『オズのラゲドー王』




               第七幕  紫のサバンナ

 一行は森からサバンナに入りました、そのサバンナはといいますと。
 草原もまばらにある木々の葉も紫です、ナターシャはその紫のサバンナを見て一旦頷いて言いました。
「そうね、ここはギリキンだから」
「紫の国だからだね」
 神宝も言います。
「だからね」
「草原も木の葉も紫なんだね」
 ジョージも言いました。
「そうなんだね」
「生きもの達は紫じゃないけれど」
 カルロスもサバンナを見ています。
「そうしたものはそうなっているね」
「オズの国ならではね」 
 恵梨香も微笑んでいます。
「こうした場所があることも」
「いやあ、素晴らしい場所だよ」 
 前ノーム王はサバンナを見て満面の笑みを浮かべています。
「ここは」
「ええ、私は何度かここに来たけれど」
 トロットが前ノーム王に応えました。
「何度見てもね」
「素晴らしい場所だね」
「本当にね」
「紫の中に沢山の色々な種類の生きものがいて」
「それでね」
「奇麗でそれでいてね」
「壮観で」
 それでというのです。
「素晴らしい場所だわ」
「来てよかったよ、これまで見てきたものもよかったけれど」
 それでもというのです。
「このサバンナも」
「素晴らしくて」
「わしは今感激しているよ」
「そうなのね」
「それではだよ」 
 前ノーム王はさらに言いまs田。
「サバンナを楽しみながら」
「中を進んでいきましょう」
「そうしよう」
「いやあ、本当に色々な生きものがいるね」 
 カエルマンはサバンナの中を見回して言いました。
「ここは」
「ライオンにチーター、豹がいてね」
 キャプテン=ビルも見ています。
「象にヌーにガゼル、シマウマにサイにチンパンジーにカバにキリンに」
「豊かな自然だね」
「全くだよ」
「見ていて飽きないですね」
 クッキーも言います。
「この中にいて」
「全くだよ」
 前ノーム王が応えました、皆サバンナの真ん中を歩いています。そこに黄色い煉瓦の道があるのです。
「ここに暫くいたいと思ったよ、今ね」
「そこまでなんですね」
「そう思ったよ」
「そうですか」
「ずっとじゃないけれどね」
 前ノーム王は笑ってこうも言いました。
「そうじゃないけれどね」
「オズの国の他の場所をですね」
「もっとね」
 さらにというのです。
「行きたいよ」
「そうですか」
「旅が大好きになったから」
 それでというのです。
「このサバンナに今回これまで巡った場所だけでなく」
「他の場所もですね」
「行きたいからね」
 だからだというのです。
「そう思ったよ、以前ね」
「以前?」
「日本の街にも行ったよ」
 オズの国のというのです。
「あそこもよかったよ」
「ああ、あそこですね」
 ナターシャは前ノーム王の言葉に頷きました。
「大阪の」
「外の世界ではそう言う街だね」
「面白い街でして」
「あの街の様にだね」
「通天閣や蟹や河豚の看板があって」
「ああしてだね」
「くいだおれのおじさんがいて」 
 そうしてというのです。
「カレーライスはルーとご飯が妻女から混ぜてあって」
「善哉は二つ出るね」
「それで串カツやお好み焼きが美味しいですね」
「焼きそばもたこ焼きもだよ」
 前ノーム王はナターシャとリズミカルにお話します。
「最高の味だよ」
「そしてビリケンさんがおられて」
「あの神様もだね」
「そして野球は」
「あのチームだね」
 前ノーム王は満面の笑顔で言いました。
「虎のチーム」
「オズの国にもありますからね」
「わしは景浦さんとお友達になったよ」
「景浦さん?」
「何でも戦争前に活躍した人らしいよ」
 お名前を聞いて首を傾げさせるナターシャにお話しました。
「第二次世界大戦のね」
「あの戦争ですか」
「その前にね」
「そうですか」
「その時にね」
「阪神で活躍されたんですか」
「そうだったんだ」
 こうお話するのでした。
「他にも若林さんや藤村さんとも知り合ったよ」
「藤村さんは私も知ってます」
 ナターシャにしてもというのです。
「初代ミスタータイガースですね」
「何でもそうらしいね」
「物干し竿バットで」
「有名だね」
「あの人は、そういえばここには虎がいないね」
 前ノーム王はサバンナの中の生きもの達を見回って気付きました。
「サバンナには」
「虎はジャングルや森の生きものよ」
 トロットがお話しました。
「だからなのよ」
