『オズのボームさん』




                第三幕  宙を舞って

 皆魔法使いが出したお薬を飲んだり身体に塗ったりしてでした。
 皆で宙に舞うことにしました、するとです。
 薬の効果がすぐに出て皆宙に舞いました、ドロシーはふわりと宙に立ったまま浮かんで笑顔で言いました。
「凄いわ、実際にね」
「宙に浮かんでるね」 
 トトも嬉しそうに言います。
「そうなってるね」
「そうね、これも魔法ね」
「オズの国のね」
「実は科学の要素も入れているんだ」
 魔法使いも宙に浮かびつつ言います。
「漫画家さんの道具は科学のものだからね」
「それでなんだ」
「そう、だからね」 
 それ故にというのだ。
「こうした感じなんだよ」
「成程ね」
「そしてね」
「そして?」
「お空を階段を登り降りするみたいに歩ける様な」 
 そうしたというのです。
「ものにしているんだ」
「そういえば浮かんでいる感じはしないわね」
 オズマも宙に浮かんでいます、その上で言うのでした。
「魔法使いさんの言う通りよ」
「階段を登っている感じだね」
「見えない階段があって」
 それでといのです。
「そこを歩いて登ってる感じよ」
「そうだね、ただ宙なんで躓くことはないよ」
「何もないから」
「そう、だからね」
「躓くことはないのね」
「そうだよ、だからね」 
 魔法使いは笑顔でお話しています。
「安心してね」
「宙を歩けばいいわね」
「そうだよ、宙を舞っていようね」
「それではね」
 オズマは魔法使いに笑顔で頷きました、そうしてです。
 皆は宙を歩く様に舞いながらそのうえで高い場所の本も整頓してお掃除もしていきます。その中で。
 ボームさんは高い場所の本を宙に浮かんで手に取って笑顔になりました、そうしてこうしたことを言いました。
「こんな便利なものがあるなんてね」
「いいですよね」
「物凄く助かります」
「そして楽しいです」
「宙に浮かべるなんて」
「そこを歩けるなんて」
「そうだね、オズの国の楽しさはね」
 このことはというのです。
「ドロシー王女が最初に来てからだよ」
「ご存知でしたね」
「あの時から」
「あの時も色々な不思議があって」
「凄く楽しい国でしたね」
「魔法も一杯で」
「うん、けれど今ではね」
 本を然るべき場所に置きつつです、神宝達五人にお話します。
「あの頃より遥かにだよ」
「不思議に満ちていて」
「魔法もあの時よりも一杯で」
「それで、ですね」
「こうしたものもあって」
「嬉しいですね」
「うん、凄くね」
 にこにことして言います。
「僕は嬉しいよ」
「それは何よりですね」
「それではですね」
「今はこうして宙を浮かびながら」
「お仕事をしていきますね」
「そうさせてもらうよ、只でさえ楽しくお仕事が出来ているのに」
 そこにというのです。
「こうして宙を浮かべるなんてね」
「最高ですよね」
「これ以上はないまでに」
「凄くいいですよね」
「私達も楽しくて仕方ないです」
「本当に」
「そうだね、これ以上はない楽しさと思っても」
 それでもというのです。
「それ以上の楽しさがあるのがだよ」
「オズの国ですよね」
「これで終わりということはない」
「もっと楽しくなりますね」
「そうですよね」
「そうした国ですね」
「そうなんだよ、この国を知られてよかったよ」 
 こうも言うボームさんでした、そして誰よりも生き生きとして整頓に励んでいきます、そうしてお昼になってです。
 皆休憩をなって王宮に戻ってお昼ご飯を食べますが。
 この日のお昼は中華料理でした、蟹を蒸したものに海老蒸し餃子、白身魚を揚げてあんをかけたものに中華風のお刺身、お野菜をたっぷり入れたとろみのあるスープ、八宝菜に海鮮麺と五目炒飯が出ました。 
 その中華料理を食べつつです、腹ペコタイガーは臆病ライオンに言いました。
「ここでたっぷり食べてだよ」
「腹ペコでなくなるんだね」
「そうなるよ、兎に角僕は食いしん坊だからね」
 自分でこう言うのでした。
「どんどん食べないとね」
「お腹が空いて仕方なくなるね」
「そうなるからね」
「だからご飯は何時でもだね」
「たっぷり食べるよ」 
 そうするというのです。
「そしておやつもね」
「沢山食べてるね、君は」
「そうだよ、そしてお昼もね」
「食べるね」
「そうするよ」
 こう言ってそうしてでした。
