『新オズのつぎはぎ娘』




               第三幕  ミュージッカーの訪問

 ドロシー達はうどんすきを食べています、臆病ライオンはうどんすきの中にあるおうどんの麺を見て言いました。
「確かに太いね」
「そうでしょ」 
 ドロシーは臆病ライオンの言葉ににこりとして応えます。
「あえてね」
「こうしたおうどんにしたんだ」
「お鍋の時はこの方がいいから」
 太い麺の方がというのです。
「だからね」
「この麺にしたんだ」
「そう、そしてね」
「そして?」
「茹でるまで少し待ってね」
 こうも言うのでした。
「そうしてね」
「もう少しなんだ」
「そう、太いから」
 だからだというのです。
「ゆであがるまでに時間がかかるから」
「その間はだね」
「他のものを食べてね」
「お肉とかお豆腐をだね」
「お葱とか茸をね」
 こうしたものをというのです。
「食べてね」
「それじゃあね」
「そしてね」
 ドロシーはさらに言いました。
「お酒も飲んでね」
「ノンアルコールの」
「そちらもね」
「うん、じゃあ沢山食べてね」
「飲んでね」
「早速ね」
 腹ペコタイガーは自分の前にある物凄く大きな、それこそバケツみたいな食器の中に入れられているお肉やお葱を見て楽しそうに言います。
「頂くよ」
「そうしてね」
 ドロシーは腹ペコタイガーにも応えました。
「貴女も」
「おうどんは少し後で」
「今はね」
「お肉とかをだね」
「食べてね」
「それじゃあね、あとお豆腐もね」 
 腹ペコタイガーはこちらのお話もしました。
「頂くよ」
「そうしてね」
「美味しいし身体にもいいしね」
「お豆腐は素敵な食べものよね」
「そうだよね」
「ただね」 
 ここでトトが言います、トトの前にも彼の為の食器があってその中にうどんすきの具が沢山入れられています。
「お豆腐ってお鍋の時はね」
「熱いわね」
「だからね」
「少し時間を置いて冷えてからね」
「食べないとね」
「そうなのよね」
 ドロシーもその通りだと言います。
「お豆腐については」
「そこがネックだね」
「そうなのよね」
「あれっ、確か」
 ここで恵梨香が思い出した様に言いました。
「犬は熱いものは」
「それは猫よ」
 ナターシャがその恵梨香に微笑んで言います。
「犬は違うわ」
「確か犬は葱が駄目だったよね」
 カルロスはそちらだと言いました。
「そうだったね」
「けれどトト普通に食べてるね、今」 
 神宝は実際にその様子を見つつ言います。
「それも美味しそうに」
「そういえばエリカこの前熱いスープ美味しそうに飲んでたし」 
 ジョージはその猫のことを思い出しました。
「どうなってるのかな」
「だってここはお伽の国よ」
 ドロシーはお肉や茸を食べつつお話をする五人に答えました。
「だからね」
「犬がお葱食べても大丈夫ね」
「猫も熱いもの平気ですか」
「オズの国はお伽の国だから」
「そこも外の世界と違うんですね」
「普通に食べられるんですね」
「そうよ、そんなこと言ったら喋られないでしょ」 
 そもそもというのです。
「生きものは外の世界では」
「そうですね、確かに」
「言われてみますと」
「オズの国では生きものが普通に喋れますし」
「お葱や熱いものが平気でもですね」
「おかしくないんですね」
「そうよ、だからいいのよ」
 ドローはお肉を食べつつお話しました。
「トトがお葱を食べてもね」
「そういうことですね」
「じゃあ皆で楽しくですね」
「うどんすき食べていいですね」
「お肉もお豆腐も茸もお葱も」
「そうしたら」
「ええ、それにおうどんも茹であがってきたから」
 肝心のそれもというのです。
「楽しく食べましょう」
「わかりました」
「おうどんも食べましょう」
「待っていましたし」
「それじゃあ」
「今から」
「そうしましょう」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆でうどんすきを、おうどんも含めて食べてアルコールの入っていないお酒も飲んでそうしてでした。
 デザートに和菓子も楽しんで、でした。ドロシーはテーブル掛けをしまってから皆にこう言いました。
「じゃあ一休みしたらね」
「踊るのね」
