『オズの木挽きの馬』




                第十一幕  幸村さんと十勇士達

 一行は牧場への道を進んで行きます、帰り道もとても素晴らしいものでした。
 その中で木挽きの馬は恵梨香に尋ねました、その尋ねることは何かといいますと。
「幸村さんと十勇士の人達だけれど」
「あの人達がどうしたの?」
「恵梨香は大好きなんだよね」
「ええ、大好きよ」
 恵梨香は木挽きの馬に答えました。
「私はね」
「それで日本人の多くの人達もだね」
「あの人達は好きよ」
「そうなんだね」
「本当に日本人にとってはね」
「ヒーローなんだね」
「そうした人達の中にいるの」
 幸村さんと十勇士の人達はというのです。
「強くて勇敢で義理堅くてね」
「恰好いい人達なんだね」
「最後は負けたけれど」
 それでもというのです。
「凄く恰好いい人達だから」
「日本では人気があるんだ」
「そうなの」
「成程ね」
「何か日本人って最後負けた人好きね」
 ガラスの猫がこのことを指摘しました。
「ふと思ったけれど」
「源義経さんとか?」
「あの人も最後負けたわね」
「そうね、あの人も」
「あと楠木正成さんって人も」
「最後はね」
「西郷隆盛さんもよね、最後負けた人をね」
 日本人はというのです。
「好きよね」
「そこが悲しくてね」
「心が動くの」
「そうなの、どうしても」
 それでというのです。
「人気が出るのだと思うわ」
「そうなのね」
「強くて立派でもね」
「最後は力尽きてっていうのね」
「そして最期も恰好いいと」
 それならというのです。
「日本人は好きになるの」
「そうなのね」
「華々しく最期まで勝って恰好いいよりもだね」
 モジャボロも恵梨香に言います。
「日本人は最期は、なんだね」
「そうです、負けてです」
「それでも立派に去るのが好きなんだね」
「そうしたところがありますね」
「成程ね」
「最後まで勝つのがヒーローというのがね」
 弟さんはアメリカにいた時のことを思い出して恵梨香にお話しました。
「アメリカだけれど」
「そこは日本は違いますね」
「そうだね」
「ええ、ただ」
「ただ?」
「やっぱり負けても生きていたら」
 それならとです、恵梨香は弟さんにお話しました。
「嬉しいです」
「幸村さんもそうだし」
「本当に大坂の陣で生きていてよかったです」
「オズの国にある日本の街がそのまま大阪だけれど」
 このことはグリンダが指摘しました。
「大阪では昔戦いもあったのね」
「そうだったんです」
「大阪にもそうした歴史があったのね」
「物凄く大きな戦いでして」
「幸村さんもお亡くなりになった」
「そう思われた位で歴史ではそうなっています」
 そう書かれているというのです。
「立派な最期だったって」
「十勇士の人達は息ていたのかしら」
 黄金の羊はこのことについて思いました。
「それで」
「あの人達は幸村さんが最期に逃がしたと聞いているわ」
「そうだったの」
「私が最初に聞いたことだと、ただ」
「あの人達も生きていたのね」
「オズの国でわかったわ」
 このことがというのです。
「本当に」
「そうだったのね」
「皆秀頼さんをお助けして」
 そしてというのです。
「逃げ延びていたのね」
「よかったわね」
「十勇士の人達も皆生きていて」
「幸村さんもだったのね」
「そうだったからね」
「よかったわね」
「ええ、大坂の陣で最期お亡くなりになったと思っていたから」
 恵梨香は幸村さんが大好きです、だから余計に悲しかったのです。
「本当によかったわ」
「確かに幸村さん恰好いいわ」  
 ナターシャも思うことでした。
「強くて頭がよくて立派な性格で」
「非の打ちどころのない人だよね」
 カルロスが見てもです。
「あの人は」
「最後の最後まで立派だったし」
