『新オズのリキティンク』




                第九幕  お花見の場所を決めて

 リンキティンク王はこの日朝起きてご飯を食べる時にでした。
 笑顔で、です。こう言いました。
「今日は鶴見公園に行こうぞ」
「あちらになのね」
「うむ、そうしてな」
 アン王女に応えて言います。
「身体を動かして遊ぶか」
「いいわね、そうした楽しみもね」
「あるのう」
「ええ、それじゃあね」
「今日はそちらにじゃ」
「行きましょう」
 王女は朝ご飯のおかずの卵焼きを食べつつ応えました。
 そして皆この日は朝ご飯を食べ終わるとすぐに鶴見公園に行きました、公園はかなり広くて緑が多くてです。
 沢山の人が遊んでいます、中には犬や猫を連れて一緒にいる人もいます。・
 そうした人達も見てです、リンキティンク王は楽しそうに笑いました。
「ほっほっほ、よい光景じゃな」
「ええ、まさに公園ですね」
 ボボ王子も笑顔で応えます。
「こちらは」
「笑顔に満ちてのう」
「活気のある」
「よい場所じゃ、では今からじゃ」
「僕達もですね」
「遊んでな」
 そうしてというのです。
「身体を動かしてじゃ」
「楽しみましょう」
「是非な、街を観て回るのもよいが」
「こうした場所に行くのもいいですね」
「そうじゃ、時としてな」
「それでは」
「これから遊ぼうぞ」
 早速お外で遊ぶ道具も出してでした。
 皆で遊びはじめました、鬼ごっこやフットボールをしてです。
 皆で遊びます、その中でです。
 カエルマンは休憩の時にハンカチで汗を拭きつつ言いました。
「いやあ、いい汗をかいてるよ」
「そうですね」
「こうして遊ぶのもいいね」
 クッキーに笑顔で応えます。
「本当に」
「そうですね、私もです」
「こうして汗をかくこともだよ」
「気持ちいいです」
「実にね」
 こうお話してでした。
 休憩の後でまた身体を動かします、そしてです。
 ふとです、リンキティンク王は公園の中の桜達を見て言いました。
「桜もいいのう」
「そうだね、この公園はね」
 魔法使いもその桜を見て頷きます。
「桜もいいね」
「そうであるな」
「凄くね」
「数が多くてのう」
「三千本はあるかな」
「そうじゃな、そういえばじゃ」
 リンキティンク王はここで言いました。
「秀吉さんはお花見が好きであったな」
「また楽しみたいって言っていたね」
「ではここでじゃ」
 まさにとです、リンキティンク王は言いました。
「開いてはどうじゃ」
「お花見をだね」
「ここは桜も多いしな」
 まずこのことがあってというのです。
「大勢の人が集まることが出来るな」
「そうだね」 
 魔法使いはその通りだと答えました。
「ここは」
「だからじゃ」
「秀吉さんに提案してみるんだ」
「そうしようか」
「いいと思うよ」
「ではな、しかしな」  
 魔法使いはこうも言いました。
「一つ思うことはな」
「何かな」
「うむ、秀吉さんがどう言うかじゃ」
 このことがというのです。
「問題じゃが」
「あの人が何処で開きたいか」
「そうじゃ、それ次第じゃな」
「そう言えばーーです」
 チクタクが言ってきました。
「秀吉さんのーーお花見のーー場所ーーは」
「何処だったかね」
「この街全体で楽しんでおられるみたいだけれど」
「外の世界では何処で楽しまれたか」
「そのことを知りたいんだね」
「チクタクとしては」
「そうーーです」
 チクタクはナターシャ達五人に答えました。
「何処ーーでしたーーか」
「ええと、何処だったかしら」
「ちょっと知らないね」
「お花見は好きだっていうことは知っているけれど」
「それが何処か」
「問題はね」
「少し聞いてみよう」
 ここでリンキティンク王が言ってきました。
「誰かにな」
「そうですね、誰か知っている人に」
「是非聞きましょう」
「こうしたことは知識ですから」
「知識だとムシノスケ教授ですか」
「あの人になりますか」
