『新オズのリキティンク』




                第二幕  笑いの街

 皆が駅に下りるとです、何とプラットホームにリンキティンク王とボボ王子がいました、ナターシャ達五人は彼等を見て驚きました。
「えっ、まさか」
「まさかと思いますが」
「迎えに来てくれたんですか?」
「僕達を」
「駅まで」
「ほっほっほ、その通りじゃよ」
 まさにとです、リンキティンク王は五人に答えました、いつも通り明るく朗らかで飛び跳ねんばかりに陽気です。
「友達を迎えに来るのは当然であろう」
「王様がどうしてもと言ったんだ」
 王子は微笑んで答えました。
「それで新喜劇を観た後でね」
「ここで待っておったのじゃよ、たこ焼きを食べながらな」
「たこ焼きですか」
「うむ、この街の名物の一つのな」
 ナターシャに答えました。
「それにアイスキャンデーもな」
「この街アイスキャンデーも有名ですしね」
「それでじゃ」
 だからだというのです。
「そうしたものを食べつつな」
「待っていてくれたんですか」
「いや、王様たこ焼きが随分気に入ってね」
 また王子がお話します。
「ここに来て毎日みたいに食べてるよ」
「いや、蛸をあの様にして食べるなぞな」
 それこそとです、リンキティンク王は言いました。
「思いも寄らんかったわ」
「あれはい食べものですよね」
「可愛くて食べやすくて」
「しかも美味しいです」
「手頃ですし」
「すぐに出来ますし」
「お好み焼きや焼きそばや串カツもよいが」
 リンキティンク王はこうした食べものも挙げます。
「たこ焼きはその中でもじゃ」
「最高なんですね」
「王様にとって」
「だからですか」
「毎日みたいに召し上がられていますか」
「そうされていますか」
「うむ、それでお前さん達を待つ間十舟食ったぞ」
 それだけというのす。
「みっくちゅじゅーちゅと一緒にな」
「僕は豚まんも食べていたよ」
 王子はこちらもとお話しました。
「そちらをね」
「ああ、あの豚まんですね」
「焼き餃子と焼売もいいですよね」
「王子はそちらもですか」
「豚まん召し上がられてましたか」
「そうだったんですか」
「あちらもいいね、何かと美味しいものも多くて」
 王子はにこにことしてお話します。
「何を食べようか困る位だよ」
「この街はそうなんだよね、美味しいものが多過ぎるからね」
 魔法使いも笑って言います。
「何を食べるか困るよ」
「そうですね、じゃあ今から」
「うん、この街を楽しもうね」
「そうしましょう」
 王子は笑顔で応えてでした、まずは皆で寄席に行きました。そこで落語を聞いたのですがリンキティンク王はといいますと。
 最初から最後までお腹を抱えて笑っていました、もう立っていられない位です。それで終わってから言うのでした。
「笑い過ぎて大変じゃ」
「いや、面白かったですね」
 ナターシャも笑顔で言います。
「間の取り方や表情まで」
「仕草もよかったですね」
 神宝はそちらのお話をしました。
「手のそれも」
「落語ってお話だけじゃないんですね」
 カルロスはしみじみとして言いました。
「表情や身振りもあるんですね」
「最後のお後が宜しい様でもいいですね」
 ジョージはそこまで言いました。
「独特のものがあって」
「私達も面白かったです」 
 恵梨香はにこりと笑ってお話しました。
「本当に」
「うむ、落語は奥が深いお笑いじゃ」
 リンキティンク王は笑顔で言いました。
「さっきのは若い人であったがのう」
「あの、ただです」
 ここでナターシャは言いました。
「今の落語着物を着ておられましたが」
「落語はそうじゃな」
「アフリカ系の人でしたね」
 落語家の人はというのです。
「そうでしたね」
「それが何かあるのかのう」
「いえ、日本ですと」
「外の世界でもお前さん達が暮らしておる国じゃな」
「日本人がお話してるんで」