 腹ペコタイガーは蟹を食べます、その蟹を食べてまた言いました。
「この蟹も美味しいよ」
「この蟹は上海蟹だね」 
 神宝もその蟹を食べつつ言いました。
「そうだね」
「オズの国でこの蟹が食べられることもね」 
 ナターシャも食べています、見れば子供達は五人共今は蟹を食べています。
「不思議よね」
「そうよね、オズの国ならではというか」
 恵梨香はナターシャに応えました。
「色々な生きものがいるわね」
「そして色々なものが食べられる」
 カルロスはにこにことしています。
「それもオズの国だね」
「いや、この蟹とても美味しいよ」
 ジョージは蟹の味を堪能しています。
「評判通りだよ」
「うん、これは何匹でも食べられるよ」
 腹ペコタイガーは五人に舌鼓を打ちつつ言いました。
「本当にね」
「そうだね、ただ君凄いね」
「蟹を殻ごと食べてるね」
「臆病ライオンさんもエリカもトトも」
「そうしてるね」
「そこは人間と違うのね」
「僕達は顎が強くて牙もあるからね」
 それでとです、腹ペコタイガーは答えました。
「それが出来るんだよ」
「そうなんだね」
「その顎と牙の前には殻もものではない」
「そういうことだね」
「だから殻があっても平気で」
「食べられるのね」
「うん、それで殻は噛み砕いて消化出来るよ」
 そのまま食べてというのです。
「僕達はね」
「胃も丈夫なんだ」
「それも凄いわね」
「蟹の殻はとても固いのに」
「それが出来るなんて」
「本当にね」
「いや、この蟹は殻も食べられるよ」 
 ここでボームさんが言ってきました。
「オズの国は不思議が一杯あるね」
「だからですか」
「蟹の殻も食べられるですか」
「そうだったんですね」
「そういえば皆さん殻も召し上がられてますね」
「そうされてますね」
「こうしてね、柔らかくなっていて」
 そしてというのです。
「食べられるよ、実際に食べてみればいいよ」
「あっ、そうですね」
「持ってると固いですが食べると柔らかいです」
「何か不思議ですね」
「それで蟹の味がします」
「殻まで」
「オズの国の蟹はじっくり煮たり蒸したらこうなるの」
 ジュリアが微笑んでお話しました。
「殻、甲羅までね」
「食べられる様になるんですね」
「そうなんですね」
「オズの国だから」
「それで、ですか」
「そうなるんですね」
「そうよ、それじゃあね」
 ジュリアはお刺身を食べつつ言います、お刺身だけでなく細かく刻んだ香草やお野菜もお皿の上に沢山あってお魚と一緒に食べています。
「殻も食べてね」
「そうさせてもらいます」
「こんなに美味しいんですから」
「てっきり食べられないと思っていました」
「腹ペコタイガーさんとのやり取りから」
「それはと」
「あれっ、僕は固いと思っていたよ」
 腹ペコタイガーはそう思っていたのでした。
「食べてもね」
「それは君が思い込み過ぎだったんじゃないかな」
 かかしが言ってきました、食べる必要のない人達は席に着いてそのうえで皆が美味しいものを食べて笑顔になっているのを見て心の栄養としています。笑顔がこの人達のこの上ない栄養になるからです。
「それでじゃないかな」
「そういえば喉越しは柔らかいよ」
「そしてお口の中でもだね」
「今は柔らかいよ」
「そうなってるね」
「うん、思い込むと」 
 それならです。
「固いものも柔らかく思えるんだね」
「オズの国では思いが強いとね」
 樵も言ってきました。
「それが現実になるからね」
「そうしたところはあるね」 
 ボームさんも言います。
「固いものを柔らかいと思う位はね」
「食べるものだとあるね」
「そうだね、思いの強さは」
 それはといいますと。
「お伽の国では大事だからね」
「そうだよね」
「うん、だからね」
 その為にというのです。
「今回の腹ペコタイガー君みたいなこともね」
「あるね」
「そうだね」
「それもまたオズの国ということで」
「オズの国は思いの強さも影響する」 
 しみじみとです、ジャックは言いました。
「このことは大事だね」
「そうした国だということだよ」
「そうだよね」
「思いが強くて続けていけば何かが出来る」 
 こう言ったのはムシノスケ教授でした、今は麺を食べています。とろりとしたスープの感じもいいものです。
「それは全てのことに言えるね」
「そうだね、今回のお仕事だってそうだね」 