「それでいないんだね」
「豹もだけれど」
「豹はサバンナにもいられるんだね」
「ええ、けれどね」
 それでもというのです。
「虎はそうなのよ」
「ジャングルや森の生きものでだね」
「平原にはいないのよ」
「だからここでは見ないんだね」
「ええ、色々な生きものがいてもね」
「そのこともわかったよ、それと」
 自分達の傍にいた象達を見てでした。
 前ノーム王はその大きな姿も見て言いました。
「大きいね」
「象はね」
「サバンナで見る象は特にね」
「うん、それはね」
 象のうちから一頭言ってきました。
「僕達もわかっているよ」
「そうなんだね」
「うん、僕達はアフリカゾウでね」 
 それでというのです。
「マルミミゾウやインドゾウよりもね」
「大きいんだね」
「だからね」 
 それでというのです。
「サバンナにいても問題ないんだ」
「そうなんだね」
「何ならお腹の下を潜る?」
 象から前ノーム王に言ってきました。
「そうする?」
「象のお腹の下をかい?」
「そうしたら幸運が訪れるんだよ」
 そうなるというのです。
「だからね」
「そうだったんだ」
「うん、だからどうかな」
「それはいいね」
 前ノーム王は象の言葉に明るい笑顔になりました、そのうえで象を見上げてそのうえで答えました。
「ではお言葉に甘えて」
「そうするんだね」
「そうさせてもらうよ」
 是非にというのです。
「わしも幸運は来て欲しいから」
「だからだね」
「オズの国は幸運と幸せと喜びに満ちているが」
「そうしたものは多いならね」
「多いだけ越したことはない」
「そうだからね」
「幸運と幸せと喜びには限りがない」
 こうもです、前ノーム王は言いました。
「誰にも迷惑をかけないなら」
「オズの国にはその心配もないし」
「思う存分欲しがっていいから」
「だからだね」
「お前さんがそう言ってくれるなら」
 象がというのです。
「そうさせてもらうよ」
「それではね」
「私達もそうしていいかしら」
 トロットは一行を代表して象に尋ねました。
「そうしても」
「勿論だよ」 
 笑顔での返事でした。
「そうしてよ」
「それではね」
「僕達にはそうした力があるからね」
「お腹の下を潜ると幸運をもたらす」
「そんな力があるなら」
 それならというのです。
「皆に」
「もたらすべきね」
「それもこれは限りがないから」
「それじゃあね」
「もたらさないと」
 それこそというのです。
「駄目だよ、ではね」
「ええ、私達もね」
「僕達のお腹の下を潜ってね」
「そうさせてもらうわ」
 こうして皆は象のお腹の下を潜りました、そうしてからさらに先を進んでいきます。するとでした。
 前に川があって橋がかけられています、川の中には沢山の鰐達がいます。ナターシャ達五人はその鰐達を見て言いました。
「橋がなかったら」
「この川を渡らないといけないからね」
「危ないね、鰐達がいて」
「これじゃあね」
「とても渡れないよ」
「大丈夫よ」 
 トロットが五人に言ってきました。
「だってここはオズの国よ」
「ああ、だからですか」
「それでなんですね」
「鰐達にしても襲わないですね」
「そうしたことはしないですね」
「絶対に」
「ええ、そうよ」 
 そうだというのです。
「誰も襲わないわ」
「だっていつも満腹なんだよ」 
 鰐のうちの一匹が言ってきました、ダークグリーンの身体で全長七メートルはあろうかというとても大きな鰐でした。
「僕達はね」
「オズの国には沢山の食べものがあるからなのね」
「岸辺に上がったら」
 そうすればというのです。
「お弁当を生やす草が一杯あるんだよ」
「それだったら」
「もうそのお弁当を食べるから」 
 そうすればいいからだというのです。
「だからね」
「食べないんだね」
「そうだよ、そうしなくていいんだよ」
 そうだというのです。
「だからね」
「私達には何もしないのね」
「食べものはいつも一杯あるんだよ」
 それならというのです。
「それで誰かを襲う必要はあるかな」
「ないわね」
「これはライオンさんや豹さん達もだよ」
 彼等もというのです。
「普通にだよ」
「食べものがその辺りに一杯あるから」
「誰もね」
 ナターシャにさらにお話します。
「襲わないよ」
「そういうことね」
「草食動物は草や木の実を食べてね」
「肉食動物はそうしているのね」
「そうなんだ」
「そのことはわかったわ。ただ貴方はとても大きいから」
