『新オズのリキティンク』




                第六幕  狐と陰陽師

 チンチン電車に乗った夜はです。
 皆で町の人達が暮らしている住宅街の中にあるホルモン屋さんに入ってホルモンを食べました、そうしてです。
 リンキティンク王は皆にです、こんなことを言いました。
「明日も神社に行こうかのう」
「今日の神社とは別の神社なの」
「うむ、今度は晴明神社といってな」
 アン王女に神社の名前からお話します。
「若々しくて美形の物凄い陰陽師さんがおるのじゃ」
「あの、その人って」
 ナターシャはそう聞いて驚いたお顔で言いました。
「若しかしなくても」
「安倍晴明さんですよね」
 ジョージも驚いたお顔になっています。
「そうですよね」
「晴明神社で陰陽師さんと言いますと」
 神宝もそうしたお顔で言います。
「もうそれこそ」
「あの人美形ってイメージ強いですし」
 カルロスもかなり驚いている感じです。
「それなら」
「間違いないわ、だってあの人も大坂出身だから」
 恵梨香は四人に述べました。
「阿倍野ってあの人からきてる地名って聞いたことあるし」
「まさかと思ったけれど」
「あの人もおられるなんて」
「オズの国に」
「そしてこの街に」
「何を驚いておるのじゃ」 
 リンキティンク王は自分達でお話する五人に尋ねました、そうしつつ串に刺してあるホルモンを食べていきます。
「一体」
「いえ、驚きますよ」
「まさかあの人までなんて」
「秀吉さんや西鶴さんだけでなくて」
「お笑い芸人の人達に加えて」
「安倍晴明さんまでなんて」
「オズの国では夢のある人達が集まるのじゃ」
 笑ってです、リンキティンク王は答えました。
「それならじゃ」
「安倍晴明さんもですか」
「あの人も来られるんですね」
「夢のある人だから」
「それで、ですか」
「オズの国に来られていますか」
「左様、あの神社がまた面白くてのう」
 そしてというのです。
「狐も一緒じゃ」
「あっ、何かです」
 狐と聞いてです、ナターシャは言いました。
「安倍晴明さんって狐と縁があるんでしたね」
「そうそう、お母さんが狐だって」
「そんな言い伝えがあるんだよね」
「実際はどうかわからないけれど」
「そんなお話もあるんだったね」
 恵梨香達四人も言います。
「それで狐なんだ」
「狐と縁があるんだ」
「その神社も」
「そうなのね」
「それで狐もなのね」
「左様、だからじゃ」
 リンキティンク王は五人にあらためてお話しました。
「明日はそちらに行こうぞ」
「わかりました」
「是非そうしましょう」
「まさか安倍晴明さんにお会い出来るなんて」
「陰陽師といえばあの人ですが」
「あの人にお会い出来るなんて」
「とても素敵な人だよ」
 ボボ王子も笑顔で言ってきました。
「知的ですらりとしていて整ったお顔立ちでね」
「イメージ通りですね」
「物凄い美形って感じなんですが」
「漫画や小説とかだと」
「陰陽道も凄くて」
「天才って感じで」
「うん、だから明日は楽しみにしておいてね」
 五人に笑顔のままお話します。
「本当にね」
「そして今はじゃ」
 リンキティンク王がまた言ってきました。
「こうしてホルモンを食べようぞ」
「何というかね」
 カエルマンはそのホルモン、木の串に刺されて焼かれたそれを次から次に食べながらリンキティンク王に応えました。
「癖がある味と食感だけれどね」
「その癖がじゃな」
「実にね」
 まさにというのです。
「いいね」
「そうじゃろう、普通の肉とはな」
「また違うね」
「普通の肉より固かったりぐにゃりとした食感でじゃ」
 リンキティンク王はまず食感からお話しました。
「そして味もな」
「癖があるね」
「実にな」
「内臓の部分はね」
 生きもののというのです。
「こうしてだよ」
「癖があってのう」
「これはこれでだよ」
「美味いのじゃ」
「そうだね」
「それでだね」 
 魔法使いも言ってきました。
「お酒ともだね」
「合うのじゃ」
「そうだね」
「またビールを飲んでおるが」
