『オズのトト』




           第四幕  森の生きもの達

 お昼御飯を食べた皆は森に向かいました、マンチキンの森らしく葉や下の草の色は奇麗な青です。
 ですがその木や草を見てです、恵梨香が言いました。
「日本の草木?」
「あっ、そうだね」
 神宝も見て気付きました。
「杉はないけれどね」
「八条学園にもある木だね」
 ジョージはその青い木達を見ています。
「この種類は」
「オズの国にはこうした森もあるんだ」
 カルロスも森のその中を見回して言いました。
「日本みたいな森も」
「本当に色々なものがある国ね」
 ここでナターシャが言うことはといいますと。
「ロシアやブラジルの森もあるのかしら」
「そう、あるのだよ」
 教授が右手の人差し指を立ててナターシャに応えました。
「ツンドラもアマゾンも」
「そこにいる生きもの達もいるからね」
 カエルマンもお話します。
「何かと面白いよ」
「生きものっていうと」
 ここで言ったのは恵梨香でした。
「この森にいるのは狐や狸、あと熊とか栗鼠ですか」
「うん、そうだよ」
 その通りとです、オジョがお話しました。
「一杯いるよ」
「そうなんですね」
「鹿や猪もいるけれど」
「日本の鹿や猪ですね」
「そうだよ、何しろオズの国はアメリカが反映されるけれど」
 このことからというのです。
「アメリカは世界中から移民が来てるね」
「そうして出来た国ですね」
「そして今もそうなっているね」
「日本からも来ていて」
「そう、そしてね」
「自然や生きものもですか」
「日本人の心にあるそれがね」
 直接持っては来れなくてもというのです。
「出て来ているんだよ」
「そうなんですね」
「それがこの森なんだ、実はね」
「実は?」
「僕もこの森を見て他のオズの森と違うと思ったんだ」
 オジョも森の中を見回しています、皆を森の奥へと案内しながら。山が森になっていてその中を進んでいっています。
「どうしてかなって思っていたら」
「私がオジョに教えたのだよ」
 ムシノスケ教授が胸を張って恵梨香にお話しました。
「それで彼もわかったんだ」
「教授が調べられたんですね」
「そう、大学でね」
「それでオジョさんもわかって」
「いや、道理でオズの国の自然にどんどんプラスされていっている筈だよ」
 オジョは感心した様に言いました。
「移民として来た人の心にある自然が反映されていっているから
「じゃあブラジルから来た人のアマゾンもあって」
「ロシアから来た人のツンドラもあって」
 ジョージと神宝も言います。
「西部の荒野もあるんだね」
「竹林もね」
「メキシコのサボテンもあるんだね」
「ドイツの黒い森も」
 カルロスとナターシャはそうしたものを連想しました。
「そしてアナコンダもいるんだ」
「熊や狼も」
「そうだよ、オズの国にはあらゆる自然があるんだ」
 あらゆる国から来た人の心にあるそれがです。
「だから素晴らしいんだ」
「ううん、自然も不思議の国なんですね」
「そうよね、私もね」 
 ドロシーも言います、勿論足元にはトトがいます。
「オズの国の色々な自然を見てきたけれど」
「プラスされていっているのをですか」
「見てきたわ」
 実際にというのです。
「これまでね」
「それじゃあ余計に」
「ええ、知ってるわ」
 その目で変遷を見てきただけにというのです。
「オズの国に入って長いけれど」
「そうなの」
「そう、それにね」
「それに?」
「日本人の心の中にある自然なら」
 それならというのです。
「面白い生きものもいるわよ」
「面白いって」
「あの蛇を知ってるわよね」
 ドロシーはここで前を指差しました、するとそこにはビール瓶みたいに太い身体に短い尾の蛇がいました。
 その蛇を見てです、恵梨香は思わず声をあげました。
「あの蛇は」
「知ってるわよね」
「ツチノコです」
「あの日本で噂の」
