『新オズのカボチャ頭のジャック』




                第三幕  ギリキンに入って

 一行はエメラルドの都を北に進んでいきます、ムシノスケ教授はその中で言いました。
「さて、ギリキンの国に入ると」
「ええ、開拓地まで行くのよ」
 オズマが応えました。
「そうするのよ」
「そうだね、開拓地に着いたら」
 教授はオズマに応えてさらに言いました。
「そうしたらだよ」
「開拓の指導よ」
「それにあたるね」
「宜しくね」
「うん、しかしね」
「しかし?」
「いや、稲作も定着して」
 開拓地で行うそれはというのです。
「オズの国全体に広まっているね」
「お米は素晴らしい作物だから」 
 だからだとです、オズマは教授に答えました。
「今ではオズの国でもね」
「主食の一つになっているね」
「麦と並んでね」
「そうなっているわ、収穫高は多いし」
 オズマはお米の長所のお話もしました。
「それに栄養もあるから」
「そうだね」
「だからね」
「今ではオズの国でもだね」
「沢山作ってね」
 そうしてというのです。
「主食の一つになっているわ」
「麦と並んでね」
「ジャガイモも主食で」
 こちらの作物もというのです。
「お米もよ」
「今ではそうだね」
「大々的に作って」
「皆が食べているね」
「ええ、最近ではお米から作るパンもあるし」
 そちらも作っているというのです。
「本当にね」
「お米はどんどん作るべきだね」
「これからはね。だからね」
「今回もだね」
「大規模な開拓を行って」
「水田地帯をもうけるね」
「そうするのよ」
 教授に微笑んでお話します。
「凄い水田地帯を作って」
「皆でお米を食べようね」
「そうしていくわ」
 オズマは微笑んで確かな声で言いました、その彼女に恵梨香が聞いてきました。
「あの、お米は栄養があるって」
「凄くね。だから食べると元気になれるわ」
「お母さんから言われたんですが」
 そうしたお話だというのです。
「お米は白米ですと栄養は澱粉だけだって」
「それは外の世界でね」
「オズの国では違うんですか」
「オズの国では白米でも玄米でもね」
 どちらにしてもというのです。
「栄養が沢山あるの」
「そうなんですか」
「あれよね、外の世界では白米ばかり食べてると」
「栄養が偏って」 
 そうなってというのです。
「脚気という病気になるそうです」
「そうらしいわね」
「オズの国では誰も死ななくて」
 そもそもです。
「病気にもならないですが」
「外の世界では病気になるわね」
「はい、それで白米ばかり食べてますと」
 そちらのごご飯ばかり食べていると、というのです。
「それで、です」
「脚気になって」
「よくないって言われました」
「けれどオズの国ではね」
「そもそも病気がなくて」
「栄養があるものを食べれば元気になってね」
 そうなってというのです。
「いいけれど白米はね」
「それはですね」
「そうよ、栄養があるから」
 オズの国ではです。
「安心してね」
「そればかり食べてもですね」
「いいのよ」
「そうなんですね」
「そういえば恵梨香は白いご飯が大好きだね」
 ジャックがここで言ってきました。
「見ていたら」
「わかるの?」
「うん、パンの時も美味しそうに食べるけれど」
 それでもというのです。
「お米の時が一番嬉しそうだよ」
「それで美味しそうになのね」
「食べているからね」
 だからだというのです。
「お米が一番好きなんだなってね」
「思うのね」
「そうだよ。違うかな」
「その通りよ。やっぱりパンよりもね」
 実際にとです、恵梨香自身答えました。
「私はお米がね」
「好きだね」
「そうなの」
 ジャクに微笑んで答えました。
「私はね」
「だから丼とかカレーライスとかハヤシライス好きだね」
「そうなの。お茶漬けもね」
「そうだね」
「お粥も好きだね、恵梨香は」
 かかしがこちらもと言ってきました。
「とても」
「はい、大好きです」
 恵梨香はかかしに素直に答えました。
「同じ様なものでオートミールもですが」
「好きだけれど」
