『時空を越えた超戦士−Remake−』

其之一 The opening(前編)

 

 壮大なるドラゴンボールの物語。

 そしてこの物語には複数の次元の歴史がある。

 

 一つは、悟空が心臓病でこの世を去り、ベジータやピッコロ達が人造人間に殺され、13年後に悟飯まで殺され、最後にトランクスもセルに殺され、Z戦士達が全滅する歴史。

 これを『次元T』と呼称する。

 

 一つは、『次元T』から分岐する、トランクスが過去からの帰還後に見事、17号、18号、そしてセルを倒す事に成功し、平和を取り戻す歴史。

 これを『次元U』と呼称する。

 

 そして最後は、我々が良く知る歴史、セルゲーム、魔人ブウ、ベビー、邪悪龍などの事件が起こる歴史。

 これを『次元V』と呼称する。

 

 これは、それらのどれとも違う歴史……『次元T』から分岐する誰も知らない物語である。

 

 ★☆★

 

 エイジ767年、5月12日。

 孫悟空が心臓病でこの世を去ってから半年後、南の島に2人の人造人間が姿を現し、破壊活動を行い始めた。

 戦士達は立ち上がったが、ピッコロ、ベジータ、ヤムチャ、天津飯、そしてクリリンも、その圧倒的な力の前に次々と殺され、戦士は孫悟飯のみとなってしまった。

 2人の人造人間によって、地球はこの世の地獄と化した。

 それから約一年が過ぎたエイジ768年。

 オレンジスターシティに襲来した人造人間に、第24回天下一武道会のチャンピオン、ミスターサタンが。

 周りから焚き付けられ、また本人も(無知ゆえの)自信を持って挑んだが、実力差は激しくあっさりと殺されてしまった。

 頼みの綱のチャンピオンがあっさりと殺され、大パニックに陥ったオレンジスターシティは、100人にも満たない生存者を残し人造人間達に徹底的に破壊されつくした。

 その中に、サタンの娘も生き残っていた。

 

「…お願い……誰かあいつらを倒して!パパと皆の仇を討って――――!!」

 

 ★☆★

 

 殺されたピッコロ達の仇を討つ為に、Z戦士唯一生き残りである孫悟飯は、修行に明け暮れていた。

 修行中、皆が殺された光景を何度も思い浮かべている内にキレ、悟飯は超サイヤ人に覚醒していた。

 しかし……それでも人造人間には勝てない。

 何故なら、人造人間に殺されたベジータも、超サイヤ人に変身出来る様になっていたが、それでも殺されてしまっていたのだ。

 超サイヤ人に覚醒したとはいえ、まだまだベジータに及ばない悟飯では、人造人間に勝てる見込みはなかった。

 これまでに仲間を殺された恨みや、破壊活動に対する怒りを抑えきれず、何度も人造人間に挑んだが、すべて返り討ちにされた。

 正直、殺されずに済んだのは奇跡に近い。

 

「今はまだ無理だ……でも、いつかか必ず……お前たちを倒す!」

 

 打倒・人造人間を誓い、修行にあけくれていた悟飯だった。

 

「クァー……」

 

「…大丈夫だよハイヤードラゴン……」

 

 そんな悟飯と共にいるのが、親友とも言えるハイヤードラゴンだった。

 父・悟空、師・ピッコロ、そして兄貴分のクリリンなど大切な人たちを喪い、皆の仇を討つ為、自分を心配する母・チチの元を飛び出し、孤独に修行を続ける友を心配したのか、行動を共にしていた。

 ハイヤードラゴンが傍に居てくれることは、悟飯の慰めになっていた。

 

 ★☆★

 

 そんな中のある日のこと…。

 食料調達の為、街に出向いた帰りに悟飯は、エンジントラブルによって墜落したジェットフライヤーと遭遇した。

 助けに向かった悟飯だったが、搭乗していた老人は既に息も絶え絶えだった。

 悟飯は老人に仙豆を食べさせようとしたが、老人のある言葉を残して直ぐに息を引き取った。

 

「…ここより北にあるドクターゲロの研究所……そこにはきっと人造人間の設計図があるはず……なんとかそこに行き……奴等の弱点を……」

 

