『オズのヘンリーおじさん』




                第八幕  外見が悪くても

 一行は市場にも足を運びました、そのうえで市場にある色々なものを観てそれから街の名所の一つ魚市場に行きましたが。
 そこにある様々な魚介類を見てです、おじさんもおばさんも驚きました。
「いや、これはまたな」
「色々なお魚があるわね」
「凄くな」
「そうよね」
「ここに来てもう色々食べてるが」 
 おじさんはそれでもと言いました。
「ここにある魚介類は」
「本当に多いわね」
「海のものも川のものもな」
「本当にね」
「また変わったお魚があるな」
 おじさんはオコゼを見て言いました。
「これは食べられるのかい?」
「あの、鮟鱇っていうお魚は美味しいのかしら」
 おばさんはそちらのお魚を見ています。
「果たして」
「どちらも凄く美味しいのよ」  
 ドロシーがお二人ににこりと笑って答えました。
「これがね」
「そうなのか」
「美味しいのね、どちらも」
「そう、あとこの海鼠もね」
 ドロシーはこの生きものも見てお話しました。
「凄く美味しいのよ」
「こんなものが食べられるのか」
「そうなのね」
「今日のお昼は鮟鱇鍋にオコゼの揚げものに」
 早速言うドロシーでした。
「海鼠の切り身がいいかしら」
「それにシーフードサラダね」
 オズマも言ってきました。
「海草もいいのばかりだし」
「そうね、お野菜も食べたいしね」
「シーフードサラダもね」
「注文しましょう」
「そうしましょう」
「海草のサラダなんてものもあるから」
 おじさんは今度は唸って言いました。
「本当に驚くことばかりだよ」
「けれどこれがこの街では普通でね」
「皆魚介類をふんだんに食べているんだな」
「そうよ」
 その通りだというのです。
「この街だけじゃなくてね」
「オズの国全体がか」
「そうよ、夜はもう思い切って」
 それでというのです。
「色々なお魚や貝のお刺身とカルパッチョの盛り合わせはどうかしら」
「それもいいわね」
 トロットもお話を聞いて笑顔になりました。
「生でね」
「鯛にハマチ、鮭に鮪にね」
 ドロシーは具体的な魚介類を挙げていきました。
「帆立、鳥貝、赤貝、牡蠣をね」
「本当に豪勢ね」
「海老や蛸、烏賊も入れて」
「尚更いいわね」
「いや、お昼だけでも想像も出来ないが」
 おじさんにしてみると、でした。
「夜はそうしたものか」
「それでどうかしら、お刺身だけじゃなくてね」
「カルパッチョもか」
「これも出してもらってね」
「お店でか」
「楽しみましょう」
「それではな」
「けれど鮟鱇ってそんなに美味しいのかしら」
 おばさんは鮟鱇、お店に一匹丸ごと置かれているその多いなお口のお魚を見て首を傾げさせました。
「果たして」
「これが本当に美味しいから」
 ベッツイが答えました。
「騙されたと思ってね」
「それでなの」
「食べてみてね」
「そこまで言うなら」
「鮟鱇料理が有名なお店があるから」
 それでと言うドロシーでした。
「そちらに行ってね」
「そのうえでなのね」
「そちらはおこぜも出してくれるし」
 このお魚のお料理もというのです。
「あと海鼠もね」
「出してくれるの」
「それで物凄く面白い食べものもあるのよ」
「面白い?」
「これは行ってみてのお楽しみね」
 ドロシーはにこりと笑って言いました。
「今は内緒よ」
「内緒なの」
「そう、内緒よ」
 今はというのです。
「そうさせてもらうわ」
「気になるわね」
「楽しみにしておいてね」 
 今はというのです。
「それでね」
「今は市場をなのね」
「歩いていきましょう」
「それじゃあ」
「いや、きっとお昼も最高のものになるよ」
 トトはドロシーの足元からおじさんとおばさんに言いました。
「鮟鱇もおこぜも海鼠も美味しいし」
「シーフードサラダもでかい」
「あと一つも」
「どれもね」 
 まさにというのです。
「二人共気に入ってくれるよ」
「ううむ、どんなものが出て来るのか」
「すごく気になるわね」
「全くだな」
「最後の一つは何かしら」
 二人共凄く気になりました、こんなお話をしながら市場を観て回って特に魚市場をそうしました。そしてです。