「そうじゃな、では少し聞こう」
 リンキティンク王も応えてでした。
 自分のスマートフォンを出してムシノスケ教授に電話をかけてそのうえで聞きました、すると教授はこう答えました。
「一番有名なのは醍醐寺でかな」
「そのお寺で開いたのか」
「日本の京都にあるね」
 教授は自分のスマートフォンから答えます。
「そこでだよ」
「開いたのか」
「秀吉さんが外の世界を去る少し前に」
 その頃にというのです。
「大々的に開いたんだ」
「そうだったのか」
「七百本の桜を用意して」
 そうしてというのです。
「千三百人もの人を呼んでね」
「開いたのか」
「そうだよ、醍醐の花見と呼ぶんだ」 
 そのお花見はというのです。
「秀吉さんのお話の一つだよ」
「成程のう、そうしたお花見をしたのじゃな」
 リンキティンク王は納得しました。
「よくわかった」
「知ってくれて何よりだよ」
「うむ、ではな」
「これからだね」
「秀吉さんと話をしてな」
 そうしてというのです。
「その醍醐の花見よりもじゃ」
「大きなお花見をだね」
「この公園でじゃ」
 今自分達がいる鶴見公園でというのです。
「是非じゃ」
「開いてもらおうとだね」
「しようか」
「そうお話するんだね」
「うむ、直接会ってな」
 こう教授にお話してでした。
 リンキティンク王は教授とのお話を終えて皆に言いました。
「この三千本の桜をじゃ」
「皆と一緒にですね」
「見ながらな」
 王子に応えてお話します。
「そうしてじゃ」
「飲んで食べて」
「そしてじゃ」 
 そのうえでというのです。
「歌って踊ってな」
「楽しみますね」
「そうなろうと提案するぞ」
 こう言ってそうしてでした。
 秀吉さんにお話することを正式に決めましたがふとでした。
 リンキティンク王は自分達の前でお相撲を取っている人達がいるのを見ました、それで気付いた様に言いました。
「そう言えばこの街も日本の街じゃしな」
「はい、お相撲もありますね」 
 ナターシャが応えました。
「そうですね」
「日本ですとお相撲は欠かせないですね」
 恵梨香も言います。
「どうしても」
「格闘技だけじゃなくて神事でもあるんですよね」 
 カルロスも言いました。
「お相撲は」
「だから日本ですと絶対にありますね」
 神宝もそのお相撲を見ています。
「神社でもやりますし」
「遊びでもして」 
 ジョージも見ています。
「それで何かと」
「そうであるな、レスリングとはまた違ってな」
 それでと言うリンキティンク王でした。
「遊びとしても神事としても行われるな」
「そう言えば信長さんもお好きでしたね」
「あの人は無類のお相撲好きで」
「何かと開かれて」
「そうしてですね」
「楽しまれてましたね」
「あの人は今もだよ」 
 カエルマンが五人に答えました。
「お相撲が好きでね」
「それでか」
「大会も開いているよ」
 こうリンキティンク王にもお話しました。
「そうしているよ」
「そうなのじゃな」
「うん、兎角ね」
「あの人はじゃな」
「無類のお相撲好きだよ」
「ではあの人の家臣の秀吉さんもか」
「嫌いではないと思うよ」
 すぐに答えました。
「あの人もね」
「ではじゃ」
「お相撲大会を開くこともだね」
「お話してみるぞ」
「ではね」
「では今からです」 
 王子が言ってきました。
「秀吉さんに連絡をして」
「そしてじゃな」
「何時お会い出来るか」
「それで会う予約を取ってもらってな」
「お話しましょう」
「それがよいのう」
「いきなりでは秀吉さんにも都合がありますし」
 そのことも考えてというのです。
「ですから」
「それではな」
「はい、今から僕がお電話を入れて」
「何時会えるかじゃな」
「確認します」
「頼むぞ」
 こうお話してでした。
 王子は秀吉さんにお電話を入れました、そうしてです。
 お話をするとでした。
「明日の午前中からです」
「会えるのか」