「いるとかいないとか噂の」
「あの蛇だよね」
「オズの国にはいるのね」 
 恵梨香以外の四人も言います、その蛇を見て。
「そういえば恐竜もいるし」
「絶滅した生きものも」
「それでなんだ」
「ああした生きものもいるんだ」
「あの蛇は面白い蛇でね」 
 トトがここで言うことはといいますと。
「お酒が好きだしいびきもかくんだ」
「寝てる時に」
「そうするんだ」
「外の世界じゃ蛇はいびきかかないのに」
「それでもなのね」
「そうだよ、いびきもかくんだ」 
 実際にというのです。
「面白いよね」
「蛇がお酒を飲むのは」
 恵梨香はこのことから言いました、ツチノコは皆の前を平然として横切っています。何でもない様に。
「うわばみもそうで」
「大蛇だね」
「ええ、そうした妖怪で」
 大蛇の妖怪でというのです。
「お酒が大好きであったらあるだけ飲むの」
「そうした妖怪もいるんだ」
「ただ、それは大蛇で」
 それでというのです。
「ツチノコも飲むのね」
「そうなんだ」
「そうなのね」
「それもかなり好きで樽を置いていたら」 
 お酒を一杯入れたそれをとです。
「集まって来てあっという間にね」
「樽が空になるのね」
「そこまで好きなんだ」
 ツチノコ達はお酒がというのです。
「無類の酒好きなんだ」
「何ていうか」
 ここまで聞いてこうも言った恵梨香でした。
「外の世界では実在するのかしらって思ってたけれど」
「いるんじゃない?外の世界でも」
「普通にね」
「見た人多いし」
「私もそう思うけれど」
「どうなのかしら」
 四人に言われても確信を持てない恵梨香でした。
「見間違いってこともあるし」
「見間違いは誰でもあるね」
 カエルマンが応えました。
「それは」
「そうですよね」
「私も一度流木と恐竜を見間違えたよ」
「オズの国は恐竜もいますからね」
「二匹並んで泳いでいると思ったらね」
 それがというのです。
「実は一匹だったのだよ」
「流木が隣にいるだけだったんですね」
「そうだったんだよ、これが」
「そうしたこともあるんですね」
「よく、それも何度も多くの人で見ればね」
 そうすればというのです。
「見間違えないよ」
「一人でぱっと見ただけだと」
「どうしてもね」
「見間違えるんですね」
「そうだよ」
「そうですか」
「そう、しかし今ツチノコは皆で観たね」
「間違いなくツチノコでした」
「僕もそう思うよ」
「つまりあれは」
「恵梨香の言った通りにね」
「ツチノコなんですね」
「皆がそうだと言ったね、ただこれはあくまで可能性で」
「皆が見間違えることも」
「またあるよ、先入観で見るとね」
 その皆がです。
「見間違えるんだよ」
「先入観ですか」
「だから偏見はよくないんだよ」
「そうですか」
「そこは気をつけてね」
「わかりました」
「僕も気をつけてるしね」
 先入観、ここでは偏見を以てものを見ることをです。
「君達もそうしてね」
「わかりました」
「さて、それでね」
 案内役に専念していたオジョがここで言ってきました。
「もうすぐ長老さんのところだけれど」
「どの生きものかな」
 長老さんについてこう考えたトトでした。
「一体」
「うん、見て」
 今度はオジョが前を指示しました、するとです。
 そこに洞穴がありました、恵梨香はその洞穴を見て言いました。
「熊ですか?」
「あっ、熊じゃないよ」
 オジョはそこは断りました。
「また別の生きものだよ」
「熊じゃないとなると」
「何と思うかな」
「狐か狸か穴熊か」
 恵梨香はこうした生きものも考えましたが。
 ここで、です。この生きものの名前を出しました。
「狼ですか?」
「正解だよ」
「そうですか、狼ですか」
「狼は日本にいたね」
「ニホンオオカミですね、この前イギリスから来られた先生が奈良県の奥で発見されたんですが」
「あっ、そうなんだ」
