『新オズのリキティンク』




               第四幕  水の都

 街を歩いているとです。
 兎角お堀や川が多くそれと共に橋も船も多いです、そんな街の中を歩いてです。
 ナターシャは不思議そうなお顔になってこんなことを言いました。
「お水の上にいるみたいね」
「うん、川やお堀が多くてね」
 カルロスは橋の一つを見つつ答えました。
「そうだよね」
「橋もかなり多いよ」 
 神宝も川を行き交う船を見て言います。
「この街は」
「人も多いけれど兎に角そうしたものが多くて」
 ジョージは川を見て言いました。
「自然と意識するね」
「うむ、これもよいのう」
 リンキティンク王は笑顔で言いました。
「独特で船遊びも出来るしな」
「どうもーーです」
 チクタクはこう言いました。
「水の街ーーですーーね」
「そうじゃな」
「はいーーまさーーに」
「ここは兎角じゃ」
「川やお堀ーーがーー多いーーです」
「それがな」
 まさにというのです。
「この街の特徴じゃ」
「だから橋も多いですね」
 ボボ王子は微笑んで言いました。
「そうですね」
「うむ、川や堀を渡る為のな」
「そうですね」
「何でもじゃ」
 ボボ王子にも言います。
「八百八橋と言われてるそうじゃな」
「それだけ橋が多いんですか」
「そうみたいじゃな」
「そうなんですね」
「どうもだよ」
 カエルマンもその橋を見つつ言います。
「この街は橋や堀とかお水に縁のある地名が多いね」
「そうじゃな」
「うん、それを見たらね」
「この街はお水に縁があるのう」
「そうだね、私はカエルだからね」
 リンキティンク王に笑顔で言いました。
「それは嬉しいよ」
「お前さんは特にじゃな」
「全くだよ」
「水路も整っていますし」
 クッキーはそちらを見て言いました。
「本当にお水の街ですね」
「そうであるな」
「はい、お笑いに美味しいものに」
「野球にのう」
「お水もですね」
「ある街じゃ」
「そうですね」
「はっはっは、よお気付いたのう」
 ここで、でした。
 結構恰幅のある髪の毛が一本もない頭の丸顔の陽気な人が言ってきました。着物を見事に着こなしています。
「それがこの街や」
「貴方は一体」
「西鶴。井原西鶴や」 
 ナターシャに笑って答えました。
「わしはな」
「あの井原西鶴さんですか」
「そや、外の世界では日本におってな」
 西鶴さんはナターシャに笑ったままさらに言います。
「戯作とか書いてたわ」
「教科書にも出てますけど」
「ははは、わしも有名人やな」
「まさか西鶴さんまでおられるなんて」
「いや、驚くことはないよ」
 笑顔で、でした。魔法使いがナターシャに言ってきました。
「だってここはオズの国だよ」
「夢のある人がですね」
「普通に集う国だからね」
 それ故にというのです。
「西鶴さんがおられてもね」
「普通なんですね」
「そうだよ」 
 こう言うのでした。
「他の人達と同じだよ」
「秀吉さんもですね」
「そういうことだよ」
「いや、この国はほんまええ国や」
 西鶴さんはこうも言いました。
「おもろいことばかりで飽きんわ」
「そうなのじゃな」
「この街を出ても」
 リンキティンク王にも言います。
「そうしてもな」
「面白いのじゃな」
「オズの国を旅しても」
 例えそうしてもというのです。
「もうおもろい物事ばかりで」
「楽しめておるか」
「そや、この国に来られてよかったわ」
「それは何よりじゃな」
「ほんまな。それでこれからやけどな」
 西鶴さんはさらに言ってきました。
「わては浄瑠璃観てや」
「そうしてか」
「それからまむし食うわ」
「ほう、まむしじゃな」
「それをや」
「それはいいのう」
「あれっ、まむしって」
 ナターシャはそう聞いて目を瞬かせて言いました。
「蛇の」
「おお、そう思うやろ」
 西鶴さんはそのナターシャに笑って応えました。
「ちょっと聞いたらな」
「はい、あの蛇ですよね」
「それがちゃうんや」
「といいますと」
「ここで言うまむしは鰻のことや」
「あのお魚ですか」
「大坂今で言う大阪では鰻は蛇と一緒で細長いからな」
