『新オズのつぎはぎ娘』




                第九幕  大蛇がいて

 一行はお菓子の国への道を進んでいきます、その中でジョージはオズの国にいる人達のことを思うのでした。
「ベーブ=ルース、エルビス=プレスリー、マイケル=ジャクソンに」
「ポール=バニャンにジョニー=アップルシードもよね」
「皆会いたいね」
 こうつぎはぎ娘に答えます。
「本当に」
「ジョン=ヘンリーさんもいるわよ」
 ドロシーはもう一人紹介しました。
「この人もね」
「あのアフリカ系の」
「そう、物凄い働き者のね」
「あの人もですか」
「船にはシャインさんもいるし」
 この人もというのです。
「皆オズの国におられるわ」
「そうなんですね」
「あと村から出て来ないけれどジェロニモさんも」
 ドロシーはこの人のお名前も出しました。
「おられるわ」
「ネイティブのあの人もですか」
「そうなのよ」
「アメリカの色々な人もいるんですね」
「オズの国にはね」
「フォスターさんはいますか?」
 ジョージはこの人についても尋ねました。
「エジソンさんも」
「どちらの人達もおられるわ」
「そうですか」
「リンドバーグさんもね」
「アメリカの子供達に夢を与えた人達は皆オズの国にいるんだよ」
 かかしもジョージにお話します。
「アメリカが反映される国だからね」
「だからボームさんも来てくれたんだよ」
 樵もお話します。
「この国にね」
「エジソンさんなんか凄いよね」
 こう言ったのはジャックでした。
「今もどんどん発明しているから」
「リンドバーグさんはお空を飛んでるね」
 木挽きの馬はこの人のお話をしました。
「ライト兄弟と一緒に」
「ベーブ=ルースさんのホームランときたら」
 臆病ライオンの口調は惚れ惚れとしたものでした。
「もう空まで届く位だね」
「僕はまたプレスリーさんの歌を聴きたいよ」
 腹ペコタイガーはこの人のことを思うのでした。
「是非ね」
「あたしプレスリーさんもマイケルさんも大好きよ」
 つぎはぎ娘は音楽のお話に乗りました。
「参考にしてるし」
「へえ、そうだったんだ」
「あの人たちの踊りを参考していたんだ」
 ピーターはつぎはぎ娘の言葉を聞いて言いました。
「そういえばそんなダンスもあるね」
「君のダンスにはね」
「そうでしょ、あの人達の歌もよく歌うし」 
 つぎはぎ娘はピーターに答えました。
「それでなのよ」
「ダンスもだね」
「踊るんだね」
「プレスリーさんのダンスをして」
 そしてというのです。
「マイケルさんのダンスもね」
「好きなんだね」
「それで踊るんだね」
「そうしてるわ、ちなみにあたし明るい音楽専門だけれど」
「それでもなんだ」
「ちょっと違うところもあるんだ」
「ラブミーテンダーは好きで」
 それでというのです。
「よく歌うわ」
「ああ、あの曲はしっとりとしてるね」
 トトはその曲について述べました。
「確かに」
「そうでしょ、けれどね」
「あの曲は歌うんだ」
「そうしているわ」
「そうなんだね」
「あんな曲があるなんて」
 つぎはぎ娘はうっとりとした口調で言いました。
「本当に素敵だわ」
「そうだね、あの曲はいい曲だね」
「ええ、サッチモさんの曲も好きだけれど」
「サッチモ。ルイ=アームストロングさんだね」
 ジョージはそのお名前を聞いてすぐにわかりました。
「あの人もオズの国にいるんだ」
「そうなのよ」
「それはまた凄いね」
「関羽さんや孫悟空さんもいて」 
 神宝はここまでのお話を聞いて思いました。
「それでそうした人達もいるなんて」
「オズの国はそうした意味でも素晴らしいわね」
 恵梨香もこう言いました。
「本当に」
「僕達もその人達にお会いしたいよ」
 カルロスの言葉は切実なものでした。
「是非共ね」
「エジソンさんなんて知らない子供はいないわ」
 ナターシャははっきりと言い切りました。
「外の世界でもね」
「何かね」
 つぎはぎ娘はここで五人に言いました。
「エジソンさんは実は結構問題のあった人みたいだけれどね」
「あっ、そうだったんだ」
「素晴らしい人ってイメージあるけれど」
「発明家でね」
「その発明で人類を発展させた人って」
「そう思っていたけれど」
「外の世界ではよくないこともしていたらしいの」
