『オズのファイター大尉』




                第十二幕  素敵なプレゼント

 一行はこれまで来た道をそのまま引き返してエメラルドの都に向かっていきます、その時にでした。
 神宝達五人がそれぞれ言いました。
「行く時よりも帰る時の方が早いね」
「世界樹でもそうだったけれどね」
「今の黄色い煉瓦の道を進むにも」
「今だってそうね」
「すいすい進んでいくわね」
「旅はそうだね」
 大尉が五人に答えました。
「行く時よりもね」
「帰る時の方がですね」
「速いですね」
「世界樹の時もそんなお話をしましたけれど」
「実際にですよね」
「速いですよね」
「そうだよ、通ったばかりの道で」
 それでというのです。
「帰ろうって足がね」
「自然とですね」
「速くなってですね」
「それで帰るのも速いんですね」
「今みたいに」
「そうなんですね」
「そうだよ、とはいってもね」
 足取りが速くなっていてもです。
「安全には気をつけて、そして旅を楽しむこともね」
「このこともですね」
「忘れたらいけないですね」
「しっかりと気をつけて楽しんで」
「そうしてですね」
「旅をしていけばいいですね」
「そうだよ、お家に帰るまでが旅だからね」
 目的を達成して終わりではなくです。
「だからね」
「はい、帰る時までですね」
「楽しんで帰って」
「旅を満喫すればいいですね」
「エメラルドの都に戻るまで」
「ヘンリーさんとエムさんのお家に行くまで」
「お家に行くのが凄く楽しみなの」
 ドロシーが笑顔で言いました。
「おじさんとおばさんにお会い出来るから」
「僕もだよ」
 トトもドロシーのすぐ左の足元から言ってきました、トトの足取りも行く時より速い感じになっています。
「暫く振りだからね」
「元気なのはわかってるけれど」
「今どうしてるかね」
「そのことも見たいから」
 だからというのです。
「会うのが楽しみよ」
「そうだよね」
「人は誰でもだね」
 まさにと言ったかかしでした。
「家族に会いたいからね」
「だからよ」
 ドロシーはかかしにも答えました。
「私もね」
「お二人に会いたくて」
「会う時を楽しみにしてるのよ」
「そうだね」
「僕達は肉親はいないけれど」
 それでもと言う樵でした。
「ドロシー達の気持ちはわかるつもりだよ」
「家族に会いたいっていうそれがよね」
「うん、大切なものだね」
「何よりもね」
「友達よりも大事だね」
「ずっと育ててくれた人だから」
 まさに育ての親なのです、ドロシーにとって。
「だからよ」
「そうだよね」
「僕にとってのオズマかな」
 ジャックはこう考えました。
「オズマが僕を作ってくれたしね」
「そうなるかしらね」
 ドロシーはジャックのその言葉に頷きました。
「言うならね」
「そうだね、じゃあね」
「ジャックがオズマに会う時みたいに」
「楽しみなのよ」
「そうよね、じゃあね」
「今からね」
「お二人のお家に行こうね」
 ジャックは楽しく言います、そしてでした。
 ふとです、ポリクロームが一行に自分達から見て右手にある湖を指差してこんなことを言いました。
「見て、恐竜がいるわよ」
「あっ、ブラキオサウルスだね」 
 神宝が湖からお顔を出している恐竜を見て言いました、長い首と小さくて頭が瘤みたいな形になっている恐竜です。
「あれは」
「ブラキオサウルスっていうとあれだよね」
 ジョージはその恐竜の名前を聞いて言いました。
「雷竜でね」
「うん、足はしっかりとした四本で」
 それでと言うカルロスでした。
「お水の中にいることが多かったんだね」
「それで今はなのね」
 ナターシャもそのブラキオサウルスを見つつ言います。
「湖の中にいるのね」
「そうなのね、オズの国には恐竜もいるから」
 それでと言う恵梨香でした。
「こうして普通に見られるのね」
「お空にも恐竜はいるけれど」
 それでもと言うポリクロームでした。
「翼竜ばかりだから」
「あっ、プテラノドンとか」
 神宝は翼竜と聞いてすぐにこの恐竜の名前を出しました。
「そうした恐竜ですね」
