『オズのカリフ王』




                第七幕  天帝の宮殿

 ノーム王と皆を乗せた飛行船は空を進んでいきます、その中でキャプテンは皆に笑顔で言いました。
「今度は天帝の宮殿に行くよ」
「天帝って中国の神様よね」 
 ビリーナはキャプテンに尋ねました。
「そうよね」
「うん、中国の神様で一番偉い神様でね」
「言うなら中国の神様達の皇帝ね」
「そうなるよ、その方の宮殿にね」
「今から行くのね」
「そうするよ、そしてね」
 キャプテンはさらに言いました。
「訪問して」
「政治的に」
「お話をしていくよ」
「左様、次はな」 
 ノーム王も言ってきました。
「天帝の宮殿にじゃ」
「訪問させてもらうな」 
 ドワーフ王も応えました。
「そうであるな」
「うむ、そしてな」 
 そのうえでというのです。
「交流を深める」
「そうするな、ただ」
「ただ?」
「いや、天帝にお会いするなぞな」
 それこそとです、ノーム王は言いました。
「何かと楽しみじゃ」
「そうであるな、中国の神々ともお会いするか」
「関羽さんや孫悟空さんともな」
「そのことも楽しみじゃ」
「そうであるな、それにな」
 ノーム王はさらに言いました。
「中国の建物や料理もな」
「見られるのう」
「そして味わえる」
「それもな」
「また楽しみじゃな」
「左様であるな」
「あら、中華街は地下にはないの?」
 つぎはぎ娘が聞いてきました。
「確かあったわよね」
「あるにはあるが」
 それでもとです、ノーム王はつぎはぎ娘に答えました。
「お空でははじめてでな」
「それで中国の建物やお料理が楽しみなのね」
「丁度食べたいと思っておった」 
 ノーム王は笑ってこうも言いました。
「中華料理もな」
「中華料理もいいわよね」
 トロットも嬉しそうです。
「美味しいのよね」
「そうじゃな」
「私も好きなのよ、中華料理」
「もう、トロット王女もか」
「ええ、だから天帝さんの宮殿ではね」
「中華料理もじゃな」
「楽しみよ、宮殿だから」
 それでと言うトロットでした。
「きっと宮廷料理ね」
「中国の宮廷料理って凄いんですよね」
 ジョージも楽しみみたいです、お顔に出ています。
「もう豪華で」
「そうなんだよね、食材がね」
 神宝はこちらからお話します。
「驚く位で」
「珍味が一杯あるんだよね」
 カルロスは実際の食材のお話をしました。
「フカヒレとかね」
「栄養もいいらしいから」
 それでと言う恵梨香でした。
「美味しいだけじゃないのよね」
「食べると元気になれる」 
 ナターシャも言います。
「だからいいのよね」
「左様、だからわしも大好きじゃ」 
 ノーム王も満面の笑顔で期待しています。
「ではな」
「はい、これからですね」
「天帝の宮殿を訪問して」
「そうしてですね」
「天帝さん達にお会いして」
「お料理も楽しみますね」
「そうしようぞ」 
 こう言ってでした。
 皆で天帝の宮殿を訪問しました、するとです。
 赤に青、黒に白、そして黄色のそれぞれの中国の服や鎧兜で身を包んだ人達が出てきました。どの人も五色のどれかの服や鎧兜です。
 中国の木造の巨大な宮殿はとても長くて広い階段があって赤い屋根です。その中は様々な装飾が豪華になって金や銀で眩い位であり。
 沢山の神様達がいます、何とその中には関羽さんや孫悟空さんもいます。ジョージ達五人は関羽さん達に笑顔で挨拶しました。
「お久し振りです」
「今回はこちらにお邪魔しました」
「ノーム王さん達のお供です」
「一緒に訪問しました」
「宜しくお願いします」
「うむ、元気そうで何より」
 関羽さんは五人を前に赤いお顔を笑顔にさせて応えました。
「今日はここでくつろいでくれ」
「そうさせてもらいます」
「堅苦しいことは抜きにしてな」
 孫悟空さんも言ってきました、それも陽気に。
「楽しんでくれよ」
「まあ天帝様の前では礼儀正しくな」
「それは守ってくれよ」
 猪八戒さんと沙悟浄さんも一緒にいます。
「流石にな」
「そこは礼儀ってやつでな」
「まあおいら達みたいにするなってことだ」 
 孫悟空さんは五人に笑って言いました。
「要するにな」
「全く悟空殿はやんちゃに過ぎる」