 このことをお話するのでした。
「どうもね、けれどね」
「それでもだね」
「子供達に夢を与えたから」
「そして人類の発展に貢献したから」
「素晴らしいことをしたから」
「オズの国にいるのね」
「そうよ、オズの国の名士の一人よ」 
 エジソンさんはというのです。
「そうなっているのよ」
「そうなんだね」
「じゃあ一度でもいいから」
「エジソンさんにお会いしたいよ」
「機会があればにしても」
「出来れば」
「オズの国は機会が自分の方から来てくれる国よ」  
 ドロシーがエジソンさんに会いたいというジョージ達五人に笑顔でお話しました。
「だからね」
「期待していていいんですね」
「そうなんですね」
「エジソンさんにお会いすることも」
「これからのことも」
「そうなんですね」
「そうよ、絶対に会えるわ」
 笑顔で言うドロシーでした、今も。
「願うとね」
「オズの国は願いが適う国よ」 
 つぎはぎ娘も五人に言います、見れば今はマイケル=ジャクソンのスリラーの動きになっています。
「だからね」
「それでだね」
「楽しみにしていていいね」
「これからのことも」
「そうなのね」
「絶対に会えるから」
「そうよ、あたしも今お願いしているから」
 つぎはぎ娘もというのです。
「絶対に適うわよ」
「それじゃあね」
「心から願うよ」
「その人達に会いたいって」
「そうお願いするわ」
「心からね」
「そうしたらいいわ」
 つぎはぎ娘は踊りながら前を進みつつ言います。
「あたしと一緒にね」
「こうしたお話をしていると」
「どうしたの?」
「いや、プレスリーさんのお話もしたね」
「ええ、さっきね」
「ドーナツも食べたくなったよ」
 こう言うのでした。
「どうもね」
「あら、どうしてなの?」
「プレスリーさんが好きだったらしいから」
「ドーナツ好きだったの」
「そうだったらしいからね」
 だからだというのです。
「食べたいと思ったよ」
「そうなのね」
「ドーナツはお菓子の国にも一杯あるわよ」
 ドロシーはドーナツのお話が出たところでジョージにお話しました。
「だからね」
「ドーナツは、ですか」
「今出してもいいし」
「お菓子の国でもですね」
「沢山食べられるわ」
「それはいいことですね」
「実は私もドーナツ好きだし」
 ドロシーは笑ってこうも言いました。
「よかったらね」
「はい、お菓子の国に入ったら」
「ドーナツも食べましょう、勿論他のお菓子もね」
 ドーナツ以外のそうしたものもというのです。
「食べましょう」
「わかりました」
「それと」
 ドロシーはさらに言いました。
「あの国はね」
「お菓子の国は」
「オズの国の人は皆甘いものが好きでしょ」
「だからですか」
「もうね」 
 それこそというのです。
「沢山の人が訪れるのよ」
「観光地でもあるんですね」
「だから賑やかよ」
「そのことも楽しんですね」
「そうした場所なのよ」
「それじゃあそのことも期待しています」
「是非ね、ジュースやミルクやお茶も一杯あるし」
 飲みものもというのです。
「期待していてね」
「そうさせてもらいます」
 ジョージは笑顔で応えました、そうしたお話をしつつ先に先にと進んでいると目の前にふとでした。
 煉瓦の道を完全に塞ぐ形で緑と黒のまだら模様の大蛇がいました、とぐろを巻いてとても気持ちよさそうに寝ています。
 ピーターはその大蛇を見て二つの頭で言いました。
「こんなところに大蛇がいるんだ」
「百メートルはあるかな」
「これはアナコンダかな」
「アナコンダでも相当に大きいよ」
「こんなのが道の真ん中にいたら」
「どいていかないと駄目だね」
「というかね」  
 つぎはぎ娘がピーターに応えて言いました。
「こんな大きいともう小山よね」
「それ位の大きさがあるね」
「実際にね」
「とぐろを巻かれると」
「それだけの大きさがあるね」
「だったらどいて通るよりもね」
 それよりもというのです。
「登って行かない?」
「大蛇を?」
「そうしろっていうんだ」
「そっちの方が面白いわよ」
 こうピーターに言うのでした。
「むしろね」
「いえ、それはよくないわ」
 ドロシーがつぎはぎ娘の提案に異議を唱えました。
「確かにここで寝ていることは迷惑でも」
「それでもなの」
