『オズのキャプテン船長』




               第十幕  陽気なバイキング

 バイキングの人達についてです、教授は島が見えてきたところで皆に言いました。
「野蛮というイメージがあるけれどね」
「それは違う」
「そうなんですね」
「少なくともオズの国ではですね」
「野蛮じゃないですね」
「怖くないんですね」
「そう、恰好はそのままでもね」 
 皆が知っている様なバイキングのそれであってもというのです。
「それでもだよ」
「野蛮でなくて」
「怖くなくて」
「僕達が行ってもですね」
「何もして来ないんですね」
「これといって」
「そうだよ、ただよくね」
 ここで教授はこうも言うのでした。
「よくバイキングの兜には角があるね」
「はい、牛みたいな」
 恵梨香が答えました。
「左右に」
「そうだね、けれどね」
 それがというのです。
「実はバイキングの兜にはないんだ」
「そうなんですか」
「うん、剣を持ち上げる時に邪魔になるから」
 それでというのです。
「バイキングの兜はすっきりしたものなんだ」
「角がなくて」
「他の装飾もね、バイキングの格好は」
 それはというのです。
「簡素なんだ、ただ斧はあるよ」
「バイキングの武器で有名な」
「うん、それはね」
 あるというのです。
「ちゃんとね」
「斧はあるんですね」
「あと丸い盾と」
 バイキングのその盾のお話もする教授でした。
「鎧はそのままだよ、剣もね」
「あっ、バイキングの剣は」
 ナターシャが言ってきました。
「私達から見れば大きいですよね」
「バイキングソードだよね」
 ジョージも言います、その剣について。
「シンプルな形してるよね」
「右手に持ってね」
 神宝はその持ち方のお話をします。
「左手には盾だね」
「それで戦うんだよね」
 カルロスの口調はいつも通り陽気なものです。
「いざっていう時は」
「そうだよ、斧や槍も使うけれど」
 教授は五人にさらにお話します。
「剣も使ってね」
「それで、ですよね」
「船を使って急に出て来て」
「そして急に立ち去る」
「お身体も大きくて」
「迫力満点だったそうですね」
「そう、ただね」
 教授はバイキングの大きさのお話もしました。
「実は背は平均では一七〇位だったんだ」
「あれっ、それ位だと」
 モジャボロがそのお話を聞いて言いました。
「僕とね」
「あまり変わらないね」
「それ位の大きさじゃないかな」
「そう、実際にだよ」
 教授もその通りだとです、モジャボロに答えます。
「バイキングは当時としては大きかったけれど」
「その背丈はだね」
「平均ではね」
「一七〇位だったんだ」
「そうだったんだよ」
 これがというのです。
「実はね」
「それは意外だね」
「当時の人達は案外小さかったんだよ」
 このこともお話するのでした。
「どの国でもね」
「欧州でもだね」
「そう、ローマ人達も小柄でね」
 今から観ればというのです。
「十世紀でも一七〇あればだよ」
「凄く大きかったんだね」
「そうだったんだよ」
「そういえばね」
 ここで船長が言いました。
「モーツァルトは一五八位だったね」
「あの、それ位ですと」
 恵梨香は船長のお話を聞いて言いました。
「私のお母さんと変わらないです」
「大体それ位なんだね、恵梨香のお母さんの背は」
「それ位です」
 実際にとです、恵梨香は船長に答えました。
「大体ですけれど」
「昔は栄養摂取がよくなかったからだよ」
 教授がまた言ってきました。
「皆小さかったんだよ」
「そういえば」
 恵梨香は教授の言葉に思い出したことがありました、そしてその思い出したことを実際に言うのでした。
「昔の日本人は小さかったって」
「今よりもだね」
「言われています」
「それもだよ」
「栄養摂取が少なかったからですか」
「そう、食べものが変わるとね」
 これでというのです。
「人の背丈も変わるんだよ」
「牛乳よね」
 トロットは大好きなこの飲みもののお話をしました。
