『オズのトト』




         第一幕  ブラッシングをされて

 恵梨香はこの時学校にいてそれで皆と一緒にいました、給食も食べて皆でのどかな時を過ごしています。
 五人で中庭にいてです、草原の上に座ってあれこれお話をしていました。その中で恵梨香は四人に言いました。
「今から何して遊ぶの?」
「今から?」
「今からって?」
「うん、お昼御飯を食べてね」
 そうしてというのです。
「五時間目までまだ時間があるけれど」
「ううん、そう言われてもね」
「特に思い当たらないね」
 ジョージと神宝が恵梨香にどうにもというお顔で応えました。
「別にね」
「考えてなかったから」
「お昼寝する?」
 カルロスは今ここでそうしようかと言うのでした。
「皆で」
「それもいいかしら」
 ナターシャはカルロスのその提案にくすりと笑いました。
「どうせなら」
「そうね、お昼寝もいいわね」
 恵梨香もカルロスの提案に頷きました。
「それじゃあ今から」
「そうだね、じゃあね」
 ジョージも頷きました。
「今から皆でここで寝よう」
「今日はお天気もいいしね」
 神宝はお空を見上げました、本当に快晴で見ていて気持ちいい位です。
「寝るのもいいね」
「こんな日にお昼寝したら」
 ナターシャは微笑んでこう言いました。
「どれだけ気持ちいいかしら」
「ボタン=ブライトみたいに寝ようね」
 カルロスは明るく笑ってオズの国のお友達の名前を出しました。
「そうしようね」
「ボタンね、そう言ったら」 
 ここでこう言った恵梨香でした。
「来たりするのよね」
「そうそう、何かね」
「ボタンってそうなんだよね」
「何時何処で出会えるかわからないけれど」
「噂をすればよく出て来るわね」
「そうよね、じゃあひょっとしたら」
 恵梨香はくすりとした笑顔でした、その笑顔で言います。
「今ここで会えたりしてね」
「その時はオズの国に行くことになるかしら」
 ナターシャはこう考えました。
「またね」
「そうだね、そうなるかも知れないね」
 神宝はナターシャのその言葉に頷きました。
「今回もね」
「この前も行ったけれど」 
 カルロスは前回のオズの国でのことを思い出して自然と笑顔になってそのうえで言いました。
「何時行ってもいい場所だね」
「じゃあまた行くことになったら」
 ジョージもその場合を楽しみになっています。
「皆で遊ぼうね」
「というか」
 ここでふとこう考えて言った恵梨香でした。
「今から行かない?」
「オズの国に?」
「今から?」
「そう、今からね」
 こう言うのでした。
「そうする?」
「大学の時計塔まで行って」
「そうしてなんだね」
「オズの国に行って」
「皆で遊ぶのね」
「そうしない?」
 こう言うのでした。
「どうせならね」
「そうだね、お昼寝はオズの国でも出来るし」
「それも好きなだけ」
「しかもあちらでどれだけ過ごしてもこっちでは一瞬だし」
「お昼休みの間のことだし」
「そのこともあるし」 
 こちらの時間のことも気にしなくていいこともです、恵梨香は考えていました。そうしてでした。
 皆で一緒にです、時計塔のところに行きましたが。
 時計塔に入ろうとするところでふとでした、その時計塔からです。
 ドロシーが出て来てです、皆に気付いて声をかけてきました。
「あら、ここで会うなんて奇遇ね」
「あれっ、ドロシーさん」
 恵梨香がそのドロシーに応えました、見ればいつも通りトトも一緒で彼を腕の中で抱っこしています。
「どうしたんですか?」
「ええ、今日はここでトトと一緒にお散歩してたの」
「そうだったんですか」
「ええ、それで今からオズの国に帰るつもりだったけれど」
「そこで、ですか」
「こうして会ったのよ」
「そうですか、私達はです」
 恵梨香はドロシーに自分達のことをお話しました、見ればトトは今は外の世界にいるので喋りません、生きものが喋ることが出来るのはお伽の国であるオズの国だけでのことなのです。
「今からオズの国に行って」
「楽しくなのね」
「遊ぶつもりでしたけれど」
「そうなの、わかったわ」
 ドロシーは恵梨香の言葉を聞いてにこりとして返しました。
「じゃあ今からね」
「はい、ドロシーさんと一緒に」
「オズの国に行きましょう」
