『新オズのオジョ』




                第十一幕  中華街

 一行は遂に中華街に着きました、その中華街はどういった場所かといいますと。
 中国風の城壁の中にこれまた中国風のお家やお店、看板が並んでいてです。中国の服を着た人や行き交っています。
 その街中に入ってです、オジョは笑顔で言いました。
「遂に来たね」
「そうだね、思えばね」
 ボタンがオジョに応えます。
「僕も今回の旅では寝てもね」
「ああ、君もね」
「うん、寝ている間に何処か行くことがね」
 ボタンの不思議な特徴のこのことがというのです。
「起こっていないよ」
「そうだよね」
「それでね」
 そのうえでというのです。
「僕もね」
「こうしてだね」
「中華街に来ることが出来たよ」
「よかったね」
「ただこの中華街にも多分ね」
 ボタンはオジョにこうも言いました。
「来たことがあるよ」
「起きたら来ていたんだね」
「うん、そうだと思うよ」
「問題はあんたそのことを覚えていないことね」
 こう言ったのはビリーナでした。
「そうね」
「わかんなーーい」
 ボタンはビリーナのその言葉にこう返しました。
「覚えていないから」
「やっぱりそうよね」
「けれどいい場所だよね」
 覚えていなくてもその中を見て言うのでした。
「ここは」
「そのことは私も同意よ」
 ビリーナはボタンの今の言葉には素直に頷いて応えました。
「本当にね」
「そうだよね」
「賑やかで楽しい場所ね」
「色々なお店があって」
「文字ーーがーーです」
 チクタクは看板等のそれを見て言います。
「いいーーですーーね」
「漢字がだよね」
「はいーー神秘的ーーです」
 こう言うのでした。
「非常−−に」
「アルファベットとはまた違った趣があるわね」
 オズマもこう言います。
「確かに」
「そうですよね」
「漢字はね」
「僕もそう思います」
「ええ、あと私漢字読めるから」
「そうなんですか」
「そう、漢字読めるし」
 それにというのです。
「書くこともね」
「出来ますか」
「そうなの、というか皆言葉の意味わかるでしょ」
「あっ、確かに」
 オジョも他の皆もです、看板の文字がすらすらと読めます。アルファベットではないですがそれでもです。
「わかります」
「オズの国はお伽の国でしょ」
「だからですか」
「基本皆英語でやり取りしていてね」
「公用語もですね」
「英語だけれど」
 それでもというのです。
「他の文字もね」
「読めてですね」
「意味がわかってね」
 そしてというのです。
「書くこともね」
「出来るんですね」
「オズの国はね」
「お伽の国だから」
「魔法が国全体にかかっていてね」
 それでというのです。
「それも可能なのよ」
「そうですか」
「だからね」
 それでというのです。
「皆もわかるのよ」
「そうなんですね」
「それがしも普通に英語が読めて」
 関羽さんも言います、今は馬から下りて歩いています。
「書けますしな」
「私もです」
 玄奘さんもです。
「普通にです」
「英語の読み書きがですな」
「オズの国に入って何も学んでいなかったですが」
「出来ますな」
「普通に」
 まさにというのです。
「出来ています」
「左様でありますな」
「おいら文字学ぶのに結構努力したんですがね」
 孫悟空さんはこんなことを言いました。
「オズの国だとすぐです」
「もう自然とですよね」
 猪八戒さんも言います。
「読み書き出来ていますね」
「知らぬ筈の言葉だというのに」
 それがとです、沙悟浄さんも続きます。
「もう自然と」
「これって凄いことですよね」
 玉龍さんも言うことでした。
「本当に」
「オズの国の魔法は凄いですよね」
 ブラジル人のカルロスも言います。
「英語が自然に喋られるんですから」
「私達日本語覚えるのに苦労しました」
 ロシア人のナターシャは日本に来てからのことをお話します。
「何かと」
「それがすぐに喋られるなんて」
 その日本人の恵梨香も英語のことから言います。
「物凄い魔法ですね」
「僕は元々英語ですが」
 アメリカ人のジョージはそうです。
「ですが中国語もわかりますしね、今は」
「そういえばピラミッドでも象形文字ありましたね」