 関羽さんはそんな孫悟空さんに笑って言います。
「そこがまたいいのだがな」
「そう言う関羽殿は真面目過ぎるぞ」
 悟空さんも悟空さんで言います。
「砕けたことはしないのか」
「拙者はそうした性分ではないので」
 関羽さんはこう答えました。
「それ故に」
「まあ剽軽な関羽さんってな」
「ちょっと想像出来ないよな」
 猪八戒さんと沙悟浄さんはこう言いました。
「いつも真面目で学問と武芸に励む」
「それで曲がったことはしない人でないとな」
「ああ、おいらは剽軽でな」 
 孫悟空さんは二人にも応えました。
「関羽さんは真面目」
「おもしろ真面目だな」
「悟空の兄貴と関羽さんは」
「ははは、関羽兄貴はそうでないとな」
 ここで、でした。
 関羽さんより少し背が低くて赤い帽子と服に鎧を身に着けた虎みたいなお髭を生やした豪快な
感じの男の人が出て来ました、その手には蛇矛があります。
 その人は関羽さんの横に来てこう言ってきました。
「飲んでも暴れないでな」
「お主も今は暴れないではないか」
 関羽さんはその人に微笑んで応えました。
「オズの国に来てからは」
「そうだけれどな、しかしおいらはな」
「酒乱か」
「よく言われてるしな」
 自分から言うのでした。
「だからな」
「今も言うか」
「ああ、飲んで暴れる話はな」
「あっ、この方は」
 ジョージはその人を見て言いました。
「張飛さんだよね」
「そうそう、張飛さんよね」
「絶対にそうだよ」
「赤い服とそのお髭」
「そして蛇矛とくれば」 
 恵梨香達四人も言います。
「間違いないわ」
「この方は張飛さんだね」
「張飛翼徳さん」
「関羽さんの義弟さんだよ」
「如何にも、おいらの名は張飛」
 ご自身を左の親指で指し示しつつ名乗りました。
「字は翼徳、益徳とも言うな」
「我等はオズの国でも一緒なのだ」
 関羽さんもお話してきました。
「兄上と共にな」
「劉備さんですね」
「あの方と一緒ですね」
「三人で」
「オズの国でも」
「そうなんですね」
「今は兄弟揃ってしかも孔明殿達とも一緒だ」
 こうお話するのでした。
「蜀漢に共にお仕えしたな」
「曹操殿も一緒だしな」 
 張飛さんはこの人もとお話しました。
「地上ではいがみ合っていたけれどな」
「今は仲良しだしな」
「共に天帝様にお仕えしてな」
「オズの国にいる」
「ううむ、この方々とお会い出来てな」 
 それでとです、ノーム王も言います。
「感無量じゃ」
「全くじゃ、ではな」
「天帝さんにお会いしよう」
「これよりな」
「案内させてもらうな」
 ここで孫悟空さんが言ってきました。
「天帝さんのところまでな、ただな」
「ただ?どうしたのじゃ」
「いや、項羽さんもいるんだよな」
「天帝さんの御前にはか」
「実はおいら朝に項羽さんの朝飯のお粥盗み食いしたんだよ」
「そんなことをしたのか」
「悪戯でな、そうしたら項羽さん怒ってな」  
 それでというのです。
「追いかけ回されたんだよ」
「全く兄貴の悪戯好きは相変わらずだな」
「そこは変わらないからな」 
 猪八戒さんと沙悟浄さんも笑って言います。
「ずっとな」
「それこそ石から生まれた時からな」
「おいらも項羽さんには負けるからな」 
 この方にはというのです。
「あの強さは圧倒的過ぎるぜ」
「おいらと兄貴二人がかりどころかな」
 張飛さんも項羽さんのお話をします。
「五虎将軍全員で互角だからな」
「項羽殿は別格だ」
 関羽さんも言います。
「あの御仁に勝てる者はこの宮殿にはおらぬ」
「ああ、この宮殿最強だな」
「全くだ、だが拙者がとりなす故」 
 関羽さんは孫悟空さんに言いました。
「安心されよ」
「悪いな、いつも」
「何、悟空殿にはいつもよくしてもらっている」
 関羽さんは感謝の言葉を述べる悟空さんに笑顔で応えました。
「それ故に」
「今回もか」
「礼はいい、ではな」
「これからか」
「ノーム王、ドワーフ王とご一行をな」
「天帝様の御前にな」
「案内致そう」
 こう言ってでした。
 関羽さんは一行を孫悟空さん達と一緒に天帝さんの前まで礼儀正しく案内してもらいました、そしてです。
 一行は天帝さんの前に来ました、そこには着飾った中国の文官や武官の服を着た神様達が揃っていてです。 