「そう、お空を飛べるでしょ」
「そうした恐竜は」
 つまり翼竜はです。
「だからオズの国のお空にですね」
「いるの、そうした恐竜は見られるけれど」
「それでもですね」
「最近地上に来てないから」
 だからだというのです。
「ああした恐竜はね」
「最近見ていなくて」
「それでね」
 だからだというのです。
「ブラキオサウルスを見られて嬉しいわ」
「そうなんですね」
「もっと地上に来て」
 そうしてというのです。
「旅をすべきかしら」
「ご家族に事前にお話をしてね」
 そうしてと言う大尉でした。
「そのうえでね」
「旅をすればいいわね」
「うん、僕はそう思うよ」
「そうね」
 少し考えてからです、ポリクロームは大尉に答えました。
「そうして断って」
「それからだね」
「地上で皆と一緒に旅をする様にするわ」
「そうしたらいいよ」
「オズの国いると」
 それでと言う神宝でした。
「お空にも行けるけれど」
「それでもだね」
「はい、地上にいても」
「何処でもね」
「不思議な物事が沢山あって」
「見ていて楽しいね」
「恐竜にしても」
 大尉もそのブラキオサウルスを見ています、恐竜は湖からお顔を出して岸辺の草をゆっくりと食べています。
「外の世界にはいないっていうしね」
「まだいるってお話も多いですが」
「確かな証拠はないね」
「はい、それは」
「けれどね」
 それでもというのです。
「こうしてね」
「オズの国では」
「普通にいるから」
「見てですね」
「楽しんでね」
「そうさせてもらいますね」
「他の恐竜も見たいわね」
 こうも言ったポリクロームでした。
「次の旅の時には」
「うん、あちこち歩いているとね」
 オズの国をとです、大尉はポリクロームにお話しました。
「そうしているとね」
「会えるわね」
「そうだよ」
「じゃあ次は」
「次の冒険、旅の時は」
「恐竜を見る旅をしたいわね」
 ひらひらと踊りながらです、こんなことを言うポリクロームでした。そうしたお話をしたうえで、です。
 一行はさらに先に進んでいきます、そしてでした。
 都まで順調に進み遂にでした、都に入ることが出来ました。一行は奇麗な青から見事な緑の世界に入ってです。
 そうしてお昼御飯を食べました、この日のお昼は担々麺ととても辛くした麻婆豆腐に水餃子と羊料理でした。
 その辛くお野菜と一緒に炒めた羊のお肉を食べつつ言うトトでした。
「このお料理は四川料理だね」
「うん、そうだよ」
 神宝は担々麺を食べつつトトに答えました。
「四川料理はこうしてね」
「辛く味付けしているね」
「こうしたのもいいよね」
「僕何度も食べてるけれどね」
 その四川料理をです。
「この辛さが食欲を刺激されてね」
「いいよね」
「本当にね」
「だからね」
 それでと言う神宝でした。
「僕達もね」
「こうして食べて」
「そうしてね」
 そのうえでというのです。
「お腹一杯になろうね」
「美味しいものを食べてね」
「水餃子も」
 ドロシーはそちらを食べながら言いました。
「辛い味付けにしたら」
「それはそれでね」
「美味しいわね」
「そうだよね」
「私は食べないけれど」 
 中国茶を飲みながら言うポリクロームでした。
「皆特に麻婆豆腐を食べているわね」
「だって美味しいから」
 それでとです、ドロシーはポリクロームに答えました。
「それでね」
「麻婆豆腐を食べるのね」
「この辛さとお豆腐がいいわね」
「はい、本当に」
 神宝も今度は麻婆豆腐を食べつつ言います。
「素敵な味ですよ」
「四川料理っていうとこれですね」
「まずはこれですよね」
「辛くて美味しくて」
「幾らでも食べられます」
 ジョージ達四人もこう言いつつ麻婆豆腐を食べています。
「唐辛子や山椒も入っていて」
「ピリリとくるんですよね」
「それで食欲を刺激されて」
「お豆腐も挽肉も食べられます」
「魔法がかかったみたいだよ」
 トトはこう言いました。
「本当にね」
「ええ、どんどん食べられるわね」
「そうだよね」