 神宝はこの時のことを思い出しています。
「僕達その文字も読めました」
「それもオズの国のいいところだから」
 どんな文字も読み書き出来て喋られることがです。
「皆今も漢字が読めるのよ」
「そういうことですね、しかし」
 オジョはここで言いました。
「何かです」
「何か?」
「はい、食べもののお店が凄く多くて」
 それでとです、オズマにお話します。
「そちらにです」
「行きたいのね」
「はい、どのお店に行くかですが」
「もうそれは行きたいお店に入って」
 そしてというのです。
「楽しみましょう」
「そうすればいいですね」
「ええ、じゃあね」
「これからですね」
「このお店に入りましょう」
 こう言ってでした、オズマは皆を丁度目に入ったお店に案内しました。お店の中は赤い中華風の模様がある絨毯が敷かれていて。
 やはり中国風の装飾のある壁に絨毯そして胡弓の音楽が奏でられていてです。一行はチャイナドレスにズボンという格好のウェイトレスさんに案内されて。
 丸い大きなテーブルに座りました、そこで色々なメニューを注文しますが孫悟空さんと猪八戒さんと沙悟浄さん特に猪八戒さんの注文したメニューは多くて。
 玄奘さんは笑ってこう言いました。
「八戒はこうでないと」
「駄目ですか」
「はい、やはり」
 こう言うのでした。
「らしいですね」
「やっぱりわしは食べることが好きですから」
「だからですね」
「注文させてもらいました」 
 多くの数のメニューをというのです。
「そうさせてもらいました」
「左様ですね」
「はい、ただ」
 それでもとです、猪八戒さんは関羽さんを見て言いました。
「関羽殿にはですよ」
「負けますか」
「いや、関羽殿が頼まれたメニューの種類は」
「やはり身体の大きさですね」
「それがありますね」
「どうもこの身体なので」
 関羽さんご自身も言います。
「食べなければ」
「しかもいつも身体を動かされていますな」
 沙悟浄さんが言います。
「だから尚更ですな」
「左様、食べなければ」
 そうしなければというのです、関羽さんも。
「力が出ませぬ」
「そうですな」
「それでこの度も」
「それだけをですな」
「頂きます」
 そうするというのです。
「是非」
「それでは」
「あとあっちのテーブルもですよ」
 孫悟空さんはお隣を見て言います。
「随分とです」
「あっ、そういえば」
 玉龍さんもそちらのテーブルを見ました。
「あちたもですね」
「随分とだろ」
「頼んでしかもですね」
「飲んで食ってるな」
「そうですね」
「そうだよな」
「というかあの人達は」
 玉龍さんは食べているその人達を見て言いました。
「魯智深さんに武松さんですよ」
「あっ、そういえばそうだな」
「梁山泊の人達も中華街に来ているのよ」
 オズマがこのことをお話しました。
「そう聞いていたから」
「それで、ですね」
「あの人達もいるのよ」
「このお店に」
「そうよ」
 大柄な濃いお鬚のお坊さんとこれまた大柄な行者さんを見つつ孫悟空さんにお話します。
「今ね」
「そうですか、ただおいら達はです」
「もう中華街に来ていたわね」
「気付きませんでした、ここにいることに」
「多分貴方達は昨日私達を迎えに来てたでしょ」
「その昨日にですね」
「梁山泊の人達が来たのよ」
 そうだったというのです。
「それでなのよ」
「おいら達は来ているのを知らなかったんですね」
「そうだと思うわ」
「そういうことですか」
「だからね」 
 それでというのです。
「後でね」
「食ったその後で」
「梁山泊の人達ともお会いしましょう」
「それじゃあ」
「あの、百八人の人達がですね」
 神宝はオズマに尋ねました。
「皆さんおられるんですね」
「ええ、オズの国にね」
「そうなんですね、皆さんが」
「オズの国にも梁山泊があって」
 それでというのです。
「そちらにね」
「そうですか」
「だからね」
「それで、ですね」
「一緒にね」
 こう言うのでした。
「後でお会いしましょう」
「それじゃあ」
「では今から食べましょう」
「わかりました」
「しかし皆色々頼んだわね」
 オズマはくすりと笑って言いました。
「麺類だけでも十種類あって点心なんかね」