「はい」
 そうだというのです。
「早速」
「ふむ、早いのう」
「そうですね、ですがお話出来るのなら」
「早いうちがよいのう」
「それではですね」
「明日の朝大阪城に行ってじゃ」
 秀吉さんのお家でもあるこのお城にというのです。
「お会いしてじゃ」
「提案しますね」
「相撲のことも入れてな」
「この公園でお花見をすることを」
「提案しようぞ」
「それでは」
「そうしようぞ、ではこの話はこれで決まりということでな」 
 それでというのです。
「また遊ぶか、しかし今何時じゃ」
「今丁度十二時になりました」  
 王子は時計を確認して答えました。
「お昼ご飯の時間ですね」
「そうか、では何を食べるか」
「近くにお弁当の木があるし」 
 王女がその木を観て言いました。
「あれでお弁当食べる?」
「そこで食べている人もおるしな」
「どうかしら」
「それもよいのう、しかしな」 
 リンキティンク王はここで、でした。
 公園の中に屋台があるのを見ました、その屋台はといいますと。
「お寿司の屋台があるぞ」
「あっ、そうね」
 王女もその屋台を見て言います。
「それじゃあね」
「今日のお昼はじゃ」
「お寿司ね」
「それを食べるとするか」
「そうね、皆でね」
「そういえばこの街に来てじゃ」
 そうしてというのです。
「色々なものを食べたが」
「それでもお寿司はね」
「食べておらんかった」
 まさにというのです。
「一度もな」
「それじゃあね」
「これからじゃ」
「お寿司食べましょう」
「それではな」
 こうお話してでした。
 皆で屋台のところに行って楽しくお寿司を食べてでした。
 楽しみますがその中で、です。
 リンキティンク王はしめ鯖を食べて言いました。
「鯖もよいのう」
「バッテラというのもありますが」
 王子はそちらのお寿司を食べて言いました。
「こちらもです」
「美味いか」
「はい、このお寿司ははじめて食べましたが」
 それでもというのです。
「かなりです」
「美味いのじゃな」
「そうです、王様もどうですか?」
「しめ鯖の次はな」
「バッテラをですね」
「いただくぞ」
 こう言って実際にでした。
 リンキティンク王は今度はそのバッテラを食べました、一口食べるとすぐに嬉しそうなお顔になって言いました。
「うむ、まことにじゃ」
「美味しいですね」
「このバッテラもな」
「そうですよね」
「これはじゃ」
 是非にと言うのでした。
「おかわりが欲しいわ」
「お気に召されましたね」
「凄くのう、いやお寿司は知っておったが」
「それでよく召し上がられていますね」
「そうであるが」 
 それでもというのです。
「このバッテラはじゃ」
「初めて召し上がられて」
「実にじゃ」 
 まさにというのです。
「美味いと思ったぞ」
「それは何よりですね」
「ではもう一つじゃ」 
 バッテラをというのです。
「いただくぞ」
「それでは」
「さて、それでじゃが」
 リンキティンク王はさらに言いました。
「わしが思うにな」
「何でしょうか」
「うむ、こうして屋台で外で食べるお寿司もな」
「いいですか」
「そう思った、これがな」 
 屋台の外にもうけられた席に皆で座って食べています。
「またよいのう」
「そうですね、本当に」
「だからじゃ」
 それでというのです。
「どんどん進むわ」
「お寿司が」
「いい感じじゃ、元々好きであるが」 
 それでもというのです。
「今はバッテラも食べたしじゃ」
「お外でも食べて」
「それでじゃ」
「余計にですね」
「食が進むわ」
 笑顔での言葉でした。
「これはな」
「そう言われると僕もですよ」
「食が進むな」
「僕もお寿司は好きですが」
 鳥貝を食べつつ言います。
「今日は特にです」
「そうであるな」
「ちなみに回転寿司も好きでして」
「あれもよいのう」
「そうですよね」
「すぐに来てな」 
 お寿司がというのです。
「手軽に食べられる」