 神宝の言葉には感銘がありました。
「素晴らしい人だったよ」
「戦国時代の最後の最後にああした人が出たなんて」
 ジョージも幸村さんについて言いました。
「ドラマだよね」
「そうよね、織田信長さんも恰好いいけれど」
 恵梨香はこの人のお話もしました。
「幸村さんもなのよね」
「それで今はオズの国におられてだね」
 木挽きの馬も言ってきました。
「楽しく過ごされているんだね」
「十勇士の人達と」
「それはいいね」
 木挽きの馬はこう言いました、すると。
 ふとです、目の前に佐助さんが出てきました、皆の前にさっと降りてきて右膝をついた姿勢で言ってきました。
「久し振りでござるな」
「一体どうしたんですか?」
「いや、ふとお見掛けしたのでまさかと思ったら」
 佐助さんは恵梨香に立ち上がって答えました。
「グリンダ殿だったので挨拶に伺ったのだよ」
「そうなんですな」
「実はそれがしあの後は屋敷に戻り」
「幸村さんのお屋敷ですね」
「そこに修行に出ていた小助と清海も戻り」
「お二人ともお会いしました」
「聞いておるぞ、それで我等は揃ったところで」
 それでというのです。
「殿の提案で今は旅に出ているのだ」
「そうでしたか」
「殿に大助様に」
「十勇士の人達でですね」
「左様、奥方様が留守を護って下さると言われてな」
「幸村さんの奥さんですね」
「殿の奥方に相応しい方だ」
 佐助さんはこのこともお話しました。
「実にな、その方が留守を護られてな」
「そうしてですね」
「我等は今は旅に出ている、目的地はないが」
 それでもというのです。
「楽しくな」
「そうなんですね」
「佐助、我等も来たぞ」
 黒髪を剃らずに後ろで髷にしたクールで整ったお顔立ちの青い忍装束の男の人が出て佐助さんに言ってきました。
「殿もな」
「おお、才蔵か」
「うむ、この子達がだな」
 その人は恵梨香達を見て言いました。
「オズの国の名誉市民の子達だな」
「そうだ、お主も名乗れ」
「霧隠才蔵」
 男の人は微笑んで名乗りました。
「以後覚えておいてくれ」
「うわ、十勇士きっての美形と聞いていましたけれど」
 恵梨香は才蔵も観て言いました。
「本当にそうですね」
「そう言ってくれるか」
「実際にそうですから」
「人は顔ではないがな」
「それはそうですが」
「その言葉は有り難く受けさせてもらうか」
「そうして下さい、そして」
 恵梨香は才蔵さんの後ろに出て来た人達も観ました、そうして言いました。
「他の十勇士の方々もおられますね」
「おう、また会ったな」
 清海さんが笑顔で挨拶してきました。
「これも縁だな」
「全くだ、皆の者この子達だ」
 小助さんは一緒にいる人達に言いました。
「わし等が会ったのはな」
「そうですか、賢そうな子達ですね」
 清海さんと同じくお坊さんの恰好ですが雲水姿で穏やかな顔立ちの人が応えました。
「どうも」
「そうであろう」
「三好伊佐入道と申します」 
 お坊さんはご自身から名乗りました。
「十勇士の末席にいます」
「わしの弟じゃ」
 清海さんが言ってきました。
「わしに似ず穏やかで思慮深いぞ」
「いえいえ、兄上にはいつも助けて頂いて」
「いつもこう言ってくれるのだ」
「二人共かなり頼りになるぞ」
 灰色の忍装束で黒髪を伸ばした痩せた人が出てきました。
「まことにな」
「そう言う貴方は」
「由利鎌之介という」
 恵梨香に笑顔で名乗りました。
「鎖鎌なら任せておけ」
「お名前の通りですよね」
「ははは、そうであるな」
「ええ、本当に」
「根津甚八という」
 白い覆面を取ると精悍なお顔立ちでした、黒い忍装束に刀があります。
「得意なのは剣術だ」
「十勇士一の剣豪ですしね」
「おお、お嬢ちゃんは知っているか」
「十勇士の皆さんのことは」
