『オズのラゲドー王』




               第十二幕  最後にお寿司を食べて

 トロット達は港町で海の幸をふんだんに使ったお料理を時間をかけて堪能しました、その中で今はうな丼やかば焼き、肝吸いを食べていますが。
 前ノーム王はうな丼を食べて笑顔で言いました。
「鰻はこれが一番だな」
「うむ、一番美味しいかも知れないね」
 キャプテンが応えました。
「鰻料理の中では」
「お陰で食べ過ぎているよ」 
 前ノーム王はその笑顔でこうも言いました。
「三杯目だからね」
「わしもだよ、あまりにも美味しくて」
「ついつい食べ過ぎてしまうね」
「困ったことだ」
「しかもだよ」
 今度はお吸いものを飲んで言います。
「こうして内臓まで食べる」
「お吸いものにしてね」
「こちらも美味しいね」
「かば焼きだけでもね」
「日本の魔法の様なお料理の一つですよね」 
 ナターシャもうな丼を食べながら言います。
「うな丼とかば焼きは」
「他の国にも鰻料理はあるよ」
 カエルマンが応えます。
「けれどね」
「ここまで美味しいものはですね」
「ちょっとないね」
 こう言うのでした。
「私もそう思うよ」
「そうですよね」
「本当にこれはね」
 うな丼はというのです。
「魔法の様にね」
「美味しいですね」
「全くだよ」
「私もそう思うわ。鰻を食べるなら」 
 トロットも言います。
「これが一番ね」
「うな丼ですね」
「そう確信するわ」
「しかしね」
 ビリーナはうな丼のタレをかけたご飯を食べています、そうしながら言いました。
「本当に皆シーフードを満喫しているわね」
「そうね」 
 ポリクロームはお茶を飲みつつビリーナに応えました。
「この町に来てから」
「そうしているわね」
「貝や烏賊を入れたパエリアもお刺身もカルパッチョも食べてね」
「ブイヤベースもね」
「鱈や鮭のムニエルに牡蠣や鰯のフライにね」
「海老や烏賊や蛸の天麩羅もで」
「それとシーフードのバーベキューも食べて」
 そうしてというのです。
「海鮮麺に海老蒸し餃子、蟹焼売や海の幸を入れた八宝菜や炒飯もで」
「それに河豚や鮟鱇のお鍋」
「オコゼの唐揚げもあったわね」
「本当に色々食べてるわね」
「皆でね」
「ええ、そして今度はね」 
 トロットがビリーナ達に応えました。
「海胆やイクラ、ほたてや烏賊を食べるのよ」
「そうするのね」
「特に海胆やイクラやホタルイカの塩辛をたっぷり乗せた海鮮丼をね」
「食べるのね」
「そうしましょう」 
 うな丼の後はというのです。
「夜はね」
「何かと海の幸はあるわね」
「ええ、しかしね」
「しかし?」
「海の幸といっても多いのね」
 ビリーナはしみじみとして言いました。
「ここに来てそのことを実感してるわ」
「そうなのね」
「一口に言ってもね」
「そうね、それはね」
 トロットも言いました。
「実際にね」
「そうよね」
「もう何かとあって」
「次は何を食べようかって考えてもいるわね」
「そうよ、お昼はうな丼で」
「夜は海鮮丼とかで」
「そして明日のお昼はね」
 トロットはさらにお話しました、
「パスタやピザだけれど」
「どういったパスタでしょうか」 
 クッキーが聞いてきました。
「それで」
「イカ墨とか蟹のクリーム、ペスカトーレとかね」
「そうしたものをですね」
「皆で食べましょう、ピザも海老や蟹を使ったものよ」
 そちらになるというのです。
「明日のお昼は。あと朝はね」
「朝はですか」
「若芽のサラダとね」
 それと、というのです。
「鱒のムニエルよ」
「そちらも美味しそうですね」
「そうよね」
 こうしたお話をしながらです、皆でうな丼を食べてです。 
 夜は海鮮丼やほたて貝を楽しんで若芽のサラダもパスタも楽しんでその後で皆で船に乗って海に出ましたが。
 そこで釣りをしつつです、前ノーム王は言いました。
「こうして釣りをすることもね」
「なかったんですね」
 カルロスが応えました、皆釣ったお魚はキャッチアンドリリースをしています。
「地下では」
「やっぱり海がないですからね」
 ジョージも言います、皆釣ったお魚はすぐに魚拓を取っています。
「釣りもしないですね」
「やっぱり海か川や湖でないと」