「私はお粥の方がです」 
 お米のというのです。
「好きです」
「そうだね」
「子供の頃から食べていますし」
「あと恵梨香はお米にこだわりがあるね」
 樵はこのことを言ってきました。
「ジャポニカ米が好きだね」
「はい、日本のお米ですね」
「そちらが好きだね」
「そうなんです」
 恵梨香は樵にも素直に答えました。
「実は」
「そうだね」
「何か違うんです」
「同じお米でもだね」
「ジャポニカ米とインディカ米では」
「そんなに違うんだね」
 ガンプは皆の最後尾にいます、そこで宙に少し浮かんでふわふわと飛びながらそのうえで前に進んでいます。そのうえで言うのです。
「同じお米でも」
「そうなの。私としてはね」
「ジャポニカ米の方が好きでだね」
「そちらのお米を食べられたら」 
 それならというのです。
「一番いいわ」
「そこまで好きなんだね」
「そうなの」
 ガンプにも答えました。
「私はね」
「成程ね」
「恵梨香本当にそちらのお米好きよね」
 ナターシャが言ってきました。
「外の世界でもいつもにこにこと食べてるし」
「パンやインディカ米も普通に美味しそうに食べてるけれど」
 カルロスも言います。
「ジャポニカ米だと一番嬉しそうだね」
「日本の主食はそちらのお米だからね」
 神宝はこのことを言いました。
「外の世界ではいつもにこにこと食べるね」
「そうそう、給食の時だって」
 ジョージはお昼のその時のお話をしました。
「凄く嬉しそうだよ」
「あのお米が兎に角美味しくて」
 そう感じるとです、恵梨香は言いました。
「大好きで仕方ないの」
「そうだね、特にお握り食べる時は」
 ジャックはその時のことをお話した。
「一番嬉しそうだね」
「あっ、お握り大好きよ」
 恵梨香はジャックにすぐに答えました。
「私はね」
「そうだね」
「ええ、色々なご飯を使ったお料理が好きだけれど」
「丼とかカレーとか」
「お茶漬けやお粥もそうだけれど」
 それ以上にというのです。
「何といってもお握りがね」
「一番好きだね」
「その次にお寿司よ」
 こちらのお料理になるというのです。
「私が好きなのはね」
「そこまでお握りが好きなんだ」
「お寿司の方がずっと高いけれど」
 外の世界のお話もします。
「何といってもね」
「お握りだね」
「それが一番好きなの」
「成程ね」
「そうなのよね、オズの国の日系人の人達もね」
 オズマもお話します。
「お米が好きで」
「そうなんですね」
「どのお米がいいかっていうと」
「ジャポニカ米ですね」
「そちらだっていうの」 
 こう恵梨香にお話します。
「貴女と同じでね」
「私と同じですか」
「ええ、ただ他の人達はね」
 日系人以外の人達はといいますと。
「お米はインディカ米がいいっていうわ」
「そうみたいですね、実は私達の外の世界で通っている学校世界中から人が来ているんですが」
 それでもというのです。
「お米はインディカ米の方がいいとです」
「言うのね」
「そうなんです、殆どの人達が」
「ジャポニカ米好きな人は少数派ね」
「どうも」
「オズの国でもそうなのよね」
「今言われた通りですね」
 恵梨香はオズマのお話を聞いて言いました。
「そうなんですね」
「それで日系人でも子供や若い人達はね」
「インディカ米ですか」
「そちらがいいってね」
「そちらですか」
「ええ。ただギリキンの開拓地ではね」
 水田を作るそちらはというのです。
「インディカ米が主流だけれど」
「ジャポニカ米もですか」
「作るわ」
「そうですか」
「だからね」
 それでというのです。
「貴女も食べたいなら」
「その水田で採れたお米をですか」
「採れた時にね」
 その時にというのです。
「食べてね」
「わかりました、そうさせてもらいます」
「是非ね」
「あとギリキンのお米だから」
 またジャックが言いました。
「紫のお米だよ」
「色はそうね」
「白米といってもね」
「それはそうなるわね」
「うん、白いお米にも出来るけれど」
 それでもというのです。
「基本はね」
「ギリキンだから」
「紫だよ」
「そこはオズの国ね」
