『オズの木挽きの馬』




                第九幕  紅と金の森

 一行は今度は山に入りました、ガラスの猫は山の中に入ると周りを見回しながらこんなことを言いました。
「何かこの山も日本風ね」
「そうだね」
 木挽きの馬はガラスの猫の言葉に頷きました。
「どうもね」
「そんな風ね」
「何か日本の山とか中国の山とかね」
「わかるわね」
「そうなってきたよ」
 ガラスの猫に答えました。
「僕達も」
「オズの国の山も色々になったわね」
「アメリカの山以外にも」
「日本や中国の山が出て来て」
「それでアマゾンがあったり」
「ジャングルもね」
「黒の森なんてのもあるし」
 そうしたものもというのです。
「色々あるね」
「黒の森はドイツね」
 ナターシャが言ってきました。
「あの国ね」
「そうだね、アメリカはドイツ系の人もいるし」 
 そのアメリカ人のジョージの言葉です。
「それで黒の森もあるんだね」
「アマゾンはブラジルだしね」
 今度はブラジル人のカルロスが言いました。
「アメリカにブラジルからの人がいるから」
「竹林もあったし」
 中国人の神宝はこちらをお話に出しました。
「アメリカに入った国の人の自然がオズの国にも反映されるんだね」
「ツンドラもあるしね」
 木挽きの馬はこちらも出しました。
「オズの国は本当に色々な自然があるよ」
「そうよね」 
 恵梨香が応えました。
「それぞれの国のね」
「そして生きもの達もね」
「いるわね」
「そうだよ、自然とね」
「そしてこの山は」
 恵梨香はここで、でした。
 前を見て微笑みました、そのうえで皆に言いました。
「とても素敵な山だわ」
「またいきなり言ったけれどどうしたの?」
 ガラスの猫が恵梨香に聞きました。
「これまた」
「いえ、前を見て」
「楓ね」
「ええ、奇麗よね」
「凄いわね、一面紅葉じゃない」
 ガラスの猫はその楓の林を見て言いました。
「楓の葉が」
「奇麗よね」
「そうね、本当に」
「しかも川を挟んでね」
 そうしてです。
「こちらは銀杏で」
「銀杏の葉の色も変わってるわね」
「金色にね」
「それも奇麗ね」
「そうよね、紅と金色で」
 恵梨香はうっとりとして言いました。
「とても奇麗よ」
「あれっ、ここには黄金の毛の羊を探す時に見たけれど」
 木挽きの馬はこう言いました。
「どっちも葉の色は緑だったよ」
「楓も銀杏も葉が変わるから」
「それでなんだ」
「今はね」
「この色なんだね」
「そうなったのよ」
 恵梨香は木挽きの馬に答えました。
「これがね」
「そうなんだね」
「日本じゃ秋になると」
 その時にというのです。
「楓や銀杏はね」
「こうした色になってだね」
「とても奇麗になって」
「それを観て楽しむんだね」
「そうなの」 
 まさにというのです。
「紅葉狩りとか言って」
「そうなんだね」
「あれっ、日本人は春にお花見するよね」
 モジャボロはここでこう言いました。
「オズの国でも桜が咲く場所に皆で行くし」
「はい、日本人は桜が好きですから」
 恵梨香はモジャボロににこりと笑って答えました。
「そうします」
「そうだよね」
「春になると絶対に」
「他には梅や桃も観るね」
「そうしたお花も好きなので」
 それでというのです。
「そうします」
「それから皐だね」 
 弟さんはこのお花を出しました。
「そうだね」
「そうです、あのお花も奇麗ですね、それと菫も」
「うん、そしてその後は」
 さらにというのです。
「紫陽花だね」
「お花の色がどんどん変わって奇麗ですね」
「桃色、青、紫と」
「雨に濡れたあのお花も好きで」 
 それでというのです。
「皆観て楽しみます、あと菖蒲や百合も」
「それで次は朝顔や向日葵を観るね」
 モジャボロがまた言ってきました。
「そうだね」
「夏次はそうですね」
「そうしたお花が好きだね」
「そうです」
 恵梨香はここでも笑顔で言いました。
「オズの国でも」
「そしてだね」
「薔薇も観て」
 そうしてというのです。
「お花ではないですが」
「楓や銀杏をだね」
「こうして観ます」
「オズの国では季節はなくて」