 恵梨香は甚八さんにも笑顔で答えました。
「漫画やゲームで」
「そうしたものでか」
「小説でも出ていますし」
「そうであるか」
「わし等も有名なのだな」
 大柄で赤い忍装束を着ていて岩みたいなお顔立ちの人でした。
「そうなのだな」
「そういう貴方は」
「知っているか」
「はい、望月六郎さんですね」
「そうだ、わしは望月でな」
「わしが海野六郎だ」
 黒髪が立っていて大きな目の水色の忍装束の人でした。背は佐助さんより少し低い位です。
「十勇士一の水泳と水の術の達人だ」
「そうですね」
「そして十勇士のリーダーもしている」
「そうですよね」
「全く、個性の強い者達ばかりだが」 
 それでもとです、海野六郎さんはさらに言いました。
「皆想いは同じだ」
「幸村さんへのですね」
「そしてよく喧嘩もするが」
「仲良くですね」
「そうしておる、そして最後は」
「筧十蔵といいます」
 穏やかで聡明そうな顔立ちで茶色の忍装束の人でした。
「私も十勇士です」
「十勇士一の術の使い手ですね」
「拙いながら妖術も使えます」
「そうでしたね」
「しかし忍の本分はあくまで忍術」
 十蔵さんは恵梨香に答えました。
「そこは弁えておりますぞ」
「そうですよね」
「殿、こちらの方々がです」
 佐助さんはご自身達の後ろにいる質素ですが清潔な着物姿の男の人と赤い着物を着た少年の人にお顔を向けて言いました。
「グリンダ殿達とです」
「オズの国の名誉市民の子達であるな」
「左様です」
「はじめまして」
 男の人はすっと前に出て名乗りました、見ればこの人と少年の人は袴を穿いています。
「真田源次郎幸村といいます」
「大助といいます」 
 少年の人も名乗りました。
「以後宜しくお願いします」
「こちらこそ、幸村さんですか」
 恵梨香はその幸村さんを見て感激しているお顔で言いました。
「まさか実際にお会い出来るなんて」
「思わなかったと言われるかな」
「とても、思っていた通りのお顔立ちですね」
「ははは、不細工ではないか」
「全く、大助さんもおられて」
「拙者のこともご存知か」 
 大助さんも言ってきました。
「それは有り難いこと」
「皆さんのことは知っています」
 恵梨香はさらに言いました。
「だって大好きですから」
「それがし達が」
「そうです、大坂の陣のことで」
「あの戦は我等は敗れたが」
「ですがそれでも実は」
「生きていてか」
「それで、ですよね」
 恵梨香は幸村さんにお話しました。
「秀頼さんでなくて」
「右大臣様であるな」
「あの方をお救いして」
「あの時は間一髪な」
「お救い出来たんですか」
「そして抜け道を使いそこから船で海に出て」
 そうしてとです、幸村さんも恵梨香にお話しました。
「何とかな」
「薩摩の方にですね」
「逃れられた」
「あの時は本当に皆駄目かと思った」
 海野六郎さんは腕を組んで言いました。
「殿が我等に最後逃げられよと言われてな」
「全くだ、殿が討ち取られてたと聞いた時は流石にそれはないと思ったが」 
 望月六郎さんも言います。
「我等が右大臣様のお傍におられてな」
「ここはもう我等の命を賭けて右大臣様をお助けしようと燃える櫓の中で意を決したその時に」
 甚八さんも言います。
「そこに殿が現れ我等と共に右大臣様を救われ抜け道に入られた」
「そこで曲輪が火に包まれまして」
 伊佐さんがこのことをお話した。
「城は全て焼け崩れたのです」
「本当に間一髪だったんですね」
「そうでした、ですが我等全員何とか右大臣様をお救い出来まして」
 十蔵さんが恵梨香にお話します。
「逃れられたのです」
「そうだったんですね」
「そして薩摩に逃れて」
 鎌之介さんも言います。
「右大臣様はそこで余生を過ごされ」
「皆さんは」
「それからは海に出て世界を巡ったのだ」