 お昼になると日本料理店に入りました、そして出された鮟鱇鍋におこぜの唐揚げに海鼠の切り身にシーフードサラダにです。
 最後の薄いオレンジっぽい色のお刺身の様に切られたものを前にしてでした、おじさんは目を丸くさせました。
「これは何だい!?」
「海鼠でもないわね」
 おばさんも言います。
「海鼠はここにあるし」
「また違うな」
「かといってお魚にも貝にも見えないし」
「蛸でも烏賊でもないな」
「何かしら、これは」
「何なんだ」
「ほやよ」
 ドロシーは驚いているお二人ににこりと笑って答えました。
「これも海の幸なの」
「そうなのかい」
「ほやっていうのね」
「これも美味しくて」
 ほやもというのです。
「お刺身みたいに食べてね」
「それじゃあな」
「そうさせてもらうわね」
「これも美味しいのよ」 
 エリカはほやを前にして凄く嬉しそうです。
「勿論他のものも美味しくてね」
「ほやもか」
「美味しいのね」
「海の幸のものは不思議なことに外見が変わってると美味しいな」
 キャプテンはふとこう思いました。
「お魚にしても」
「そうですね、確かに」
 恵梨香はキャプテンのそのお言葉に頷きました。
「言われてみれば」
「鮟鱇もおこぜもそうで」
 神宝も言います。
「河豚だってそうですね」
「海鼠もそうですしね」
 ジョージはその海鼠を見ています。
「ほやにしても」
「蛸や烏賊なんてまさにそうですね」
 カルロスはこの馴染みのある生きもの達を思い出しました。
「日本に来てから実感しています」
「海老も蝦蛄もそうですね」
 ナターシャも言いました。
「思いますと」
「そうだね。一見食べられるのかと思っても」
 キャプテンは五人に応えました。
「美味しいね」
「はい、食べてみますと」
「どの海の幸も」
「物凄く美味しいです」
「お魚にしましても」
「他の生きものも」
「そうだね、では食べようね」
 今からとです、こうしたお話をしてです。
 皆で食べます、おじさんはほやを食べて言いました。
「これは本当に」
「美味しいわ」
 おばさんもほやを食べて言います。
「かなりね」
「そうだな、珍味とまで言っていいな」
「そうよね、海鼠だってね」
「ああ、こちらもな」
「美味しいわ」
「うん、それでサラダもいいよ」
 ハンクはこちらを食べています。
「レタスやトマドに加えてね」
「海草だな」
「それもあるサラダね」
「畑のものと海の幸の組み合わせもね」
 こちらもというのです。
「凄くいいから」
「それじゃあな」
「そちらもいただくわね」
「そうしてね」
 是非にというのです、そして実際にです。
 お二人はシーフードサラダも食べて美味しいと言いました、それから鮟鱇とおこぜも食べましたが。
「こちらもな」
「とんでもなく美味しいわね」
「おこぜの美味いこと」
「鮟鱇は絶品よ」
「そうでしょ、鮟鱇鍋なんてね」
 ドロシーも食べつつ応えます。
「この通り病みつきになる位にね」
「美味しいな」
「本当にね」
「河豚鍋も美味しいけれど」
「鮟鱇鍋も美味しいな」
「負けていないわ」
「そうなのよ、ちなみにどれも日本でよく食べられていて」
 外の世界ではというのです。
「海鼠は中国でもで保谷は日本の東北の方でね」
「食べられているんだな」
「宮城っていう場所でね」
「伊達政宗さんのところなんだよね」
 トトはこの人のお名前を出しました。
「オズの世界にも来ているね」
「あのダンディな人ね」
「そうそう、いつも服装を決めていて」
「恰好いいわね」
「如何にも武士って感じで」
「オズの国では両目ちゃんとあっても右の方に眼帯してるけれど」
「それも恰好いいわね」 
 実にというのです。
「本当に」
「そうだよね」
「あの恰好よさはね」
「そうそう真似出来ないね」
「本当にね、それで政宗さんも」
 この人もというのです。
「ほやお好きなのよね」
「そうなんだ」
「そうなの、あの人料理上手でもあって」
 トトにこのこともお話します。
「ほやもね」
「お好きなんだね」
「凍り豆腐もあるし」
「あとずんだ餅もね」
「このお昼のデザートよ」
「それはいいね」
「ずんだ餅?」
 おじさんは家族のお話を聞いて不思議そうに言いました。