 ナターシャは鰐のとても大きな身体を見て言いました。
「食べる量もね」
「多いっていうんだね」
「そうでしょ」
「それがね」 
 象は岸辺にいるナターシャにお話します、今皆は橋の傍の岸辺にいて川の中にいる鰐とお話をしているのです。
「実はライオンさん達よりもね」
「少ないの」
「そうなんだ」
「爬虫類や両生類はそうなんだよ」
 ここでカエルマンが言ってきました。
「哺乳類に比べて食べる量が少ないんだ」
「そうですか」
「身体の仕組みが違うからね」
 だからだというのです。
「食べる量はね」
「身体が大きくてもですか」
「少ないんだ」
「そうなんですね」
「それでなんだ」
 鰐がまた言ってきました。
「僕にしても」
「食べる量は少ないのね」
「身体の大きさと比べてね」
「だからそんなになのね」
「食べないんだ」
 そうだというのです。
「ライオンさん達よりもね」
「そういうことなのね」
「そのこともわかってくれたかな」
「ええ」
 鰐に対して頷きました。
「よくね」
「それは何よりだよ」
「鰐のことがわかったからなのね」
「そうだよ、理解してもらったら」
 そうしてもらったらというのです。
「誰でも嬉しいね」
「私もね」
「だから僕達も嬉しいんだ」
「そういうことね」
「うん、じゃあ橋を渡るんだね」
「そうさせてもらうわ」  
 ナターシャは鰐にこのこともお話しました。
「これからね」
「そうしてね、その橋はコンクリートでしかもオズの国のものだから」
「安心ね」
「しっかりしていてよくチェックされているからね」 
 安全かどうかです。
「だからね」
「安心して渡れるわね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「安心して渡ってね」
「そうさせてもらうわ」
 ナターシャは鰐に笑顔で応えてでした。
 そのうえで皆と一緒に橋を渡りました、そうしてサバンナをさらに進んでいきます。そうしてお昼になるとです。 
 キリン達の群れの前でご飯を食べました、食べるものはボルシチにピロシキそれにロシア風のサラダに鱒のフライですが。
 前ノーム王はロシア風の普通のサラダとは違う濃厚な感じのそれを食べて言いました。
「こんなサラダもあるんだね」
「ロシアのサラダはこうなのよ」
 トロットが答えました。
「こうしてね」
「濃厚な感じなんだね」
「そうなの、これも美味しいでしょ」
「うん、かなりね」
 飲みものは子供はジュースやミルクですが大人はウォッカです、そのウォッカも飲みながら言うのでした。
「いいね」
「そうよね、ボリュームもあるし」
「栄養もあるしで」
「かなりいいサラダよ」
「食べると元気が出るね」
「そうしたいいサラダなの」
「あっさりとした普通のサラダもいいですが」
 クッキーもそのサラダを食べながら言います。
「こうしたサラダもいいですね」
「全くだよ、ボルシチもピロシキもいいし」
 カエルマンも喜んでいます。
「そして果物もね」
「美味しいですね」
「全くだよ」
 カエルマンは無花果を食べて言いました。
「こちらもね」
「こちらはロシア風ではないですね」
「果物はそうだね」
「林檎も梨も美味しいです」
「林檎があると」
 キャプテンはその林檎を見つつピロシキを食べて言いました。
「それだけでね」
「いいね」
「林檎は美味しくて」
 前ノーム王にも応えます。
「栄養満点だからね」
「それでだね」
「わしは大好きだよ」
「わしもだよ」
 前ノーム王もでした。
「果物は何でも好きでね」
「それでだね」
「林檎もだよ」
 この果物もというのです。
「好きでよく食べるよ、梨もね」
「好きだね」
「かなりね、それと」
 前ノーム王はメロンを見て言いました、他にはバナナやオレンジがあります。
「メロンもね」
「大好きだね」
「本当にね」
「メロンもいいですよね」
 恵梨香がにこりとして言ってきました。
「甘くて」
「メロン美味しいよね」
 神宝も言います。
「本当に」
「うん、オズの国でもよく食べてね」
 ジョージはこう言いました。
「外の世界に戻ってもね」
「食べてるよ」
 カルロスが続きました。
「よくね」
「メロンやバナナやオレンジが何時でも好きなだけ食べられることも」
 ナターシャはにこりとなっています。
「最高のことですね」
「あれっ、君そう言うんだ」
 ここで、でした。ナターシャ達にです。