 神宝は自分が釣った大きなクロダイを見つつ言います。
「出来ないですよね、釣りは」
「地下世界にも地底湖とか地下を流れる川があっても」 
 それでもとです、恵梨香も言います。
「されなかったですか」
「うん、そうしたものも見なかったよ」
 地底湖等もというのです。
「遊ぶ場所としてはね」
「それでもですね」
 ナターシャも釣りをしています、皆どんどんと色々なお魚を釣って魚拓を取ってそして海に返しています。
「今は」
「こうして楽しんでいるよ」
「そうなんですね」
「こうして釣りをしてもね」
 しみじみとして言うノーム王でした。
「楽しいね」
「そうなんですよね」
「こうして釣りをしていても」
「楽しめますよね」
「釣ってそして魚拓を取る」
「そうしても」
「楽しいよ、一度カジキを釣りたいよ」 
 前ノーム王はこうも言いました。
「大きなカジキをね」
「オズの国には釣りが大好きなお年寄りがいてね」
 キャプテンも釣っています、見ればこの人が一番沢山のお魚を釣っています。しかも大きなお魚ばかりです。
「その人がカジキをね」
「釣るんだね」
「一度わし等よりも大きなカジキを釣ったよ」
「それは凄いね」
「うん、そうした人もいるんだ」
「成程ね」
「わしも釣りには自信があるが」
 それでもというのです。
「その人にはね」
「負けるんだね」
「そう思うよ」
 こう言うのでした。
「上には上がいるよ」
「釣りもそうだね」
「本当にね、ただね」
「ただ?」
「別にいいよ」 
 自分より釣りが上手な人がいてもというのです。
「わしは釣りが好きでいつも楽しんでいるからね
「楽しんでいるからだね」
「そう、わしが楽しんでいたら」
 それならというのです。
「わしより上手な人がいても」
「いいんだね」
「楽しむ為に釣りをしているからね」
「競う為ではないね」
「だからね」 
 それでというのです。
「別にね」
「いいんだね」
「そうした人がいてもね」
「成程ね、ではね」
「うん、こうしてだよ」
 見事なタチウオを釣って言いました。
「釣りを楽しむよ」
「それではね」
「さて、今日の晩ご飯だけれど」
 トロットも釣りをしつつ言います。
「ハモと蛸よ」
「その二つだね」
「ハモのあらいとお吸いもので」 
 そしてというのです。
「酢だことたこ焼きよ」
「おお、たこ焼きもなんだ」
「そして明日の朝は鰹のたたきで」
 こちらでというのです。
「お昼は鯨料理よ」
「ううむ、鯨も食べるんだね」
「そうよ」
「わし等の頃は鯨を食べるなんてね」
「知らなかったわね」
「考えもしなかったよ」
 こうトロットに言いました。
「全くね」
「そうだったわね」
「それが日本では食べていてね」
「オズの国でもね」
「食べる様になったよ」
「日系人の人達が入って来て」
 そうしてというのです。
「そうなったわね」
「そうだね」
「鯨料理も色々あるのよね」
 トロットは海を見ながらお話をしました。
「ベーコンにさらしくじらにお刺身にステーキにね」
「あとお鍋もあるね」
「ハリハリ鍋もね」
「本当に色々あるから」
「全部楽しめるね」
「そうなのよね」
「鯨というと」
 前ノーム王はここで、でした。
 海の遠くの方を見ました、するとです。
 そこから鯨の潮が見えました、それで皆に言いました。
「あそこでだよ」
「大きな潮を吹いているわね」
 トロットもその潮を見て言いました。
「あれはかなり大きな鯨ね」
「その鯨を食べているんだね」
「そうよ」
「今のオズの国では」
「そうなの」
 実際にというのです。
「それも美味しくね」
「全く、色々なものが食べられるものだ」
 前ノーム王は感心した様にです、トロットに応えました。
「オズの国は」
「地底でもそうでしょ」
「そうだが地表も入れると」 
 さらにというのです。
「多いよ」
「そうなのね」
「ここまで多いとはね」
 実にというのです。
「わしは知らなかった、そして海の幸の多さも」
「知らなかったのね」
「この町に来て何日も経つがね」
「もう次から次とでしょ」
「あらゆる料理を食べているよ」
 海の幸を使ったそれをというのです。
「そしてその食材も」
「多いでしょ」
