『新オズのカボチャ頭のジャック』




                第六幕  はじめたばかりでも

 皆歯安土城を出てからも黄色い煉瓦の道を北に進んでいきました、そうして三日程歩いていくとでした。
 水田が見えてきました、恵梨香は紫の稲のそれを見て言いました。
「あれがかしら」
「ええ、そうよ」 
 オズマがにこりとして答えました。
「あの水田がね」
「開拓しているですね」
「水田よ、そして近くにね」
「南瓜畑もあるんですね」
「そうよ、ではね」
「今からですね」
「あちらに行って」
 そうしてというのです。
「そのうえでね」
「あちらでお仕事をするんですね」
「そうよ」
 そうするというのです。
「だからね」
「今からですね」
「行くわよ、いいわね」
「わかりました」
 恵梨香が笑顔で応えてでした。
 皆で水田の方に行きました、するとです。
 そこには水田が広がっていましたが。
 広いお池の様な場所のほんの一角だけが水田で他の場所はまったくです。
 ただ水面が広がっているだけです、ジャックはその状況を見て言いました。」
「まだまだなんだ」
「そうなの、開拓したばかりでね」
 オズマは水田を見て言うジャックにお話しました。
「それでなの」
「まだ一角だけをなんだ」
「水田にしただけなの」
「そうなんだね」
「ここは最初沼地で」
 オズマはその果てしなく広い水面を見ながらさらにお話しました。
「何もいなかったの」
「生きものがなんだ」
「そうなの、だからね」
「水田にしてだね」
「皆がもっとお米を食べられる様にするの」
「そうだったんだ」
「お水は奇麗にしたけれど」
「水田にするのはこれからなんだ」
「そうよ、水路を造って沼地を川とつなげて」
 その様にしてというのです。
「沼地に奇麗なお水を入れて濁ったお水を出す様にしてね」
「お水を奇麗にしたんだ」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「深さも一定にしたの」
「水田を作られる様になんだ」
「そこまでも大変だったけれど」
「これからもだね」
「そうなの、水田を作るけれど」
 それでもというのです。
「これからもよ」
「大変だね」
「そうなの、だから私もここ来たし」
「この広い沼地だった場所を」
「全部水田にするわよ」
「そうするんだね」
「ええ、区割りもしてね」
 そのうえでというのです、こうお話するのでした。
 そして皆で今ある水田を見ますと。
 紫のギリキンの稲達が実っていてです。
 そうしてでした、お水の中に蛙に泥鰌やタニシ、蛙にザリガニ達がいてです。
 鴨達が稲と稲の間を泳いでいてお空の上には雀が飛んでいます、区割りそれに道になっているあぜ道には大豆が植えられていてです。
 水路には鮒やタウナギが泳いでいます、ガンプはその水田を見ていいました。
「ただ稲があるだけじゃないね」
「様々な生きものがいるね」
 教授が応えます。
「以前お話した通り」
「そうだね、自然が豊かだね」
「水田は人のものでも」
「自然も一杯あるんだ」
「そうなのだよ」
「水田っていいね」
「いるのは鳥やお魚やタニシだけではないよ」
 教授はガンプに楽しそうにお話しました。
「他にもいるよ」
「そうなんだ」
「ほら、見るんだ」
 お空を指差すとです。
 そこには多くのトンボ達がいました、彼等はお空を悠々と飛んでいます。
 そして次は水田の中を指差しましたが。
 そこにはアメンボやヤゴ、トンボの幼虫やゲンゴロウやミズカマキリにタイコウチ達が泳いでいていて稲にテントウムシや他の虫達がいてです。
 あぜ道の草のところにはバッタやコオロギ達がいます。教授は虫達も観て言うのでした。
「虫も一杯いるね」
「そうだね」
「彼等も含めてだよ」
「水田は自然が一杯なんだ」
「そうなのだよ、麦畑にも色々な生きものがいるけれど」
「水田はもっとだね」
「沢山の生きものがいるんだ」
 そうなっているというのです。
「お水が沢山あるからね」
「お水があると沢山の生きものが生きていけるからね」
「それでだよ」
「成程ね」
「うん、ここは凄くいい場所だよ」
 かかしも言います。
「ここに立っていると飽きないね」
