『オズのエリカ』




               第三幕  妖精達の国

 エリカを代表としていて実質的にアンがそうである旅の一行は妖精の国の前に来ました、見ればその城壁はです。
 火や水、木の葉、土、風、金属、氷等実に様々な自然の要素で出来ています。ジョージ達五人はその城壁を見て言いました。
「これはまた変わった城壁だね」
「僕こんな城壁見たのはじめてだよ」
「僕もだよ」
「これもオズの国ならではね」
「オズの国だからこうした城壁になるのね」
「そうよ。妖精達がそれぞれの元素を合わせてね」
 そうしてというのです、アンが五人に説明します。
「造った城壁でどんな金属よりも頑丈で崩れないのよ」
「石や鉄の壁よりもですか」
「ずっと強いんですか」
「そして崩れることもない」
「そんな凄い壁なんですね」
「この城壁はそうなんですね」
「そうよ。妖精達の元素は壊れないから」
 だからだというのです。
「決してね」
「崩れなくてですか」
「凄く丈夫で」
「それで国を守っているんですね」
「妖精の国を」
「そうしているんですね」
「そうよ、それじゃあ今からね」
 アンは五人だけでなくエリカ達にも言いました。
「中に入りましょう」
「言われるまでもなくよ」
 まさにと答えたエリカでした。
「それじゃあね」
「今からね」
「中に入りましょう」
 エリカが言ってでした、そしてです。
 一行はエリカを先頭にしてでした、そのうえで。 
 先に先に行くエリカについていく形で妖精の国の正門に来ました、すると門番である赤い肌に燃え盛る髪の毛に赤い軍服と炎の槍を手にしている兵士達がエリカ達に気付いてそのうえで声をかけてきました。
「あれっ、まさか」
「オズの国のエリカか?」
「それにアン王女も」
「臆病ライオンに腹ペコタイガーもいるし」
「それにその子達は」
 兵士達は五人も見て言いました。
「今話題のオズの国の名誉市民の」
「その子達だな」
「その子達まで来ているのか」
「我が国への使節団かな」
「そんな話は聞いていないけれどな」
「残念だけれど違うの」
 アンが兵士達に説明しました。
「私達はグリンダさんのお城に行く途中でね」
「立ち寄られた」
「そうなのですか」
「ええ、そうよ」
 その通りだというのです。
「それでここに来たの」
「そうでしたか」
「それで、なのですか」
「一体何かと思いましたが」
「それで来られたのですね」
「そうなの、考えてみたら私達この国に来るのははじめてよね」
 アンは兵士達に尋ねました。
「そうよね」
「はい、他の方は来られたことがありますが」
「それでもです」
「アン王女も他の方もはじめてですね」
「特にその五人の子達は」
「だからね、よかったらね」
 それならと言うアンでした。
「この国の中に入れて観光をさせてくれるかしら」
「はい、喜んで」
「是非そうして下さい」
「どうか国の中に入ってです」
「そうして国の中を見て下さい」
 門番の兵士達はアンの申し出に笑顔で応えてくれて門を開けて一行をその中に入れてくれました、するとです。
 道も城壁と同じく色々な元素が混ざって一つになっているものでその上下左右に整然と並んでいる家やお店は建物は全て火や水、木、雷、風といった様々な元素で出来ています。そして街の人達もです。
 それぞれ火や水の髪の毛をしていて赤や青といったそれぞれの元素の色です。眩しい人もいれば真っ黒の人もいます。
 その人達を見てです、エリカは言いました。
「それぞれの元素で身体と服が出来ているのね」
「あっ、そうだね」
 ジョージもここで気付きました。
「地水火風木雷金氷雪光闇砂と色々とね」
「そうだね、それでね」
 神宝はその色について言いました」
「土は茶色、水は青、火は赤、風は銀、雷は黄色、金は白、氷は水色、雪は白、光は金色、闇は黒、砂は灰色で」
「本当にそれぞれだね」
 カルロスも言います。
「元素によって色があるね」
「オズの国のそれぞれの色とは違うのね」
 ナターシャはこのことを指摘しました。
「妖精の元素の色は」
「そうね。しかも火に近寄ると暖かいし雪だと冷えていて」