「驚く位にね、あの秋刀魚の塩焼きも」
 これもというのです。
「とんでもなく美味いよ」
「あれも確かに美味しいわね」
「全くだよ」
 こう言うのでした。
「本当にね」
「そうよね」
「何かずっと」
「ずっと?」
「この町にいたくなったよ」
「そうして海の幸を楽しんでいくのね」
「そうも考えているよ」
 トロットに真剣な顔で言いました。
「しかしそう言っても」
「それでもなのね」
「うむ、川や山のものも食べたい」
 そちらのものもというのです。
「わしは」
「そちらもよね」
「川魚も美味いし」
 それにというのです。
「お肉もだよ」
「貴方は好きね」
「海の幸のパエリアもいいが山の幸のそれもいい」
 こちらもというのです。
「お肉のものもね」
「それでなのね」
「この港町にも住みたいが」
「他の町にもなのね」
「思う、何処でもだ」
 まさにというのです。
「思う様になった」
「それじゃあね」
 トロットは真剣に語る前ノーム王にお話しました。
「旅をすればいいのよ」
「そしてその都度か」
「そこで食べればいいのよ」
 こう言うのでした。
「そうすればね」
「いいのか」
「ええ、行きたい場所に行ってね」
「そこで食えばいいか」
「美味しいものをね」
「今の様にか」
「そうすればいいのよ」 
 これがトロットのアドバイスでした。
「貴方もね」
「そうか、ではそうしよう」
 前ノーム王はトロットのその言葉に頷きました。
「わしは元々旅が好きになっているしな」
「それじゃあね」
「そうしていこう」
「お家の生活を楽しんで」
 そうしてというのです。
「それで食べたくなったらね」
「旅に出る」
「そうしたらいいわ」
「途中の旅路も楽しんで」
「そのうえでね」
 さらにというのです。
「目的地に着いたら」
「こうして」
「食べることを満喫すればいいのよ」
「そういうことだね」
「そして満足したら」
 その時はというのです。
「帰ればいいのよ」
「家まで」
「そうして暮らせばいいのよ」
「確かに」 
 そう聞いてです、前ノーム王は頷きました。そうしてそのう絵で今は釣りを楽しんでそうしてなのでした。
 釣りから帰るとまた海の幸を楽しみました、食べる間は釣りにお散歩等を楽しみますがポリクロームはお散歩の時に言いました。
「皆泳がないのね」
「こちらの海はね」
 トロットはポリクロームに答えました。
「あまりね」
「泳ぐ場所じゃないの」
「ビーチもあるわ」
 トロットはすぐに答えました。
「水着はそこで借りられて」
「泳ぐことは出来るのね」
「皆が行きたいって言えば案内するけれど」
「皆今は食べたりお散歩の方がいいみたいね」
「だからね」
 そう見てというのです。
「ビーチにはね」
「行かないのね」
「それで泳がないの」
「海でもそうなのね」
「ええ、けれど若し行きたい人がいたら」
 それならというのです。
「案内するわ」
「そうしてくれるのね」
「どうかしら。水族館にも案内するけれど」
 そちらにもというのです。
「よかったらね」
「私は水族館がいいね」
「私もです」
 カエルマンとクッキーが答えました。
「ビーチもいいですが」
「水族館に行ってみたいよ」
 二人が言って他の皆もです。
 水族館と言いました、これで決まりました。
 皆水族館にも行きました、するとそこには多くの海の生きもの達がいました。その中の白いイルカを見てでした。
 前ノーム王は目を丸くさせてこう言いました。
「これはまた奇麗なイルカだね」
「スナメリっていうんですよ」
 ナターシャが答えました。
「このイルカは」
「スナメリっていうんだ」
「外の世界では凄く珍しい生きものなんです」
 前ノーム王にこのこともお話しました。
「オズの国にもいるんですね」
「そうなんだね、何か好きになったよ」
 スナメリがというのです。
「とてもね」
「じゃあこちらの生きものはどうですか?」
 ナターシャは今度はジュゴンを紹介しました、それぞれ大きなプールの様な水槽の中で泳いでいます。
「ジュゴンっていうんですが」
「この生きものもいいね」
「好きになったんですね」
「そうなったよ」
 実際にというのです。
「わしはね」
「そうなんですね」
「うん、しかしね」