「そうだね、それぞれの国で採れた作物はね」
 それはというのです。
「それぞれの国の色にね」
「なるわね」
「マンチキンだと青だしエメラルドの都だと緑だし」
「ウィンキーは黄色、カドリングは赤ね」
「そうだよ、あと普通に赤いお米や黒いお米もあるよ」
「お赤飯じゃなくて?」
「違うよ、実はオズの国に昔の日本の人達が来てね」
 そうなってというのです。
「その人達と一緒に入ったんだ」
「ええと、お赤飯じゃないのね」
「そうなんだ、お赤飯は餅米を小豆で赤くしてるね」
「小豆と一緒に炊いてね」
「そうだけれど」
 それがというのです。
「そのまま赤や黒なんだ」
「そうしたお米なのね」
「そうなんだ」
「お米は白いものってね」 
 恵梨香は言いました。
「思っていたけれど」
「オズの国それぞれの色のものもあってだね」
「けれどなのね」
「そうしたお米もあるんだ」
「そうなのね」
「聖徳太子さんや行基さんが来られてよ」 
 オズマがお話しました。
「それからよ」
「そうしたお米が入って来たんですね」
「オズの国にもね」
「そうなんですか」
「それまではお米といえばね」
「それぞれの国の色のものか」
「白いものだったけれど」
 それがというのです。
「昔の日本の人達が入って」
「そうしたお米も入って」
「皆食べているわ」
「そうですか、まさか」
 恵梨香は驚きを隠せないまま言いました。
「そうしたお米があるなんて」
「知らなかったのね」
「全く」
 恵梨香はここでも正直に答えました。
「本当に」
「昔は日本にもあったのだよ」
 ここでオズの国随一の知識を誇る教授がお話してきました。
「そうしたお米が」
「そうなのね」
「そう、昔は白米だけでなく」 
「赤いお米や黒いお米もあったの」
「聖徳太子さんや行基さんの時代にはね」
「そうだったの」
「日本の時代で言うと飛鳥時代や奈良時代だね」
 その頃だというのです。
「その頃だよ」
「千年以上昔よね」
「千三百年以上だね」
「大昔ね」
「その頃から日本という国は存在していてね」
 そうしてというのです。
「神宝のお国で言うと唐だね」
「中国だと」
「そうだよ、かなり昔だね」
「その頃のお米にはなのね」
「そうしたお米があったのだよ」
 赤いお米や黒いお米がです。
「あってね、それでね」
「食べられるのね」
「私達もね」
「そうなのね」
「外の世界でも再現されているよ」
 こうもです、教授はお話しました。
「今ではね」
「そうなの」
「奈良でね」
「奈良時代のもんだから?」
「そうだよ」
 実際にというのです。
「他の奈良時代の食べものも再現されているよ」
「赤いお米や黒いお米以外の食べものも」
「蘇とかね」
「蘇?」
「乳製品だよ」
 蘇についてもです、教授はお話しました。
「蘇はね」
「乳製品っているとヨーグルトやチーズね」
「そうしたものでね」
「昔の日本ではそうしたのを食べていたの」
「そうなんだ、蘇はチーズでね」 
 この食べものでというのです。
「酪や醍醐もだよ」
「乳製品なの」
「そうなんだ、それでそうしたものもオズの国で食べられるよ」
「えっ、そうなの」
「食べようと思えばね」 
 その時はというのです。
「食べられるからね」
「私達もなのね」
「食べるといいよ」
「赤いお米や黒いお米も」
「そうしたらいいよ」
「それじゃあね」
「それとね」 
 教授はさらに言いました。
「南瓜はお米とは全く違うよ」
「うん、お米は昔から沢山の人達が食べていてね」 
 ジャックが応えました。
「南瓜は新しいものだね」
「オズの国が反映されるアメリカもあるアメリカ大陸が発見されてね」
 そうなってというのです。
「それでだね」
「その時に他の世界にも伝わったよ」
「そうだね」 
「だからだよ」
 教授はさらにお話します。
「お米と比べるとね」
「南瓜は多くの人に知られることが遅かったね」
「ジャガイモや玉蜀黍、トマトや唐辛子と同じだよ」
「そうだったね」
「そこが違っていて」
 それでというのです。
「君の頭でもある南瓜はだよ」