 モジャボロは餃子を食べながら教授の言葉に頷きました。
「やっぱり」
「そう、やろうと思ってね」
「それでやっていけばね」
「必ず見事な結果が出るよ」
「そうだね」
「そう、だからね」 
 それでというのです。
「やっていこう」
「このままね」
「是非共ね」
「やっていけば」 
 本当にそうしていけばというのです。
「素晴らしい整頓をして奇麗にしようとね」
「強く思っていけばだね」
「必ず出来るよ」
「必ずだね」
「そう、必ずね」
「そのーー通りーーですーーね」 
 チクタクは教授の言葉ににこりとして頷きました。
「思わないーーとーーです」
「何も出来ないね」
「はじまるーーことーーもーーです」
 このことすらというのです。
「ありまーーせん」
「そうだよ」
「そう思うと思いは大事だね」
 ハンクは自分の為に用意してもらった新鮮な馬草を食べつつ言いました。
「それも強いといいね」
「ええ、若しオズの国に行きたいとね」
 トロットはハンクに応えて言いました。
「強く思ったらね」
「行けるね」
「そうよ、ボームさんもでしょ」
「そうだね、確かに」
「ドロシーは定住するまで四回も来てるけれどね」 
 オズの国にです。
「このこともよ」
「またオズの国に来たいってだね」
「思ったからね」 
 それ故にというのです。
「来られたのよ」
「そうね、最初に来た時から凄く好きになったから」
 ドロシーも答えます。
「だからね」
「それでよね」
「ええ、カンサスに帰りたかったけれどね」
「それは叔父さんと叔母さんがおられたからね」
「だって大切な家族だから」
 ヘンリー叔父さんとエマ叔母さんはです。
「だからね」
「それでよね」
「家族とまた一緒に暮らしたくて」
「カンサスに帰りたかったのね」
「けれど今はね」
「叔父さんと叔母さんもオズの国におられるから」
「ずっと暮らしていたいわ」
 オズの国にとです、ドロシーはにこりと笑って答えました。
「そう思っているわ」
「そうよね」
「それでいつもまた行きたいとはね」
 カンサスに戻っている間もです。
「思っていたわ」
「実際によね」
「そうだったわ」
「オズの国で強い思いがどれだけ強い力か」 
 ベッツイも言います。
「ドロシーのことでもよくわかるわね」
「実は私もまた来たいと思っていたんだ」 
 魔法使いも笑って言ってきました、お料理と一緒に出ている甘くて美味しい杏酒も一緒に楽しんでいます。
「実はね」
「それでだったのね」
「そこでドロシー嬢と再会してね」
「また来ることが出来て」
「嬉しかったよ」
「そう、僕も来られたんだ」
 ボームさんもです。
「オズの国では思いが強いと大きな力になって」
「それでよね」
「僕も来られてね」
「今私達と一緒にいるのね」
「そうだよ、だから思いは強く」
 その様にというのです。
「持とうね」
「そうね、これからも」
「そうしていこう」
「その通りね、それでだけれど」
 オズマはお茶を飲みつつここで言いました。
「今デザートはないわね」
「そういえばそうだね」
「そうですね」
 キャプテンとモジャボロの弟さんが気付きました。
「沢山ご馳走は出ていますが」
「デザートはないね」
「デザートは桃や梨、葡萄にライチをね」
 そうしたものをというのです。
「出すから」
「それで、ですね」
「そう、だからね」
 モジャボロの弟さんに答えます。
「今出ているものを食べ終わったら」
「出て来ますね」
「そうよ。だから楽しみにしておいてね」
「わかりました」
「ライチは外せないですね」 
 神宝は笑顔で言いました。
「やっぱり」
「中国ではよね」
「はい、中華料理のデザートでフルーツが出るなら」
 それならというのです。
「もうです」
「ライチはね」
「本当に外せないです」
 こうオズマに答えました。
「やっぱり」
「あの果物は私も大好きよ」 
 ビリーナもお話に参加してきました。
「素敵な味ね」
「大好きなんだ」
「ええ、そうよ」 
 神宝に自分の為に出してくれた向日葵の種を食べつつ答えます。
「私はあの果物が大好きでね」
「これから食べるけれど」
「楽しみよ」
「そうなんだね」
「凄くね」
 こう言うのでした。
「これから食べるから」
「僕も食べるよ」
「それも楽しんでよね」
「勿論ね」
「そうよね」
「じゃあ食べよう」 