「かかし君としてもだね」
「そこにいるだけでね」
 教授に笑顔で答えました。
「絶対にそうだよ」
「生きもの達を見ているだけで」
「それだけでね」 
「皆僕に集まってきているよ」
 樵はどうかといいますと。
 雀達が樵の頭や肩の上に停まってきています、担いでいる斧の上にまです。
「どうしてかな」
「それは樵君だからだよ」
「僕だからなんだ」
「君はオズの国で一番優しい心の持ち主だからね」
 それ故にというのです。
「皆君のところに集まるんだよ」
「そうなんだね」
「うん、けれどね」
 教授はここで、でした。
 皆も見ました、すると樵だけでなくです。
 他の皆も雀達が停まっています、特にオズマに。教授はその状況を見て目を細めさせて言いました。
「皆もいい人だからかな」
「こうしてだね」
 ジャックも頭の上に一羽いる状態で言います。
「雀君達に慕われているのかな」
「そうだね、ではね」
「雀君達に慕われる中で」
「そこでだよ」
「こうしてだね」
「水田を見ていこう」
 こう言ってでした。
 皆で今ある水田達を見ていきます、水田には色々な生きもの達がいて。
 紫のオズの国の民族衣装を着たギリキンの人達が暖かい日差しを浴びつつ笑顔で働いています、あぜ道を作ってです。
 トラクターに乗って田を耕して稲を植えています、ですが。
 恵梨香はその状況を見て言いました。
「何かね」
「どうしたのかな」
「いえ、牛さんやお馬さんの声が聞こえるのに」 
 遠くから実際に聞こえるのでジャックに言いました。
「ここにはね」
「ああ、いないね」
 ジャックも言いました。
「そういえば」
「トラクターを使っているけれど」
「牧場もあるのよ」
 オズマがどうしてか言ってきました。
「そこによ」
「牛さんやお馬さんがいるんですか」
「そうなのよ」
「じゃあ牧場にもですか」
「行きましょう」
「わかりました」
「牧場まであると尚更ですね」 
 ナターシャが言ってきました。
「生きものが沢山いますね」
「この水田にも一杯いますし」
 ジョージも言います。
「そして牧場もあるなら」
「尚更ですね」
 神宝も水田を見ています、本当に生きもの達が沢山います。
「大勢の生きもの達がいますね」
「そちらも楽しみですね」
 カルロスは牛や馬の鳴き声がする方も見ています。
「牧場に行く時も」
「そちらも見回るから」
 オズマは五人にこうお話しました。
「楽しみにしていてね」
「わかりました」
「そうします」
「牧場に行く時も」
「そちらの生きものに会う時も」
「そうします」
「是非ね、それとね」 
 オズマはさらに言いました。
「今日はあぜ道で食べましょう」
「お昼はですね」
「水田と水田の間で」
「そこに腰を下ろして」
「そうしてですね」
「皆で食べるんですね」
「そうしましょう、水田とそこにいる生きもの達に囲まれて」
 そうしてというのです。
「あぜ道の草と日差しも楽しんでね」
「食べるんですね」
「お昼ご飯を」
「今日のお昼はそうするんですね」
「何か凄く美味しそうですね」
「ピクニックみたいですね」
「そう、ピクニックと同じよ」
 今日のお昼はといううのです。
「だから楽しみにしていてね」
「わかりました」
「そうさせてもらいます」
「実際に凄く美味しそうですね」
「今日のお昼も」
「今もそうで」
「そうよ、楽しみにしていましょう」
 こうお話してでした。
 皆あぜ道を歩いて水田を見回りました、水田の中はとても明るくのどかでそれでいて賑やかなものでした。
 皆お昼になるとオズマの言った通りにお昼となりましたが。
 お昼は日本のお弁当でした、お握りに野菜の佃煮、鶏肉の唐揚げにお漬けものに筍や昆布を煮たものにです。
 お味噌汁にお茶にデザートのおはぎがあります、恵梨香はそのお弁当を見て満面の笑顔になりました。
「最高ですね」
「そうでしょ、水田だからね」
「今日のお昼はですね」
「日本のお弁当にしたのよ」
「そうなんですね」
「それでお握りにもしたけれど」
「お握りが一番いいですね」 
 お握りが大好きな恵梨香ならではの言葉でした。
「それじゃあ」
「お握りをなのね」
「おかずもですか」
「一番にいただくのね」