「新しい作物だね」
「そうなのだよ」
「そうだね」
「作物それぞれに特徴があって」
 そうしてというのです。
「歴史もだよ」
「それぞれの歴史がだね」
「あるのだよ」
 こうお話します。
「それを知ることも面白いよ」
「学問だね」
「そうだよ、あとアメリカ大陸を最初に発見したのは誰か」
 このこともです、教授はお話しました。
「果たして」
「うん、コロンブスさんじゃないね」
「そうだね」
 かかしと樵が言ってきました。
「実は」
「そうだね」
「その前にバイキングの人達が発見していたのだよ」
 教授は二人ににこりとしてお話しました。
「おそらくそれ以前にもだよ」
「カルタゴ人だね」
「彼等が発見していたね」
「それで現地の人達を商いをしていたよ」
 そうだったというのです。
「どうもね」
「そうだね」
「そうしていたね」
「そうも言われているね」
「最近は」
「外の世界での学問ではね」
 笑顔のままお話します。
「そうなっているよ、そのことを聞いて私も驚いたよ」
「コロンブスさんが発見したと思っていたら」
「違ったからね」
「それでだね」
「教授も驚いたね」
「そうだよ、ただ発見前から人はいてね」
 それでというのです。
「独自の文明を築いていたよ」
「特に中南米ではね」
「そうしていたね」
「マヤやアステカ、インカだね」 
 こうした国々の名前も出します。
「それで繁栄していたよ」
「その頃のオズの国は今とは全く違っていたわね」
 オズマはオズの国の国家元首としてお話しました。
「そうだったのよね」
「そうだよ」
 教授はその通りだと答えました。
「本当にね」
「私のお父さんお母さん以前は」
「今みたいな服でもなくてね」
「三角の帽子にズボンにブーツの」
「それぞれの国の色をしたね」
「そうしたものでなくて」
 それにというのです。
「ネイティブの人達の服装でね」
「それで暮らしていたわね」
「各部族でね」
「国もなくて」
「うん、ただ平和でね」
 オズの国はその頃からそうだったというのです。
「のどかだったよ」
「そこは変わらないわね」
「オズの国はね、ただ国はね」
 そう言われるものはというのです。
「なかったよ、お家もね」
「なかったわね」
「ネイティブの人達の様にテントで暮らして」
「村というより集落ね」
「そうしたのだったよ」 
 こう言うのでした。
「街もなくてね」
「それぞれの国の色はあっても」
「それでもだよ」 
 それがというのです。
「国かというと」
「地方だったわね」
「そう言ってよかったよ」
 こうお話するのでした。
「その頃はね」
「それで死の砂漠もですね」
 恵梨香が言ってきました。
「海岸線にあるんじゃなくて」
「そうだよ、ずっとオズの国を囲んでいてね」
「大陸全体を囲んでなかったのね」
「そうだったんだ、死の砂漠が海岸にまで至って大陸全体がオズの国になったのはもっと後だよ」
 教授は恵梨香にもお話しました。
「ボームさんがオズの国に来られて」
「それからだったのね」
「そうだったんだ」
「そうよね、しかし」
「しかし?」
「昔のオズの国は今と全く違ったのね」
 このことをしみじみと思うのでした。
「西部劇のネイティブの人達みたいだったのね」
「アメリカが反映される国だからね」
 教授はだからだと答えました。
「アメリカがそうした国だとね」
「オズの国もそうなるのね」
「そうだよ、だから当時は」
「そうした国というか」
「部族の集まりだったんだ」
「そうだったのね」
「その人達がやがてあの三角帽子やズボンを身に着けてね」
 今皆が知っているオズの国の服をです。
「国家を形成していってお家を建ててね」
「街や村を築いていって」
「今に至るんだ」
「そういうことね」
「全てはね」
 教授は笑顔でお話しました。
「オズの国の歴史だよ」
「そういうことね」
 恵梨香も頷きました、そうしてです。
 ギリキンの国に入るとお昼の時間になりました、オズマはテーブル掛けにお昼ご飯を出しましたが。
 お寿司にお握りでした、恵梨香はその中のお握りを見て目を輝かせました。