 笑顔でこうも言った神宝でした。
「皆でね」
「是非そうしましょう」
 こうしたこともお話してでした。
 皆でお昼ご飯を食べて最後はデザートにフルーツを楽しみました、そして暫く休憩を摂りますがその時に。
 ボームさんはドロシーとチェスをしつつこんなことを言いました。
「こうしてチェスをしても」
「いいわよね」
「ボードゲームをしてもね」
 そうしてもというのです。
「楽しめるね」
「そうよね」
「うん、チェス以外のね」
「ボードゲームは好きよね、ボームさん」
「一緒に楽しめるからね」 
 だからだというのです。
「好きだよ」
「そうよね」
「僕が楽しんでね」
 そうしてというのです。
「相手の人も楽しむ」
「だからよね」
「好きよね」
「そうだよ、だからまたお仕事をするまでは」
「チェスをしてね」
「楽しもう」
「それではね」
「一時になったらまたお仕事だけれど」
 オズマもくつろぎながら言います、皆図書館のロビーでそうしています。
「それまではね」
「こうしてだね」
「遊んで休んでね」
 そうしてというのです。
「楽しみましょう」
「そうだね」
「そしてね」 
 オズマはさらに言いました。
「ほっとするのよ」
「食べた後はね」
「そう、だからね」
「一時まではだね」
「休憩時間を摂って」
 その中で休んだり遊んだりしてというのです。
「そうしてね」
「英気を養うんだね」
「そうよ、ではね」
「うん、一時まではだね」
「皆休んでね、三時になったらおやつよ」
 このこともお話してでした。
 オズマは自分が率先して休みました、ゆっくりと読書をしました。そして一時になると皆また整頓やお掃除に励みますが。
 その中で、です。つぎはぎ娘は天井を見て言いました。
「天井も汚れてるわね」
「そうね、見ればね」 
 ガラスの猫もつぎはぎ娘と一緒に天井を見上げて応えました。
「天井もね」
「それじゃあ天井も奇麗にする?」
「そうした方がいいわね」
「そうだね」
 ボームさんは二人の言葉に頷きました。
「では宙に浮かんでね」
「そうしてよね」
「天井のお掃除もするわね」
「そうしよう、これからね」
「そうね、ただね」
 ここでガラスの猫はこう言いました。
「私達は女の子多いでしょ」
「そう、そして皆スカート穿いてるね」
「スカートの中が見えるとよくないわ」
「それは絶対だね」
「そこはどうしようかしら」
「それは簡単だよ」 
 神宝が笑顔で、です。ガラスの猫に答えました。
「ズボンを穿けばいいんだよ」
「スカートの下になのね」
「そうしたらね」 
 それでというのです。
「スカートの中は見えないよ」
「そうするのね」
「それでどうかな」
「ええ、名案よ」 
 ガラスの猫も笑顔で頷きました。
「いいこと考えたわね」
「学校じゃ結構あるからね」
「そうなの」
「女の子は動く時スカートの下に何か穿くんだ」
「体育の時のスパッツや半ズボンを穿くわ」
 ナターシャが答えました。
「いつもね」
「学校にいる時もお家にいる時もね」
 恵梨香も言います。
「そうしているわ」
「学校じゃ普通だね」
 男の子のジョージも言います。
「そうすることは」
「そうしない女の子の方が珍しいんじゃないかな」
 カルロスは腕を組んで言いました。
「スカートの時はね」
「そうしたら暖かいしね」
「ええ、スカートの下にズボン穿いたらね」 
 トロットとベッツイも言います。
「それだけで違うわ」
「全くね」
「オズの国はいつも暖かいけれど」
「やっぱり身体は冷えないに越したことはないから」
「そうしてね」
「暖かくすることがいいわ」
「それにスカートの中も見られないし」
 ドロシーは考えるお顔でお話しました。
「いいわね、では皆ズボンを穿きましょう」
「スカートの下にね」
「そうしましょう」
「ええ、そうしてね」
 オズマも言ってきました。
「天井のお掃除もしましょう」
「そういうことでね」 
 こうお話してでした。
 女の子達は皆スカートの下にズボンを穿いてです。 
 そうしてから天井をお掃除する人達は宙に浮かぶお薬を飲んだり身体に塗ってから天井に上がってそうして天井を拭いて奇麗にしていきます。皆天井を床にして屈んで、です。
 拭いていますが神宝達は下を見下ろして言いました。
「不思議だね」
「うん、天井にいるのにね」