「それがいいですね」
「それにデザートもじゃ」
 こちらもというのです。
「すぐにじゃ」
「来ますからね」
「だからな」
 回転寿司もというのです。
「いいぞ」
「本当にそうですね」
「だから今度はな」
 さらに言うリンキティンク王でした。
「回転寿司もじゃ」
「食べますね」
「そうするぞ」
「次の機会は」
「是非な」
「このバッテラもこの街の名物なのね」  
 王女もバッテラを食べて言います。
「そうなのね」
「そうみたいだね」
 魔法使いははまちを食べつつ応えました。
「これが」
「そうね、色々名物のある街ね」
「食べものでもね」
「こんな街もあるのね」
「嬉しいことだよ」
「ええ、この街にずっといたら」
 王女はこうも言いました。
「凄くね」
「美味しい思いが出来るね」
「いつもね」
「そうなることは間違いないね」
「もう三食ね」
 朝昼晩というのです。
「それも毎日よ」
「美味しいものを食べて」
「満喫出来るわね」
「絶対にそうなるね」
「そう思ったら」
 それこそというのです。
「いたくなったわ」
「ずっとかな」
「そうね、けれどね」
「やっぱり祖国が一番だよね」
「ええ、あの雰囲気がよ」
 王女は魔法使いににこりと笑って答えました。
「最高よ」
「王女が生まれ育ったね」
「あの国がね」
 本当にというのです。
「私は何といってもね」
「一番好きでだね」
「この街は確かに素敵だけれど」
 それでもというのです。
「一番好きで住みたい国は」
「祖国だね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「何があってもね」
「このことは変わらないね」
「絶対にね」
 こう魔法使いに答えました。
「この街は大好きになったけれど」
「それはそうなるね」
「ええ、だからね」
 それでというのです。
「この街でのことが終わったらね」
「お国に戻って」
「そこで幸せに暮らすわ」
「そうするね」
「私のお家はあちらにあるのよ」
 祖国にというのです。
「だったらね」
「あの国に帰るね」
「そうするわ」
 魔法使いにお話しました、そしてです。
 皆で色々な遊びをしてこの日も楽しみました、お寿司も美味しかったです。夜は夜で河豚鍋を楽しみました。
 次の日の朝です、秀吉さんにお会いしますと。
 秀吉さんは皆から鶴見公園のお話を聞いてそれはと応えました。
「うむ、あそこじゃな」
「お花見をするのならじゃな」
「この街で何処がいいかというとな」
 それはというのです。
「色々あるが」
「数が違うのう」
「三千本もあるからな」
 桜の木がというのです。
「それならじゃ」
「あそこじゃな」
「外の世界の鶴見緑地は知らんが」
「こちらではな」
「三千本もあるからな」
 桜の木がというのです。
「それならじゃ」
「あちあであるな」
「そうじゃ」
 リンキティンク王にまさにというお顔で答えます。
「他はないわ」
「ではじゃな」
「決めたぞ、あちらでじゃ」
 鶴見公園でというのです。
「大々的にじゃ」
「お花見をするな」
「うむ」
 御殿の和風の応接の間でお話をして答えます。
「そうするぞ」
「それではな」
「それでじゃが」
 秀吉さんはさらに言いました。
「来る者は拒まずじゃ」
「誰でもか」
「来たい者はな」
 そのお花見にというのです。
「それこそじゃ」
「誰でもじゃな」
「来てじゃ」
 そうしてというのです。
「楽しめばよい」
「それはよいのう」
「こちらも酒や馳走を用意するが」
 それでもというのです。
「好きに持って来てもな」
「よいか」
「うむ、弁当でもな」
「あの公園には弁当の木もあるしのう」
「好きなものを飲んで食ってじゃ」
「そうしてじゃな」
「酒も馳走もな」
 そうしたものをというのです。
「楽しんでな」
「歌も踊りもじゃな」
「楽しむことじゃ、それにじゃ」
