
美姫 「本当に管理局サイドは危なかったわね」
キャロの力のお蔭だな。まあ、無事にサイヤ人事件は終わったみたいだし。
美姫 「とは言え、スカリエッティに遺体が渡ったけれどね」
後に大きく影響しそうな感じだが、とりあえずはまあ一段落だな。
美姫 「キャロも自身の力を学べる環境になったしね」
これから先の展開も楽しみです。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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