「あれを飲むとね」
「大きくなるというね」
「それでなのね」
「そう、つまり蛋白質だね」
「それを摂るとなのね」
「大きくなるんだ」
「そうなのね」
「そう、そしてね」
 それでというのです。
「牛乳以外にもお肉とかね」
「そういうものを沢山食べるといいのね」
「身体が大きくなってね」
 それでというのです。
「当時の人達は小さくてね」
「バイキングの人達もだね」
「一七〇位だったんだよ」
 教授は船長にもお話しました。
「そうだったんだよ」
「成程ね」
「そう、そして今はね」
「オズの国のバイキングの人達はだね」
「どの人も二メートル位あるよ」
 これ位の大きさだというのです。
「大きいね」
「それだけ大きいと」
 どうかとです、恵梨香は思わず言いました。
「私達の倍位ありますね」
「背丈はだね」
「それで体重は」
「三倍以上はあるだろうね」
「凄いですね」
「彼等は大きいだけじゃないからね」
 それに加えてというのです。
「骨太で筋肉質でもあるからね」
「体重があるんですか」
「太っていると体重があるかというと」
 このことはといいますと。
「実は違うんだ」
「そうなんですか」
「脂肪は実は軽いんだ、重いのはね」
「骨と筋肉ですか」
「だから肥満している人よりもね」
 脂肪でそうなっている人よりもというのです。
「骨太の人、筋肉質の人の方がだよ」
「重いんですね」
「だからバイキングの人達は」
「重いんだ」
 骨太で筋肉質だからだというのです。
「本当にね」
「そうなんですね」
「そしてね」
 さらに言う教授でした。
「君達の三倍以上の体重があっていつも鍛えていてね」
「強いんですか」
「物凄く強いよ」
 実際にというのです。
「先日会った海賊の人達も強いけれど」
「バイキングの人達もですね」
「強いよ」
 実際にというのです。
「本当にね」
「そうですか」
「戦えばね、けれどね」
「ここはオズの国だからですね」
「戦うことはね」
 幾ら強くてもというのです。
「ないよ」
「そうなんですね」
「そう、ただその大きさはね」
「今からですね」
「頭に入れておいてね」
「大きくても驚かないことですね」
 恵梨香は教授にこう返しました。
「そういうことですね」
「要するにね」
 教授は笑顔で言ってでした、そのうえで。
 船長が動かす船はバイキングの船に到着しました、すると早速質素な上着とズボンと暖かそうなブーツの逞しい人達が出てきました。
 背は男の人達は皆二メートルはあって女の人達も大きいです、金髪や茶色の髪の毛、赤毛の髪の毛で目は青の人が多いですが緑や灰色の目の人もいます。
 お肌はとても白く男の人達は皆濃いお鬚を生やしています、恵梨香はその中の金髪で青い目で濃いお鬚のとりわけ逞しい男の人を見てこんなことを言いました。
「バースさんみたい」
「バースって誰?」
 トロットが恵梨香に聞き返しました。
「その人は」
「はい、昔阪神にいた人で」
「阪神っていうと」
 こう言われてトロットは今度はこう言いました。
「オズの国の大阪の野球チームね」
「はい、外の世界にもありまして」
「その阪神の人なの」
「大活躍した選手なんです」
「そうなのね」
「私が生まれるずっと前の人ですけれど」 
 それでもとです、恵梨香は目をキラキラとさせて言うのでした。
「阪神を優勝させた素晴らしい人なんです」
「それで恵梨香も知ってるの」
「お父さんもお母さんも大好きで」
 恵梨香はさらに言います。
「お祖父ちゃんお祖母ちゃんもです」
「家族皆でなのね」
「バースさんが好きで」
「あの人を見てなのね」
「思い出しました」
「恵梨香が生まれる前だと」
 それならとです、船長が言いました。
「恵梨香はその目で現役時代を観ていないね」
「はい」
「それでも好きなんだね」
「そうなんです、バースさんは」
「それは凄いね」
 船長は恵梨香のそのお話に驚いて言うのでした。
「生まれる前に活躍していた選手が今でも愛されているなんて」
