『カルアシ=チミーの夫婦のお話』





 カルアシ=チミーと奥さんのカルアシ=カアチャンの夫婦は栗鼠です、栗鼠は冬眠することが習慣ですが。
 この冬眠が近付いている秋のある日です、チミーは奥さんに言いました。
「もう島民の準備をはじめているがな」
「だからベッドの用意もしてね」
 奥さんもこう答えます。
「それでご飯もね」
「沢山家の中に入れているがな」
「まだまだ足りないわよ」
「ああ、ドングリにクルミにな」
「他にも色々木の実を入れてるけれど」
「まだまだ足りないな」
「だからここはね」
 それこそとです、奥さんはご主人に言うのでした。
「もっと木の実を揃えないと」
「そうだよな」
「さもないと冬眠出来ないわよ」
「それはわしもわかってるさ、しかしな」
「それでもなのね」
「これといってな」
 それこそとです、ご主人は奥さんに困ったお顔で言うのでした。
「今の時点じゃな」
「これ位しかなのね」
「集まってないさ、明日は森の別の場所に行ってな」
 そうしてというのです。
「木の実を集めてくるからな」
「だから焦るなっていうのね」
「まだいいだろ、だったらな」
「それじゃあね」
「明日また木の実を持って来るな」
「木の実がなかったら麦でもいいのよ」
 こちらでもとです、奥さんはご主人にお話しました。
「それならね」
「麦か」
「そう、私達が美味しく食べられるなら」
「それならいいか」
「だからよかったらね」
「木の実以外にもか」
「食べられるものを見付けてきてね、やっぱり早いうちに必要なだけ揃ったら」 
 そうなればというのです。
「早いうちに安心出来るから」
「いいか」
「そう、だからね」
「早いうちにか」
「冬の間食べられるものを揃えてね」
 こうご主人に言ってでした、奥さんはこの日はご主人と一緒に冬眠の間食べられるものを集めに行きました。
 拾った木の実はそれこそ持てるだけ持ってお家の中に入れます、ですが奥さんは何度もお家の中に入れても言うのでした。
「まだよ」
「まだ足りないか」
「ええ、ドングリもクルミもね」
「これでも足りないか」
「まだよ、こうなったらマクレガーさんのお家に行って」
 人間の農家のこの人のというのです。
「麦で捨てているものを拾って」
「そうしてか」
「蓄えようかしら」
「あそこの犬は吠えるから嫌いなんだけれどな」
「それでマクレガーさんも私達を見たら追いかけてくるから」
「ピーターラビットのお父さんなんか何度も危ない目に遭ってるだろ」
 ご夫婦が親しくお付き合いしている兎の一家のご主人はというのです。
「だからわし等もな」
「マクレガーさんに警戒されているからなのね」
「あまり行かない方がいいだろ」
「そう言うのね」
「ああ、あの人のお家は止めた方がいいぞ」
「そうなのね」
「麦を手に入れるにしてもな」
 こう奥さんに言うのでした。
「他の場所に行った方がいいぞ」
「その方が安全ね」
「絶対にな」
「それじゃあ何処に行こうかしら」
「そうだな、最近日本から来たっていう人がお米を作ってるだろ」
「あの浅いお池の中に稲が沢山生えている場所ね」
「あそこに行ってな」
 そうしてというのです。
「お米を手に入れるか?」
「そうするのね」
「あそこには犬もいないし人間もあまり警戒していないしな」
「だったらなのね」
「あそこに行ってお米を拾えそうなら拾うか」
「それじゃあね」 
 奥さんも頷いてでした、そのうえで。
 実際にお二人で水田のところに行きました、するともう水田は稲を全部刈り取ってしまっていて田んぼの中にお水もありません、休ませてある畑みたいになっています。
 ご夫婦はその中を歩き回って収穫している際に落ちたかどうも人間から見れば質が悪いせいか捨てられているお米を拾いました、その量に奥さんは驚きました。
「麦よりずっと多いわね」
「うん、お米の量はね」
「こんなに多いとね」
「冬を越せるだけはね」
「集まりそうね」
「わし等どころかだよ」
「他の栗鼠の家族にも教えてあげてね」
「皆で冬眠しよう」
 心配なく、というのです。そうしたお話をしてそのうえででした。
 二匹でお米をたっぷりと拾ってお家に帰ろうとしましたがふとです。
 倉庫の端のゴミから硬くて丸い白いものを見付けてまた二匹でお話しました。
「色や匂いからお米を集めて練ったりしたものだな」
「そうね、焼く前のパンやチーズみたいなものかしらね」
「だったらこれも保存が利くな」
「冬眠の間も食べられそうね」
「じゃあ後でこれ貰いに行くか」
「そうしましょう」
 こうして一旦お米をお家に入れてからです、二匹でそのお米を集めて練ったみたいなものもお家に持って帰りました、そうして冬眠の間木の実やお米だけでなくそちらも食べてみますと。
「美味しいな」
「そうね」
「じゃあ今度の冬眠の時はな」
「これも拾いましょう」
 こうお話しながら食べるのでした、二匹は冬眠が開けてからもの尻のバウンサーさんにこのお米から作った白い塊がお餅というものだと知りました、そしてそのお餅を来年の冬眠の時も一緒に食べようと笑ってお話するのでした。


カルアシ=チミーの夫婦のお話   完


               2019・2・3








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