 老人の言葉に悟飯はハッとなった。

 そう、奴等の力は修行によって得た力ではなく、人造人間として改造された事によって得た力なのだ。

 ならば、老人の言った様に設計図を手に入れ、ブルマかブルマの父親にそれを見せれば、人造人間を倒せるはずだった。

 皆が殺された事により、既に戦う事に対しての抵抗は無くなっている悟飯だったが、それでも純血のサイヤ人の様に、戦いに快楽を求める事はなかった。

 悟飯は、老人を葬った後、ジェットフライヤーの中に残っていたドクターゲロの研究所の所在地のデータを頼りに、現地に向かった。

 この老人との出会いが歴史の分岐点となった。

 

 

 

 

 

 

 研究所に到着した悟飯だったが、既に破壊された後だった。

 しかし、運良く地下への入口を見つけることが出来た。

 地下室は破壊を免れており、コンピュータも稼動していた。

 

「な……なんだこれは……!?」

 

 研究所で悟飯が見た物は、『Cell』と表記された培養カプセルだった。

 そのカプセルには、化け物の胎児の様なモノが培養されていた。

 

「…こいつから微かに感じる気は……お父さん!?」

 

 いや、悟空だけではなく、ピッコロやベジータ……更にはフリーザ親子の気まで混在していた。

 

「…もしこんな奴が完成したら……人造人間以上の脅威になる!」

 

 幸い目当ての設計図はデスクの上に置いてあったので、家捜しする必要はなかった。

 悟飯はこの『Cell』を今の内に処分すべく、気功波を放った。

 培養カプセルは破壊され、培養されていた胎児は悟飯の気功波によって消滅した。

 悟飯は、カプセルだけでなく研究所のコンピュータも破壊した。

 人造人間という悪魔を作り出したドクターゲロへの怒りと恨みを込めて…。

 

「こいつのせいで……俺達は地獄の苦しみを味わったんだ……消えろ―――っ!!」

 

 ★☆★

 

 設計図を手に入れた悟飯は、西の都に向かっていた。

 

「これをブルマさんに見せれば、人造人間の弱点が解かる……ピッコロさん達の仇が討てる…」

 

 希望を見出していた悟飯だったが、直ぐにそれは絶望に変わった。

 

「ほう……まだ生きていたのか孫悟飯……」

 

「な〜んだ……あの時に死ななかったのか?ガキの癖にしぶといね…」

 

 偶然にも人造人間達に遭遇してしまった。

 

「ん……何か持っているな?……ま…まさか!?」

 

 17号は悟飯の持っている紙と悟飯が飛んで来た方向に視線を向け、焦りの表情を浮かべた。

 

「18号!今この場でこいつを殺すぞ!!」

 

「いきなり慌ててどうしたんだい18号?まぁ……こいつを殺すのは別に構わないけどさ…」

 

 普段ならば、戦いをゲームの様に楽しむ17号が直ぐに殺しにかかった事を訝しむ18号だったが、どうでも良くなったのか17号と一緒に悟飯に襲い掛かった。

 悟飯は超サイヤ人に変身し、応戦した。

 

「へぇ〜…アンタもあのベジータって奴の様に金色に変身できるんだ…」

 

「だが奴同様、貴様も俺たちの敵じゃない」

 

 17号の言葉通り、今の悟飯で人造人間の相手にはならなかった。

 前回戦った時よりは奮闘したが、結局ズタボロにされ、倒れ伏した。

 

「さあ、トドメを刺してやるぞ……俺たちの設計図が他の科学者の手に渡れば不味い事になるからな」

 

「…そういうことかい!」

 

 18号も17号が悟飯を直ぐに殺そうとした理由を知り、納得した様だ。

 

「ち……畜生」

 

 17号と18号が悟飯にトドメを刺すべく手にエネルギーを溜め始めた。

 悟飯は倒れ伏した状態で、そんな2人を見て目前に迫る死を感じていた。

 しかしその時……上空から丸いモノが悟飯達のすぐ傍に落下してきた。

 その時に発生した衝撃により、倒れていた悟飯は踏ん張れず吹き飛ばされた。

 

「あれは……まさかフリーザ達の宇宙ポッド!?」

 