「そんな食べものもあるのか」
「そう、日本のお菓子でね」
「お餅なのは聞いてわかるけれど」
「そう、お餅をね」
 これにとです、ドロシーはおじさんにずんだ餅のお話もしました。
「餡子みたいに潰した枝豆で覆ったものなの」
「そうしたものか」
「おはぎみたいな感じよ」
「ああ、餡子じゃなくて枝豆か」
「それでおはぎにした感じなの」
「そうしたお菓子なのか」
「それでね」
 ドロシーはさらにお話しました。
「このお昼のデザートで」
「そちらも美味しいのか」
「そうなのよ」
「私も好きよ」
 オズマもにこりとして言います。
「ずんだ餅は」
「貴女もよね」
「おはぎも好きで」
 そしてというのです。
「ずんだ餅もね」
「そうよね」
「だからね」
 それでというのです。
「今も楽しんでいるけれど」
「ずんだ餅もよね」
「楽しませてもらうわ」
「期待しているわね」
「凄くね」 
 にこりと笑って答えました。
「本当にね」
「そうよね」
「それで」 
 さらにお話するのでした。
「おじさんとおばさんはまだね」
「まだ?」
「蝦蛄は殆ど食べてなかったわね」
「そういえばそうね」
「じゃあ夜はお刺身とカルパッチョだけれど」
「蝦蛄もなのね」
「出してもらいましょう」
 こうドロシーにお話しました。
「蝦蛄も美味しいから」
「確かに美味しいわね」
「美味しいから」
 だからだというのです。
「本当にね」
「是非よね」
「食べてもらいましょう」
「いいわね。蝦蛄も」
「そうでしょ」
「蝦蛄かい、ちょっとつまんだけれど」
 おじさんは思い出した様に応えました、今は鮟鱇鍋を食べていてそのお鍋の他の食材と一緒に楽しんでいます。
「美味しいね」
「そう、その蝦蛄もね」
「夜に食べるのか」
「お酒も出してもらってね」
 そのうえでというのです。
「楽しみましょう」
「それではな」
「そしてね」
 ドロシーはさらに言いました。
「夜も楽しみましょう」
「いや、こんなに色々なお料理があるなんてな」 
 おじさんは唸りました。
「思わなかったよ」
「魚介類の種類もよね」
「そうだよ、村にいたら」
「畑のお野菜と村の果物と」
「お肉と卵に乳製品ばかりで」
「魚介類は食べないわね」
「カンサスからだよ」
 まさにというのです。
「それは変わらないよ」
「そうよね、けれどね」
「こうして色々食べられるんだな」
「そうなの、この通りね」
「そうなんだな」
「それでね」
「夜もだね」
 ドロシーに言いました。
「楽しむんだね」
「そうしましょう」
「それではね」
「いや、それにしても美味しいわ」
 ドロシーも鮟鱇鍋を食べて言いました。
「鮟鱇はね」
「身体もあったまるな」
「お鍋だしね」
 おじさんもおばさんも言います。
「お葱やお豆腐もいいが」
「白菜や糸蒟蒻や茸もね」
「それで鮟鱇もね、ただ調理は難しいらしいわ」
 ドロシーはこのお話もしました。
「中のお汁の癖が強くて」
「それでか」
「そのお汁を出したらいけないのかしら」
「そうなの、だかr普通のお魚とはね」
「違うか」
「そうした調理になるの」
「そうみたいよ、これがね」
 お二人にこのお話もします。
「けれどその介がある位ね」
「この通りだな」
「美味しいのね」
「そうなのよ」
 実際に食べつつ言います。
「この通りね、あと海鼠のコノワタもどうかしら」
「コノワタ?」
「海鼠の内臓なの」
 おじさんにすぐに答えました。
「そちらもね」
「美味しいんだな」
「だからおじさんとおばさんが」
 お二人がというのです。
「食べてね」
「それではな」
「いただくわね」
「そうしてね」 
 こうお話してです。
 お二人はそのコノワタも食べてみました、するとです。
「ああ、海鼠自体も美味しいが」
「コノワタも美味しいわ」
「こちらもいいな」
「最高ね」
「そうでしょ、内臓も美味しいのよ」
 ドロシーは今はその海鼠を食べつつ答えました。
「海鼠はね」
「そうなんだな」
「全部美味しいのね」
「だからいいのよ、オズの国に来なかったら」
 そうでなければというのです。
「私もね」
「海鼠も美味しくて」
 それでというのです。
「コノワタもね」
「この通りか」