「それじゃあ」
「ここで会ったのも何かの縁ね」
 にこりと笑って言ったドロシーでした。
「一緒にオズの国に行こうっていう」
「そうですね」
「トトもいるし」
「そういえばトトにはリード付けないんですね」
 カルロスはこのことに気付きました、見ればトトに首輪はありますがリードは付いていません。
「そうなんですね」
「というかオズの国の生きものはそういうの付けないわね」
 ナターシャも言います。
「臆病ライオンさんも腹ペコタイガーさんも」
「そうそう、特にビリーナはね」 
 神宝は誇り高い鶏のお友達を思い出しました。
「そういうの絶対に付けそうにないし」
「首輪もお洒落だしね」
 ジョージはトトのそのエメラルドで飾られた奇麗な首輪を見ています。
「ファッションで」
「そうよ、オズの国ではリードは付けないの」
 実際にとです、ドロシーは五人に答えました。
「特にトトはね」
「付ける必要ないんですね」
「一匹で変なところに行かないから」
「だからですね」
「リードも必要ないんですね」
「そういうことですね」
「そうよ、ましてオズの国では皆喋られるから」
 それこそ普通にです。
「何処に行くとか言えるし」
「だからですか」
「あちらではリードないんですね」
「付ける必要もないし」
「皆付けないんですね」
「そうしたものは」
「そうよ、トトにしろ他の皆もね」
 まさにその通りというのです。
「外の世界に行く時はいつも抱っこしてるしね」
「あっ、そうですね」
 恵梨香はドロシーが抱っこしているそのトトを見ました、ずっと抱っこしてトトもその中で楽しそうにしています。
「今も」
「そうなの、じゃあね」
「はい、今からですね」
「オズの国に行きましょう」
 こうお話してでした、五人はドロシーそしてトトと一緒にオズの国に行きました。時計塔の最上階の青い渦を通ってです。
 その外に出るとです、そこは。
 一面青い世界でした、恵梨香はその青し世界を見て出て来たところがどのお国なのかすぐにわかりました。
「マンチキンの国ね」
「そうだね」 
 トトが喋ってきました。
「間違いないね」
「あっ、オズの国に入ったから」
「喋られる様になったよ」
「そうよね」
「じゃあドロシー、今はね」
「ええ、下ろすわよ」
「あちらじゃ犬がリード付けていないと言われるからね」
 何かとです、生きものの放し飼いは外の世界では生きものにとっても周りの人達にとっても危ないからです。
「けれどね」
「ええ、オズの国に入ったから」
「喋られる様になったからね」
「それじゃあね」
「下ろしてね」
「わかったわ」
 ドロシーもにこりと応えてです、そのうえで。
 トトを下ろします、するとトトはすぐにドロシーの足元ではしゃぎはじめました。そしてでした。
 恵梨香は周りを見てです、ドロシーに尋ねました。
「マンチキンの国なのはわかりますけれど」
「問題はマンチキンのどの場所か」
「はい、何処なんでしょうか」
「ここはね」
 ドロシーも周りを見回しつつドロシーに答えます。
「エメラルドの都のすぐ傍のコンカットタウンの近くね」
「コンカットタウン?」
「そう、ホビットの街よ」
「オズの国にはホビット族もいるんですか」
「そう、エルフやノームやドワーフだけでなくてね」
 明るくて陽気な小さな種族もというのです。
「いるの」
「そうなんですね」
「その北ね」
 見れば彼等から見て北に黄色い煉瓦の道も見えます。
「エメラルドの都に行くのもすぐよ」
「そうですか」
「さて、どうしようかしら」
 ドロシーはここで考えるお顔になって言いました。
「一体」
「コンカットタウンに行かれますか?」
「それもいいし一旦ね」
「エメラルドの都に戻ってですね」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「オズマに戻ったって挨拶しようかしら」
「それがいいかも知れないですね」
「オズの国に戻ったなら」
「ホビットの街には何時行ってもいいですよね」
「ええ、別にね」
 その通りだとです、ドロシーは恵梨香に答えました。
「いいわ」
「それでしたら」
「まずはっていうのね」
「都に戻って」
 そうしてというのです。