「そうしていいですよね」
「勿論よ、好きに食べてね」
 オズマはテーブル掛けの上にあるそれを出しつつ言いました。
「そうしてね」
「それじゃあ」
 恵梨香はオズマのその言葉に頷いてでした。  
 皆と一緒に食べます、実際にお握りを一番に食べました。
「やっぱりお握りが一番かしら」
「恵梨香は本当にお握りが好きだね」
「ええ、何といってもね」
「お握りが大好きで」
「それを食べられたら」
 それならというのです。
「私としてはよ」
「幸せだね」
「凄くね」
「日本人だとそうね」
 オズマも言いました、そのお握りを食べながら。
「ご飯が好きで」
「お握りもですよね」
「好きよね」
「大好きです、私もそうで」
「日本人でそうした人多いわね」
「オズの国でもですね」
「そうなの、だからね」
 それでというのです。
「水田を開拓している人達に日系人の人も多いけれど」
「お握り食べてる人多いですね」
 皆お昼を食べています、それを見るとです。
 確かに日系人と思われるアジア系のお顔の人達が多くてです、そうしてお握りを食べている人の割合が多いです。
 恵梨香はそれを見て言いました。
「私達みたいに」
「そうでしょ、だからね」
「私達もですね」
「こうしてね」
「お握りですね」
「またお昼にこうしてお外でね」
「食べるとですね」
「そうしたらね」
 日差しを浴びつつです。
「食べるとね」
「美味しいわね」
「そうでしょ、だから出したのよ」
「そうですか」
「実際に美味しいしね。サンドイッチもいいけれど」
 こちらもというのです。
「水田の中でしょ」
「お米ですね」
「だからね」
「お握りにしたんですね」
「そうよ、お米の中ならね」
「やっぱり食べるのもお米ですね」
「それがいいと思って」 
 それでというのです。
「出したけれど」
「余計に美味しく感じます」
「お米の中でお米を食べるとね」
「そうなります」
「だから思う存分食べてね」
「そうしていいんですね」
「オズの国では遠慮は駄目でしょ」
 このことも言うオズマでした。
「そうでしょ」
「はい、それは」
「だからね」
 それでというのです。
「遠慮なくね」
「お握り食べていいんですね」
「おかずもね」
「わかりました、それでは」
 恵梨香はお碗の中のお味噌汁も飲みました、中にはお豆腐や茸が入っています。そちらも美味しいです。
「いただきます」
「そうしてね」
「はい」
 笑顔で応えてでした。
 皆で食べます、そうしてでした。
 皆でお握りもおかずもお味噌汁も楽しみました、そしてです。
 お茶も飲んでデザートのおはぎも食べますが。
 ナターシャ達四人はおはぐについてこう言いました。
「餅米をあんこで包んで」
「そうして作るものだよね、おはぎって」
「これも凄く美味しいよね」
「お米とあんこが合っていて」
「シンプルだけれど」
 恵梨香も言います。
「これがまたね」
「美味しいわね」
「甘いよね」
「中の餅米の感触もいいし」
「ボリュームもあってね」
「だから私おはぎも好きなの」
 恵梨香は四人ににこりと笑ってお話しました。
「凄くね」
「確かに美味しそうに食べてるね」
 ジャックも言いました。
「恵梨香は」
「そうでしょ」
「凄くね、そういえばね」
 ジャックはここでこうも言いました。
「おはぎのあんこってお豆から作っているね」
「小豆からね」
「それでずんだ餅ってものもあるけれど」
「あちらは枝豆から作るのよ」
「そうだったね」
「きな粉餅のきな粉も大豆からだし」
 それでとです、恵梨香はお話しました。
「お豆からもよ」
「お菓子は作られるんだね」
「甘いね」
「そうなんだね」
「私ずんだ餅やきな粉餅も好きよ」
 そちらもというのです。
「凄くね」
「そうなのね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「ずんだ餅は元々私達が今いる神戸のものじゃないのよ」
「そうなんだ」
「そうよ、仙台ってところのものでね」 
 それでというのです。
「神戸にはね」
「なかったんだ」
「今は神戸でも食べられるけれど」
「元々はだね」
「仙台のものなの」
「同じ日本のお菓子でも地域が違うんだね」
