『オズのジュリア=ジャム』




                 第八幕  海が見えてきて

 マンチキンの国を東に東に進んでいくとです、少しずつですが。
 ジャックがです、こんなことを言いました。
「あれっ、何かね」
「どうしたんだい?」
「何かあったのかな」
「海の匂いがしてきたかな」 
 こうかかしと木樵にも言いました。
「そんな気がしてきたけれど」
「ううん、それは気が逸ってるからかな」
「気のせいかな」
「そう思ったけれどね」
 かかしはこうジャックに答えました。
「僕はね」
「ううん、そういえばね」
「そういえばって?」
「ジャックはここ暫く海には行ってなかったね」
「あっ、そうだね」
 ジャックも言われて気付きました。
「僕最近海に行ってなかったよ」
「そうだったね」
「冒険には結構出てるけれど」
「それでもだね」
「海には行ってなかったよ、それでかな」
 ジャック自身も言うのでした。
「早く海に行きたいのかな」
「久し振りにね」
「海はね、若し僕は錆止めをしていなかったら」
 木樵は笑って言いました。
「とても嫌な場所だったね」
「君はブリキだからね」
「うん、錆びるとね」
「動けなくなるしね」
「それに折角ピカピカなのにね」 
 その銀色に輝く身体のこともお話するのでした。
「赤く錆びたらね」
「嫌だね」
「そうだよ、だから錆止めをしたんだ」
 その身体全体をです。
「ステンレスだね」
「そうだね」
「だから海もね」
「その潮もだね」
「怖くはないよ、泳ぐことも出来るしね」 
 その海の中で、です。
「怖くはないよ」
「そうだね」
「身体の中もね」
 外だけでなく、というのです。
「ちゃんとしているからね」
「だから大丈夫だね」
「海もね」
 それが今の木樵なのです。
「勿論斧もね」
「そうですね、ブリキの身体ですと」
 どうしてもとです、神宝が言いました。
「普通は塩水は駄目ですね」
「特にね」
「そうですよね」
「だから僕もね」
「そこをちゃんとしたんですね」
「そうなんだ」
 実際にというのです。
「オズの国は今や大陸全体に及んでいてね」
「海にも行くことがあるから」
「そうしたんだ、だから僕も人魚の国に行けるよ」
 海の中にあるその国にです。
「笑顔でね」
「それは何よりですね、それじゃあ皆でね」
「行こうね」
「僕も海は怖くないよ」
 ジャックもそうでした。
「カボチャの頭は自由に交換出来るしね」
「何時でも出せるわよ」
 ジュリアがジャックに応えました。
「カボチャなら」
「テーブル掛けからだね」
「そうよ、だから安心してね」
「うん、何かジュリアのテーブル掛けの使い方はね」
「どうかしたの?」
「いや、色々使うね」
 お料理を出す以外にというのです。
「バケツからお水を出したりね」
「そうした使い方がなの」
「うん、上手だね」
「そうかしら」
「工夫してるね」
「いえ、何かね」
 ジュリアが言うにはです。
「閃くのよ」
「そうなんだ」
「ええ、何かね」
 こうジャックにお話しました。
「魔法の道具については」
「王宮に侍女として働いているせいかな」
 かかしはジュリアのそうした工夫上手なことにこのことから考えて指摘しました。
「だからかな」
「それでなの」
「うん、いつも働いていて道具を使ってるね」
「お掃除やら何やらでね」
「だからなの」
「そう、それでどういった道具をどう使うかいつも考えているね」
「そうして使っているわ」
 実際にとです、ジュリアも答えます。
「そうしているわ」
「それじゃあね」
「テーブル掛けを工夫して使うことも」
「慣れているんだ」
「そうなのね」
「そうだと思うよ」
「道具を使い慣れているから」
 テーブル掛け等が入っている鞄を見てです、ジュリアは言いました。
「私は色々工夫が出来るのかしら」
「きっとそうだよ」
「成程ね」
「しかも年齢も上だしね」
「ドロシー王女達と比べて」
「オズマより少し下位だね」
「オズマ姫とドロシー王女の間位かしら」
 ジュリアの年齢はです。
「私の年齢は」
「ベッツイやトロットはドロシーより下でね」
「だからなのね」
「年齢の分だけ経験も積んでいるから」
「工夫も出来るのね」
「こうしたことは年齢が生きるからね」
 だからこそというのです。