「オズマ姫に挨拶をしましょう」
「そうね、オズマとは何時でも連絡出来るけれど」 
 その連絡に使う携帯を出して言いました。
「オズマも鏡で私の状況をチェック出来るし」
「それでもやっぱり」
「ええ、帰ったらね」
「まずは挨拶をした方がいいです」
「恵梨香の言う通りね」 
 ドロシーは恵梨香の提案に頷きました、そのうえで皆に言いました。
「それじゃあね」
「はい、今からですね」
「まずはエメラルドの都に戻る」
「そうしますか」
「それでオズマ姫にご挨拶ですね」
「そうしましょう、ここからだとね」
 それこそというのです。
「都まですぐに変えられるわ」
「何日か歩くとですね」
「いえいえ、実は今魔法の靴を持ってるから」
 だからだとです、ドロシーは恵梨香ににこりと笑って答えました。
「もうそれこそあっという間に着けるわよ」
「魔法の靴?」
「そう、履けば魔法みたいに履ける魔法のシューズなの」
「そんなものもあるんですね」
「この前魔法使いさんが発明したの」
 そうしたシューズをというのです。
「だからね」
「そのシューズを履けばですね」
「すぐにね」
「エメラルドの都に着きますか」
「十分もかからないわ」
 普通にあるけば何日、今からですとその数日後に夜になってしまいそうな時間にならないと着きそうもない場所でもというのです。
「それこそね」
「それは凄いですね」
「だからね」
「今からですね」
「今履いている靴はなおして」
 その為のビニールも出しています。
「シューズ出すから」
「そうですか、ただ」
「履くのは私だけっていうのね」
「はい、ですから私達は」
「安心して、皆が手をつなげば」
「その時はですか」
「同じ速さで歩けるの」
 そのシューズを履いたドロシーと、です。
「だからね」
「安心していいですか」
「そうよ」
「凄いですね」
「そうした意味でも魔法の道具なの」
 そのシューズはというのです。
「だからね」
「今からですね」
「そう、これからね」 
 まさにというのです。
「履くわ」
「わかりました」
 実際にです、ドロシーは持っているバッグからシューズを出しました。そしてシューズを履くと履いていた靴はビニールの中に入れてそのバッグに入れてそのうえであらためて皆に言いました。
「じゃあね」
「はい、皆でですね」
「手をつないで」
「そうしてですね」
「歩きましょう、普通に歩いてもね」
 そうしてもというのです。
「あっという間だから」
「十分で、ですか」
「エメラルドの都に着く」
「そうなりますね」
「そうよ、本当にこの靴はね」
 魔法のシューズはというのです。
「素晴らしいわ」
「流石は魔法使いさんですね」
「素晴らしいものを発明してくれますね」
「そんなシューズを発明出来るなんて」
「魔法を発明に使って」
「そうしてれますね」
「こうしたことはね」
 本当にとです、ドロシーは五人に言いました。
「魔法使いさんはオズの国の第一人者よ」
「オズマ姫やグリンダさんの魔法とは違いますよ」
 恵梨香はドロシーにこのことを言いました、言いながらまずは五人は恵梨香、ジョージ、神宝、カルロス、ナターシャの順番で縦に手をつないで列を作りました。
 そしてです、恵梨香がドロシーと手をつなぎました。そうして歩きはじめながらドロシーに言いました。トトはドロシーがまた抱っこしています。
「発明にも利用されますよね」
「そうなの、それがね」
「他の人の魔法と違って」
「独特のものになってるの」
「そうですよね」
「オズマもグリンダもそれぞれ魔法のタイプは違うけれど」
「魔法使いさんはですね」
「手品や発明の方にね」
「向かっていますね」
「そうした魔法なのよ」
 こうドロシーにお話します、歩いていると確かに風の様に進んでいます。普通に歩いているだけなのに。
「あの人の魔法は」
「そしてそのシューズもですね」
「発明してくれてね」
「今ドロシーさんが履かれているんですね」
「そうよ」 
 まさにその通りというのです。
「凄いでしょ」
「はい、偉大なる魔法使いにしてですね」
「発明家であるのよ」
 魔法使いさんはそうだというのです。
「あの人にこれまでどれだけね」
「発明品を頂いて」
「助けてもらってるかわからないわ」