 リンキティンク王の手には今夜も大きなジョッキがあります、そこには並々と注がれたビールがあります。
「ビールともじゃ」
「合うね」
「お好み焼きや串カツや関東煮もじゃが」
 それと共にというのです。
「このホルモンもじゃ」
「ビールと合うね」
「この街の食いものはビールとよく合う」
 実に、そうした言葉でした。
「最高じゃ」
「全くだね」
「いや、わしは甘いものが大好きじゃが」
「お酒もだね」
「大好きでな」
 魔法使いにそのビールを飲みつつ答えます。
「ビールもそうでな」
「それでだね」
「うむ」
 まさにというのです。
「今とても満足して折るぞ」
「そういうことだね」
「焼かれた匂いもいいですよね」
 クッキーはこちらも堪能しています。
「ホルモンは」
「匂いがまたのう」
「食欲をそそりますよね」
「全くじゃ、それで今夜もじゃ」
「楽しみますね」
「そうじゃ、皆で飲んで食べてじゃ」
 その様にしてというのです。
「楽しもうぞ」
「それでは」
 クッキーも笑顔で応えてでした。
 皆はこの日も美味しいものを満喫しました、そうしてです。
 皆で飲んで食べて満喫してでした。
 この日もホテルでゆっくりと休みました、お風呂とお布団も最高でした。
 翌日朝ご飯を食べてでした、リンキティンク王は皆をその神社に案内しました。その途中にでした。
 皆曲がりくねった坂を通りました、王女はその坂を歩きながらこんなことを言いました。
「何か蛇みたいね」
「曲がりくねっていてじゃな」
「ええ、そう思ったわ」
「何でもこの坂は口縄坂というらしいぞ」
「そうなの」
「うむ、丁度そこにおる人に聞いた」 
 見れば前からです。
 着流しの濃い緑色の着物に草履を身に着けその上にマントとボルサリーノの帽子という格好の面長の男の人が来ました、リンキティンク王は王女にその人を見つつお話しました。
「実はな」
「あの人からなの」
「そうじゃ、ちょっとよいか」
 リンキティンク王はその人にお声をかけました。
「この坂は口縄坂じゃな」
「通称やけどな」
 その人は笑顔で答えました、見れば面長で小さな目でお顔は笑っています。
「そうなってるで」
「そうじゃな」
「ああ、それで王様何処行くんや」
「晴明神社に行くのじゃ」
 リンキィンク王はその人に笑って答えました。
「皆に安倍晴明さんを紹介しにのう」
「ああ、見たら有名人ばかりやな」
「お主も知っておるか」
「皆な、名前とお顔は知ってるで」
「それは何よりじゃ」
「それで私も名乗ってええやろか」 
 その人から言ってきました。
「そうしても」
「うむ、是非共な」
「ほなな、私は織田作之助っていうんや」
 皆に笑顔で名乗りました。
「外の世界でもこっちの世界でも作家やってるで」
「あっ、あのカレーの人ですね」
「ご飯とルーを最初から混ぜてある」
「あのカレーの人ですね」
「そしてご飯の中に鰻があるあの鰻丼の」
「あの人ですね」
「ああ、それで善哉はや」
 織田さんはナターシャ達五人に笑って応えました。
「何といってもや」
「はい、あの善哉ですね」
「二つ出て来る」
「あの善哉ですよね」
「それですね」
「何といっても」
「そや、こっちの世界でも書いてるけどな」
 小説をというのです。
「美味いもんもや」
「楽しまれてますか」
「オズの国でも」
「それでこの街におられるんですね」
「そうされてるんですね」
「今も」
「そや、ほんまええわ」
 五人にこうも言いました。
「ずっといたいわ」
「ずっといられますよ」
 王子が織田さんに答えました。
「何時でもオズの国の他のところにも行けますが」
「この街におることもやな」
「出来ますよ」
 織田さんにこのこともお話します。
「織田さんがそうされたいなら」
「そやねんな、ただ私は織田さんって言われるのはな」
「抵抗がありますか」
「ああ、織田作って呼んでくれるか」
 その様にというのです。
「そうしてくれるか」
「織田作さんですか」
「外の世界でもそう呼ばれてたし」
 織田作さんと、というのです。