 恵梨香はそれぞれの妖精の人や建物に近寄って言いました。
「それぞれの属性がはっきりしているわね」
「うん、そうだね」
「本当にそれぞれの属性があるね」
 臆病ライオンと腹ペコタイガーも五人に応えます。
「この国では」
「妖精の人達の属性が出ているね」
「火と水とか相反するのに」
 このことを言うのはエリカでした。
「皆仲良くやっているわね」
「そうね。火と水なんて正反対でね」
 アンもエリカのその疑問に応えます。
「一緒にいられないのに」
「それが皆仲良く暮らしているなんて」
「凄いわね」
「それは当然ですよ」
 一行を案内している先程の門番の兵隊さんの一人がエリカに答えました。
「だってどの元素がなくてもです」
「なくても?」
「はい、世界は成り立たないですから」
 だからだというのです。
「私達は火の精ですが」
「火があって他の元素もなのね」
「ないとね」
 それこそと自分の横にいるエリカに顔を向けて答えます。
「この世の中は成り立たないね」
「ええ、他の元素もね」
「どの元素もないと駄目だから」
「どの妖精達もなのね」
「仲がいいんだよ。そもそもオズマ姫もね」
 オズの国の国家元首であるあの娘もというのです。
「妖精だね」
「そのことは私達も知ってるわよ」
 オズの国なら誰でも知っていることです、エリカも火の精である門番の兵隊さんに対して即座に答えました。
「私だってそうだし」
「かなり高位の妖精でね」
「貴方達の上にあるの」
「そうだよ、そこまでの域に達してさらに凄くなっている方でね」
 それでというのです。
「そのオズマ姫もね、若しおられないと」
「一回そうなって大変になったでしょ」
 エリカもよく覚えています、その時の騒動は。
「桃の実の中にいたけれど」
「あの時オズマ姫がおられなくて」
「オズの国の元素がなのね」
「危ない状況だったんだよ」
「そうだったのね」
「そんなこともあったから」
 だからだというのです。
「本当にね」
「危うい状況だったの」
「そう、そしてね」
「オズマ姫が見付かって」
「僕達もほっとしたんだよ」
「そうだったのね」
「うん、本当によかったよ」
 まさにと言った兵士でした。
「あの時はね」
「元素が一つでもなくなったら駄目なのね」
「オズマ姫はお一人で一つの元素だよ」
「オズの国において」
「オズマ姫というね」
 そこまでのというのです。
「そして本当に元素が一つなくなってもね」
「オズの国は成り立たないから」
「世界の一部だから」
 だからこそというのです。
「僕達は属性が相反するものでもね」
「仲がいいのね」
「世界の一部で欠けたら駄目だから」
 そうしたものだからだというのです。
「仲がいいんだよ」
「成程ね」
「そのこともわかってくれるとね」
 まさにというのです。
「僕も嬉しいよ」
「成程ね、わかったわ」
 エリカは兵隊さんにこう答えました。
「そのことがね」
「そういうことでね」
「あとこの国は誰が国家元首なのかしら」
 今度はアンが兵隊さんに尋ねました。
「それで」
「この国はそれぞれの元素に一人ずつ首長さんがおられて」
「その人達がなの」
「一年ごとに順番で」
 それでというのです。
「国家元首、王様を勤めています」
「そうなのね」
「はい、王国ですが」
「王様は順番で代わるのね」
「そうした国です」
「そうした国もあるわね」
 アンもそうした国もあると兵隊さんに答えました。
「だからなのね」
「それぞれの元素は平等ですから」
 だからだというのです。
「順番でとなっています」
「わかったわ」
「あっ、そうした国外の世界にもあるね」
「うん、マレーシアとかね」
「アラブ首長国連邦でもそんな感じだね」
「王様がそれぞれ順番でって国あるわね」
「ええ、そうした国もあるわ」
 ジョージ達五人もここでこう言いました。
「一人の王様や大統領がいる国があれば」
「そうした順番の国もあって」
「オズの国にもあって」
「それがこの国なんだ」
「そうなんだね」
「ええ、まさにこの国ね」
 エリカもこう五人に応えました。