 赤と金色の物凄く広いお部屋の一際高く階段から上がった場所の真ん中にある見事な玉座に金色に輝く中国の皇帝の服を冠を身に着けていてです。
 とても立派なお顔立ちで長いお髭を生やした方がいました、その方こそでした。
「朕がこの宮殿を治める天帝である」
「はじめまして」
 ノーム王はドワーフ王と共にです。
 天帝の前に出て恭しく一礼します、後ろにいる他の人達もです。
 一礼します、そうして頭を上げてから言いました。
「この度ははじめて訪問させてもらった」
「来てくれて何よりです」
「あれっ、敬語?」
 ジョージは天帝さんの今のお言葉を聞いてこのことに驚きました。
「天帝さんが」
「いや、朕も一国の主」
 天帝さんはそのジョージにお話しました。
「それ故に同じ一国の主には礼を持ち」
「それで、ですか」
「敬語を用いるのだ」
「そうですか」
「勿論オズマ姫にもである」 
 天帝さんは彼女に対してもと答えました。
「敬語を用いさせてもらう」
「オズの国の国家元首だからですね」
「朕はこの宮殿の主であるが」
「中国、道教の神々の皇帝さんで」
「しかしあの方はな」
「この国全体の国家元首ですね」
「そうであられるからな」
 それ故にというのです。
「朕としてもな」
「オズマ姫に対しても」
「むしろあの方には最大限のだ」
「礼儀をですか」
「払わせてもらっている」
「そうなんですね」
「だからな」
 それでというのでした。
「この度もな」
「ノーム王にですか」
「敬意を払わせてもらった、これからもな」
「敬意を以てですか」
「貴殿達に礼を尽くし」
 そうしてというのです。
「楽しんでもらう」
「そうですか」
「さあ、存分に楽しんでくれ」
 天帝さんはこう言ってでした。
 一行を中国の音楽や舞それに京劇の舞台を披露して楽しんでもらいました。そうしてお料理も出しますが。
 そのお料理を見てです、ポリクロームは言いました。
「お水もね」
「いいか」
「はい、とても」
「天帝さんに答えます、皆巨大な卓に座っています。
「奇麗ですね」
「酒もある」
 天帝さんは銀の中国の杯を手に言いました。
「好きなものを食べてな」
「好きなものを飲んでですか」
「そうしていいからな」
 だからだというのです。
「存分に楽しんでくれ」
「わかりました」
「いやあ、やっぱり天帝様のお料理はいいよな」 
 孫悟空さんも言ってきました。
「豪華絢爛だよ、宮廷料理は」
「お主は昨日もご相伴に預かったではないか」
 ここで、でした。
 悟空さんの前に座っている関羽さんと同じ位の体格で逞しいお顔立ちの若い青い服と鎧を身に着けた神様が言ってきました。
「しかもな」
「ああ、今朝のことか」
「わしのお粥を盗み食いしたな」
「そうであったな」
「全く、悪戯好きなのは変わらんな」
「それで追い回されたな貴殿に」
「関羽殿が言うから怒りを収めたが」 
 それでもと言うのでした。
「今度やったら拳骨を落とすぞ」
「では三日の間悪戯はせぬ」
「三日か」
「それでよいか」
「仕方ないのう」
「朝にお粥を盗み食いって」 
 そう聞いてです、ジョージは言いました。
「この方が項羽さんかな」
「その通りだ」
 まさにという返事が青い服の神様から来ました。
「我が名は項籍、字を羽という」
「やっぱりそうですか」
「尚よく項羽と呼ばれるがな」
「羽は字ですね」
「名は籍という、だが誰もがそれがしはな」
「項羽さんとお呼びしますか」
「それが定着したからな」
 それでというのです。
「そうなっている」
「そうなんですね」
「だからお主達も項羽と呼んでくれ」
 項羽さんはジョージに笑顔で言いました。
「その様にな」
「これまでそうお呼びしていましたし」
「それでだな」
「それじゃあ」
「その様にな」
「では皆の者存分に飲んで食べるのだ」
 天帝さんは笑顔で言いました。
「よいな」
「豪勢であるな」 
 ノーム王は卓の上を満たしているお料理を見て唸りました。
「天帝さんのお食事が」
「これが中国の宮廷料理か」
 ドワーフ王も言います。
「天帝さんがいつも食している」
「左様、朕は夕食は」
 この時はといいますと。
「こうしたです」