「ジュリアは工夫上手なんだよ」
「成程ね」
「そうだと思うよ。まあジャックの頭はね」
「そのことはよね」
「ジュリアがいれば大丈夫だよ」
 彼女がテーブル掛けからカボチャを出してくれるからです。
「だから大丈夫だよ」
「うん、頼むよ」
 ジャック自身も言います。
「その時はね」
「ええ、わかったわ」
 ジュリアも頷きます、そしてです。
 皆でさらに東に東に進みます、すると今度は。
 やけに大きな青い象が困ったお顔をしていました、モジャボロはその象を見て心配そうに言うのでした。
「何か困ってるね」
「はい、そうですね」
 ジョージがモジャボロに最初に応えました。
「あの象さんは」
「痛い様な感じですね」
 カルロスはそうして困っているのではと見ました、
「どうも」
「そうね、ぶつけたのかしら」
 ナターシャはその痛がっている感じから思いました。
「何処かに」
「それか身体の何処かが痛いのかしら」
 恵梨香も言いました。
「それで困っているのかしら」
「虫歯かな」 
 神宝はそれではと思いました。
「それで痛いのかな」
「オズの国では病気はないよ」
 モジャボロは神宝の言葉に突っ込みを入れました。
「虫歯もね」
「あっ、そうでしたね」
「うん、基本ね」
「しかも誰も死ななくて」
「そうした世界でしたね」
「そうだいよ、だから虫歯はね」
 その可能性はというのです。
「殆どないよ」
「そうですか」
「だから基本別の理由で困っていると思うよ」
「痛がっているんですね」
「そうだと思うよ」
「まずは聞いてみましょう」
 ジュリアが言ってきました。
「ご本象にね」
「ご本人じゃなくて」
「そう、象さんだからね」
 人ではないからです、生物学的に。
「聞いてみましょう」
「わかりました、それじゃあ」
「今からね」
 こうお話しました、そしてです。
 皆はその象のところに行きました、ジュリアが象に尋ねました。
「困ってるの?今」
「うん、実は痛むんだ」
「痛いのね」
「そうなんだ、足の裏がね」
「足のなの」
「右の前足がね」
 その裏がというのです。
「痛いんだ」
「それで困ってるのね」
「何かね」
 どうにもというのです。
「痛むんだ」
「見せてくれるかしら」
 ジュリアは象のお話を聞いてこう言いました。
「そうしてくれるかしら」
「見てくれるんだ」
「そうしたらどうして痛いのかわかるかも知れないし」
「それでどうにか出来るのかな」
「私達が出来ることならね」
 それならというのです。
「そうさせてもらうわ」
「悪いね」
「まだ何もしていないのに悪いなんてないわよ」
 ジュリアは象にくすりと笑って言葉を返しました。
「それに悪いということはね」
「ないのね」
「そう、ないのよ」 
 そうだというのです。
「だって困った時はお互い様でしょ」
「助け合うのがオズの国だね」
「そうでしょ、だからね」
「それでなんだね」
「悪く思うことはないから」
 ジュリアは象ににこりと笑って言いました。
「気にしないでね」
「それじゃあ」
「ええ、まずは見せてね」
「見てね」
 こうしてです、象はジュリア達に右の前足の裏を見せました。するとそこに象の分厚い足の裏の皮さえもです。 
 貫く様な鋭い木の破片が刺さっていました、ジュリアはその破片を見て言いました。
「木の破片が刺さってるわ」
「それでなんだ」
「ええ、ずっと痛かったのよ」
「そうだったんだね」
「それでだったのよ」
「ううん、僕の足の裏の皮はとても厚いのに」
 象自身もよくわかっていることです。
「通る様な木の破片があるんだ」
「これまではこうして刺さったことなかったのね」
「うん」
 実際にという返事でした。
「一度もね」
「そうだったんだ」
「確かにね」
 ここでかかしが象に言いました。
「君達象の皮はとても厚いからね」
「そうだよね」
「特に足の裏の皮はね」
「それこそ靴よりもね」
 人間達が履いているそれよりもです。
「暑いよ」
「ずっとだね」
「そうだよ、だからね」
「これまでだね」
「うん、こうしたことはなかったよ」
 一度もというのです。
「なかったよ」
「そうだったんだね」
「だからまさかね」
「木が刺さるとはだね」
「なかったから」
 だからというのです。
「正直驚いているよ」
「こうなったことがだね」