「少しだけいて。天然記念物です」
「外の国じゃそうなんだね」
「はい、日本では」 
 そうだとです、恵梨香はオジョに答えました。
「そうです」
「そうだね、けれどオズの国ではね」
「日本人の心の中にニホンオオカミもいて」
「そうだよ」
 実際にというのです。
「結構な数がいるんだ」
「日本じゃ今や天然記念物で」
「その天然記念物っていうのは」
「とても数が少なくて大事な生きものってことです」
「そうした意味なんだ」
「はい」
 その通りというのです。
「実際に」
「そうなんだね」
「少ないからですね」
「貴重だね」
「どうしても数が少ないとね」
 トトが言うには。
「貴重になるね」
「何でもそうよね」
「食べものも何時でも食べられたら」
「それでね」
「貴重でなくなるね」
「そうよね」
「テーブル掛けで何でも出せるから」
 トトはこの例もお話に出しました。
「キャビアもフォアグラもね」
「オズの国では貴重じゃないのね」
「そう、トリュフだってそうだよ」
 このご馳走もというのです。
「勿論他の食べものもね」
「じゃあ松茸とかカズノコも」
 恵梨香は日本の高い食べものをここで思い出しました。
「そうしたものも」
「幾らでも出せてね」
「食べられるのね」
「そうだよ」
 トトは恵梨香にその通りだと答えました。
「何でも出せるから」
「だから貴重じゃないのね」
「それでニホンオオカミさん達もね」
「オズの国だと」
「そう、沢山いるから」
「珍しくなくて」
「天然記念物じゃないよ」 
 こうドロシーにお話しました。
「そういうのじゃね」
「いいことね、やっぱり生きものもね」
「多い方がいいよね」
「どんな種類もね」
「そうだね、じゃあね」
「今からよね」
「その狼の長老さんにお会いしよう」
 ニホンオオカミのというのです。
「これからね」
「わかったわ」
 恵梨香はトトの言葉に頷きました、こうしてでした。
 オジョがです、洞穴の方に言いました。
「長老さん、来たよ」
「ああ、オジョかい」
 お年寄りの声が洞穴の中からきました。
「来てくれたんだね」
「うん、今ね」
「それで誰が来てくれたんだい?」
「ドロシーさんだよ、ムシノスケ教授とカエルマンさんもいるよ」
「その人達かい」
「そうだよ」
 オジョはその声の主に明るい声で答えます。
「今ここにいるよ」
「よし、今からそちらに行こう」
「それじゃあね」
 こうお話してでした、そのうえで。
 声の主うは洞穴から出て来ました、それは灰色の毛の小さい年老いた狼でした。その狼と見てジョージと神宝、ナターシャは言いました。
「あれっ、小さいね」
「うん、他の狼と違ってね」
「何かね」
 狼の長老さんを見て言うのでした。
「小さいって聞いていたけれど」
「どうもね」
「思ったより小さいね」
「そういえば狐も狸もね」
 カルロスはこうした生きるものを思い出しました。
「日本のは小さいって言われてるね」
「それは森の中にいるからじゃ」 
 長老さんご自身が四人に言いました。
「日本の狭い木と木の間のな」
「あっ、それでなんだ」
「木と木の間が狭くてそこを動き回るから」
「それでなのね」
「日本の生きものは小さいんだね」
「そうじゃ、狭い中を行き来するには小さくないとな」
 身体がというのです。
「だからわし等ニホンオオカミも小さいのじゃよ」
「成程ね」
「それも進化なんだね」
「場所に適応することが進化だから」
「日本の生きものは小さくなったんだ」
「そういうことじゃ、さてそれでじゃが」
 長老さんは四人に話してから今度はオジョを見て言いました。
「よく呼んでくれた」
「約束したからね」
 オジョは長老さんににこりと笑って答えました。
「だからだよ」
「そう言ってくれるか」
「約束は守らないとね」
 オジョは何でもないと返します。
「やっぱりね」
「それでか」
「うん、それでだけれど」