 才蔵さんが以後のことをお話しました。
「最後は皆日本に戻った」
「冒険をされたんですね」
「その冒険がまた楽しかったのだ」
 佐助さんが言いました。
「実にな」
「その話はおいおいさせてもらう」
 清海さんは大きなお口を開けて笑いました。
「やがてな」
「では我等はまた行こう」
 小助さんは明るく言いました。
「旅にな」
「ええと、よかったら」
 ここで恵梨香は幸村さん達に言いました。
「牧場に行きませんか?」
「牧場というと」
「私達黄金の羊を牧場に戻しに行きます」
 恵梨香は幸村さんに答えました。
「今から」
「そのことは佐助達から聞いている」
「それでご存知なのですね」
「無事に見付かって何より」
「有り難うございます」
「では牧場はレッド牧場か」
「そちらに寄られては」
「うむ、では旅の途中に」
 幸村さんは恵梨香に微笑んで答えました。
「立ち寄らせてもらう」
「宜しくお願いします」
「それとだが」
「それと?」
「貴殿達はオズの国に何度も来ているな」
「はい」
 恵梨香は幸村さんに微笑んで答えました。
「二十回以上は」
「この国はいい国だな」
「そうですよね」
「明るくて楽しくて平和でな」
「本当に素晴らしい国です」
「拙者もこの国に来られてな」
 そしてというのです。
「よかった、しかも大助も十勇士達も一緒だ」
「だから余計にですね」
「我等十一人は生まれた時と場所は違うが」
 それでもというのです。
「死ぬ時と場所は同じと誓い合った」
「だからですね」
「オズの国でも共いられてな」
「嬉しいですよね」
「心からな」
 まさにというのです。
「いつもそう思っている」
「そうなんですね」
「戦がないので修行や学問にも好きなだけ打ち込めるし焼酎も楽しめる」
「お酒好きでしたね」
「うむ、大好きだ」
 幸村さんは恵梨香にお酒のことも答えました。
「実にな」
「そうですよね」
「だからな」
 それでというのです。
「今は満ち足りている」
「そうですか、ただ幸村さんもう戦は」
「ないならそれでいい」
「そうですか」
「やはり泰平がな」
 これがというのです。
「何よりもいい」
「そうお考えですね」
「戦国の世はな、何といってもな」
 幸村さんは恵梨香にお話しました。
「戦が絶えなかった」
「だからですか」
「誰もが泰平を願っておった、功は欲しいが」
 それでもというのです。
「やはりな」
「戦がないことがですね」
「何よりだ、だからオズの国ではな」
「もうですか」
「戦がないのでな」
「幸村さんとしてもですか」
「よい、拙者も十勇士の者達も幸せじゃ」
 笑顔のままで、です。幸村さんはお話するのでした。
「やはりな、ただな」
「ただといいますと」
「最初にステーキを見た時は驚いた」
「ああ、牛肉は」
「ああした料理をするのはな」
 どうしてもというのです。
「見たことがなくてな」
「それで、ですね」
「拙者も驚いた」
「昔の日本ではお肉自体が」
「獣の肉は食することもあったが」
 それでもというのです。
「牛の肉を常に食し」
「ステーキみたいに焼くことはですね」
「なかった、まして牛乳を飲むなぞ」
 幸村さんはこちらのお話もしました。
「なかった」
「そうなんですね」
「蘇や酪、醍醐はあったが」
「ええと、確かどれも牛乳から作る」
「乳製品だな」
「それはあったんですね」
「あったが非常に贅沢な食べものであった」
 そうだったというのです。
「公卿の方や太閤様の様な」
「凄く身分の高い方でないとですか」
「食べられなかった、氷もだ」
 こちらもというのです。
「夏に普通に食するなぞ」
「ありませんでしたか」
「こちらも非常に贅沢なものだった」
 そうだったというのです。
「拙者は大名であったが」
「それでもですか」