「順番で王様が交代する国ね」
「それぞれの元素の国だから」
「それでどの元素も欠けては駄目だから」
「どの元素も平等だし」
「それで王様は順番で回っていく」
「そういうことなのね」
「そういうことね、よくわかったわ」
 エリカは納得した顔で頷きました。
「そうしたことがね」
「そうだね、ただね」
 ここで一行が今歩いている市場を見て言ったジョージでした。
「売られているものが独特だね」
「火や水がそのまま売られているわね」
 エリカもそれを見て言います。
「それぞれが」
「そのままね」
 見ればそれぞれの元素で作った籠やお皿の上に元素が置かれています、それを見てそのうえで言うのでした。
「元素が売られているけれど」
「あれをどうするのかしら」
「食べたりするんだよ」
 兵隊さんはジョージ達にお顔を向けて答えました。
「そうしたりものを造ったりするんだ」
「火や水から?」
「直接」
「僕達は食べるものはそれぞれのものなんだ」
 兵隊さんはこうお話しました。
「火の精は火、土の精は土でね」
「それで、なんですか」
「売られている元素をそのまま食べて」
「それで食べものになるんですね」
「妖精さん達は」
「そうなんですね」
「そうだよ、精霊はね」 
 妖精の中のこの種族はというのです。
「そうして食べて栄養を摂っているんだ」
「そうですか」
「元素をそのまま食べて」
「それで栄養にしてるんですね」
「それが妖精の人達なんですね」
「精霊の人達はそうした身体の構造なんですね」
「そしてそれぞれの元素から生活用品も家も何でも造ることが出来るんだ」
 このこともお話する兵隊さんでした。
「そうしたこともね」
「だからですか」
「材料の意味でも売られているんですね」
「そしてあらゆる生活用品をですか」
「それぞれの元素から造って生活に使っている」
「そうしているんですね」
「そうなんだ、それが僕達なんだ」
 妖精の中の精霊という種族だというのです。
「このことも覚えておいてね」
「わかりました」
「そうした種族ということですね」
「それぞれの妖精さんは」
「それで、ですね」
「生活されているんですね」
「僕が今着ている服も剣もだよ」
 兵隊さんが身に着けているそうしたものもというのです。
「全部火から造っているんだ」
「そうなのね、それは便利で凄いことね」
 アンは兵隊さんのお話を聞いてしみじみと思いました。
「聞いていて驚いたわ」
「驚かれましたか」
「そんなに凄いなんてね」
「ただ。他の元素については」
「そうしたことは出来ないのね」
「はい、仲良く出来ても」
 それぞれの元素の精霊で、です。
「握手や肩を組んだりは出来ても」
「そうしたこと以上はなのね」
「出来ないんですよ」
「同じお家で一緒に暮らしたりとかは」
「はい、水や風の家には火の精は暮らせません」 
 それは無理だというのです。
「木や光も食べられません」
「食べられるのは火だけなのね」
「はい」
 その通りだというのです。
「そこはどうしても無理です」
「元素の属性の関係で」
「どうしても」
「完全に分かれているのね」
「そうなんです、生活用品を造られるのも同じで」
 兵隊さんはアンにこのこともお話しました。
「他の元素については無理です」
「火の精は火でだけ出来るのね」
「そうなんです」
「ううん、そこは不便かしらね」
「便利でもあり不便でもありますね」
「そう思ったわ」
 実際にと答えたアンでした。
「両方言えるわね」
「それが精霊ですね」
「そうしたものね」
「そういうもので」
「よくわかったわ、じゃあこれからね」
「王宮に案内させて頂きますね」
「宜しくね」
 こうお話してです、そしてでした。
 一行は王宮に案内されました、その王宮もそれぞれの元素が合わさって出来た壁で出来ていますがここで、でした。
 ふとです、エリカが言いました。
「全部それぞれの属性の壁で造られないのかしら」
「家やお店もだね」
「ええ、それは無理なの?」
「公共物はそれでいいけれど」
「それでもなの」
「お家やお店はね」
「出来ないの」