 だからだというのです。
「まむしって言うたんや」
「そうでしたか」
「あと細長いのが縄そっくりでな」
 そうしてというのです。
「その先に口があるやろ」
「はい、頭があって」
「それでや」
 その為にというのです。
「口縄ともや」
「言いますか」
「そや」
 まさにというのです。
「この街でもそやねん」
「そうなんですね」
「それでわてはな」
「浄瑠璃の後で、ですか」
「まむしを食うわ」
「そうですか」
「鰻丼に蒲焼きに肝吸いにな」
 そういったものをというのです。
「食うわ」
「そうされますか」
「そや、楽しみや」
 実にというのです。
「これからな」
「そうですか」
「そやからやな」
 だからだというのです。
「楽しみや」
「鰻いえまむしの方も」
「ほんまにな、ほなまたな」
 笑顔でお別れしてでした。
 西鶴さんは悠々とした態度でその場を後にしました、皆はその西鶴さんとお別れすると今度は動物園に行ってです。
 色々な生きもの達を観ました、そこでナターシャ達五人は思いました。
「ここは外で言うと天王寺動物園ね」
「そうだね」
「そうなるね」
「色々とそっくりだよ」
「生きものもね」
「そうだね、何でもね」
 ここで魔法使いが五人にお話しました。
「かつてあの動物園にいた生きもの達がなんだ」
「この動物園にですか」
「来ていますか」
「そうなんですね」
「外の世界ではあの動物園にいて」
「今はですね」
「この動物園にいるんですね」
「そうだよ、そしてね」
 魔法使いはさらにお話しました。
「悲しい形でここに来た生きもの達もいるね」
「そうした生きもの達もだよ」
 カエルマンもお話しました。
「今はだよ」
「この動物園で、ですね」
「幸せに暮らしているんですね」
「外の世界では悲しい思いをしても」
「それでもですね」
「今はそうしているんですね」
「そうだよ、この国ではそうしているよ」
 こうお話するのでした。
「オズの国ではね」
「この国では悲しみはないからのう」 
 リンキティンク王も言いました。
「皆幸せに過ごしておるぞ」
「それは何よりですね」
「外の世界では悲しい思いをしても」
「オズの国で幸せなら」
「それならいいですね」
「救われますね」
「うむ、あと水族館もあるぞ」
 リンキティンク王はこちらもとお話しました。
「だからじゃ」
「それで、ですね」
「そちらも行きますね」
「そうするんですね」
「今日はこの動物園に来ましたし」
「今度はですね」
「そうするぞ、そしてじゃ」
 それでというのです。
「今宵は何を食べようか」
「あの」
 ナターシャはリンキティンク王が晩ご飯のお話をしたところで言ってきました。
「西鶴さんがです」
「鰻の話をしておったのう」
「ですから」
 それでというのです。
「私達もです」
「鰻をか」
「食べませんか?」
 こう提案するのでした。
「あちらを」
「いいね、鰻もね」
「鰻も美味しいよ」
「鰻丼も蒲焼きも」
「どれもね」
 五人で言います。
「それじゃあ出来たら」
「僕達は鰻を食べたいです」
「こちらで言うとまむしですね」
「それを食べませんか?」
「晩ご飯は」
「そうじゃな」 
 リンキティンク王もナターシャ達五人の提案を受けて考えるお顔になりました。
 そうしてです、こう言いました。丁度後ろに爬虫類のコーナーがあってそこには様々な生きもの達がいます。
「それもよいのう」
「そうですね、日本のお料理は鰻もいいですし」
 王子も応えてきました。
「それならです」
「鰻もじゃ」
「いいですね」
「では今宵はな」
「鰻ですね」
「まむしじゃ」
 西鶴さんのお言葉を受けて言いました。
「それにしようぞ」
「それでは」
「そしてじゃ」
 王子にさらに言いました。
「行く店はな」
「何処ですか?」
「あそこじゃ」
 王子に思わせぶりに言いました。
「あの店じゃ」
「ああ、あそこですね」
 王子は言われて頷きました。
「あのお店ですね」
「どうじゃ」
「いいですね」
 王子はリンキティンク王にあらためて頷きました。
「あれは」
