『ジェルミー=フィッシャーどんのお話』





ジェルミー=フィッシャーどんは今水辺で針鼠のティギー叔母さんとお話をしていました、おばさんはフィッシャーどんに水辺を見ながら言いました。
「フライとはまた違うのよ」
「同じお魚を使ってもだね」
「そう、日本や中国の揚げものはね」
「わしはフィッシュアンドチップスが好きだけれどな」
 フィッシャーどんはおばさんに少し考えるお顔になって言いました。
「フライ以外にも揚げ方はあるんだな」
「そうよ、丁度森の市場にそうしたものを食べさせてくれる居酒屋が出来たから」
「そこに行けば食べられるんだな」
「あんたも行ってみたらどうかしら」
「それは面白そうだ、ちょっと行ってみるよ」
 フィッシャーどんはおばさんの提案にすぐに頷きました、そうしてです。
 実際におばさんに教えてもらった森の居酒屋に行ってみました、するとお店の中はイギリスというより日本の趣のお店で。
 日本の着物みたいな服を着た若い男の白兎の店員さんにです、カウンターの席に着いたうえで言いました。
「天麩羅とか唐揚げとか貰えるかな」
「はい、具は何にしましょう」
「お魚とかでお願いしたいけれど」
「わかりました」
「あとフライもね」
 お酒はエールを注文してでした。
 フィッシャーどんはお料理が来るのを暫く待ちました、そうして調理されて出て来た天麩羅や唐揚げを食べますと。
「おや、違うよ」
「どう違いますか?」
「いや、揚げものなのにね」
 兎の店員さんに食べた瞬間に目を丸くさせてから言うのでした。
「別ものみたいだよ、どちらもこれはこれでね」
「美味しいですか」
「天麩羅をおつゆに漬けて食べると素晴らしいよ」 
 白身魚の天麩羅を食べつつ言います。
「絶品だよ、そして唐揚げをお醤油に漬けて食べても」
「そちらもですね」
「最高だよ、フライもいいけれど」
「どちらも同じ種類のお魚を使っていますよ」
「それでもそれぞれ別ものみたいだよ」
 ケチャップを漬けたフライも食べて言いました。
「同じ揚げたものでもね、エールにも合うし」
「天麩羅も唐揚げもフライもですね」
「全部ね、もう一杯いやどんどん貰うよ」
 エールのジョッキを忽ちのうちに空にして店員さんに言いました。
「どちらも。フライもだけれど病みつきになるよ」
「そうですか、ではエールお持ちしますね」
「お願いするよ」
 こう応えてでした。
 フィッシャーどんはこの日フライだけでなく天麩羅や唐揚げも楽しみました。そして次の日自分からティギーおばさんのお家に行って言いました。
「いや、天麩羅も唐揚げも最高だったよ」
「どれも美味しかったのね」
「凄くね、おばさんの言う通りフライとはまた別のよさがあったよ」
 同じ揚げものでもというのです。
「お陰でエールも美味しかったよ」
「それは何よりね」
「うん、ただつい飲み過ぎてしまって」 
 フィッシャーどんは笑ってこうも言いました。
「今朝は大変だったよ」
「二日酔いになったのね」
「それで食べ過ぎたからウエストのことも気になって」
 このこともあってというのです。
「朝は痛む頭を我慢しながらまずはお家を出てすぐに泳いだよ」
「あんたのお家のすぐ前がお池だしね」
「蛙だからね。しこたま泳いでお水を飲んで」
「二日酔いを解消したのね」
「ウエストの問題もね。けれどそうしたことを差し引いても」
 それでもというのです。
「天麩羅も唐揚げもよかったね」
「お気に入りになったのね」
「うん、また今度飲みに行って」
 そうしてというのです。
「楽しむよ」
「それは何よりね」
「ただこの調子だとその度に」
 お店に行って天麩羅や唐揚げを楽しむ度にというのです。
「どちらもフライと同じくお酒にとても合うからね」
「ついつい飲み過ぎて」
「そして今朝の様にだよ」
「泳ぐことになるわね」
「蛙は皆泳ぐことが大好きだからいいけれどね」
「それでもそうなるわね」
「これはね、しかし本当に美味いよ」
 フィッシャーどんは心からこの言葉を出しました。
「おばさんのお話を聞けてよかったよ」
「二つの美味しい食べものに巡り会えて」
「本当にね。人の話は聞くものだね」
 満面の笑顔で言うフィッシャーどんでした、そうしてです。
 以後も度々そのお店に行って天麩羅や唐揚げをフライと一緒に楽しみました、そして翌朝必ず二日酔い解消とダイエットの為にお家の前のお池で丹念に泳いでお水を沢山飲む様になりました。


ジェレミー=フィッシャーどんのお話   完


                     2023・7・1








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