「出来るけれどそれぞれの属性が力を合わせることはね」
 このことはといいますと。
「結構な力を使うからね、皆」
「だからなの」
「プライベートな、それぞれの元素だけでいい場所はね」
「一つの元素で造っているの」
「そうなんだ、公の場所は皆が力を出し合ってね」
 そうしてというのです。
「壁や道や王宮にしているんだ」
「それで凄く頑丈で壊れないのね」
「そうなんだ、だからね」
「普通のお家やお店はなのね」
「それぞれの元素だけなんだ」
「そうなっているのね」
「うん、若しもだよ」
 それこそとお話する兵隊さんでした。
「この国の全てを建物とかをあらゆる元素を使った壁で造ると」
「皆大変なのね」
「結構な力を使うからね」
 だからだというのです。
「あえてね」
「それはしないのね」
「そうなんだ」
「そうなのね」
「そういうことなんだよ」
「税金みたいだね」
 ジョージはここまで聞いてこう思いました。
「それぞれの元素を使った壁とかは」
「税金っていうと」
「僕達の世界にあるもので国家に僕達がお金というものを支払って」
「お金?」
「まあ力ですね」
 オズの国ではお金がないのでジョージはこう説明しました。
「力を出してその力で国を動かしてもらうんです」
「そういうものだね」
「皆が力を出し合って国を守る城壁を造っていますから」
 それでというのです。
「そう思いました」
「成程ね」
「いや、本当にです」
 実際にとです、さらにお話するジョージでした。
「この国ではそうしたものを出しているんですね」
「まあ君の考えではそうなるかな」
 オズの国の住人である兵隊さんにはわからないことでした、このことは。
「とにかくね」
「力を出し合ってですね」
「皆で城壁や王宮を造っているよ」
「公のものをですね」
「この国ではそうしているんだ」
「そのこともわかりました」
「そういうことでね」
 兵隊さんはジョージにお話しました。
「わかったくれたかな」
「はい、よく」
「ならいいよ。では今からね」
「王宮の中に入って」
「今の王様とね」
 それにというのです。
「各元素の精霊の首長さん達にもね」
「お会いするですね」
「うん、今からね」
「わかったわ」
 一行を代表してエリカが答えました。
「じゃあこれからね」
「うん、王様と首長の方々のところに案内させてもらうわ」
「それじゃあね」
 是非にと頷いたエリカでした、ただ。
 ここでエリカは毛づくろいに入りました、兵隊さんはそのエリカを見て言いました。
「毛づくろいはじめたんだ」
「ええ、少し待ってね」
「それが終わってからだね」
「中に案内してね」
「そうさせてもらうよ。身支度を整えてから王宮に入ってくれるんだ」
「あっ、私がそうしたいからよ」
 これがエリカの返答でした。
「だからよ」
「それだけなんだ」
「そう、それだけよ」
 しれっとした返事でした。
「私がね」
「ううん、それはちょっとね」
「ちょっと?どうしたの?」
「我儘かな」
 こう思ったというのです。
「どうもね」
「だって猫だから」
「猫だから我儘なんだ」
「それじゃあ説明になっていないかしら」
「納得する人は少ないと思うよ」
「そうなのね、けれどね」
 それでもと言うエリカでした。
「それが私でね」
「猫なのね」
「そう、説明しようにもね」
「それが猫ってことで」
「納得してね」
 これがエリカが兵隊さんに言うことでした。
「猫はしたい時にしたいことをするのよ」
「そうした生きものなんだ」
「自由に生きる生きものだからね」
「じゃあそうした生きものだってね」
「納得してくれるわね」
「うん、もうそれが習性ならね」
 猫のそれならというのです。
「いいわ」
「それじゃあね、毛づくろいが終わったら」
「君も他の人達も案内するよ」
 この国の今の王様そしてそれぞれの精霊の首長さん達のところにというのです、こうお話して実際にでした。
 兵隊さんはエリカが毛づくろいを終えると皆を王宮の王の間に案内しました、するとそこにはでした。