「アメリカだとね」
 トロットも言いました。
「それこそね」
「わし等は観ていないがね」
「この目ではね」
「外の世界でのお話だから」
「ベーブ=ルースさんとかね」
「あの人位だね」
「そうよね」
「ベーブ=ルースさんは私も知ってます」
 恵梨香はこの偉大な野球選手の名前を聞いても言いました。
「沢山のホームランを打った人ですね」
「うん、そうだよ」 
 船長もすぐに答えます。
「物凄い選手だったんだ」
「そうでしたね」
「わし等は外の世界から映像で観ていたよ」
「テレビで、ですか」
「オズの国ではその頃からそれに近いものがあったからね」
「あの何処でも観える鏡ですね」
 オズマが持っているあの魔法の道具だとです、恵梨香はわかりました。
「あの鏡で、ですか」
「観ていましたか」
「あの人も他の選手達もね」
「ディマジオやルー=ゲーリックも観ていたよ」
 モジャボロもお話に加わりました。
「僕達はね」
「その人達もですか」
「他のスポーツもね」
「そうだったんですね」
「そう、ただね」
 それでもとです、モジャボロは恵梨香に言うのでした。
「バースさんは凄い人気だね」
「はい、本当に今でもです」
「恵梨香達の間ではだね」
「阪神ファンの間では」
「それだけで凄い選手だってわかるよ」
「というかね」
 ここで言ったのはビリーナでした。
「恵梨香金髪でお鬚生やして大きい人観てよね」
「バースさんって言ったことが?」
「それが凄いわ」
「とはいっても」
「恵梨香っていつもこうだよね」
「そうなんだよね」
「金髪の白人の人で濃い顎鬚生やしてて体格がよかったら」
 ナターシャ達四人も言います。
「いつもそう言うから」
「バースさんに似てるって」
「本当に誰でも」
「国籍とか民族に関係なく」
「ついつい思い出すの」 
 恵梨香は四人に真面目なお顔で答えました。
「実際にね」
「それだけバースさんへの思い入れが強いのね」
「そういえば他の日本人の子達もだね」
「そうした人を見ればバースさんって言うね」
「本当にどの子もいつも」
「そういえば」
 船長は四人のお話を聞いて気付いたことがありました、その気付いたことは一体どういったものかといいますと。
「君達が通っている八条学園は関西にあるね」
「はい、阪神のある」
「その関西にあります」
「それで関西の子が多くて」
「恵梨香なんか完全に地元ですし」
「皆阪神が好きよ」
 その恵梨香も言います。
「関西の人はね」
「それでバースさんは今も愛されていて」
「体格のいい金髪の白人さんが濃いお鬚を生やしていたら」
「バースさんに見えるんだね」
「思い出すんです」
「そういうことだね」
「本当に私のお父さんやお母さんが生まれるかどうかという時の人で」
 その頃に活躍していたというのです。
「物凄く打ったんですよ」
「ベーブ=ルースよりもだね」
「三冠王を獲得して」
「ホームラン王、打点王、首位打者だね」
「阪神を日本一にしたんです」
「そうしたことがあったからだね」
「今も愛されています、バースさんご自身も」
 ご本人もというのです。
「今も阪神ファンの人達を大事にしてくれますし」
「それは当然だね」
「当然ですか」
「自分をそこまで愛してくれる人をね」
 それこそとです、船長は恵梨香に答えます。
「大切にしない人はいないよ」
「そうですか」
「だって生まれるずっと前に活躍していたのに恵梨香も好きだね」
「はい」
「そこまでなんだからね」
 深く愛してもらっているからだというのです。
「大切に想わない筈がないよ」
「そういうことですか」
「わしから見ても恵梨香の想いは強いしね」
「その人の背番号の数字も好きですし」
「何番かな」
「四十四番です」
 この数字だというのです。
「あと私一、六、七、十、十一、十六、十九、二十二、二十三、二十八、二十九、三十一も好きです」
「それぞれ好きな選手が着けていたんだね」