「しかし?」
「海には魚介類や鯨だけじゃないんだね」
 そこにいる生きものはとです、前ノーム王は考えるお顔になって言いました。
「そうなんだね」
「そうだよ、色々な生きものがいるんだよ」
 キャプテンもお話しました。
「海にはね」
「そうなんだね」
「外の世界の海もそうでね」
「オズの国の海もだね」
「そうなんだ」
 色々な生きものがいるというのです。
「これがね」
「成程ね」
「それでこの水族館にはその生きもの達の一部がいるんだ」
「随分多くても一部だね」
「オズの国には数えきれないだけの種類の生きものがいるね」
「そうだね」94
 前ノーム王もその通りだと頷きます。 
「それも次から次に見付かっているね」
「だからね」
「この水族館でもだね」
「全ての生きものはね」
 オズの国の海のです。
「流石に無理なんだ」
「そうなんだね」
「ここにもかなりの種類の生きものがいても」
「それでもだよ」
「全部ではないんだね」
「物凄い種類だから」
 オズの国にいる生きもの達の種類はです。
「無理なんだ」
「一体どれだけいるか」
「図鑑を見ても凄いよ、しかもね」
「さらに増えているんだね」
「本当に次から次に見付かっているから」
 だからだというのです。
「本当にね」
「一つの水族館だけだと」
「とてもね」
「収まらないんだね」
「そうだよ、ここにいる生きもの達は」
 彼等はといいますと。
「この辺りの海にいる」
「そうした生きもの達なんだね」
「そうなんだ」
「そういうことだね」
「うん、ただね」
 ここでキャプテンは笑ってこう言いました、見ればです。
 生きもの達のところにどうしたお料理だと美味しいという様なことも書かれています、キャプテンは苦笑いで言うのでした。
「どうしたら美味しいかはね」
「ああ、マダコはね」
 前ノーム王は水槽の中にいるマダコの説明を見て言いました。
「たこ焼きにするとね」
「あと酢だことかお刺身にもね」
「美味しいって書いてあるね」
「そうだね」
「蛸を食べるだけでなく」
「こうしてね」
「どうして食べたら美味しいか」
 それをというのです。
「書いているのがね」
「面白いね」
「海の幸で有名な町だからかしらね」
 トロットはくすりと笑って言いました。
「だからね」
「こうしたことまで書いているのかな」
「そうじゃないかしら」
「ミズダコについても書いているわね」
 ビリーナはその蛸のそれを見て言いました。
「どうしたら美味しいとか」
「蛸は完全に食べものなのね」 
 ポリクロームも言いました。
「そうなのね」
「何か日本みたいですね」
 ナターシャはここでこう言いました。
「日本のお魚とかの図鑑ってこうなんですよ」
「どうしたお料理にしたら美味しいとだね」
「お魚とか蛸に書いてます」
 ナターシャはカエルマンに答えました。
「これが」
「そうなのね」
「はい、ですから」 
 それでというのです。
「この水族館で」
「日本の図鑑を思い出したんだね」
「そうです」
「そういえば日系人の人蛸好きな人が多いですね」
 クッキーはオズの国のこの人達のことを思い出しました。
「完全に美味しい食べものと認識していますね」
「だからお寿司なんてものもあるのね」 
 トロットはクッキーに笑顔で応えました。
「そうなのね、じゃあね」
「はい、最後はですね」
「お寿司を食べましょう」
 こう言ってでした。
 一行は水族館も楽しみました、それからも海の幸を楽しみますがその中で前ノーム王はビリーナに尋ねました。
「あんた海は好きかい?」
「嫌いじゃないわよ」
 ビリーナは前ノーム王にはっきりと答えました。
「だから旅行に行くとね」
「こうしてだね」
「楽しんでいるわ」
「そうなんだね」
「私は鶏だから海の幸はあまり食べないけれどね」
「それでもだね」
「海はね」
 これはというのです。
「嫌いじゃないわ、この雰囲気がね」
「いいんだ」
「そうなの、だからね」 
 それでというのです。
「今も楽しんでいるわ」
「そうなんだね」
「そうよ、それであんたは随分と」
「海が好きになったよ」
「そうよね」
「こうしてね」 
 まさにというのです。
「海を見て海の幸を食べていると」
