『オズのラゲドー王』




                第九幕  空飛ぶヨットに乗って

 虹の橋が沢山ある川が多く流れている平原を越えるとです。
 皆は今度は物凄い峡谷の前に出ました、もうそこは普通に歩いてでは絶対に越えられない場所でした。
 ですがトロットは皆に落ち着いて言いました。
「まずは待ちましょう」
「あの、待つといっても」
 ナターシャがそのトロットに言います。
「これでは」
「ええ、この谷は越えられないわね」
「はい」
 とてもというのです。
「ここは」
「そうね、けれどね」
「それでもですか」
「ここにはヨットがあるのよ」
「ヨット?」
「そう、渡しのね」
 それがというのです。
「それがあるから」
「だからですか」
「越えられるのよ」
「そうなんですね」
「だからね」
「ここはですね」
「ヨットが来るのをね」
 このことをというのです。
「待ちましょう」
「そうしてですね」
「皆でヨットに乗って」
 そうしてというのです。
「先に進みましょう」
「わかりました、それじゃあ」
「それまではおやつを食べましょう」
 待つ間はというのです。
「そうしましょう」
「それじゃあ」
 二人でこうお話してでした。
 皆で、その場でくつろいでなのでした。ティータイムに入りました。レモンティーやコーヒーも出して。
 ドーナツやケーキも出します、前ノーム王はそうしたセットを見て言いました。
「さて、何を食べようか」
「好きなのを食べていいわよ」
 トロットは前ノーム王に微笑んで答えました。
「貴方のね」
「いや、好きなものが多くて」
 そうしてというのです。
「どれを食べていいかね」
「困るのね」
「これがね」
 まさにというのです。
「ドーナツもケーキも好きだからね、わしは」
「しかもだね」
 カエルマンもドーナツやケーキを見て言います。
「どちらも色々揃ってるからね」
「そうだね」
「ドーナツだとショコラやフレンチがあって」
「チョコレートもね」
「ケーキもね」
 こちらもというのです。
「苺やチーズ、モンブランとね」
「色々あって」
「それでね」
「困るね」
「本当にね」
「迷って困りますね」
 唸ってです、クッキーは言いました。
「ここは」
「全くだよ」
「好きなものが多いなら多いで迷う」
 キャプテンも言いました。
「嬉しい悩みだけれど」
「困るね」
「本当にね」
「あれっ、迷うかしら」
「そうよね」
 ポリクロームとビリーナはこう言いました。
「別にね」
「迷わないわよね」
「もうこうした時はね」
「くじ引きかね」
「どれにしようかなでね」
「当たったものを食べればいいのよ」
「そうしたやり方もあるね」
 まさにとです、前ノーム王は頷きました。
「それじゃあ」
「くじ引きかどれにしようかなで」
「当たったものを食べればいいわ」
「名案だよ、ではね」
 こう言ってでした。
 前ノーム王はドーナツとケーキのそれぞれのどれにしようかなで選びました、そして当たったチーズケーキを食べました。
 するとです、食べた瞬間に笑顔になりました。
「これはね」
「美味しいでしょ」
「うん、こんな美味しいものを食べられて」
 笑顔で言ってきたトロットに自分も笑顔で応えました。
「幸せだよ」
「ここでも幸せを感じるのね」
「そうなっているよ」
「いいことね、ではね」
「では?」
「ヨットが来るから」
 だからだというのです。
「楽しみにしてね」
「そういえば」 
 ナターシャはフレンチショコラを食べつつ言いました。
「ヨットっていうけれど」
「どういったヨットかな」
 神宝はオールドファッションを食べつつ考えました。
「一体ね」
「谷の川を進んでいくのかな」
 ジョージはチョコレートファッションを食べつつ言います。
「そうするのかな」
「それじゃあ谷を降りるのかな」
 カルロスはエンゼルショコラを食べつつ思うのでした。
「これから」
「食べた後で?」
 恵梨香は抹茶ショコラを食べながらこう言いました。
「谷を降りるのかしら」
「それは後でわかるわ」