「美味しいのね」
「そうなの、そちらも気に入ってくれたかしら」
「凄くな」
「そうなったわ」
「それなら何よりよ」
 笑顔で言葉を返すドロシーでした、そしてです。
 皆でお鍋や唐揚げにサラダ、海鼠にほやも満喫してです。デザートのずんだ餅をいただきましたがこちらは。
「おや、これは」
「優しい甘さね」 
 お二人はずんだ餅にはこう言いました。
「凄くね」
「そうだな」
「そうなの、これがね」 
 ドロシーもずんだ餅を食べて答えます。
「ずんだ餅の甘さでね」
「そうなんだな」
「枝豆の甘さなのね」
「そう、その甘さがね」
 まさにというのです。
「この通りね」
「優しい甘さか」
「そうなのね」
「そうよ、いいでしょ」
 本当にと言うドロシーでした。
「凄く」
「ああ、鮟鱇や海鼠もよかったが」
「おこぜやほやもね」
「シーフードも勿論だが」
「お鍋の後の雑炊もよかったけれど」 
 それだけでなくというのです。
「このずんだ餅もいいな」
「こうしたお菓子もあるのね」
「そうなの」
「このお菓子も紹介してくれるなんてな」
「ドロシーには何と言っていいかわからないわ」
「美味しいものはね」
 そういったものはというのです。
「皆で食べないとね」
「それでか」
「ずんだ餅もなのね」
「紹介させてもらってね」
「食べさせてくれたか」
「それで美味しい思いをさせてくれたのね」
「そうなの、じゃあね」
 ドロシーはさらに言いました。
「夜もね」
「美味しいものを食べるな」
「そうするのね」
「お刺身にカルパッチョにね」 
 それにというのです。
「蝦蛄もね」
「それじゃあな」
「いただくわね」
「そうしましょう」 
 夜のお話もします、そしてです。
 皆で食後は観光も楽しみます、そこで皆で今度は船に乗って海に出ましたが。
「いや、久しぶりに見たな」
「そうよね」
「何時ぶりかな」
 おじさんは海の向こうの水平線、眩しく輝く太陽と白い雲まで観ながらそのうえでドロシーに言いました。
「オズの国に来ても」
「滅多によね」
「海には来なかったから」
 だからだというのです。
「本当にね」
「こうして観られて」
「嬉しいよ」
「私もよ」
 おばさんも言ってきました。
「こうしてね」
「船に出て海を見られて」
「それでね」
「嬉しいのね」
「とてもね。食べものも美味しくて」
 そうしてというのです。
「海も見られて」
「嬉しいわね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「何かね」
 おばさんはこうも言いました。
「この香りは」
「海の香りね」
「私達が殆どね」
「その中にいたことはなかったわね」
「だから」
 それでというのです。
「このこともね」
「嬉しいのね」
「とてもね」
 こう言うのでした。
「本当にね」
「そうよね」
「わしは海で暮らしていたから」
 キャプテンはそれでと答えます。
「いつもこうしてね」
「海に出るとよね」
 トロットが応えました。
「自然とよね」
「心が弾んでね」
「楽しくなれるわね」
「凄くそうなるよ」
 こうトロットに答えます。
「本当にね」
「そうよね、キャプテンさんは」
「港町にいても」
 それだけでというのです。
「嬉しいしね」
「そうよね」
「いや、海はね」
「まさにキャプテンさんの場所ね」
「本当にね」
「この海が外の世界につながっているから」
 ハンクも海を見ています、そのうえで言うのでした。
「僕達もオズの国に来られたね」
「ええ、ただね」 
 ベッツイはハンクに答えました。
「今はオズの国の海の周りにはね」
「魔法がかけられていてね」
「お空にもでね」
「外の世界からは中々辿り着けなくなっているね」
「オズの国の領海に入っても」
「そのまま素通りするみたいになってね」
「オズの国にはね」 
 今自分達がいる世界にというのです。
「入られないのよ」
「そうだね」
「お空からもで宇宙から見ても」
「ただ海に見えるね」
「だからね」 
 そうなっているからだというのです。
「簡単には辿り着けなくて」
「見付けることもだね」
「出来ないのよ」
「そうなっているね」
「かなり広い大陸だけれど」