 秀吉さんはさらに言いました。
「コンサートや漫才もじゃ」
「そうしたものもか」
「開くぞ」
 そうするというのです。
「是非な」
「そうしたこともするか」
「催しをせねばじゃ」
 秀吉さんは笑って言いました。
「ならんわ」
「お花見をするならか」
「そうじゃ」 
 まさにというのです。
「そうした催しもじゃ」
「行うか」
「うむ、昔は能や舞楽であったが」
 開く催しはというのです。
「今はじゃ」
「コンサートか」
「それにお笑いじゃ」
「そうしたものか」
「無論能等も催すが」
 それと共にというのです。
「ロックもな」
「催すか」
「そうじゃ、それで漫才にじゃ」
「あと落語もあるのう」
「新喜劇もな、それにじゃ」 
 秀吉さんはリンキティンク王に明るく笑いつつお話をしていきます。
「相撲も忘れんぞ」
「そちらもじゃな」
「兎角な」
「何でもじゃな」
「楽しいものをじゃ」
「催すな」
「うむ、そうするぞ」
 こう言うのでした。
「是非な」
「何か凄いお花見になりそうですね」 
 笑顔で、です。ボボ王子は言いました。
「これは」
「昔醍醐で催したが」
「あの時以上のですか」
「派手で賑やかでな」
 そうしてというのです。
「皆が楽しめるじゃ」
「そうしたものにしますね」
「うむ、あとじゃ」
 こうもです、秀吉さんは言いました。
「誰もが自分を卑しむことはな」
「ないですか」
「それで楽しめばよい、わしは奴隷とかいうものは嫌いじゃ」
 秀吉さんはこのことは真面目に言いました。
「オズの国なくて本当によいと思っておる」
「ラゲドー氏はかつて私達全員を奴隷にするつもりだったね」
 魔法使いはこのことをお話しました。
「オズの国の征服してね」
「それじゃ、奴隷なぞ論外じゃ」 
 秀吉さんは魔法使いにも言いました。
「わしは天下人であった頃もじゃ」
「奴隷は否定していたね」
「そうじゃ、民は治めてもな」
「奴隷はだね」
「何があってもじゃ」
 断固としてという口調でした。
「認めんぞ」
「いい考えだね、奴隷は必要ないよ」 
 カエルマンも言います。
「この世にね」
「そうであるな」
「誰もが自分のやるべきことをしたらね」
「奴隷はいらぬのう」
「そうだよ、そんなものがあることは」
「間違っておるな」
「そうだよ、秀吉さんは正しいよ」
 他ならぬ秀吉さんご自身に言います。
「その考えはね」
「そうであるな」
「うん、その考えでいこうね」
「これからもな」
「実はこの人奴隷になっていた人達を助けたことがあるんだよ」
 今も秀吉さんのお隣にいるねねさんが言ってきました。
「実はね」
「そうなんですか」
「そうなんだよ、日本の人達で奴隷になって他の国で働かされている人達がいるって聞いて」
 クッキーにこのことをお話しました。
「それですぐにだよ」
「その人達を助けたんですか」
「お金を出して自分が奴隷になっていた人達を買って」 
 そうしてというのです。
「日本に戻してね」
「そうしてですか」
「元の立場に戻したんだよ」
「それは凄いですね」
「当然のことをしただけじゃ」
 秀吉さんは特に誇るでもなく言いました。
「天下人ならばじゃ」
「民の人達をーー救うことはーーですーーね」
「当然じゃ、その話を聞いて驚いてじゃ」
 チクタクにもお話します。
「すぐにそうしたが」
「それはーーですーーね」
「まさにじゃ」 
「当然のーーことーーですーーか」
「そうじゃ、人はじゃ」
 何と言ってもというのです。
「奴隷になってはいかん」
「絶対にーーですーーね」
「そうじゃ」
 まさにというのです。
「それでじゃ」
「その様にーーされて」
「今も言っておる」
「左様ーーですーーか」
「若しかつてのラゲドー氏の様な考えの者が出れば」 
 秀吉さんは真面目なお顔で言いました。
「わしは反対するぞ」
「絶対にーーですーーね」
「誰も奴隷にしてはならん」