 ジャックはここまで聞いてじみじみとした口調になりました。
「そうなんだね」
「そうなのよ」
「そのこともわかったよ」
「そういうことでね」
 こうしたお話もしてでした。
 皆はデザートも食べてでした。
 そうして少し休んでからまた水田を見て回ってです。
 それぞれギリキンの民族衣装に着替えました、ここでジャックは言いました。
「そういえば君達は」
「ええ、オズの国の民族衣装はね」 
 恵梨香が応えました。
「滅多に着なかったわ」
「そうだったね」
「だから今こうして着ることは」
「珍しいことだね」
「そうなの、それでこれからは」
「うん、この服を着てね」
 そうしてというのです。
「僕達もだよ」
「水田でお仕事をするのね」
「ブーツを履くから」
 ジャックは靴のお話もしました。
「水田にも入られるし」
「この服だと汚れてもなのね」
「大丈夫だよ、泥もはじいてくれるしね」
「そうした服なのね」
「そうなんだ」
 これがというのです。
「だからね」
「それでなのね」
「今からこの服を着て」
 そうしてというのです。
「水田でもね」
「お仕事をするのね」
「そうしましょう」
「それじゃあね」
 こうお話してでした。
 皆で田植えをしたり耕したりです。
 あぜ道や水路も作ります、そうしてです。
 お仕事をしていきますがオズマは皆に言いました。
「トラクターはまだね」
「私達はですね」
「何もなくてものじゃないの」
 こう恵梨香にお話します。
「だからよ」
「私達五人はですね」
「免許がないとね」
 さもないと、というのです。
「運転出来ないからね」
「乗らないことですね」
「そうしてね」 
 こう言うのでした。
「いいわね」
「わかりました」
 恵梨香も他の四人も頷きました。
「そうします」
「それ以外のことは出来るから」
「だからですね」
「何かとやっていきましょう」
「トラクターに乗らなくてもですね」
「やれることは多いわよ」
 そうだというのです。
「水田のお仕事はね」
「そうなんですね」
「だからね」
「何かとしていって」
「汗をかいてね」
 そうしてというのです。
「楽しんでいきましょう」
「わかりました」
 恵梨香はオズマの言葉に笑顔で応えました。
「そうさせてもらいます」
「それではね。オズの国ではお仕事も遊びよ」
「楽しいことですね」
「そうよ、それを達成したら」
 お仕事をというのです。
「とても素晴らしい結果が出るね」
「そうした遊びですね」
「だから私達もね」
「今はお仕事をして」
「遊びましょう」
「そうさせてもらいます」 
 笑顔で応えてでした。
 皆は楽しく水田のお仕事をして汗をかいて楽しみました、そうして夕方まで汗をかいて日が暮れますと。
 一行は水田の傍にある村の中にあるお屋敷に案内してもらいました、ジャックはそのお屋敷を見て言いました。
「ここは何かな」
「私達がここにいる間住む場所よ」
 オズマはジャックの疑問に答えました。
「このお屋敷がね」
「そうなんだ」
「そうよ、だからね」
 それでというのです。
「これからこの中に入って」
「そうしてだね」
「皆で暮らしましょう」
「そうするんだね」
「ここでは面白い子達がいてね」
 それでというのです。
「家事は何でもしてくれるのよ」
「そうなんだ」
「お庭も広くて整っていて」
 瓦のとても大きな日本のお屋敷、壁に囲まれたそれを見つつお話します。
「お風呂も凄いのよ」
「そうした場所なんだ」
「そうよ、ここにいる間はね」
「ここで暮らして」
「楽しみましょう」
「暮らしもだね」
「そうしましょう」
 笑顔で言ってでした。
 オズマは皆をお屋敷に入れて自分もでした。
 中に入りました、するとです。
「ようこそ」
「お待ちしてました」 
 小さなギリキンの紫の色をした着物やもんぺ姿の黒髪に黒い目の男の子や女の子達がお迎えしてきました、オズマは彼等に挨拶を返してから皆にお話しました。
「竜宮童子に座敷童よ」
「この子達はだね」
「そうよ、幸せをもたらしてくれる妖怪達よ」
 かかしに答えました。
「日本のね」
「その妖怪達がだね」
「ずっとこのお屋敷に住んでいて」
 そうしてというのです。
「入る人達の為の家事もなのよ」