 エリカはオズの国全体を指して言いました。
「普通は見えないし辿り着けないのね」
「そうなの、物凄く運のいい人が来られるのよ」
 オズマが答えました。
「オズの国にはね」
「そうなのね」
「最初からそうだったけれど」
「今は特によね」
「見付けることもほぼ無理だし」
「宇宙から見ても」
「それでもね」
 そうしてもというのです。
「私達が魔法でそうしたから」
「オズマとグリンダと魔法使いさんで」
「皆でね」
「だからこの海は外の世界とつながっていても」
「出入りはね」
「出来ないのね」
「海やお空からはね」
 そちらからはというのです。
「だから外の世界を行き来できる渦を作っているのよ」
「そうそう、あの渦だね」 
 トトはオズマのその言葉に応えました、今も皆で海を見ています、海はとても奇麗で青と銀色できらきらとしています。
「八条学園にもある」
「私達もあの渦を使ってね」 
 恵梨香はトトにお話しました。
「いつも行き来しているしね」
「学園の時計塔のところにあるね」  
 カルロスは笑顔で言いました。
「あの渦からね」
「あの渦を見付けられたのは運ね」 
 ナターシャも微笑んで言います。
「神様が与えてくれた」
「あの時若しかかしさんについていかなかったら」
 ジョージはしみじみと思いました。
「僕達は今ここにいないね」
「オズの国があることは知っていても」 
 神宝はそれでもとお話しました。
「行き来なんてとても出来なかったよ」
「そうだよね、オズの国にはね」
 トトは五人に応えて言いました。
「本当にね」
「あの渦でないとよね」
「簡単には行き来出来ないね」
「そしてその渦がある場所も」
「かなり運がよくないと見付けられないし」
「オズの国に行けないね」
「そうなんだよね、いや海やお空は同じでも」
 それでもと言うトトでした。
「そこに行くことは簡単じゃないんだね」
「それは何処でもかな」
 おじさんはトトの言葉を聞いて言いました。
「その場所に縁がないと」
「神様の導きかな」
「運とも言うか。そうしたものがないと」
 さもないと、というのです。
「そう簡単にはね」
「行けないんだね」
「そう思うよ、そしてわし等はオズの国に来られて」
「そして今ここにだね」
「いてこんな奇麗な海を見られるのも」
「縁で運だね」
「そう思うよ」
 こうトトに言うのでした。
「本当に」
「そうなんだね」
「全く以て。ただ」
「ただ?」
「この運を神様に感謝して」
 そうしてというのです。
「ドロシーにもね」
「感謝しているんだね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「心からね」
「だから家族だからね」 
 ドロシーはおじさんの今のお言葉に笑って返しました。
「感謝はね」
「いらないんだね」
「そうよ」
 こう言うのでした。
「全くね」
「そうなんだ、しかし」 
 ここで、でした。おじさんは。
 海からトビウオ達が飛び出てお空を飛んでです。
 続いてマンタが飛び出たのを見て目を丸くさせました、その幻想的な光景を見てドロシーに言うのでした。
「こんなものも見られて」
「嬉しいの?」
「とてもね、それでだよ」
「私に感謝してくれているのね」
「そうだよ」
「私もよ」
 おばさんもでした。
「ドロシーに感謝しているわ」
「私の方こそ感謝しているのに」
「そうなの?」
「親がいない私をずっと優しく育ててくれて」 
 それでというのです。
「今も家族だから」
「だからなの」
「おじさんとおばさんが感謝してくれているよりも」
 それよりもというのです。
「私の方がね」
「感謝しているの」
「そうよ、心からね」
「お互いに感謝しているってことね」
 オズマはお互いに感謝していると言う三人を見て言いました。
「要するに」
「そうなるのかしら」
「そうよ、そしてね」
「それがいいのよね」
「誰もが感謝の気持ちを忘れない」
「誰かに対して」
「それこそが最高よ」
 こうドロシーに言うのでした。
「もうね」
「何よりもいいのね」
「そう、だからね」 
 それ故にというのです。
「このままね」
「私達はお互いになのね」