「最高の気分ね」
「そうなっているよ、またこうしてね」
「海に来たいのね」
「今回は港町だけれど」
 それでもというのです。
「南国の方のね」
「南国の海ね」
「トロピカルな感じも」 
 それもというのです。
「いいと思うからね」
「確かにね」 
 ポリクロームが言ってきました、皆今はホテルの中にいます。今のお部屋は和風で皆浴衣姿で畳のお部屋にいます。
「そちらもいいわね」
「そうだね」
「フルーツを食べて暑い日差しの中で泳いでね」
「日光浴を楽しむ」
「それもいいと思うわ」
「そうだね」
「港町には港町の楽しみ方があって」
 そしてというのです。
「南国の海は南国の海でね」
「楽しみ方があるね」
「そう思うわ」
「バナナやココナッツジュースを楽しんで」 
 前ノーム王はさらに言いました。
「サングラスにアロハ姿はどうかな」
「結構似合いそうね」
 トロットは前ノーム王のそうした姿を連想してついつい笑顔になりました。
「そちらもね」
「そうだね」
「ええ、じゃあリンキティンク王の国とかね」
「南国だね」
「そちらに行ったら」
 そうした時はというのです。
「是非ね」
「そうしたところをだね」
「楽しんだらいいわ」
「そうだね、海といっても色々な楽しみ方があるね」
「そうね」
「じゃあオズの国のあちこちを旅するよ」
 こう言ってでした。
 前ノーム王は皆とさらにお話をしました、そして。  
 次の日のお昼遂にお寿司屋さんに行きました、和風のお店でカウンターには威勢のいい感じの初老の角刈りのおじさんがいます。
 そのおじさんを見てです、前ノーム王は言いました。
「職人って感じの人だね」
「寿司職人さんよ」
 トロットが答えました。
「実際にね」
「シェフじゃないんだね」
「シェフというよりかね」
 むしろというのです。
「お寿司を作る人はね」
「職人さんなんだね」
「そうなのよ」
「成程、そうした人達なんだね」
「お寿司を作る人達はね」
「そうなんだね、ではね」
 それならと言うトロットでした。
「これからね」
「お寿司をだね」
「皆で食べましょう」
「それじゃあね」
 前ノーム王も頷いてでした。
 皆カウンターの席に座りました、そのうえでそれぞれお寿司を注文しますが職人さんは物凄い速さでお寿司を握ってくれます。
 最初は卵を食べてです、前ノーム王は言いました。
「これは」
「美味しいですね」
「凄くね」
 自分と同じ卵を食べているナターシャに応えました。
「美味いよ」
「そうですよね」
「いや、いいですね」
 ジョージはハマチを食べて言いました。
「この美味しさは」
「幾らでも食べられますね」
 神宝は鮪を食べつつ言います。
「このお寿司は」
「実際どんどん進みます」
 カルロスは鮭を食べながら言っています。
「お寿司を持つ手が」
「もう止まらないですね」
 恵梨香は赤貝を食べながら言うのでした。
「これは」
「全くだよ、遂に食べたけれど」
 前ノーム王は五人の子供達に笑顔で言いました。
「最高だよ」
「そうですよね」
「これまでこの町で食べたものも美味しかったですが」
「それも凄く」
「ですがこのお寿司は」
「また別格です」
「うん、どのネタも食べたいね」
 前ノーム王は今度は鰯を食べて言います。
「こうしてね」
「遠慮はしないで下さいね」
 寿司職人のおじさんも言ってきました、アジア系のお顔に寿司職人の服がとてもよく似合っています。
「もうどんどんです」
「お寿司をだね」
「注文して下さい」
「そう言ってくれるなら」
 前ノーム王は笑顔で応えました。
「是非ね」
「そうしてですね」
「ご馳走になるよ」
「それでは」
「さて、次はね」 
 トロットも食べつつ言います。
「コハダにしようかしら」
「そのお魚にするんだね」
「ええ、そちらもね」
 コハダもというのです。
「私好きだから」
「それでだね」
「注文するわ」
「わしはトロにするよ」
 キャプテンはそちらでした。
「大トロにね」
「あら、そちらなの」
「うん、お寿司というとね」
「トロなのね」
「そう思うからね」
 だからだというのです。
「今度はだよ」
「大トロね」
「中トロはもう食べたから」
 だからだというのです。