「そうなんですね」
「ええ、とてもね」
 こうも言うドロシーでした。
「あの人がいて、って思ったことはないわ」
「そこまでなんですね」
「ええ、あとシューズは昔はなかったわ」
「ドロシーさんが最初にオズの国に来られた頃は」
「そう、なかったのよ」
「そうだったんですね」
「スパイクはあったけれど」
 野球の時に履くそれはです。
「シューズはなくてね」
「ドロシーさんもですね」
「履いてなかったの、けれどね」
「今はですね」
「こうして履いてるわ」
 実際にというのです。
「それも気楽にね」
「シューズって履きやすいですよね」
「そして動きやすいわ」
 そうしたこともお話します、マンチキンの青い世界をどんどん進みながら。
「だからいいのよ」
「そうですよね」
「靴も変わったわ」
「ドロシーさんはよく冒険に出られますし」
 オズの国一の冒険家であるだけにです。
「だから余計にいいですね」
「そう、履きやすく動きやすい靴はね」
「そうですよね」
「だからよくね」
「シューズもですね」
「履くわ」
 そうしているというのです。
「実際にね」
「そうなんですね」
「ええ、ただ服に合わせているの」
 履いている靴はです。
「シューズを履かない時も多いわ」
「そういえばドロシーさんの服って」
「昔ながらの服が多いから」
「ベッツイさんやトロットさんにしても」
「だから」
「そう、ジーンズやミニスカートは履かないでしょ」 
 このことはオズの国では皆そうです、服装だけはドロシーが最初に着た時から変わっていないのです。
「私達は」
「ラフな格好にはならないですよね」
「だからですね」
「ドロシーさんもですね」
「シューズを履かれない時も多いんですね」
「履いている靴は服に合わせるから」
「そうなの、シューズは好きでも」
 それでもというのです。
「履く靴はね」
「考えておられるんですね」
「お洒落もね」
 恵梨香に言うのでした。
「気をつけているから」
「合わない靴ですと」
「お洒落じゃなくなるでしょ」
「はい、どうしても」
「だから気をつけているの」
「ドロシーさんのファッションにですね」
「そうなの。私がジーンズを履いたらどうかしら」
 恵梨香にくすりと笑って尋ねるのでした、もうエメラルドの都に入っていて周りも青から緑になっています。
「似合うかしら」
「何が想像出来ないです」
「そうよね、今もね」
 治部から言うドロシーでした。
「自分でも思うけれど」
「合ってないですか」
「そう思ってね」
 それでというのです。
「普通に行っていい時はね」
「履かないですか」
「そうなの」
「そうですか」
「まあ急ぐ時はね」
「急ぐんですね」
「そうしないといけないから」
 恵梨香にこうも言ったドロシーでした。
「もうすぐに都まで着くから」
「本当に速いですね」
 恵梨香はびっくりしました、実際にもう都の正門のところまで来ました。そして門番の人がです。
 ドロシー達を見てです、笑顔で挨拶をしてくれました。
「お帰りなさい」
「ちょっと外の世界に行ってたの」
 ドロシーがその門番さんに笑顔で言いました。
「それで今ね」
「帰って来られたんですね」
「帰る時にたまたま恵梨香達と会って」
 ドロシーからこのことをお話しました。
「それでなの」
「五人共一緒なんですね」
「そうなの」
 こうお話するのでした。
「それでなのよ」
「成程、よくある出会いですね」
「偶然だけれど必然の出会いね」
「そうですね」
「何というかね」 
 こうも言ったドロシーでした。
「ふとしたことで出会った様に見えて」
「その実は、ですよね」
「神様のお導きだった」
「そういうことはよくありますね」
「オズの国の神々のね」
「そしてその運命のお導きで」
「私達は出会ってね」
 そしてというのです。
「またオズの国で遊ぶわ」
「わかりました、では」
「ええ、今からね」
「どうぞお入り下さい」 
 こう言ってでした、門番の人は正門を開けてくれてそのうえでドロシー達を都の中に入れてくれました。
 そしてです、中に入ってでした。
 緑の文字通りエメラルドで輝いている都の中を進んででした、一行は王宮に戻りました。そしてです。
 王宮の中に入ってです、すぐにオズマに挨拶しました。