「その身体を踏んで進む様なことはね」
「登るとなると足をかけるから」
「踏むことになるでしょ」
「それはそうね」
「そうしたことはね」
 どうもというのです。
「よくないわ」
「じゃあどいて通るべきなのね」
「ええ、見ればこの蛇さんも悪気はない感じだし」
 実に気持ちよさそうに寝ています、起きる気配は全くありません。
「だからね」
「起こさないでなのね」
「どいて進むべきよ」
「それで踏まないのね」
「そうしましょう」
 こうつぎはぎ娘に言ってです、ドロシーは皆を大蛇をどけてそのうえで先に進もうと提案しました。皆その提案に頷いてです。
 実際にそうして進もうとしましたが。
「おい、アナコンダさん駄目だよ」
「何かな、この声は」
 ジョージは突然聞こえてきた雷みたいに大きな男の人の声に驚きました。
「一体」
「あれを見て」
 ドロシーは一行から見て北の方を指差しました、するとです。
 そこに高さ百メートルはありそうなとんでもない大きさの樵の恰好をした男の人がいました、お顔の下半分は赤茶色のお鬚で覆われています。
 その人を見てです、ジャックは言いました。
「ポール=バニャンさんだよ」
「そうだね」
 木挽きの馬はジャックの言葉に頷きました。
「あの人は」
「間違いないよ」
「いや、何時見ても大きいね」
「全くだね」
 臆病ライオンと腹ペコタイガーの言葉は感心しているものでした。
「オズの国一の巨人だけれど」
「本当に大きいね」
「いや、アナコンダ君も大きいけれどね」
「この大きさの前には霞むね」
 かかしと樵はポール=バニャンを見上げて言います。
「まさに山みたいだよ」
「持っている斧もね」
「凄いね」
「全くだよ」
「まさかここでお会い出来るとは思っていなかったけれど」
「とんでもない大きさね」
「お声も大きいし」
 ジョージ達五人も言います。五人共この人ははじめてお会いしたので物凄く驚いています。そのことがお顔にも声にも出ています。
「巨人の中の巨人よ」
「この大きさは」
「こんなに大きいなんて」
「見上げてもまだ足りない位で」
「とんでもない大きさだね」
「驚く気持ちはわかるけれど安心していいよ」
 トトはその五人にこう言いました。
「とてもいい人だから」
「そうだよね」
「この人は凄くいい人だったね」
「確かに身体は大きいけれど」
「その身体に相応しい大きな心を持っておられて」
「物凄く優しい人よね」
「だからね」
 それでとです、トトは五人にさらにお話しました。
「安心していいよ」
「アナコンダさん、煉瓦の道の上で寝ているよ」
「?そうだったの」
 アナコンダは大人の女性の声で応えました、そのうえでそのとても大きな目を開きました。
「気持ちよくでうとうとと寝ていたら」
「そこは人が往来するからね」
「どかないと駄目ね」
「寝るのは別の場所にしないと」
「ええ、わかったわ」
 アナコンダはポール=バニャンの言葉に頷いてでした。
 そのうえで煉瓦の道の上からどきました、そうしてその横でまたとぐろを巻いて寝はじめました。これで一行はそのまま煉瓦の道を通れる様になりましたが。
 ドロシーはバニャンさんに対して言いました。
「有り難う、お陰でね」
「通れる様になったね」
「そうなったわ」
「ははは、流石にね」
「あれだけの大きさの蛇さんがいたら」
「道は通れないね」
「そうなるから」
 それでというのです。
「どいて進むつもりだったけれど」
「いや、この場合はアナコンダさんが悪いから」
 バニャンさんはドロシーに答えました。
「煉瓦の道は天下の往来だからね」
「開けるべきね」
「そのうえで寝たらいけないよ」 
 それはどうしてもというのです。
「だからだよ」
「貴方が声をかけてくれたのね」
「そうだよ」
 バニャンさんはドロシーに気さくな声で答えました。
「そうしたんだ」
「そうなのね」
「このアナコンダさんは気はいいけれど何処でも寝てね」
「それでなのね」
「時々道の上で寝たりするから」
 それでというのです。
「わしも見掛けたら声をかけているんだ」
「他の場所で寝る様に」
「そうしているんだよ」
「そういうことね」
「そう、ただ人の話は聞いてくれるから」
 そのアナコンダを見て言うのでした。
「こうしてだよ」