 笑顔で、です。トロットは五人に答えました。
「その時にね」
「そうですか」
「それならですね」
「その時まで、ですね」
「待っていればいいですね」
「ヨットが来るまで」
「ええ、谷の向こうには絶対に行けるから」
 だからというのです。
「安心してね」
「わかりました」
「それじゃあですね」
「今はこうしてですね」
「ティータイムを楽しめばいいですね」
「このまま」
「そうしていってね、絶対にね」
 まさにというのです。
「悪いことにはならないから」
「オズの国ですから」
「だからですね」
「そうした心配はないですね」
「安心してですね」
「待っていればいいですね」
「そうよ、というかね」
 トロットはにこりとして言いました。
「皆の予想だけれど」
「はい、ヨットについて」
「そのことについてですね」
「どうかですね」
「そう言われるんですね」
「私達の予想について」
「残念だけれど違うわ、ここはオズの国なのよ」 
 だからだというのです。
「普通のヨットじゃないわよ」
「といいますと」
「どんなヨットですか?」
「オズの国だからって」
「ううん、ここはお伽の国ですから」
「不思議なことで一杯の国ですから」
「そう、とても不思議なヨットだとね」
 こう言うのでした。
「言っておくわ」
「そうですか」
「それじゃあですね」
「僕達はその不思議なヨットに乗って」
「そうしてですね」
「谷を越えるんですね」
「そうなるわ」
 コーヒーを飲みながら言いました。
「そう言っておくわね」
「わかりました」
「じゃあどんなヨットか」
「楽しみに見させてもらいます」
「そして乗らせてもらいます」
「そうさせてもらいます」
「ちなみに私は知ってるけれど」
 ビリーナはコーンを食べつつ五人に言います。
「あえてね」
「ああ、内緒ね」
「今言ったら楽しみがなくなるから」
「だからだね」
「今は君も言わないんだね」
「そうするのね」
「そうよ」
 その通りだというのです。
「どのみちあと少しでわかるし」
「それじゃあね」
「今どんなヨットか言わないで」
「そうしてね」
「そのヨットが来た時にわかって」
「そこで楽しめばいいのね」
「そうよ、それまで期待して」 
 どんなヨットかというのです。
「そしてよ」
「期待通りに素敵なヨットだから」
「そのヨットを見て」
「そしてそのうえで」
「そのヨットに乗って」
「谷を越えるのね」
「そうよ、期待は裏切られないわよ」
 オズの国ではです、こう言ってでした。
 どんなヨットか知っている人達はあえて内緒にして知らない人達はどんなヨットなのか考えてそのヨットを見ることを楽しみにしてでした。
 ティータイムを楽しみました、そして。
 そのヨットが来ました、そのヨットは。
「お空を飛ぶの」
「そうしたヨットなんだ」
「どんなヨットかと思ったら」
「お空を飛ぶヨットなんだね」
「そうしたヨットなの」
「そうなの、ここのヨットはお空を飛んで進むの」 
 トロットはそのヨットを見て言うナターシャ達五人に答えました。
「そしてこの深くて高くて険しい峡谷をね」
「越えるんですね」
「お空を進んでいって」
「そうですか」
「こうしたヨットがあるのもオズの国ですね」
「流石はオズの国ですね」
「そうでしょ、じゃあ今から皆で乗りましょう」
 トロットは皆に言いました、そしてです。
 ヨットが来るとそこからでした、鷲の頭と翼を持つ男の人が出て来てそのうえでトロット達に声をかけてきました。着ている服はギリキンの服です。
「乗るかい?」
「ええ、お願い出来るかしら」
 トロットはその人に応えました。
「谷の向こうまでね」
「あっ、トロット王女じゃないか」
 鷲頭の人は自分に応える人がトロットとここでわかりました。
「また旅かい?」
「ええ、イッソスの国に行くけれど」
「その途中にだね」
「ここを通るから」
「それでここに来たんだね」
「そうなの、ではこれからね」
 鷲頭の人に言いました。
「お願いするわ」
「それじゃあね」
「では乗りましょう」