「それは当然だよ、ここはオズの国だよ」
 カエルマンがナターシャに笑顔でお話しました。
「オズの国はアメリカが反映されてね」
「色々な人がいる国だから」
「日本以上にそうなっているからね」
 そうしたお国柄だからだというのです。
「アフリカ系の人が落語をしてもね」
「普通なのね」
「そうだよ、そうした国なんだよ」
 オズの国はというのです。
「そこはわかっていようね」
「そういうことね」
「漫才も新喜劇もそうだしね」
 こちらのお笑いもというのです。
「コントもだよ」
「歌舞伎や浄瑠璃もだよ」
 王子はこちらもと言います。
「そうなっているよ」
「色々な人がですか」
「演じたりお話したりね」
「されてるんですね」
「そうだよ、あとね」
 王子はさらにお話しました。
「ここには大阪城もあるけれど」
「お城もあるんですね」
「うん、そちらにも行って」
 そうしてというのです。
「城主でこの街の主である人ともお会いするけれど」
「その人ってまさか」
「安土城でお会いしたと思いますが」
「豊臣秀吉さんですか?」
「あの人ですか?」
「若しかと思いますが」
「そうだよ、秀吉さんだよ」
 その通りとです、王子はナターシャ達五人に答えました。
「あの人もおられるからね」
「あの人ですか」
「物凄く楽しい人ですよね」
「気さくで親しみやすくて」
「器も大きくて」
「素敵な人ですよね」
「この街でも人気者でね」
 秀吉さんはというのです。
「僕も大好きだよ」
「立派な人ですよね」
 クッキーも言います。
「あの人は」
「全くじゃ、わしも見習わんとな」
 リンクティンク王も言います。
「あの人は」
「全くですよね」
「あの器の大きさと気さくさはのう」
 こう王子にも言うのでした。
「わしも一国の王であってオズの国の住人じゃからな」
「あの人みたいにですね」
「立派にならんとな」
「僕もそう思います、立派な人ですよ」
「全くじゃな、では次はな」
 落語の後はとです、リンキティンク王は言いました。
「食べに行くとしようぞ」
「何を食べるのかな」
「うむ、おうどんはどうじゃ」
 魔法使いに笑顔で答えました。
「きつねうどんをのう」
「いいね、じゃあね」
「ではな」
「それを食べようね」
「それでおうどんの後はな」
 リンキティンク王はさらに言いました。
「今度は漫才をどうじゃ」
「それを観るんだね」
「それでどうじゃ」
「いいね、ではね」
「うむ、今度は食べて楽しもうぞ」
 こうお話してでした。
 一行はきつねうどんを食べますが。
「この揚げがのう」
「またいいーーですーーか」
「そうじゃよ」 
 リンキティンク王はチクタクに答えました、一行の中でチクタクだけが食べないので雰囲気を栄養にしています。
「うどんの麺と合ってのう」
「美味しいーーのーーですーーね」
「うむ、それでおつゆもな」
 おうどんのこれもとです、お店の中で食べつつ言います。日本風の雰囲気がまた実に親しみやすいです。
「よいのじゃ」
「いい匂いーーですーーね」
「ぷうんとくるな」
「はいーー本当ーーに」
「昆布も効いてのう、これを食べてな」 
 きつねうどんをお箸で食べつつ言います、皆もそうしています。
「次はじゃ」
「確かーー漫才ーーですーーね」
「それじゃ」
 こう言ってきつねうどんを食べてです。
 今度は漫才でした、そして晩ご飯はです。
 洋食屋でご飯とルーが最初から混ざっていて真ん中に生卵があるカレーを食べました、皆生卵の上におソースをかけてです。
 生卵とカレーを混ぜて食べます、すると五人は笑顔で言いました。
「色々なカレーがあるけれど」
「このカレーもいいよね」
「最初からルーとご飯が混ざっていて」
「生卵とも合って」
「凄く美味しいよ」
「よくこんなカレーを考えたものじゃ」
 リンキティンク王はスプーンで食べつつ満面の笑顔になって言います。
