『ダッチェスのお話V』





 ダッチェスはこの時自分のお家にいました、それで人間のご主人からこんなことを言われていました。
「今日のお散歩は少し遅れるぞ」
「そうなんだ、けれど入れるのならいいや」
 ダッチェスはご主人に言われてこう思っただけでした。
「ご主人にも都合があるだろうしね」
「それまで待っていてくれよ」
「うん、いいよ」
 ダッチェスは自分の言葉で頷きました、そうしてです。
 お散歩の時までお庭に出てそこで丸くなってぐっすりと寝ることにしました、ですがそこにです。
 子猫のトムがとことことやって来てです、寝ているダッチェスさんに声をかけてきました。
「ダッチェスさん寝てるのかな」
「これまで寝てたけれど君の声で起きたよ」
 ダッチェスはトムにお顔を上げて応えました。
「まさか君が来るとは思わなかったよ」
「今日はこの辺りをお散歩しているんだ」
 トムはダッチェスにこう答えました。
「それで通りがかったらね」
「僕がここで寝ていたんだね」
「そうなんだ、お元気そうだね」
「この通りね、僕のお散歩の時まで寝ているつもりだったんだけれど」
「起こしたの?悪いことしたかな」
「別に。大したことじゃないからね」
 ダッチェスの返事は何でもないものでした。
「気にしなくていいよ」
「そうなんだ」
「寝るつもりだったのは他に何をするか思いつかなかったからだし」
「それでなんだ、僕はもう暇さえあったら寝るけれどね」
「それは君が猫だからだよ、猫はよく寝る生きものだからね」 
 それでというのです。
「君もだよ」
「よく寝るんだ」
「そうだよ、それで君もお散歩の後寝るね」
「絶対にそうするよ」
 トムはダッチェスに右の前足を挙げて笑顔で答えました。
「そうじゃないとね」
「君達はいてもたってもいられないね」
「寝る時間が最高だし寝ることが大好きだからね」
 それでというのです。
「寝るよ」
「そうだね、じゃあね」
「それならだね」
「今はお散歩を楽しんで」
「後で寝ることを楽しむね」
「そうするよ」
「それなら僕もそうするよ」
 ダッチェスは笑って言いました。
「お散歩の後でね」
「寝るんだ」
「ご飯を食べてからね」
「そうそう、ご飯のことを忘れていたよ」
 トムはここでご飯のことを思い出しました。
「お散歩が終わったらね」
「君のご主人からだね」
「いや、人間の使用人さんからだよ」 
 トムから見ればそうなのです、彼と彼の家族にとって人間の飼い主の人達は自分達のお世話をする使用人さん達なのです。
「ご飯を貰うよ」
「君の家では使用人なんだ」
「そうだよ、それからね」
「寝るんだね」
「そうするよ」
「じゃあ君もそうして」
 ダッチェスはトムに応えて言いました。
「僕もね」
「そうするんだね」
「お互いね、ただ僕はお散歩はご主人と一緒で」 
 それでというのだ。
「ご主人からね」
「ご飯を貰うんだね」
「そうするよ、何か僕がご主人で君が使用人さんなのはね」
「犬さん達はご主人って言ってね」
「猫君達は使用人さんって言うね」
「何か人間の家族の人達への捉え方が違うね」
「そうだね、種類が違うとね」 
 生きもののそれがというのです。
「捉え方も違うね」
「そこが面白いね」
「ダッチェス行こうか」
 お話が一段落したところで丁度いい具合にでした。
 ダッチェスのご主人がお庭にリードを持ってやって来ました、それを受けてダッチェスはです。
 ピンと起き上がって尻尾を左右にパタパタと振ってです。
 ご主人のところに向かいました、そしてリードを付けてもらってからトムに言いました。
「じゃあ行って来るね」
「うん、僕はお散歩続けてお家に帰るね」
「そうするんだね、じゃあまたね」
「うん、お話しようね」
 二匹は明るくお話してそうしてでした。
 今はお別れしました、ダッチェスはご主人とのお散歩に入りトムは自分のお散歩を再開しました。そうしてそれぞれの道を歩くのでした。


ダッチェスのお話V   完


                2022・12・28








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