 キリンのうちの一匹が頭を下ろしてきてそうして言ってきました。
「サバンナにはどの果物の木もあるからね」
「このサバンナではそうなのね」
「チンパンジー君やマンドリル君達はよく食べていてね」
 それでというのです。
「僕達はね」
「珍しくないの」
「僕達は木の葉や草を食べるから」
 それでというのです。
「果物は食べないけれど」
「このサバンナでは珍しくないのね」
「そうだけれどね」
「けれど昔のロシアでは」
 ナターシャは祖国のお話をしました。
「寒いだけにね」
「そうだよね、寒いとね」
「そうした果物はないよね」
「メロンとかバナナとかは」
「オレンジにしても実は」
「ああ、サバンナは寒くないからね」
 むしろ暖かいです、暑いかというと日差しはありますが快適な空気なのでそんなに暑くは感じません。
「だからこうした果物もあるけれど」
「寒いと」
 どうしてもというのです。
「そうしたものもないよ」
「そうだね」
「だから昔はレモンだって」 
 この果物もというのです。
「ロシアではなかったのよ」
「それは大変ね」
 トロットもお話を聞いて言いました。
「レモンがないと」
「レモンティーもレモンを使ったお菓子もないね」 
 前ノーム王も言います。
「それは大変だ」
「そう言う貴方はレモンも好きなんだね」
「如何にも」 
 前ノーム王はキリンにも答えました。
「林檎も好きと言ったけれどね」
「レモンもなんだね」
「あの酸っぱさがいいね」
 実にというのです。
「そのレモンもないなんて」
「この娘の国はね」
 キリンはナターシャを見つつ前ノーム王に応えました。
「大変だね」
「全くだね」
「けれどロシアも変わって」
 それでと言うナターシャでした。
「そうしたものも食べられる様になったの」
「そうなんだね」
「日本でもでオズの国でもね」
「メロンもレモンもだね」
「いつも楽しんでいるわ、メロンを食べると」
 ナターシャはまた微笑んで言いました。
「頬っぺたがとろけそうになるわ」
「その可愛い頬っぺたがかな」 
 キリンが言ってきました。
「そうなるのかな」
「可愛いかしら」
「凄くね」
「それは言い過ぎじゃないかしら」
「そうじゃないよ、君達全員可愛くて」
 五人共というのです。
「それでね」
「私もなの」
「可愛いよ」
「そうなの」
「そう、それでね」
 さらにというのです。
「君はそこまでメロンが好きなんだね」
「甘いものはお菓子も果物も好きで」
「メロンは特になんだ」
「大好物の一つなの」
 そうだというのです。
「だから後でね」
「食べるんだね」
「そうするわ」
「ではわしも食べるよ」
 前ノーム王も言いました。
「メロンをね」
「皆でデザートも楽しみましょう」
 トロットも言ってでした。
 そうして皆でロシア料理に果物達も楽しみました、それからまたサバンナを歩きますが水辺にです。
 サーベルタイガーの様なネコ科の大きな生きものを見ました、するとナターシャ達五人は思わず声をあげました。
「あれはまさか」
「水ライオンだよね」
「アフリカにいるっていうけれど」
「オズの国にもいるんだ」
「それもはっきりと」
「あっ、そうだったわね」
 トロットは五人の言葉を聞いて言いました。
「外の世界では水ライオンはまだいるかどうかはっきりしていないわね」
「謎なんです」
「見たって人はいるんですが」
「果たして本当か」
「まだはっきりしません」
「残念なことに」
「そうよね、けれどオズの国ではね」
 こちらではというのです。
「はっきりといることがわかっているわ」
「そうなんですね」
「やっぱり外の世界とは違いますね」
「オズの国はそうなんですね」
「お伽の国だから」
「こうした生きものもいることがわかっているんですね」
「そうよ、外の世界にいない生きものもいて」
 そしてというのです。
「いなくなった生きものもいるかどうかわからない生きものもね」
「全部ですね」
 ナターシャが応えました。
「いるんですね」
「そうなのよ、それがね」
「オズの国ですね」
「だから水ライオンもいるの」 
 この生きものもというのです。
「普通にね」
「オズの国はそうした国ですね」
「そうよ、あと水ライオンはその名前の通りね」 
 この生きもの自身のお話もするのでした。
「泳ぐのがとても上手なのよ」
「外の世界でもそう言われてますけれど」
「オズの国ではもうそのことがね」
「はっきりしていますね」