 様々な元素が合わさっている壁の部屋の奥、二十段程の階段がありその上の場所に幾つかのそれぞれの元素で出来ている玉座がありそれぞれの精霊の立派な服を着た人達が座っていてその真ん中にでした。
 黒い人がいました、髪の毛も見事な服も王冠も全て黒です。その人が様々な元素が合わさって出来ている玉座に座っています。
 その人がです、一行に言ってきました。
「よく来られた」
「貴方がこの国の今の王様なのね」
「如何にも」
 その黒い王様はエリカに威厳のある声で答えました。
「私がこの国の今の王だよ」
「そうよね」
「普段は闇の精霊の首長だが」
 今はというのです。
「交代で王になるからな」
 だからだというのです。
「今は王を務めている」
「そうなのね」
「そうだ、だから今は闇の首長であり」
「この国の王様なのね」
「そうなのだよ」
 王様はエリカに微笑んで答えました。
「私は」
「そういえば座が空いているわね」
 一つ空いている席があります、それは黒い闇の座でした。玉座に似ていますが大きさは少し小さくで様々な元素が合わさって造られてもいません。
「そこが普段の貴方の席なのね」
「残念だが私も身体は二つではない」
「だから玉座に座っているとなのね」
「闇の首長の席は空くことになる」
 そうなるというのです。
「そしてだ」
「玉座に座ってなのね」
「この国の王であり闇の精霊の首長である」
「その勤めを行っているのね」
「そうなのだよ」
「よくわかったわ、この国のルールもね」
 そのこともわかったエリカでした。
「よくわかったわ」
「そうか、それは何よりだ」
「精霊の国ってことね」
「如何にも、それで貴殿達はこれからグリンダ様の城に行くのだな」
「それで私が建国する許可を貰うのよ」
 エリカはまた王様に答えました。
「その為に行くの」
「そうか、道中気を付けてな」
「有り難う、そうさせてもらうわね」
「うむ、その様にな」
 王様はエリカ達に鷹揚に応えました、その後でおもてなしをと言いましたがここでエリカは王様に言いました。
「その申し出だけでいいわ」
「急いでいるのか」
「いえ、精霊の食事は私達は食べられないわよ」
 このことを言うのでした。
「だからおもてなしを受けてもね」
「食べられないからか」
「それに遊ぶこともね」
 こちらもというのです。
「出来ないからね」
「だからか」
「ええ、いいわ」
 こう言うのでした。
「気持ちだけでね」
「そうなのか、ではな」
「ええ、いいものを見せてもらったか」
 精霊の国でもというのです。
「それで満足したからね」
「だからか」
「出発させてもらうわ」
「わかった、ではな」 
 王様は皆に笑顔で応えてでした、そしてです。
 皆は精霊の人達に笑顔で送ってもらってそうしてでした。
 皆で精霊の国を後にしました、それからすぐにお食事となりましたがここでアンはエリカに言いました。
「何かね」
「何か?」
「いや、本当にね」
 それこそというのです。
「エリカらしかったわ」
「王宮での振る舞いや言葉がっていうのね」
「ええ、本当にね」
「そうなのね、けれどね」
「けれど?」
「私は別に意識してなくてね」
「普通にやってなの」
「そうよ、本当にね」
 それこそというのです。
「私はあの振る舞いと発言だったのよ」
「それも貴女ね」
「私はいつもありのままよ」
「猫らしくなのね」
「生きているだけよ」
「そうなのね」
「そうよ。あとね」
 ここで、でした。アンはエリカにこう尋ねました。
「今日のお昼はどうかしら」
「カレーね」
「そう、カレーライスだけれど」
 見れば今日のカレーは普段のカレーとは違います、御飯の横にローストチキンを置いてその御飯とチキンの上に細かく刻んだお野菜を入れたルーをかけています。
 そのカレーライスについてです、アンはエリカに尋ねたのです。
「いつもと違うね」
「ええ、普段のビーフカレーとかとは違うわね」
「ちょっと考えてみてね」
「こうしたカレーにしてみたの」
「そう、こうしたスパイスの使い方なら貴女も食べられるでしょ」
「ええ、山葵とかは無理だけれど」
 それでもと答えたエリカでした。
「こうしたスパイスの使い方はね」
