『ケップのお話』




 コリー犬のケップは家鴨のジマイマと同じ家に住んでいます。
それで仲もよくて毎日時間があればお話をしていますが。
 ジマイマはケップにです、ある日の朝こんなことを言いました。
「貴方最近太ってきてないかしら」
「そうかな」
「ええ、そう思うわ」
「ううん、そういえば最近よく食べるね」
 ケップは自分の犬小屋の中からお顔を出してジマイマとお話をしています。
「御飯が美味しくて」
「お肉が、なのね」
「そうそう、うちは豚肉が多いけれど」
 その豚肉がというのです。
「最近質がよくなったのかね」
「どんどん食べて」
「太ったかも知れないね」
「太り過ぎはよくないわよ」
 ジマイマはケップにこのことを言うのでした。
「やっぱりね」
「そうだよね、どんな生きものでもね」
「肥満は大敵よ」
 まさにというのです。
「だから気をつけてね」
「わかったよ、じゃあお散歩の時に今以上に動く様にするよ」
「というか貴方一日二回一時間半ずつ歩いてるわね」
「ご主人と一緒にね」
「じゃあ充分かしらね」
「運動の量は」
「そう思うけれど」
 こうお話するのでした、
「そちらはね」
「じゃあ食べ過ぎをどうにかすべきかな」
「そう思ったけれど」
「ううん、ついつい美味しくてね」
「食べてしまうのね」
「最近ね」
「そこを我慢しないと」
 ジマイマはケップに注意する様に言いました。
「太ったままよ」
「我慢だね」
「そう、出されたものを食べてさらに催促してもらってるでしょ」
 最近のケップはというのです。
「それがよくないのよ」
「食べたらそれで終わって」
「我慢するの」
「一日二回の食事を」
「あとおやつも食べてるけれど」
 ケップは基本食いしん坊です、それでご主人もそんな彼に応えて御飯だけでなくおやつもあげているのです。
「それもかな」
「ちょっと控えたら?」
「おやつもいつも催促しているけれど」
「そう、一回でよ」
 食べるにしてもというのです。
「我慢してね」
「それでなんだ」
「食事を控えたらと思うけれど」
「そうだね、今は春だし」
「秋だったらどんどん食べてね」
「脂肪を蓄えて冬に備えるべきだけれど」
「今は春よ」
 その冬が終わったというのです。
「だからね」
「食べ過ぎを止めてだね」
「ダイエットをするべきよ」
「わかったよ、じゃあ今日からね」
「おかわりの催促をしない」
「そうするよ」
 ケップは決めました、そうしてジマイマにも約束してです。御飯やおやつを食べても催促はしないようにしました。
 するとです、普段からよく歩いているので。
「もう結構ね」
「痩せだしてる?」
「そうなってきたわね」
 ジマイマは今は犬小屋から身体を出して立っているケップに言いました
「いいことよ」
「うん、ただね」
「ただ?」
「お腹は空いてるよ」
 このことを言うのでした。
「これまではいつもお腹一杯だったけれど」
「それがなのね」
「食べて暫くしたらお腹が空いてくるよ」
「それはあれよ」
「食べる量が減ったからだね」
「そうよ、けれどいいことよ」
 ジマイマはここまで聞いてケップに言いました。
「それはね」
「ダイエットをしていることだから」
「それでいいのよ」
「そういうことなんだ」
「ええ、じゃあこのまま食事の量を減らしていって」
 そうしてというのです。
「どんどん痩せていってね」
「それじゃあね」
 ケップはジマイマの言葉に頷いてでした、そのまま食事の量を自分から控えていきました。そうして見る見るうちに痩せましたが。
 ご主人はそのケップを見てです、奥さんと一緒にこんなことを言いました。
「最近ケップ痩せたな」
「あまり食べなくなったのよね」
「そうだな、おかわりをしなくなった」
「御飯もおやつも」
「病気かな」
「そうかも知れないわね」
 夫婦で犬小屋からお顔だけ出して気持ちよく寝ているケップを見てそのうえでお話をするのでした。
「これは」
「一度病院に連れて行くか?」
「そうする?」
 こんなことをお話していました、この時ケップは気持ちよく寝ていましたがジマイマは起きていて聞いていました。
 それでご主人と奥さんがケップの前から立ち去ってからです、ケップのところに行って彼を起こして二人のお話のことを言いました。
 お話を聞くとです、ケップは困ったお顔で言いました。
「えっ、僕病院嫌いだよ」
「私もよ」
 病院が好きな生きものはいません、このことは種類を越えています。
「あんなところ行きたくないわ」
「そうだよ、本当にね」
「痩せて心配されてるのよ」
「ダイエットしてるのに」
「何処か悪くて食べていないんじゃないかってね」