 グリンダはこのことから言いました。
「それぞれのお花がそれぞれの地域で咲いたりするわ」
「春や夏に限らずですね」
「ええ、例えばこの山では楓や銀杏は今この色になるけれど」
 それでもというのです。
「マンチキンの赤城山では一ヶ月後にね」
「この色になるんですね」
「そうなるの」
「季節はないけれどですね」
「その時期によってね」
「なるんですね」
「そうなの」
 こう恵梨香にお話します。
「それでこの山に今来たから」
「この色の楓や銀杏をですね」
「観られるのよ」
「そういうことですね」
「そうよ、ではね」
「これからですね」
「観ていきましょう」
「わかりました」
 恵梨香はグリンダのその言葉に頷いてでした。
 皆と一緒に楓と銀杏を観ていきます、楓と銀杏は小川そしてその傍にある黄色い煉瓦の道の左右にあります。
 その二色の世界の中を歩きつつ木挽きの馬は言いました。
「赤というか紅でね」
「余計にいいわよね」
「うん、そして黄色というよりは」
 木挽きの馬は恵梨香に応えてさらに言いました。
「金色でね」
「いいわよね」
「楓も銀杏も」
 そのどちらもというのです。
「凄くね」
「奇麗よね」
「そうよね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「今歩いていてとても幸せだよ」
「奇麗なものを観られて」
「お花見もいいけれど」
「紅葉狩りもいいわね」
「うん、しかも小川にその楓と銀杏の葉が流れていて」
 木挽きの馬はそちらも観ました。
「こちらもいいね」
「銀色に流れる小川の上をね」
「紅と金色があって」
 それでというのです。
「まるで絵みたいだよ」
「これを和歌に詠っていたの」
「そうだったんだね」
「和歌のことは知ってるわよね、木挽きの馬も」
「うん、日本の詩の一つでね」
「それに詠ってもいたのよ」
 そうだったというのです。
「昔の日本の人達は」
「美的感覚がいいわね」
「確かにね」
「桜もいいけれど」
 ガラスの猫も今の自分達の周りの景色を観ながら言いました。
「楓や銀杏もね」
「素敵でしょ」
「私達は運がいいわね」
「今こうしたものを観られて」
「本当にね、確かにこれは和歌の場面ね」
 ガラスの猫はこうも言いました。
「とても素敵だわ」
「私もそう思うわ」
「そうよね、心の栄養にもなるわ」
「貴女と木挽きの馬は食べないけれど」
「栄養は必要なのよ」
「心の栄養がね」
「心の栄養がないと」 
 それこそというのです。
「誰もが動けなくなるわ」
「心が動けなくなるとね」
「身体もでしょ」
「ええ、もう心が折れたりしたらっていうわね」
「もうそれでね」
 幾ら身体がよくてもです。
「動けなくなるでしょ」
「それと同じね」
「そう、だからね」
「心の栄養は必要で」
「食べる必要がなくても」
 それでもというのです。
「それでもね」
「心の栄養は必要で」
「それでね」
 だからだというのです。
「私も木挽きの馬もよ」
「心の栄養は捕球しているのね」
「そうしているのよ」
「そうなんだ、だから僕もね」
 木挽きの馬も言ってきました。
「今楽しんでね」
「心の栄養を摂っているのね」
「そうなんだ」
「そういうことね、それじゃあね」
「今は楽しむよ」
 紅葉狩りをと言うのです、こうお話してでした。
 皆は紅と黄金の世界を歩いていってそうしてでした、目の前に日本風の茶室を観ました。その茶室を観て木挽きの馬は言いました。
「あの茶室だけれど」
「誰かいるの?」
「僕が行き来で観た時はいなかったよ」
 黄金の羊を探したその時にです。
「誰もね」
「そうなのね」
「けれど随分奇麗だったし」
「今も奇麗ね」
「普段は誰かいるのかな」
 こう恵梨香に言いました。
「やっぱり」
「お手入れしていないと奇麗にならないし」
「そう考えるとね」
「あの茶室もね」
「誰かがいるのかな」
「そうじゃないかしら」
「誰か出て来たわ」
 グリンダは茶室を観て皆に言いました。
「お坊さんね」
「あのお坊さんは」
 恵梨香はそのお坊さんを観ました、日本の僧兵さんの服を着ていて随分と身体の大きなお坊さんでした。