 トトはドロシーに笑顔で応えました、そして彼も麻婆豆腐を食べて心からにこりと笑って言いました。
「この辛さのお陰でね」
「子供にはって言う人もいるけれど」
「ドロシーは平気だね」
「オズマ達もね」
 トロットやベッツイもです。
「それで神宝達もね」
「最近ですね」
「最近辛いものも食べられる様になりました」
「甘いものだけじゃなくて」
「それでお寿司の山葵も平気になりました」
「唐辛子も」
「そうなのね、私も大体貴方達の頃からかしら」
 まさにと言うドロシーでした。
「辛いものが平気になったのは」
「子供でもだね」
 それでもとです、トトは麻婆豆腐を食べつつ言いました。
「大体神宝位の年齢から」
「ええ、その頃からね」
「甘いだけじゃなくてだね」
「辛いものもね」
「食べられる様になるんだね」
「そうよ、それでね」 
 だからというのです。
「皆も平気なのよ」
「そうなるんだね」
「ええ、だからね」
「こうしてだね」
「皆美味しく食べられるのよ」
 とても辛いお料理、四川料理もというのです。
「こうしてね」
「そういうことだね」
「じゃあね」
「うん、この四川料理もね」
「楽しみましょう、それでデザートは」
 最後の楽しみのそれはといいますと。
「今日はごま団子よ」
「中国のお菓子の一つだね」
「それになるわ」
「いいね、じゃあ最後の最後までね」
「楽しみましょう」
 お食事をというのです、こうお話してでした。
 皆は最後のごま団子まで楽しんでそうしてから旅を再開しました、そうしてヘンリーおじさんとオムおばさんのお家にです。
 遂に着きました、するとお二人はすぐにドロシー達を見て満面の笑顔になりました。
「おお、久し振りだな」
「よく来てくれたわね」
「ドロシーにトトに」
「他の人達も」
「おじさん、おばさんお久し振り」
 暫く振りでも今はお二人に合わせてこう返したドロシーでした。
「それでワインは」
「ああ、今からな」
「今から造るわ」
「丁度葡萄も摘み終わってな」
「本当にこれからよ」
「そう、よかったわ」
 充分間に合ったと聞いて笑顔になったドロシーでした。
「それじゃあ贈りものがあるの」
「贈りもの?」
「っていうと何だい?」
「これよ」
 こう言ってです、ドロシーはバスケっとボックスから世界樹の葉とお花を出しました。そうしてでした。
 おじさんとおばさんに葉とお花を出して言うのでした。
「これをワインに入れてね」
「それは世界樹の葉か」
「世界樹のお花よね」
 お二人はドロシーが出したものが何かすぐにわかりました。
「まさかあそこまで行ってか」
「手に入れてきたの」
「そうなの」
 その通りとです、ドロシーは笑顔で答えました。
「だからね」
「その葉をお花をワインに入れてか」
「美味しいワインを造って欲しいのね」
「ええ、そうしてね」
 是非にと言うドロシーでした。
「そうしてね」
「悪いな、いつもね」
「何かとしてもらって」
「カンサスにいた時からドロシーには助けてもらってばかりだよ」
「本当にね」
「何言ってるの、私の方こそよ」
 まさにと返したドロシーでした。
「おじさんとおばさんにはね」
「いつもか」
「助けてもらってるっていうのね」
「そうよ」
 こう言うのでした。
「だからね」
「こうしたことはか」
「いつもなのね」
「そう、させてもらうわ」
 是非にという返事でした。
「本当にね、じゃあ美味しいワイン造ってね」
「わかった、しかしお礼をしないとな」
「これはね」
 是非にとです、お二人も言いました。
「ワインのお礼にね」
「何かしないと」
「それじゃあどんなお礼をしようかしら」
「これからな」
 お二人でお話してでした、そのうえで。
 それで何を出したかというとです、それは。
「あっ、葡萄ジュースね」
「それをなんだ」
「皆で飲んでくれるかい?」
 ヘンリーおじさんはドロシーとトトだけでなくて他の皆にも言いました。
「これもドロシーが美味しくしてくれたんだ」
「そうしてくれたジュースなの」
「造る時に手伝ってくれてな」
「物凄く美味しくなる魔法のお薬も入れてもらったのよ」