  悟飯が子供の頃、悟空の兄であるラディッツに攫われた時に押し込められたサイヤ人やフリーザ一味が使用していた宇宙ポッド『アタックボール』だった。

 そしてアタックボールの搭乗口が開き、中から1人の男が出てきた。

 その男は、黒い髪で上半身裸で、金色のベルト、赤い腰巻に白いズボン。

 ベルトと似たデザインの金色の首飾りとブレスレット、そして靴を身に付けていた。

 そして、何よりも特徴的なのは……尻から生えている茶色い尻尾……。

 その正体は間違いなく、戦闘民族サイヤ人であった。

 しかしその容貌は悟空の様な活発さやベジータやナッパ、ラディッツの様な鋭さが見受けられず、穏やかそうに感じられた。

 

「まさか宇宙人の来訪に立ち会えるとはな」

 

 17号が、宇宙に憧れる少年の様な感慨を見せたが直ぐに残忍な表情に変わった。

 

「けど運が悪かったね……この地球に降り立った事を後悔しな!」

 

 17号の様に宇宙に浪漫を見出さない18号もまた残忍な表情になり、サイヤ人の青年に襲い掛かった。

 様々な攻撃を青年に繰り出し、トドメとばかり蹴りを首側面に叩き込んだが、彼はビクともしていなかった。

 

「な……!?」

 

 17号よりは多少劣るとはいえ、それでも自分の力に絶対の自信を持っていた18号は呆然となった。

 

「何だ……だらしが無いな18号」

 

 そんな18号を17号が嘲笑った。

 そして手本とばかりに、サイヤ人にエネルギー弾をお見舞いする。

 しかし……やはりサイヤ人はビクともせず、悠然と立っていた。

 

「…ならば、これでどうだ!」

 

 プライドを傷付けられた17号はフルパワーのエネルギー波をサイヤ人に放った。

 しかし、それさえも通用しなかった。

 それどころかサイヤ人は17号達等まるで眼中にないとばかりに目を伏せていたのだ。

 

「畜生……舐めやがって!」

 

「やっちゃおう!!」

 

 17号たちの表情に怒りが浮かび、二人掛かりでサイヤ人に襲い掛かる。

 2人の猛攻を受けながらも、なんら痛痒も見せないサイヤ人は、悟飯の顔を一瞥すると初めて反応を見せた。

 その穏やかな表情の眉間に皺が寄り、険のある表情になるとともに叫び声を上げた。

 

「…カカロット……カカロットォォォォォォォォォォォォォォォ!!

 

 叫び声と同時に髪が逆立ち、黒髪が金髪へと変化した。

 

「奴も超サイヤ人に……!?」

 

 悟飯は、悟空やベジータ、そして自分以外に超サイヤ人が居た事に驚愕した。

 超サイヤ人は、襲い掛かってきた17号の腹部に蹴りを18号の顔面に裏拳で反撃し、それを受けた17号は胴体を両断され、18号は頭を粉々にされてしまった。

 倒れ伏した18号の胸ポケットから指先くらいの大きさの青い宝石が零れ落ちた。

 それは、悟飯と遭遇する前に18号が偶然拾ったモノだった。

 流石の人造人間も胴体を真っ二つにされたり、頭を潰されればそれ以上活動することは出来ず、地球を恐怖のどん底に突き落とした2人の悪魔は、それ以上の悪魔の手によってあっさりとした最期を迎えるのだった。

 超サイヤ人は、髪の毛を掴み悟飯を持ち上げるとその顔をまじまじと凝視した……そして…。

 

「カカロット……じゃない!」

 

 悟飯が目当ての人物でなかった事に更なる怒りを発し、悟飯を18号の死骸の傍に叩き付けた。

 

「カカロット……カカロットは何処だぁ―――――!!」

 

 超サイヤ人は、気功弾の乱れ打ちを、破壊活動を始めた。

 

「…や…奴はお父さんと…どんな関係なんだ?……奴から感じる憎悪は尋常じゃない…」

 