「声をかけたらどいてくれて」
「後はだよ」
「他の場所で寝てくれるのね」
「そうなんだ」
「いや、このアナコンダさんも大きいけれど」
 ジョージはバニャンさんに驚きを隠せない声で言いました。
「バニャンさんも」
「大きいっていうんだね」
「はい」 
 実際にというのです。
「物凄いですね」
「いや、大きいのは生まれながらでね」
 バニャンさんはジョージに気さくな笑顔で答えました、その笑顔は屈託がなくてとても素敵なものです。
「問題は心だってね」
「そうですか」
「いつも思っていてね」
 それでというのです。
「そうした人になる様に心掛けているよ」
「そうですか」
「誰よりもね」
「大きな心の人にですか」
「そう、心が狭いと何にもならないね」
 そうであればというのです。
「どんな身体でも」
「そういえばそうですね」
「だからね」
 それでというのです。
「わしはオズの国で一番心が大きい」
「そうした人にですか」
「いつもなろうと心掛けていて」
 そしてというのです。
「努力しているんだ」
「そうですか」
「そう、しかしね」
「しかし?」
「皆何処に行くのかな」
 今度はバニャンさんが皆に尋ねました。
「一体」
「お菓子の国に行くのよ」
 つぎはぎ娘が答えました。
「そのつもりよ」
「ああ、あそこになんだ」
「そう、そしてね」 
 そのうえでというのです。
「あたしは違うけれど食べて飲める人はね」
「そうして楽しむつもりだね」
「そうよ、あたし達は皆の食べて飲むのを見てね」
「楽しむんだね」
「そのつもりよ」 
 こうお話するのでした。
「これからね」
「そうなんだね、お菓子の国か」
 バニャンさんはそのお話を聞いて言いました。
「最近行ってないな、そういえば」
「そうなの」
「最近はこの辺りで楽しく過ごしていて」
 それでというのです。
「その辺りには行っていないよ」
「それじゃあ」
「うん、わしも行こうか」
 お菓子の国にというのです。
「そうしようか」
「あたし達と一緒に行くの?」
「いや、わしの歩く速さは凄いからね」
「ああ、あんたただ大きいだけじゃなかったわね」 
 つぎはぎ娘はバニャンさんのそのことを個々で思い出しました。
「そういえば」
「風よりも速く動けるよ」
「音よりもね」
「だからね」
 それでというのです。
「あんた達と一緒に進むこともね」
「しないのね」
「わしは先に行って」
「そしてなの」
「それでね」 
 そのうえでというのです。
「待っているよ」
「そうしているの」
「そうするよ」 
 こう言うのでした。
「わしは」
「そう、じゃあお菓子の国でね」
「また会おう」
「そうしましょう、あとね」
「あと?」
「こんな大きなアナコンダさんにもあんたにも会えたから」
 それでとです、つぎはぎ娘は言うのでした。
「アナコンダさんの歌とあんたの歌をね」
「今からだね」
「歌って踊るわね」
「そうすんだね」
「こんな出会いそうそうないから」
 こうバニャンさんに言います。
「だからね」
「噂に聞いた通りだね」
「噂っていうと」
「つぎはぎ娘さんは歌とダンスが好きだって」
「そうよ、好きどころかね」 
 つぎはぎ娘はバニャンさんに答えました。
「超が幾つも付く位にね」
「好きなんだね」
「もう毎日歌って踊ってこそ」
「君なんだね」
「だからね」
 それ故にというのです。
「あたしはいつも歌って踊ってね」
「わしの歌もなんだ」
「そしてアナコンダさんの歌もね」
「両方歌うんだ」
「踊ってね、それでね」
 つぎはぎ娘はさらに言いました。
「今から観て聴いてくれるわね」
「是非共」
 バニャンさんはつぎはぎ娘に笑顔で答えました。
「そうさせてもらうよ」
「ではね」
「今からはじまるね」
「そうさせてもらうわ」
 つぎはぎ娘は応えてでした、そのうえで。
 早速立て続けに二曲歌って踊りました、はじまるとアナコンダさんも目を覚ましてつぎはぎ娘の曲を観て聴きましたが。
 二曲終わってからアナコンダさんはバニャンさんに言いました。
「いいもの観せてもらったわ」
「そうだね」
 バニャンさんも笑顔で応えました。
「本当に」
「全くよね」
「うん、たまたまここを通ったけれど」
「ここで寝ていたけれど」
「君は公共の場で寝ないようにね」