「いいのね」
「ええ、カレールーの中にお肉は入れなかったの」
「そうよ、それにね」
「それに?」
「ローストチキンの味も味わえるし」 
 そちらも楽しめるというのです。
「そうも思ってね」
「このカレーにしてなの」
「貴女にも食べてもらっているけれど」
「いいと思うわ」
 カレーだけでなくローストチキンも食べて答えたエリカでした、鶏肉は皮までかりっと焼かれた胸肉です。
「本当にね」
「それならいいわ」
「やっぱり普通のカレーと替えてよかったわね」
「私も楽しんで食べられるから」
「貴女はスパイスは何でもじゃないから」
「また言うけれど山葵は駄目よ」
 この香辛料はどうにもというのです。
「本当にね」
「そうなのね」
「後ね」
 アンはエリカだけでなく他の皆にも声をかけました。
「皆はどうかしら」
「うん、素敵な味だよ」
「こうしたカレーもいいね」
 臆病ライオンと腹ペコタイガーが応えました。
「普通カレーはお肉を最初から入れてるけれど」
「別々に調理してそこにルーをかけるのもね」
「これもいいね」
「こうしたカレーも」
「はじめて食べましたけれど」
 ジョージも言います。
「こうしたカレーもいいですね」
「ローストビーフにルーがかかると」
 神宝もこう言います。
「それがソースになっていいですね」
「しかも御飯とも合っていますね」
 カルロスも食べつつ言います。
「鶏肉もルーも」
「三つ共合わさっていて」
 笑顔で言ったナターシャでした。
「素敵な味ですね」
「本当に変わったカレーですけれど」
 最後に恵梨香が言いました。
「とても美味しいカレーです」
「そうよね、このカレーはね」
 アン自身そのカレーを食べつつ言います。
「とても素敵な味よね」
「はい、お肉はルーに入れずに焼く」
「そして御飯の横に置いてルーを上からかける」
「御飯と一緒に」
「そうして食べるとですね」
「こうした感じになるんですね」
「いや、この味はいいわね」
 しみじみと言ったエリカでした、見ればおかわりもしています。
「お腹一杯食べられるわ」
「それは何よりよ、じゃあまたこのカレー出すわね」
 しみじみと言ったエリカでした。
「機会があれば」
「そうしてね、しかしこのカレーよく思い付いたわね」
「最近私の国で人気なの」
「それでなの」
「今出したの」
「そうなのね、しかしこのカレー誰が最初に作ったのかしら」
「ええと、それはね」
 このことについては首を傾げさせて言ったアンでした。
「私もね」
「よく知らないの」
「そうなの、誰だったかしら」
 本当に首を傾げさせて言うアンでした。
「一体」
「気付いたら伝わっていたの」
「私もお父様とお母様と一緒に食べて知ったの」
 お国の王宮でというのです。
「そうしてね」
「そうなのね」
「それまでは知らなかったのよ」
「じゃあシェフの人がはじめて作ったの」
 アン王女のお国の王宮のその人がというのです。
「そうなの」
「シェフの人も聞いて作ったから」
「じゃあその人もなのね」
「我が国ではじめて作った人じゃないわ」
 このカレーをというのです。
「どうして伝わったのかしらね」
「あれじゃないですか?レシピの本とかネットとかを読んで」
 ジョージがここで言ってきました。
「それで作った人が最初で」
「それでなの」
「はい、そこから国中に伝わったんじゃないですか?」
 こうアンに言いました。
「よくあることっていいますか」
「そうね、誰かが本を読んで作ったりして広まることはね」
「ネットもありますし」
「オズの国でもよくあるし」
 オズの国にも本やインターネットがあるからです、勿論テレビやラジオといったものもちゃんとあります。
「それじゃあね」
「そういうもので伝わったと思います」
「そうなのね」
「はい、僕はそう思いましたけれど」
「その可能性はあるわね」
「そして実際に美味しいですから」
 それでと言うジョージでした。
「よかったですね」
「そうね。考えてみればこれってね」
 こうしたカレーはと言うアンでした。
「海老フライカレーやカツカレーと一緒ね」
「ハンバーグカレーとも」