「どうして痛いかもわからなかったし」
 そもそもというのです。
「夢にも思わなかったよ」
「成程ね」
「じゃあこの木を」
「君自身では抜けないね」 
 それはとです、木樵は象の身体の構造から言いました。
「鼻を使っても」
「うん、足の裏には届いてもね」
「取ることはだね」
「ちょっと出来ないよ」
「そうだね」
「どうもね」
「それじゃあね」
 それならとです、木樵は象の言葉に応えました。そしてです。 
 木樵はその木の破片に手をやってでした、早速です。
 その破片を抜きました、象から見れば小さなものでしたが皆にとっては大きなものでした。それで、です。
 その象の足の裏の皮さえ貫いた木の破片を見てです、五人の子供達は驚きました。
「大きいね」
「まるでナイフだね」
「ナイフにしてもかなりの大きさなんじゃ」
「こんな木の破片が刺さっていたなんて」
「怖いわね」
「こんなのが僕の足の裏に刺さっていたんだね」
 象も見て言います。
「そうだったんだね、いやまさかね」
「本当に刺さるとはなのね」
「思わなかったよ」
 象はジュリアに答えました。
「本当にね」
「夢にもだね」
「うん、こんなことがあるなんて」
「ええと、確か君は」
「ジュリア。ジュリア=ジャムよ」
 にこりと笑ってです、ジュリアは象に治りました。
「エメラルドの都のね」
「王宮の侍女さんだよね」
「ええ、そうよ」
「かかしさん達はわかったよ」 
 かかしと木樵、ジャックにモジャボロはです。
「皆オズの国の有名人でよく冒険に出ているしね」
「ジュリアはだね」
「ジュリアさんも有名だけれど」
 ジャックに答えました。
「それでもね」
「私はあまり冒険に出ないから」
「うん、だからね」
 それでというのです。
「僕も名前は知ってたけれど」
「それでもよね」
「会ったことははじめてだよ」
 今この時がというのです。
「本当にね」
「そうなのね」
「後ね」
「後?」
「この子達はね」
 象は今度は五人を見ました、もう足の裏は痛くないのでこのことはすっきりとした感じになっています。
「確か最近話題の」
「うん、外の世界から来たんだ」
「それで時々オズの国に遊びに来てね」
「こうして冒険も楽しんでいるよ」
「オズの人達と一緒にね」
「今もそうよ」
「君達のことも聞いてるよ」
 象は五人にも言いました。
「よくね」
「そうなんだ」
「僕達のことも知っているんだ」
「かかしさん達だけじゃなくて」
「知っていてくれているのね」
「象さんも」
「そうだよ、君達も有名になってきているよ」
 このオズの国でというのです。
「それもかなりね」
「そうなんだね」
「意識していなかったけれど」
「そうだったんだね」
「私達も有名なの」
「象さんも知っていて」
「うん、知らない人はいないと思うよ」
 他の人達と同じくというのです。
「オズの国でね」
「そうね、この子達もね」
「ただ、僕が会うのははじめてだよ」
 五人にというのです。
「それはね」
「そういえばこの象さんとははじめてだね」
「うん、お会いするのはね」
「オズの国でも結構象さんとお会いしてるけれど」
「それでもね」
「多分この象さんとははじめてね」
 五人も言います。
「誰がどの象さんかわからないけれど」
「お肌の色でどの国の象さんかはわかるけれどね」
「どの象さんか具体的にはね」
「私達ではわからないわね」
「はっきりした特徴がないとね」
「僕はこの辺りで一番大きい象だよ」
 象は自分でこう言いました。
「実はね、それでもわからないかな」
「御免なさい、どうもね」
「ぱっと見ただけだとね」
「他の象さんも一緒じゃないと」
「ちょっとね」
「わからないわ」
「そうなんだね、まあ僕から見てもね」
 象もこう言います。
「君達はお肌の色以外ははっきりとはわからないね」
「僕と他の子達は違うってわかるよね」
 モジャボロは象に尋ねました。
「このことは」
「うん、モジャボロさんはトレードマークがあるからね」
「このお髭と髪型だね」
「それでね、あと服の違いはわかるよ」
 こちらについてはというのです。
「色と形でね」
「あっ、そういえば」
 ここでふとです、ジョージが気付いたお顔になって言いました。
「オズの国の生きものは皆色がはっきりわかったね」