「何十品ですね」
「物凄く頼んだわね」
「もうお店のメニュー全部頼んだ感じですね」
「これは凄いわね、じゃあね」
 それならというのです。
「楽しく食べましょう」
「それじゃあ」
「あちらではお酒飲んでますし」
 孫悟空さんは隣の席のお坊さんと行者さん、梁山泊の人達を見つつ言います。お二人共豪快にお肉とお酒を食べています」
「おいら達もです」
「精進酒ですね」
「それをですな」
「飲もうかと」
「はい、ではです」
 玄奘さんは孫悟空さんの言葉に猪八戒さんと沙悟浄さんが応えたのを見て言います。
「私も精進酒を」
「飲まれますか」
「そうします」
 こう玉龍さんに答えます。
「この度は」
「それじゃあ私も」
「皆で飲みましょう」
「そうしましょう」
「ではそれがしも」
 関羽さんも言います。
「お酒を」
「関羽さんは何を飲まれますか?」
「うむ、ライチ酒がよいか」
 こうオジョに答えます。
「この度は」
「ああ、あのお酒ですか」
「あのお酒もまた」
 まさにというのです。
「それがしは好きで」
「だからですね」
「この度はそれを飲もう」
「それでは」
 こうお話してでした。
 皆で楽しく食べて飲みはじめました、そしてです。
 その中でオジョは刀削麺を食べて言いました。
「この麺はまた」
「美味しいですよね」
「うん、こんな麺もあるんだね」
「中国でも独特の麺でして」 
 神宝もその麺を食べつつ言います。
「本当に刃物で生地を削ってです」
「茹でてだね」
「作る麺でして」
 それでというのです。
「こうした味なんです」
「そうなんだね」
「美味しいですよね」
「うん、不思議な麺だよ」
「それなんですが」
 神宝の方からも言ってきました。
「あと蛙料理も出ていますが」
「それがなんだ」
「皆さん普通に召し上がられていますね」
「オズの国では蛙食べるよ」
「そういえばそうですね」
「蛙の足をね」
 それをというのです。
「普通に食べているからね」
「だから蛙料理もですね」
「今もね」
「食べられるんですね」
「そうだよ」 
 蛙の唐揚げを皆で食べています。
「こうしてね」
「そうなんですね」
「うん、蛙も美味しいよね」
「実は日本ではあまり食べなくて」
 神宝が今いるこの国はといのです。
「少し残念に思っていました」
「蛙は美味しいわよ」
 オズマも言います。
「本当にね」
「そうですよね」
「鶏肉みたいな味でね」
「あっさりしていて」
「それでね」
 こう言うのでした。
「美味しいわね」
「そうですよね」
「私も好きよ」
 蛙料理はというのです。
「他のお料理もだけれど」
「それで、ですね」
「よく食べるわ」
「それはいいことですね」
「ではね」
「これからですね」
「食べていきましょう」
 こう言ってです、オズマは。
 自分も蛙を食べて他のものも食べました。皆本当に色々なお料理をお腹一杯になるまで楽しみました。
 それでお話が終わるとです。
 先程のお坊さんと行者さんが一行のところに来て挨拶をしてきました。
「オズマ姫こんにちは」
「他の人達も」
「魯智深といいますぞ」
「武松です」
「お二人とここでお会い出来たことは」
 神宝がにこりと挨拶するお二人を見て言います。
「凄いことですね」
「ははは、それはどうしてだ?」
「だって関羽様にお会い出来て」
 それでというのです。
「玄奘様と孫悟空さん達にお会い出来て」
「拙僧達にもか」
「お会い出来たんですから」
 こう言うのでした。
「本当に凄いですよ」
「皆さんもここに来られてるんですね」
 オジョもお二人に尋ねます。
「梁山泊の百八人の方々が」
「うむ、今は飯店に泊まっている」
「飯店、ホテルですね」
「そちらにな」
「そうなんですね」
「それで中華街で遊んでいるが」
「我等二人はここで飲み食いをしていたのだよ」
 武松さんも言ってきました。
「こうして」
「そうですか」
「楽しくな」
「何か物凄く飲んで食べていましたね」
「わし等では普通だが」
「そうなんですか」
「何しろこの身体でな」
 見れば本当に武松さんも魯智深さんも大きなお身体です、しかも筋骨隆々の逞しい身体つきをしています。
「日々武芸に励んでいると」
「お腹が減ってですか」