 つぎはぎ娘がひょっこりとお顔を出して言ってきました。
「そうするのね」
「ええ、少しお休みしたらね」
「すぐには踊らないのね」
「食べてすぐに身体動かすことはよくないから」
 だからだというのです。
「お散歩位ならいいけれど」
「ダンスは駄目なの」
「ダンスによるけれどダンスは激しい運動でもあるからね」
 それでというのです。
「食べて今すぐはね」
「踊らないのね」
「そうするわ」
「歌はどうなの?」
 つぎはぎ娘はこちらはと尋ねました。
「どうなの?」
「あっ、そちらはね」
「出来るのね」
「歌もカロリーを消費するけれど」 
「それでもなのね」
「ダンスと違って身体全体を激しく動かさないから」
 ドロシーはつぎはぎ娘に答えました。
「だからね」
「そちらはいけるのね」
「ええ、歌はね」
「じゃあ歌ったらいいじゃない」
 それならと言うつぎはぎ娘でした。
「そうしましょう」
「そうね、それじゃあね」
「休むことはあたししないし」
「貴女はそうよね」
「そう、疲れないから」
 そうした身体の仕組みだからです。
「あたしはもうさっきからずっとね」
「踊ってるのね」
「歌ってね」
「それでどんなダンスを踊っていたのかな」
 ジョージはつぎはぎ娘にそのダンスのことを尋ねました。
「さっきは」
「ラップよ」
「そっちだったんだ」
「ええ、その前はジャズダンスでね」
 それでというのです。
「お洒落に踊ってたわ」
「ジャズの後でラップだね」
「そうよ」
「本当に色々なダンスを踊るんだね」
「僕達もそうだけれどね」
 ジャックも出て来てお話しました。
「つぎはぎ娘はまた別格だよ」
「とにかくダンスが好きだからだね」
「どんなダンスでも踊るんだ」
「そうなんだね」
「能や昔の中国の踊りもね」
「それでジャズやラップもなんだ」
「踊るんだ」 
 そうしているというのです。
「本当に休むことなくね」
「あの身体でだね」
「僕達が到底出来ない様な踊りをするんだ」
「いや、本当に何時見ても凄い踊りだよ」
 ブリキの樵も太鼓判を押します。
「つぎはぎ娘の踊りはね」
「ぬいぐるみの身体だから」
「物凄くやらか書く手跳んだり跳ねたりも出来るからね」
 それでというのです。
「本当にね」
「誰にも出来ない踊りをですね」
「するんだ」
「そうなんですね」
「君達が見てきた通りにね」 
 まさにというのです。
「そうした踊りが出来るんだよ」
「特別な、ですね」
「そうなんだ」
「しかも音感もいいからね」
 それでと言ったのはかかしでした。
「余計にいいんだ」
「センスもあって」
「余計にいいんだ」
「そうなんですね」
「しかもいつも踊って歌っているね」
「いつもしていると」
「自然と上手になるね」
 そうしていると、というのです。
「どんなことでも」
「はい、要するに練習ですね」
「練習をすればする程上手になるね」
「つぎはぎ娘はそれを自然にしているので」
「ダンスが抜群に上手なんだ」
 そうなっているというのです。
「そして歌もね」
「そちらもですね」
「上手ですね」
「そうなんだ」
 こうジョージにお話しました。
「好きでいつもやっていてセンスもあるから」
「何ていうか」
 ここまで聞いてです、ジョージも他の四人も思いました、そうしてそのうえで五人でお話したのでした。
「天才かな」
「九十九パーセントの努力と一パーセントの才能だよね」
「エジソンさんが言う天才ね」
「つぎはぎ娘も天才なんだ」
「そうした意味で」
「そうだろうね」
 実際にとです、木挽きの馬も言います。
「つぎはぎ娘は」
「寝る必要も食べる必要もなくて」
「一日中踊っていられて」
「しかも元々好きだし」
「尚且つ音感っていうセンスもあって」
「それでなのね」
「天才だろうね、天才は本当にね」
 馬はさらに言いました。
「その分野が大好きでいつもやっている人だよ」
「九十九パーセントの努力だね」
 ジョージはこう応えました。
「それだね」
「そしてそこにね」
「一パーセントの才能だね」
「オズの国では九十九パーセントの努力をしている人には」
 そうした人にはというのです。
「神様は自然にね」
「一パーセントの才能をなんだ」