「宮廷料理をか」
「食しています、そして」
 そのうえでというのです。
「元気にもです」
「なっておられるか」
「左様です、ですから皆さんも」
「今宵はふんだんに飲んで食べて」
「そのうえで」
 さらにというのです。
「元気になられよ」
「それではな」
 ノーム王は天帝さんのお言葉に頷きました、そしてです。
 皆で楽しく飲んで食べます、お料理は熊の掌に燕の巣にフカヒレを中心としたとても豪勢なもので。
 どの人も楽しく飲んで食べました、お酒もありますが。
 ノーム王は銀の杯でそのお酒を飲んで言いました。
「うむ、このな」
「お酒もな」
「かなりよい」
「そうだな」 
 ドワーフ王はノーム王の言葉に頷いて自分も飲みました。
「幾らでも飲める」
「また銀の杯がな」
「これで飲むとな」
「尚更よい」
「杯もよいとな」
「尚更じゃ」
「いや、このな」 
 ノーム王はさらに飲みつつ言いました。
「中国のお酒、わしは桂花陳酒を飲んでおるが」
「わしもじゃ」
「元々この酒は好きじゃが」
「とびきり上等であるな」
「そこにな」
「杯もよいとな」
 それならというのです。
「尚更な」
「美味いのう」
「料理もよいしな」
「いや、熊の掌なぞな」
 それこそと言うドワーフ王でした。
「他の国の料理ではな」
「こうして料理することはな」
「ないからのう」
「熊は食するが」
 それでもというのです。
「特に掌を重視してな」
「そのうえでな」
「食するというのは」
 それはというのです。
「少しな」
「ないからのう」
「うむ、これは凄い」
「よく気付いたものじゃ」
「しかも食すると美味い」
「これがまたな」
「最高のご馳走なんだよな、これが」
 孫悟空さんが笑って言いました、見ればこの人は今はお豆腐とお野菜のお料理を食べて楽しんでいます。
「熊の掌は」
「ですから出しました」 
 天帝さんも言います。
「こちらも」
「最高の馳走であるから」
「それでか」
「わし等に振舞ってくれたか」
「そうなのか」
「そうです、それにです」
 天帝さんはさらに言いました。
「燕の巣それにフカヒレも」
「うむ、その二つの美味い」
「実にな」
「不思議な味じゃ」
「珍味の中の珍味じゃ」
「そう言って頂いて何よりです」
 勿論天帝さんも食べています。
「どんどん召し上がって下さい」
「私北京ダックが好きなのよね」
 トロットはこのお料理を食べています、文字通り舌鼓を打っています。
「皮をお野菜と一緒に生地で包んで食べると」
「凄く美味しいですよね」
「お肉はスープにして食べて」
「これがまたいいですよね」
「どちらも最高です」
「病みつきになります」
「そうなのよね」
 トロットはジョージ達五人にも応えつつ食べます。
「このお料理もね」
「他のお料理もいいですが」
「北京ダックもいいですよね」
「今日のお料理は美味しいものばかりですが」
「凄く美味しいです」
「美味しくて仕方ないです」
「そう言ってもらって何より、他にもだ」
 天帝さんは今度はです。
 豚バラをお醤油や他の色々な調味料や香辛料で味付けしてじっくりと煮込んだお料理豚バラ煮込みを食べつつ言いました。
「こちらも美味しいぞ」
「そうそう、これも美味い」
 キャプテンもそのお料理を食べて言います。
「皮もついてな」
「その皮もあってな」
「美味しい」
「左様、だからこのお料理もな」
「食べるといいな」
「是非共な」
「私としてはね」
 ビリーナは向日葵の種を食べて言いました。
「この種が最高よ」
「あんた今は向日葵食べてるわね」
 楽しく食べている皆の笑顔を見て心の糧にしているつぎはぎ娘がビリーナの横から彼女に言ってきました。
「それがなのね」
「満足しているわ」
「そこまで美味しいのね」
「ええ、何かね」
「何か?」
「エメラルドの都の宮殿にも負けない位ね」
 そこまでのというのです。
「豪勢な気持ちよ」
「そうした気持ちの中食べているのね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「私としてはね」
「そうなのね、確かにね」 
 つぎはぎ娘はビリーナのお話を受けて言いました。
「この雰囲気はゴージャスね」