「今の森の状況をじゃな」
「ドロシーさん達に話してくれるかな」
「わかった、それでその子達は」
 先程お話した四人だけでなく恵梨香も見て言うのでした。
「あの噂の」
「そう、外の世界から来たね」
「名誉市民の子達じゃな」
「そうだよ」
「ふむ、まさかこの子達まで来るとはな」
「予想してなかった?」
「全くな、しかし来てくれたのなら有り難い」
 ここで笑顔になった長老さんでした、恵梨香はその笑顔を見てふとこんなことを言いました。
「長老さんって甲斐犬みたい」
「あの小さな犬か」
「ええ、今の笑顔を見たらね」
「ははは、日本の犬はわし等の弟分じゃ」 
 長老さんは恵梨香の言葉に今度はお口を大きく笑って言いました。
「似ているのも当然じゃな」
「狼から犬が出たからよね」
「そうじゃ、そちらのトトはどうなるかのう」
「僕は親戚?」
「アメリカの犬じゃからな」
 日本の犬ではないからだというのです。
「そうなるかのう」
「弟分じゃなくて」
「親戚じゃ」
 そちらだというのです。
「言うならな」
「そうなるのね」
「狼といってもどうもニホンオオカミは他の狼と違うでな」
 長老さん自身もわかっていることみやいです。
「それでな」
「他の国のワンちゃんとはなのね」
「近くはないみたいでな」
「親戚なのね」
「そうじゃ」
 弟分ではなく、というのです。
「その様じゃ」
「そうなのね」
「そうじゃ、それでざが」
「ええ、今からね」
 今度はドロシーが応えました。
「お話を聞かせてくれるかしら」
「わかった、それではな」
 是非にと応えてでした、そのうえで。
 長老さんは森の生きもの達を遠吠えで呼びました、するとカモシカに猪に鹿に狐に狸に穴熊に栗鼠にムササビやモモンガ達が来ました。
 その生きもの達を見てです、恵梨香は思わず笑顔になって言いました。
「皆日本の生きものね」
「やっぱりそうなんだ」
「特に」
 恵梨香はオジョにカモシカを見つつお話しました。
「あのカモシカです」
「日本にしかいないカモシカなんだ」
「そうなんです、ニホンカモシカといいまして」
「日本にしかいないんだ」
「そうしたカモシカです、日本でも珍しいんですよ」
「そうなんだね」
「ですからオズの国でも観られて」
 それでというのです。
「嬉しいです」
「そんなに嬉しいの?」
 そのカモシカからの問いです。
「私に会えて」
「ええ、凄くね」
「そうなのね、私としてはね」
「珍しくないっていうのね」
「この山に群れで住んでるし」
「皆と」
「そう、カモシカのね」
 だからだというのです。
「私としては特にね」
「珍しくないのね」
「そう思うけれど」 
 こう恵梨香に言うのでした。
「特にね」
「そうなのね」
「そういえばオズの国って珍しい生きものも普通にいて」
 カルロスが言うには。
「僕達も結構見てるよね」
「ええ、そうよね」
 ナターシャはカルロスのその言葉に頷きました。
「色々とね」
「僕パンダ見たしね」
 神宝はお国の象徴とも言えるこの生きものの名前を出しました。
「笹を美味しそうに食べてたよ」
「オオヤマネコ、ボブキャットって結構少なくなってるのに」
 ジョーゾもお国の生きものの名前を出しました。
「オズの国じゃ結構見るね」
「絶滅した生きものもいて」
「オズの国にしかいない生きものも」
「それで珍しい生きものも普通にいる」
「つくづく凄い国だよ」
「それがわし等にとっては普通なのじゃよ」
 ニホンオオカミの長老さんが言ってきました、長老さんの周りには他のニホンオオカミ達が揃っています。
「至ってな」
「そうなんですね」
「ごく普通なんですね」
「そうじゃ、不思議がオズの国では普通じゃろ」
 だからだというのです。
「それでな」
「外の世界とは違って」
「珍しい生きものも普通にいる」
「そして絶滅した生きものもですね」