 そのお坊さんを観てです、恵梨香は皆に言いました。
「三好清海入道さんかしら」
「あの十勇士の一人の」
「佐助さんや小助さんと同じく」
「その人なんだ」
「あの人が」
「ええ、お坊さんであれだけ大きいとなると」
 そうした人はというのです。
「その人しか思わないわ」
「そう言われるとそうだね」
「弁慶さんも僧兵だけれどあの人は頭巾被ってるし」
「あの人は頭巾被ってないし」
「弁慶さんの薙刀も持っていないし」
「その代わりに金棒持ってるから」
 物凄く大きな鬼が持つみたいな鉄の金棒を持っています。
「多分ね」
「ははは、如何にも」
 そのお坊さんも大きな声で笑って言ってきました。
「わしは三好清海入道だ」
「やっぱりそうですか」
「今はここで修業しておってな」
 それでというのです。
「おる訳だ」
「そうなんですね」
「うむ、今はわしと佐助と小助が修行に出ていて」
 清海さんは恵梨香に応えてお話しました。
「残る七人は殿と共に屋敷におられる」
「大助さんもですね」
「大助様は旅に出ておられる」
「そうなんですか」
「見分を広められる為にな」
「オズの国中をですか」
「そうされておられる」
 こう恵梨香達にお話するのでした。
「あの方も立派な方であられてな」
「清海さん達にとっては若殿ですね」
「左様、そうお呼びすることもある」
 若殿と、いうのです。
「我等はな」
「そうですか」
「いや、修行はいいものじゃ」
 清海さんは明るい笑顔でこうも言いました。
「実にな」
「お好きなんですね、修行が」
「修行すればするだけ強くなるからな」
「だからですね」
「身体だけでなく心もな」
 その両方がというのです。
「好きでじゃ」
「それで、ですね」
「殿のお傍におる時もな」
「修行をされていますか」
「うむ」
 そうだというのです。
「わし等はな」
「ううん、何かね」
 木挽きの馬は清海さんのお言葉を聞いて恵梨香に言いました。
「皆明るくて気さくで器が大きくて」
「いい人達よね」
「優しくてね」
「だってこの人達はヒーローだから」
「日本の」
「だからね」
 そうした人達だからだというのです。
「どの人もね」
「いい人なんだね」
「ずっと幸村さんと一緒にいて」
「活躍してきたんだね」
「そうなの、困っている人や弱い人はいつも助けて」
「義を見てせざるはと言うではないか」
 清海さんが言ってきました。
「そうした者を助けねばだ」
「いけないですか」
「だからな」
 それ故にというのです。
「我等はにお仕えした時から殿にそう言われていてな」
「そうされているんですね」
「そしてもっと言えばな」
 清海さんはさらに言いました。
「皆殿にお仕えする前からな」
「そうしたお考えですか」
「外の世界でもな」
「そうなんですね」
「才蔵もそうじゃ」
「十勇士で一番クールな人ですね」
「あれで殿への忠義は絶対でな」
 そうしてというのです。
「困っている者がおればな」
「助けられるんですね」
「必ずそうする」
「そうした方ですか」
「左様、だから我等十勇士は今も共におる」
 オズの国でもというのです。
「殿にお仕えしてな」
「そうなんですね」
「外の世界では生まれた時と場所は違ったが」
 それでもというのです。
「主従十一人死ぬ時と場所は同じとな」
「約束されたんですね」
「その様に誓い合った」
「そこまで強い絆なんですね」
「左様、主従であり義兄弟であり友である」
「そうした間柄ですか」
「殿と我等はな」
 恵梨香に笑顔でお話します。
「そうであるからな」
「決してですね」
「離れぬし」
 それにというのです。
「殿のお言葉もな」
「絶対ですね」
「そうじゃ、そしてそれはな」
「幸村さんとお会いする前からで」
「困った者は助ける」
 絶対にと言うのでした。
「わし等はな」
「そうなんですね」
「うむ、ただな」
「ただ?」
「わしはつい考えずに行動して」
 そうしてというのです。
「厄介なことになる」
「そうなんですか」
「そこを伊佐に窘められることもな」
「あるんですね」
「結構な」
 こう恵梨香にお話しました。
「わしは」
「そうですか」