「それでだよ」
「飲んで食べておられますか」
「そうなのだよ」
「しかし拙僧達も関羽殿には負ける」
 魯智深さんはこう言いました。
「とても」
「食べることは」
「勿論武芸も。そして身体の大きさも」
「関羽殿は別格だ」
 また武松さんが言いました。
「まことに」
「やはり関羽殿程の武の持ち主になると」
「そうそうな」
「おられぬな」
「全くだ」
 二人でこうお話します。
「関羽殿よりお強いとなると項羽殿になるか」
「あの御仁は覇王だからな」
「また違う」
「本当にな」
 二人でお話します。
「まさに戦の神だ」
「蚩尤殿にも匹敵する」
「こと強さにおいてはな」
「あの方は違う」
「うむ、それがしも項羽殿には勝てぬ」
 関羽さんもこう言いました。
「武勇の桁が違う」
「関羽さんですらそう言われるなんて」
 オジョも驚いています。
「項羽さんは凄いんですね」
「おいらでも勝ったことがないんだぜ」
 孫悟空さんもオジョに言ってきました。
「項羽殿にはな」
「孫悟空さんもですか」
「しかも八戒と悟浄が一緒でな」
「あんな強い人はいないよ」
「全くだ」
 猪八戒さんも沙悟浄さんも言います。
「戦の神だ、まさに」
「武勇では最強なんだよ」
「我等三人が束になって敵わぬなぞ」
「項羽殿だけだぜ」
「天界を一人で大暴れして二郎真君や??太子も退けたおいらでもな」
 また言う孫悟空さんでした。
「項羽殿にはてんで歯が立たないんだよ」
「そこまで強いって」
 オジョは唖然となりました。
「項羽さんって凄いんですね」
「中国の歴史で最強ですよ」
 神宝がそのオジョに真剣なお顔でお話しました。
「そう言ってもいい位です」
「最強なんだ」
「本当に力は山を抜き気は世を覆うで」
「関羽さんや孫悟空さんよりもなんだ」
「歴史ではとんでもなく強くて」
「誰も勝てなかったんだ」
「漢の高祖劉邦が多くの人材を使ってやっと倒したんですよ」
 そうだったというのです。
「項羽さん一人を」
「だから神様になってもなんだ」
「お強いこともです」
「関羽さんや孫悟空さんよりもだね」
「道理です」
「当然わしも赤子の様だ」
 魯智深さんが言ってきました。
「勝負にならない」
「梁山泊の者が何人かかっても勝負にならない」
 武松さんも言います。
「全くな」
「だからオズの国の中国の神様でもですか」
「最強だ」
 文句なしという口調での言葉でした。
「勝てるものではない」
「聞けば聞く程とんでもないことですね」
「はい、私もあそこまで強い方はです」
 玄奘さんも言います。
「知りません」
「そうなんですね」
「後は北欧の方のトール神やエジプトのセト神位でしょうか」
「あの方々と同じ位なんて」
「そこまでお強いのです」
「本当に凄いんですね」
「トール様って言ったらね」 
 ボタンが言いました。
「もう怪力で有名な神様だよね」
「怪力にね」
 それに加えてとです、オジョはボタンにお話しました。
「ミョッルニルでね」
「雷の力を持っているハンマーだね」
「とんでもない強さを持っているよ」
「そんな神様だよね」
「あと女神ならギリシアのアテナ女神も強いわよ」
 ビリーナはこの女神様の名前を出しました。
「あの人もね」
「そのアテナ女神とも互角ですよ」 
 玉龍さんもお話します。
「凄いですよね」
「神様の中でも無茶苦茶強いことがわかりました」
 オジョは玉龍さんにも答えました。
「そのことが」
「関羽さん並に大きいですしね」
「だから怪力もあるんですね」
「それで武芸も秀でているんですよ」
「そうなんですね」
「ではーーお話のーー通りーーに」
 チクタクも言います。
「山ーーすらーーも」
「出来るのよ、これが」
 オズマがそのチクタクにお話します。
「あの人は」
「そうなのーーですーーか」
「山を動かせるのよ」
 お一人でというのです。
「とんでもない力でね」
「まさにーートール神のーー様ですーーね」
「そうでしょ」
「幸いこの世界では戦はないので普段は静かだが」
 また関羽さんがお話します。
「あの強さは物凄い」
「また悪い連中が来てもあの人一人で退けられるぜ」
 孫悟空さんも言います。
「億が一おいら達でも苦戦する相手でもな」