「オズマ姫から貰ったっていうね」
「それを入れてくれたのよ」
「ジュースもドロシーさんが手伝ってくれたんですね」
 神宝はお二人の言葉を聞いてしみじみとして言いました。
「そうなんですね」
「そう、いつもな」
「何かと手伝ってくれるのよ」
「造る作業だけでなくな」
「今回みたいなことをいつもしてくれるの」
「当然だから」
 それでと答えるドロシ―でした。
「こうしたことは」
「そうなんですか」
「だっておじさんとおばさんはね」
 ドロシーにとってはというのです。
「とても大切な人達だから」
「ご家族だから」
「そうよ」
 何といってもというのです。
「だからね」
「こうしてですか」
「今回もだし」
「その前もなんですね」
「そうなの」
 神宝に笑顔でお話します。
「ジュースだってね」
「オズマ姫からですか」
「魔法のお薬を貰ってね」
「そうしてなんですね」
「入れてもらったの」
 おじさんとおばさんにというのです。
「そうしたの、そしてね」
「葡萄ジュースもですね」
「美味しくしてもらったの」
「そうなのね」
「そう、そしてね」
 それでというのです。
「他のものもね」
「お二人が造るものは」
「全部ね」
 それこそというのです。
「そうしてきたのよ」
「そうなんですね」
「では皆ね」
「はい、これからですね」
「ジュース飲みましょう」 
 ドロシーが手伝ったおじさんとおばさんが造ったジュースをというのです。
「これからね」
「わかりました」
 飲める皆が応えてです、そうしてでした。
 ドロシーとトト、神宝達五人とポリクロームが葡萄ジュースを飲みました。すると最初にポリクロームが言いました。
「これは本当に」
「物凄く美味しいでしょ」
「ええ」
 その通りとです、ポリクロームはドロシーに答えました。
「こんな美味しい葡萄ジュースはじめてよ」
「これがなの」
「お礼のジュースなのね」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「おじさんとおばさんが造ったものなのよ」
「ドロシーが手伝って魔法のお薬を入れた」
「そのお薬は実はね」
「実は?」
「造った人達の努力に比例してなの」
「美味しくなるお薬なの」
「だからね」
 そうしたおお薬だからだというのです。
「おじさんとおばさんが本当に頑張ったから」
「美味しくなったの」
「そうなの」
 まさにというのです。
「本当にね」
「そうなのね」
「だからこれからもね」
「ドロシーはお手伝いをしていくのね」
「とても頑張ってくれてるから」
 おじさんとおばさんがです。
「私だってね」
「是非にって思って」
「いつもプレゼントをして」
「ここに来たらお手伝いをさせてもらってるの」
 こうポリクロームにお話しました。
「何かとね」
「いや、本当にドロシーには助けてもらってるよ」
「何かとね」
「こんないい娘はいないよ」
「私達の自慢の姪よ」
 ヘンリーおじさんとエムおばさんもこう言います。
「本当にね」
「いつも助けてもらってるよ」
「ドロシーはずっとこうなんだ」
 ここでトトもポリクロームに言います。
「カンサスにいた時からね」
「お二人の為に働いているのね」
「そうなんだ、じゃあね」
 トトは今度はドロシーに言いました。
「お手伝いしようね」
「そうしましょう」
「では我々もね」
 大尉も言ってきました。
「お手伝いをさせてもらおうか」
「そうだね、折角来たからね」
 かかしが大尉に続きました。
「そうさせてもらおうかな」
「僕達に出来ることをね」
 樵もこう言います。
「させてもらおうね」
「さて、僕達に出来ることをね」
 ジャックも完全にお手伝いをするつもりです。
「やらせてもらおうね」
「じゃあ僕達もね」
「僕達だけ何もしないとかよくないからね」
「そうだよね」
「私達もお手伝いさせてもらいましょう」
「是非ね」
 神宝達五人もお話してです、そうしてでした。
 皆でお二人のお仕事をお手伝いしようと思ったのですが。 