「床掃除をしているみたいよ」
「拭き掃除をして」
「そうした感じね」
「そうだね、これはね」
 かかしも拭き掃除をしつつ言います。
「床と天井があべこべになった感じだね」
「そうですよね」
「上下が逆になって」
「本や本棚が天井にある」
「そんな風ですよね」
「そんな感じですね」
「そうだね、決してそうじゃないのに」
 上下はそのままなのに、というのです。
「そこは違うね」
「そうですよね」
「上、いえ下じゃそれぞれお仕事をしている人もおられますし」
「それではですね」
「元通りですね」
「変わってはいないですね」
「変わったのは僕達だね」
 樵も言ってきました。
「そうだね」
「そうですよね」
「世界が変わったんじゃなくて」
「僕達がお薬を使って」
「そうなっていますね」
「世界は変わっていないですね」
「そうだよ、ではこのままね」
 是非にと言うのでした。
「天井のお掃除をしていこう」
「わかりました」
「天井にいて」
「そうしてですね」
「拭き掃除をしていきますね
「このまま」
「これも拭こうね」  
 シャングリラも見て言うのでした、天井にあるそれを。
「いいね」
「ああ、汚れてますね」
「遠くから見たらわからなかったですが」
「シャングリラも」
「下から、遠くから見たらとても奇麗なのに」
「それでもですね」
「そう、遠くから見たら奇麗なものでもね」 
 それでもとです、樵はシャングリラを拭きつつお話しました。
「その実はだよ」
「汚れているんですね」
「そうした場合があるんですね」
「それでお掃除しないといけないんですね」
「今みたいに」
「そうなんですね」
「そうだよ、しかもこのシャングリラはエメラルドとクリスタルそしてガラスで出来ているけれどね」
 それでもというのです、クリスタルもガラスも緑のものです。
「どれも磨かないと奇麗にならないよ」
「ただ奇麗じゃないんですね」
「磨かないと」
「お掃除しないとですね」
「奇麗にならないんですね」
「汚れるんですね」
「そうだよ、磨いたりお掃除しないとね」
 それこそというのです。
「奇麗になるものはないよ」
「だから都はいつもだよ」
 かかしは笑顔で言います。
「皆エメラルドやガラスを奇麗にしているね」
「そうですね」
「言われてみますと」
「王宮でもですね」
「そしてこのシャングリラもなんですね」
「同じなんですね」
「そうだよ、同じだよ」
 まさにというのです。
「だから奇麗にしようね」
「ほら、どんどん奇麗になっているよ」
 かかしもシャングリラを拭いています、大きなシャングリラを樵と一緒に拭いて磨いていくとでした。
 どんどん奇麗になっていっています、それで言うのでした。
「お掃除して磨くとね」
「はい、本当に」
「見違える位にです」
「そうなっています」
「さっきまでとはまるで別です」
「きらきらしています」
「そう、どんなものでもお掃除しなかったり磨かなかったりすると汚くなるけれど」
 それでもというのです。
「こうしてお掃除して磨くとね」
「奇麗になりますね」
「どんなものでも」
「だからお掃除もするといいんですね」
「そういうことですね」
「今みたいに」
「そう、奇麗にしようね」 
 是非にというのでした。
「お掃除して磨いてね」
「わかりました」
「天井もそうして」
「それにシャングリラもですね」
「他にもシャングリラはありますけれど」
「全部ですね」
「奇麗にしようね」
 こうお話してでした。
 天井とそこにあるシャングリラも奇麗にしました、それは三時のおやつを食べるまで行われておやつを食べた後もです。
 五時まで奇麗にしました、そしてです。
 その後は皆で晩ご飯を食べますが。
 鴨のオリーブ煮に豚の肝のテリーヌ、レタスやトマトやキャロットやセロリのサラダに玉葱と人参とベーコンのスープにです。
 ジャガイモの皮を剥いて丸煮にしたものに食パンデザートにすぐりのパイといった献立でその中で、です。 
 ボームさんはジャガイモを食べて言いました。
「ジャガイモの上にバターを乗せてね」
「そうして食べるとだね」
「美味しいね」
「わしも思うよ、ただね」
 キャプテンはボームさんに笑顔でお話しました。
「最近は烏賊の塩辛を乗せて食べてもだよ」
「美味しいね」
「日本風にね」
「そうだね、外の世界にいた時の僕から見たら」 