「そうね、これは私が悪いわね」
 アナコンダさんはそのことは素直に認めました。
「どんなところでも寝るのはよくないわね」
「君の悪い癖だよ」
「本当にそうね」
「だから以後気をつけてね」
「そうさせてもらうわ」
「そういうことでね、それで話を戻すけれど」 
 あらためて言うバニャンさんでした。
「噂通りにね」
「いいもの観せてもらったわね」
「本当にね」
「そうだよね」
「本当にね、それでね」
「それで?」
「わしはこれからお菓子の国に行くよ」
 バニャンさんはアナコンダさんに笑顔で言いました。
「そうするよ」
「そうなのね」
「あんたはどうするかね」
「私はここでまた起きるまで寝て」
「そうしてだね」
「後は適当な場所に行ってね」 
 そうしてというのです。
「また寝るわ」
「本当に寝るのが好きだね」
「寝ること程気持ちのいいことはないわよ」
 アナコンダさんはバニャンさんに笑顔で応えました。
「本当に」
「ううん、わしも寝ることは好きだが」
「一番好きじゃないの」
「一番好きなのは身体を動かすことかな」
「働いたり野球したり」
「そうしたことをすることがだよ」
 バニャンさんにとってはです。
「一番だよ」
「そうなのね」
「寝ることも好きだけれど」
「そうなのね」
「そう、そしてね」
 それでというのです。
「身体を思いきり動かした後でたらふく飲んで食べて」
「寝るのね」
「お風呂にも入って」
「お風呂って何処ですか?」
 ジョージはバニャンさんの今の言葉に尋ねました。
「一体」
「ああ、火山のカルデラにだよ」
「入っておられるんですか」
「うん、わしのお家の大きな山の近くに火山もあって」 
 それでというのです。
「そこに入っているんだよ」
「そうですか」
「快適なお風呂だよ」 
 バニャンさんは笑顔で言いました。
「ちなみにわしの家は地下にかなりの数のお部屋があるんだ」
「地下にですか」
「そう、そこにね」
「そうなんですね」
「ちなみに私のお家は川よ」
 アナコンダさんも言ってきました。
「そこに住んでいるの」
「ああ、アナコンダは基本水棲だからね」
 かかしがアナコンダさんのお話を聞いて言いました。
「そうだったね」
「今は陸地にいるけれど」
 樵も言います。
「そうだね」
「だからお家も川で」
 臆病ライオンも言います。
「普段はそこで生活しているんだね」
「かなり大きな川だね」 
 腹ペコタイガーはアナコンダさんの大きさから言います、百メートルはあるその巨体を見てです。
「それだと」
「オズの国には大きな川も多いし」
 ジャックも言います。
「君が住める川もあるね」
「オズの国も広いからね」
 木挽きの馬はこのことから言いました。
「大きな川もそれなりに多いね」
「それにしてもバニャンさんが山をお家にしているとか」
 トトはこのことについて思うのでした。
「流石だね」
「そうね、そのお身体だとね」
 ドロシーはバニャンさんを見上げました、本当に見上げても全部見えない位のとんでもない大きさです。
「滅多な場所には住めないしね」
「いや、この大きさだと」
 ナターシャも言います。
「本当に何処に住めるか」
「心配になりますけれど」
 恵梨香もバニャンさんを見上げて言います。
「それでもですね」
「山をそのままお家にしたら」
 どうかとです、カルロスは言いました。
「バニャンさんも住めますね」
「そして地下にもお部屋を沢山作ったら」
 どうかとです、神宝は考えるお顔で言葉を出しました。
「快適に住めますね」
「そう、わしは快適に住んでいるよ」 
 実際にとです、バニャンさんは笑顔で答えました。
「お家でね」
「そうなんですね」
「それはいいことですね」
「やっぱりお家は快適に住みたいですよね」
「どんな人でも」
「それで、ですね」
「山をお家にしたんだよ」
 五人の子供達にお話します。
「そうしているんだ」
「それでお風呂はですね」
「その山の火山のカルデラ湖で」
「そこでお風呂に入っている」
「そうなんですね」
「湖自体がお風呂ってのも凄いですね」
「その下をくり抜いてサウナにもしているよ」 
 そちらのお風呂もあるというのです。
「しかも傍にシャンプーにもなるボディ―ソープの泉も水の湖もあるし」