「そうでした、そのうち十と十一、二十三は永久欠番です」
 恵梨香はこのこともお話しました。
「特に十一番は」
「好きなんだね」
「村山実さんという人の背番号で」
 それでというのです。
「大好きです」
「四十四よりもかな」
「同じ位です」
「その村山さんも幸せだね」
「幸せですか」
「ご自身が活躍したずっと後でも好きな人がいるんだから」
「お祖父ちゃんが若い頃の人でした」
 恵梨香はこのこともお話しました。
「凄いピッチャーだったんです」
「その人はピッチャーだったんだね」
「誰よりも必死に投げて阪神が好きだった」
「そうした人だったんだね」
「そうでした」
「恵梨香は素敵な人達を好きみたいね、ではね」
 トロットは恵梨香のお話をそこまで聞いて微笑んで言いました。
「これから別の素敵な人達のところにね」
「行くんですね」
「そぅしましょう」
 バイキングの人達のところにというのです。
「いいわね」
「わかりました」
 恵梨香は頷いてでした、そのうえで。
 皆と一緒にバイキングの人達のところに行きました、船長が最初にその人達に挨拶をしてお話をしました。
「やあ、久し振り」
「こちらこそ」
 バイキングの人達の中の恵梨香がバースに似ていると言った人がバイキングの人達を代表して応えます。
「元気そうだね」
「この通りだよ」
 船長はその人に陽気に笑って応えました。
「わしは元気だよ」
「それは何よりだよ。それはそうと」
 その人はここで恵梨香を見て言いました。
「この娘さんがわしを見てバースとか言ってたね」
「うん、この娘が知っている野球選手にあんたが似ているらしくてね」
「そうか、しかしわしはエリックだからな」
「バースじゃないな」
「そうだよ」
 このことを言うのでした。
「随分と熱心に言っていたけれど」
「じゃあそのことをな」
「言うんだね」
「そうさせてもらうよ」
 船長に笑顔でお話しました。
「是非ね」
「ではね」
「うん、この娘にも話しておくよ」
「君の名前はバースじゃなくてだね」
「エリックとね」
「そう、確かにね」
「やっぱりそうですよね」 
 恵梨香もその辺りのことは実はわかっていました、それで言うのでした。
「バースさんじゃないですね」
「そうだよ、わしの名前はエリックだよ」
「はい、わかりました」
「その様にね」
「覚えておきます」
「それではね」
「ええ、これからは」
 トロットがここで言ってきました。
「皆でね」
「我々の村に来てくれ」
「バイキングの村に」
「是非ね」
 こう言ってです、皆は一緒にでした。
 エリックさん達バイキングの人達に案内してもらってバイキングの村にお邪魔しました、そしてそこに行くとです。
 質素でかつ頑丈な樫やオークの木で造られた家々や貯蔵庫があってです、そうして牧場もあって港にはです。
 船も沢山あります、漕ぐ船でマストもあります。そして村の中にはです。
 角のない教授がお話した通りの兜にやはり質実剛健な感じの金属の鎧に丸い盾を持っていてです。両刃の剣に斧やハンマーを持っている人達がいます。
 その人達を見てです、恵梨香は思わずこう言いました。
「この目でバイキングを見るなんて」
「これもオズの国ならではだね」 
 神宝も目を輝かせて言います。
「本当に」
「外の世界だと」
 到底と言ったのはジョージでした。
「とてもね」
「本物のバイキングはいないから」
 ナターシャはその現実をお話しました。
「海賊もオズの国にいる生きもの達も」
「だからね」
 それでとです、最後にカルロスが言いました。
「今も会えて何よりだよ」
「そう思ってだよ」
 それでとです、船長は五人にお話しました。
「君達をこの島に連れて来たけれどね」
「どうやら船長さんの予想通りになったわね」
 ビリーナは船長の足元で言いました。
「そうなったわね」
「そうだね」
 船長はビリーナのその言葉にも頷きました。
「よかったよ」
「ええ、ただね」
「ただ。何かな」
「美味しい匂いがしない?」