「そうであるな」
「はい、じゃあ皆で」
「今宵はな」
「あのお店ですね」
「それでまむしの後はな」
 さらに言うのでした。
「はしごで関東煮をじゃ」
「食べますか」
「それでどうじゃ」
「では」
「うむ、今宵はまむしじゃ」
「そして関東煮ですね」
「それじゃ」
 笑顔でお話してでした。
 皆で動物園の全ての生きもの達を観てでした。
 動物園を出た足であるお店に入りました、このお店も日本の趣のお店で中に入って鰻丼に蒲焼きそれに肝吸いを食べられる人の数だけ注文しますと。
 鰻丼には鰻が乗っていません、これにクッキーは驚きました。
「あの、鰻丼なのに」
「鰻が乗ってないのう」
「はい、どうしてですか?」
「こういうことじゃ」
 リンキティンク王はクッキーにです。
 明るく笑ってお箸でご飯を掘り出しますと。
 その中から鰻が出てきました、クッキーはそれを見て言いました。
「ご飯の中にですか」
「このお店ではそうなのじゃよ」
 クッキーに笑って言います。
「鰻が冷めん様にな」
「その為にですか」
「どうもそうなる様に考えてな」
 それでというのです。
「鰻をじゃ」
「ご飯の中にですね」
「入れてな」
 そうしてというのです。
「冷めん様にしてじゃ」
「そうしてですか」
「美味しく食える様にしておるのじゃ」
「そうなんですね」
「実はあのご飯とルーを最初から混ぜておるカレーもな」
 こちらのカレーのお話もしました。
「冷めん様にな」
「最初からですね」
「混ぜてな」
 ご飯をルーをというのです。
「出しておるらしいぞ」
「そうでしたか」
「温かい美味しいものを食べてもらう」
「そうした気遣いがですね」
「面白い工夫となっていてな」
 鰻丼でもカレーでもというのです。
「そしてじゃ」
「実際にですね」
「美味いものとなっておる」
「そういうことですね、それじゃあ」
「うむ、食しようぞ」
「それでは」
 クッキーも笑顔で応えました。
 そうして皆で鰻丼と他のお料理を食べるとでした。
「あっ、これは」
「かなりだね」
 魔法使いもカエルマンも食べて言います。
「美味しいね」
「全くだよ」
「そうであろう、だからじゃ」
 リンキティンク王は二人に笑顔で応えました、勿論この人も食べています。
「ナターシャ嬢達がまむしを食べたいと言ってな」
「その時にだね」
「この街でまむしとなるとな」
「このお店だね」
「そう思ってな」
 それでというのです、魔法使いにお話しました。
「皆を案内したのじゃ」
「そうだったんだ」
「そうじゃ、ではな」
「うん、今は鰻を楽しもうね」
「そうしようぞ」
 笑顔でお話してでした。 
 皆で鰻丼を食べます、勿論蒲焼きも肝吸いも楽しみました。
 そしてその後で、なのでした。リンキティンク王は皆を関東煮のお店に案内しました。そうしてです。
 実際にその関東煮それにお酒やジュースを注文しますとナターシャ達五人はこれはというお顔になって言いました。
「おでんね」
「そうだね」
「これだと思ったけれど」
「実際にね」
「これはおでんだね」
「そうだね、何か大阪では元々おでんはお味噌を使うらしくて」
 ボボ王子は五人におちょこを片手にお話しました。
「こちらはお醤油だからね」
「また違うんですね」
「大阪のおでんとは」
「本来はそうなんですね」
「だしにお味噌を使うかどうか」
「そこが違うんですね」
「どうも」
「うん、ただね」
 王子は五人にこうもお話しました。
「実は関東のものでもないね」
「やっぱり大阪の食べものですか」
「関東煮といいましても」
「そうなんですね」
「名前はそうでも」
「その実は」
「そうだよ、関東煮と言っても」 
 名前はそうでもというのです。
「だしに昆布を使うと」
「ああ、違いますね」
「あっちは何でもだしに昆布使わないですから」
「だからですね」
「もうそこで違いますね」
「昆布を使うと」
「そうだよ、だからね」
 それでというのです。
「そこは違うよ」
「何でもね」 
 魔法使いもお話しました。
「中国の広東の方でこうした煮物があって」
「それがですか」