「それでな」
「そのうえで、ですか」
「オズの国でもな」
 こちらでもというのです。
「そう呼んでもらってるわ」
「それで、ですか」
「ああ、織田作さんって呼んでくれるか」
「わかりました、それでは」
 王子は一呼吸置いてでした、織田さんあらため織田作さんに言いました。
「織田作さん、これで宜しいでしょうか」
「ええ感じや、ほなな」
「これからはですね」
「王様達もな」
「織田作さんとお呼びしますね」
「よろしゅうな」
「それでだけれど」
 王女も織田作さんに言ってきました。
「ちょっといいかしら」
「どないしたんや?」
「織田作さんは何処かに行くみたいだけれど」
 前から歩いてきたことから言いました。
「何処に行くのかしら」
「ああ、ちょっと本屋さんまでな」 
 織田作さんは王女に笑って答えました。
「行くねん」
「そうなのね」
「かみさんに留守番頼んで」
 そのうえでというのです。
「ちょっと本を買うんや」
「作家さんだから本も必要ね」
「そや、これがまた出来たかみさんでな」 
 織田作さんは自分から奥さんのお話をしました。
「何かと助かってるわ」
「恋女房ね」
「そや、外の世界では先立たれたけど」
 そうなってしまったけれどというのです。
「こっちの世界ではな」
「また一緒になれて」
「もうずっとや」 
 それこそというのです。
「二人でおるで」
「それは何よりね」
「一緒になるまで色々あったし」
 昔を懐かしむお顔でこうも言いました。
「それでオズの国でも一緒で」
「嬉しいのね」
「ああ、今はパソコンで書いてるけど」
 作品をというのです。
「原稿に書いてた頃は辞書ひいたりもしてくれて」
「お仕事も助けてもらっていたのね」
「そや、もう離れんで」
 絶対にというのです。
「二度とな」
「ご安心ーー下さい」
 チクタクも織田作さんに言ってきました。
「オズの国ーーではーーです」
「死なんからな」
「誰もーーです」
「そやからな」
「お二人がーー離れるーーことーーはです」
 そうしたことはというのです。
「絶対にーーです」
「ないな」
「左様ーーです」
「そやな、そやからこれからもな」
「奥さんーーとーーですーーね」
「一緒におるわ、そうして小説書いてくわ」
 そうしていくというのです。
「是非な」
「はいーーそれーーでは」
「そういうことでな、ほな機会があれば」
「またーーですーーね」
「会おうな」
 笑顔で言ってでした。
 織田作さんは皆を別れて擦れ違う形で向こう側に行きました、皆はその織田作さんを見送ってまた坂を進みましたが。
 ナターシャはその中でこんなことを言いました。
「あの着物にマントと帽子の恰好が」
「よいのう」
「独特の粋さがありますね」
「うむ、わしも好きじゃ」
 リンキティンク王が見てもです。
「実にのう」
「粋ですよね」
「ああした格好もじゃ」
 是非にと言うのでした。
「してみたいわ」
「そうですよね」
「だからな」
 それでというのです。
「今度は」
「織田作さんのファッションをですか」
「してみるか」
「いや、日本の着物に草履にです」
 王子も言ってきました。
「帽子にマントとは」
「お主から見てもよいな」
「粋です」
 実際にというのです。
「実に」
「そうであるな」
「はい、王様がそう言われるならです」
「お主もか」
「してみたいです」
 織田作さんのファッションをというのです。
「是非」
「そうじゃな」
「はい、本当に」
「何でも昔の日本のファッションで」
 ナターシャがお話してきました。
「昔はああしたです」
「粋なファッションがか」
「あったそうです」
 昔の日本にはというのです。
「一九四〇年代までは」
「左様か」
「はい、織田作さんもその頃の方なので」
「ああしたファッションをか」
「今でも着られてますね」
「そうなのか、あのセンスは見事じゃ」
 リンキティンク王はこうまで言いました。
「和洋折衷というのじゃな」
「そうです」
「わしもしたいぞ」
「では」
「うむ、また着てみるぞ」
