『ハンカ=マンカのお話U』





 ハンカ=マンカはこの時ご主人のサムエルと一緒に市場に行こうとしていました、ですがサムエルはどうも乗り気でありません。
「わしは行かなくてもいいだろ」
「それじゃあ荷物は誰が持つのよ」
 奥さんは嫌そうなご主人に言いました。
「一体」
「そんなのお前が持てばいいだろ」
「私一人で家族の食材全部持てっていうの?」
「それ位出来るだろ」
「家族全員の一週間分よ」
 奥さんはご主人に今度は怒って言いました。
「それを全部持てっていうの?」
「持てないか」
「一人では絶対に無理よ。だから言ってるのよ」
「それなら毎日か一日おきに買いに行けばいいだろう?何で一週間分を一度に買うんだ」
「来週は何かと忙しいからよ。若し一緒に行かないのなら来週食べるものはなくなるわよ」
「仕方ないな」
 ご主人も渋々ながら折れました、そうしてです。
 二人で市場に行って買いものに行きました、するとご主人はそこでピーターラビットのお父さんに会いました。ご主人はすぐにお父さんに尋ねました。
「おや、今日はどうしてここに」
「いえ、妻の付き添いで」
 お父さんはご主人に答えました。
「それでなんです」
「ああ、わしと一緒ですか」
 ご主人はそのお話を聞いてそれはと頷きました。
「奥さんに荷物持ちとして」
「はい、無理にです」
「市場に連れて行かれましたか」
「そうなんですよ」
「一緒ですな」
 そこはというのです。
「本当に」
「いや、折角の休日で休めると思ったら」
「女房にそう言われて」
「大変ですね」
「全くです」
「荷物持ちで連れて来られて」
「しかも嫌だとか言ったらご飯なしですから」
 困ったとお話するご主人達でした、ですがここで奥さんがご主人に言いました。
「八百屋で買ったもの持って」
「おっと、これで」
「はい、また」
 ご主人は奥さんのところに行ってピーターラビットのお父さんも奥さんに言われてそちらに行きました。
 奥さんは沢山のお野菜を買っています、ですがまだ言うのでした。
「あとはナッツとチーズを買うわ」
「こんなに買ったのにまだ買うのかい?」
 ご主人は山の様なお野菜や果物を自分が背負っているリュックに入れて応えました。
「他にも」
「そうよ、油も買うわよ」
「油もなんだ」
「調味料もね。スパイスもよ」
「何でも買うんだな」
「一週間分よ。それに市場に来たから色々買わないと」
「食べものだけじゃないのか」
 ご主人はたまりかねた様に言いました。
「他にも買うのか」
「子供達の文房具も買わないと」
「そんなの何時でもいいだろ」
「買とうと思った時に買わないと忘れるでしょ」
 奥さんはぴしゃりと言い返しました。
「だからよ」
「それでなのか」
「買えるものはもう全部買うわ、だから後ろについてきてね」
「やれやれだな」
 ご主人は思わずぼやいてしまいました、そうしてです。 
 奥さんについて行ってナッツもチーズも油も調味料もスパイスも背負ってです。
 他には子供達の文房具に雑貨も買いました、背負いきれなくて両手にもそれぞれ持ちます。そうして奥さんのお買いものが終わってです。
 奥さんに連れられてお家まで帰りました、ご主人はお家に帰ると荷物を置いてへたれ込みました。
「やれやれ、やっと終わった」
「お疲れ様、お茶を淹れるわね」
「ああ、しかし本当に多いな」
 ご主人は奥さんがお茶を淹れてくれる間に自分が背負い持って来た荷物を見て思わず言いました。
「全く、骨が折れたよ」
「一週間分だからね、それに他にも必要なものも色々買ったし」
「そのことは聞いたが本当に多いな」
「だから来週は忙しいから」
「買いものに行けないからな」
「今日のうちに買ったの。これで来週は大丈夫よ」
「それならいいけれどな」
 奥さんからお茶、ミルクティーを受け取りつつ応えました。
「じゃあ今日はもうこれで休むぞ」
「そうしてね。私は後はお昼作って洗濯物を入れて畳んでお風呂の用意をして晩ご飯も作るわね」
「あれだけ動いてまだ働くのか」
「当然でしょ。毎日してるからね」
「やれやれだな」
「私もお茶を飲んで」
 見れば奥さんのミルクティーが入ったカップを手にしています、今から飲むつもりです。
「そうしてからまた働くわ」
「主婦も大変だな」
「これでね。子供達の勉強も見ないとね」
「わしは自分の仕事で手が一杯だ」
「何言ってるの、また何かあったら手伝ってもらうわよ」
「もう休日位はゆっくりさせてくれ」
 ご主人はお茶を飲みながらたまりかねて言いました、そうしてでした。 
 お茶を飲んだ後はお昼寝を楽しみました、ですがその横ではです。
 奥さんはせっせせっせと文字通り独楽鼠の様に働いていました、お買いものが終わっても奥さんのやらなければいけないお仕事は沢山あるのでした。


ハンカ=マンカのお話U   完


                    2021・6・30








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