『バウンサーさんのお話U』





 バウンサーさんは奥さんに頭が上がりません、それで兄弟であるピーターラビットのお父さんにもぼやくのでした。
 お二人は今森のパブで飲んでいます、並んで一緒にカウンターの席に座ってスコッチをロックで飲んでいます。そうしながら言うのでした。
「兄弟、わしはどうしてもだよ」
「奥さんに逆らないんだな」
「そうなんだよ」
「兄弟は相変わらずだな」
 ピーターラビットのお父さんは飲みながら言いました。
「奥さんにはだな」
「ああ、全くな」
 バウンサーさんも飲みながら言います。
「頭が上がらないんだよ」
「そっちの奥さんは相変わらず強いか」
「わしが何か言ったらだよ」 
 そうしたらというのです。
「何倍にも返ってくるんだよ」
「二倍三倍か」
「五倍位にだよ、だからだよ」
 それでというのです。
「わしは言えなくて」
「頭も上がらないか」
「完全に尻に敷かれているよ」
 自分から言うのでした。
「そうなっているよ」
「結婚してからずっとだな」
「そうだよ、兄弟のところもかい?」
「当たり前だよ、かみさんに逆らえる亭主がいるか」
 ピーターラビットのお父さんはこう返しました。
「それこそ」
「そういうことだな」
「わしも同じだよ」
「あの奥さんに逆らえないか」
「全くな、しかし兄弟のところはな」
「特にだな」
「凄いみたいだな」 
 こうバウンサーさんに言いました。
「どうも」
「そうだよ、だからな」
「今日はこうしてだな」
「兄弟と一緒に飲みながらな」
「愚痴っているんだな」
「そうだよ、他の兄弟にもそうしているが」
 それでもというのです。
「やっぱり兄弟とはな」
「特にか」
「子供の頃から気が合うしな」
「愚痴るんだな」
「嫌なら断わるか聞き流してくれ」
「いいさ、兄弟とは生まれた頃からの付き合いだ」 
 ピーターラビットのお父さんは笑って応えました。
「だから気にするな」
「そう言ってくれるか」
「ああ、じゃあな」
「今日はか」
「溜まっているものを吐き出せ、一緒に飲みながらな」
「そうさせてもらうな」 
 バウンサーさんは兄弟の中で一番親しいピーターラビットのお父さんの言葉に笑顔で頷いてでした。
 溜まっている気持ちを吐き出しました、ピーターラビットのお父さんもそうしてです。
 二人で飲んで愚痴を出し合いました、そしてお店を出てです。
「またな」
「ああ、また飲もうな」 
 その入り口でお別れをしました、そうしてそれぞれのお家に帰ったのですがバウンサーさんはお家に帰るとです。
 奥さんにです、お水を出されて言われました。
「さあ、飲んでね」
「悪いな」
「いいわ、それでお水を飲んだらね」
 奥さんはご主人にさらにお話しました。
「今日はゆっくり寝てね」
「そうしていいか」
「それで明日の朝二日酔いなら」 
 それならというのです。
「シャワーを浴びてね」
「そうしてすっきりしてか」
「お仕事に行ってね」
「そうしていいか」
「いいわ、一人で寝室に行ける?」
 差し出されたコップの中のお水を飲み終えたご主人に尋ねました。
「大丈夫?」
「大丈夫だよ、じゃあ今日はこれで」
「ええ、お休みしてね」
「そうさせてもらうよ」
「そうしてね」 
 奥さんはご主人からコップを受け取るとそれを台所に置いてでした。
 ご主人が何かあった時にフォローする為に寝室に向かうまでそっと寄り添ってでした。
 ベッドに入ったご主人のお身体にそっと毛布をかけてあげました、そして次の日ご主人がシャワーを浴びて朝ご飯を食べてお仕事に行ってからピーターラビットのお母さんと市場で一緒にお買いものをしつつお話しました。
「旦那様は片目を瞑って」
「多少のことは許してあげてね」
「それでそっと支える」
「そうしないと駄目よね」
「黙ってね」 
 そうお話するのでした、それぞれのご主人がパブで飲んで愚痴を言い合った次の日のお話でした。


バウンサーさんのお話U   完


                   2022・2・27








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