 ビリーナはここでこんなことを言うのでした。
「何かを煮たり焼いたりする感じの」
「ああ、今からね」
 ここで言ってきたのはエリックさんでした。
「お昼なんだ」
「そういえばそんな時間ね」
「だからね」
「今から作ってるのね」
「そうだよ」
「そういえば」
 今度は恵梨香が言いました。
「沢山の食べものをお皿から取り放題で食べるのをバイキングって言うわね」
「それは日本だけでしょ」
「何でそうなったかわからないけれど」
「日本だけだよね」
「普通ビュッフェって言わない?」
「今じゃ日本でも」
「それがどうしてか」
 恵梨香はナターシャ達四人に首を傾げさせつつ答えました。
「その呼び方になったのよ」
「そうなのね」
「何でかな」
「バイキングの人達が豪快だからかな」
「それでかな」
「そのことだけれどね」
 ここで教授が五人にお話してくれました。
「日本でそう呼ばれるのはあるホテルではじまって」
「それで、ですか」
「その時の店名がバイキングでね」
「それで、ですか」
「日本ではその呼び名になったんだよ」
「そうだったんですか」
「まあこうした食べ方は何処でもあるかな」
 それこそと言う教授でした。
「オズの国でも普通だしね」
「そう、わし等はこの体格だね」
 エリックさんは自分達のその大柄な身体を見せつつ恵梨香にお話しました。
「大きいね」
「だからですか」
「色々なものを沢山食べないとね」
「駄目だから」
「もう皆で料理したものを何でもお皿に沢山出して」
 そうしてというのです。
「たらふく食べるんだ」
「そうしていますか」
「そう、そしてね」
「今からもですね」
「そうして食べようか」
「それじゃあ」
「皆遠慮は無用だよ」
 エリックさんは笑顔でこうも言いました。
「わし等の村の料理を楽しんでくれ」
「それではね」
 モジャボロがエリックさんに笑顔で応えました。
「宜しく頼むよ」
「それではね」
 こうしてでした、皆はバイキングの村のお食事をご馳走になることになりました、するとすぐにでした。 
 村の広場にある樫の木で造られたテーブルの上にです、大きなお皿に乗せられた茹でられた人参やジャガイモ、羊肉を茹でたものや煮られたソーセージに鮭を焼いたものパンにチーズに林檎にです。
 色々なお野菜とベーコンが入ったスープが入った巨大なお鍋が運ばれてきました、牛乳はとても大きな壺の中に入っていてビールが樽に幾つも入っています。
 そのお料理を見て恵梨香は目を丸くして言いました。
「これはまた」
「どうかな」
「豪快ですね」
「ははは、これがね」
「バイキングのお食事ですか」
「そうだよ、どれもバターや塩胡椒で手早く味付けをしてね」
 そうしてというのです。
「作っているんだ」
「バイキングのお料理はシンプルでね」
 ビリーナは茹でられた玉蜀黍の山を見ています、そのうえでの言葉です。
「豪快な感じなのよね」
「手の込んだお料理も作るけれどね」
「多くはよね」
「こうしたね」
「シンプルで豪快ね」
「そうしたものだよ」
 実際にというのです。
「見ての通りね」
「そうよね」
「そしてね」
 エリックさんはビリーナにさらにお話します。
「これからね」
「私達もね」
「好きなだけ食べてね」
「ええ、遠慮はね」
「オズの国では禁物だからね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 皆でバイキングのお料理を食べました、船長はソーセージを食べて巨大な木のジョッキに入っているビールを飲みつつ言いました。
「いや、いいね」
「船長も満足しているね」
 エリックさんは笑顔でビールを飲んでいる船長に声をかけました、見ればエリックもその手にはビールが入ったジョッキがあります。
「それもかなり」
「こうしたシンプルなものを食べてね」
 そしてとです、船長は言うのでした。
「ビールを飲む」
「これがだね」
「美味しいからね」