「ほっほっほ、美味しくて何杯でも食べられるぞ」
「そうですね、このカレーは素敵です」
 クッキーも食べつつ言います。
「物凄く美味しいです」
「本当に何杯でも食べられそうね」
 アン王女にしてもです。
「これはいいわ」
「そうじゃろう、お笑いで笑った後はな」
「美味しいもので笑うのね」
「それがこの街じゃ、ただ忙しいぞ」
 リンキティンク王はアン王女に言いました。
「この街におるとな」
「お笑いと食べ歩きで、かしら」
「そうじゃ、まだまだ食べてな」
 そうしてというのです。
「お笑いもじゃ」
「観るのね」
「それとさっき話に出たが」
 王女にカレーを食べつつお話します。
「秀吉さんともじゃ」
「お会いしないといけないわね」
「そうじゃ、あの人にも挨拶をせんとな」
 そうしないと、というのです。
「いかんからのう」
「この街に来たなら」
「そうじゃ、それも忘れてはいかん」
「そうね、それじゃあ」
「楽しむぞ」
 こうお話してそうしてでした。
 皆でカレーを食べます、そしてその後で。
 皆で今度は善哉のお店に入りますがその善哉は二つで。
 リンキティンク王は笑って言いました。
「ここはこれじゃ」
「お碗が二つあって」
 アン王女はその善哉を見てリンキティンク王に応えました。
「夫婦みたいね」
「そうじゃ、それでじゃ」
 まさにとです、リンキティンク王は王女にお話しました。
「夫婦善哉とな」
「そう言うのね」
「この善哉はな」
「実際にそうなのね」
「そうじゃ、そしてな」
 それにというのです。
「量も多い感じがするのう」
「二つあるからね」
「それもよいところじゃ」
 この善哉のというのです。
「だからな」
「この善哉は楽しめるのね」
「そうじゃよ、何でもこの世界に来た日本の作家さんもじゃ」
 この人もというのです。
「好きらしいぞ」
「そうなの」
「さっきのカレーもでな」 
 それでというのです。
「この善哉もじゃ」
「その作家さんも気になるわね」
「そうじゃな、ではこの善哉を食ったら」 
 その後はといいますと。
「歌舞伎の夜の場を観るか」
「そうするのね」
「これもよいぞ、食べて笑ってな」
 そうしてというのです。
「楽しみ尽すぞ」
「それではね」
 王女も笑顔で応えてでした。
 皆で善哉を食べます、そしてリンキティンク王が案内をしてです。
 歌舞伎を観ました、すると。
 これが中々ユーモアがあってです、ナターシャは驚きました。
「あれっ、観たら楽しいわ」
「そうだよね」
「ユーモアがあってね」
「面白い場面も多いね」
「そうよね」
「元々歌舞伎は大衆の楽しみだからね」
 魔法使いが五人にお話します。
「芸術としてだけでなく娯楽でもあるからね」
「だからですね」
「面白い場面もあるんですね」
「楽しい場面も多くて」
「それで、ですね」
「ユーモアのある場面もあるんですね」
「そうだよ、だからリンキティンク王もだよ」
 見ればここでもお腹を抱えて笑っています。
「この通りだよ」
「楽しまれてるんですね」
「思いきり笑って」
「そうされてるんですね」
「落語や漫才と同じ様に」
「そうされてるんですね」
「そうだよ、そして私もだよ」
 魔法使いもというのです。
「楽しんだよ、歌舞伎は堅苦しいものじゃないんだ」
「こうしてですか」
「笑って観てもいいんですか」
「楽しんでいいんですね」
「お腹を抱えたりして」
「そうしてもいいんですね」
「そうだよ、しかし今日だけで随分笑ったね」
 魔法使いはしみじみとして述べました。
「明日もそうなるのかな」
「勿論じゃ、ここは食いたおれの街でじゃ」
 リンキティンク王が言ってきました。
「お笑いでもじゃ」
「笑い倒れるんだね」
「そうした街だからのう」
「明日もだね」
「お笑いとな」
「美味しいものでだね」
「笑い倒れるのじゃ、あと野球もあるぞ」