「お話をしたらですね」
「恵梨香が大好きだって言ったからよ」
 オズマはその恵梨香ににこりとして答えました。
「出したのよ」
「そうですか、有り難うございます」
「あとお寿司もね」
 見れば握り寿司に巻き寿司があります。
「あるわ」
「それでこちらもですね」
「食べてね」
「わかりました、ただ私は」
「お寿司よりもなのね」
「どっちかとなりますと」
 今の様に両方あると、というのです。
「お握りです」
「そちらね」
「では頂きます」
「そうしてね」
「恵梨香は本当にお握りが好きだね」
 ジャックも見て言います。
「今見て実感したよ」
「そうでしょ、本当にね」
「お握りが好きなんだね」
「白いご飯が大好きで」
 それでというのです。
「特にね」
「お握りだね」
「そちらなの」
 実際にというのです。
「一番好きなのは」
「じゃあ今からだね」
「お握りを頂くわ」
「それではね」
「中に入っているのは何かしら」
 恵梨香は海苔に包まれた丸いお握り達を見て思いました、もう目がきらきらしてうっとりとさえなっています。
「一体」
「梅干しにおかかに昆布よ」
 オズマは恵梨香に答えました。
「明太子もあるわよ」
「どれもいいですね」
「どれも好きなのね、恵梨香は」
「はい、本当に」
「それでなのね」
「どれを食べても楽しみです」
 こうオズマに答えます。
「私は」
「それではね」
「はい、頂きます」
 笑顔で言ってでした。
 皆でお握りにお寿司を食べます、食べられる面々はお寿司を主に食べますが。
 恵梨香はお握りです、それで食べて言うのでいsた。
「海苔も中の具も最高で」
「そのお握りの具は何だったのかな」
「梅干しでした」
 恵梨香はかかしに答えました。
「その酸っぱさが食欲をそそって」
「美味しいんだ」
「はい、とても」
「そうなんだね」
「そういえば恵梨香梅干しも食べるね」
 樵も言ってきました。
「ご飯に乗せたりお茶漬けに入れたり」
「はい、梅干しはご飯に合うので」
「それでだね」
「よく食べます」
 そうしているというのです。
「それでお握りの中にあってもなんです」
「好きなんだね」
「大好きです」
「それはいいことだよ、じゃあどんどん食べよう」 
 ガンプは食べる皆をジャックやかかし、樵と共に見ながら言いました。
「これからもね」
「そうさせてもらうわ」
「是非ね」
 笑顔でお話してでした。
 恵梨香はお握りを沢山食べました、そして他の皆はお握りだけでなくお寿司も食べました。食べ終わった後で。 
 オズマはデザートを出しました、それは蜜柑にお茶にです。
 もう一つ茶色くて四角いものがありました、ジャックはそれを見て首を傾げさせました。
「これは何かな」
「これが蘇だよ」
 教授が答えました。
「昔の日本の乳製品だよ」
「これがなんだ」
「元々は中国から伝わってね」
 そうなってというのです。
「日本で食べられていたんだよ」
「昔の日本でだね」
「実は江戸時代まで食べられていたんだ」
「あれっ、結構長いね」
「江戸時代の日本の将軍様もだよ」
 この人もというのです。
「この蘇を食べていたんだよ」
「そうなんだね」
「その蘇を出すとはね」
「こちらもお話に出たからよ」
 オズマはにこりとして答えました。
「出したの」
「そうなんだ」
「それで今から食べられる人はね」
「皆でだね」
「蜜柑も食べて」
 そうしてというのです。
「お茶を飲んで」
「蘇もだね」
「食べましょう」
 こう言ってでした。 
 皆でデザートの蜜柑を食べてお茶を飲んでです。
 蘇も食べました、その味はといいますと。
 まずオズマが言いました。
「チーズね」
「そうですね」
 ジョージがその通りだと答えました。
「これは」
「間違いないですね」 
 神宝も食べて思いました。
「これは」
「色は茶色ですがチーズですね」
 ナターシャも言います。
「味も匂いも」
「美味しいですね」
 カルロスも食べつつ言いました。
「チーズですから」
「乳製品だからですね」