「その様な贅沢はまずしなかった」
「そうでしたか」
「質素倹約を心掛けていた、真田家は小さな家だったしな」 
 大名といってもというのです。
「だからな」
「贅沢はされなかったんですね」
「それは武士のすべきことでないとも思ってな」
「父上は非常に質素な方でして」
 大助さんも言ってきました。
「修行と学問、お酒がお好きで」
「それ以外はですか」
「贅沢とは無縁でした」
 そうした人だったというのです。
「そして今もです」
「贅沢なことはですか」
「一切されません」
「そうですか」
「とはいっても今はステーキもかき氷もです」
 そうしたものもというのです。
「召し上がられます」
「そうなんですね」
「はい、すき焼きもお好きです」
「そして河豚も好きで」
 幸村さんは笑ってお話しました。
「時折食す」
「河豚お好きですか」
「実にな、オズの国では河豚には毒もない」
「だから安心して食べられますね」
「よいことに、だから大助や十勇士達と共に食する」
「そうですか」
「そうしている、ではまた機会があれば」
 幸村さんは恵梨香達に笑顔で言いました。
「会おう」
「はい、また」
 恵梨香も他の皆も笑顔で応えてでした。
 幸村さん達は皆と手を振り合ってお別れをしました、皆は幸村さん達の姿が見えなくなると旅を再開しましたが。
 ここでグリンダのスマホの音楽が鳴りました、グリンダはそれに出ますとオズマが出て来て言ってきました。
「グリンダ、レッド牧場に戻ったらね」
「何かあるのかしら」
「ええ、ドロシーが待っているわ」
 こうグリンダに言うのでした。
「かかしさんと樵さんもね」
「あの人達が待っているの」
「三人も冒険の旅に出ていてね」
 それでというのです。
「レッド牧場に寄って」
「そこで私達のことを聞いてなの」
「待っているの、それで貴方達が帰ったらね」
 その時はというのです。
「帰還を祝ってのね」
「パーティーをなのね」
「する予定よ」
「そうなのね」
「だからね」
「牧場までなのね」
「まずは帰ってね」
 こう言うのでした。
「いいわね」
「わかったわ」
 グリンダはオズマに笑顔で答えました。
「それじゃあね」
「牧場まで戻ってね」
「黄金の羊と合流出来たしね」
「それならよね」
「ええ、今から戻るわ」
 そうするというのです。
「これからね」
「そうしてね」
「皆にも伝えるわ」
 グリンダはオズマにまた笑顔で答えてでした。
 そのうえでオズマとのお話を終えると皆にドロシー達のことをお話しました、すると恵梨香は笑顔で言いました。
「オズの国に来たら絶対にですよね」
「ドロシー達と会うのね」
「はい、かかしさんと樵さんと」
「それが貴方達ね」
「オズマ姫とも。この人達とお会いしないことは」
 オズの国に来たらというのです。
「ないです」
「そうよね」
「何かオズの国のことが紹介された本では」
 恵梨香はさらにお話しました。
「ドロシーさん達は絶対に出ていますね」
「そうそう、ほぼ確実にだよね」
 カルロスは恵梨香のその言葉に頷きました。
「ボームさんが紹介してくれたお話にはね」
「もうドロシーさんが出ない時殆どないです」
 神宝も言いました。
「オズマ姫が男の子だった時位ですね」
「その時もかかしさんと樵さんは出ていましたね」
 ジョージもこのことは知っています。
「それで他のお話でもですね」
「本当にドロシーさん達が出ないと」
 どうかとです、ナターシャも言いました。
「お話がはじまらなかったですね、ボームさんの紹介してくれたお話では」
「僕がオズの国に来たのはドロシーと会ってだったしね」
 モジャボロは自分のことのお話をしました。
「それでだったからね」
「そうでしたよね」
「カンサスからオズの国まで」
「ドロシーさんと一緒に来られましたね」