「ドラゴンだっていますし」
「そういうことじゃ、もっとも今回はドラゴンは関係なくてな」
 この巨大な生きものはというのです。
「鳥でな」
「飛ばない鳥だよね」
 トトが長老さんに尋ねました。
「その鳥さん達が一杯この森に移住してきて」
「うむ、それでじゃ」
「トラブルが頻発しているんだね」
「何かとな」
「この森の生きものは多いね」
 カエルマンは集まった彼等をその丸くて広い範囲が見える目で見回して言いました、一行の周りを日本の森の生きもの達が囲んでいます。
「これだけ多いと」
「わかってくれるじゃろ」
「うん、移住してきた生きもの達はね」
 カエルマンは腕を組んで言いました。
「入られないね」
「ましてや入って来た鳥達はかなり多い」
 それで余計にというのです。
「だから受け入れられんのじゃ」
「しかも生活習慣も違う」
 ムシノスケ教授はこのことを指摘しました。
「そうですな」
「そうじゃ、わし等の多くは哺乳類じゃが」
 見れば蛇や蛙、蜥蜴もいます。カナヘビやヤモリ、イモリもいます。
「しかしな」
「鳥類ですからな」
「生活習慣が全く違ってな」
 このこともあってというのです。
「何かとぶつかっておる」
「やはり」
「それで困っておるのじゃよ」
「つまり鳥さん達には他の場所で住んで欲しい」
 ドロシーがここでこう言いました。
「そういうことね」
「要するにな」
「やっぱりそうなるわね」
「そうじゃ、しかしな」
「鳥さん達とそうしたお話をすると」
「これまで何度も話したが」
 それがというのです。
「その度に喧嘩になってな」
「それで大変なんだよ」
「向こうも引かないしね」
「じゃあ何処に住むんだって話になって」
「駝鳥やペンギンが文句を言って」
「ドードーもね」
「あれっ、駝鳥にペンギン?」
 トトはそうした鳥達の名前を聞いて言いました。
「駝鳥は暑い場所、ペンギンは寒い場所にいるのに一緒にいるの?」
「ペンギンといっても色々だよ」
 教授が首を傾げさせたトトに言いました。
「ガラパゴスペンギンもいてね」
「寒い南極だけじゃなくて」
「そう、それにオズの国では暖かい場所に住んでいるペンギンも多いから」
「だからなんだ」
「そうしたペンギンもいるんだ」
「成程ね」
「あとドードーもいるんだ」
 オジョはこの鳥に注目しました。
「外の世界にはもういないっていうけれど」
「あとオオウミガラスもいるぞ」
 長老さんはこの鳥の名前も出しました。
「その鳥もな」
「ああ、オオウミガラスもいるんだ」
「何でも水が多くある場所が好きでな」
「お池とか湖の方にだね」
「いたがる、オオウミガラスといっても川や湖でも平気らしい」
「オズの国はそうしたオオウミガラスもいるのよね」
 ドロシーはこのことを知っていました。
「私冒険で何度か見たわ」
「あれっ、そうだったんだ」
「ええ、トトは気付かなかったの?」
「そういえば変わった水鳥見たかな、飛ばないね」
「それがオオウミガラスで多分ペンギンも見ていたのよ」
「そうだったんだ」
「オズの国は生きものも不思議だから」
 つまり外の世界とは違うのです。
「だからね」
「そうしたペンギンやオオウミガラスもいるんだね」
「そうなの」
「成程ね、僕もしっかり見ていかないとね」
「ええ、気付くものもね」
「気付かないね」
「そうなるから」
 だからだというのです。
「気をつけてね」
「わかったよ」 
 トトはドロシーのそのお話に頷きました。
「このこともね」
「これからはね、それでだけれど」
 ドロシーはトトとのお話の後で長老さんにお顔を戻してあらためて尋ねました。
「森の皆としては移住はして欲しくないのね」
「そうじゃ」
 その通りとです、長老さんははっきりと答えました。
「やはり森は生きものが多くてな」
「しかも生活習慣が違うから」
「一緒には住めん」
「そうなのね」