 恵梨香も食べて思いました。
「チーズなんですね」
「そうね、あと酪や醍醐もあるけれど」
 オズマはこうした食べもののお話もしました。
「酪は飲むヨーグルトで醍醐は普通のヨーグルトみたいね」
「そちらですか」
「私が聞いた限りではね」
「その通りだよ」
 教授も蘇を食べています、そのうえでお話してきました。
「今調べてわかっている限りではね」
「酪は飲むヨーグルトで醍醐は普通のヨーグルト」
「どうやらね」
 こう恵梨香にお話します。
「だからどれも美味しいよ」
「それで蘇は聖徳太子さんがお好きで」 
 オズマは今はオズの国にいるこの人のお話をしました。
「いつも食べているのよ」
「そうですか」
「あと他の乳製品もね」
 蘇以外にもというのです。
「色々とね」
「召し上がっておられるんですね」
「そうなのよ、とても頭がよくて勉強家で」
 聖徳太子という人はというのです。
「神通力まで持ってるのよ」
「凄い人ですよね」
「まるで超人よ」
 こう恵梨香にお話します。
「あの人は」
「そうした凄い人ですか」
「乗馬してお空も飛べるし」
「魔法みたいですね」
「魔法も使えてそちらの免許もよ」
 そちらもというのです。
「持ってるわよ」
「魔法も使えますか」
「ええ、ただ魔法以外のお力をね」
「神通力ですね」
「持ってるから」
 だからだというのです。
「凄いわよ」
「そうなんですね」
「だからお会いした時はね」
 その時はというのです。
「色々お話を聞いてね」
「わかりました」
 恵梨香はオズマの言葉に頷きました、そうしてです。
 お食事の後でさらに北に進んでいきます、その中で。
 一行は右手にあるものを見ました、それは水田で。
 見事な紫の稲が育っていてお水の中に蛙や泥鰌、タニシ達がいてお空には沢山の雀が飛んでいて鴨が稲と稲の間を泳いでいてです。
 そうして水路には鮒が泳いでいてあぜ道には大豆があります、かかしはその見事な水田を見て言いました。
「いい場所だね」
「うん、お米だけじゃなくてね」
 樵も言います。
「沢山の色々な生きものがいてね」
「賑やかだね」
「そうだね、これが水田だね」
「そうだね」
「日本の水田かな」
 ジャックはその水田を見て思いました。
「これは」
「ええ、日本の水田よ」
 恵梨香がその通りだと答えました。
「まさにね、ただね」
「ただ?」
「ここまで賑やかな水田はね」
 それはというのです。
「私も見たことがないわ」
「そうなんだ」
「日本は街から出たらよく水田があるけれど」
 それでもというのです。
「こんなに泥鰌やタニシがいてね」
「それでなんだ」
「鴨までいて」
 そうしてというのです。
「水路に鮒がいて大豆まであるのは」
「そうはないんだ」
「ここまではね、けれどね」
「それでもだね」
「ここは素晴らしいわ」 
 そうした水田だというのです。
「とても賑やかでね」
「それでだね」
「いいわね、泥鰌もタニシも食べられるし」
「そうなんだ」
「勿論鴨もで雀もね」 
 この鳥もというのです。
「食べられるのよ」
「それじゃあ鮒もかな」
「そうよ、あそこにあるものは全部ね」
「お米だけじゃなくて」
「食べられるわ、あぜ道の大豆なんか」
 これはといいますと。
「そのまま食べてもいいし」
「お豆腐にもなるね」
「そちらもいいわ、もう全部食べられる」
 そうしたというのです。
「最高の水田よ」
「そうなんだね」
「素敵な場所よ」
「それは何よりだね」
「畑もあるし」
 見れば水田の近くに広がっています。
「ここは凄くいい場所よ」
「そう言ってくれるんだね」
 近くにいた中年のギリキンの紫の服を着たおばさんが言ってきました。
「実はここは昔は麦ばかり作ってたのよ」
「そうだったんですか」
「けれどこっちに来た日系人の人に教えてもらってね」
「それで水田をはじめたんですか」
「今も麦も作ってるけれど」 
 それでもというのだ。
「主にはね」
「水田ですね」
「それを作ったら」
 そうしたらというのです。
「お米が沢山採れて他のものもね」
「採れるんですね」