「そうそう、トトやエリカも言ってたね」
 カルロスは彼等からお話しました。
「オズの国に来て色がわかるようになったって」
「哺乳類は人とお猿さん以外は色がわからないのよね」
 ナターシャは外の世界のことをお話しました。
「オズの国以外では」
「けれどオズの国は不思議の国だから」
 恵梨香はオズの国のことからお話しました。
「皆色がわかるのよね」
「だからこの象さんも色がわかるんだね」
 最後に神宝が言いまし。
「そういうことだね」
「外の世界のことはわからないけれど色はわかるよ」 
 その象の言葉です。
「かかしさんにしても木樵さんにしてもね」
「そうなんだね」
「うん、皆ね」
 それこそというのです。
「服の色はわかるよ」
「それに形もだね」
「君の服が青だってこともね」
 神宝の青い服を見ての指摘です、見れば神宝は青でジョージは赤、カルロスは黄色、ナターシャは黒、恵梨香はピンクといつもの色です。
「わかるよ」
「それで僕達のことはわかるんだ」
「お顔はよくわからなくてもね」
「男の子か女の子かもわからないのよね」
「あまりね」
 象はジュリアにも答えました。
「わからないよ」
「そうよね」
「種類が違うとわからないからね」
 かかしはしみじみとした口調で述べました。
「顔だけでなく性別も」
「そうだよ、君達もわからないよね」
「象の性別はだね」
「そうだよね」
「うん、そうだよ」
 その通りだとです、かかしは象に答えました。
「僕は人間の目になっているしね」
「人間に作られたからかな」
「多分ね、だから君達象の性別はね」
「ぱっと見ただけじゃわからないね」
「そうだよ」
「僕達も象の性別がわからなくて」
 木樵も言いました。
「象の方でも僕達の性別がわからない」
「種族が違うからね」
「そうなるね」
「僕は象の性別はわかるよ」
 自分達のこのことはというのです。
「同じ種族のそれはね」
「僕達にはわからなくてもだね」
「そうだよ、はっきりわかるよ」
 それこそというのです。
「僕達にはね」
「種族が違うとどうしてもだね」
「そういうことだよ」
「それで見方が違うのはどうしようもないね」
 ジャックはしきりに頷いて言いました。
「お互いに性別がわからなくても」
「そうなるね、けれど大体服とお肌の色でわかるから」
 誰が誰かはです。
「安心してね」
「そういうことね」
「うん、それとね」
「それと?」
「いや、木を抜いてもらったからね」
 だからとです、象は皆に言いました。
「お礼をさせてもらうよ」
「別にいいわよ」 
 ジュリアはにこりと笑ってです、象に応えました。
「そんなことは」
「当然だっていうのかな」
「だって困っている人を助けるのがオズの決まりでしょ」
「法律だっていうんだね」
「そうよ、当然のことをしただけだから」
 だからだというのです。
「いいわ」
「いや、そういう訳にはいかないよ」
 こう返した象でした。
「お礼をするのもオズの国の決まりじゃない」
「それでなのね」
「うん、お礼にね」
 それでというのです。
「美味しい果物が沢山実る森を案内させてもらうよ」
「果物ね」
「うん、バナナもメロンもマンゴーも実るね」
「南国の果物ね」
「色々な果物がいつも沢山実っている森なんだ」
 にこにことしてです、象はジュリアにお話します。
「そこに案内させてもらうよ」
「それがお礼なのね」
「僕のね、それにね」  
 さらにお話する象でした。
「その近くに温泉もあるからね」
「温泉もなの」
「そこも楽しんだらどうかな」
「温泉ね」
 温泉と聞いてです、ジュリアはその目を輝かせました。
「それはいいわね」
「あっ、ジュリアさん温泉好きなんだ」
「お風呂自体が好きよ」
 温泉に限らずです、ジュリアのその目はにこにことしています。
「水泳と一緒に毎日楽しんでるわ」
「それじゃあ丁度いいかな」
「そちらもね」
「じゃあついて来て」
 象はジュリア達に穏やかな声で言いました。
「今から案内させてもらうよ」
「ええ、それじゃあね」
 ジュリアが皆を代表してにこりとして応えてです。
 象は皆をその森に案内しました、ここで象はお別れをして森の中に向かいました。森の中で心ゆくまで果物を食べると言ってです。