「只今」
「ずっと鏡で観てたわ」
 オズマがドロシー達に笑顔で応えました。
「これも神々のお導きね」
「本当にそうよね」
「じゃあ今からなのね」
「恵梨香達と遊んでいいわよね」
「ええ、どうぞ」
 オズマはドロシーににこりと笑って答えました。
「それじゃあね」
「ええ、今日はティータイムも挟んで晩御飯までね」
「この王宮で遊ぶのね」
「そうさせてもらうわ」
 こうドロシーに言いました。
「今からね」
「ええ、じゃあ私も政治が終わったらね」
「それからなのね」
「一緒に遊びましょう」
 こう言うのでした。
「今はモジャボロ達と一緒にお話をするから」
「政治のね」
「そうしてね」
「一緒に遊びましょう」
「そうしましょう」
 こうお話してそしてでした、オズマは一旦会議室に入ってです。そうして実際に政治に入りました。
 そしてドロシー達はといいますと。
 王宮に来ていたムシノスケ学長とお話をしました、ムシノスケは皆におほんと咳払いをしてから言いました。
「諸君は学問が好きかな」
「遊ぶ学問ですね」
「左様、学問は難しく考えてはいけないのだよ」
 ムシノスケは恵梨香に笑って答えました。皆は王宮の図書館に入ってそこで本を開いています。
「楽しくするもので」
「これもですね」
「遊びの一つなのだよ」
 こう恵梨香達に言うのでした。
「自分の学びたいことを徹底的に楽しむ」
「それが学問ですね」
「そうなのだよ」
 こう恵梨香に言いました。
「だから君達もだよ」
「学問をですね」
「好きなだけ学ぶことだよ」
「僕は勉強は得意なんで」 
 五人の知恵袋の神宝の言葉です。クラスでもいつも一番です。
「どんどんしていけますね」
「僕も神宝程じゃないですが悪い点を取ったことはないです」
 次に言ったのはジョージでした、この子はスポーツも出来てバランスタイプです。
「まあ満足しています」
「僕は普通のつもりです」
 カルロスはどっちかというとスポーツが得意です。
「何とかそうした点を取っています」
「私は国語や社会が得意ですね」
 ナターシャは全体的に成績がいいですがそういった科目が得意です。
「日本語の国語も好きです、家庭科も」
「私は算数や理科が好きです」
 恵梨香も成績はよくて特にこちらです。
「あと図工も好きですね」
「恵梨香お習字も得意よね」
「うん、書道も好きだから」
「ふむ、書道というと」
 モジャボロが言うにはです。
「外の世界の東洋の芸術だね」
「そうだよね」
 ドロシーの足元にいるトトがムシノスケに応えました。
「西洋にはないね」
「そうした筆がないからだよ」
「東洋では昔は筆で字を書いていてね」
「それが芸術にもなったのだよ」
「それも凄いことだね」
「全くだ、そして恵梨香はだね」
「はい、書道好きです」 
 恵梨香はムシノスケにも答えました。
「はじめから」
「じゃあ将来は書道家になるの?」 
 ドロシーはくすりと笑って恵梨香に尋ねました。
「そうなるの?」
「ううん、そこまでは」
「考えていないのね」
「はい、私より上手な人は沢山いますし」
「学問は学べば学だけよくなるのだよ」
 ムシノスケはここでドロシーにこう言いました。
「芸術も然りだよ、センスは確かに必要だが」
「それでもですか」
「そう、やはり好きならだよ」
「徹底的に楽しむとですね」
「よくなるのだよ」
 そうだというのです。
「だから書道もだよ」
「学べば学だけ、ですか」
「そう、そして書けば書くだけだよ」
「よくなるんですか」
「あらゆる学問がね」
「そうですか、じゃあ」
「恵梨香が書道を楽しみたいのならだよ」
 そう思うならというのです。
「まずは書くことだよ」
「それも楽しんで」
「そうしていけば上手になるんだ」
 今以上にというのです。
「絶対に」
「そうですか」
「そう、何度も言うがね」
「楽しむことですか」
「そう、学問もそうした意味で遊びなのだよ」
 楽しむことだからというのです。
「本当にね、では今から遊ぼうか」
「宜しくお願いします」
 皆でモジャボロに応えてでした、そのうえで学問という遊びを楽しみますが今日の学問は何かといいますと。
 狼についてでした、狼と聞いてトトが言いました。