 そこで、です、ヘンリーおじさんとエムおばさんにこう言われました。
「もう魔法と科学で暮らしてるからね」
「キッチンもお風呂もボタン一つで色々出来る様になったから」
「昔みたいに家事も多くないよ」
「何かとね」
「ワイン造りも機械で葡萄を潰して出来るから」
「昔みたいに足で踏むことはないからね」
 そうしたことはないのです。
 それで、です。二人は皆に言いました。
「ドロシーだけで充分だよ」
「ドロシーがちょっと手伝ってくれたらそれでいいのよ」
「皿洗い器に入れて洗った食器をなおす位かな」
「お家の中のお掃除はいつも二人でしてるしね」
「だから僕達だけで充分なんだ」
 トトも皆に言います。
「だから安心してね」
「そうなんですか」
「それじゃあですね」
「僕達は特にですね」
「やることがないんですね」
「そうなんですか」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「休んでいいみたいだよ」
「じゃあ何をしようかしら」
 ここでこう言ったのはポリクロームでした。
「これから」
「そうだね、見学させてもらおうかな」
 っここでこう言ったのはジャックでした。
「お二人のお仕事をね」
「そうしてなのね」
「うん、楽しもうか」
「それがいいのね」
「今からワインを造るよ」 
 ここでこう言ったのはヘンリーおじさんでした。
「葡萄を製造機の中に入れてね」
「それで製造機で潰すのよ」
 エムおばさんもお話します。
「これからね」
「ワインを造るところが見られるんですね」
 神宝はそう聞いて目を輝かせました。
「それは面白そうですね」
「そうね、私これまで見たことないわ」
 恵梨香が神宝に応えます。
「それじゃあね」
「うん、ここはね」
 是非にと言ったカルロスでした。
「見せておらおうかな」
「そうだね、一体どうしてワインを造るのか」
 是非にと言ったジョージでした。
「観たいしね」
「それならね」
 最後にナターシャが言いました。
「お願いしてみましょう」
「いいとも、では観てね」
 早速と言ってでした、そのうえで。
 五人も大尉達もでした、ワインが造られる場面を観せてもらうことにしました。するとワインは製造機にヘンリーおじさんが動かすブルドーザーで入れられてです。
 そうして製造機の中でプレスされてでした。
 ワインが造られます、その光景を観て五人は言いました。
「ああして造るんだね」
「そうなんだね、今のワインは」
「豪快っていうかね」
「ブルドーザーとプレスで造るのね」
「そうして造るのね」
「そうなの、おじさん達はね」
 ドロシーが五人にお話します。
「こうしてね」
「ブルドーザーとかを使って」
「そうしてなんですね」
「ワインを造るんですね」
「そうされてるんですね」
「今みたいに」
「ここからね」
 ドロシーはさらにお話します。
「世界樹の葉とお花を磨り潰したのを入れてじっくり寝かすの」
「そうしたらですね」
「最高に美味しいワインが出来るんですね」
「皆がうっとりするみたいな」
「そんなワインが出来るんですね」
「これから」
「そうよ、私達は飲めないけれど」
 子供だからお酒は飲めません。
「アルコールが入っていないものは飲めるわよ」
「ノンアルコールワインだね」
 トトも言います。
「それも造ってくれるからね」
「後で去年造ったのを出すよ」
 ヘンリーおじさんが皆に笑顔で言いました。
「赤も白もね」
「ロゼもあるわよ」
 エムおばさんも言ってきました。
「だから楽しみにしてね」
「チーズにソーセージ、ハムにベーコンも出して」
「パンやクラッカーも出すわよ」
「だからみんなで飲んで食べて」
「そうして楽しんでね」
「うわ、何かあれですね」 
 神宝はお二人のお話を聞いて目を輝かせて言いました。
「大人の人がワインを飲むみたいですね」
「ははは、アルコールは入っていないけれどね」
「酔わないけれどね」
「ちゃんと楽しめるよ」
「味や雰囲気はね」
「じゃあ楽しんでいいんですね」 
 神宝は二人に尋ねました。