「与えてくれるから」
 オズの国の神々はそうしてくれるというのです。
「だからね」
「それでだね」
「そう、つぎはぎ娘もね」
「ダンスの天才なんだ」
「そして歌のね」
「天才とかどうでもいいわ」
 当のつぎはぎ娘はあっけらかんとしています、そのうえでの言葉です。
「あたしはね」
「楽しく踊れたらだね」
「それでね」
 もうそれでというのです。
「本当にね」
「君はいいんだ」
「そうよ」
 実際にというのです。
「そんなことはどうでもいいの」
「ダンスを踊れたら」
「もうそれで十分で」
「天才と言われるとかどうかは」
「まあどうでもいいわ」
「そうした考えなんだね」
「というかあたしが天才であたしに何かあるの?」
 ジョージにこう尋ねました。
「一体」
「それは」
「特にないでしょ」
「まあね」
「大会に出ることは好きだけれどね」
 そちらはというのです。
「出た大会は常に優勝してるけれど」
「それは楽しいからだね」
「大会でもダンスを踊れるから」
 それでというのです。
「好きだけれど」
「それでもなんだ」
「そう、天災とか言われることはね」
「どうでもいいんだね」
「別に言っても構わないけれどね」
「止めることもしないんだ」
「だからどうでもいいから」
 こう考えているからというのです。
「本当にね」
「構わないんだね」
「そうよ、それとね」
「それと?」
「今度はバレエを踊るわ」 
 こちらをというのです。
「それをね」
「ああ、バレエもだね」
「あたしこのダンスも好きだから」
「踊るんだね」
「そうするわ」
「曲は何かな」
「白鳥の湖よ」
「あら、私の国の音楽ね」
 その曲名を聞いてです、ナターシャが笑顔になりました。
「それはいいわね」
「チャイコフスキーさんだね」
 カルロスもナターシャに言います。
「そうだったね」
「凄く有名な曲だね」 
 神宝もその曲はと言います。
「白鳥の湖なんて」
「私達も授業で習ったし」
 恵梨香もこう言います。
「本当に有名な曲ね」
「その白鳥の湖をね」
 つぎはぎ娘は子供達にもお話します。
「これから踊るわ」
「ううん、僕達バレエはね」
 どうかとです、ジョージが言いました。
「ナターシャは踊れるけれど」
「あんた達四人はなのね」
「うん、白鳥の湖以外の曲もね」
 それもというのです。
「知らないから」
「それでなの」
「観させてもらうけれど」
「踊らないのね」
「はじめてでもチャレンジだよね」
「あたしはそうするわ」
「それでだね」
「あたしはバレエもよく踊っていて」
 そしてというのです。
「白鳥も湖も何度か踊ってるけれど」
「はじめてでもだね」
「最初踊った時はどんな踊りかね」
「全然知らなかったんだ」
「そう、タイトルもはじめて聞いたけれど」
 それでもというのです。
「踊ったわ」
「それは凄いね」
「他に踊ってる人達の踊りを見てね」
「それで見よう見真似で」
「踊ったわ」
「じゃあ」
「あんた達も踊ったら?それか演奏をね」
 そちらをというのです。
「やってみたら?」
「ううん、そうしたらいいんだね」
「踊りが駄目ならね」
 それなっらというのです。
「どうかしら」
「それじゃあ」 
 ジョージだけでなく恵梨香達四人もでした。
 つぎはぎ娘の言葉を受けてそれならと五人で考えてお話をしてそうしてそのうえでなのでした。こう言いました。
「じゃあね」
「演奏に参加させてもらうよ」
「そちらにね」
「ダンスは難しいけれど」
「そちらにね」
「演奏もはじめてよね」 
 そちらもとです、つぎはぎ娘は尋ねました。
「あんた達は」
「うん、けれどね」
「はじめてでもやらせてもらうよ」
「チャレンジが大事だし」
「はじめてでも怖気づかずにね」
「やらせてもらうわ」
「そうしたらいいわ、失敗してもね」
 そうしてもというのです。
「いいのよ」
「それでもだね」
「楽しかったらね」
 それならというのです。
「いいのよ」
「それでだね」
「あんた達が演奏をしたいなら」
 それならというのです。
「やったらいいわ」
「それじゃあね」
「それとね」
「それと?」
「あたしはバレエの服は着ないから」
 このことも言うのでした。
「このままで踊るわ」