「そうでしょ」
「中華街とはまた違った」
「そんな雰囲気があるでしょ」
「そうよね」
「これが天帝の宮殿なのだ」
 関羽さんが言ってきました、大きなお身体だけあって食べる量もかなりです。
「我等道教の神々の帝であられるだけにな」
「そのお力も凄いのね」
「左様、オズの国の空のかなりの部分を治めておられる」
「そうした方で」
「そのお力もな」
「凄いのね」
「そうなのだ、だからこうした宴もだ」
 つぎはぎ娘に食べながらお話します。
「素晴らしいのだ」
「成程ね」
「酒も美味いしな」
 張飛さんは誰よりも勢いよく飲んでいます。
「最高だよ」
「張飛、わかっていると思うが」
 その張飛さんに関羽さんは横の席から言ってきました。
「酒はな」
「程々にだよな」
「そうだ、オズの国では身体を壊すことはないが」 
 お酒を飲み過ぎてもです。
「そして暴れることもないがな」
「それでもだな」
「お主は飲み過ぎた後いびきが凄い」
「ははは、そこはおいらはわからないけれどな」
「だが事実かなりのものだ」
 張飛さんが飲み過ぎた時のいびきはというのです。
「だからな」
「それでだな」
「程々にな」
「張飛さんのいびきときたらな」
 猪八戒さんも言ってきました。
「隣の部屋にまでくるからな」
「それで何かと思ったこともあるしな」 
 沙悟浄さんも言ってきます。
「張飛殿には気をつけてもらわんとな」
「ううむ、自分ではわからないからな」
 張飛さんは少し苦笑いになって応えました。
「寝ている時はな」
「別に目を開けて寝るのはいい」
 関羽さんは張飛さんのこのことはいいとしました。
「しかしな」
「いびきはか」
「何とかしてもらわんとな」
「いびきを抑える薬あっただろ」
 孫悟空さんが言ってきました。
「オズの国にはな」
「ああ、あったな」
 張飛さんもそれはと応えます。
「そういえば」
「寝る前にそれ飲んだらいいだろ」
「そうするか、飲んだ後は」
「おいらだってな」
 孫悟空さんは自分のこともお話しました。
「実は歯軋りが酷い時あってな」
「はい、それで心配になりました」
 三蔵法師さんが言ってきました。
「私としても」
「おいらの歯軋りがあんまりにもなので」
「どうしたのかと」
「いや、何でもなかったみたいですが」
 孫悟空さんは三蔵法師さんに答えました。
「一時期そうでしたね」
「原因はですね」
「まあそうした癖がです」
「ついただけですか」
「はい、ですが」
 それでもというのです。
「あんまり酷いって言われて」
「貴方もでしたね」
「歯軋りを止める薬を飲んで」 
「治しましたね」
「そうしました」
 実際にというのです。
「ですから張飛の旦那にはです」
「いびきを止めるお薬をですね」
「飲めばいいと思います」
「そうですね、確かに」
「じゃあ飲むな」
 張飛さんもそれならと応えます。
「今夜は」
「そうしたらいいさ、本当に旦那のいびきときたら」
 それこそと返す孫悟空さんでした。
「雷みたいだからな」
「そこまでか」
「北欧の神様のトールさんのいびきも凄いがな」
「おいらもでか」
「そこはな」
 絶対にというのです。
「ちゃんとしてくれよ」
「それじゃあな」
「ううん、そんなにいびきが凄いんですか」 
 ジョージはお饅頭を食べつつ応えました。
「張飛さんは」
「言われるとそうした感じしますね」
 恵梨香は海鮮麺を食べながら頷きました。
「どうにも」
「張飛さんってお身体もお声も大きくて」
 それでとです、神宝は炒飯を食べつつ言いました。
「体格もご立派ですし」
「何かもうです」
 カルロスは水餃子をお箸に取って言いました。
「イメージ通りです」
「何となく頷けます」 
 ナターシャは鶏の唐揚げをお口に入れてから言いました。
「張飛さんなら」
「普段からいびきを出すのだが」
 関羽さんも言います。
「これが飲み過ぎるとな」
「凄いんですね」
「まさに雷みたいに」
「そんないびきですか」
「それを出されて」
「お隣のお部屋にまで来ますか」
「そうなのだ、長い付き合いだが」
 関羽さんは実は張飛さんとは義兄弟、桃園の誓いより前から一緒にいます。そこまでのお付き合いなのです。
「昔から困ったところが多い」