 皆は森の入口の方でバナナやメロン、マンゴーやパパイアといった南国の果物を食べました。そのうえで。
 温泉にも入りました、皆水着を着て入りましたがジュリアはその中で天国に行った様な顔でこんなことを言いました。
「いやあ、いいわね」
「いいお湯ですね」
「そうね」
 ジュリアは神宝に笑顔で応えました。
「ここの温泉も」
「はい、じゃあ後で身体も洗って奇麗にして」
「それからも入ってね」
 そしてというのです。
「楽しみましょう」
「温泉を」
「しかもこの温泉には水風呂もあるから」
 ジュリアはその水風呂の方にお顔を向けて言うのでした。
「あそこで身体を冷やしてね」
「またお湯に入るんですね」
「そうしましょう」
「あったまって冷やしてまたですね」
「あったまるのよ」
 そうしようというのです。
「お風呂はこうして楽しむのもいいのよ」
「あったまって冷やしてですか」
「またあったまるのもね。こうすればね」
 ジュリアはさらにお話しました。
「身体の疲れも取れるっていうわ」
「うん、そうだよ」 
 その通りだとです、モジャボロも答えます。その外では森の時と同じくかかしと木樵、ジャックが三人でお喋りを楽しんでいます。
「もう身体が疲れていてもね」
「すっかり取れるのね」
「そうだよ、だからね」
 それでというのです。
「そうして入るといいんだよ」
「あったまって冷やしてあったまって」
「そうすればね、サウナもね」
 こちらのお風呂もというのです。
「あったまって冷やすね」
「ええ、水風呂でね」
「汗をかいて冷やしてまた汗をかくね」
「そうして身体の悪いものを出すっていうわね」
「それがいいんだ、オズの国でも汗をかくとね」
 それがというのです。
「凄くいいからね」
「サウナもなのね」
「冷やすといいんだ」
 水風呂に入ってです。
「冷やしてまた汗をかくんだ」
「そして湯舟でもなのね」
「そうしてもいいんだ、だから皆もね」
「お風呂に入ってあったまって」
「あったまったら水風呂に入ろうね」
 そして一旦身体を冷やそうというのです。
「そうしようね」
「わかったわ、私前からそうして入っていたけれど」
「疲れが取れるとはだね」
「知らなかったから」
「肩や腰、膝にもいいよ」
 そうした場所にもというのです。
「だからそうして入ろうね」
「ええ、今もね」
「そして疲れを取ってね」
「また旅を続けるのね」
「そうしましょう」
 二人でお話してでした、そのうえで。
 他の皆と一緒にお湯であったまって水風呂に入って一旦そのあったまった身体を冷やしてでした。またお湯に入りました。
 そして身体も洗って奇麗にしてでした。
 皆は温泉をすっかり楽しんでから冒険に戻りました、そうして晩御飯の時にです。
 神宝は晩御飯のハンバーガーを食べながらです、ジュリアに言いました。
「何かすっかりです」
「疲れが取れたかしら」
「疲れが取れたというよりは」
 むしろというのです。
「元気が溢れ出るみたいな」
「身体中から?」
「そんな感じです」
「そういえばそうだね」
「何かあの温泉に入ってからね」
「これまで以上に元気になったわ」
「そうよね」
 ジョージ達四人もこう言います。
「疲れが取れたどころか」
「むしろよね」
「元気になって」
「もう何でも出来る感じだよ」
「そういえばオズの国のお風呂はです」
 神宝はまた言いました、皆と一緒にハンバーガーを食べながら。ハンバーガーの他にはアメリカンドッグもあります。
「入ると凄く疲れが取れますね」
「外の世界のお風呂よりもなのね」
「そう思います、それであの温泉は」
「疲れが取れるだけじゃなくて」
「はい、元気が出ました」
「そうなのね」
「幾らでも歩けそうです」
 そこまで元気になったというのです。
「本当に」
「そこまでなのね、けれど私もね」
「ジュリアさんもですね」
「元気になったわ」
 そうだったというのです。
「何かまだまだ歩けそうよ」
「今日は」
「そうよ、ただね」
「ただ?」
「今日は食べ終わったらね」
 それでというのです。
「もう寝ましょう」
「もっと進まずに」
「ええ、寝ましょう」
「夜だからですか」
「夜は歩かない方がいいでしょ」
「寝る時間だからですね」
「夜はしっかり寝ないとね」
 そうしないと、というのです。
「幾ら元気でもね」
「駄目なんですね」