「あぜ道のお豆に」
 これにというのです。
「泥鰌にタニシに鮒に雀に鴨にってね」
「お米以外のものが食べられますね」
「そうなのよ、もう最高よ」
「水田は」
「その日系人の人には感謝しているわ」
「そうなんですね」
「それでその日系人の人はどうしてるのかな」
 ジャックはおばさんに尋ねました。
「それで」
「今ここにいるわよ」
 こう言うとでした。
 アジア系の初老の人が出て来ました、やはりギリキンの服を着ています。
「イノウエさんっていうのよ」
「いやあ、どうもどうも」 
 イノウエさんと言われたその人は左手を頭の後ろにやって人懐っこい感じでいます。飄々として気さくな雰囲気です。
「ここは近くに豊かな川があるからね」
「水田に向いてるってなんだ」
「思ってこっちに移住してね」
 そうしてというのです。
「この村の人達にお話したら」
「これだけの水田が出来たんだ」
「そうなんだ、勿論わしもだよ」
 ジャックにその人懐っこい笑顔でお話します。
「まずは自分でね」
「水田を作ったんだ」
「そうしたんだ、するとだよ」
「いい水田になったんだ」
「そうなんだ、土地もよかったしね」
「いや、ここ結構痩せた土地だったのよ」
 おばさんがこう言いました。
「確かに川は近くにあったけれど」
「それでもだったんだ」
「痩せていたのよ、それがね」
 そうした土地だったのがです。
「イノウエさんの言う通りにしたら」
「いい土地になったんだ」
「あっという間にね」
 それこそというのです。
「それでよ」
「それは凄いね」
「いやあ、わしは何もしてないよ」 
 イノウエさんはここでも笑って言いました。
「本当にね」
「この人はそう言うけれどね」
「それでもなんだ」
「この人のお陰で土はよくなってね」
 そうなってというのです。
「こうして水田もね」
「出来たんだ」
「それでこうしてよ」
「色々なものが採れるんだ」
「そうよ、畑では沢山のお野菜を作ってるしね」
 そちらではそうしているというのです。
「そっちもね」
「いいんだ」
「かなりね」
 実際にというのです。
「今はね」
「やっぱりお米は素晴らしいわね」
 オズマも水田を見てにこりとして言いました。
「だからこそね」
「今回はだね」
「開拓でね」
 ジャックに応えて言います。
「とても立派な水田にするわ」
「そうするんだね」
「お米は収穫高が凄いから」
 だからだというのです。
「沢山あるとね」
「大勢の人がだね」
「楽しくお腹一杯食べられるから」
 そうなるからだというのです。
「是非ね」
「開拓するね」
「そしてね」
 それと共にというのです。
「南瓜畑もね」
「作るんだね」
「こちらも広いものをね」
「それで沢山作るんだね」
「南瓜は栄養の塊だから」
 今度は南瓜のお話をするのでした。
「ただ美味しいだけじゃなくて」
「それ皆が言うね」
「だからね」
 それ故にというのです。
「こちらもね」
「かなり作るんだね」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「皆がね」
「南瓜を沢山食べられる様にするんだ」
「今以上にね。南瓜は煮てもいいし」
「バーベキューで焼いたりもするね」
「コロッケに入れたりシチューにもよ」
「入れるね」
「そしてスイーツに使ってもね」
 そちらでもというのです。
「いいからね」
「沢山あっても困らないね」
「だからね」
「作るね」
「大々的にね」
「そうだよね」
「お米に南瓜」
 この二つだというのです。
「今回はね」
「作るのは」
「開拓、開墾をしてね」
 そのうえでというのです。
「そしてよ」
「皆が楽しく食べられる様にするね」
「そうするわ、ではその為にもね」
「今はだね」
「北に進んでいくわ」
 こう言ってでした。
 皆先に先に進んでいきます、そのうえで水田そして南瓜畑にになろうとしている開拓地に向かうのでした。








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