「そうするんだ」
「ええ、お姫様の役で出るわよ」
「役は決まってるんだ」
「さっきじゃんけんをしてね」
「それで決まったんだね」
「そうなのよ」 
 これがというのです。
「見事主役にね」
「それはよかったね」
「どんな役でもいいわ」
 つぎはぎ娘としてはです。
「踊れたら」
「じゃあミュージカルのバックダンサーも」
「よくしてるわ」 
 ジョージに笑顔で答えます。
「そちらも」
「そうなんだね」
「もうミュージカルはね」
 それこそとです、つぎはぎ娘はジョージに楽しいお顔でお話します。
「どれだけ出演したかわからないわ」
「そこまで好きなんだ」
「歌劇も出るし」
 こちらもというのです。
「こっちは役よりもバレエでね」
「出るんだね」
「アイーダとか大好きよ」
 この歌劇もというのです。
「本当に」
「アイーダっていうと」
「あっ、知らないの」
「うん、歌劇はまだね」 
 ジョージは首を傾げさせつつ答えました。
「あまり観ていないから」
「そうなの」
「うん、けれど君はなんだ」
「色々な歌劇を観てね」
「出演もしているんだ」
「そうなのよ」
 こう言うのでした。
「それで楽しんでいるわ」
「そうなんだね」
「それで踊ってるのよ」
「第一はやっぱり踊りだね」
「そうよ、じゃあバレエに出て来るわね」
 その白鳥の湖にというのです。
「そうしてくるわ」
「ええ、それじゃあね」
 こうお話してです、そのうえで。
 つぎはぎ娘は実際に白鳥の湖に出演してお姫様の役を楽しくしかも上手に踊りました、そしてその後で今度はです。
 ジョージとお話していたミュージカルも出ました、ですが。
 その後で、です。つぎはぎ娘は村の向こう側を見て言いました。
「お客さんが来るわ」
「本当に目がいいね」
 トトはそのつぎはぎ娘に言いました。
「僕には全然見えないよ」
「あたしには見えるから」
「その目が凄いよ」
「このボタンの目は特別だから」
 それでというのです。
「視力は五・〇だからね」
「そうなんだね、それで誰が来てるのかな」
「ミュージッカーさんよ」
 この人だというのです。
「あの人が来てるわ」
「えっ、あの人達が来るとか」
 ドロシーはそう聞いて意外といったお顔になって言いました。
「予想していなかったわ」
「いつもカドリングの南にいるからね」
 樵はそのことを言いました。
「このウィンキーに来ることはね」
「ちょっとね」
「珍しいね」
「そうよね」
「うん、ただオズの国の人はよく旅をするから」
 それでとです、かかしは言いました。
「だからね」
「ミュージッカーさんにしても」
「ここに来てもね」
「不思議じゃないのね」
「そうだよ」
「言われてみると」
 ドロシーも頷きました。
「そうね」
「それにこの村は音楽の村だから」
 ジャックはこのことをお話しました。
「歌もよく歌うし演奏もね」
「よくするから」
「だからあの人も好きだろうし」
「それでここまで来たのね」
「カドリングの南からね」
 そうしたのだろうというのです。
「あの人も」
「そうなのね」
「しかしね」
 今度は木挽きの馬が言ってきました。
「ミュージッカーさんと会うのってね」
「久し振りね」
「うん、僕も随分と前に会ったけれど」
「私もよ」
「だから嬉しいね」
「久し振りに会えてね」
「本当にね」
 こうしたお話をしている間にです、ミュージッカーは村に来ました。丸い髪の毛のない頭に派手な服、そして。
 身体から明るい音楽が聴こえてきます、そうして歌でこう言うのでした。
「はじめて会った子達もいるね」
「僕達のことですね」
「そうだよ」
 こうジョージにお話しました。
「君達のことだよ」
「やっぱり」
「他の人達には会ったことがあるけれどね」
「うん、僕はこの前会ったね」
 臆病ライオンが言ってきました。
「グリンダのところに行った時に」
「カドリングの南まで来てね」
「会ったね」
「そうだったね」
 ミュージッカーは音楽の中で言います。
「あの時は楽しかったね」
「一緒に歌ってね」
「じゃあ今度も一緒に歌おうね」
 腹ペコタイガーもミュージッカーに言います。
「そうしようね」
「是非ね、色々な歌をね」
「そうしようね」