「張飛さんは」
「お酒飲んで暴れたり」
「かっとなったり」
「そうしたところがあって」
「それで、ですね」
「オズの国ではそうしたところはなくなったが」
 それでもというのです。
「いびきはかえって酷くなったからな」
「ううむ、おいらは何かしらあるな」
 自分で言う張飛さんでした。
「昔から」
「強くて侠気はあるのだが」
 大きな耳を持っていて白いお顔で整った雰囲気の人が言ってきました。着ている服は見事な中国の礼装で色は黄色です。
「張飛は何かしらあるからな」
「劉兄貴もそう言いますね」
「実際そうだからな」
「いや、劉兄貴にそう言われると」
「聞けるか」
「どうしても」
「この人は確か」
 ジョージは大きな耳の人を見てはっとなりました。
「劉備玄徳さんですか」
「如何にも」
 ご本人からその通りという返事でした。
「私が劉備玄徳だ」
「やっぱりそうですね」
「今はオズの国でだ」
「楽しく過ごされていますね」
「関羽に張飛他の蜀の者達とな」
「そうされていますね」
「いや、かつてはな」
 劉備さんはお酒を飲みつつ言いました。
「私も何かとあった」
「そうだったんですか」
「そして張飛もな」
「お酒飲んで暴れたり」
「かっとなったりとな」
「そうだったんですね」
「そうだったがな」 
 それでもというのでした。
「今ではいびき位だが」
「そのいびきがですね」
「何とかなるならな」
「それでいいですか」
「うむ、ではこれからはな」
「はい、薬飲みます」
 張飛さんもそれはと応えました。
「これから飲んだ後は」
「そうするのだ」
「迷惑になりますからね」
「そうだ、いびきも自覚はないがな」 
 それでもと言う劉備さんでした。
「やはりな」
「迷惑ならですね」
「そこは何とかするのだ」
「出来るならですね」
「そういうことだ、しかもだ」
 劉備さんはさらに言いました。
「お主は酒好きでな」
「殆ど毎日飲んでいますしね」
「魯智深殿や李白殿と一緒にな」
「いや、酒はです」
「好きで好きで仕方ないな」
「おいらは」
 張飛さんもそうだと答えます。
「そうですね」
「昔からでな」
「それで今もです」
「いやいや、酒を飲まずしては」 
 今度は飄々とした感じでアジア系のお顔に青い目で長いお髭それに髪の毛の中に白いものが混じっている人が言ってきました。着ている服は白いです。
「何も出来ませんぞ」
「流石李白殿わかっているな」 
 張飛さんはその人のお名前を言って笑顔で応えました。
「いや本当にな」
「左様、わしは飲んでこそ」
「詩が書ける」
「それこそ飲めば飲むだけ」
 そうすればというのです。
「詩が詠めるので」
「それで、ですな」
「実によく」
 それでというのです。
「今もこうしてです」
「飲んでいますな」
「そうしています」
「ではだ」 
 天帝さんは李白さんに言いました。
「これよりな」
「はい、詩をですな」
「一つ詠んでくれるか」
「それでは」 
 早速でした。  
 李白さんは筆と墨をいただくとさらさらとです。 
 漢詩を一つ書きました、そしてそれを詠みますが。
 とても美味しいお茶を飲んでいたポリクロームは目を丸くさせて言いました。
「これはね」
「うむ、漢詩はあまり触れておらぬが」
「実によいのう」
 ノーム王とドワーフ王も感銘を受けています。
「これはまた」
「実に素晴らしい詩じゃ」
「これが李白殿の詩か」
「これまたよいのう」
「お褒めに預かり嬉しい限り、それでは」
 李白さんは二人の王様に応えて言いました。
「他の詩も詠わせてもらうか」
「他のというと」
「漢詩以外のものを」
「何と、貴殿漢詩以外も詠えるのか」
「外の世界にいた時は漢詩のみであったのが」
 それはとです、ノーム王に応えてお話しました。
「今では英語の詩も詠むし和歌もな」
「詠うのか」
「そうなっていて」
 それでというのです。
「楽しんでいる次第」
「そうなのか」
「いや、飲めば飲む程」 
 まさにと言う李白さんでした。
「わしは詩を詠めまする」
「凄いのう、酔いどれ詩人ということか」
「そういえば他にもそうした詩人がいたぞ」
 ドワーフ王はノーム王に言ってきました。