「佐助もそうであるし」
 この人もというのです。
「それでな」
「考えないで、ですか」
「ついついな」
 苦笑いして言うのでした。
「それでじゃ」
「何からしいですね」
「わし等らしいか」
「はい」
 こう清海さんに言う恵梨香でした。
「聞きますと」
「そうであるか」
「清海さんはそうした方で」
 それでというのです。
「十勇士のムードメーカーですよね」
「佐助と一緒でか」
「才蔵さんがクールで伊佐さんが嗜めて」
「そうしてであるか」
「海野六郎さんはまとめ役で」
「左様、六郎はもう十勇士のリーダーだな」
 この人はそうなるというのです。
「まさに」
「そうしたところですね」
「重蔵が知恵袋でな」
「他の方もそれぞれポジションがありますね」
「十人それぞれでな」
「それで清海さんは」
「佐助と並んで、であるか」
 清海さんは恵梨香に笑って応えました。
「十勇士のムードメーカーか」
「そうだと思いますので」
 それでというのです。
「それでいいかと」
「そういえばいつも考えなしに動くとな」
「佐助さんが一緒ですね」
「才蔵と伊佐に窘められてな」
 そうしてというのです。
「海野の方の六郎がまとめてな」
「収まりますね」
「そこで殿が常にな」
「びしっとですね」
「見事なお考えを出され」
 清海さんは明るい笑顔でお話しました。
「我等はそれに従って動く」
「それが十勇士ですね」
「殿の言われることに間違いはない」
「もう常にですね」
「的確で理に適っておってしかも命や義理を忘れぬ」
「そうしたお考えを出されますね」
「殿は知恵者でもあられるからな」 
 幸村さんはというのです。
「その武芸も素晴らしくてな」
「幸村さんって厳しそうな人だね」
 木挽きの馬は清海さんのお話を聞いて言いました、知恵者でありしかもとてもお強いと聞いてそう思ったのです。
「どうも」
「そうよね、いつも修行ばかりしていて」
 ガラスの猫もこう思いました。
「やっぱり」
「そんなイメージあるね」
「どうしてもね」
「それもかなり」
「いやいや、殿程優しい方はおられぬぞ」
 清海さんは木挽きの馬達にすぐに返しました。
「これがな」
「そうなんだ」
「優しい人なの」
「わし等にも大助様にも決して怒られることなく」
 それでというのだ。
「常に穏やかに諭され声を荒くされることもな」
「ないんだ」
「いつも穏やかなんだ」
「常に水面の様に落ち着いておられる」
「そうした人なんだ」
「それが幸村さんなのね」
「戦場ではご自身が先頭に立たれ一騎当千の強さを発揮されるが」
 それでもというのです。
「それ以外の時はな」
「とても穏やかで優しい」
「そうした人なの」
「左様、あれだけの人格者もそうはおられぬ」
 こうも言うのでした。
「まことにな」
「ううん、強くて頭もよくて優しい」
「凄い人ね」
 木挽きの馬もガラスの猫もそのお話に思わず唸りました。
「そんな人が清海さん達の主君で」
「オズの国でも一緒にいるのね」
「何ていうかね」
「清海さん達はいい主をお持ちね」
「そうじゃ、わし等の殿はこれ以上はない方じゃ」
 清海さんはその通りだと笑って言いました。
「天下一の侍と言われた方であるからな」
「大坂の陣の活躍凄かったですよね」
 神宝が言ってきました。
「もう獅子奮迅で」
「あんな凄い活躍世界でもないです」
 ジョージも言います。
「お見事でした」
「私達日本に来てから幸村さん達のこと知りましたけれど」
 ナターシャの目は憧れるものを見ている目になっています。
「素晴らしいお働きでした」
「まさに天下一の侍でした」 
 カルロスもその通りだと言いました。
「幸村さんは」
「敗れはしたがのう」
 清海さんはこのことは残念だとです、お顔に出しました。ですがそれでもすぐにこう皆に言いました。
「右大臣様もお助けして皆薩摩に逃れられてな」
「よかったですね」
「全くだ」
 恵梨香に笑顔で答えました。
「それはよかった」
「そうですね、ところで右大臣様は」
「だから豊臣のな」
「秀頼さんですね」
「うむ、皆が言うお名前は諱じゃ」
 そのお名前だというのです。