「あたしも歌うわ、そしてね」
 最初にこの人を見付けたつぎはぎ娘も言います。
「踊るわ」
「君はいつも踊るね」
「だって踊るのが大好きだから」
 それでというのです。
「踊るわ」
「そうだね」
「ええ、ここでお会い出来るとは思わなかったけれど」
「ふと気が向いてね」
 それでとです、ミュージッカーはつぎはぎ娘の言葉に答えました。
「それでね」
「ここまで来たの」
「そうなんだ」
「それで来たんだ」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「歌うよ、これからね」
「そうするわね、貴方は」
「僕は歌うことが全てと言っていいからね」
「だからいつも演奏がかかっていて」
「そして歌うんだ」
「そうよね」
「こうして喋る時もね」 
 身体から出る明るい音楽に乗ってです。
「歌っているんだ」
「そうよね」
「寝ている時も音楽がかかるしね」
「寝ている時の音楽はどういった音楽ですか?」
 ジョージが尋ねました。
「その時は」
「子守歌だよ」
「その歌ですか」
「ベッドに入ったらすぐにこの音楽が出てね」 
 身体からというのです。
「そうしてなんだ」
「その音楽を聴いてですか」
「すぐに寝られるんだ」
「それはいいことですね」
「だからいつもぐっすり寝られているよ」
 こうジョージに答えました。
「気持ちよくね」
「それでですが」 
 神宝はミュージッカーに時間を観つつお話しました。
「今三時ですが」
「ティータイムの時間ですけれど」
 カルロスもミュージッカーに言います。
「ミュージッカーさんもどうですか?」
「食べたり飲んだりされますか?」
 恵梨香はオズの国にはそうしたことをする必要のない人もいるのでこのことを確認の為に尋ねました。
「そちらは」
「若しそうされるなら」
 ナターシャもそのことからミュージッカーに尋ねます。
「ご一緒に」
「うん、甘いものは大好きだよ」
 ミュージッカーは子供達に笑顔で答えました。
「何でもね」
「ええ、貴方も食べて飲む人で」
 ドロシーも応えて言います。
「どちらも好きよね」
「そしてその時もね」
「音楽がかかるわね」
「そうだよ」
 お食事の時もというのです。
「食欲をさらに上げる様な曲がね」
「そうよね」
「だからね」
 それでというのです。
「今もね」
「ティータイムの時も」
「音楽がかかるよ」
「そうよね」
「それでもいいね」
「大歓迎よ」
 ドロシーはミュージッカーに笑顔で答えました。
「じゃあティータイムの後でね」
「僕と一緒にだね」
「歌ってね」
「踊るんだね」
「そうさせてもらうわね」
「そうしようね、それでだけれど」
 今度はミュージッカーから尋ねました。
「ティーセットは何かな」
「中華風でいこうと思ってるわ」
「中国なんだ」
「ええ、中国茶にね」
 お茶はこちらでとです、ドロシーはお話しました。
「それでごま団子にマンゴープリン、タピオカミルクよ」
「あっ、ごま団子あるんだ」
「それも出すつもりよ」
「いいね、丁度ごま団子を食べたかったんだ」
 ミュージッカーは笑顔で言いました。
「ここに来る途中でチャイナタウンにも寄ったけれどね」
「そこでなのね」
「うん、ごま団子を見てね」
 それでというのです。
「いいなって思ったけれど丁度満腹でね」
「他のものを食べたのね」
「刀削麺とか水餃子とか杏仁豆腐とかを食べてね」
 そうしてというのです。
「お腹一杯になっていて」
「それでごま団子を食べられなかったの」
「そうだったんだ、けれど」
「ええ、丁度いいわね」
「そうだね、じゃあごま団子をね」
「食べましょう」
「是非ね」 
 ミュージッカーから出て来る音楽が一際明るいものになりました、そうしてティータイムに入るとです。
 ミュージッカーはドロシー達と中華風のティ―セットを楽しみ中国茶を飲んで、です。ごま団子が食べられる喜びを歌いました。
 その曲を聴いてつぎはぎ娘は言いました。
「いい曲ね」
「そう言ってくれるんだ」
「ええ、朗らかでね」
 それでというのです。
「踊りたくなる曲よ」
「ダンスの振り付けまでは考えていないよ」
「あたしが考えていいわよね」
「うん、いいよ」