 リンキティンク王はこちらのお話もしました。
「黒と黄色のな」
「縦縞のだね」
 カエルマンがすぐに応えました、それも笑顔で。
「私の大好きなチームだよ」
「おお、お前さんもか」
「あんな絵になるチームはないね」
「華があってのう」
「素敵過ぎるチームだからね」
 それでというのです。
「大好きだよ」
「わしもじゃ、ではあのチームの試合もな」
「観るね」
「何と今度あの緑の蔦のある球場でじゃ」
 そちらでというのです。
「アンダースローで眼鏡をかけたエースとな」
「あの、まさか」
 ナターシャは今のお話に驚いて尋ねました。
「キャッチャーは少し野暮ったい感じの」
「うむ、物凄く打つな」
「その人達ですか」
「その黄金バッテリーのチームとな」
「試合ですか」
「それがあるぞ」
「凄いですね」
「いや、あのバッテリーは凄いぞ」
 リンキティンク王はその人の投球フォームを真似しつつお話しました。
「ピッチャーの方はのう」
「そのアンダースローで、ですね」
「物凄いカーブとシュートを投げてな」
 それでというのです。
「どんなバッターもキリキリ舞いじゃ」
「それでキャッチャーの人もですね」
「堂々とな」 
 まさにというのです。
「四番としてじゃ」
「ホームラン打ちますね」
「リードも絶品でな」
「物凄く頭がいいですね」
「そうなのじゃよ、その二人がおるチームとな」
「試合をするんですね」
「こっちも負けておらん」 
 縦縞のチームもというのです。
「文字通り猛虎じゃ」
「その強さですね」
「きら星の如く選手が揃っておってな、相手が杉浦さんと野村さんならじゃ」
 このお二人ならというのです。
「こっちは藤村さんに村山さん、三宅さんに遠井さん、田中さんに辻さんにバッキーさんじゃ」
「錚々たる顔触れですね」
「何でも外の世界で活躍してな」
 そのチームで、です。
「オズの国に来てもじゃ」
「あのチームで活躍しておられるんですね」
「もう無敵じゃよ」
 そこまで強いというのです。
「そして強いだけでなくな」
「絵になって華がありますね」
「うむ」
 実際にというのです。
「これがな」
「だからですね」
「その試合もな」
「観に行くんですね」
「そして楽しもうぞ。テレビやネットでも観られるが」
 それでもというのです。
「球場で観戦出来るならな」
「それが一番ですよね」
「そうじゃ」
 何といってもというのです。
「だからじゃ」
「野球の試合もですね」
「観てな」
「楽しむんですね」
「そうもしようぞ、あのチームは最高じゃ」
 リンキティンク王は満面の笑みでこうも言いました。
「この街はお笑いに美味いものにな」
「あのチームですね」
「お城も通天閣もあってな」
 そうしてというのです。
「看板もよいしのう」
「河豚や蟹の」
「それに紅白のおじさんもな」
 こちらもというのです。
「そうしたものが揃っておるし動物園もじゃ」
「あって」
「もう何もかもがじゃ」
「楽しいんですね」
「それがこの街じゃ」
「そうですか」
「だからのう」
 リンキティンク王はこうも言いました。
「わしはこの街にずっといたい位じゃ」
「それはーー流石にーーです」
 チクタクは真面目に言ってきました。
「無理ーーですーーね」
「うむ、わしも王様じゃからな」
「戻らーーれて」
「そしてじゃ」
 自分のお国にというのです。
「働かねばならん」
「そうーですーーね」
「いや、王様も忙しいのじゃ」
 チクタクに少し苦笑いを浮かべてお話しました。
「どうもな」
「そうなんだよ、王様は何かとお仕事があるんだ」
 ボボ王子も言います。
「何しろ国を治めているからね」
「大臣や議会、役人達とな」
 そういったものをとです、リンキティンク王はお話しました。
「皆いてくれるが」
「それでもね、王様はね」
 アン王女もわかっていることです、何しろ実のお父さんが王様なので。