「日本に入ってですか」
「それで広東が関東になって」
「だから関東煮ですか」
「そうなんですか」
「そうした説もあるらしいね」
 関東煮にはというのです。
「どうやら」
「何か色々な説があるんですね」
 ナターシャは思いました、目の前のお皿にはちくわとゆで卵にはんぺんそして揚げがあります。
「そうなんですね」
「そうじゃな、あとじゃ」
 リンキティンク王は笑顔で言いました。
「わしはこの関東煮で大好きなものがある」
「といいますと」
「ころじゃ」
「ころですか」
「これじゃ」
 黄色くて脂身が多い煮られた食べものを出して言ってきました。
「鯨の肉じゃ」
「鯨なんですか」
「うむ、これがころと言ってな」
 そうしてというのです。
「実に美味い」
「鯨も美味しいんですね」
「これがのう」
「そうなんですね」
「日本人は鯨も食するが」
「そうした部分も食べていて」
「今こうしてじゃ」
 ころをお箸に取って言います。
「関東煮にも入れてな」
「食べられるんですね」
「オズの国でもな」
「鯨を食べるなんて」
 王子は笑って言いました。
「これはかなり」
「思わなかったのう」
「そうでしたね」
「鯨はな」
「そして食べるとです」
「これがじゃ」
 実にというのです。
「美味いのう」
「全くですね」
「こうして関東煮に入れても美味いしな」
 そのころをというのです、王子に三角に切った蒟蒻を食べつつ応えます。
「お鍋にしてもよい」
「はりはり鍋ですね」
「あれも美味いわ」
「全くですね」
「それで明日はな」
 リンキティンク王はごぼ天も食べて言いました。
「今思ったのじゃが」
「そのはりはり鍋をですか」
「食うか」
 こう言うのでした。
「そうするか」
「いいですね」
 王子も笑顔で応えます。
「それでは」
「うむ、決まりじゃな」
「明日はですね」
「まだ昼か夜かわからんが」
 それでもというのです。
「はりはり鍋をじゃ」
「食べような」
「そうしましょう」
 こうお話してでした。
 今は関東煮を食べてです、日本酒も飲んで言いました。
「ううむ、こうして関東煮を食べてな」
「日本酒も飲むとだね」
「最高じゃ」 
 カエルマンに満面の笑顔で応えます。
「全く以てな」
「そうだよね」
 カエルマンも飲みながら笑顔で応えます。
「こんな楽しみもね」
「オズの国に日系人の人が増えてのう」
「オズの国に日本文化が入って」
「そうしてじゃ」
「こうしたものも食べられる様になったよ」
「そうじゃな」
「オズの国は何かね」
 カエルマンはおちょこを片手に言います。
「物凄くカラフルになったね」
「昔もカラフルであったが」
「今はね」
「さらに遥かになったのう」
 その昔よりもというのです。
「色々なものが出来たしじゃ」
「入ってきてね」
「定着しておるわ」
「この街だってそうだしね」
「こうしたものを食べて」
 関東煮をというのです。
「そしてじゃ」
「日本酒も飲んでね」
「お笑いも縦縞のチームの野球も楽しんでな」
 そうもしてというのです。
「浄瑠璃も歌舞伎もじゃ」
「楽しめるね」
「そうなった、あとわしは中華街も好きじゃ」
「ああ、わかるよ」
 魔法使いはリンキティンク王の今の言葉にはんぺんを食べつつ頷きました。
「リンキティンク王ならね」
「わかるのう」
「うん、中華街が好きだってね」
 そのことがというのです。
「察するよ」
「そうであろう、あの派手で賑やかな感じがな」
「好きだね」
「わしに合っていてな」
 それでというのです。
「実にじゃ」
「楽しめるね」
「そうじゃ、わしの国にもあるしな」 
 リンキティンク王のお国にもというのです。
「この前斉天大聖さん達とじゃ」
「遊んだのかな」
「歌って踊ってな」
 その様にしてというのです。
「そうしたぞ」
「それは何よりだね」
「うむ、兎角な」
「オズの国も色々な人が増えてね」
「来てくれてのう」
「そうなってな」
「色々な文化も定着して」
「僕は人間に戻った時よりもさらに楽しい国になりました」
 王子も言います。
「本当に」
「全くじゃな」