「その通りね、皆が楽しく暮らせないとね」
 アン王女もその通りだと頷きます。
「よくないからね」
「ましてオズの国はそうした国じゃな」
「ええ」
 秀吉さんにその通りだと答えます。
「そうよ」
「ならばじゃ」
「若しそんな人がまた出て来たら」
「わしは断固としてじゃ」
「反対されるのね」
「そうするぞ、そしてさせん」
「いいお考えね」
 秀吉さんのそのお考えを聞いて心から言いました。
「本当にね」
「そう言ってくれて何よりじゃ、それで今日の昼じゃが」
 秀吉さんはあらためて皆に言ってきました。
「何を食うのじゃ」
「まだ決めておらん」
 リンキティンク王が答えました。
「これがな」
「そうなのか、ではじゃ」
 秀吉さんはそう聞いてこう言いました。
「鱧はどうじゃ」
「鱧か」
「あの魚を食わんか」
「そういえばこの街ではあの魚も食べるのう」
「これがまた美味くてのう」
 秀吉さんはとても楽しそうに言いました。
「それでじゃ」
「このお昼はか」
「わしがこの御殿で食うが」
「わし等もか」
「どうじゃ、一緒に食わんか」
「そうしてよいのか」
「遠慮は嫌いじゃ」
 これが秀吉さんの返事でした。
「図々しいのはよくないが」
「遠慮はか」
「わしはそれが嫌いじゃ」
「それでか」
「他に食いたいものがあればよいが」
 それでもというのです。
「ないならな」
「今日のお昼はか」
「ここで鱧を食わんか」
 あらためて言いました。
「どうじゃ」
「それではな」
 ここで、でした。
 皆で相談しました、ここでナターシャ達五人が言いました。
「鱧美味しいのよね」
「うん、お鍋にしても揚げてもね」
「お吸いものもいいよ」
「あっさりしていてね」
「物凄く美味しいわ」
「うむ、お主達がそう言うならな」
 リンキティンク王も頷きました。
「わしも賛成じゃ」
「僕もです」
 王子もでした。
「この子達がいいのなら」
「鱧は美味しいからね」
 カエルマンは楽しみにしています、お顔にもそれが出ています。
「是非にだよ」
「私も好きです」
 クッキーも言ってきました。
「お昼がそれなら嬉しいです」
「うん、願ってもない申し出だよ」  
 魔法使いも乗り気です。
「確かに図々しいのはよくないけれど」
「遠慮は嫌いだって言うしね」
 王女は秀吉さんのお言葉から言いました。
「それならね」
「私はーー食べないーーので」
 チクタクはこうでした。
「皆さんーーどうーーぞ」
「決まりじゃな、申し出を受けようぞ」 
 リンキティンク王が応えました。
 こうして皆で秀吉さんから鱧をご馳走することになりました、かくして皆でアクアパッツァにお吸いもの、焼いたもの、あらいに天麩羅等を食べますが。
 秀吉さんは食べながらにこにことして言いました。
「美味いのう」
「はい、本当に」 
 ナターシャも応えつつ食べています。
「美味しいです」
「鱧っていいですよね」
 ジョージは天麩羅を食べています。
「あっさりしていて」
「どんなお料理にも合いますね」
 神宝は焼いたものを楽しんでいます。
「本当に」
「お顔は怖いですが」
 カルロスはお吸いものの中にある頭の部分を食べています、そのうえで言うのです。
「これが美味しいですね」
「まさか鱧まで食べられるなんて」
 恵梨香はあらいを食べています。
「思いませんでした」
「世の中思わぬ幸運もある、それでじゃが」
 秀吉さんはアクアパッツァを食べて言いました。
「今回南蛮の料理も食べておるがな」
「ああ、アクアパッツァですね」
「こちらですね」
「お鍋じゃなくてですね」
「こちらにして」
「それで出してくれたんですね」
「これもよいのう」
 こう五人に言うのでした。
「食ってみると」
「そうですね、確かに」
「鱧ってアクアパッツァにしてもいいですね」
「白身魚なんで合いますね」
「こちらも美味しいです」
「幾らでも食べられる感じです」
「和食にしてもよいが」