 こう言うのでした、そうしたお話もしながらです。
 晴明神社に着きました、するとです。
 いきなり尻尾が九本ある狐が出て来て皆に言ってきました。
「そろそろ来る頃だと思っていたわ」
「おお、そうなのか」
「ええ、晴明様が陰陽術でね」
 それでというのです。
「今日の午前中の今頃にお客さんがね」
「この神社に来るとか」
「言っておられたから」
 それでというのです。
「もうそろそろだってね」
「思っておったのか」
「そうしたらよ」
 笑顔で言うのでした。
「今丁度ね」
「わし等が来たのじゃな」
「そうよ、王様と王子様は前も来たけれど」
 それでもというのです。
「他の人達もなのね」
「こうしてじゃ」
「連れて来てくれたのね」
「左様、駄目であったか」
「いえ、お客さんは多い方がよ」
 狐は笑顔で答えました。
「嬉しいから」
「だからか」
「歓迎させてもらうわ」
 こうリンキティンク王にお話するのでした。
「私もね、そしてね」
「晴明さんもじゃな」
「勿論よ」
 その人もというのです。
「ではこれからね」
「晴明さんのころにじゃな」
「案内させてもらうわ」
 こう答えるのでした。
「今からね」
「ではな」
 リンキティンク王も笑顔で応えてでした。
 境内の社の前への案内を受けました、そしてです。
 その前に皆と一緒に行くとでした、そこに黒と白の日本の平安時代の礼装を着て烏帽子を被った細面で切れ長の黒い目を持つ鋭利で知的なお顔立ちのすらりとした長身の若い男の人がいました。見れば驚くまでの美形です。
 その人を見てです、アン王女は見惚れて言いました。
「いや、この人って」
「物凄い美形ですね」
 クッキーもうっとりとして言います。
「すらりとして長身で」
「お顔立ちも整っていてね」
「知的で気品まであって」
「美形ね」
「全くです」
「あの、この人がですね」
 ナターシャもその人を見てうっとりとしつつ言いました。
「安倍晴明さんですね」
「そうよね」
 恵梨香はナターシャの言葉に頷きました。
「案内してもらったというと」
「いや、僕から見てもだよ」
 カルロスもその人の外見に驚いています。
「物凄い美形だよ」
「これだけの美形なんて」
 ジョージも言います。
「想像以上だよ」
「噂には聞いていたけれど」
 神宝もその人を見ています、そのうえでの言葉です。
「実際にお会いしてみるとね」
「これだけの美形の人なんて」
「思いませんでした」
 また王女とクッキーが言いました。
「本当に」
「全くよね」
「貴方が安倍晴明さんだね」
 カエルマンはその人に直接尋ねました。
「陰陽師の」
「はい」
 お声も奇麗です、知的で整ったテノールの声です。
「そうです」
「やっぱりそうだね」
「本朝にいた頃は朝廷にお仕えしていまして」
「今はだね」
「こうしてです」
「オズの国にいて」
「人に頼まれますと」
 その時はというのです。
「陰陽道で、です」
「頼みごとを解決しているんだ」
「そうしています」
「そうなんだね」
「晴明様は凄いんだよ」
 ここで、でした。
 晴明さんの足下に何匹かの子狐達が出て来ました、どの子も非常に可愛くてそのうえ愛嬌も備えています。
「陰陽道で何でも解決されるんだよ」
「もう万事解決だよ」
「探しものだって見付けて」
「お天気だって変えられてね」
「式神を沢山出して人手も出せるし」
「本当に凄いんだよ」
「そして私達はその晴明様にお仕えしているのよ」 
 九尾の狐も言ってきました。
「そうしているのよ」
「そうだよね」
「九尾の狐さんもそうしていてね」
「お供の僕達もだよ」
「そうしているんだよ」
「皆晴明さんを慕っていてね」 
 狐はまた言いました。
「そうしているのよ」
「陰陽道は凄い力があります」 
 晴明さんはその奇麗で知的なお声で言いました。
「それ故に私もいつも気を付けています」
「お力をーーみだりにーーですーーね」
 チクタクが答えました。
「使わないーーことーーですーーね」
「はい」
 その通りだというのだ。