「はい、いいことですよ」
 王子は串に刺した筋肉を食べつつリンキティンク王に応えます。
「お陰でこうしてです」
「美味いものがさらに楽しめるしのう」
「そうなりましたから」
「まことによくなったわ」
「全くですね」
「それにじゃ」
 リンキティンク王はきんちゃくを食べて言いました。
「死の砂漠もじゃ」
「オズの国を囲んでいた」
「あの砂漠もな」
 あらゆる生きものが入ると消え去ってしまうその砂漠がというのです、この砂漠がオズの国を守ってもいるのです。
「オズの国がある大陸の海岸に移ってな」
「僕達の国も完全にオズの国に入りました」
「北の国々もな」 
 オズの国のというのです。
「そうなったわ」
「そうでしたね」
「それで容易にな」
「オズの国にも行ける様になりました」
「エメラルドの都にもな」
 オズマ達が普段いるそちらにもというのです。
「そうなったわ」
「そのこともいいことです」
「それでなんですが」
 クッキーはここでこう言いました、今彼女が食べているのは蛸でそれをとても美味しそうに食べています。
「死の砂漠があった場所が」
「すぐに豊かな緑地になってのう」
「森や山が出来て」
「川や湖もな」
「そうなってです」
 そうしてというのです。
「街や村も出来て」
「もうそこに死の砂漠があったなぞな」
「思いも寄らなくなりましたね」
「うむ、しかし外の世界からはな」
 オズの国はです。
「今もな」
「別々になっていますね」
「同じ地球にあってもな」
 それでもというのです。
「外の世界からは見えずな」
「飛行機や船では辿り着けないですね」
「魔法がかかっておってな」
 オズの国全体にです。
「そうなっておってな」
「それで、ですね」
「そうじゃ」
 まさにというのです。
「例え宇宙からじゃ」
「落ちても」
「そうなってもじゃ」
「オズの国には来られないですね」
「オズの国に来るにはな」
 リンキティンク王はこの方法もお話しました。
「それこそオズの国の魔法と科学を合わせたな」
「特別な力でないと」
「来ることは出来ぬ」
「そうですよね」
「行くこともな、昔は漂着したりな」
「お空からですね」
「ドロシー嬢がそうして来ておったしな」 
 何度かそうしてきています。
「そうであったが」
「今はですね」
「うむ」
 まさにというのです。
「オズの国の魔法と科学でないとじゃ」
「オズの国に来られないですね」
「そうなっておる、まさにな」
「お伽の国ですね」
「これまで以上にな、それでな」
 リンキティンク王はまたお酒を飲んで応えました。
「色々な人やものが増えてな」
「昔よりもですね」
「遥かにな」
 まさにというのです。
「よくなったぞ」
「左様ですね」
「そうなったわ」
「本当にいいことですね」
「全く以てのう」
「何かとーーです」 
 チクタクも言ってきました。
「オズの国はーー変わって」
「よくなっていってな」
「驚くーーまでーーです」
「そうであるな」
「はいーーそれでーーなのーーですーーが」
 チクタクはさらに言いました。
「明日ーー私ーーは」
「どうしたのじゃ?」
「漫才をーー観たいーーです」
 こう言うのでした。
「駄目でーーしょうーーか」
「よいぞよいぞ」
 笑顔で、でした。リンキティンク王は応えました。
「それではな」
「明日はーーですーーね」
「うむ、漫才をな」
 こちらをというのです。
「観てな」
「楽しみーーますーーね」
「そうしようぞ」
 是非にというのです。
「その様にな」
「それーーでは」
「明日はそれじゃ、では午前に漫才を観てな」
 そうしてというのです。
「はりはり鍋を食するか」
「そうされーーますーーか」
「うむ、お主は食さぬがのう」
 チクタクはというのです。
「それではな」
「わかりーーましーーた」
「その様にな」
「そうしまーーしょう」
 チクタクも笑顔で応えます、そうしてです。
 皆で飲んで食べた後で夜の街を歩きますが灯りの中に運動服のお兄さんが笑顔で両手を斜め上に掲げて走っているものもありました。
 それも見てでした、皆でホテルまで歩きましたが。