「家族同士でね」
「感謝し合って」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「暮らしていけばね」
「いいのね」
「そうよ、それが一番幸せでしょ」
「そうね、感謝の気持ちを持っていたら」
 どうかとです、ドロシーも応えて言います。
「それだけでね」
「嬉しくもなってね」
「幸せでしょ」
「そうよね」
「だからね」 
 それが為にというのです。
「いつもお互いにね」
「感謝していることね」
「そうよ、けれどドロシーもオズの国の人の多くも」
「感謝されるとね」
「されることはないって言うわね」
「どうしてもね」
「その謙遜の気持ちもね」
 このこともというのだ。
「これまたね」
「いいことね」
「美徳よ、感謝することもね」
「謙遜の気持ちも」
「両方ね」
「そうですね。感謝しろって言って」
 恵梨香はここでこう言いました。
「自分は感謝しない人って」
「どうかって思うわね」
「そうした人は外の世界にいると思いますけれど」
「お付き合いしにくいわね」
「どうしても」 
 こうオズマに答えました。
「どちらかだけでも」
「そうね、オズの国にはそうした人はいないけれど」
「そうした人は」
 どちらかだけでというのです。
「どうもです」
「好きになれないわね」
「それでお付き合いも」
 どうしてもというのです。
「しにくいです」
「そうなるわね」
「そう考えますとオズの国は」
「お互いに感謝してね」
 そしてというのです。
「それでいてそうされることはないっていうね」
「謙遜の気持ちも持っていることは」
「いいことよ、お互いに矛盾している様で」
「実は違いますか」
「どちらも人として美徳で」
 そうであってというのです。
「矛盾しないわ、人には感謝してもらう様にして」
「自分はいい」
「その丁寧な心遣いはね」 
 それはというのです。
「実は根っこはね」
「同じですか」
「だからドロシーもお二人もね」
 おじさんとおばさんもというのです。
「凄くね」
「いいんですね」
「そうよ、美徳をね」
 人としてのそれをというのです。
「ちゃんとね」
「三人共備えておられるんですね」
「そうよ」
 今も海面から出て飛んで、です。
 また海の中に戻るトビウオ達そしてマンタを見つつ言います、飛ぶその後ろから水雫が続いてキラキラとしています。
「素晴らしいことでしょ」
「はい、本当に」
「人はこうありたいわね」 
 オズマはにこりと笑ってこうも言いました。
「私もね」
「オズマ姫もですか」
「勿論よ、人の美徳を見ればね」
「それをお手本にしたい」
「そして自分をよりよくしていきたいから」
 そう思うからだというのです。
「本当にね」
「ドロシーさんもお二人もですね」
「敬意を以て見させてもらって」
 そうしてというのです。
「お手本にね」
「させてもらいますか」
「これからもね」
「そう言われたら」
 恵梨香はオズマのその言葉を聞いて言いました。
「私も」
「僕もです」
「勿論僕もです」
「私もです」
「僕だってですよ」
 恵梨香だけでなく五人全員で言います。
「是非です」
「お手本にさせてもらいます」
「素晴らしいことですから」
「それで、です」
「これからも」
「そうしてね。お手本の人やものを見たら」
 その時はというのです。
「素直にね」
「お手本にして」
「そしてそうなる様に努力して」
「より自分をよくしていく」
「そうしないと駄目ですね」
「その時は」
「偉い人なんていないのよ」
 オズマはこうも言いました。
「この世にはね」
「そんな人いる筈がないわ」
「絶対にね」
 ベッツイもトロットも言いました。
「誰だってね」
「人ならね」
「人って神様と違うから」
「小さな存在だから」
「もう神様から見るとね」
「本当に小さな存在よ」
「そうよ、私達は人でしょ」
 オズマは二人にも言いました。
「人は神々とは違うのよ」
「そうよね」
「どんな人もね」
「人でしかない」
「どれだけ凄いことをしても」
「それで偉いことなんてね」
 それこそというのです。
「絶対にないのよ」
「そうよね」
「何があってもね」
「だからね」 