「何かとね」
「やることがあるのう」
「ええ、だからね」
「わしも今は親善として来ておるが」
 この街にというのです。
「戻る日が来ればな」
「その時はよね」
「戻らねばならん」
 自分のお国にというのです。
「どうしてもな」
「そうよね」
「だからこの街でずっと遊びたいが」
「それでもよね」
「そうもいかん」
 こう言うのでした。
「わしもな」
「よく遊んでよく働く」  
 笑顔で言ったのはカエルマンでした。
「オズの国だね」
「うむ、働くことも楽しくでな」
「そうだね」
「だからわしもじゃ」
「お国に帰って」
「働くぞ」
 こうカエルマンに答えました。
「帰る時になればな」
「楽しくだね」
「そうするぞ」
 まさにというのです。
「わしもな」
「そうしようね、ただね」
「ただ。何じゃ」
「それまではこの街を楽しむね」
「その全てをな」
「そして私達もだね」
「一緒じゃよ、では明日は野球じゃ」
 笑顔で言ってでした。
 リンキティンク王は皆と同じホテルで休みました、何と同じホテルで皆は宮殿の様な別棟で休んでです。
 リンキティンク王はボボ王子と共にホテルのロイヤルスイートで休みました、そして次の日の朝です。
 和風の朝食を前にしてです、こんなことを言いました。
「この朝ご飯もよいのう」
「卵焼きにですね」
「お味噌汁があって」
「お漬けものもありますね」
「そして海苔も」
「納豆もありますね」
「白いご飯でな」
 ナターシャ達五人にお話します。
「この街も日本の街であるからな」
「そうですよね」
「食べものも街並みも日本で」
「お笑いもそうですから」
「勿論食べものもで」
「朝ご飯もですね」
「日本のものじゃ、この日本の朝ご飯もじゃ」
 まさにというのです。
「最高じゃ」
「全くですね」
「本当に美味しいですね」
「それじゃあですね」
「楽しくですね」
「この朝ご飯もですね」
「食べようぞ、ただ聞いたが」
 ここでリンキティンク王は納豆を見て言いました。
「この納豆は外の世界の大阪では食べんそうじゃな」
「いや、食べてますよ今は」
 神宝が答えました。
「皆そうしてます」
「結構出回ってまして」
 ジョージも言います。
「食べてますよ」
「これが美味しいですしね」
 カルロスは納豆の味のことをお話しました。
「あっさりしていて」
「確かに匂いは凄くて糸も引いてますが」
 恵梨香は納豆のこのことを言いました。
「美味しいですよね」
「私達も食べます」 
 ナターシャは微笑んで言いました。
「自分達のお国にいた時は噂に聞いていただけですが」
「わしははじめて見て腐っておると思った」 
 リンキティンク王は笑ってこう言いました。
「糸を引いておって臭いからのう」
「ははは、そうだよね」
 魔法使いはリンキティンク王に笑って応えました。
「納豆はね」
「うむ、食べられるのかとな」
「思うね」
「しかし食べてみるとな」
「恐る恐るね」
「ご飯と合ってな」
「美味しいね」
「だから今は食べる」
 そうしているというのです。
「楽しくな」
「そうだね」
「うむ」 
 まさにというのです。
「納豆もいいのう」
「そうだね」
「私は最初これは無理と思ったわ」
 アン王女は笑って述べました。
「チーズ以上にね」
「ウォッシュチーズじゃのう」
「あのチーズも凄い匂いで」
 それでというのです。
「私最初はね」
「食べられなかったか」
「ええ、けれど食べてみたら」
「ウォッシュチーズは美味いのう」
「そして納豆もね」
「案外臭いものはな」
 そうした食べものはというのです、リンキティンク王は述べました。
「これがじゃ」
「美味しいわね」
「うむ」
 実際にというのです。
「そうじゃのう」
「では今から食べましょう」 
 クッキーはにこりとしてお話しました。
「納豆も」