「そう、ジャガイモもね」
 エリックさんは茹でたジャガイモの上にバターを乗せます、するとバターは茹でられて熱があるジャガイモの上で溶けていきます。
 そのジャガイモをフォークとナイフで食べつつ言うのでした。
「こうしてだよ」
「茹でたものにバターを乗せて食べるとね」
「これが実に美味いね」
「そうだね」
「ジャガイモはお料理をしても美味しいけれど」
 モジャボロもジャガイモを食べています、上に乗せたバターが溶けている黄色がかった白いジャガイモがとても美味しそうです。
「こうしてね」
「シンプルなものでもだね」
「物凄く美味しいね」
「本当にね」
「そういえば」
 ここでトロットが言ってきました。
「日本には面白いジャガイモ料理があるわね」
「面白いですか」
「ええ、肉じゃがね」
「ああ、あれですね」 
 肉じゃがと聞いてです、恵梨香は思わず笑顔になってトロットに応えました。
「肉じゃがは確かに美味しいですね」
「私も時々テーブル掛けで出したりして食べるけれど」
「お肉や人参や玉葱も入っていて」
「みりんやお醤油の味付けもよくてね」
「美味しいですね」
「そうよね」
「何か美味しそうなお料理だね」
 エリックさんもジャガイモのお話に興味津々な感じです。
「それじゃあね」
「エリックさんもですか」
「何時かその肉じゃがを食べてみるよ」
「そうしてくれますか」
「うん、さっきも言ったけれどわし等も色々食べていてね」
「こうしたお料理以外にですね」
「スパゲティやハンバーガーも食べるし」
 それにというのです。
「中華料理やボルシチも食べるよ」
「結構色々召し上がられてるんですね」
「お寿司も食べるしね」
 エリックさんは恵梨香ににこりと笑ってこちらのお料理もとお話しました。
「わし等は大きいから一人辺り五十皿は食べるよ」
「ええと、五十皿といいますと」
「百貫だね」
「そうなりますね」
「皆それ位食べるんだ」
「それは凄いですね」
「何しろこの身体だからね」
 ジャガイモを食べながらです、エリックさんは自分の胸を左手で軽く叩いてそのうえで恵梨香にお話しました。
「皆どんどん食べてね」
「それで、ですか」
「お寿司もね」
「百貫ですか」
「それ位は食べるよ」
 一度のお食事でというのです。
「そうなっているよ」
「私はとても」
「百貫はだね」
「食べられないです」
 本当にとてもと言うお顔で言う恵梨香でした。
「身体も小さいですから」
「それは彼等の体格だからだよ」
 船長は今度は羊肉の茹でたものを食べています、味付けは塩胡椒でシンプルなものでソースをかけて食べる人もいます。
「二メートルもあるからね」
「エリックさんが今お話された通りに」
「それだけ食べるんだよ」
「そうなんですか」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「彼等にとっては普通だよ」
「食べる量は体格にもよるんですね」
「そう、君達は子供で小さいからね」
 だからだというのです。
「百貫はとてもだね」
「はい」
「そうしたことも人それぞれだよ」
「食べる量についても」
「そういうことだよ」
「そう、だからね」
 モジャボロは今度はスープを飲んでいます、様々なお野菜と切られたベーコンの味がコンソメスープに出ています。
「食べる量を凄いと思わないことだよ」
「人それぞれだから」
「少食でもいいんだよ」
「あくまでその人がお腹一杯食べるかだよ」 
 船長はまたビールを飲みつつお話しました。
「その人それぞれの適量でね」
「お腹一杯ですね」
「食べられればいいんだよ」
「そうなんですか」
「だから君達もね」
 恵梨香達にしてもというのです。
「お腹一杯食べて」
「それで、ですね」
「よしとしようね」
「わかりました」
 恵梨香も他の子達もでした、船長の言葉に頷いてでした。 
 そのまま食べていきます、パンも食べますがバイキングの人達は白いパンにバターやジャムをたっぷりと塗ってです。