「その様に心掛けています」
「左様ーーですーーね」
「魔法と同じ様な力なので」 
 だからだというのです。
「常にです」
「気をつけてーーおられますーーか」
「そうしています」
「晴明様は自制心が凄いんだよ」
 また子狐達が言ってきました。
「ご自身の力がおわかりだからね」
「みだりに使われることはないよ」
「人のお願いを受けてね」
「そのお願いが正しいなら使われる」
「外の世界でもそうされていてね」
「オズの国でもなんだよ」
「そしてオズマ姫からも許可を受けているしね」
 魔法使いも言ってきました。
「仙術や妖術を使う人達と同じで」
「はい、法の許可もです」
 晴明さんは魔法使いにも応えて言います。
「得たうえで」
「陰陽道を使っているね」
「そうしています」
「力があると」
 それならとです、ボボ王子も言いました。
「みだりに使うとよくないからね」
「うむ、自制する心にじゃ」
 自分自身にとです、リンキティンク王も言います。
「法律のコントロールを受けてじゃ」
「使われるべきですね」
「どんな力もみだりに使うとじゃ」
 そうすると、というのです。
「本当にじゃ」
「大変なことになりますね」
「以前のラゲドー氏の様にじゃ」
 この人がノーム王だった頃の様にというのです。
「なってしまうぞ」
「そうですね」
「わしはあの御仁がノーム王だった頃は知らぬが」 
 それでもというのです。
「しかしな」
「それでもですね」
「うむ、それでもな」
 しかしというのです。
「話は聞いておるからな」
「今こうしてですね」
「話せる」
 そうだというのです。
「わしもな」
「そうですね」
「うむ、だからな」 
 それでというのです。
「わしもあの様にはじゃ」
「なりたくないですね」
「そして王としてな」
 その立場からもお話します。
「その様な者そして振る舞いはな」
「最初からですね」
「ない様にな」 
 その様にというのです。
「する様にしておる」
「左様ですね」
「わしも王であるなら」
 それならというのです。
「国を治めるからな」
「法律も定めますし」
「心掛けておかねばな」
「全くですね」
「尚この街は秀吉さんが治めています」
 ここで、です。また晴明さんがお話しました。
「そうしています」
「やはりそうか」
「はい、あの方がです」
「しかとじゃな」
「治められています」
「あの御仁なら大丈夫じゃな」
 リンキティンク王は秀吉さんならと答えました。
「至ってな」
「左様ですね」
「うむ、政がよくわかっておるな」
「この街では誰よりも」
「そうであるからな」
「ですが時折です」
 晴明さんはリンキティンク王に微笑んでお話しました。
「私は政のことで相談を受けます」
「陰陽道を使えるからか」
「はい、陰陽道は元々です」
「政にもか」
「力を使うものなので」
 だからだというのです。
「それで、です」
「秀吉さんからもじゃな」
「お話を聞きまして」 
「ご相談を受ける時があります」
「そしてじゃな」
「陰陽道を用い」
 そうしてというのです。
「応えています」
「成程のう」
「あの、よければです」
 ナターシャがここで晴明さんに言いました。
「私達にもです」
「陰陽道をですか」
「見せて欲しいのですが」
「どんなものがいいでしょうか」
 晴明さは微笑んで応えてくれました。
「それでは」
「式神や占いでしょうか」
「式神でしたら」
 すぐにでした、晴明さんは。
 数枚のお札を出しました、そのお札を投げるとです。
 一枚一枚が白い鳥になって飛びました、そうして彼等はお空を飛び回りますが晴明さんはそれを見つつ言いました。
「これで宜しいでしょうか」
「凄いですね」
「こういった術もです」
 まさにというのです。
「使えます」
「そうですか」
「はい、そして」
 それにというのです。
「占いですか」
「そちらも宜しいでしょうか」
「それでは今からです」
「はい、用意をします」
 狐が応えました。
「今から」
「そうしてくれますか」
「そうさせて頂きます」