「そうしよう、今では私も大好物の一つだよ」
 カエルマンはにこにことして言いました。
「だからね」
「それでは」
「皆で食べよう」
「そうしましょう」
 クッキーもカエルマンに応えてでした。
 皆で朝ご飯を楽しく食べました、そのうえでホテルを出ましたがリンキティンク王はここで皆に言いました。
「野球は午後じゃ」
「朝は試合ないですね」
 ナターシャが応えました。
「そうですね」
「うむ、だからな」
 それでというのです。
「午前中はお笑いを楽しもうか」
「そうしますか」
「漫才はどうじゃ」
 こちらのお笑いはというのです。
「今日の午前中はな」
「漫才ですか」
「それでどうじゃ」
「それじゃあそちらを」
 ナターシャはリンキティンク王の提案に笑顔で頷いて皆もです。
 そうしました、そしてです。
 皆で一緒に漫才を観ました、すると観客席にです。
 眼鏡をかけて頭を角刈りにした痩せた男の人がいました、ナターシャ達五人はその人を見て驚きました。
「あの人って」
「あの伝説の漫才師だね」
「間違いないよ」
「あの人もオズの国に来てたんだ」
「驚いたわ」
「あの人は外の世界では最後悲しい状況だったそうだね」
 魔法使いは驚く五人にお話しました。
「どうやら」
「はい、色々あったそうです」
「それで寂しい状況になられて」
「お笑いも出来なくなって」
「お酒ばかり飲まれて」
「そうなってしまって」
「自業自得な面も強かったけれど」
 それでもというのです。
「悲しかったね、けれど沢山の人を笑わせてくれたから」
「今はですね」
「オズの国におられるんですね」
「そうされていて」
「お笑いを観ておられますか」
「そうされていますか」
「あの御仁はわしも知っておるが」
 リンキティンク王もお話します。
「一人では漫才はせんらしいのう」
「お二人ですか」
「お二人で漫才をされますか」
「そうした人達なので」
「だからですか」
「今はああしてですか」
「漫才は観てるだけじゃ、何でも喧嘩早い人だったそうじゃが」
 外の世界におられた時はです。
「今は全くなくていつもにこにこしておる」
「いいことですね」
「何でも随分怒られたそうですが」
「今はそうしたこともなくてですね」
「それで、ですね」
「幸せにですね」
「二人で漫才をする時を待っておるぞ」
 そうしているというのです。
「オズの国でな、しかし今日の漫才ものう」
「物凄く面白いですね」
 クッキーはマンチキンの服を着た白人の二人の若い男の人達のそれを観てリンキティンク王に応えました。
「兼ね合いも間の取り方もよくて」
「実にのう」
「何よりも笑ってもらう」
「意地でも笑わせみせるとな」
「その意気込みがありますし」
「だからのう」
 その為にというのです。
「非常にな」
「面白いですね」
「うむ」
 実にというのです。
「そう思うぞ」
「左様ですね」
「だからな」
 それでというのです。
「今ここに来てよかったとな」
「思われていますね」
「うむ、それでお昼じゃが」
 今度はこちらのお話をしました。
「ラーメンと豚まんにじゃ」
「焼き餃子に焼売ですね」
「そうじゃ」
 ボボ王子に笑顔で応えました。
「これでどうじゃ」
「そしてデザートはアイスキャンデーですね」
「立って食べる豚骨ラーメンもよいが」
「韮や大蒜やキムチも入れ放題で」
「そこにな」
 さらにというのです。
「あの豚まんに餃子、焼売を食べてな」
「デザートはアイスキャンデーと」
「この組み合わせでいくとじゃ」
 まさにというのです。
「最高であるな」
「僕もそう思います、どれもこの街の名物で」
 王子はリンキティンク王に笑顔で応えました。
「美味しいですよね」
「安定してのう」
「それでは」
「うむ、お昼はな」
「そうしたものをですね」
「食しようぞ」
 笑顔で言ってでした。