「かつてのノーム王とかですね」
 ジョージはすぐにこの人を思い出しました。
「妖魔とか獣とか引き込んできましたし」
「ああした人が外から来たとしても」
 こう言ったのは恵梨香です。
「今のオズの国には悪人は来れなくても」
「若しかしたらってありますから」
 ナターシャは冷静な声で言いました。
「その時はですね」
「項羽さんだけで大丈夫」
 カルロスも言います。
「そうなんですね」
「ああ、絶対にな」
 孫悟空さんは言い切りました。
「出来るぜ」
「確かにあの人ならそうですね」
 項羽さんをよく知る神宝はそのお話を聞いただけで頷いています。
「項羽さんなら」
「そうだろ」
「坊やはそう思うな」
「はい」
 魯智深さんと武松さんに答えます。
「あの人とも何時かお会いしたいですし」
「まあそこは機会があればだな」
 魯智深さんは神宝に笑顔で答えました。
「本当に」
「そうですね」
「ああ、じゃあ後でまた会おうな」 
 最後にこう言ってでした、魯智深さんと武松さんはお二人の席に戻って飲み食いを再開してその後で、でした。 
 お店を後にしました、そしてです。
 オズマ達も飲んで食べることを再開して中華料理とお茶それにお酒を満喫しました。その後で外に出ますと。
 爆竹が鳴らされて何人もの人達が動かしている龍が舞っていて京劇が上演されていて色々な催しが行われていました、皆でその中を巡って楽しんでいますと。
 皆の前に昔の中国の服それもかなり立派なものを着た大人の男にしては小さくアジア系で色黒の人が出てきました、そうしてオズマに一礼して言ってきました。
「お久しぶりです」
「こちらこそ」
 オズマはその人ににこりと笑って応えました。
「お元気そうで何よりだわ」
「この通りです」
「お元気ね」
「皆そうです」
「さっきお店で魯智深さんと武松さんにお会いしたわ」
「左様ですか」
「ええ、お二人もね」
 その人に笑顔でお話します。
「お元気だったわ」
「それは何よりです」
「本当にそうよね」
「関羽殿や玄奘殿達までご一緒で」
 その人は神宝達も見て言います。
「この子達が噂の」
「オズの名誉市民の子達よ」
「左様ですね」
「ええ、宜しくね」
「はじめまして」
 その人は神宝達にも笑顔で挨拶をしました。
「梁山泊の首領の第一位、宋江だよ」
「貴方が宋江さんですか」
「そう、今はここにいてね」
 このオズの国にとです、宋江さんは神宝に笑顔でお話しました。
「そうしてだよ」
「暮らしておられますね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「楽しくね」
「そうなんですね」
「こちらの梁山泊では皆でそしてオズの国の皆と遊んで」
 そうしてというのです。
「そしてね」
「そのうえで、ですね」
「暮らしているよ、毎日ね」
「そうされていますか」
「梁山泊はもう全体がテーマパークになっていて」
 それでというのです。
「とても賑やかだからね」
「だからですね」
「君達も来てくれたら」
 その時はというのです。
「楽しくね」
「過ごせますね」
「だから何時でもいいからね」
「来ていいんですね」
「そうだよ」
「まあ多少やんちゃものがいますが」
 畏まった服装と物腰の人が出て来ました、服は見れば中国の昔の学者さんのものでとても理知的な顔立ちです。
「皆気のいい者達です」
「やんちゃって誰ですか」
「お前さんだよ」
 物凄く大きくて真っ黒のお肌の人に背が高くてすらりとした人が言います、色の黒い人は両手に斧を持っていて白い昔の中国の服ですらりとした人は昔の中国の武将の身なりです。
「それは」
「おいらですか」
「お前さんが梁山泊で一番そうだろ」
「やんちゃですかね」
「そうだよ、何も考えずに動いてな」
 そうしてというのです。
「騒動ばかり起こしただろ」
「それは外の世界でのことですよ」
「今もすぐに相撲だ水泳だって言うだろ」
「身体動かすの大好きですからね」
「それでもだよ」
 その振る舞いがというのです。
「お前さんはやんちゃなんだよ」
「こちらの色の黒い男は李鉄牛といいましてもう一人は戴宗といいます」
 理知的なお顔の人が五人にお話します。