 ホテルに着いてです、ナターシャは思いました。
「こんなにお笑いと美味しいものばかりの街は」
「他にないのう」
「それに地形も独特で」
 リンキティンク王に応えて言います。
「川やお堀、橋が多いことも」
「よいか」
「そう思います」
「そうじゃのう、何かとじゃ」
「素晴らしいものが多い街ですね」
「そしてな」
 それにというのです。
「人情もじゃ」
「感じられますね」
「オズの国は皆いい人じゃが」
「この街もですね」
「また独特の人情があってな」
 それでというのです。
「このこともじゃ」
「いいことですね」
「全くじゃ、ではその人情もな」
 こちらもというのです。
「楽しんでいこうぞ」
「そうします」
 ナターシャは笑顔で応えました、そうして皆お風呂に入って和風のお部屋の中でお布団でぐっすりと寝ました。
 翌朝朝ご飯を食べてチクタクの提案通り漫才を観に行きましたが。
 チクタクはとても満足そうに笑って言いました。
「私もーーです」
「漫才をしたいの?」
「それかーー落語をーーです」
 ナターシャに目を喜ばせて答えます。
「したいーーです」
「それもいいわね」
「そうね」
 恵梨香もにこりと笑って応えました。
「落語もね」
「チクタクは落語もいいかもね」
 神宝も言ってきました。
「着物を着て扇を持って」
「そうかもね」
 ジョージもそれはと頷きます。
「チクタクの落語はいいかもね」
「うん、漫才もいいと思うけれど」
 カルロスはこう言いました。
「落語もかもね」
「漫才をするとしたら」
 ナターシャはさらに言いました。
「相手が必要ね」
「基本そうーーですーーね」
「だからね」
「どなたかーーですーーね」
「いたらいいけれど」
 相方の人がというのです。
「チクタクだと誰かしら」
「誰になるかな」
「オズの国って二人一組でもいける人達いるけれどね」
「そうだけれどね」
「かかしさんと樵さんとか」
「あと臆病ライオンと腹ペコタイガーね」
 アン王女も言ってきました。
「オズマ姫とドロシー王女もだし」
「僕と王様もだね」
 王子も言ってきました。
「モジャボロさんと弟さんもあるし」
「そうよね、二人一組でもね」
「しっくりいくね」
「そうした組み合わせも多いけれど」
「チクタクは誰かな」
「つぎはぎ娘?」
 ふとです、王女は彼女のことを思い出しました。
「あの人とか?」
「いや、つぎはぎ娘さんはダンサーで」
「ああ、自分で歌って踊ってで」
「そっちの人だからね」
「漫才をするにはなの」
「ちょっと違うかもね」
「そう言われるとそうね」
 王女も頷きました。
「あの人は」
「そうだよね」
「ううん、チクタクと漫才をして合いそうなのは」
 王女はあらためて考えて言いました。
「誰になるかしら」
「そうじゃな、漫才は基本ボケと突っ込みじゃ」
 リンキティンク王は今舞台のボケと突っ込みを見つつ言います。
「ではどっちがどっちかじゃ」
「それが問題ね」
「チクタクはどっちか」 
 このことから考えるのでした。
「一体のう」
「そうね、チクタクは突っ込みかしら」
 王女は考えて述べました。
「どちらかというと」
「そうなるのう」
「口調は独特だけれど」
 ゼンマイ仕掛けのそれでというのです。
「基本はね」
「突っ込みじゃな」
「ええ、それだとボケは」
「ジャクならそれが出来るであろう」
「ええ、言われてみれば」
 王女はリンキティンク王の言葉に頷きました。
「そうよね」
「それでジャックがボケてな」
「チクタクが突っ込むので」
「どうであろうか」
「そうーーですーーね」
 チクタクはそのお話を聞いて頷きました。
「ではーー一度ーーです」
「ジャックとじゃな」
「お話をーーしまして」
 そうしてというのです。
「やってーーみます」
「そうするとよいぞ」
「そしてーーです」
 チクタクはさらに言いました。
「一つーーです」
「考えておるか」
「落語もーーです」
 こちらもというのです。
「いいとーーです」
「さっきナターシャ嬢達が言ったしのう」
「はいーーですから」