 ミュージッカーは快諾で答えました。
「それじゃあね」
「ええ、じゃあね」
「今からだね」
「もう一回歌ってくれるかしら」
「その歌に合わせて」
「踊るわ」
「それじゃあね」
 こうしてでした、ミュージッカーはもう一度ごま団子を食べられる喜びの歌を歌いました。するとです。
 つぎはぎ娘はその歌に合わせて朗らかに踊りました、そうして一曲踊ってからこんなことを言いました。
「ダンスに最適の曲ね」
「そう言ってくれるんだ」
「あんたの歌は全部そうだけれど」
「この歌もだね」
「ええ、ダンスにね」
 まさにそれにというのです。
「最適の曲よ」
「それでそれだけ踊れたんだね」
「そうよ」
「それは嬉しいね、ただね」
「ただ?」
「君の踊りは物凄い動きでね」
 このことはミュージッカーから見てもでした。
「ぴょんぴょん跳ねて身体も凄く曲がるけれど」
「あたしだけしか出来ないわよね」
「君のぬいぐるみの身体でないとね」 
 到底というのです。
「出来ないよ」
「よく言われるわ」
「そうだね、だからね」
「今の踊りもなのね」
「他の人が踊るにはね」 
 どうしてもというのです。
「アレンジが必要だね」
「それはわかってるわ」 
 つぎはぎ娘にしてもとです、ミュージッカーに答えました。
「そこはもうしていいわよ」
「君にしてもだね」
「ええ、皆が踊る様にね」
「それじゃあね」
「いや、凄く高く何度も跳ねて身体を曲げてくるくる回って」
 それでとです、ジョージはマンゴープリンを食べつつつぎはぎ娘に答えました。
「凄かったよ」
「そうでしょ」
「跳ねるのも曲がるのも僕達には無理だけれど」 
 ジョージはつぎはぎ娘にさらに言いました。
「君みたいにくるくる回ることもね」
「出来ないわね」
「君そこからすぐに派手に踊るけれど」
 そうするけれど、というのです。
「普通の人は目が回ってね」
「すぐには動けないのね」
「身体がふらふらするよ」
「皆そうなるわね」
「だから無理だよ」
「つぎはぎ娘は目も回らないのよ」  
 ドロシーもこのことをお話します。
「かかしさんや樵さんも同じだけれどね」
「そうそう、僕達はそうした身体だからね」
「目も回らないんだよね」 
 そのかかしと樵も応えてきました。
「幾ら回ってもね」
「全くね」
「僕もだよ、だからつぎはぎ娘みたいに跳ねたり曲がったりは無理でも」
 ジャックも言います。
「目は回らないんだよね」
「そうよね、目が回らないとね」
 つぎはぎ娘はまた言いました。
「その分ね」
「踊れるんだね」
「そうよ」
 こうジョージに答えます。
「快適にね」
「君は本当にダンスに向いた身体をしているね」
「何時でもどれだけでもどんなダンスも出来るからね」
「凄い身体だね」
「だからあたしはこの身体が大好きよ」
 自分のそれがというのです。
「本当に幾らでも踊れるから」
「それでだね」
「こんな身体他にないしね」
 つぎはぎ娘はまた踊りながら言いました。
「本当に好きよ」
「そうだよね」
「じゃあこれからも踊るわね」
 今からもというのだ。
「そうするわね」
「僕の曲に合わせてだね」
「あんたの曲にもう一曲歌って」
 そしてというのです。
「それで今度はサンバを踊るわ」
「そちらの踊りをだね」
「そう、踊るわ」
 そうするというのです。
「次はね」
「本当に色々な踊りがある村で」 
 トトはドロシーの傍でお茶を飲みつつ言いました。
「つぎはぎ娘も色々な踊りを踊るね」
「ええ、そうでしょ」
「そのことをあらためて思ったよ」
「そうだね、じゃあ僕もね」
「サンバ踊るのね」
「ティータイムの後でね」
 それからというのです。
「そうするよ、ただね」
「ただ?」
「服はそのままだから」
 それは変わらないというのです。
「サンバの服は着ないよ」
「カーニバルの」
「ああした物凄い服はね」
「あたしは飾り付けるけれどね」
「そうして踊るんだ」
「ああした服は着ないけれど」
 カーニバルの時の物凄く派手な露出の多いきらきらの服は着ないというのです、つぎはぎ娘にしても。
「それでもね」
「飾りは付けるんだ」
「きらきらのね」
「私サンバ自体は好きだけれど」
 ドロシーが言いました。