「そう言ってたんだね、ご主人達」
「そうだったの」
 こうケップにお話します。
「これがね」
「困ったな、どうしたものかな」
「ここはおかわりするしかないかも」
「ダイエットなのに?」
「だからダイエットが病気って思われてるからよ」
 だからというのです。
「もうね」
「痩せることは止めて」
「食べた方がいいかも知れないわ」
「折角我慢してるのに」
「けれどその我慢のせいで病院に行きたい?」
「絶対に行きたくないよ」
 それこそと答えたケップでした。
「嫌いだから」
「そう、私も同じよ」
 またこのことをお話する二匹でした。
「だから貴方にも勧めないわ」
「病院に行くことは」
「絶対にね」
「じゃあどうしたものかな」
「もうこれはダイエットを止めるべきよ」
「君が勧めたけれど」
「それでも貴方が病院に行かない為によ」
 ここはというのです。
「もうね」
「おかわりをするべきだね」
「そうして食べましょう」
「わかったわ、じゃあそうするね」
「そういうことでね」
 こうしてでした、ケップはまた食べる様になりました。朝と夕方の御飯もおやつもおかわりをしてでした。
 どんどん食べる様になりました、するとその彼を見てご主人と奥さんは安心した顔になってお話するのでした。
「また食べだしたな」
「そうね」
「あまり食べなくなってどうかって思ったけれど」
「これなら心配いらないわね」
「病院にも連れて行かなくていいな」
「安心ね」 
 こうお話します、そしてケップを病院に連れて行くことはなくなりました。ケップは今度は起きているのでお話を聞いて安心しました。 
 そしてジマイマが犬小屋の方に来た時に笑顔で言いました。
「病院には連れて行かないそうだよ」
「それはよかったわね」
「うん、君のお話を聞いてびっくりしたけれど」
「これで難を逃れたわね」
「本当によかったよ」
 笑顔で言うケップでした。
「病院に行かなくなってね」
「そうね、けれどね」
「けれど」
「いや、不思議ね」
 ここでこんなことを言ったジマイマでした。
「私痩せた方がいいって言ったわね」
「確かにね」
「貴方が太ったって思ったから」
「太ることはよくないから」
「だからそう言ったけれど」 
「ご主人と奥さんから見るとね」
「痩せてきて病気じゃないかっていうから」
 ジマイマは首を傾げさせつつケップに言いました。
「不思議ね」
「そうだね、痩せた方がいいよね」
「ケップもそう思うわね」
「ご主人達もいつも太った、よくないって言ってるし」
「私もお二人のやり取りから思ったの」
 痩せた方がいい、太っては駄目とです。
「それが違うから」
「不思議だよね」
「本当にそうよ、訳がわからないわ」
「太るのも痩せるのも駄目?」
「どちらもね」
「じゃあ真ん中がいいのかな」
「真ん中でいることは」
 それこそと言ったジマイマでした。
「凄く難しいわよ」
「すぐに痩せたり太ったりするからね」
「そうよ、だからね」
 まさにそのせいでというのです。
「それは凄く難しいわ」
「いや、今回でそう思ったね」
「全くよ、私もかしらね」
「ジマイマも太った?」
「自覚はしてるわ」
「そうなんだ」
「これでもね」
 こうケップに答えます。
「太ってきたわね」
「痩せる?」
「まさか、普通位までにね」
 あくまでその程度にというのです。
「しておくわ」
「それが難しいって今話したけれど」
「だからある程よ」
 それ位だというのです。
「それで止めておくわ」
「病院に連れて行かれない為に」
「そう、まさにその為にね」 
「じゃあ今のままでもいいかな」
「今だと太ってるわよ」 
「何か難しいね」
「本当にそうね」
「何かとね」
 太っている、痩せている、このことについて心から思う二匹でした。病院に連れて行かれたくはないですが太りたくもないのです。
 ですがここでジマイマはふと気付いて言いました。
「適度に太っているか痩せているか」
「それでもいいかな」
「じゃあ私はこれでもいいかしら」
「そうかもね」 
 ケップはジマイマの言葉に応えました、ですが結局二匹の間で答えは出ないままでお話も何となく終わったのでした。


ケップのお話   完


                       2016・11・11



ダイエットをしてたはずなのに。
美姫 「病気かと思われてしまったのね」
面白い話だな。
美姫 「病院に行きたくはないでしょうけれどね」
今回も楽しませてもらいました。
美姫 「投稿ありがとうございました」



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