「わし等の頃は絶対に使わなかった」
「そうでしたね」
「ちなみに殿は幸村と呼ばれるが」
「違うんですね」
「諱は実は信繁といわれる」
 このお名前だというのです。
「そして普通のお名前は源次郎という」
「幸村さんでなくて」
「そのお名前がな」
「普通に言われるお名前ですね」
「だから右大臣様もな」
 その人もというのです。
「わし等は豊臣秀頼様とお呼びしなかった」
「そうだったんですね」
「徳川殿もな」
「家康さんとはですか」
「とんでもない、幾ら敵であった方だが」
 それでもというのです。
「諱でお呼びすることは決してない」
「確か内大臣とか」
「大御所殿ともな」
「お呼びしていましたか」
「そうじゃ、そこはな」
「礼儀ですね」
「そういうことじゃ、わし等十勇士もな」
 清海さん達ご自身もというのです。
「お互いで諱で呼ばずな」
「お名前ですね」
「だから佐助と呼んでおる」
「猿飛佐助さんも」
「そうお呼びしている」
「そうなんですね」
「そうじゃ、だからな」
 それでというのです。
「わし等はな」
「幸村さんとはですね」
「お呼びせぬ、信繁様ともな」
「源次郎様ですか」
「そうお呼びすることになるが」
 それでもというのです。
「殿とな」
「その様にですね」
「お呼びしておる」
「そうですか」
「そこは覚えておいてくれ」
「わかりました」
「いや、しかしな」 
 清海さんはさらに言いました。
「わし等は今は戦とは無縁でな」
「修行を楽しまれて」
「遊びもな」
 こちらもというのです。
「楽しんでおるぞ」
「もう戦はしないで」
「そうじゃ、殿もな」
「修行と学問にですね」
「励まれ酒もな」
 こちらもというのです。
「楽しまれておる」
「平和になられたんですね」
「やはり泰平が一番じゃ」
 清海さんは笑ってこうも言いました。
「何といってもな」
「戦国の世よりもですね」
「その通りじゃ、だからわしも今はここでな」
「修行を楽しまれているんですね」
「瞑想もしてな」
「瞑想するんだ」
 木挽きの馬は清海さんのそのお言葉に少し驚いて言いました。
「清海さんも」
「うむ、そちらもするぞ」
「そうなんだ」
「意外か」
「清海さんって活発に見えるからね」
「実際にわしは身体を動かすのが好きだ」
「そうだよね」
 そうだと返す木挽きの馬でした。
「やっぱり」
「しかし瞑想もな」
「するんだ」
「座禅を組んでな」
「そうした修行もしているんだ」
「これがまたよい、気持ちいいぞ」
 座禅を組んでの瞑想はというのです。
「皆もここはしてみるか」
「この場でかな」
「近くに滝があってその傍の岩場でな」
 そこでというのです。
「するのじゃ、どうじゃ」
「ううん、座禅だね」
 モジャボロはそう聞いて興味深そうに言いました。
「これからだね」
「するんだね、何かね」
 弟さんも言います。
「神秘的でよさそうだね」
「そうだね」
「瞑想はいいものよ」
 グリンダはモジャボロ兄弟に微笑んでお話しました。
「だからね」
「それでなんだ」
「僕達もだね」
「しましょう、いい機会よ」
 こう二人に言ってです、グリンダは恵梨香達に言いました。
「皆で清海さんと一緒にしましょう」
「それじゃあ」
「今からですね」
「座禅を組んで」
「それで瞑想して」
「そのうえで、ですね」
「楽しみましょう」
 こう言ってでした、そのうえで。
 グリンダは木挽きの馬とガラスの猫にはこうお話しました。
「目を閉じて静かにじっとしているのよ」
「そうするのが瞑想なんだ」
「そうなのね」
「だからそれをしてね」
 それでというのです。
「楽しみましょう」
「ううん、そうしたことは」
 どうもとです、木挽きの馬はグリンダに答えました。
「僕達したことないけれど」
「普通の猫が寝てる時みたいにしたらいいのかしら」
 ガラスの猫はこう言いました。
「そうかしら」
「聞いてる限りだとそうだね」
「それじゃあね」
「では今から清海さんと一緒にしましょう」
 木挽きの馬とガラスの猫もしてみようとなったのを聞いてです、グリンダは清海さんに一緒にと答えてでした。