「御飯とカレーの主役を置いてね」
「その上にルーをかけるカレーは」
「同じだから」  
 それでというのです。
「このカレーもね」
「同じですね」
「ええ、ただね」
 ここでふと言ったのはエリカでした。
「そうしたカレーって元々日本からよね」
「ええ、そうみたいね」
 アンもエリカに答えました。
「そもそも私達が食べているカレーはね」
「日本のカレーよね」
「インドのカリーがイギリスに伝わってね」
「イギリスじゃパンを漬けて食べるシチューで」
「御飯と一緒に食べるのはね」
 まさにそれはというのです。
「日本のカレーよ」
「カレーライスはね」
「そうよ、それでこうして食べるカレーもね」
 ローストチキン等を御飯の横正確に言えば御飯の上に斜めに乗せてその上にルーをかけるカレーです。
「日本のものよ」
「そうよね」
「それがアメリカにも伝わって」
「オズの国はアメリカが反映される国だから」
「私達も食べているのよ」
「そうなのね」
「何でもね」
 さらにエリカにお話するアンでした、見ればアンもおかわりをしていて二杯目も御飯とローストチキン、ルーを楽しんでいます。
「カツカレーって出来たの結構新しいらしいし」
「あら、そうなの」
「六十数年前かそれ位に出来たらしいのよ」
 その頃の日本にというのです。
「つまり貴女がオズの国に来てから結構経ってからね」
「そういえば私カツカレー見たのオズの国に入って随分後だったわ」
「そうでしょ、その頃の日本で出て来たらしいのよ」
「意外と若い料理なのね」
「何でもあるプロ野球選手が洋食が好きで」
 それでというのです。
「カレーライスとカツを同時に食べるにはどうすればいいか」
「そう考えてなの」
「一緒にしてしまえってなってね」
「御飯の上にカツを乗せて」
「それでルーをかけて食べたら美味しくて」
「カツカレーが出来たのね」
「そうなのよ」
 これがというのです。
「それでオズの国にも伝わったのよ」
「カツカレー、そうしてカツカレーみたいなカレーの食べ方も」
「伝わったのよ」
「意外なものが日本からはじまったのね」
「そしてオズの国に伝わったわね」
「面白いわね、そうしたことって」
 しみじみとして言ったエリカでした。
「本当にね」
「そうよね、あとこのカレーに実は」
「林檎入れてるでしょ」
「あっ、わかったの」
「わかるわ、摺って入れたでしょ」
「出す時にそれを入れる様考えたわ」
 そうしてテーブルかけから出したというのです。
「そうしたわ」
「やっぱりそうね」
「そこもわかったのね」
「猫の舌とお鼻を忘れないことよ」
 会心の笑顔で言うエリカでした。
「これ位すぐにわかるわ」
「すぐになの」
「そう、簡単にわかるわ」
 こうまで言うのでした。
「これ位はね」
「そうなのね、私は林檎好きだしね」
「貴女の国の名産だからね」
「だから好きでね」
 それでというのです。
「出したけれど好評で何よりよ」
「ええ、美味しいわよ」
「林檎h色々なお料理に使えるのよね」
「隠し味にもよね」
「そう、使えるから」
 だからだというのです。
「とてもいいのよ」
「しかも栄養もあるし」
「林檎を一個食べたら元気が出るでしょ」
 こうまで言うアンでした。
「そうでしょ」
「はい、アメリカでもよく食べますけれど」
 アメリカ人のジョージが言ってきました。
「食べると確かにです」
「元気が出るわね」
「そうなります」
「そう、リンゴは本当にね」
 笑顔のまま言うエリカでした。
「素敵なフルーツよ」
「実は私林檎好きなの」
 エリカはカレールーを舐めつつ言いました、その横では臆病ライオンと腹ペコタイガーが物凄い勢いで食べておかわりを続けています。
「あの味と香りがね」
「香りも好きなの」
「ええ、そうよ」
「どれも好きなのね」
「多分あんたと同じね」
「それは何よりね。最近我が国は梨も作ってるし」
 この果物もというのです。
「洋梨もね」
「丸い梨だけじゃなくて」
「そう、それに柿も作っていて」
 この果物もというのです。
「西瓜や苺もね」
「色々作る様になってるのね」