「その味や雰囲気を」
「うん、後で出すから」
「皆で楽しんでね」
「私は今からお掃除をお手伝いするから」
 ドロシーは楽しそうに言いました。
「トトと一緒に」
「その間私達はどうすればいいのかな」
「皆で畑を見て回って」
 これがドロシーの勧めでした。
「そうしてね」
「そのうえでなんだ」
「楽しんでね」
「それじゃあ」 
 こうしたことをお話してでした、そのうえで。
 ドロシーはトトと一緒にお家のお掃除に向かって他のメンバーはおじさんとおばさんのお家の畑を観て回ることにしました。
 畑は葡萄畑だけでなくです。
 林檎に洋梨のものもあります、そして麦やジャガイモ、蕪や人参のものもです。トラクターもありますし他の農具も一杯あって鶏や牛、馬、豚もいます。
 かなり広くて色々あるので神宝は首を傾げさせてこんなことを言いました。
「お二人だけでこれだけ広い畑をやっていけるのかな」
「そのことだね」
 かかしが応えます。
「初老のお二人だけでね」
「こんな広い畑を全てやっていけます?」
「それが出来ているんだよ」
「そうなんですか」
「沢山の科学や魔法の農具があって」
 便利なそうしたものがです。
「お二人はいつも熱心に働いているからね」
「だからですか」
「それも毎日ね」
「お二人はオズの国屈指の働き者なんだ」
 今度は樵がお話します。
「日の出と共に働いてね、日が落ちるまでね」
「ずっとですか」
「働いているんだ」
「動きも速いんだ」
 ジャックはお二人のそのことをお話します。
「きびきびとしていて農業のことがわかっていて」
「動きもいいんだね」
「そうなんだ、それでね」
 その為にというのです。
「これだけ広い農園もね」
「二人で出来るんだ」
「そうなんだ」
「あれだけの働き者の人達は」
 まさにと言ったのは大尉でした。
「オズの国でも本当にそうはいないよ」
「それでもお二人だけでこの農園をやっていってるなんて」
 神宝はまだ信じられないといったお顔です。
「凄いよ」
「そうよね、農具もいいのね」
 ポリクロームはこのことを言います。
「あと誰かが助けてくれているのかしら」
「ああ、そのことはね」 
 大尉がポリクロームにお話します。
「沢山の家畜がいるね」
「ええ、この農園には」
「牛や馬がね」
「鶏も豚もね」
「彼等も彼等が出来る限りのことをするから」
 だからだというのです。
「二人の手が回らないところもね」
「するから」
「やっていけてるんだ」
「そうなのね」
「そう、二人でやっていってるけれど」
「農具があって家畜の皆もいて」
「これだけの農園がやっていけるんだ」
「そうなのね、凄く細かいところまで整っているけれど」
 雑草もよく取られています。
「それもなのね」
「全部ね」
「整っているのね」
「そうなんだ」
 まさにというのです。
「そして美味しいワインも出来るんだ」
「そうなのね」
「僕達は食べることも飲むこともないから関係ないけれどね」
「美味しいものも出来る」
「そういうことだよ」
 こうしたことをお話してでした、皆でです。
 農園を観て回ってです、お家に戻りましたがもうその時にはドロシーとトトもお掃除を終えてお家の中は奇麗になっていました。
 それで、です。こう皆に言いました。
「今終わったところよ」
「そうですか」
「そしてね」
 神宝にこうも言ったのでした。
「これからね」
「ワインですか」
「ええ、おじさんとおばさんは普通のワインで」
 そしてというのです。
「私達はノンアルコールでね」
「飲ませてもらうんですね」
「そう、ソーセージやチーズも出してもらって」
「そうしたものを食べながらですね」
「楽しみましょう、去年のワインもね」
 そちらのワインもというのです。
「世界樹の葉とお花を入れてるの」
「それじゃあ」
「ええ、物凄く美味しいの」
 そうだというのです。
「去年のワインもね」
「だからですね」
「是非飲んでね」
「それじゃあ」
「そしてね」
 さらに言うドロシーでした。
「ソーセージやチーズもね」