「今度はだよ」
「大トロね」
「それにするよ」
 こう言ってでした。
 キャプテンは実際に大トロを注文して食べました、そしてその味に思わず舌鼓を打ちました、その横では。
 カエルマンが海老を食べています、そのうえでこう言うのでした。
「お寿司は困った食べものだよ」
「それはどうしてですか?」
 クッキーはイクラを食べつつ尋ねました。
「一体」
「何を食べていいか迷うからね」
「だからですか」
「困った食べものだよ」
「そういうことですね」
「うん、次は何を食べようか」
 海老の後はというのです。
「実際に今困ってるよ」
「そうなんですね」
「本当に何を食べようかな」
「えっ、こんなものもあるんだ」
 前ノーム王はお品書きを見て驚きました。
「納豆もお寿司に使うんだ」
「そうだ、納豆にしよう」
 カエルマンは前ノーム王の言葉を聞いて言いました、ビリーナはしらすをそしてポリクロームはお寿司屋さんのお茶を飲んでいます。
「そちらにね」
「納豆のお寿司は美味しいんだ」
「そうだよ」
「ううむ、そうなのか」
 前ノーム王はカエルマンの言葉に複雑なお顔になって言いました。
「納豆は」
「納豆は食べたことがないんだね、貴方は」
「お寿司としてはね」
「他ではあるんだね」
「ご飯にかけたことはあるよ」
 こちらではというのです。
「それで嫌いじゃないんだけれど」
「お寿司に使うとはだね」
「思わなかったよ」
「では一度食べてみるといいよ」
 その納豆をというのです。
「今ね」
「それじゃあね」
 前ノーム王も頷いてでした。
 納豆、軍艦巻きのそれを注文しました。そうしてです。
 それを食べて見て目を輝かせて言いました。
「これはまた」
「美味しいね」
「うん、魚介類や卵も美味しいけれど」
「納豆もだね」
「いいね、これは意外だよ」
「納豆は結構何でも使えるのよね」 
 トロットも言います。
「和食には」
「そうだね」
「最初見た時は驚きました」
 ナターシャは今は烏賊を食べながら言ってきました。
「噂に聞いていましたが」
「ロシアにいた時は」
「日本に物凄い食べものがあるって」
「聞いていたのね」
「そして実際に食べてみまして」
 そうしてというのです。
「匂いは凄くて糸を引いていましたけれど」
「これが食べてみると」
「またです」
 それこそというのです。
「美味しいですね」
「そうなのよね」
「納豆にしましても」
「本当にね」
「海の幸も楽しんだが」
 前ノーム王は納豆を食べた後で笑顔で言いました。
「納豆もよかったよ」
「そちらも好きになったのね」
「うむ、またお寿司を食べる時も」
「注文するのね」
「そうしよう」
 トロットに笑顔で答えました。
「是非共」
「それじゃあそうしてね、それじゃあ私も」
「納豆を食べるんだね」
「そうするわ」
「そうだね、美味しいならね」
「食べないとね」
「よくないね、しかし納豆というものは」
 前ノーム王はこうも言いました。
「大豆だよね」
「そうよ」
 トロットはその通りと答えました。
「あのお豆から作るのよ」
「そうだね」
「だから枝豆とも同じで」
「お豆腐ともだね」
「同じよ」
 こちらのお料理ともというのです。
「だから身体にもいいのよ」
「だから食べていいね」
「そうよ、ただね」
「ただ?」
「納豆は確かに見た目が凄くて」
「匂いもね」
「食べるには勇気がいるわ」
 このことはどうしてもというのです。
「そして食べると」
「これがいいね、じゃあわしは今度はね」
「何を食べるの?」
「鮑にしようかな」
 このネタにというのです。
「そうしようかな」
「鮑も美味しいわね」
「そしてその次はシャコにするよ」
「シャコもいいわね」
「こちらも美味いね」
「かなりね、じゃあね」
「どんどん食べていこう」
 こう言ってでした。
 前ノーム王はお寿司を堪能しました、そうしつつです。
 日本酒も飲みました、それで食べ終わる頃にはすっかりご満悦といった感じでした。ですがまだなのでした。
 茶碗蒸しも食べてです、前ノーム王は言いました。
「お寿司屋さんはね」
「そう、茶わん蒸しもね」
「欠かせないね」
「お寿司を食べてね」
「お酒も飲んで」