「うわ、何でも揃っていますね」
「もうお風呂も楽しめますね」
「それだけ大きな身体でも」
「快適そのものですね」
「それですと」
「実際にわしは快適に過ごしているよ」
 自分でこう言うのでした。
「本当にね」
「その大きさでもそう暮らせる」
「流石はオズの国ですね」
「誰でも幸せに暮らせるんですね」
「オズの国にいたら」
「そうした国ですね」
「その通り、こんないい国はないよ」
 バニャンさんは満面の笑顔で言いました。
「だからわしも毎日が幸せだよ」
「ええ、その幸せをもっと大きく素晴らしいものにしないとね」 
 ここでドロシーが言ってきました。
「絶対にね」
「オズの国をだね」
「それが私のお仕事だから」
 オズの国の王女、オズマと一緒にこの国の政治を行っている人としてというのです。ドロシーはバニャンさんにお話しました。
「だからね」
「それでだね」
「貴方の幸せな毎日もね」 
 これもというのです。
「今以上にね」
「幸せになる様にだね」
「していくわね」
「楽しみにしているよ、幸せには際限がないんだね」
「そうよ、今が最高でこれ以上はないと思っても」
 それでもというのです。
「まだね」
「それ以上の幸せがあるんだね」
「だからね」
「わしもだね」
「そう、幸せにね」
「今以上に」
「そうなってね」
「そうなる様にドロシー王女は政治をしてくれるなら」
 バニャンさんはドロシーのお話を聞いて言いました。
「わしも幸せになる様に努力するよ」
「そうしてくれるのね」
「今以上にね」
「そもそもオズの国って随分変わったわよ」
 つぎはぎ娘も言ってきます。
「色々な乗りものが出てきてラジオからテレビも出て」
「電話もだね」 
 トトがつぎはぎ娘に応えます。
「それが携帯電話もね」
「出てきてね」
「スマートフォンもあるし」
「今じゃそうよね」
「それで人も場所もね」
「色々とね」
「増えたしね」
 そうもなったというのです。
「本当にね」
「変わってね」
「そしてどんどん素敵な国になってきているよ」
「そうそう、ベーブ=ルースさん達もいなかったし」
「関羽さんだってね」
「あと日本の童話の人達もね」
 この人達もというのです。
「妖怪の人達だってね」
「オズの国にいる様になって」
「本当に変わったわね」
「そのことを思うと」
「ドロシーの言う通りよ」
 つぎはぎ娘は陽気な声で言いました。
「オズの国はどんどん幸せな国になっているわ」
「全くだね」
「だからバニャンさんもね」
「今以上に幸せになるね」
「絶対にね」
「そうよ、幸せはね」
 まさにとです、ドロシーは言いました。
「際限がないの」
「そうよね」
「だからバニャンさんもね」
「今以上によね」
「幸せになるのよ」
 絶対にという口調での言葉でした。
「オズの国の中で」
「そのことを楽しみにしているよ」
 バニャンさんは笑顔で応えました。
「わし自身そうなる様にするし」
「それでよね」
「これからもね、ではね」
「ええ、お菓子の国でね」
「また会おうね」
「それじゃあね」
 ドロシーも他の皆もバニャンさんと笑顔で一時のお別れをしました、アナコンダさんはまた寝てです。
 一行は冒険を再開しました、道をどんどん歩いていきますが。
 そこでジョージはつぎはぎ娘に言いました。
「いや、ポール=バニャンさんとお会い出来てね」
「嬉しいのね」
「子供の頃お話を聞いて」
 そしてというのです。
「本当にいたらお会いしたいってね」
「思っていたのね」
「そうだったからね」
 それでというのです。
「会えてね」
「嬉しいのね」
「凄くね」
 そうだというのです。
「僕としても」
「それは何よりだったわね」
「これで今オズの国におられるね」
「ベーブ=ルースさんやエジソンさんにもなのね」
「会えたらね」
 それが実現すればというのです。
「尚更嬉しいよ」
「そうなのね」
「だからね」
 そう思うからというのです。
「僕は今から楽しみだよ」
「願えば会えるからね」
「オズの国はそうした国だからね」
「楽しみなのね」
「本当にね」
「そして楽しみにしている間もでしょ」
「楽しいね、これも幸せかな」
 ジョージはここでこうも思いました。
「そうなるのかな」
「そうよ、楽しみに思って楽しめることもね」