 狐は畏まって応えてです。
 そうしてです、子狐達と共に縄等を使って陣を作ってでした。陰陽道の星の紋も出して占いの準備を整えました。
 晴明さんは陣の前に座すとでした。
 指で手を組んで次々と印を結んで呪文を唱えそうしてでした。
 占いをはじめました、そのうえでナターシャにお話しました。
「近々物凄くよいことがです」
「起こりますか」
「貴女にも皆さんにも」
 こうお話するのでした。
「そうなります」
「そうなのですか」
「ですからこの街で、です」
「これからもですね」
「楽しまれるといいです」
「わかりました」 
 笑顔で、です。ナターシャは応えました。
「それでは」
「うむ、予定通りじゃ」
「この街で楽しんでいこうね」
 リンキティンク王と魔法使いが応えました。
「丁度いいよ」
「そうしていこうぞ」
「それがいいかと、それでなのですが」
 晴明さんは一行に微笑んでこうもお話しました。
「この神社の近くにいいお店がありますと」
「食いもののか」
「はい」
 まさにというのです。
「おうどん屋さんです」
「うとんとなると」
「そうです、この街ではきつねうどんですが」
「それじゃな」
「それがまた美味しくて」
 リンキティンク王に笑顔でお話します。
「私からもです」
「お勧めじゃな」
「左様です」
「そうか、ではな」
「お昼はですね」
「その店に行ってな」
 そうしてというのです。
「食うか」
「そして隣にです」
「美味い店があるか」
「こちらはカツ丼です」
「カツ丼か」
「そうです、量が凄いです」
 このカツ丼はというのです。
「とりぷるとなりますと」
「丼三杯にカツが三つか」
「そうなります」
「それはかなりじゃな」
「如何でしょうか」
「うむ、今日の昼はきつねうどんにじゃ」
 それにというのでした。
「カツ丼をじゃ」
「召し上がられますか」
「そうするとしよう」
 こう言って実際にでした。
 一行は神社の後できつねうどんとカツ丼を食べました、お店の外に丁度食べられる席があったのでそこで、です。
 皆でその両方を楽しみます、見ればカツ丼はかなりのボリュームです。それで魔法使いも言いました。
「いや、凄いね」
「そうだね」
 カエルマンも言います。
「桁外れのボリュームだよ」
「だぶるでそれだから」
「とりぷるになるとね」
「物凄いだろうね」
「あの」
 ナターシャがここで言いました。
「あちらで力士の方がです」
「うん、とりぷるだね」
「その晴明さんが言っておられた」
「丼三杯にね」
「カツ三枚ですね」
「物凄いね」
「あれを食べたら」 
 それこそというのです。
「お腹一杯ですね」
「そうなるね」
「そうですよね」
「僕達はおうどんとね」
 それにというのです。
「だぶるだけれど」
「私達は普通です」
 ナターシャ達五人はです。
「そうですが」
「きつねうどんもあるからね」
「かなりですね」
「うん、けれどね」
「力士さんはですね」
「うん、凄いよ」
 見ればです。
 着流しの着物を着て髷にした力士の人はそのとりぷるにです。
 大森のきつねうどんを物凄い勢いで食べています、ナターシはその力士さんを見てさらに言うのでした。
「力士さんは食べるのもお仕事ですから」
「あれだけ食べるね」
「そうですね」
「ううむ、あそこまで食べられるとな」 
 リンキティンク王も言います。
「羨ましいのう」
「王様としてはですか」
「わしも美味いものを腹一杯食いたい」
 こう言うのでした。
「是非な」
「だからですか」
「あそこまで食せたらな」
 それならというのです。
「実にじゃ」
「いいですか」
「うむ」
 そうだというのです。
「まことにな」
「そうですか」
「きつねうどんも美味くてじゃ」
 その麺を勢いよくすすりつつ言いました。
「カツ丼もな」
「美味しいですね」
「だからじゃ」
 それ故にというのです。
「あの様にな」
「お腹一杯ですね」
「食いたいわ」
「そうなんですね」
「ううむ、しかしわしは小柄でじゃ」
 大人としてそうでというのです。
