『街鼠ジョニーのお話U』





 街鼠のジョニーはまた森に来ました、そしてすっかり馴染みになっているチミー=ウィリーのお家に来てです。
 お土産の都会のチーズを出しながらチミーにこんなことを言いました。
「実はここで観たいところがあってね」
「それで来たんだ」
「うん、何か日本という国から来た人のお家がこの辺りにあると聞いたんだ」
「ああ、あの不思議な家だね」
 チミーはジョニーのその言葉に頷いて応えました。
「あのお家なら僕も知ってるよ」
「ああ、君も知っているだ」
「何回か言ったことがあるよ」
「一体どんなお家かな」
 ジョニーはチミーに身を乗り出して尋ねました。
「それで」
「この近くの狸さんのお家だよ」
「狸さん?」
「うん、日本にいる生きもので穴熊さんにそっくりの恰好なんだ」
「ふうん、穴熊さんになんだ」
「本当にそっくりでちょっと見ただけじゃわからないよ」
 こうジョニーにお話しました。
「本当にそっくりだから」
「そこまでなんだ」
「うん、それでその狸さんのお家がね」
「日本のお家だね」
「僕も何度かお邪魔したことがあるよ」
「そうなんだ、それじゃあ僕も案内してくれるかな」
 ジョニーは身を乗り出したままチミーに申し出ました。
「それで」
「行きたいんだね」
「うん、駄目かな」
「いいよ」
 チミーの返事はすぐにでした。
「それじゃあ今からね」
「うん、行こうね」
「そうしようね」
「今からね」 
 二匹でこうお話してでした。
 そのうえでチミーのお家を出てそれからでした。
 一緒に狸さんのお家に向かいました、するとそこは木の幹の下にある穴でチミーは穴の入り口で中に向けて尋ねました。
「狸さんいる?」
「その声はチミー君かな」
「うん、僕のお友達が狸さんのお家見たいって言ってるけれど」
「いいよ」
 声の主がこう答えてきました。
「それじゃあね」
「うん、今から行くよ」
 こう声に答えてでした、そうして。
 チミーはジョニーを穴の中に案内しました、そして穴の中の一部に案内しますと。
 草で造った床に木の柱、木の家具に陶器にです。
 イギリスのものとは違うゆったりとしていてボタンを使っていない服を着た本当に穴熊そっくりの人が平たいクッションの様のものの上に座っていました。ジョニーにとってはとても不思議なお部屋の中に不思議な家具があって。
 不思議な服でした、ジョニーはその全てを見回して唖然となって言いました。
「こんなお部屋はじめて観たよ」
「僕も最初観た時そう思ったよ」
 チミーはジョニーに応えました。
「都会でもこんなお家はないんだね」
「僕の知る限りだとね」
「そうなんだね」
「何か異次元にいるみたいだよ」
「別の世界にいるみたいだね」
「本当にね」
「ははは、日本のお家はこうなんだよ」
 その平たいクッションの様な場所に座っている生きものが言ってきました。
「イギリスのお家とは全然違ってね」
「それで貴方が狸さんかな」
「そうだよ、今は穴熊君のお家に同居してね」
「それでこうしてなんだ」
「わしの家の部分は日本のものにしているんだ」
「そうして住んでいるんだ」
「如何にも。ではこれから日本のことを話すよ」
 狸はこう言って二匹の鼠達を自分の傍に寄せて日本のお菓子であるお煎餅に日本のお茶を出して日本という国だけでなく自分の周りのものもお話しました。
 そしてその後でこう言いました。
「こうした国なんだ」
「聞けば聞く程面白い国だね」
 ジョニーもお話を聞き終えて目を丸くしています。
「それはまた」
「ははは、不思議かな」
「僕はそう思ったよ」
「成程ね、しかしそうした国があることをね」
 このことをというのです。
「頭に入れておいてくれるかな」
「不思議じゃなくてだね」
「こうした国がね」
「そうなんだね」
「そうだよ、それでお煎餅はどうかな」
 狸は今食べているそちらについて尋ねました。
「気に入ってくれたかな」
「固くて食べがいがあっていいね」
 ジョニーはお煎餅をカリカリと食べながら答えました。
「これはまた」
「これがお煎餅なんだ、クッキーやビスケットもいいけれどこれも美味しいよね」
 チミーはジョニーの隣でお煎餅を食べつつ言ってきました。
「そうだよね」
「うん、僕気に入ったよ。街にもこんなものがあればね」
「そう思うんだ」
「物凄く美味しいからね。それで狸さん」
 ジョニーは狸に自分から言いました。
「またこの森に来た時はその時もお煎餅をご馳走になっていいかな」
「いいとも。じゃあまた君がここに来たらね」
「その時はだね」
「お煎餅を食べるといいよ」
「じゃあそうするね。その時はね」 
 チミーにもお顔を向けて言いました。
「また一緒にね」
「うん、お煎餅を食べようね」
「そうしようね」 
 二匹で楽しくお話しました、狸はそんな彼等を見て笑顔になりました。そしてお煎餅の後は同居している穴熊のトミーが帰って来た時に四匹で日本のお風呂に入りました。木の浴槽と床と壁のお風呂はとても気持ちよくてジョニーはまた喜びました。そうして狸と別れてお家に帰る時にジョニーはチミーに言いました。
「また一緒にお邪魔しようね」
「そうしようね」 
 二匹で仲良くお話しました、そのうえで今度はチミーのお家で楽しくお喋りをして森にいる時間を満喫しました。


街鼠のジョニーのお話U   完


                 2021・2・3








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