「確かアブー=ヌワースというな」
「ああ、あの遊び人か」
「遊び人で頭の回転も早いな」
「風来坊のな」
「あの御仁とは友達同士でして」
 李白さんも言ってきました。
「気が合いまする」
「似た者同士でか」
「はい」 
 そうだというのです。
「わしもそう思っています」
「やはりそうか」
「わしは今はここにいますが」
 天帝さんの宮殿にです。
「よく旅をしておりまする」
「オズの国中をじゃな」
「空を巡ったり地上も地下も巡って」
 そうしてというのです。
「旅をして詠っています」
「ではノームの国にもか」
「入って色々観て回ったことがありまする」
「そうであったか、ではな」
 それならとです、ノーム王は李白さんに言いました。
「今度来たらな」
「その時はですか」
「ノームの宮殿に来てな」
「そうしてですな」
「わしに挨拶をしてくれ」
「それでは」
 李白さんもそれではと応えました。
「そうさせて頂きまする」
「それではな」
「そして詩を詠みまする」
「そうしてくれ、無論酒もな」
「出してくれますか」
「そうさせてもらう」
「それは楽しみです、ノームの国の酒も美味かったので」
 だかだというのです。
「是非共」
「それではな」
「その時お願いします」
「ドワーフの国に来たこともあったな」 
 今度はドワーフ王が李白さんに言ってきました。
「そうであったな」
「はい、そちらも」
「ではな」
「今度ドワーフの国を旅すれば」
「その時は来るのだ」 
 ドワーフの王宮にというのです。
「そしてな」
「それで、ですな」
「酒を飲んでな」
「詩を詠う」
「そうしてくれ」
「その様に」
「詩のお話をするとは思わなかったわ」
 ここで言ったのはポリクロームでした。
「この宮殿でね」
「急に何かのお話が出るのがオズの国だからな」
 ノーム王はポリクロームに応えました。
「だからな」
「こうしたお話が出ても」
「普通ではないか」
「言われてみればそうね」 
 確かにとです、ポリクロームも頷きました。
「オズの国はね」
「そうした国だな」
「ええ、急にね」
「何かが起こってな」
「お話もね」
「出て来るな」
「そうした国ね」
 ノーム王に納得したお顔でまた頷きました。
「だからこの宮殿でもね」
「詩の話になってもな」
「何でもないわね」
「そういうことだよ」
「納得したわ」
「いや、詩は実にいい」
 ノーム王は笑ってこうも言いました。
「聞いていると心が豊かになる」
「そうよね、不思議な位ね」
「詩は魔法だ」
 こうもです、ノーム王はお話しました。
「聞いていると自然と心が変わる」
「それだけでね」
「そして自分も詠えば」
 詩をというのです。
「ロマンチックになれる」
「そうしたものでね」
「まさにな」
「魔法ね」
「そう思う」
「そう思うことこそが大事なのです」
 李白さんも言ってきました。
「詩については」
「聞いて自分も詠ってか」
「はい、心が変わり」 
 そしてというのです。
「ロマンチックになることを楽しむ」
「そうなることがか」
「よいのですから」
「お主も詠っておるか」
「そして聞くことも」
 これもというのです。
「いいのです、ですかわしはです」
「オズの国でもか」
「旅をして」
 そうしてというのです。
「そのうえで、です」
「酒を飲んでじゃな」
「詩を詠っております」
「そうしておるか」
「かつては詩仙と呼ばれました」
「もう今はか」
「本物の仙人になった様に」
 まさにというのです。
「楽しんでおりまする」
「成程のう」
「ではノームの国にお邪魔した時は」
「もてなさせてもらう故な」
「詠わせて頂きます」
「そうするとよい、では今宵はこれからも存分にだ」
 ここでまた天帝さんが言いました。
「楽しんでくれ、余興も行ってな」
「ええ、楽しませてもらうわ」
 トロットが応えてでした。
 一行は天帝さんの宮殿で存分に楽しみました、そしてです。
 この夜それに次の日にこれ以上はないまでのもてなしを受けてでした、それから次の歴訪先に向かいました、お空の歴訪はまだ続くのでした。








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