「そうなの、他の外の世界ではいるかどうかわからない生きもののこともわかっていて」
 そしてというのです。
「図書館の図鑑にも載ってるわ」
「その図書館だけれど」
 ビリーナが言ってきました、今はトロットの横を歩いています。
「これが凄いのよ」
「オズの国の図書館ね」
「図書館自体はあちこちにあるけれど」
 それでもというのです。
「王立図書館はね」
「王立大学の隣にあるわね」
「あそこはね」 
 まさにというのです。
「もう何億もの蔵書があってね」
「そんなにあるの」
「もっとあるかも知れないわね」
 驚くナターシャにこうも言いました。
「それでなのよ」
「図鑑もあって」
「ここで言う図鑑は生物図鑑ね」
「それも凄いのね」
「オズの国でいることがわかっている生きもののことが全部書かれているのよ」
「それで水ライオンのことも」
「わかっているのよ」
 そうだというのです。
「これがね」
「そうなのね」
「大きさや体重やいる場所や習性のことがね」
 そうしたことがというのです。
「全部ね」
「わかっていて」
「書かれているのよ」
「そうなのね」
「当然私達鶏のことも書かれているわ」
「鳥のこともで」
「私達のこともね」
 まさにというのです。
「書かれているわよ」
「そうなのね」
「だから図鑑を読む時があったら」
 その時はというのです。
「私達のこともね」
「読むといいのね」
「そうしてね」
「じゃあそうさせてもらうわ」
 ナターシャも応えました。
「是非ね」
「そういうことでね」
「ええ、けれどまさか」
 ナターシャは水ライオンを見つつあらためて言いました。
「オズの国ならではね」
「水ライオンもいるなんて」
「本当にそうだよね」
「未確認動物の普通にいるなんて」
「流石と言うべきかしら」
「わしにとっては普通でも」
 それでもと言う前ノーム王でした。
「君達にとってはそうじゃないね」
「どうしても」
 ここで言ったのはナターシャでした。
「外の世界はオズの国程不思議じゃないから」
「それでなんだ」
「未確認動物については」
「はっきりしないんだね」
「中々。いることがわかるまで」
 まさにそれまでというのだ。
「お話が進まなかったりするから」
「私達がいた時もそうだったわね」
「確かにね」
 トロットとキャプテンもお話しました。
「そうだったね」
「いるかどうかで大騒ぎして」
「何度も必死に探して」
「それでやっといるかどうかわかる」
「そんな風だったね」
「パンダもそうだったわ」
 トロットはこの生きものもと言いました。
「いるかどうかね」
「物凄く調べたね」
「それで中国の奥地まで行って」
「やっと見付けたね」
「オズの国と違って」
「すぐにどんどんわかっていかないね」
「ううむ、外の世界は本当に違うんだな」
 前ノーム王はここまで聞いて考えるお顔になりました。
「オズの国とは」
「そうよ、ここはお伽の国なのよ」
 ビリーナが言ってきました。
「だったらね」
「全く違うんだね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「それも当然よ」
「そうなんだね」
「あちらはあちらで悪い世界じゃないけれど」
 それでもというのです。
「オズの国に馴染むとね」
「オズの国が一番だね」
「そう思えるわ」
「成程ね」
「というかそう思えるから」
 だからだというのです。
「オズの国にいるのよ」
「外の世界から来てだね」
「そうよ、思えばドロシーと一緒に来たのは」
 そのオズの国に来た海の嵐の時を思い出しながら言いました。
「運命だったのね」
「そしてわしと対決して」
「まだ卵が駄目だったあんたとね」
「そうしてだったね」
「オズの国に定住したことは」
「運命で」
「そうなることだったのよ」
 こう前ノーム王にお話しました。
「今思うとね」
「そういうことだね」
「そして今じゃね」
「君もオズの国の住人で」
「沢山の家族がいてね」
 そうしてというおです。
「しかも一国の女王よ」
「鶏の国のね」
「そうなったことは運命よ」
「となると」
 ビリーナのお話をここまで聞いてです、前ノーム王は考えてそうしてからビリーナに対して言いました。
「わしも今みたいになったことは」
「運命だっていうのね」
「そうかな」
「多分ね。運命も変わるっていうけれど」
「わしはいい運命を進んでいるね」
「私と一緒でね」
「そういうことだね、そして」