「その時の疲れが後で出るからね」 
 例えその時は元気でもです。
「だからね」
「じっくりと休んで、ですね」
「そうよ、また朝にね」
「歩くんですね」
「そうしましょう」
「夜は休むべきですか」
「そうよ」
 こう神宝に言うのでした。
「これは絶対によ」
「夜は休む」
「寝ないといけないの」
 このことは強く言うジュリアでした。
「寝ないといけない体質の人はね」
「休まないといけないんですね」
「そうしないとかえってよくないの」
「後で疲れが来るから」
「沢山歩きたいなら沢山寝ることよ」
 夜にというのです。
「そして沢山食べることよ」
「そのこともですね」
「忘れないでね、じゃあ今夜もね」
「沢山寝て」
「朝に出発しましょう」
 お日様が出ると、というのです。
「そうしましょう」
「わかりました」
 神宝はジュリアの言葉に素直に頷きました。
「じゃあ今夜も」
「よく寝てね」
「そうします」
「テントに入ってね」
「うん、食べて歯を磨いたら寝ようね」
 ジョージとカルロスもお話しました。
「そうしようね」
「今夜もね」
「そしてお日様が出たら」
「また出発ね」
 ナターシャと恵梨香は女の子同士でお話します。
「いつも通りね」
「そうなるわね」
「それがいいね、やっぱり夜は寝ないと駄目だよ」
 モジャボロはハンバーガーと一緒に出されているマッシュポテトを楽しく食べています、見れば他には野菜スティックもあります。
「一日中歩いてもかえって疲れるからね」
「うん、休める人は休まないとね」
「本当によくないからね」
「夜は寝ようね」
 かかしと木樵、ジャックといった休まなくてもいい人達も言ってきました。
「じっくりとね」
「それで充分休んでね」
「また出発するべきだよ」
「そうよね、だから今夜もね」
 ジュリアはかかし達三人にもお話しました。
「楽しく寝るのよ」
「楽しくだね」
「寝るのならそうしないとね」
「それも気持ちよくだね」
「そうよ、寝て休んで」
 ジュリアはまた言いました、その野菜スティックにバーニャパウダーをたっぷりと付けてそうして食べています。
「朝の日の出前に起きてね」
「そしてだね」
「朝御飯を食べて」
「日の出と共に出発だね」
「そうするわ、とにかく今夜はね」
 この時間はというのです。
「休みましょう」
「幾ら元気でも夜は休むべきですね」
「そう、要するにね」
 ジュリアはまた神宝に答えました。
「飲むとぐっすりと寝られるミルクも出すわ」
「ミルクですか」
「このミルクを飲めばね」
 それこそというのです。
「本当に日の出までね」
「ぐっすりと寝られるんですね」
「そうよ、だから今夜も寝ましょうね」
 こうお話してでした、そのうえで実際にです。
 皆最後はデザートのアイスクリームだけでなくミルクも飲んでです、そうしてゆっくりと休んでそれからでした。
 お日様が出る前に起きてでした、それから。
 朝御飯を食べます、その時に五人は言いました。
「ううん、やっぱり寝ると」
「違うね」
「身体の調子が凄くいいよ」
「昨夜はずっと歩けそうだったけれど」
「やっぱり休んでよかったわね」
「そうでしょ、若し昨日の夜休まないで歩いていたらね」
 どうなっていたかとです、ジュリアは五人にお話しました。
「今時疲れきっていてね」
「動けなくなっていましたか」
「それで今日はですね」
「まともに動けなくなっていた」
「そうなっていたんですね」
「今頃は」
「そうなっていたわ、それじゃあ一緒でしょ」
 夜動けてもお日様が出ている時間動けないとです。
「むしろ四時半から七時まで動けないとね」
「夜の間ずっと歩いてもですね」
「その方が歩いている時間が少なくて」
「かえってよくないですね」
「それに夜道は周りがわからなくてどうしても歩くのが遅くなりますから」
「だから歩く距離も短くなりますね」
「そうよ、だからね」
 それでというのです。
「夜はじっくりと休むべきなのよ」
「そうだね、本当に夜は休まないとね」
 モジャボロは朝御飯のピロシキを食べつつジュリアの言葉に頷きます。
「かえってよくないよ」
「そして朝とお昼に動くの」
 ジュリアはモジャボロにもお話しました。
「そうしたらいいの」
「そうだね」
「だから昨日は元気だったけれどね」