 ドロシーはジョージに答えて言います。
「それもね」
「幸せですね」
「そうなの。よかったことを知ることもね」 
 このこともというのです。
「幸せなのよ」
「幸せって色々あるんですね」
「一つじゃないわよ、美味しいものを食べても幸せでしょ」
「はい」
「そしてね」
 さらにというのです。
「お風呂に入ってもね」
「幸せに思いますね」
「そう、だからね」
 こちらのこともというのです。
「幸せになるのよ」
「そうなるんですね」
「だからね」 
 それでというのです。
「幸せは本当に一つじゃないの」
「色々な種類のものがあるんですね」
「そうなの、そしてバニャンさんにもお話したわね」
「際限がないんですね」
「もう何処までもね」
 それこそというのです。
「進歩していくものよ」
「そうしたものですね」
「そしてその幸せを増やして大きくしていくのが」
「ドロシーさん達のお仕事ですね」
「そうなの」 
 まさにというのです。
「それがね」
「そうですか」
「だから都に入る時はね」
「政治にあたっておられるんですね」
「オズマ達と一緒にね」
「都には絶対に誰かが残ってるわね」
 つぎはぎ娘はここで言いました。
「オズマかドロシーかトロットかベッツイが」
「ええ、私達四人がオズの国の政治の中心でしょ」
「かかしさんや樵さん、あたし達が大臣でね」
「オズマがお姫様でオズの国の国家元首で」 
 その立場でというのです。
「私とトロット、ベッツイが王女で」
「オズマと一緒にオズの国の中心ね」
「その立場になっているから」
 だからだというのです。
「誰か一人は絶対になの」
「都に残っていて政治にあたっているのね」
「そういう風にしているの」
「誰かが政治をしないとね」
「オズの国は動かないから」 
 だからだというのです。
「そうしているの」
「そういうことね」
「それで実際に今はね」
「オズマが残ってくれているわね」
「そして毎日私達の冒険の状況をチェックしてくれているから」
「何かあれば」
「そう、その時は助けてくれるから」
 そうもしてくれるというのです。
「安心してね」
「ええ、何も心配はしていないわ」
 つぎはぎ娘はドロシーにこう答えました。
「あたしはね」
「そうなのね」
「というかあたし達昔は何度もピンチに遭ったわね」
「ええ、オズの国もまだ危険が一杯で」
「それでもいつもすぐに助かったわね」
「その都度ね」
「そうだったから」
 それでというのです。
「もうね」
「心配はしていないのね」
「一切ね」 
 それこそというのです。
「していないわ」
「今は余計に」
「そうよ、それとね」
「それと?」
「ドロシーって昔と比べて変わったわね」
「年齢を上げたからかしら」
「一つか二つそうしたわね」
 オズの国では年齢は自分が思えば変えられます、それでドロシーはオズの国に来た時より少し歳を取ったのです。
「オズマ達も」
「その方がいいと思って」
「それでよね」
「そうしたの、そうしたらなの」
「いえ、ずっとオズの国にいて」
 そしてというのです。
「その分ね」
「変わったの」
「そうなったわ、もう完全にね」
 それこそというのです。
「オズの国の王女様よ」
「そうなっているのね」
「そうだね、カンサスの女の子じゃもうないね」 
 トトも言います、ずっとドロシーと一緒にいる彼も。
「最早ね」
「オズの国の王女なのね」
「そしてオズの国一の冒険家にもね」
「なっているのね」
「そうなったよ」
「本当に変わったのね、私も」
「うん、オズの国にいて」
 それでというのです。
「オズの国の幸せの中でね」
「変わったのね」
「幸せになったし」 
 トトはさらに言いました。
「さらに明るくなったよ」
「そうなったの」
「叔父さんや叔母さんもこっちに移住したし」 
 ドロシーの家族のこの人達もというのです。
「だからね」
「本当に変わって」
「今じゃ完全にオズの国の王女様だよ」
 トトは笑顔で言いました、そうしてです。
 皆でお菓子の国の向けての旅を続けていきました、そうして目的地に向けて一歩ずつ確かに進んでいくのでした。








▲頂きものの部屋へ

▲SSのトップへ



▲Home          ▲戻る