 リンキティンク王は漫才の後は皆を連れて赤い薄い段ボールの箱に入れられた豚まんと焼き餃子それに焼売を買ってでした。
 すぐ傍の畳の席と立って食べるカウンターがあるお店に入ってです。
 そこでラーメンを注文しました、そのラーメンは豚骨で。
 それで、です。韮や大蒜それにキムチを入れ放題でリンキティンク王は刻まれた大蒜をラーメンにどっさりと入れてです。
 そのうえで食べてです、こう言いました。
「ほっほっほ、美味しいのう」
「いや、ラーメンや豚まんもあるなんて」
 ナターシャはリンキティンク王の横で豚まんを手にして食べつつ言いました。
「いいですね」
「中華料理もな」
「この街にはありますね」
「この街の美味いものの中にはな」
「中華料理もありますね」
「日本のな」
 日本人がアレンジしたというのです。
「素敵な中華料理がな」
「それだね、オズの国の中国系の人が言うね」
 カエルマンはその大きな国で餃子を食べつつ言いました。
「日本の中華料理は中国の料理じゃないって」
「そうじゃな」
「元はそうであっても」
 中国の料理であってもというのです。
「洋食と同じで」
「カレーも洋食に入るな」 
 あのご飯とルーを最初から混ぜているカレーのことを思い出して言いました。
「そうじゃな」
「日本に入ってね」
「日本で独自にアレンジされたのう」
「独特のお料理だってね」
「言われておるし実際にじゃ」 
 リンキティンク王は左手でラーメンの丼を持って右手のお箸を使って麺をすすりながら述べました。
「わしもそう思う」
「私もだよ、例えばこの街でハンバーガーを食べても」
「日本風じゃな」
「そうだね」
「うむ、オズの国の他のハンバーガーとはな」
「また違うよ」
「その通りじゃ」
 まさにというのです。
「わしもな」
「うん、アイスキャンデーなんてね」
「日本のものにしかな」
「思えないね」
「そうじゃ、それでな」
 そうしてというのです。
「デザートはな」
「アイスキャンデーだね」
「そっちじゃ、ではな」
「うん、今はね」
「ラーメンや豚まんを楽しもうぞ」
 こう言ってでした。
 皆でラーメンや豚まんを楽しみました、そうしてです。
 デザートはアイスキャンデーでした、そのアイスキャンデーも楽しんでから皆で遂に球場に行きましたが。
 緑の蔦で覆われた球場の入り口を観てからその中に入ってダイアモンドが土のグラウンドを観る観客席に入りました、すると。
 両チームの選手達がいます、その彼等がです。
 今まさに試合をはじめようとしています、ナターシャ達五人はマウンドで肩慣らしをしている白と黒の縦縞のユニフォームの背番号十一の人を観て感激しました。
「村山さんよ」
「うん、村山実さんだね」
「背番号十一、間違いないよ」
「あの意を決したお顔といい」
「あの一生懸命な投げ方も」
「そう、あの人が村山実さんだよ」
 カエルマンも目を輝かせてお話します。
「ザトペック投法のね」
「マウンドでいつも全力の」
「命を賭けて投げていた」
「あの人ですね」
「本当にこの目で見られるなんて」
「感激です」
「これまで何度か活躍を観ているけれど」
 カエルマンはこうも言いました。
「何時観ても恰好いいね」
「サードは藤村さんですね」
 クッキーは背番号十の人を観て言いました。
「今日は」
「この前の試合は十六番でね」
「三宅さんでしたね」
「うん、それでだよ」
「今日は藤村さんの野球を観られますね」
「ミスタータイガースのね」
「相手チームも凄いね」
 魔法使いは三塁側の緑と白のユニフォームの人達を観て言いました。
「杉浦さんと野村さんがいるよ」
「奇麗ーーですーーね」
 チクタクはアンダースローで投げる杉浦差を観て唸りました、手はアンダースローにしては少し高くてサイド下のやや低い位です。
「投球ーーフォームーーが」
「そうだね、実にね」
「凄いーー人ーーです」