「他の場所に住んで欲しい」
「他の場所ね」
「まことにな」 
 長老さんがこう言うとです、他の森の生きものの皆も言います。
「そうして欲しいよ」
「住む場所がないし」
「僕達だってこれ以上増えたら南の山にも住もうって言ってるし」
「南は生きものがいない山も多いし」
「だからね」
「そんな状況だから」
「もうこの山には住めないよ」
 移住は無理だというのです。
「どうしてもね」
「だから他の場所に住んで欲しいし」
「ここは無理だから」
「しかも生活習慣も違うのに」
「駝鳥さんに森の中で駆け回られたら」
 栗鼠が言います。
「大騒ぎだよ」
「他にもね」
「暮らしが全然違ってて」
「困ることばかりで」
「僕達は僕達の暮らしがあるから」
「それを壊されるのならね」
「どうしてもだよ」
 そこはというのです、そしてです。
 森の生きものの皆の言葉を聞いたドロシーは一つの結論を出しました。その結論は何かといいますと。
「一緒には住めないわね」
「そうだね」
 オジョがそのドロシーに応えました。
「これはね」
「ええ、そうよね」
「一緒にね」
「そう、だからね」 
 それでというのです。
「別の方法を考えるしかないわ」
「それだとね」
 トトが言う意見はといいますと。
「鳥さん達に新しい居場所を探してあげる?」
「そうなるわね」
「やっぱりそうだよね」
「じゃあ今度はね」
 ドロシーはあらためてトトに言いました。
「鳥さん達のところに行きましょう」
「それがいいね」
「あの連中なら西の麓におるぞ」
 長老さんは鳥さん達の居場所をお話しました。
「そこにな」
「西のなのね」
「そうじゃ」
 まさにそこにというのです。
「おるからな」
「わかったわ、じゃあそっちに行ってみるわね」
「そういうことでな」
「じゃあ次はですね」 
 恵梨香もドロシーに言ってきました。
「鳥さん達のところにですね」
「ええ、行きましょう」
「それじゃあ」
「こうした話は何かと大変だよ」 
 どうしてもと言ったトトでした。
「お互いのお話を聞いてお互いが納得する様に収めないといけないから」
「そうよね」
「オズの国は広いし地下も何処でも住めるけれど」
「お空の雲や浮かぶ島にもね」
「色々あるし国も広がっていってもいるけれど」
 オズの国がある大陸自体もです。
「それでもね」
「そう、どうしてもね」
「こうした問題は起こるね」
「山とか街とかの単位だと」
「そしてそれを収めるのがね」
「私達のすることよ」
 まさにというのです。
「それこそがね」
「政治だね」
「そう、政治よ」
 まさにとです、ドロシーはトトに答えました。
「こうしたことは政治よ」
「そうだよね」
「町や村を整えて奇麗にしたりするのも政治で」
「こうしたいざかいを収めるのもね」
「政治よ」
「そうだよね」
「オズの国は確かに平和だけれど」 
 戦争はなく人や生きものの心も確かに穏やかです。
「けれど何もしないではね」
「いられないね」
「こうしたことも起こるから」
 衝突はどうしても起こるというのです。
「私達もやることがあるのよ」
「政治として」
「そう、そしてね」
「今回のことを収める為に」
「今度は鳥さん達のお話を聞きましょう、そしてね」
「そして?」
「あの、皆は鳥さん達と今はぶつかってるけれど」
 それでもとです、ドロシーは森の生きもの達にこうも尋ねました。
「ずっとぶつかっていないの?」
「仲の悪いままで」
「そうしていたいのか」
「そう聞いてるのね」
「そう、ずっと仲が悪いままでいいの?」
 こう皆に尋ねるのでした。
「それで」
「そう言われると」
「やっぱりね」
「ぶつからない方がいいよ」
「私達にしても」
「仲がいい方がね」
「いいわよね」
「そうよね、だったらね」
 それならというのです。
「私はお互いに仲良く出来る様にするわ」
「そうしてくれるんだ」