「あの衣装はね」
「着られないですか」
「あの派手な服は」
「水着みたいですし」
「あれを着て踊ることは」
「ドロシーさんは駄目ですか」
「絶対にね、ちょっと以上にね」 
 ジョージ達五人にも答えます。
「出来ないわ」
「あの服はそうですね」
「着るには水着以上に勇気がいりますね」
「見てもわかります」
「あれを着て人前に出たら」
「恥ずかしいですね」
「私としてはね、カンサスにいた時は」 
 ドロシーは二十世紀初頭のお話もしました、自分がいた頃のアメリカのお話も。
「ああした服は想像も出来なかったから」
「そういえばドロシーさんも他の人達も」
「服の露出少ないですね」
「ミニスカートも穿かないですし」
「オズの国全体として」
「服の露出が少ないですね」
「そうでしょ、水着は現代のものでもね」 
 それでもというのです。
「服はね、動きやすい服でも」
「スカートは膝までで」
「上着も長袖で」
「ストッキングも穿いていて」
「靴もしっかり履いていて」
「帽子もですね」
「そう、オズの国の服は露出は少ないの」
 そうなっているというのです。
「昔からね」
「そういえば」
「言われてみればそうですね」
「オズの国の服は露出少ないですね」
「今も」
「どの人達も」
「ええ、ただ身体は大きくなったわ」
 このことは違うというのです。
「オズの国の人達は」
「昔は皆一四〇位でしたね」
 ジョージもこのことをお話しました。
「そういえば」
「ええ、けれど今は違うわね」
「今のアメリカ人と同じ位ですね」
「そうなったわね」
「そうですね」
「子供の背は同じでも」
 それでもというのです。
「大人の人達の背はね」
「高くなりましたね」
「そうなったわ」
 こちらは変わったというのです。
「服は同じでも」
「昔に比べて人も増えて」 
 ミュージッカーも歌いつつ言ってきます。
「色々な人種の人も増えて」
「昔は白人の人だけだったのが」
 それがというのです。
「アジア系やアフリカ系の人もいるわね」
「ヒスパニックの人達もね」
「ネイティブの人達もいて」
「イタリア系の街にチャイナタウンもあって」
「日本の街もあるね」
「ネイティブの人達の集落もあるし」
「随分変わったわね」
 ドロシーが見てもです。
「オズの国も」
「そうだね」
「それを思うと」 
 どうかというのです。
「オズの国もね」
「変わったね」
「そうした部分も多いわね」
「本当にね」
「貴方の歌も随分とバリエーションも増えたし」
 ドロシーはミュージッカー自身のお話もしました。
「貴方も変わったわね」
「うん、ただ僕は悲しい曲はね」
「歌わないわね」
「身体からも出ないよ」
 そうした歌はというのです。
「明るい曲以外はね」
「失恋の曲は」
「絶対にだよ」
 こうジョージに答えました。
「歌わないよ」
「悲しい曲は」
「僕の性に合わないからね」
「そう言われると」
「納得出来るね」
「確かに」
 ジョージもこう返しました。
「それは」
「僕は明るい曲専門だからね」
「あたしもよ」  
 つぎはぎ娘も言ってきます。
「明るい曲専門よ」
「というかオズの国に悲しい曲って凄く少ないわよ」 
 ドロシーもこう言います。
「明るくて楽しい国だからね」
「自然とですね」
「そうなるのよ、じゃあ夜まで楽しんで」
「晩ご飯食べてですね」
「近くの湖で身体奇麗にしてね」
 そしてとです、ドロシーがジョージにお話しました。
「そうしてね」
「そのうえで、ですね」
「テントで休んで」
「明日はですね」
「旅を再開しましょう」
 こう言ってです、実際に皆は踊りと歌に他のことを満喫してそうしてでした、次の日村の人達と再会を約束して笑顔で別れましたが。
 ここでミュージッカーはこう言いました。
「僕は僕でね」
「旅をするのね」
「そうするよ、また機会があったらね」
「ええ、また会いましょう」
「それじゃあね」
「次に会う時も歌を聴かせてね」
 つぎはぎ娘が応えます、こうしてミュージッカーとも再会を約束してそのうえでお別れをするのでした。








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