「いつも遊んで身体を動かしておるが」
「力士さんみたいにですね」
「いつも激しい稽古をしてな」 
「そこまでしてお身体を動かしていないので」
「それでじゃ」
 その為にというのです。
「わしもじゃ」
「あそこまで、ですね」
「とてもじゃ」 
 それこそというのです。
「食えぬわ」
「だから羨ましいですか」
「とてもな」
「いや、羨ましく思うことはないですよ」 
 王子がカツ丼を食べつつ言ってきました。
「その人それぞれが美味しいものを食べて」
「そうしてか」
「はい、お腹一杯になったら」
「それならか」
「よいのでは」
「それもそうか」
 リンキティンク王も言われて頷きました。
「そういえばな」
「はい、ですから」
「わしはわしでか」
「お腹一杯になれば」
 それでというのです。
「いいと思いますよ」
「それもそうか」
「はい、では」
「これよりじゃな」
「僕達は僕達で」
「満腹になるか」
「そうなりましょう」
 こう言うのでした。
「是非な」
「それでは」
「しかしね」
 今度はカエルマンが言ってきました。
「この街ではおうどんとご飯を一緒に食べるね」
「そうよね」
 王女もそれはと頷きます。
「あとお好み焼きや焼きそばもね」
「ご飯のおかずにするね」
「ラーメンもそうですね」
 クッキーも言ってきました。
「中華料理のお店でも」
「炭水化物と炭水化物でね」
「そうですよね」
「それも特徴だね」
 気付いたお顔になって述べました。
「この街の」
「リゾットやパスタはスープで」
 その扱いでというのです。
「主食じゃないので」
「パンを食べてもいいけれどね」
「はい」
「けれどおうどんやお好み焼きをおかずにして」
 そうしてというのです。
「ご飯を食べることは」
「他にないですね」
「炭水化物は主食だから」
 そうであるからだというのです。
「それをおかずにしてね」
「ご飯を食べることは」
「ちょっとね」
 それはというのです。
「日系人のお店でもね」
「日本料理のそちらでも」
「ないね」
「全くですね」
「けれどこの街では普通ね」
 また王女が言いました。
「本当に」
「何かです」
「それが日本の関西らしいです」
「おうどんやお好み焼きはおかずです」
「それでご飯を食べることもです」
「普通なんです」
「そうなのね、今の私達もそうして食べていて」
 王女はナターシャ達五人に応えて言いました。
「楽しんでいるけれど」
「日本でも食文化が違っていて」
「関西ではそうなんです」
「そうして食べます」
「いつもそうしています」
「私達もです」
「そうなのね、けれどそれがね」
 ここで、です。王女は。
 にこりとしてです、こう言いました。
「美味しいわ」
「ええ、本当に」
「炭水化物に炭水化物」
「ないと思っていても」
「実際に食べると」
 ご飯をおかずにしてというのです。
「いいわね」
「そう思います」 
 ナターシャは王女に答えました。
「ですから今もですね」
「おうどんを食べてね」
「カツ丼も食べましょう」
「うどん定食みたいなものね」
「はい、それじゃあ」
「一緒にですね」
「食べましょう」 
 こうお話してでした。
 皆できつねうどんもカツ丼も食べます、そしてです。
 食べ終わってです、リンキティンク王は満面の笑みで言いました。
「ほっほっほ、今回も美味かったぞ」
「そうですね、どちらも」
 王子も笑顔で応えます。
「最高に美味しかったです」
「全くじゃ、カツ丼もきつねうどんもじゃ」
「美味しくて」
「しかも量が多くてじゃ」
「特にカツ丼が」
「よかったわ、ではじゃ」
 リンキティンク王はさらに言いました。
「次はじゃ」
「どうされますか?」
「落語を聞きに行くか」
「今度はですね」
「そうしようぞ」
 こうしたこともお話してでした。
 皆で今度は落語を聞きに行きました、皆の楽しみは続きます。








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