「僕のご先祖様になるんだよね」
「その通りだよ」
 モジャボロはトトのその問いににこりと笑って答えました。
「犬は狼から進化したからね」
「だからだね」
「そこがちょっと信じられない時があるね」
「うん、怖い狼が可愛い犬になったって」
「どうにもね」 
 ジョージと神宝、そしてナターシャはこう言いました。
「狼はとても怖いから」
「けれど犬は愛嬌があるからね」
「外見は似ている犬もいるけれどね」
「犬は様々な品種改良が為されたのだよ」
 モジャボロは狼を怖いという三人にこう言いました。
「そして色々な姿の種類が生まれたんだ」
「トトもそうよね」
 ドロシーはここでまたトトを見ました。
「小さい種類よね」
「うん、この通りね」
 トトもドロシーの方を見上げて応えます。
「僕は小さい種類の犬だよ」
「毛が多くて長い巻き毛でね」
「狼さん達と全然姿が違うね」
「そうよね」
「こうした種類の犬もいるんだよね」
 自分で言うトトでした。
「品種改良されていって」
「そうよね、けれどね」
「狼さん達と全然姿が違うから」
「元はそうだったとはとても思えないわ」
「犬程様々な姿の種類がいる生きものは少ないだろうね」
 モジャボロは学者として言いました。
「まさにね」
「というかね」
 ここでカルロスが言うことはといいますと。
「狼って怖いの?
「いや、怖いから」
「家畜も人も襲うし」
「物凄く怖いわよ」
 ジョージ、神宝、ナターシャの三人はカルロスに反論しました。
「群れを為すし」
「狂暴で頭もよくてね」
「野生の狼はとんでもなく強いよ」
「そうなのかな、ブラジルには狼がいないからね」
 だからと言うカルロスでした。
「よく知らないけれど怖いといより恰好いいかな」
「ううん、狼っていうと」 
 恵梨香は困ったお顔で言いました。
「私はニホンオオカミを思い出したけれど」
「ニホンオオカミはもう絶滅したとされているね」
 ムシノスケが恵梨香に応えました。
「外の世界では」
「まだ生きているってお話もありますけれど」
「そうだね、オズの国にはいるけれどね」
「外の世界にはいないですから」
「馴染みがないね」
「はい、ですが怖いっていうイメージはないです」
「ニホンオオカミは特別な狼でね」
 ニホンオオカミについてです、モジャボロはこうも言いました。
「森にいて小型でね」
「小さいんですね」
「うん、そして骨格も普通の狼と違うんだ」
「そうなんですか」
「そう、狼とは別の種類と思うにね」
 狼と名付けられていてもというのです。
「違うんだ」
「そうだったんですか」
「そして日本の犬は比較的狼に近い外見の種類が多いね」
「はい、言われてみますと」
 恵梨香もこのことはわかりました。
「秋田犬も柴犬も甲斐犬も」
「そうだね、その日本の犬達もね」
 まさにというのです。
「ニホンオオカミからなっているけれど」
「骨格にニホンオオカミの名残がですか」
「私は見たね、レントゲンで観るとね」
「そうですか」
「これが面白いよ」
 実にというのです。
「本当にね、後ね」
「後?」
「送り犬という妖怪が日本にいるそうだけれど」
 今度は妖怪のことを話すのでした。
「これはおそらく正体はニホンオオカミだよ」
「そうなんですか」
「山道で人の後ろをつけてくるね」
 そうしたことをする妖怪だというのです。
「これはニホンオオカミの習性でね」
「人の後ろをつけてくるんですか」
「オズの国でもそうなんだ」
 人の後ろについてくるというのです。
「縄張りに入った人が縄張りから出るまでね」
「つけてくるんですね」
「そうだよ」 
「警戒してですか」
「日本の犬も後ろをつけてきたりするね」
「散歩の時にすれ違ったりしたら」
「それだよ、ニホンオオカミの血が入っていると」
 日本の犬がニホンオオカミから生まれているからです。
「人の後ろについてきたりするんだ」
「そうだったんですか」
「まあ狼は大体この習性があるけれど」
 それでもというのです。
「ニホンオオカミは顕著でね」
「日本の犬にもですね」
「受け継がれているんだろうね。ただニホンオオカミとそれぞれの犬でね」
 ムシノスケのお話は熱が入ってきていました。
「形が違うからね」
「そうなんですか」