 トロットは他の人達にも声をかけました。
「そうしましょう」
「わかりました」
 ナターシャが応えました。
「今からヨットにですね」
「乗りましょう、そしてね」
「お空を進んで」
「向こう側に行きましょう」
「さあ、乗って乗って」
 鷲頭の人は皆に言いました。
「船旅を楽しんでくれ」
「是非そうさせてもらうよ」
 前ノーム王は鷲頭の人に笑顔で応えました。
「これからね」
「うん、それであんたは確か」
「前のノーム王だよ」
 自分から名乗ります。
「ラゲドー、昔の名前はロークワットといったよ」
「そうだったね、しかし」
「しかし?」
「あんた凄く晴れやかな顔をしているね」
 前ノーム王のその顔を見て言うのでした。
「今はね」
「そうかい?」
「にこにことして眼の光は穏やかで澄んでいて」
 そうしてというのです。
「お肌もツヤツヤで赤々としていて」
「それでなんだ」
「凄くね」
「いい顔なんだね」
「今のあんたはね」
「さっきまでドーナツやケーキを食べていたよ」
「楽しんでいたんだね」
「そしてもう百年は楽しく暮らしているよ」
「だからだね」
 それならとです、鷲頭の人も頷きました。
「今のあんたは」
「うん、幸せでね」
 それでというのです。
「不平不満もないから」
「そんな顔になっているんだね」
「そうだと思うよ」
「いいね、今のあんたとはね」
 鷲頭の人は笑って言いました。
「誰もが仲良く出来るよ」
「そうなんだね」
「そう思うよ、それじゃあね」
「それならだね」
「あんたも乗ってくれ」
 ヨットにとです、こうしてノーム王も他の人達もヨットに乗りました。皆が乗り終わるとヨットはすぐにでした。
 出発しました、すると風がないのにです。 
 ヨットは帆に凄い追い風を受けた様に進みはじめました、ナターシャはその速さに驚いて言いました。
「飛行機みたいに」
「速いね」
「はい」 
 キャプテンに答えました。
「これは」
「これがだよ」
「ここのヨットなんですね」
「そうなんだ」
 こうナターシャにお話します。
「風がなくてもね」
「風を受けて」
「そしてこんなに速く進むんだ」
「そうなんですね」
「だからもう谷の向こうに行くのも」
 このこともというのです。
「すぐだよ」
「そうなんですね」
「そしてわしはここの渡し守なんだ」
 鷲頭の人も言ってきました。
「人が来るとね」
「こうしてですか」
「ヨットで来て」
 そうしてというのです。
「谷の向こうまで送るんだ」
「それが貴方のお仕事ですか」
「人が来ればわかるんだ」
「どうしてわかるんですか?」
「わしの目は千里眼でね」
「だからですか」
「この谷のことなら」 
 それならというのです。
「隅から隅までだよ」
「見られるから」
「だからすぐにだよ」
「ここに人が来れば」
「それでだよ」 
 すぐにというのです。
「わかるからね」
「それでその人のところにですね」
「さっきの様にね」
 まさにというのです。
「このヨットに乗って」
「そうしてですね」
「渡し守をしているんだ」
「そうですか」
「だからだよ」
 さらに言うのでした。
「何の問題もないよ」
「そうなんですね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「それは朝からお昼、夕方までで」
「夜はですか」
「わしは梟やミミズクじゃないからね」
 夜の鳥ではないからというのです。
「それでだよ」
「ああ、それだと」
「鷲だからね」
 鳥としてはというのです。
「だからだよ」
「夜はですね」
「寝ているんだ」
「そうですか」
「だから朝から夕方まで働いて」
 そうしてというのです。
「夜はね」
「ぐっすりとですね」
「そうなんだ」
「そうですか」
「うん、そういうことでね」 
 ナターシャに笑顔でお話しました。
「またここに来たなら」
「夜はお休みということを」
「理解しておいてね」
「わかりました」
 ナターシャは鷲頭の人の言葉に頷いて答えました。
「そういうことで」