 ビリーナを見てさらに言いました。
「わしとあんたは友達にもなった」
「オズの国の住人同士でね」
「そうもなったね」
「最初は敵同士だったのに」 
 それがというのです。
「そうなったこともね」
「運命だね」
「いい運命を歩んでいるのよ」
「あんたもわしも」
「それで友達同士になって」 
 そうしてといのです。
「こうして一緒によ」
「旅もしている」
「そうよ、それじゃあね」
「イッソスの国のお寿司屋さんにだね」
「行きましょう」
 こう言うのでした、そしてです。
 一行は夜まで進みました、それから晩ご飯を食べてからテントで休みますがその前に身体も奇麗にしました。
 するとです、前ノーム王はこんなことを言いました。
「すっきりして最高だよ」
「近くのお池で身体も奇麗にして」
 トロットも奇麗になっています。
「それでね」
「うん、それで」
「今から寝るわね」
「旅を楽しんでその汗と垢を落としてぐっすり寝る」
 このことがというのです。
「最高だよ、しかしね」
「しかし?」
「いや、最高がね」
 それがというのです。
「オズの国は多いね」
「言われてみればそうだね」
 カエルマンも頷きました、勿論彼もすっきりとしています。
「何かと」
「そうだね」
「私も思うよ。ただ最高は探せばあちこちにね」
「あるものだね」
「そうかも知れないね、美味しいものを食べても最高で」
 それでというのです。
「素晴らしいものを見られてもね」
「最高だね」
「お友達と一緒にいられてもね」
「それもまた最高だよ」
「そう、最高のことはね」
「探せば多いね」
「外の世界でもですし」
 ナターシャも言ってきました。
「何かと」
「探せばだね」
「最高のことはです」
「多いね」
「最高のことを見付ければ見付けるだけ」
「幸せになれるのかもね」
「そうですね」
 こうカエルマンに言いました。
「オズの国でも」
「そうだね」
「わしはかつてはそんなことはしなかったから」
 前ノーム王は心がすっかり入れ替わる前の自分を思い出して言いました。
「ずっとね」
「幸せじゃなかったですね」
「そうなるね」
 まさにというのです。
「実際にだよ」
「幸せはですね」
「あの頃は感じなかったよ」
「悪いことばかり考えていて」
「いつも何かを嫌って憎んで」 
 そうしてというのです。
「本当にね」
「幸せはですか」
「気付きもしなかったよ」
「そうでしたか」
「考えることすら」
 幸せについてです。
「なかったよ。例えば野球を観て」 
「そうしてですか」
「好きなチームが勝ったりいいプレイを観られた」
「そうしたことで」
「嬉しいと感じることも」
 こうしたこともというのです。
「なかったよ」
「そこにも幸せがありますよね」
「けれどそのことにもね」
 かつてはというのです。
「全くだよ」
「考えもしなくて」
「それで幸せじゃなかったよ、残念なことをしていたよ」
 後悔も見せました。
「本当にね」
「けれど気付いたら」
 トロットが言ってきました。
「その気付いた風にね」
「生きていけばいいな」
「そうよ、じゃあこれからもね」
「楽しく生きよう」
「幸せにね。じゃあ明日も日の出と一緒に起きてね」
 そうしてというのです。
「それからよ」
「また旅をしようか」
「ぐっすりと寝てからね」
「この寝ることも楽しくなった」
 こちらもというのです。
「もう朝までぐっすりとだよ」
「寝られる様になったのね」
「今のわしはそうだよ」
 トロットに笑顔でお話します。
「だから夜も楽しい」
「起きている時はもう思う存分楽しめばね」
 ビリーナはこう言いました。
「寝る時もよ」
「楽しく寝れる」
「身体は程よく疲れてね」
 そうしてというのです。
「気持ちも楽しいままだからよ」
「寝られるね」
「そういうことよ」
 こう言うのでした。
「だから今のあんたはね」
「寝ることも楽しい」
「そうよ、じゃあね」
「今夜も楽しく寝られる」
「朝までぐっすりとしかも」
 ビリーナはさらに言いました。
「いい夢も見られるわよ」
「そうだね、それじゃあ」
「寝ましょう」
「今度はそちらを楽しもう」
 こう言ってでした。
 前ノーム王は幸せな気持ちのまま寝ました、そして日の出と一緒にまた起きて楽しい時間を過ごすのでした。








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