「してくれるんだ」
「そうなの」
 こうお話します。
「だからね」
「それでだね」
「家事はこの子達がしてくれるのよ」
「それは有り難いことだね」
「そうでしょ、それでここにいる間はね」
「このお屋敷でだね」
「楽しく暮らしましょう」
 そうしようというのです。
「水田や南瓜畑の仕事をしながら」
「それじゃあね」
 かかしも頷いてでした。
 皆お屋敷の中に入りました、お屋敷は木々や石、お池がある見事な日本のお庭でお池の中には大勢の鯉が泳いでいてです。
 幾つも土蔵もあってお屋敷の中はです。
 大きな畳のお部屋が幾つもあって台所は日本のもので。
 お風呂は檜のものでした、教授は全部見回って言いました。
「いや、実際にね」
「立派なお屋敷でしょ」
「全くだよ、ここでだね」
「私達は寝泊りするのよ」
「何と素晴らしいことか」
 素直に喜んで言います。
「私達は幸せだよ」
「そうよね」
「楽しくお仕事が出来てね」
「こうしたところで過ごせて」
「幸せだよ」
「そうでしょ、ここは完全にね」
「日本のお屋敷だね」
 教授は目を笑顔にさせて応えました。
「何もかもが」
「畳がいいね」
 樵は畳を見て言いました、今皆がいるお部屋は十畳敷きです。
「これまた」
「そうでしょ」
「風情があってね」
「畳を敷くとね」
 オズマは言いました。
「これだけで全く違うのよ」
「そのまま木の板でいるよりも」
「弾力があって気温も湿気も快適になって」
 そうなってというのです。
「とてもね」
「暮らしやすくなるね」
「だから日本のお部屋だとね」
「皆畳だね」
「そうよ、それを敷いてね」
 そしてというのです。
「暮らすのよ」
「そうだね」
「では今夜から」
「僕達はここで暮らすね」
 ガンプも言ってきました。
「そうなるね」
「朝と夜はね」
「それではね」
「あとお食事はね」
 オズマはこちらのお話もしました。
「和食が主だけれど」
「他のものもかな」
「作って欲しいとお話すればね」 
 ジャックに応えて言います。
「あの子達が作ってくれるわ」
「竜宮童子や座敷童の子達が」
「そうしてくれるから」
 だからだというのです。
「食べたいならね」
「注文すればいいね、僕は食べる必要がないけれど」
「そうすればいいわ」
「そういうことだね」
「ええ、ではね」
「今からだね」
「ここで暮らしましょう」
 今回のお仕事の間はとです、こうお話してでした。
 皆まずは晩ご飯、白いご飯に菊菜のお味噌汁にお漬けものにです。
 鮎の塩焼き、納豆にほうれん草のおひたしの晩ご飯を食べました、そしてお風呂に入ってからでした。
 皆着替えますが。
 オズマは自分の浴衣姿を見て思いました。
「似合うかしら」
「凄く似合ってますよ」
 恵梨香が笑顔で応えました。
「本当に」
「浴衣もいいですよね」 
 ナターシャはこう言います、見れは皆も浴衣姿です。
「動きやすくて」
「これを着て寝るんですね」
 ジョージはこう言いました。
「お布団に入って」
「お布団も敷いてもらいましたし」
 カルロスはお隣のお部屋、襖の向こうのそちらを見て言いました。
「そこで寝ますね」
「身体も奇麗にしましたし」
 神宝は微笑んで言いました。
「今夜も気持ちよく寝られますね」
「ええ、これもね」
 オズマは浴衣姿でくるくると回りながら自分の浴衣姿を確認して言いました。
「日本ね」
「はい、日本ではです」
「浴衣姿になってね」
「お布団で寝ます」
「そうよね」
「ですからここではですね」
「私達は浴衣に着替えてね」
 そうしてというのです。
「お布団で寝るわね」
「そうですね」
「ええ、これまで信長さんや幸村さんにお会いしてきたけれど」 
 オズマはこうも言いました。
「あの人達もこうして暮らしているわね」
「そうですね」 
 恵梨香もそれはと頷きました。
「日本のお屋敷やお城に暮らしておられるので」
「そうよね」
「はい、ただ時代によっては」
「日本も歴史が長いから」
「畳がない時代もありまして」
 それでというのです。
「服もです」
「全く違うわね」
「聖徳太子さんの時代なんかは」
 この頃はといいますと。
「中国風の服で」
「それで床もね」