「何でもね」
 魔法使いはチクタクにお話しました。
「あの人は一シーズンで三十八勝四敗の成績を残したそうだよ」
「三十八勝ーーですーーか!?」
「四敗しかしなくてね」
「凄いーーですーーね」
「そうだね、凄過ぎてね」
 それでというのです。
「外の世界の日本ではレジェンドになっているよ」
「そうなのーーですーーね」
「うん、そして野村さんもね」
 魔法使いやキャッチャーの人のお話もします。
「立派な野球選手だからね」
「実はこの街には野球チームが四つあるのじゃ」
 リンキティンク王はアン王女に笑ってお話しました。
「それで四つ共じゃ」
「競い合ってるのね」
「そうじゃ」
 まさにというのです。
「いつもな」
「試合でなのね」
「そうしておる、後の二つは濃紺と白のユニフォームでな」
「では最後の一つは?」
「赤と青、白の三色のユニフォームじゃ」
 そうなっているというのです。
「どちらのチームも監督さんが凄いぞ」
「そんなになの」
「監督さんで一番凄いのはあのチームかもな」
 リンキティンク王は三塁側の緑と白のユニフォームのチームを観てお話しました、そこに堂々たる風格の人がいて腕を組んでいます。
「格が違うわ」
「確かにそうね」
「紺と白のチームは面長で小さな目の人で三色のユニフォームの人は白髪で四角い顔の人でな」
「その人達も凄いのね」
「そうなのじゃ、しかしな」
 リンキティンク王は三塁側のその堂々たる人を観てさらに言いました。
「あの監督さんの風格は違うのう」
「物凄いわね」
 アン王女が観てもでした。
「何ていうかまさに人の上に立つ」
「そうした風格の人じゃな」
「ええ、野球の監督さんでなかったら」
 そうでなかったらというのです。
「もうね」
「かなり凄い立場になっておるな」
「そんな人ね」
「そう思うぞ」
 リンキティンク王にしてもです。
「あの人はな」
「ええ、あんな人が昔の日本にはおられたのね」
「そうじゃな」
「沢山の名選手に」
「あの様な大監督もな」
「そして今はね」
「オズの国でじゃ」
「野球をしているのね」
「起きた世界でもしておったな」 
 そうしたというのです。
「存分に楽しんでな」
「そうね、ではね」
「今から試合がはじまる」
「その試合をね」
「観ようぞ」
「大監督と大選手がぶつかり合う」
「その試合を観ようぞ」
 笑顔でお話してでした。
 皆で一塁側から試合を楽しみました、あの心地よい応援歌を他のファンの人達と歌って七回には風船をあげてです。
 楽しく応援しました、スコアボードには白い電光掲示板で試合経過が刻まれていって試合が終わるとでした。
 リンキティンク王はとても嬉しそうにです、こう言いました。
「いい試合であった」
「そうだね、本当に」
 カエルマンも笑顔で応えます。
「満足したよ」
「うむ、では夕食じゃが」
 カエルマンにカチワリを食べつつ応えます。
「何を食するか」
「お好み焼きはどうかしら」
 アン王女が提案してきました。
「一緒に焼きそばやモダン焼きもね」
「いいのう、ではな」
「ええ、それじゃあね」
「お好み焼き屋さんに行こうぞ」
「そうしましょう」
「うむ、ではな」
 是非にと言うのでした。
「球場を出てな」
「夜はね」
「それを食べようぞ」
「そうしましょう」
「ではそれまではな」
 晩ご飯の時まではというのです。
「街を歩いてな」
「そうしてなのね」
「見物をしようぞ」
「それも楽しみね」
「そうじゃ、そうしようぞ」
 いつも通り朗らかに言ってでした。
 リンキティンク王は皆を連れて晩ご飯まで街を歩いて観て回りました、そのうえでお好み焼きや焼きそばを食べに行きます、ですが街を回る中である場所に入りました。








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