「それじゃあね、谷の向こう側まで行こう」
 鷲頭の人はこうも言いました、そしてです。
 皆は空飛ぶヨットで谷を渡りました、ヨットはとても速くて向こう側まですぐに着きました。そうしてです。
 谷の向こう側に着くと降りました、すると。
「ではまたね」
「ええ、またね」
 鷲頭の人とトロットが笑顔で言葉を交えさせました。
「ここに来たらね」
「わしが来るから」
「その時はお願いね」
「そうさせてもらうよ」
「有り難うございました」
 今度は皆でお礼を言います、ですが。
 鷲頭の人は皆にこう言いました。
「お礼はいいよ」
「どうしてですか?」
 ナターシャが尋ねました。
「助けてもらったのに」
「これが仕事だからだよ」
「貴方のですから」
「当然のことをしたまでだよ」
 お仕事をというのです。
「だからだよ」
「お礼はですか」
「いいよ」
 これはというのです。
「別にね」
「そうですか」
「嬉しいけれどね」
 お礼を言われてというのです。
「これはわしの仕事だよ」
「だから当然ですか」
「そう、だからお礼にはね」
「及ばないですか」
「そうだよ」
「そうお考えなんですね」
「わしはね。ではまた機会があったら会おう」
 最後にこう言ってでした。
 鷲頭の人は空飛ぶヨットと一緒に姿を消しました皆その後でまた旅を再開しますがもう峡谷は越えていて。
 今度は雪の森に入りました、その森に入ると前ノーム王は言いました。
「何かこの森はね」
「どうしたの?」
「いや、面白い森だね」
 こう言うのでした。
「色々な生きものがいて果物が実っていて」
「それでなのね」
「いい森だね」
「何か」
 ナターシャは森の生きもの達を見て言いました。
「ロシアの森みたいね」
「君のお国だね」
「クズリがいてグリズリーがいて狼がいて」
 そしてというのです。
「虎も鹿もいるから」
「だからだね」
「ロシアの森みたいよ、雪に覆われているしね」
「雪の森って」
 ここで言ったのはビリーナでした。
「独特の趣があるわね」
「ええ、真っ白でね」
 ポリクロームはその雪の上をくるくると踊りながら進んでいます、そのうえでビリーナに応えるのでした。黄色い煉瓦の道はありますがポリクロームはそこから外れてそこを歩いているのです。
「素敵な場所ね」
「そうよね」
「それでロシアの森は」
「こうした場所で」
「それでクズリやグリズリーがいる」
「そうなのね」
「ええ、カナダやアメリカの北部にも似てるけれど」
 ナターシャはビリーナとポリクロームにお話しました。
「ロシア、シベリアの森はね」
「こうなのね」
「雪とそうした生きものの世界なのね」
「ええ、とはいってもロシアはとても広くて」
 そうしたお国でというのです。
「私もシベリアにはね」
「行ったことがないの」
「そうなの」
「ええ、それで日本に来て」
 そうしてというのです。
「オズの国に来られる様になっているの」
「それじゃあ君のロシアの森の知識は図鑑でのことかな」
 カエルマンが尋ねました。
「そうなのかな」
「シベリアについてはそうです」
 ナターシャも答えました。
「ただ、欧州の方の森には」
「行ったことがあるんだ」
「それで知っています」
「そうなんだね」
「おおよそ同じですが」
 それでもというのです。
「やっぱり欧州の方とシベリアの方では」
「違うんだね」
「そうなんです」
「ロシアは広いんです」
 恵梨香が言ってきました。
「世界一広い国です」
「もう広さならロシアです」
 カルロスもこう言います。
「ブラジルよりずっと広いんですよ」
「流石に広さじゃロシアには勝てないんですね」
 神宝も言うのでした。
「どの国も」
「あの広さはないですね」
 ジョージも言いました。
「本当に」
「一体どれだけ広いのかしら」
 クッキーはナターシャの国について思いました。
「ロシアは」
「オズの国よりは小さいわよ」
 トロットが答えました。
「流石にね」
「そうですか」
「ソ連だった頃でもね」
「ソ連といいますと」
「ロシアの前の国よ、その時でもね」