「美味しいんですね」
「そうなの、どれもね」
「じゃあどれもですね」
「楽しんでね」
 そしてというのです。
「食べてね」
「わかりました」
 神宝は五人を代表してドロシーの言葉に頷きました、そうして今度は皆でお家の外にある木製の大きなしっかりとした造りのテーブルの上にです。
 沢山の赤や白のワインのボトルにです、チーズやパン、クラッカーにソーセージ、ハムにベーコンが置かれます。そうしたものを置いてでした。
 ヘンリーおじさんは皆に言いました。
「ではね」
「今からですね」
「飲んで食べて」
「そうしてですね」
「皆で楽しむんですね」
「そうするんですね」
「そうしてね」
 こう言ったのでした、そしてエムおばさんも言います。
「遠慮はしないでね」
「はい、それじゃあ」
「宜しくお願いします」
「食べさせてもらいます」
「そして飲ませてもらいます」
「それも沢山」
「栓は私達が空けるから」
 見ればエムおばさんはすぐに一本のコルクを抜いています。
「どんどん飲んでね」
「私も空けられるから」
 言いつつ早速コルクを抜くドロシーでした。
「飲みたいなら言ってね」
「ええ、お願いするわ」
 是非にと応えたのはポリクロームでした。
「それじゃあね」
「任せてね」
「ドロシー王女はコルクも抜けるんだね」
 大尉はこのことにしみじみとして言いました。
「そうなんだね」
「そうなの、こうしたこともね」
「出来るんだね」
「子供の頃はね」
 それこそというのです。
「いつもしていたから」
「カンサスにいた時は」
「そうしていたから」
 だからだというのです。
「今も出来るの」
「そうなんだね」
「私は今はオズの国の王女だけれど」
 それでもというのです。
「元々はカンサスの農家の娘だからね」
「わし等だってそうだよ」
「カンサスの農家よ」
 おじさんとおばさんも大尉に言います。
「元々はね」
「ずっとあそこに暮らしていたんだよ」
「その中で育ったから」
 それでというのです。
「家事も出来るしね」
「コルクを抜くこともだね」
「出来るのよ」
 もう普通に何でもないといった仕草でコルクを抜きつつです、ドロシ―は大尉にお話するのでした。
「こうしてね」
「子供の頃からやってきたからなんだ」
「オズの国に来て長く経つけれど」
「今もだね」
「出来るのよ」
「そうなんだね、じゃあ」
「ええ、飲んで食べましょう」
 とりあえず人数分のワインのコルクを抜いてでした、そのうえで。
 皆は乾杯をして飲んで食べはじめました、そしてでした。
 五人はノンアルコールの赤ワインを飲んでそれぞれ言いました。
「あれっ、甘いね」
「適度に渋みもあるね」
「飲みやすいね」
「葡萄ジュースとまた違う味だけれど」
「美味しいわ」
「うちのワインは甘いんだ」
 ヘンリーおじさんがまたお話します。
「だから飲みやすいんだ」
「白ワインも甘いのよ」
 エムおばさんはこちらのワインのお話をします。
「うちのワインはね」
「どうして葡萄は赤いのに白ワインも出来るんですか?」
 神宝はこのことについて疑問に思いました。
「前から不思議でしたけれど」
「それは造り方で変わるのよ」
「ワインのですか」
「そう、葡萄の種類とね」
「そうなんですね」
「だから赤ワインと白ワインがあるのよ」
 エムおばさんは神宝ににこりと笑ってお話しました。
「そうなるのよ」
「葡萄といっても色々だね」
 ヘンリーおじさんもお話します。
「マスカットみたいに緑色のものもあるね」
「はい、濃い紫のもの以外にも」
「そうしたことを見てもわかるね」
「ワインも葡萄の種類と造り方で変わるんですね」
「そうなんだよ」
 まさにというのです。
「それぞれでね」
「そうなんですね」
「そう、だからだよ」
「赤ワインも白ワインモあるんですね」
「オズの国ではそれぞれのお国の色のワインもあるしね」
「カドリングは赤でね」
 ここで言ったのは大尉でした。
「マンチキンは青、ギリキンは紫でね」
「ウィンキーは黄色ですね」
「実際にウィンキーの人達は黄色いワインが好きな人が多いよ」