 その時はというのです。
「日本はお伽の国だよ」
「そこまで不思議な国だね」
「中国もね、アメリカとは全く違う国だから」
「そう、本当にね」
「まさにね」
 実際にというのです。
「別の世界だよ、けれどね」
「けれど?」
「その全く違う国のことを知ってね」 
 そうしてというのです。
「その中に入って経験してみると」
「楽しいね」
「そう思うよ、あと肌や髪の毛、目の色が違っても」
 こうも言うボームさんでした。
「同じ人間だよ」
「もっと言えば身体が違ってもね」
「自分達と同じね」
「心が人間なら人間と言うね」
 ムシノスケ教授は大好物のサラダを食べながら言いました。
「そうだね」
「うん、どんな身体でもね」
「だから私もだよ」
「バッタであってね」
「そして人間なのだよ」 
 こう言うのでした。
「紛れもなく」
「その通りだね」
「そして貴方の言う通り日本や中国の様な」
「自分達とは全く違う国を知ってだね」
「学んで」
 そうしてというのです。
「その中に入る」
「そして楽しむことだね」
「そのことの何と素敵なことか」
「全く以てそう思うよ」
「そう、だからだよ」
 教授はにこにことして言いました。
「ジャガイモをそうして食べることも」
「いいことだね」
「私もそう思うよ」
「日本と言えばお寿司だけれど」
 モジャボロが笑って言いました。
「お寿司のネタに海胆があるね」
「あれは美味しいよね」 
 弟さんが応えます。
「海胆は」
「そうだね、けれど海胆の外見を見たら」
「トゲトゲでね」
「食べられるなんてね」
 それこそというのです。
「全くだよ」
「思えないね」
「機雷みたいでね」
 モジャボロはこうも言いました。
「とてもだよ」
「食べられるなんてね」
「思えないよ」
「本当にそうだよね」
「けれど美味しんだよね」
「ええ、海胆もね」
 ドロシーの足下で食べているトトとエリカが応えます。
「お寿司の他のネタと同じで」
「海胆も美味しいよ」
「その海胆もだよ」
 ボームさんは二匹にも暖かい声でお話します。
「茹でたホカホカのジャガイモの上に乗せたら」
「そうそう、塩辛と一緒にね」
「そうして食べるとね」
「物凄く美味しいよね」
「頬っぺたがとろけそうになる位にね」
「バターを乗せても美味しいけれど」 
 それと共にというのです。
「そうして食べても美味しいよ」
「昔はアジアはとても遠かったのよ」
 ドロシーはしみじみとした口調で言いました、スープを飲みながら。
「オズの国と同じ位の感覚だったかしら」
「そうだね」
 ボームさんはドロシーの言葉に頷きました。
「僕達からしてみるとね」
「そうだったわね」
「もうね」
 あまりにも遠くて、です。
「存在していることすらね」
「果たして本当なのか」
「そんな風だったよ」
「私はカンサスの周りは畑ばかりの大平原にいたから」
 ドロシーは自分のことをお話しました。
「尚更よ」
「そうだったね」
「アジアの国々はね」
「とても遠い国々でね」
「オズの国に行ったけれどアジアに行ったことはなかったから」
「お伽の国の様だったね」
「お話を聞いても」
 それでもというのです。
「本当にね」
「そんな国々だったね」
「それが今ではよ」
「オズの国にもアジア系の人が増えて」
「日本の街や中華街も出来てね」
「そうした国々のお料理も食べられるね」
「そうなっているわ、孫悟空さんや関羽さんみたいな素敵な人達もいて」
 そしてというのです。
「真田幸村さんや十勇士もおられて」
「お話が出来てね」
「アジアの国々や人達もオズの国の中にあって」
 それでというのです。
「楽しめるからね」
「素晴らしいことだね」
「本当にね」
「中国がお伽の国だったんですね」
 神宝は自分の国はそう思われていることに驚きを隠せませんでした、それでテリーヌを食べながらこう言うのでした。
「そこまで不思議な国だったんですね」
「当時のアメリカから見るとね」
「そうなんですね」
「もうね」
 それこそというのです。
「オズの国と同じ位だよ」
「遠くてですか」
「よく知られていないね」
「そうだったんですね」
「昔はアメリカと他の国々は今よりずっと遠くて来た人も少なくてね」
「そうした感覚だったんですね」
「大都市に中華街はあって中国系の人達がいても」
 それでもというのです。