「オズの国よりは小さいですか」
「ええ、けれどね」 
 それでもというのです。
「外の世界では一番広い国なの」
「そうですか」
「ただ。寒い場所が殆どだね」
 キャプテンはこのことを言いました。
「あの国は」
「ですから困ることが多いんです」
 ナターシャは少し苦笑いで応えました。
「その寒さに」
「そうだね」
「だから皆いつも厚着で」
 服はそうでというのです。
「お家の窓は三重で扉もです」
「そうなんだ」
「それでお家の壁も厚くて」 
 それでというのです。
「皆暖房が大好きでウォッカも」
「飲むね」
「はい」
 こうキャプテンにお話しました。
「食べものも温かいものです」
「ううん、寒いというのは」
 前ノーム王はそう聞いて実感が湧かない感じでした。
「どんなものかな」
「オズの国は何処も暖かいですからね」
「程よくね」
「強いて言うなら冷凍庫の中ですね」
「ああ、ああした感じだね」
「あれ位かもっと冷えた状況が」
 それがというのです。
「ロシアなんです」
「それは大変だね」
「はい、ですから」
 それでというのです。
「ロシアの寒さは」
「暮らすには辛いね」
「そうなんです」
「よくわかったよ」
 前ノーム王もでした。
「冷凍庫ならね」
「ですからもうお外は何もかもが凍ります」
「冷凍庫みたいにだね」
「そうです、この森とは違って」
 雪に覆われていますが決して寒くも冷えてもいません、快適に過ごせて動ける場所です。それで皆快適とも思っています。
「物凄く寒くて油断すると」
「大変なことになるね」
「そうなんです」
「そういうことだね」
「それがロシア、シベリアの森です」
 そうだというのです。
「本来の」
「冷凍庫の中みたいに冷えている」
「そうした場所ということで」
「わかったよ、では今は」
「はい、先にですね」
「進んでいこう」
 こう言ってでした。
 前ノーム王は一行の先頭に立って森の中を進んでいきました。
 そうしてこの日はロシアの森を進んでいき次の日もそうして結果として三日かけたうえでなのでした。
 森を出るとでした。
 今度は氷河の世界に出ました、前ノーム王は一面の銀世界に目を丸くしました。
「いや、これはまた」
「どうしたの?」
「凄い世界だね」
 トロットに言うのでした。
「こちらも」
「貴方は氷河は見たことがないの」
「見たことはあるけれど」
 それでもというのです。
「しかし久し振りに見たから」
「驚いているの」
「そうなんだ、じゃあ今度は」
「この氷河を」
「進んでいこう」
「そうね、ただね」
 ここでこうも言ったトロットでした。
「今日はここで休みましょう」
「ああ、もう夜だね」
「夕暮れも深くなっていて」
 そうしてというのです。
「あと少しで夜になるから」
「もうここでなんだ」
「休みましょう」
 こうしようというのです。
「晩ご飯を食べてね」
「わかったわ」
「それじゃあね」
 こうしてでした。
 一行は氷河に入ったところで休みました、そしてまた日の出と共に先に進んでいきますがここでなのでした。
 前ノーム王は目の前にレミングの大群を見て笑顔になりました。
「うん、こうした場所だとね」
「レミングがいるよ」
「そうだね」
「彼等は氷河に群れを成していて」
「暮らしているね」
「そうだよ」
「氷河には氷河の生きものがいる」 
 カエルマンに応えてこうも言いました。
「そしてね」
「他の生きもの達もいるよ」
「そうだね」
「あそこを見て」
 ビリーナは遠くを見て皆に言いました。
「白熊がいるわ」
「ホッキョクグマだね」
 前ノーム王はビリーナに応えました。
「あの熊は」
「そうよね」
「こうした場所だとね」
「熊も白くなるのね」
「もう一面白いからね」 
 だからだというのです。
「それで熊もだよ」
「毛が白くなるのね」
「うん、そしてね」 
 ビリーナにさらにお話します。
「他の生きもの達もだよ」
「白いのね」
「そうした生きものが多いよ」
「そうなのね、あんたもよく知ってるわね」
「知っているというか」 