 そのうえで皆は清海さんと一緒に座禅を組みました、その座禅の後で恵梨香は不思議なお顔で言いました。
「何か思っていたのと」
「違うか」
「はい、雑念があって」
「肩を叩かれるな」
「棒で」
「ははは、それはない」 
 清海さんは笑顔でお話しました。
「それはな」
「そうですか」
「そもそも今は叩く者もおらんな」
「そうですね、それは」
「しかも普通に座禅をしているとな」
「瞑想しているとですね」
「そうして叩かれることはな」
 これはというのです。
「まずはない」
「そうなんですね」
「心を静かにしてな」
 その様にしてというのだ。
「何もなくす」
「そうすればよくて」
「それでじゃ」 
「叩かれることもなくて」
「静かにな」
 心をそうしてというのです。
「何も考えずにな」
「していればいいですか」
「うむ」
 まさにというのです。
「ただな」
「それが座禅なんですね」
「瞑想じゃ」
「そうですか」
「だから勧めたのじゃ、座禅には叩かれるイメージがあるが」
「それはですね」
「違う」
 そうだというのです。
「そこはわかってくれ、だからな」
「それで、ですね」
「またするといいぞ」
「座禅をですね」
「うむ、確かにわしはこうした性格じゃが」
 考えなく動く性格でもというのです。
「それでもじゃ」
「座禅もですね」
「するのじゃ」
「それがいいですね」
「左様、すっきりしてよいであろう」
「はい、本当に」
「だからわしは毎日この修行もしておる」
 座禅もというのです。
「そして瞑想に励んでおる」
「そうなんですね」
「そしてな」
「そして?」
「武芸の方もしておる」
 こちらの修行もというのです。
「全てな、ただ学問はな」
「そちらはですか」
「毎日しておるが」
 それでもというのです。
「どうも苦手じゃ」
「そうですか」
「書を読むことはな」
 このことは少し苦笑いで言いました。
「文字は読めるがな」
「オズの国の英語もですね」
「漢文も読めるし日本語もな」
 こちらもというのです。
「詠めるがな」
「学問はですか」
「どうも苦手でな」
 それでというのです。
「苦労しておる」
「そうですか」
「今もな、しかし殿も言われておるし」
 幸村さんがというのです。
「しっかりとな」
「学ばれていますか」
「そうしておる」
「そうですか」
「殿の言われることなら」
 それならというのです。
「必ず聞いてな」
「その様にされるんですね」
「それが十勇士だからな」
「学問も頑張っておられますか」
「そうしておる、ではお主達はこれからもか」
「黄金の羊のいる場所に行くよ」
 木挽きの馬が答えました。
「これからもね。あと少しだし」
「そうか、ではな」
 清海さんは木挽きの馬の返事を聞いて微笑んで言いました。
「これからの道中もな」
「そちらもだね」
「安らかにな」
「そうしてだね」
「進む様にな」
「そうしていくね」
「ではな」 
 清海さんは一行を笑顔で送り出してくれました、そうしてお互い手を振り合って再会を約束してでした。
 一行はまた旅に入りました、そこでです。
 恵梨香は木挽きの馬にこう尋ねました。
「貴方黄金の羊とお話したの?」
「うん、したよ」
 木挽きの馬は恵梨香に答えました。
「会ってね」
「じゃあどうして家出したのかも」
「聞いたよ」
「外に出たくてって聞いたけれど」
「それで充分外を見て満足したってね」
「言ってたの」
「けれど僕達が迎えに来るまでそこにいたいってね」
 そう言ってというのです。
「僕達を待っているんだ」
「そうなのね」
「そこから移ることしないってね」
「言ってるの」
「だから安心していいよ」
「私達はそこまで行けばいいのね」
「黄金の羊がいる場所までね、そしてね」
 木挽きの馬はさらにお話しました。
「彼と会って」
「牧場まで一緒に帰ればいいわね」
「レッド牧場までね」
「それでいいのね」
「うん、だからね」
 それでというのです。
「僕達の旅は今回も色々あったけれど」
「それでもなのね」
「あと少しで目的を果たせるよ」
「それはいいことね」
「だからね」
 恵梨香にこうも言います。
「これからね」
「黄金の羊がいる場所まで」