「今のアメリカよりずっと少なくてね」
「それで、ですか」
「聞くことは全部不思議でね」
「お伽の国だったんですね」
「そうした感覚だったんだ」
「そうですか」
「勿論今は違うよ」 
 ボームさんはにこりと笑って答えました。
「オズの国の中にもあるからね」
「不思議の国じゃなくて」
「楽しい国だよ、日本もね」
 この国もというのです。
「君達の国は全てだよ」
「ロシアもブラジルも」
「そして今のアメリカもね」
 この国もというのです。
「全てだよ」
「楽しい国ですか」
「そうだよ、近くてね」
「そうなったんですね」
「今ではね、では今はね」
「はい、晩ご飯をですね」
「食べようね」
 こうも言うのでした。
「そうしようね」
「わかりました」
「それとだけれど」
 ボームさんはここで、でした。
 白ワインを飲みました、そしてジャムを手に取ってです。
 苺のジャム、エメラルドの都産なので緑のそれを食パンにたっぷりと塗ってそうしてから言うのでした。
「パンにこうしてね」
「ジャムを塗ってですね」
「それもたっぷりとね」
 量のお話もします。
「そうして食べるのが大好きなんだ、僕は」
「美味しいですよね」
「凄くね、バターやマーガリンもいいし」
 それにというのです。
「他のジャムやマーマレードの場合もあるけれど」
「一番はですか」
「やっぱりね」
 何といってもというのです。
「苺かな」
「そのジャムですね」
「この甘さがいいから」
 だからだというのです。
「こうしてだよ」
「たっぷりと塗ってですね」
「食べるんだ」
「そうなんですね」
「そしてね」
 さらに言うのでした。
「チーズもだよ」
「そちらもありますね」
「これも食べるんだ」
「チーズも美味しいですね、中国でもです」
「最近は食べているね」
「ハンバーガーもそうで」
 そうしてというのです。
「コーラも飲みます」
「そうなっているね」
「それどころか昔は生ものは食べなかったのに」 
 中国ではです。
「お寿司も食べますし」
「中国も他の国と近くなっているね」
「そうですね、そう考えますと」
「お互いがそうなっているね」
「そうですよね」
「それはいいことよ、近かったらお互い行き来しやすいからね」
 オズマがにこりとして応えました。
「そしてお互いのことを知ってね」
「楽しめるからね」
「いいことよ、そしてね」 
 オズマはボームさんに応えてこうも言いました。
「オズの国の中でもね」
「近くなっているね」
「ええ、この都からリンキティンク王の国に行くにしても」
 カドリングの端にあるこの国にです。
「もうね」
「すぐにだね」
「行ける様になったわ」
「行こうと思えばね」
「お空から飛行機や飛行船で行ったり」
「鉄道や車でね」
「すぐに行こうと思えば」
 それならというのです。
「本当にね」
「すぐにだね」
「行けるわ」
 そうだというのです。
「そう思えばね」
「そうなっているね」
「それも高速鉄道を使えば」 
「オズの国一周だってね」
「すぐよ、オズの国は大陸だけれど」
 まさにそうなっています、実はオズの国はオーストラリアの様に島そのものが大陸になっているのです。
「それでもね」
「その中がね」
「それぞれ近くなっているから」
 だからだというのです。
「オズの国の中でもよ」
「相互理解が進んでいるね」
「そうよ、いいことよ」
 オズマはにこりと笑ってこうも言いました。
「だからこれからも近くなる様にね」
「していくね」
「そうしていくわ、近くなれば」
「お互いをより理解出来る様になるね」
「そうなるからね」 
 だからだというのです。
「これからもね」
「政治としてだね」
「そうなる様にしていくわ」
 オズマは笑顔のままでした、そしてです。
 ボームさんにです、こう言いました。
「貴方が最初に紹介してくれたオズの国のお話の時よりもね」
「オズの国は素敵になっているね」
「そしてこれからもね」
「素敵になっていくね」
「そうなっていくわ」
「そうだね、どんどんね」
「素敵な国になっていくのよ」
 笑顔でこう言うのでした、そうして今は晩ご飯を食べてです。
 お風呂に入って休みました、皆の楽しい時間はさらに続くのでした。








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