 そうしたものだからだというのです。
「人はね」
「常に努力して」
「お手本の人やものを見て参考にする」
「そうして自分を磨いていって」
「よくならないと駄目ね」
「そうよ、人は神様には絶対に及ばないけれど」
 それでもというのです。
「努力して際限なくね」
「よくなっていくわね」
「そうしたものね」
「そうよ、私達もね」 
 オズマは二人に自分達もと言いました。
「これからもね」
「お手本の人達を見て」
「努力していくことね」
「それが大事よ」
 こう言うのでした、そしてです。
 皆で今は海そこから出て来る生きもの達を見た後で、です。
 夕陽と海も見た後で街に戻って居酒屋に入ってそこでお刺身にカルパッチョそれと蝦蛄を前にしますが。
 おじさんな丸茹でにされた蝦蛄達を見て言いました。
「これはまた」
「美味しそうね」 
 おばさんも言います。
「お刺身もカルパッチョもだけれど」
「蝦蛄もだよ」
「この蝦蛄も食べられるなんて」
「何といいことか」
「お酒もあるから」
 ドロシーはここでもお二人に言いました。
「そちらも楽しんでね」
「日本酒に白ワインだな」
「どちらでもね」
「飲んでいいんだな」
「ええ、そしてね」
「今晩も楽しむ」
「そうしてね。私も飲むし」 
 ドロシーはアルコールは入っていませんが酔える子供用のお酒オズの国特製のそれを見つつお話しました。
「日本酒をね」
「ドロシーは日本酒も好きだね」
「ジュースも好きだけれど」
 それと共にというのです。
「お酒もね」
「好きだね」
「子供だから」 
 それでというのです。
「どうしてもね」
「子供用のお酒だね」
「それを飲むけれど」
 それでもというのです。
「お酒もね」
「好きだね」
「そうなの、だから今夜はね」
「お刺身とカルパッチョと蝦蛄で」
「乾杯しましょう」
「それじゃあね」
「ドロシーと乾杯ね」 
 おばさんも言います。
「それもね」
「嬉しいの?」
「ドロシーと一緒に旅行出来て」
 そしてというのです。
「そのうえでね」
「お酒を飲めてなの」
「美味しい。それでね」
 そのうえでというのです。
「乾杯出来るなんて」
「嬉しいの?」
「見ての通りだよ」
 満面の笑顔で言うのでした。
「本当にね」
「今夜もそう思ってくれるのね」
「そうだよ、ではこれから」
「お刺身とカルパッチョにね」
「蝦蛄を食べよう」
「そうしましょう」
 ドロシーも笑顔で応えます、そうしてです。  
 皆で鯛や鮪、ハマチに鮭に平目にです。
 蛸や烏賊、海老に帆立に赤貝のお刺身やカルパッチョそれに茹でられた蝦蛄を食べて日本酒や白ワインを楽しみます。
 その中で、です。恵梨香はこんなことを言いました。
「新鮮な生魚とお酒って」
「合うわね」
「はい」
 まさにとオズマに答えました。
「これ以上はないまでに」
「そうね、お刺身もよくて」
「カルパッチョもですね」
「どちらもいいわね、山葵醤油にね」 
 お刺身に使うそちらとです。
「お塩に胡椒とね」
「オリーブオイルもですね」
「いいわ」
 実にというのです。
「本当に」
「そうですね、どちらも」
「生のお魚はね」
「そうしたもので食べて」
「日本酒や白ワインを飲むとね」
 そうすればというのです。
「この通りね」
「最高に美味しいですね」
「最高の組み合わせよ」
「そして蝦蛄もね」
 ドロシーは茹でられたそちらを食べて言いました。
「お醤油がね」
「合いますね」
「それでお塩と胡椒、オリーブオイルもね」 
 こういったもので味付けしてもというのです。
「やっぱりね」
「美味しいですね」
「この二つはいいわね、お醤油の時は日本酒で」
 こちらのお酒を飲んでというのです。
「そしてね」
「オリーブオイルの時はですね」
「白ワインよ」
 こちらだというのです。
「そっちがいいわね」
「そうですね」
「どちらも楽しみましょう」
「こうして」
「これからもね」
 こうお話したお話を皆でなのでした。
 飲んで食べて楽しみました、この夜もとても楽しいものになりました。








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