「共に梁山泊の豪傑でして」
「先生もですね」
「はい、呉用といいます」 
 神宝ににこりと笑って答えました。
「梁山泊の学校の校長先生をしています」
「そうですね」
「以後宜しくです」
「こちらこそです、見れば皆さんおられますね」
 神宝は呉用さんとお話してから宋江さんの後ろを見て言いました、見ればそこには魯智深さんや武松さんもいます。
「梁山泊の方々が」
「あれっ、関羽さんそっくりの人がいるよ」
 ボタンは梁山泊の豪傑の中で一人そんな人を見付けました。
「何かね」
「確かにそっくりね」
 ビリーナもその人を見て言います。
「あの人は」
「そうだよね」
「まるで鏡に映したみたいよ」
「関勝といいます」
 その人も言ってきました、声もそっくりです。
「関羽殿の子孫です」
「そうだったんだ」
「はい、それで外見も声もです」
「そっくりなんだね」
「武器も同じです」
 そちらもというのです。
「青龍偃月刀です」
「本当に同じだね」
「子孫ですから、ただ強さは」
 そちらはというと。
「ご先祖様がです」
「強いんだ」
「左様です」
「他にも色々な人がいるね」
 オジョはその百八人の人を見て言いました。
「凄いね」
「ははは、百八人いるからね」
 ここで背中に九匹の龍の刺青がある若い整った顔立ちの男の人が言ってきました。下はズボンで手には棒があります。
「色々な者がいるものだよ」
「そうなんですね」
「わしにしても」
「貴方も豪傑ですね」
「史進というよ」
 オジョに自分から名乗りました。
「その名前は」
「史進さんですか」
「以後宜しくね」
「はい、こちらこそ」
「今日はこの中華街に呼ばれてです」
 宋江さんがまた言ってきました。
「こうしてです」
「百八人で、ですね」
「遊んでいます」
「そうなんですね」
「いや、やはり遊ぶことは最高です」
 にこりと笑っての言葉でした。
「オズの国に来て悪いことはありませんな」
「そうですか」
「飲んで食べて遊んで」
 そしてというのです。
「楽しんでいます、催しもです」
「そちらもですね」
「楽しんでいます、私達も催しをして」 
 見るだけでなくというのです。
「楽しんでいます」
「そうですか」
「はい、ですからか」
 それでというのです。
「満喫しています、そして君達も」
「楽しめばいいですね」
「そうしましょう、共に」
「それじゃあ」
「京劇を観ようぜ」
 ここで孫悟空さんが言ってきました。
「これから」
「京劇ね」
「そうしましょうや」  
 孫悟空さんはオズマに笑顔で言いました。
「これから。後でおいらも舞台に出ますし」
「若しかしてその舞台は」
「西遊記ですよ」
 まさにそれだというのです。
「それに主役で出ます」
「まさに貴方そのものね」
「はい、八戒と悟浄も出ます」
「私も出ます」
 玄奘さんもでした。
「悟空達と共に」
「まさか本人さん達が舞台に出るなんて」
「オズの国だぜ、ここは」
 まさかと言う神宝にです、孫悟空さんは笑顔で言いました。
「だからな」
「こうしたこともですね」
「普通にあるんだよ」
 そうだというのです。
「本人が出ることもな」
「そうなんですね」
「だからな」
 それでというのです。
「おいら達の舞台も観てくれよ」
「わかりました」
 神宝は笑顔で応えました。
「そうさせてもらいます」
「それじゃあな」
「京劇もあってですね」
「他にも色々とやってるだろ」
「出店も多いですし」
「露店でもな」
 そこでもというのです。
「色々なものが売ってるな」
「そうですね」
「そっちでも楽しんでくれよ」
「そうさせてもらいます」
「菓子を買ってもいいしな」
「お菓子ですか」
「それも買ってな」
 そうしてというのです。
「楽しんでくれよ」
「そうさせてもらいます」
「それとな」
 さらに言う孫悟空さんでした。
「演舞もやるしな」
「そちらもですね」
「おいら達はそっちもやるしな」 
 こうお話するのでした。
「楽しみにしておいてくれよ」
「わかりました」
「そういうことでな」
 こうお話してです、皆は京劇も観ました。すると実際に孫悟空さん達も舞台に出てそのうえでなのでした。
 それぞれご自身の役を演じます、ただです。