「茶碗蒸しもよ」
 トロットはここでも笑顔で応えました。
「欠かせないわ」
「そうだね」
「だからね」
「こちらも食べて」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「最後の最後はね」
「まだあるんだね」
「お茶を」
 こちらをというのです。
「飲みましょう」
「お茶も飲むものだね」
「そう、最後の最後にね」
「お茶を飲むことだね」
「お寿司屋さんではお酒も飲むけれど」
 前ノーム王の様にです、キャプテンとカエルマンそれにクッキーも飲んでいます。四人共飲むのは日本酒でした。
「それでもね」
「最後の最後はなんだ」
「お寿司屋さんではお茶なのよ」
「それを飲むものだね」
「だからね」
「茶碗蒸しを食べたら」
「お茶を飲みましょう」
「わかったよ」
 前ノーム王も頷いてでした。
 皆最後はお茶を飲みました、そうしてお寿司屋さんを後にしました。
 ここでトロットは皆に言いました。
「では今からね」
「都に帰るんだね」
「そうしましょう」
 キャプテンにも答えました。
「そうしましょう」
「そうだね、お寿司屋さんにも行ったし」
「それではね」
「後はだね」
「都までよ」
「来た道を帰るんだね」
「そうしましょう、帰り道もね」
 こちらもというのです。
「きっと楽しいものになるわ」
「そうだね、それじゃあね」
「今からね」
「帰り道につこうね」
 キャプテンが笑顔で応えました、こうしてです。
 皆帰ろうとしました、ですが。
 前ノーム王は皆にこう言いました。
「わしはもう少しここに残るよ」
「どうしてなの?」
「いや、ここの食べものがあまりにも美味しいからね」
 ビリーナに笑顔で答えました。
「だからだよ」
「ここに残ってなの」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「もっとここの食べものを満喫したいんだよ」
「海の幸をそうしたいのね」
「勿論お寿司もね」 
 こちらもというのです。
「そうしたいんだ」
「そういうことね」
「だからね」
「あんたはここに残るのね」
「そうしたいんだ」
「だったらね」
 カエルマンはビリーナのお話を聞いて言いました。
「私達ももう少しここにいようか」
「君達もなんだ」
「そう言われるともっと食べたくなったよ」
「この町の海の幸をだね」
「私もまた」
「私も。そう言われますと」
 クッキーも言ってきました。
「こちらのお料理はどれもあまりにも美味しいので」
「だからだね」
「はい、私も」
「ではわしも残ろうか」
 キャプテンも言いました。
「そうしようか」
「それなら私も」
 ポリクロームも言ってきました。
「ここのお茶が美味しいから」
「残るんだね」
「海も奇麗だから」
 前ノーム王にくるくると踊りながら答えます。
「そうしたいわ」
「それではね」
 トロットも笑顔で応えました。
「皆でもう暫くこの町にいましょう」
「そうされますか」
「言われてみるとね」
 前ノーム王にというのです、ナターシャにお話します。
「もう一巡はね」
「食べてみたいですか」
「そう、だからね」 
 それでというのです。
「ここは残りましょう」
「そうですね、それじゃあ」
「皆でね」
「この港町に残りましょう」
 こう言ってでした、トロットは前ノーム王の言葉を聞いてでした。
 皆で港町のお料理をさらに食べていきました、そうして心ゆくまで食べて満足してからなのでした。
 笑顔で港町を後にしたエメラルドの都に戻りました、そこで解散となりましたが前ノーム王は皆に満面の笑顔で言いました。
「ではまたね」
「ええ、また機会があったらね」
「一緒に旅をしよう」
「そうして楽しみましょう」
「そうするとしよう」
 トロットと笑顔で別れの挨拶を交えさせてでした。
 前ノーム王は自宅への帰路につきました、まるでスキップをする様な足取りにはかつての暗いものは何もありませんでした。


オズのラゲドー氏   完


            2021・7・11








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