「色々作ってね」
 そうしてというのです。
「楽しい思いをしてるのよ」
「そうなのね」
「そう、そしてね」
 さらに言うアンでした。
「今の我が国は甘い果物と野菜の王国になってるのよ」
「西瓜や苺は野菜だしね」
「パイナップルも作ってるわ」
 こちらの甘いお野菜もというのです。
「そうしてるわ」
「本当に甘いもの好きね」
「そこからお菓子も作ってるし」
 そうした果物やお野菜を使ってです。
「素敵なものよ」
「それは何よりね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「やっぱりメインは林檎よ」
 この果物だというのです。
「それは外せないわ」
「そうなのね」
「林檎がないとね」
「あんたの国はあんたの国でなくなるとか」
「そう言ってもいいわ」 
 アンはエリカに答えました。
「本当にね」
「そこまでのものなのね」
「そう、それとね」
「それと?」
「それに思うことは」
 それはといいますと。
「柿いいわよね」
「ああ、あの果物も」
「素敵な甘さよね」
「あんた柿も好きになったのね」
「そうなの、柿の栽培もはじめてからね」
「実際に食べて」
「すっかり病みつきになってるの」
 そこまで好きになっているというのです。
「流石にカレーには入れないけれどね」
「普通カレーには柿は入れないですね」
「林檎は入れますけれど」
「あとバナナやパイナップルは」
「そうしたものは入れますけれど」
「それでも柿は」
 ジョージ達五人も言います。
「カレーとは合わないですね」
「あの味は」
「だからカレーに入れても」
「ちょっと以上に違いますね」
「林檎とかと違って」
「それは最初からわかるから」
 アンにしてもです。
「だからね」
「カレーには使われていないですね」
「林檎にしていますね」
「それで、ですね」
「隠し味にされていますね」
「そうしていますね」
「そうなの、柿は好きだけれど合う合わないがあるから」
 どうしてもというのです。
「それで使わないわ、それとね」
「それと?」
「それとっていいますと」
「まだ何かあります?」
「カレー以外にも」
「まだ何か」
「デザートでね」
 カレーの後に出すこちらのこともお話するのでした。
「果物出すけれど」
「じゃあ今日のデザートは」
「一体何ですか?」
「前のフルーツの盛り合わせにヨーグルトをかけたのは美味叱ったですが」
「ああした感じのデザートでしょうか」
「今日も」
「いえ、今日はケーキを出すつもりよ」
 こちらをというのです。
「ザッハトルテとコーヒーよ」
「あら、あのチョコレートのケーキなの」
 ザッハトルテと聞いて言ったエリカでした。
「それなの」
「そうよ」
 こちらのデザートだというのです、そしてアンはさらに言いました。
「それと甘い桃のケーキをね」
「桃のケーキですか」
「今日はそちらですか」
「フルーツを使っていてもですね」
「桃だけで」
「それでケーキですね」
「私だっていつも林檎じゃないしね」
 このことは笑って言うアンでした。
「桃も好きだし」
「桃もいいよね」
「そうそう、とても甘くて瑞々しくて美味しいんだよね」
 臆病ライオンと腹ペコタイガーは桃と聞いてお菓子に使わないで普通に食べる場合の桃のお話をしました。
「勿論お菓子に使ってもね」
「素敵な味になるわよね」
「だから桃にするわ」
 アンは二匹にも答えました。
「貴女達もそれでいいわよね」
「うん、いいよ」
「是非そちらでお願いするよ」
 二匹はアンに笑顔で答えました。
「コーヒーもね」
「出してね」
「わかったわ、全部出すから」
 アンは笑顔で言いました。
「今からね」
「さて、その二種類のケーキとコーヒーを食べて」
 それでと言うエリカでした。
「また冒険ね」
「そうするわよ」
 アンは早速その二種類のケーキとコーヒーを出しました、そしてそのデザートを楽しんでからまた出発するのでした。








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