「畳を敷いていないです」
「そうだったわね」
「中国もそうですが日本もです」
「時代によって随分違うわね」
「平安時代は」 
 恵梨香はこの時代のお話もしました。
「十二単で」
「かぐや姫みたいな感じね」
「そうです、かぐや姫ご存知ですか」
「だってあの人もオズの国にいるから」
「だからですか」
「普段は月にいるけれど」
 それでもというのです。
「時々オズの国のお空にあるお屋敷にね」
「来られるんですか」
「それで過ごしているのよ」
「オズの国で、ですね」
「だからね」 
 それでというのです。
「あの人もね」
「オズの国の人ですね」
「そうなのよ。色々な国の色々な童話のね」
「それに出て来る人達もですね」
「オズの国にいて」
 オズの国の住人になっていてというのです。
「それでね」
「会えるんですね」
「そうよ、お伽の国だから」 
 それだけにというのです。
「色々な人達がね」
「童話の中の人達もですね」
「オズの国に入って暮らしていて」
 そしてというのです。
「楽しくしているわ」
「それは何よりですね」
「外の世界で夢を見ておられた人達に」
「それにですね」
「童話の人達もよ」
「おられますね」
「だからサンタクロースもいるのよ」
 この人もというのです。
「子供達を誰よりも好きなあの人もね」
「色々な人がいる国だね」 
 オズの国はとです、ジャックも思いました。
「本当に」
「そうでしょ」
「うん、色々な国の色々な人がだね」
「いてね」
 そしてというのです。
「楽しく過ごしていて」
「そしてね」
 それでというのです。
「色々な国の色々な文化もよ」
「あるね」
「だから日本の畳のお屋敷もあれば」
「十二単もあるんだね」
「平安時代のお屋敷もね」
 こちらもというのです。
「それ以前のね」
「聖徳太子さんの頃の服やお屋敷もだね」
「あるのよ。だから蘇もね」
 これもというのです。
「あるのよ」
「日本の昔の乳製品だね」
「あれもあってね」
「食べられる人は食べられるんだね」
「そうよ、では今夜はね」
「浴衣を着てお布団に入って」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「ぐっすり寝るわ」
「気持ちよくだね」
「私達はね」
「じゃあ僕達はお庭に出て」 
 ジャックはかかしと樵それにガンプを見て言いました。
「そこでね」
「夜の景色を楽しむのね」
「今夜は満月が奇麗だし」
 開けられた窓を見るとでした。
 そこから満月が見えます、黄色いとても奇麗な満月です。
「それを見て月明かりに照らされたお庭もね」
「見るのね」
「そうするよ」
「風情のあるお庭だからね」
 かかしも言います。
「見ることが楽しみだよ」
「お池の岩の上にある竹がいいね」
 樵はそちらのお話をしました。
「あそこにお水が落ちて」
「うん、竹が岩を打つ音がね」  
 ガンプの目はとても楽しそうです。
「またいいよね」
「それを見てね」
 ジャックも笑顔になっています、南瓜のお顔が自然とそうなっています。
「今夜は楽しむよ」
「何か素敵な夜になりそうね」
 オズマはそのジャックににこりとなって応えました。
「お互いに」
「オズマ達は寝てね」
「そしてね」 
 そのうえでというのです。
「貴方達はね」
「満月とお庭を見てね」
「楽しむわね」
「そうするよ、それじゃあ」
「お互いにね」
「楽しい夜を過ごそうね」
「それじゃあね」
 こうお話してでした。
 皆それぞれ楽しい夜を過ごしました。
 オズマ達は寝てジャック達はお庭に出てそうしてでした、一晩を過ごして日の出と共になのでした。
 オズマ達は起きてオズマが障子を開けますと。
 そこにです、朝日が今まさに出ようとしていました。オズマはその朝日を見た瞬間に笑顔になってです。
 お布団から出た恵梨香達に言いました。
「素晴らしい朝ね」
「そうですね」
「これ以上はない位に」
「ぐっすり寝られて」
「楽しい夢を見られて」
「起きるとですから」
「こんないいものはないわ」
 オズマは恵梨香達五人に笑顔でお話しました。
「本当にね」
「ええ、朝日の光が気持ちいいです」
「障子を開けたところから入って来ていますけれど」