「そして弟さんもでしたね」
「オズの国に来られましたね」
「そうなったからね」
 モジャボロは五人に笑顔でお話しました。
「本当にドロシー達はオズの国の代表と言っていいよ」
「オズマ姫と並んでね」
 弟さんもにこにことして言います。
「ドロシー王女達はオズの国の代表だよ」
「ええ、だからドロシーさんはオズマ姫の一番のお友達ですね」
 恵梨香は弟さんにも応えました。
「そうした意味でも」
「そうなるね」
「やっぱりそうですね」
「ドロシ王女ーがオズの国に来てからオズの国のことが皆に知られたしね」
 このこともあってというのです。
「もう何といってもね」
「オズの国ではですね」
「ドロシー王女達は特別だよ」
「そうですね」
「まあドロシーがいないとね」 
 ガラスの猫も言うことでした。
「オズの国は寂しいわね」
「貴女もそう思うのね」
「ええ、オズマとね」
「かかしさんに樵さんね」
「この人達がいないと」
 どうしてもというのです。
「私にしてもね」
「オズの国は寂しいのね」
「オズマが急にいなくなった時なんか」
「大騒ぎだったわね」
「桃にされていたってわかるまで」
 その時までというのです。
「本当にね」
「大騒ぎでね」
「皆で探したし」
「ドロシーさんもいないと」
「そうなるわよ」
 大騒ぎになるというのです。
「絶対にね」
「やっぱりそうよね」
「本当にそこまでの人よ」
 ドロシーはというのです。
「あの人達はね」
「そうよね」
「そのドロシー王女達が待っているなら」
 それならとです、今言ったのは木挽きの馬でした。
「牧場までね」
「急いでかしら」
「戻ろうね、ただね」
「焦らないのね」
「焦ることはオズの国では不要だね」
「ええ、それはね」
 恵梨香も答えます。
「その通りよ」
「だからね」
「焦らないのね」
「そうして戻ろうね」
「それじゃあね」
「帰り道は自然と足が進むし」
 黄金の羊も言ってきました。
「焦らなくてもね」
「自然に速く進めるわね」
「そう、だからね」
「このまま歩いていけばいいわね」
「今のペースでね、それとね」
 黄金の羊はこうも言いました。
「いい匂いがしてきたわね」
「そうかしら」
「ええ、草のね」
 こう恵梨香に言うのでした。
「美味しそうな匂いがするわ」
「あっ、貴女羊だから」
 恵梨香は黄金の羊の言葉に気付いて言いました。
「それでよね」
「そう、草を食べるからね」
「そう言ったのね」
「だからね」
「近いうちになのね」
「お食事にしたいわね、旅の間はね」
 黄金の羊は恵梨香にお話しました。
「ずっとそうしてね」
「草を食べていたのね」
「そうして旅を楽しんでいたの」
「そうだったのね」
「食べものには困らなかったわ」
 黄金の羊は恵梨香に笑顔で言いました。
「全くね、それどころかいつもお腹一杯で」
「楽しく旅をしていたのね」
「そうだったわ、だからね」
 それでというのです。
「帰りもね」
「そういえば貴女お食事の時は」
「草食べてるでしょ」
「ええ」
 実際にというのです。
「そうね」
「そうしてね」
 そのうえでというのです。
「満腹でね」
「帰っているのね」
「そうしているわ」
「羊さんの旅は食べものに困らないの」
「草原や森が多いとね」
「つまり草があると」
「いいのよ、けれどこれが街だと」
 そうした場所はといいますと。
「やっぱりね」
「食べものがないから」
「私達にとっては辛いわ」
 そうだというのです。
「羊そして山羊にはね」
「ああ、山羊さんもね」
「草を食べるからね」
 それでというのです。
「辛いわ、ただ紙があったら」
「紙を食べてなのね」
「そうしてね」 
 そのうえでというのです。
「楽しんでいるわ、ただね」
「ただ?」