 前ノーム王はすぐに答えました。
「旅をしていてね」
「見てきたからなのね」
「知ったんだ」
「そうなのね」
「よく知っているんじゃなくて」 
 こうビリーナにお話します。
「知ったんだよ」
「旅をしていって」
「そして本も読んで」
 そうもしてというのです。
「そちらでもだよ」
「知識を得たのね」
「そうなんだ」
「それだけなのね」
「それにわしよりも」
 さらに言う前ノーム王でした。
「オズの国では博識な人は多いよ」
「あら、謙虚ね」
「謙虚というか事実をね」
 それをというのです。
「言っているだけだよ」
「そうなの」
「ムシノスケ教授もそうでここにいるカエルマン氏も」
「ははは、私もだよ」
 カエルマンは前ノーム王の今の言葉に笑って応えました。
「まだまだ知らないよ」
「貴方もなんだね」
「そうだよ、この世界はとても広いし次々と色々なものが出て来るから」
 だからだというのです。
「本当にね」
「知っていることはなんだ」
「この世のほんの少しのことだよ」
「そうなんだね」
「この世の全てを知っているなんて」
 カエルマンはこうも言いました。
「神様位だよ」
「オズの国の神々だね」
「ここにおられるね」
「そうだね、わしにしても」
 レミング達が自分達の傍を群れで駆けているのを見つつ言います、その様子はまるで運動会で追いかけっこをしているみたいです。
「オズの国のことは」
「まだまだだね」
「知らないよ」
 そうだというのです。
「本当にね」
「そうなんだね」
「オズマ姫はどうかしら」
 ここでポリクロームが言ってきました。
「オズの国の全部を知っているかしら」
「いえ、オズマもよ」
 トロットが答えました。
「本当に何も知らないってね」
「言ってるの」
「オズマは正直だから」
 このこともオズマの美徳の一つです。
「だからね」
「正直に言ってるのね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「オズマもね」
「まだまだなのね」
「オズの国で知らないことは多いわ」
「そうなのね」
「オズマは妖精だけれど」
 このことはトロット達とは違います、実はオズマは人間ではなくオズの国の妖精の一人で光の妖精なのです。
「これも自分で言ってるけれど」
「どうなの?」
「神様じゃないの」
「オズの国の」
「そう、国家元首でね」
「妖精でも」
「神様じゃないの」 
 こう言っているというのです。
「あくまでね」
「そのことが大事なのね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「このことはね」
「覚えておくことね」
「神様は神様で」
「特別な存在ね」
「だからね」
 それでというのです。
「覚えておいてね」
「わかったわ」
「神様は何か」
 前ノーム王は腕を組み頷きました、皆氷河にある黄色い煉瓦の道を進んでいます。
「わし等全く及びもつかない」
「そうした存在ね」
「そうだね」
 トロットにも応えました。
「まさに」
「私達がどれだけのことをしても」
「神様には及ばないよ」
「全くね」
「そう考えたら」
 こうも言う前ノーム王でした。
「自分の小ささを実感して」
「慢心しないわね」
「自分の小ささを感じることも」
 このこともというのです。
「時として大事だね」
「神様を感じることも」
「本当にね」
 こうも言うのでした。
「つくづく思うよ」
「神様を感じると」
 ナターシャも言います。
「それだけで違いますね」
「そうだね」
「はい、謙虚にもなります」
「オズの国にも神様がいるんだ」
「それも色々な神様が、例えば」
 ここで、でした。ナターシャは。
 これまでの旅のことを思い出して言いました。
「エジプトの神様、関羽さんや四霊獣に斉天大聖こと孫悟空さん」
「そうした神々もいるね」
「他にも沢山の神様がいますね」
「そうだね、この前神社に行ったよ」 
 日本のとです、前ノーム王はお話しました。
「そしてそこでもだよ」