「それを浴びるとです」
「物凄く元気が出ますね」
「最高の気分ですね」
「お日様の光にもなのよ」
 オズマはにこりとしてお話しました。
「人を元気にさせるものがあるのよ」
「それわかります」
「オズの国に来て尚更そうなりました」
「オズの国って日の出と共に皆起きますけれど」
「その日の出の光を浴びますと」
「本当に気持ちいいですから」
「そうでしょ、じゃあ今からね」
 オズマは五人にさらに言いました。
「一日をはじめましょう」
「わかりました」 
 五人は一度に応えました。
 そうしてまずは着替えてです。
 朝ご飯を食べます、朝ご飯のおかずは卵焼きで梅干しもあります。そして生姜の佃煮もあってです。
 ジャックは生姜の佃煮を見てオズマに尋ねました。
「ちょっといいかな」
「どうしたの?」
「生姜の佃煮ってね」
 それはというのです。
「やっぱり美味しいのかな」
「凄くね」
 オズマはそれをおかずに食べつつ答えました。
「美味しいわ。二杯目はお茶漬けにするつもりだけれど」
「そのお茶漬けになんだ」
「使うつもりよ、梅干しとね」
「一緒にだね」
「お茶漬けの具にするつもりなの」
「そうなんだ」
「凄く美味しいわ」
 こう言うのでした。
「生姜の佃煮もね」
「成程ね、わかったよ」
「それは何よりよ、それで昨晩はどうだったのかしら」
「うん、いい夜だったよ」
 ジャックはオズマに答えました。
「僕達もね」
「いい夜を過ごせたのね」
「満月にそれに照らされたお庭を見て」
「それは何よりね」
「お外にも出てね」
 屋敷のというのです。
「そうしてだよ」
「お散歩もしたの」
「皆でね」
 かかしと樵、ガンプも入れてというのです。彼等も食べる場所にいてそのうえで皆が食べて笑顔になるのを見ています。
「そうしてね」
「夜の村も見て回ったの」
「そうもしてね」
「楽しんだのね」
「そうしてね」
 それでというのです。
「楽しい夜を過ごしたよ」
「それは何よりね」
「だからね」 
「今皆上機嫌なのね」
「そうだよ、今夜もね」
「そうして過ごすのね」
「そのつもりだよ」
「あの」
 ここで、でした。
 お食事を用意してその場に控えていた座敷童の一人が言ってきました。
「水田の方に行くと夜になりますと」
「何かあるのかな」
「蛍が出ます」
「あの虫がなんだ」
「それで水辺中を飛び回るので」
「凄く奇麗そうだね」
「物凄く奇麗です」
 実際にというのです。
「ですから」
「夜にだね」
「あちらに行かれても」
 そうしてもというのです。
「いいですよ」
「それじゃあね」
 ジャックも笑顔で応えました。
「今夜はね」
「そちらにですね」
「行ってね」
 そうしてというのです。
「楽しんでくるよ」
「それでは」
「何かね」
 ここでこうも言ったオズマでした。
「今回は蛍にも縁があるわね」
「そうだね」
 ジャックもそれはと頷きました。
「言われてみれば」
「そうよね」
「信長さんも使われていてね」
「凄く奇麗でね」
「ここでもなんてね」
「本当に縁があるわね」
「いい縁だね」
 ジャックは笑顔で応えました。
「これはまた」
「奇麗で素敵なね」
「そうだね、それじゃあ」
「今夜はね」
「オズマ達もそれを見てね」 
 水田にというのです。
「それでね」
「楽しめばいいの」
「夜でも」
 それでもというのです。
「寝る前に少し位ならいいよね」
「水田に行く時間があるのね」
「そうだよね」
「ええ、それはね」
 オズマも頷きます。
「多少なら」
「それならだよ」
「晩ご飯を食べてお風呂に入って」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「それから毎日ね」
「観に行くんだね」
「そうしようかしら」
「いいと思うよ」 
 ジャックは笑顔で応えました。
「じゃあ今日から」
「そうしましょう」
「皆で蛍を観ようね」
「夜はね」
 笑顔で約束しました、そうして一日をはじめるのでした。水田と南瓜畑でのお仕事は夜まで楽しいものになると思いながら。








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