『街鼠ジョニーのお話V』
街鼠のジョニーは森に来ていました、そうして色々森の商店街のお店を巡ってお買いものをしていました。
そうして街の家族へのお土産も買っていましたが。
「へえ、そんなものが珍しいんだ」
「そうなんだ、この森にしかないんだ」
森のパブの中で相席となった狐どん、トッドという彼にお話します。見ればジョニーの前には木造りのルービックキューブがあります。
「このキューブは」
「わしの家でもせがれ達が普通に持っているものでね」
狐どんはエールを飲みつつ言います。
「わしも子供の頃はよく遊んだよ」
「この森では誰でも持っているんだね」
「そうだよ、もっと言えばキューブなんて」
そのルービックキューブを見つつ言います、六つのそれぞれの面が奇麗に赤に青、黄色、緑、白、紫と塗られています。
「街にもあるだろうに」
「だから木のものはないんだよ」
ジョニーは言いました。
「プラスチックのものばかりでね」
「ああ、そちらかい」
「そう、そしてね」
「あんたの子供さん達にかい」
「土産としてだよ」
「買ったんだな」
「そうだよ、子供達の数だけね」
一個ではなくというのです。
「買ったよ」
「成程な、わし等には何でもないものでも」
「住むところが違えばだよ」
そうなると、というのです。
「なかったりしてね」
「珍しいんだな」
「そうだよ、いい土産ものになったよ」
狐どんに笑って言います。
「これで気持ちよく帰られるよ」
「街にだな」
「そうだよ、よかったよ」
こんなことを言うのでした、そしてです。
ジョニーは実際に意気揚々と街に帰って子供達に木製のキューブを一個ずつプレゼントしました、すると子供達は珍しいと心から喜びました。
この時ピーターラビットもお家の中でリビングの椅子にキューブで遊んでいましたが。
「お兄ちゃんそれプラスチックよね」
「プラスチックのキューブよね」
「そんなのあるんだ」
「うん、お父さんが持ってるのを借りたんだ」
ピーターラビットは妹達に答えました。
「街にあるのはこっちのキューブらしいよ」
「へえ、そうなの」
「木じゃないの」
「街のキューブは」
「そうなんだ、木のキューブはいつも遊んでるけれど」
キューブの面を合わせながら言います。
「プラスチックのキューブは珍しくてね」
「やっていて楽しいのね」
「珍しい分」
「木のキューブよりも」
「そうだよ、珍しいからその分楽しいよ」
こう言ってでした。
ピーターラビットは街で売られているプラスチックのキューブで遊びました、木のものではないキューブは彼にとってはとても珍しくて楽しいものでした。
街鼠ジョニーのお話V 完
2025・2・26