「神様にお会いしたんですね」
「日本のね」
「どんな神様ですか?」
「元は人間で豊臣秀吉さんといったよ」
 その人だというのです。
「何でも昔は普段は羽柴藤吉郎という名前だったそうだよ」
「ああ、お猿さんみたいなお顔の人ね」
 すぐにです、ビリーナが言ってきました。
「知ってるわよ」
「君もなんだ」
「ええ」
 こう前ノーム王に答えます。
「私もその神社行ったことあるし日本じゃ有名人だから」
「それでだね」
「陽気で気さくで愛嬌があってね」
「妙に好きになる人だね」
「あの人は人たらしよ」
 こうも言うビリーナでした。
「本当にね」
「天下無双のというね」
「流石にオズマやドロシーには負けるけれどね」
「モジャボロ氏位にはね」
「人に好かれるわね」
「そうした人だね」
「もう人に好かれることなら」
 それならとです、前ノーム王は言いました。
「あの人はね」
「かなりのものだね」
「それに頭の回転も早いのよね」
「凄くね」
「それであの人もね」
「神様だね」
「何か外の世界の日本で神社に祀られたから」
 それでというのです。
「神様になったから」
「だからだね」
「それでね」
 その為にというのです。
「オズの国では神様なのよ」
「そうだね」
「日本はそうした人が多いわ」
「神様になった人はだね」
「オズの国にいる人達でも」
「秀吉さんだけじゃないね」
「織田信長さんや徳川家康さんもそうで」
 この人達も神様だというのです。
「武田信玄さんや上杉謙信さんもよ」
「そうした人達もだね」
「兎に角神様になった人がね」
「多い国だね」
「それでオズの国にも来ているのよね」
「そうだね」
「ちなみに私秀吉さんと仲良しよ」
 ビリーナはこのこともお話しました。
「お会いしたらいつも一緒に遊んでいるの」
「へえ、そうなんだ」
「楽しくね。あんな面白い人もいるから」
 秀吉さんの様なというのです。
「オズの国はいいわね」
「全くだね」
「それじゃあね」
「うん、さらにね」
「先に進んでいきましょう」
「そうしていこう」
 こうお話してです。
 一行はさらに先に進むと今度はセイウチに出会いました、セイウチは黄色い煉瓦の道の上で寝ていましたが。
 一行が近付くと慌てて起きて言ってきました。
「御免御免通るね」
「ええ、ちょっとね」
「じゃあどくよ」
「そうしてくれるのね」
「だってここは道だよ」
 黄色い煉瓦の道だというのです、オズの国の公道です。
「その上で寝ている僕の方が問題だから」
「それでなの」
「誰かが通るなら」
 それならというのです。
「どくのがね」
「道理っていうのね」
「だからね」
 こうトロットに言うのでした。
「ここはだよ」
「貴方がどいて」
「別の場所で寝るよ」
「そうしてくれるの」
「何処でも寝られるしね」
 セイウチは笑って言いました。
「だからだよ」
「他の場所で寝るの」
「ここでね」 
 こう言ってでした。
 セイウチは道の横に出てでした。
 そこにまた寝転がりました、そうして一行に言いました。
「それじゃあね」
「これからはそこで寝るのね」
「そうするよ、じゃあね」
「道を通れば」
「そう、そうすれば」 
 それでというのです。
「いいよ」
「それじゃあね」
「うん、また機会があれば会おうね」
「どけてくれて嬉しいけれど」
 それでもと言うトロットでした。
「けれどね」
「けれど?」
「いえ、貴方寝ることが好きみたいね」
「大好きというか生きがいだよ」
 そこまでのものだというのです。
「だからね」
「それでなのね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「また寝るよ」
「そうするのね」
「それじゃあね」
「またね」 
 早速寝ようとするセイウチに応えました、そうしてです。
 一行は氷の世界も進んでいきました、そうしてイッソスの国に向かうのでした。








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