「ドロシーさん達が」
「そうしてくれるのね」
「皆仲良くがオズの国の決まりでしょ」
 法律だというのです。
「だからね」
「そういう風にしてくれるんだ」
「今はぶつかってばかりだけれど」
「それを」
「ええ、絶対にね」
 こう約束するのでした、そしてです。
 皆は今度は鳥さん達のお話を聞くことにしましたがここででした、ドロシーは皆にこんなことを言いました。
「三時になったからね」
「ティータイムだね」
「その時になったんだね」
「ええ、だからね」 
 教授とカエルマンにお話します。
「今から休みましょう」
「お茶か、わし等は別にな」
 ティータイムと聞いてです、長老さんは森の生きものの皆を代表してそのうえで言うのでした。
「その習慣がないからな」
「参加しないの?」
「昼は寝る」 
 そうするというのです。
「そうしておる」
「あら、そうなの」
「この山は気持ちいいからな」
「気候とか環境が」
「だからな」
 それでというのです。
「昼はお茶やお菓子でなくな」
「寝るのね」
「そうするのだ」
「ううん、それが貴方達の習慣なのね」
「言うならな」
「日本というよりイタリアね」
 こう言ったのは恵梨香でした。
「お昼寝するなんて」
「イタリア?外の世界の話か」
「ええ、外の世界の国の一つで」
「その国でも昼寝をするのか」
「そうなの。スペインって国でもそうよ」
 この国もというのです。
「お昼は寝るの」
「そうなのか」
「私達はお茶だけれど」
「わし等は夜に元気になる生きものも多いしな」
 見ればムササビやモモンガといったそうした生きもの達もいます。
「わし自身そうだ」
「そういえば狼さんもね」
「うむ、夜に元気になる」
「そうだったわね」
「とはいっても満月で元気にはならないな」
「あれっ、そうなの?」
「ニホンオオカミは特にそうしたことはない」
 こうお話するのでした。
「それは他の狼達だな」
「狼男だとね」
 トトが言うにはです。
「満月の時に変身して」
「他の狼もね」
「そう、満月に吠えたりするけれど」
「ニホンオオカミは違うのね」
「そうみたいだね」
「月は確かに好きじゃ」
 長老さんもこのことは否定しません。
「しかしな」
「それでもなのね」
「うむ、特に元気になったりはしない」
「そうなの、そういえば」
 ここで恵梨香は思い出しました、童話とかで聞くニホンオオカミのことを。
「ニホンオオカミにはそうしたお話はないわ」
「そうじゃな」
「満月が好きとか。人の後ろにはついてきても」
「それは習性でな」
「どうしてもなのね」
「そうしてしまうだけじゃ」
 特に思うことはないというのです。
「あくまでな」
「それで満月も」
「他の狼は知らんがな」
「成程ね、わかったわ」
 恵梨香もここまで聞いて頷きました。
「ニホンオオカミのそうしたことも」
「そういうことでな」
「ええ、それで皆はこれから」
「寝るぞ」
 そのお昼寝をするというのです。
「そうする」
「それじゃあこれで一旦お別れね」
「期待しておるからな」
 この騒動を解決することをとです、長老さんは恵梨香に穏やかな笑顔を浮かべて言いました。
「わし等も」
「任せてね」
 ドロシーが長老さんに一行の代表として応えました。
「絶対にね」
「この衝突を解決して」
「皆に仲良くしてもらうわ」
「是非ね」 
 こうお話してでした、そのうえで。
 森の生きもの達はそれぞれの巣に戻ってお昼寝に入りました、長老さんも洞穴に入ってそうしました。
 そしてその後で、です。ドロシー達はティータイムとなりましたが。
 ミルクティーを飲みながらでし、恵梨香はコーヒーを飲む教授に尋ねました。
「オズの国でも場所によって」
「うむ、やはりな」
「生活習慣が違うんですね」
「長老んさんが言ったね」
「はい、夜に元気になる生きものが多くて」
「昼寝をするね」