 温泉に入ってです。
「あえてそうしたのよ」
「休んだんだね」
「そうよ、けれどね」
「けれど?」
「昨日は予想以上にね」
 ジュリアは起きたての自分の調子を見て言いました。
「よく寝られたわ」
「そうだね、僕もね」
「よく寝られたのね」
「ぐっすりとね、あのミルクを飲んだせいだね」
 モジャボロはジュリアににこりと笑ってジュリアに尋ねました。
「そうだね」
「ええ、あのミルク予想以上に効いたわ」
「人をじっくり寝かせてくれるんだね」
「そうしたミルクよ」
「あのミルクあんなに効いたかな」
「ううん、温泉で汗をかいてその分水分を吸収していて」
「ミルクの栄養もだね」
 モジャボロはさらに聞きました、ジュリアに。
「そうしてかな」
「そうだったのかしらね」
「そうかもね、けれどね」
「よく寝られたからよね」
「よかったよ」 
 このこと自体はというのです。
「とてもね」
「そうね、それじゃあね」
「今日も元気に歩いていこうね」
「そうしましょう、そろそろね」
「ううん、かなり近付いてきたね」
「人魚の国にね」
 目指すその国にというのです。
「オズの国の海にある」
「そうだね、いよいよだね」
「今回の冒険はかなりの距離があったけれど」
 何しろオズの国の端にある海に向かうのです、真ん中のエメラルドの都から。
「それでもね」
「歩いていってね」
「ようやくね」
「辿り着くのがあと少しになってきたわ」
「そうね、それじゃあ」
「うん、行こうね」
「今日もね」
 人魚の国に向かってです。
「そうしていきましょう」
「そうだね、人魚の国に行ったら」 
 目指すその国にです。
「真珠を見せてもらおうね」
「そうしましょう」
 ジュリアも応えました。
「是非ね」
「そういえばオズの国は」
 ここで神宝が言うことはといいますと。
「ずっと海がなかったですね」
「ええ、昔はもっと狭かったからね」
「そうでしたね」
「この大陸の中央にあってね」
 オズの国はかつてはそうでした。
「そして死の砂漠に囲まれていてね」
「周りの国々はその外にあって」
「今は周りの国々もオズの国になくて」
「別の国々だったのよ」
 オズの国とはです。
「同じ不思議の国でもね」
「それが死の砂漠が大陸の岸に行って」
「大陸全てがオズの国になったのよ」
「周りの国々もですよね」
 ジョージはそうした国々のお話をしました。
「オズの国に入ったんですね」
「そうよ、リンキティンク王の国もそうよね」
「あっ、そうでしたね」
 カルロスはかつて行ったリンキティンク王の国を思い出しました、オズマと一緒に行って楽しく遊んだあの国のことを。
「あの国も昔はオズの国の外にありましたね」
「そうでしょ、そして海もね」
 大陸自体を囲んでいるこの場所もです。
「オズの国に面している様になったのよ」
「そして海の国々もですね」
 今度はナターシャが言ってきました。
「オズの国に入ったんですね」
「そうよ、人魚の国もね」
 ジュリアはナターシャにもお話しました。
「オズの国に入ったのよ」
「大陸と海の国が全部オズの国に入ったんですね」 
 最後に恵梨香が言いました。
「海もまた」
「そうなの、だから今はオズの国も海に面しているのよ」
 そうなったというのです。
「領海でもあるわね」
「そしてその海にね」
 まさにとです、モジャボロが五人に言いました。
「僕達は今から行くんだよ」
「そうなりますね」
「じゃあ今からですね」
「オズの国の海に行きますね」
「そうなりますね」
「今から」
「そうだよ、じゃあ行こうね」
 是非にと言ってです、そしてでした。
 一行はさらに東に進むのでした、マンチキンの国の黄色い煉瓦の道を歩いていって。旅の道は確実に海に近付いていました。



温泉か。
美姫 「良いわよね」
だよな。俺もゆっくりと浸かりたいな。
美姫 「私もよ」
と、それはさておき。
美姫 「当たり前だけれど、徐々に海に近づいているのね」
だよな。もうすぐ人魚の国か。
美姫 「どうなるのか、次回も楽しみです」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」



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