 鱧はというのです。
「南蛮料理にしてもよいのう」
「一つ聞きたいのじゃが」
 リンキティンク王もアクアパッツァを食べています、そのうえで秀吉さんに対して尋ねるのでした。
「南蛮は何処じゃ」
「欧州じゃ」
 秀吉さんはすぐに答えました。
「外の世界で言うな」
「あちらか」
「そうじゃ、わし等が外の世界におった頃はな」
「あちらをそう呼んでおったか」
「スペインやポルトガルをな」
 こういった国々をというのです。
「主にそう呼んでな」
「それでか」
「うむ、欧州の他の国もじゃ」
「南蛮と呼んでおってか」
「それで今もじゃ」
「そう呼んでおるか」
「わし等はな」
 こうお話するのでした。
「その様にしておる」
「成程のう」
「まあわし等の頃の呼び方でな」
「何かと思ったが」
「そこをわかってくれたらな」
「よいか」
「わしはな、しかしじゃ」 
 秀吉さんはあらためて言いました。
「このアクアパッツァはな」
「美味いのう」
「鯛や鱈でも美味いが」
「鱧でもじゃな」
「これが美味い」 
 笑顔で食べつつ言います。
「まことにな」
「全くじゃな」
「うむ、それでデザートじゃが」
「それは何じゃ」
「氷菓じゃ」
 こちらだというのです。
「今で言うとアイスクリームじゃ」
「そちらか」
「豆乳もな」
「おお、あれか」
「お主も知っておるか」
「美味いのう」
 豆乳のアイスクリームもというのです。
「実にな」
「和風でな」
「あれもまたよいのう」
「わしも好きでな」
 秀吉さんもというのです。
「それでじゃ」
「よく食するか」
「デザートとしてな」
「この人はあれなんだよ」
 ねねさんは天麩羅を楽しみつつ言いました。
「新しいもの珍しいものが好きでね」
「殿と同じじゃな」
「そうだね、本当に」
「影響を受けたか」
 こうもです、秀吉さんは言うのでした。
「この猿顔からな」
「好奇心旺盛だっていうんだね」
「猿はそうであるからな」
「お前さんもかね」
「そうかもな、しかしな」
 秀吉さんはねねさんに応えて笑ってお話しました。
「わしはそんなじゃ」
「新しいもの好き珍しいもの好きがだね」
「それがじゃ」
 まさにというのです。
「好きでな」
「それでだね」
「アクアパッツァも好きでな」
 それでというのです。
「氷菓なぞもじゃ」
「好きだね」
「あとケーキなぞもな」
「シュークリームもだったね」
「甘いものも好きでな」
 だからだというのです。
「菓子もじゃ」
「何でも食べるね」
「しかし黒い食器だとな」
「お箸でもお碗でもね」
「いらん」 
 食べないというのです。
「あれはよくない」
「お前さん昔から黒い食器好きじゃないね」
「茶器でもな」
 こちらでもというのです。
「どうもな」
「昔からだね」
「嫌いでのう」
 それでというのです。
「それで出されるとな」
「食べないね」
「そうしておる」
「それは何故じゃ」
 そのお話を聞いてでした、リンキティンク王は尋ねました。
「黒い食器が嫌いなのじゃ」
「縁起というかな」
「それでか」
「何しろ戦をしておるとな」
「縁起がか」
「大事でな」
 それでというのです。
「わしは昔からじゃ」
「縁起、げん担ぎでか」
「それでじゃ」
「黒い食器はか」
「避けておるのじゃ」
 そうしているというのです。
「外の世界におった頃からな」
「そうなのか」
「今もそうでな」
 それでというのです。
「用いぬ」
「そこはこだわるか」
「今もな」
「そうなのじゃな」
「まあそれ以外はな」
「何でもか」
「食うぞ」 
 黒い食器を用いていないと、というのです。
「そうしておる、ではお花見はな」
「あの公園でじゃな」
「しようぞ」
 鱧を食べつつ笑顔で言いました、こうしてお花見のことは決まりました。








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