 そうして食べています、その塗り方に五人共言いました。
「凄いいわね」
「豪快だよね」
「たっぷりと塗ってね」
「それで食べてるから」
「パンを食べるにも迫力満点ね」
「そう、バイキングは何でも大きくなんだ」
 またエリックさんが答えます。
「迷わずにね、ちまちまやるより」
「それよりもですか」
「大きくね」
 それこそというのです。
「沢山取って」
「そうしてですか」
「ジャムやバターもね」
「豪快に塗ってですね」
「食べるんだ、多少多くても」
 それでもとです、エリックさんは恵梨香にお話します。
「それはどうでもいいんだ」
「食べて終わりですね」
「食べ過ぎでもわし等は力仕事ばかりだから」
「エネルギーになるんですね」
「それにこの体格だからね」
 ここでもバイキングの人達の体格のお話が出ます。
「それでだよ」
「食べ過ぎてもですね」
「多少なら問題はないからね」
「迷わないんですね」
「迷うことはバイキングはしないよ」
「一切ですか」
「すぐに決めて」
 そしてというのです。
「動くんだ」
「そうされているんですか」
「いつもね」
「航海の時もですか」
「勿論、畑仕事の時も牧場でもね」
「お料理の時」
「そうだよ、とにかく迷わないでね」
 そうしてというのです。
「決めてね」
「動くんですね」
「そうだよ、だからパンを食べるにも」
 エリックさんも今はパンを食べています、林檎のジャムをたっぷりと塗って大きなお口で食べています。
 そうしながらです、恵梨香達にまたお話するのでした。
「この通りだよ」
「そうですか」
「そう、そしてね」
 それでと言うのでした。
「お腹一杯食べて」
「多少食べ過ぎても」
「後で思いきり働く」
「そうされるんですね」
「それでも動き足りないなら」
 その時はといいますと。
「スポーツをするんだ」
「そうされていますか」
「うん、水泳をしたり球技をしたり格闘技をしてね」
 そうしたものを楽しんでというのです。
「楽しんでいるよ」
「身体は思いきり動かすんですね」
「毎日ね、それからお風呂にも入って」
「お風呂もお好きですか」
「そうなんだ、それで身体を奇麗にしてあったまって」
 そうなってというのです。
「ぐっすりと寝るんだ」
「そうですか」
「毎日ね」
「何か本当に豪快ですね」
「それがバイキングの性格だよ」
「何でも迷わずに」
「食べて働いてスポーツをしてね」
 そしてというのです。
「お風呂に入って寝て」
「また明日ですか」
「うん、そうした生活だよ」
「それで毎日」
「そう、毎日ね」
 まさにというのです。
「そうして暮らしているよ」
「オズの国の海も巡っておられるんですね」
「川を使えば」
 その場合はといいますと。
「オズの国の中にもね」
「入って行けますか」
「僕達は船が行ける場所ならね」
 エリックさんはここでテーブルの上に運ばれてきたデザートを見ました、そのデザートは林檎や葡萄や桃といった果物達でした。
「何処でも行けるんだ」
「オズの国の」
「そう、オズの国のね」
「じゃあ行ける範囲は広いですね」
「そうだよ、オズの国は川も多いね」
「はい」
 その通りだとです、恵梨香はエリックさんに答えました。
「そちらも」
「その川達に海から入ってね」
「上っていって」
「オズの国の何処でもね」
 それこそというのです。
「行き来出来るんだ」
「それで海だけでなく」
「オズの国の中にもね」
「入ってですね」
「冒険をしているよ」
「実際にバイキングは川を伝っているよ」
 このことは船長もお話します。
「外の世界でもね」
「そうだったんですね」
「北欧諸国から出てね」
 そしてというのです。
「海だけでなく川にも入って」
「その川を上って」
「それでね」
 まさにというのです。
「欧州中を暴れ回ったんだよ」
「それは凄いですね」
「だから恐れられもしたんだ」
 バイキング、彼等はというのです。
「彼等はね」
「確かに川を使えば」