 疑問は尽きない。

 しかし、確かな事がある。

 このまま奴を放って置けば、地球どころか宇宙全体が破滅する……という事である。

 何しろ、あの人造人間を一瞬で倒してしまったのだ。

 人造人間達は、地球人を殺す事をゲームの様に楽しみながら行っていたので、直ぐに全滅させようとはしていなかった。

 しかし、目の前の悪魔にとっては、辺境の一惑星に過ぎない。

 地球を破壊しつくしても、まだ他に暴れられる惑星は、文字通り星の数ほどある。

 故に超サイヤ人の伝説通り、一夜で地球は滅ぼされてしまいかねない。

 悟飯は仙豆を食べて、傷と体力を回復させ、再び超サイヤ人に変身した。

 死の淵から蘇る事により力を増すというサイヤ人の体質により、先ほどよりパワーアップは果たした。

 だが、それでもこの悪魔の足下にも及ばないのは解かりきっていた。

 戦っても逃げても待っているのは確実な死。

 絶望の闘いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 結果として、悟飯は為す術もなく敗北した。

 悟飯の攻撃は、超サイヤ人にはまったく通用しなかった。

 人造人間との戦いでは、そこそこは戦えていたが、目の前の超サイヤ人にはまったくダメージを与えることも出来なかったのだ。

 人造人間たちですら一撃で倒した相手に、敵うはずもなく、むしろまだ生きていること自体が奇跡だった。

 悟飯は、何気に結構しぶとい様だ。

 

「クァ―――ッ!」

 

「ハイヤードラゴン……来るなぁ―――ッ!!」

 

 食料の調達をしに行っていつまでも戻らない悟飯を心配したハイヤードラゴンが、この場に現れた。

 悟飯のピンチを知り、悟飯を助けようと急降下するハイヤードラゴンを一瞥した超サイヤ人は、無造作に気功弾を放った。

 

「危ない!」

 

 悟飯は最後の力を振り絞ってハイヤードラゴンに飛び掛かり、気功弾の直撃を避けさせた。

 そのまま地面に転がる。

 

「…無駄な事を……今、楽にしてやる」

 

 地面に倒れた悟飯とハイヤードラゴンに、再び悟飯達に向かって気功弾を放とうと構えたその時……偶然にも18号のポケットから零れ落ちた小さな宝石を踏み砕いた。

 その瞬間、世界そのものが震動した。

 

「な……何だ!?」

 

 今まで、敵が気を放出した時、惑星そのものが震動することがあったが、これはそんな類のモノではなかった。

 震動が治まった時、その場に悟飯達の姿は消え去っていた。

 

つづく……。


後書き

 にじファンを退会する少し前に投稿した作品です。

 バックアップを取らずに退会したので、データが無くなりましたので、思い出しながら追加要素を加え、再執筆しました。

 あちらでの1話と2話を1話に纏めました。

 次話は幕間と3話を纏める予定です。

 とりあえず追加要素として、ハイヤードラゴンを登場させました。

 

 

 

 と、いうわけで……こちらのサイトでは、「神鳥ガルーダ」として初めての投稿になります

 真一郎「なんだ、「黄金の闘士」の方の再開より先にこちらに手を付けたのか?」

 うみゅ。いずれはあっちも再開するつもりだが……どうも意欲が湧かない…なので、聖闘士星矢Ωの放映が終わって、Blu-ray・DVDが出た後くらいになるかな?

 真一郎「とりあえず、今作はどういう話しにするつもりなんだ?」

 ドラゴンボール側のキャラは、この序(The opening)に登場するキャラ以外は、原作・アニメで登場するキャラは一人しかいないな

 真一郎「誰だ?」

 アニメキャラで原作に逆輸入された、私一番のお気に入りキャラだ

 真一郎「ああ、あの人ね……ってお前の事を知らない人にはさっぱりだろうが?」

 いや、逆輸入キャラでドラゴンボール通にはある程度、想像がつくだろうが

 真一郎「まあいい。つまりそのキャラ以外のドラゴンボールのキャラは……」

 ゲームキャラを流用することになる……あと、登場するキャラ達の強さはフリーザ編までのレベルまでのキャラになるよ

 真一郎「人造人間編以降だと、流石にリリカル勢に対抗は不可能だろうからな……フリーザ編も無理っぽそうだけど……」

 では久々に、これからも私の作品にお付き合い下さい

 真一郎「お願いします……君は小宇宙を…」

 だから、それは禁止!

 真一郎「ちっ……じゃあ、絶対見てくれよな!」

 無印じゃなくてZなんだけど……まあいいか…




新作の投稿、ありがとうございます。
美姫 「うちとしても初かしら、ドラゴンボールとのクロスは」
かも。他の戦士たちがいないという状況からか。
美姫 「人造人間は悟飯の手ではないけれど、破壊はされたわね」
これで一応、この世界は安全になったのかな。
美姫 「で、問題は後から来たサイヤ人と悟飯よね」
消えた悟飯たちがこれからどうなっていくのか、かなり楽しみです。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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