 皆お面を被ってお化粧をしています、オジョはその舞台を観て言いました。
「あれっ、ご本人なのに」
「それでもですね」
「お面被ったりしているんだ」
「京劇の決まりの一つでして」
「それでなんだ」
「それぞれの役に決まったお面がありまして」
 それでというのです。
「被って演じる決まりになってます」
「そうなんだね」
「それでお化粧もです」
 こちらもというのです。
「する様にです」
「決まっているんだね」
「それぞれの役で」
「そうなんだね」
「ですから孫悟空さんは孫悟空さんで」 
 その役でというのです。
「お面を被っておられるんです」
「そうなんだ」
「はい」
「成程ね」
「それと演技ですが」
 神宝は孫悟空さんのそれを観つつオジョにお話します。
「流石ご本人だけあって」
「自然だね」
「そうですね」
「もうそれこそね」
「何も問題がない感じで」
「違和感ないね」
「演技力といいますか」
 そう言うかと、というのです。
「ご本人なので」
「何も不自然なところがないね」
「今は二郎真君との闘いですが」
 丁度その場面です、孫悟空さんご自身が二郎真君を演じているその人と舞台で一騎打ちを演じていますが。
 そのお芝居を観てそうしてオジョにお話します。
「ありのままですね」
「何一つ違和感がなくてね」
「まさにその場面を観ている」
「そうですね」
「そうだね、凄いものを観ているよ」
 ボタンも言います。
「僕達は」
「オズの国ならではだよ」
 神宝はボタンにも言いました。
「ご本人が演じられるなんてね」
「外の世界にはないんだね」
「孫悟空さんが孫悟空さんを演じるなんてね」 
 勿論他の人達もです。
「ないよ」
「それがしも自分を演じる舞台に出る」
 ここで関羽さんも言いました。
「オズの国では」
「そうなんですね」
「左様」
 まさにというのです。
「孫悟空殿と同じだ」
「そういえば関羽様も」
「京劇等に出ているな」
「そうですね」
「だからな」
 それでというのです。
「出ることもある」
「そういうことですね」
「外の世界では舞台に出ることはなかったが」
 それでもといのです。
「オズの国では違ってな」
「舞台は楽しいですか」
「非常にな」
「外の世界ではですね」
「舞台に出るなぞな」 
 とてもというのです。
「なかったが」
「それがですね」
「違ってな、娯楽もかなりあって」
 それでというのです。
「それ等も楽しんでいる」
「オズの国では」
「武芸や学問の合間に」
「じゃあオズの国で楽しくないことは」
「一切ない」
 オジョに満面の笑顔で答えました。
「それこそだ」
「そうなんですね」
「楽しくない経験をしたことは」
「オズの国ではですね」
「記憶にない」
「それは何よりですね」
「翼徳なぞそれでだ」
 関羽さんから見て義弟さんであるこの人はといいますと。
「毎日笑顔でいる」
「しかもお酒もですね」
「飲んでな、まあ飲み過ぎていつも義兄上達に叱られているにしても」
 それでもというのです。
「楽しんでいることは事実だ」
「だからいいことですね」
「実にな、ではな」
「それではですね」
「京劇も楽しもう」
「そうされますね」
「それがしもそれがし自身の役で出るしな」
 孫悟空さん達の様にというのです。
「是非共」
「それでは」
「うむ、しかし青龍偃月刀にしろ如意棒にしろ」
 関羽さんはご自身だけでなく孫悟空さんの武器のお話もしました。
「本物は自分自身しか使えないな」
「それはそうですね」
 オジョもそうだと頷きます。
「やっぱり」
「どれもあまりにも重くてな」
「似せたものならともかく」
「形はな、しかし本物はな」
 まさにというのです。
「どうしてもな」
「ご本人さん達しか使えないですね」
「うむ、そしてその本物を手にな」
「劇に出られますね」
「孫悟空殿達の様に」 
 関羽さんは笑顔で言いました、そうしてです。
 三国志が題材の作品でご自身の役で登場されました、ご本人登場とあって舞台はこれ以上はないまでに盛り上がりました。








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