「元は同じにしてもね」
「また違うんですね」
「ううん、何かね」
 ドロシーはここまで聞いて言いました。
「お話を聞いてるとね」
「ニホンオオカミについて興味を持つね」
「ええ、持ったわ」 
 実際にというのです。
「オズの国ではニホンオオカミも見るけれど」
「山にいるね」
「木の多いね」
「そこでよく観ると面白いよ」
「わかったわ、じゃあ今度会ったらね」
「よく観てみるね、実際に」
「そうしてみるわ」
 実際にというのです、そしてでした。
 そうしたお話をしてです、ドロシーはトトにこんなことを言いました。
「どうも貴方とニホンオオカミはね」
「かなり離れているね」
「そうみたいね」
「そうだね、狼さんにしてもね」
「かなり違うわね」
「というか普通の狼じゃないみたい」
 恵梨香はニホンオオカミについてこうも思いました。
「どうにも」
「狼は狼だよ」
 ムシノスケは恵梨香にこのことは間違いないとお話しました。
「ただ、結構以上に離れているんだ」
「普通の狼さんとは」
「小さいし骨格も違っていてね」
「それでなの」
「またね」
「ううん、何か不思議ね」
「不思議かというとね」
 モジャボロは恵梨香に考えるお顔になって言いました。
「そうかも知れないね」
「そうした狼なんですね」
「学問的に非常に興味深い種類だよ」
 ニホンオオカミはというのです。
「本当にね」
「そうね、じゃあちょっと山に行こうかしら」
 ドロシーはニホンオオカミに本格的に興味を持ってでした、そのうえでトトやムシノスケだけでなく恵梨香達にも言いました。
「ニホンオオカミのいるね」
「何処ですか?その山は」
「オズの国の何処ですか?」
「ニホンオオカミのいる場所は」
「結構色々な場所にいるの」
 ニホンオオカミはというのです。
「他の生きもの達もいるから」
「日本にいるものがね」
 ムシノスケも皆にお話しました。
「沢山いるんだ、中国の自然の山もあるしジャングルもある」
「ジャングルはアフリカのものやアマゾンもあるわ」
 恵梨香はアマゾンがあるブラジル出身のカルロスを見つつお話しました。
「ちゃんとね」
「じゃあ中国のところに行けば虎がいますね」
 その中国人の神宝の言葉です。
「腹ペコタイガーさん以外に」
「ライオンはアフリカやインドだけれど」
 ジョージは臆病ライオンを思いました。
「アフリカのジャングルに臆病ライオンさんは合うね」
「アマゾンだったら」
 カルロスが言うことはといいますと。
「アナコンダやジャガーもいて」
「本当にオズの国は色々な場所があるわね」 
 ナターシャが言うことはといいますと。
「じゃあツンドラもあるのかしら」
「あるわよ」
 ドロシーはナターシャにすぐに答えました。
「ジャコウウシヤムースもクズリもいるわ」
「オズの国には外の世界にいる生きものが全て揃っているんだ」
 ムシノスケは五人に笑顔で言いました。
「ここは不思議の国だからね」
「外の世界の生きものも集まるんですね」
「だからですね」
「そういうことですか」
「オズの国はそうした国なんですね」
「生きものについても不思議なんですね」
「そうだよ。不思議の国ならではだよ」
「リョコウバトもいるしね」
 トトは外の世界ではもう絶滅してしまっている鳥の名前を出しました。かつては何十億羽もいたのです。
「ステラーカイギュウだってクァッガだってブルーバックだって」
「全部絶滅したね、外の世界では」
 ムシノスケも言います。
「けれどこの国ではいるんだ」
「そして僕達も会えるんだね」
「その通りだよ」
 ムシノスケうはトトにすぐに答えました。
「彼等がいる場所に行けばね」
「そうだよね」
「そう、だからね」 
 それでというのです。
「会いたいのなら何時でもいいよ」
「オズの国にしかいない生きもの達もいて」
 ドロシーが言うにはです。
「外の世界にはもういない生きもの達もいる」
「こんな不思議な国に来られて」
 恵梨香が言うにはです。
「本当に私達は幸せですね」
「このこともよ」
 ドロシーはそう言った恵梨香に笑ってこう言いました。
「オズの神々のね」
「お導きですね」
「そうなのよ」
 まさにというのです。
「だからね」
「そのお導きに従って」