「私達は紙より草の方が好きなのよ」
「羊や山羊は」
「そうなの」
 こう言うのでした。
「これがね」
「そうなのね」
「そう、紙を食べることも出来るけれど」
「草が一番好きなのね」
「そうよ、これは鹿もでしょ」
「そうね、奈良県には鹿が多いけれど」
 それでもとです、恵梨香は黄金の羊の言葉に日本のこの県のことからお話しました。
「鹿も紙を食べるけれど」
「草が一番好きでしょ」
「それとお煎餅も食べるわ」
「お煎餅?日本のお菓子?」
「鹿用のお煎餅でね」
 それでというのです。
「人間が食べないでね」
「鹿が食べるものなの」
「そうなの」
 そのお煎餅はというのです。
「そうしたものもあるの」
「面白いものがあるわね」
「人間も食べられるけれど」
 それでもというのです。
「あまり美味しくないそうよ」
「まあ人間は草食べないしね」
「紙もね」
「それも当然ね」
 黄金の羊も納得しました。
「そのことは」
「やっぱりね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「私もその鹿煎餅食べたくなったわ」
 黄金の羊は恵梨香に答えました。
「そうなったわ」
「貴女もなの」
「今は草を食べたいけれど」
 それでもというのです。
「その次はね」
「鹿煎餅食べたいのね」
「貴女が言うね」
 それをというのです。
「そう考えているわ」
「それじゃあ」
 グリンダは黄金の鹿のお話を聞いて彼女に言ってきました。
「晩ご飯の時にね」
「鹿煎餅出してくれるの」
「そうしていいかしら」
「お願いするわ」
 黄金の羊はグリンダにこう答えました。
「それならね」
「ええ、それじゃあね」
「楽しみにしているわ」
「それではね」
「世の中そんな食べものもあるのね」
 黄金の羊の口調はしみじみとしたものになっていました。
「面白いわね」
「日本にあるの」
「恵梨香の国ね」
「その奈良県にね」
「奈良県ね」
「大仏さんがあって鹿もいるの」
「大仏さんって仏教の」
 黄金の鹿はこのことは知っていました。
「あの仏様ね」
「そのとても大きな像があるの、もう立ったら巨人よ」
「そこまで大きいの」
「何十メートルもあるから」
 そこまでの大きさだというのです。
「凄いわよ」
「それはまた大きいわね」
「だからよく日本では立ち上がったらってお話するの」
 そうだというのです。
「これがね」
「あの大仏さんは確かに大きいね」
「特撮にも出られるよ」
「立ち上がって動いたら」
「本当にどれだけ凄いか」
 ジョージ達四人も言いました。
「あの大仏さんは」
「世界で一番巨大な像よね」
「他の国にはないんじゃないかな」
「あそこまでのは」
「ふうん、オズの国にあるかしら」
 黄金の羊は四人のお話を聞いて考えるお顔になって言いました。
「あったら観てみたいわね」
「そうね、私もね」
 恵梨香も思うことでした。
「そうしたいわね」
「というか日本ってどんな国なのかな」
 木挽きの馬は恵梨香のお話を聞いて思いました。
「忍者に力士さん、お侍に和歌に頓智にって」
「それに仏像もだから」
「もう何が何だかね」
 こう恵梨香に言うのでした。
「わからないよ」
「不思議な国だっていうのね」
「若しかしてオズの国並に不思議な国かな」
 木挽きの馬はこうも思いました。
「若しかして」
「お寿司なんてね」
 モジャボロも言ってきました。
「他の国にはないしね」
「あの食べものもですか」
「不思議だよ、オズの国にも日本は入っているけれど」
 それでもというのです。
「アメリカや中国に負けていないよ」
「同じ位不思議な国ですか」
「うん、心から思うよ」
「そうですか」
「だから和歌も楽しみたくなるね」
 こちらもというのです。
「僕としては」
「和歌ですか」