「何でもやってみることじゃ」
 リンキティンク王はチクタクに笑顔で応えました。
「興味があるなら」
「やってみたいーーならーーですーーね」
「そうじゃ」
 まさにというのです。
「お笑いでも何でもな」
「それーーでは」
「わしも色々やってみているしのう」
「王様ーーもーーですーーか」
「そうじゃ、そしてな」
 それにというのです。
「わしも実は漫才や落語をじゃ」
「されてーーいますーーか」
「まだしておらぬが」
 それでもというのです。
「面白いとな」
「お考えーーですーーか」
「落語をな、しかし落語は台本を読んだだけでじゃ」
 まさにそれだけでというのです。
「ついついじゃ」
「そうですよね」
 王子が笑って応えました。
「王様は笑ってしまいますね」
「腹を抱えてのう」
「そうですね」
「いや、今だってじゃ」
 漫才を観つつ笑い転げています。
「この通りじゃ」
「笑い上戸ですから」
「極端な、な」
「だからですね」
「もう自分がやるとなるとな」
 それこそというのです。
「もうじゃ」
「それどころでなくなりますね」
「台本を読んだり考えるとな」
 もうそういったことだけでというのです。
「その時点で、じゃ」
「笑い転げて」
「そうなってしまってな」
 それでというのです。
「自分がやるどころではない」
「そうですよね」
「だからのう」
 その為にというのです。
「わしは自分ではな」
「出来ないですね」
「お笑いはな」
「リンキティンク王はオズの国一の笑い上戸だからね」
 こう言ったのは魔法使いでした。
「何と言っても」
「わしが一番か」
「うん、間違いなくね」
「そんなに笑っておるか」
「何かとね」
「そこまで笑っておるか、しかし自分がやる前に笑っては」
 また言うリンキティンク王でした。
「どうもな」
「自分では出来ないね」
「笑い過ぎて動けなくなってしまうわ」
「お腹を抱えて位だからね」
「そうじゃ」
 まさにというのです。
「とてもな」
「それではね」
「出来ぬのう」
「けれどね」
 魔法使いはこうも言いました。
「いいことだよ」
「笑い上戸なのはか」
「オズの国一のね。何しろね」
「何しろ?」
「笑うとそれだけで気持ちがよくなって」
 そうなってというのです。
「健康にもなって幸せもね」
「来るからか」
「うん、笑う門にはだよ」
 まさにというのです。
「福来たるだからね」
「それでか」
「笑えるなら」
 それならというのです。
「もうそれだけでだよ」
「よいか」
「実際それで困ったと思ったことはあるから」
「ほっほっほ、ないぞ」
 こう答えるのでした。
「わしもな」
「そうだね」
「むしろいつも笑えてな」
「そうなっていてだね」
「嬉しいわ、ではわしが漫才や落語を自分で出来ないことは」
「それはそれでね」 
 台本を読んだだけで笑い転げてしまってというのです。
「いいよ」
「そうなのじゃな」
「うん、その時点で笑えたら」
「自分が出来ずともじゃな」
「いいんじゃないかな、笑ってもらうこともいいけれど」
「自分で笑ったらか」
「それはそれでね」
 まさにというのです。
「いいことだから」
「そうなのじゃな」
「うん、だからね」 
 それでというのだ。
「これからもだよ」
「笑っていけばよいか」
「台本を読んだりお話を考えるだけで」
 まさにそれだけでというのです。
「笑ってもね」
「そうか、ではわしはそっちにするぞ」
「ではね」
「私はーーです」
 チクタクは目を笑わせて言ってきました。
「漫才かーー落語をーーです」
「実際にだね」
「やってーーいきたいーーです」
「ではそうすればいいよ、兎角ね」
「その人でーーですーーね」
「楽しめばいいよ」
 お笑いをというのです。
「それぞれの楽しみ方でね」
「それーーでは」
「うん、それがお笑いだよ」
 魔法使いは笑顔でお話しました、そうして今目の前のエルフの女の人二人の漫才を観て楽しむのでした。








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