「行こうね、そこで彼はご飯を食べて」
 そうしてというのです。
「寝てね」
「過ごしているのね」
「楽しくね」
「知らないところに行って怖がったりしていないのね」
「そんな気配はなかったよ」
 木挽きの馬は恵梨香に答えました。
「全くね」
「それは何よりね」
「やっぱり怖がっていたらね」
「よくないわ」
「うん、楽しくやっているなら」
「それならね」
 恵梨香も笑顔で言いました。
「それに越したことはないわ」
「恵梨香の言う通りだよ」
 木挽きの馬のその通りだと答えました。
「待っていてくれるなら」
「楽しくね」
「その時もね」
「同じ待つなら」 
 それならというのです。
「もうね」
「楽しくね」
「そうであって」
「待っていて欲しいね」
「怖かったり心細かったり不安だったら」
 それならというのです。
「もうね」
「僕達も心配になるね」
「ええ、そうなるから」
 それでというのです。
「本当にね」
「心穏やかなら」
「それが第一よ」
「全くだね、じゃあこのままね」
「案内してくれるわね」
「そうさせてもらうよ」
 こう恵梨香に答えました。
「是非ね」
「それじゃあ」
「うん、それとね」
「それと?」
「今目の前を何か通ったね」
「天狗だったわね」
 恵梨香はすぐに答えました。
「そうだったわね」
「小さかったね」
「烏天狗よ」
 その天狗だというのです。
「あの天狗はね」
「小柄な人間位だったね」
 こう言ったのはモジャボロでした。
「大体」
「そうでしたね、天狗といっても大天狗がいまして」
「お顔の赤い天狗だね」
「そしてお鼻が高いです」
「そしてさっきの烏天狗だね」
「烏の頭をした」
 まさにその姿のというのです。
「天狗がいます」
「大天狗がリーダーで烏天狗が従者だね」
「そうなっています」
「さっきの天狗は烏天狗で」
「大天狗より小さいですが」
 それでもとです、恵梨香はモジャボロにお話しました。
「さっきの烏天狗は子供みたいですね」
「子供の天狗だね」
「そうした天狗もいまして」
「そうなんだね」
「それで天狗に剣術の稽古をつけてもらったのが」
 恵梨香はさらにお話しました。
「源義経さんなんです」
「ああ、あの人だね」
「あの人っていいますと」
「義経さんもオズの国にいるんだ」
「そうなんですか」
「弁慶さんと一緒にね」
 この人と、というのです。
「牛若丸さんとしてね」
「そうだったんですね」
「これもヒーローだからかな」
「そうですね、日本人にとってはヒーローです」
 実際にとです、恵梨香はモジャボロに答えました。
「幸村さん達と同じく」
「そうだよね」
「それで義経さんもですね」
「弁慶さんや狐さんや四天王の人達と一緒にね」
「今はオズの国におられるんですね」
「そうして楽しく過ごしているよ」
 そうしているというのです。
「毎日ね」
「それはいいことですね」
「あと織田信長さんもいるしね」
 木挽きの馬も言ってきました。
「物凄く立派な日本のお城に住んでいるよ」
「あの人もおられるのね」
「甘いものがお好きで明るくて優しい人だよ」
「あの人実は優しかったのよね」
「実はなんだ」
「結構色々言われている人なの」
 日本ではというのです。
「怖いとか魔王とかね」
「そんなこと全然ないよ」
「明るくて優しい人なのね」
「それで甘いものがね」
「好きなのね」
「お酒は飲まなくて」
 それでというのです。
「オズマ姫達と一緒に食べることもあるよ」
「そうなのね」
「日本の人達も沢山いるんだ」
 オズの国にはというのです。
「それで皆楽しく過ごしているよ」
「義経さんがそうされているなら嬉しいわ」
 恵梨香は木挽きの馬に微笑んで言いました。
「それならね」
「恵梨香としてもだね」
「ええ、とてもね」
「それはいいね、じゃあ今からね」
「黄金の羊のところにね」
「行こうね、あと少しだよ」
 木挽きの馬は恵梨香に言いつつ皆を先導していきます、そうして遂にその黄金の毛の羊のところに行くのでした。








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