「あれを詠ってね」
 そうしてというのです。
「楽しみたいね」
「モジャボロさんとしても」
「雅っていうかな」
「その気持ちにですか」
「入りたいね」
 こう恵梨香に言うのでした。
「僕は」
「オズの国にいても」
 グリンダも言うことでした。
「私はアメリカと中国とね」
「日本のことはですか」
「どれだけ触れても不思議に思えるわ」
「そうなんですね」
「勿論他の国も不思議だけれど」
「イタリアやドイツもですね」
「イギリスもね、勿論ロシアやブラジルもね」
 ナターシャ、カルロスのそれぞれのお国の事柄もというのです。
「不思議で楽しくて魅力的よ」
「それでもですか」
「この三国は私としてはね」
「特に印象的ですか」
「魔法そのものみたいよ」
「そこまでなんですね」
「ええ、妖怪の人達もだしね」
 旅の途中で出会ったこの人達もというのです。
「不思議よね」
「はい、確かに」
「だからね」
「グリンダさんも日本の事柄はですか」
「大浮きよ、和歌だってね」
 こちらもというのです。
「親しみたいわ」
「そうですか」
「心からね」
「じゃあ今度機会があったら」
 恵梨香はグリンダの言葉を受けて言いました、
「歌会を」
「和歌を詠うのね」
「それをします?」
「いいわね、雅ね」
「日本では天皇陛下が主催されたりします」
 日本の国家元首であられるこの方がというのです。
「それで詠われるんです」
「天皇陛下ってオズマ姫もお会いしたいっていう」
 木挽の馬はここで言いました。
「あの二千六百年以上続いている」
「そう、あのお家の方よ」
「そうだよね」
「オズマ姫もお会いしたいのね」
「機会があればって言ってるよ」
 木挽きの馬は恵梨香に答えました。
「あの人もね」
「そうなのね」
「何しろ二千六百年前ってオズの国もなかったんだよ」
「この大陸に国がなかったのね」
「一体どんな時代だったのか」
 それこそというのです。
「わかっていないから」
「そうなの」
「というか二千六百年って」
 それだけの歳月はといいますと。
「気が遠くなるよ」
「その間皇室はね」
「あったんだね」
「そう言われているわ」
「二千六百年、凄いね」
 木挽きの馬は唸る様に言いました。
「つくづく」
「実はそんなにないって言われてもいるわ」
 恵梨香はこのお話もしました。
「日本の皇室の歴史は」
「二千六百年もないんだ」
「ええ、ただね」
 それでもとです、恵梨香はお話しました。
「少なくとも三世紀には皇室は存在していたから」
「じゃあ千八百年位かな」
「存在しているわ」
「それも凄いね」
「だから長い歴史を持っていることは事実よ」
「オズの国よりずっと長いことはだね」
「紛れもなくね」
 こう木挽きの馬にお話しました。
「そうなのよ」
「成程ね」
「オズマがお会いしたいと考えているのは本当よ」
 グリンダもお話しました。
「機会があればだけれど」
「そうなんですね」
「ドロシーと一緒にね」
「お会い出来たらいいですね」
 恵梨香は心から思いました。
「天皇陛下と」
「そうよね、日本の皇帝陛下ね」
「そうですね、英語にしたらそうなりますから」
 皇帝になるというのです。
「ですから」
「そうですね、では」
「機会があれば」
「その時はね」
 まさにというのです。
「お会いしてね」
「オズマ姫が皇居に行かれるんですね」
「若しくは天皇陛下がオズの国に来られるのよ」
「そうなるんですね」
「ええ、その時が来たらいいわね」
「そうですね」
 恵梨香はグリンダの言葉に心から頷きました、そのうえで皆と一緒に牧場にと戻っていきます。旅の終わりはもうすぐでした。








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