「そうなんですね」
「だからね」
 それでというのです、
「オズの国ではそうしたワインもあることもね」
「覚えていくといいですね」
「そうなんだ」
「ううん、いい勉強になりました」
 神宝も他の四人もしみじみとした口調で言いました。
「今日は」
「そうだね、それで君達どんどん食べて飲んでいるね」
「物凄い食事が進んで」
 見れば皆どんどん飲んで食べています、神宝だけでなく食べられる人達は全員です。
「普段以上にそうなっています」
「それは美味しい組み合わせだからだよ」
 トトが神宝に答えました。
「ワインとチーズやソーセージがね」
「だからだね」
「そう、美味しいお酒はね」
「アルコールが入っていなくても」
「美味しい食べものを引き立ててくれて」
「食べさせてくれるんだね」
「そして美味しい食べものがね」
「美味しいお酒を引き立ててくれて」
「飲ませてくれるんだ」
 そうなるというのです。
「お互いにね」
「だからこうして食べてだね」
「飲んでるんだよ、しかもね」
「しかも?」
「このワインには世界樹の葉とお花が入っているから」
 それでというのです。
「余計に美味しくてね」
「それでなんだね」
「僕達はね」
「こうしてだね」
「沢山飲んで食べてるんだ」
「普段以上にだね」
「そうなんだ、じゃあね」
 あらためて神宝に言うトトでした。
「わかったらね」
「今日はだね」
「もうとことんだよ」
「飲んで食べればいいね」
「むしろそうしないと駄目だよ」
 今日はというのです。
「食欲に身を任せてね」
「ううん、僕達いつもそうだけれど」
「いつも以上にだよ」
「皆いいお顔をしているよ」
 大尉も言ってきました。
「楽しく飲んで食べてね」
「そうなっていますか」
「そうなっているよ、その笑顔を見て」
 飲んで食べている皆のです。
「私も心に栄養を貰っているよ」
「このお食事が終わったらお空に帰るけれど」
 それでもと言うポリクロームでした。
「今回の冒険は最後の最後もね」
「楽しめたんだね」
「ええ」
 こう大尉に答えます。
「心からね」
「それは何よりだよ、やっぱりね」
「冒険は楽しんでこそね」
「冒険だからね」
 オズの国ではそうなっています、楽しんでこその旅そして冒険だとです。
「だからポリクロームが楽しんだこともね」
「いいことなのね」
「私達も心から楽しんだしね」
「ええ、本当にね」
 実際にとです、ドロシーが応えました。
「私達は心から楽しんでね」
「今もだね」
「最高に楽しんでるわ」
「それは何よりだよ、ではね」
「それではよね」
「このパーティーも最後の最後まで楽しんで」
 そうしてというのです。
「終わろうね」
「私はこのパーティーが終わったらお空に帰って」
「そして私達はね」
 またドロシーが言います。
「大尉さん達をウィンキーの樵さんのお城まで送って」
「そしてだね」
「ええ、そうしてね」
 そのうえでというのです。
「お別れしてね」
「エメラルドの都に戻るね」
「一旦都を横切るけれど」
「宮殿には帰らないね」
「ええ、そうしてね」
 そのうえでというのです。
「都に戻って」
「そうして宮殿に帰るね」
「そうなるわ」
「そして僕達もですね」
 神宝も言ってきました。
「宮殿に戻ったら」
「ええ、それでね」
「お別れですね」
「そうなるわね、またオズの国に来てね」
「そうさせてもらいます」
 神宝はドロシーに是非にと笑顔で応えました。
「すぐに」
「待ってるわね」
「はい、そして今はですね」
「皆で世界樹の葉とお花を入れたワインを楽しんでね」
 最高のそれをとです、こうしたことをお話してでした。皆は最高のワインとそのワインに合う最高の食べものを楽しみました。今回の旅はここで事実上の終わりとなりました。


オズのファイター大尉   完


                  2018・11・11








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