「それだけでかなりの場所を行き来出来ますね」
「それも素早く」
「そうですね」
 ナターシャ達四人も言いました、四人も楽しく食べています。勿論教授もモジャボロもビリーナも他のバイキングの人達もです。
「バイキングのお話は僕達も知ってました」
「川も使っていたことは」
「海だけじゃなくて」
「そうしてましたね」
「皆知ってたのね」
 恵梨香は今度は四人に言いました。
「バイキングの人達が川を使うことも」
「結構有名というかね」
「大きな川があると使うよね」
「色々なことに」
「そうだよね」
「日本は大きな川が少ないね」
 ここで言ってきたのは船長でした。
「そうだね」
「淀川や利根川はありますけれど」
「けれど他の国と違ってね」
「皆のそれぞれのお国とですか」
「そして欧州ともね、大きな川があると」
 それでというのです。
「皆その川を使ってね」
「行き来したりするから」
「だからだよ」
 それでというのです。
「皆わかってるんだよ」
「そうなんですね」
「バイキングがそうすることもね」
「けれど日本は違うから」
「島国で国に大きく流れる川がないからね」
「このことがわかりにくいですか」
「船は海も移動出来て」
「川もで」
「大きな川を船で移動すればね」
「かなりの距離をですか」
「移動出来るんだよ」
 そうだというのです。
「本当にね」
「そうですか」
「そう、それでだよ」
「バイキングの人達が川を使っていて」
「オズの国でも使っていることをね」
「理解出来ていて知っていた」
「そうなるよ、日本人としては実感が湧きにくいね」 
 このことはというのです。
「淀川から大阪から京都には行けてもね」
「今は電車ですぐですし」
 恵梨香が知っている限りではです。
「そのことも」
「それで余計にだね」
「わからなかったです」
「時代のこともあるのね」
「今の日本は線路が多くて」
 つまり電車があちこちを走っているというのです。
「ですから川のことは」
「余計にわからないのね」
「街から街を川を使っての行き来は」
 そうしたことはというのです。
「ないですね」
「それでバイキングの人達のことも」
「知らなかったですし」
「実感としてもなのね」
「なかったです」
「そこは日本独特ね」
「そうみたいですね」
 こう船長に答えました。
「どうやら」
「アメリカも大きな川があるからね」
「ミシシッピー川ですね」
「この川と使ってだよ」
「アメリカの中を行き来出来るんですね」
「海にも出られるしね」
 このことも可能だというのです。
「それでわし等もね」
「船長さんは船乗りだから特にですね」
「そうだよ、大きな船に乗って」
 そしてというのです。
「海からミシシッピー川に入ってね」
「そのまま上ってですね」
「シカゴに行くことも出来るんだよ」
 ミシシッピー川の最初の地点と言っていいこの街にというのです。これは五大湖の方から見てのことです。
「それもね」
「そうなんですね」
「そう、だからね」
「バイキングの人達は川も行き来していた」
「このことは覚えておいてね」
「わかりました」
 恵梨香は船長のお話に頷きました。
「それじゃあ」
「さて、皆まだまだ食べものはあるからね」
 エリックさんがまた言ってきました。
「どんどん食べてね」
「どんどんですね」
「そう、バイキングだから」
 それ故にというのです。
「何でもね」
「お腹一杯ですね」
「食べるものだからね」
 それ故にというのでした。
「君達もそのバイキングの村に来てくれたから」
「どんどん食べて」
「楽しんでね」
「そうさせてもらいます」
 恵梨香が皆を代表してそうしてでした。
 皆はバイキングの人達が出してくれた食べものをお腹一杯食べました、そしてこの日はバイキングの村にお邪魔して一日ずっと楽しみました。








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