「オズの国の全部を楽しんでね」
「わかりました」
「さて、三時になったら」
 ムシノスケはふと時計を見てまた言いました。
「ティータイムだね」
「紅茶かコーヒーね」
「私は今日はコーヒーにしようかな」
「そちらにするのね」
「そうしようかな」
 こう言うのでした。
「今日はね」
「そうね、あとお茶の後は」
 ドロシーはここでまたトトを見ました。
「ブラッシングもしてね」
「僕のだね」
「今日はまだだったわね」
「うん、そうだったよ」
「じゃあしないと」
  そのブラッシングをというのです。
「忘れないでね」
「それは夜でいいよ」
「夜になの?」
「うん、だってお風呂に入ってね」
 それからだというのです。
「奇麗になってからした方がいいじゃない」
「そうね、じゃあ」
「その時にね」
「わかったわ、お風呂の後でブラッシングするわね」
「それでね、僕お風呂好きだしね」
 トトはとても奇麗好きなのです、それでお風呂もブラッシングも大好きでいつもドロシーと一緒に入っています。
「じゃあ夜にね」
「そうするわね」
「それじゃあね」
「うん、それとね」
「それと?」
「後はね」
 こうも言ったドロシーでした。
「香水もね」
「それも?」
「どうかしら」
「香水はね」
 別にと返したトトでした。
「いいよ」
「そうなの」
「うん、今日はね」
「いい香りなのに」
「そこはではいいよ」
 今日はというのです。
「本当にね」
「そうした気分ってことね」
「うん、香水まではいいってね」
 お風呂に入ってブラッシングまでで、というのです。
「だからね」
「わかったわ、じゃあ私もね」
 ドロシーはトトの言葉に納得して頷いてでした。そのうえでトトに対してにこりと笑って言いました。
「それ以上はしないわ」
「うん、じゃあね」
「そうしましょう」
 こうトトに言うのでした。
「じゃあ夜にね」
「お風呂だね」
「一緒に入りましょう」
 お互いに笑顔でお話しました、そしてです。
 そのお話の後で、です。皆で遊んでティータイムを楽しみました。その夜は実際にドロシーはトトと一緒にお風呂に入ってです。
 彼にブラッシングもしてあげました、そのブラッシングを観て五人はドロシーに尋ねました。
「毎日ブラッシングしてます?」
「僕達よく観ますけれど」
「やっぱり毎日ですか」
「ブラッシングされてますか」
「そうなんですか?」
「ええ、毎日してるわ」  
 実際にとです、ドロシーは五人に答えました。
「だってトトの毛は多くて長くてしかも巻いてるでしょ」
「だから毎日ブラッシングしないと駄目ですか」
「そうなんですね」
「毎日じゃないと」
「ちゃんとブラッシングしないとですね」
「よくないんですね」
「そうなの、トトはね」
 本当にというおです。
「毎日そうしてあげないとよくないからね」
「だからドロシーにはいつも感謝しているんだ」
 トトも五人に言います。
「毎日ブラッシングしてもらってね」
「そこもドロシーさんとトトならではですね」
 恵梨香はトトの言葉から彼とドロシーの絆について思うのでした。
「長いお付き合いだから」
「そうなの、カンサスからだからね」
「本当に長いよね」
「ずっと一緒にいてね」
「仲良くしてきたから」
 ドロシーとトトも恵梨香に答えます。
「こうしたこともね」
「いつもしてもらってるんだ」
「そうなのね、じゃあ」
 ここでまた言った恵梨香でした。
「トトはドロシーさんにブラッシングしてもらってこそ」
「ドロシー以外の人にブラッシングしてもらうこともあるけれどね」
「ドロシーさんにしてもらうのが一番いいのね」
「そうなんだ」 
 実際にというのです、こうしたことをお話してでした。
 五人もそれぞれお風呂に入ってです、この日もゆっくりと休みました。



今度はドロシーとこっちの世界で出会ったな。
美姫 「珍しいわね」
だな。一緒にオズの国へ。
美姫 「今度はどんな冒険をするのかしら」
それとものんびりするのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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