「そう言ってましたね」 
 実際にとです、恵梨香はケーキも食べました。今日のティーセットはケーキ尽くしで上はフルーツケーキ、中はチーズケーキ、下はチョコレートケーキで恵梨香は今はチーズケーキを食べています。
「確かに」
「そう、しかしおそらくね」
「鳥さん達はですね」
「お昼に元気になるのだよ」
「大抵の鳥は夜は寝るからね」
 カエルマンもコーヒーを飲んでいます、見れば教授もカエルマンもいささか気取った仕草で飲んでいます。
「鳥目ともいうし」
「夜はみえないんでしたね」
「そのこともあってね」
 それでというのです。
「彼等は昼は寝るんだよ」
「そうですね」
「僕は夜でもよく見えるけれどね」
 トトはそうでした。
「犬はね」
「そうよね、トトは」
「狼さん達と一緒でね」
「弟分、親戚だけあって」
「そうなんだ」
 実際にというのです。
「僕達はね」
「そうだったね」
「そう、けれどね」 
「狼かっていうと」
「違うわね」
 ドロシーはにこりと笑ってトトにこたえました。
「そうよね」
「うん、僕は犬だよ」
「ええ、貴方は犬よ」
「立派なね」
「そう、犬は立派な種族だよ」
 教授もこう言います。
「人間の大切な友人でもある誇り高い」
「そうした生きものだね」
「そう、だから君もだね」
「いつも犬であることに誇りを持っているよ」
「それは何より、だよ」
「そうだね、いつもドロシーと一緒にいて」
「そしてドロシーを守っているね」
「そうだよ」 
 その通りだというのです。
「ドロシーは絶対に僕が守るよ」
「例え何があろうとも」
「そうするよ」
 こう言うのでした、そしてです。
 オジョもです、ブランデーを少し入れた紅茶を飲みながらそのうえでトトにこんなことを言いました。
「トトには今回かなり助けてもらえそうだね」
「それはどうしてかな」
「そんな気がするんだ」
 予感で言っているというのだ。
「ただね」
「そうなんだ」
「うん、そんな気がするんだ」
「僕は別にね」
 これといってというのです。
「役に立たないと思うよ」
「いや、トトはいつも貢献しているよ」
「冒険の時には?」
「そう思うよ」
「そうだといいけれど」
「それにね」
 さらに言うオジョでした、チーズケーキも食べながら。
「お鼻が効くし」
「犬は誰でもそうだよ」
「いや、そのお鼻がね」
 何といってもというのです。
「抜群にいいしね」
「そのこともあってなんだ」
「そう、今回活躍してくれそうだよ」
「そんな気がするんだね」
「僕はね」
「そうね、私もね」
 ドロシーもここで言いました。
「言われてみればね」
「そんな気がするんだ」
「オジョのお話を聞くとね」
「ドロシーもそう言うんだ」
「ええ、じゃあその時が来たら」
「うん、頑張ってみるよ」
「そうしてね」
 こうトトに言うのでした。
「皆で力を合わせて」
「そしてだね」
「問題を解決していきましょう」
「今回の件もね」
「さて、お茶の後は」
 ティータイムを終えたらというのです。
「麓に戻って」
「はい、鳥さん達とお話をして」
「そうしてですね」
「あちらの言い分も聞いて」
「お互いの意見のことを考えて」
「問題を解決するんですね」
「そうしましょう、どちらも幸せになれて」
 森の生きもの達も鳥達もというのです。
「仲良くなれる」
「そういう風にしていきますね」
「ただお互いが幸せになれるだけでなく」
「仲良くも出来る」
「それを目指しますか」
「それが問題の解決ですね」
「そうよ、じゃあ麓に行きましょうね」
 ドロシーは五人にも言いました、そうしてでした。
 ティータイムの後で実際に麓にいる鳥さん達のところに向かいました、今度は彼等のお話を聞くのでした。






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