『オズのアン王女』




                 第四幕  ウィンキー川の橋で

 アンはチクタクと一緒にウーガブーの国から木樵のお城まで一直線に向かっていました。その途中で、です。
 森の中に入ってです、アンはチクタクに尋ねました。
「この森は知ってるわよね」
「はい」
 チクタクもアンに答えます。
「果物のーー森です」
「その名前の通りね」
「果物がーーですか」
「沢山あるのよ」 
 この森にはというのです。
「色々な種類のね」
「例ーーえば」
「林檎があるわ」
 アンは何といってもという感じでこの果物を最初に出しました。
「無花果にオレンジ、洋梨もあるし」
「本当にーー色々ですね」
「葡萄やメロンもあるわよ」
 こちらの果物達もというのです。
「枇杷や柿もね」
「ではーーですね」
「ええ、ティータイムには少し早いけれど」
 それでもというのです。
「ここで休憩にしてね」
「そしてーーですね」
「そう、色々な果物を木から採って」
 そしてというのです。
「食べるわ」
「わかりーーました」
「まあ貴方は見ているだけよね」
「美味しそうにーー召し上がっているーーお姿を見て」
 チクタクはアンに答えました。
「楽しませてもらいます」
「見て栄養にするのね」
「心のーーそれに」
 まさにというのです。
「そうさせてーーもらいーーます」
「それじゃあね」
「確かにーー色々なーー種類の果物がーーありますね」
 チクタクは森の中を見回して言いました、奇麗な黄色の葉の森はウィンキーの中にあることを示しています、そして果物達も黄色いです。
 その黄色い様々な種類の果物達を見てです、チクタクは言います。
「林檎もーーバナナもーーあります」
「そうなのよ、ここは」
「ではーー今から」
「林檎は絶対で」
 アンにとってはです、何しろ大好物なので。
「他にはね」
「何をーー採られますーーか」
「無花果、葡萄に柿ね」
「柿もーーですか」
「これがまた美味しいのよ」 
 柿もというのです。
「かなりね」
「そうーーですか」
「我が国でも栽培してるわよ」 
 柿もというのです。
「美味しいから」
「そこまでーーですか」
「そうなの、それと枇杷も食べるわ」 
 こちらもとです、アンはチクタクにお話しました。
「あれも美味しいから」
「枇杷ーーもですか」
「ええ、これね」
 アンは丁度傍にあった枇杷を一つ摘み取りました、そして枇杷をもう一つ手に取ってそうして言うのでした。
「枇杷は二つ、林檎は一つね」
「一つーーですか」
「一食で一つよ」
「ティータイムーーでもーーですね」
「ええ、欠かしていないから」
 だからというのです。
「今は一個よ」
「何個もーー召し上がられるーーことは」
「あるわ」
 その場合もというのです。
「林檎を沢山食べたいって思った時はね」
「そうなのーーですか」
「そうよ、ただ普段はね」
「一個ーーですね」
「他のものも食べたいから」
「今回もーーですね」
「一個よ」
 それだけ食べているというのです。
「それじゃあ色々と食べるわ」
「どの果物もーー黄色ですね」
「ウィンキーの国にあるから」
 全てが黄色の国だからです。
「だからよ」
「黄色ーーなのですね」
「こうした森は他の国にもあるわよ」
「マンチキンやーーカドリングーーでも」
「ギリキンでもね」
 他の国にもというのです。
「あるわよ、そしてね」
「それぞれのーー国のーー色ですね」
「そうなの」
 果物の森の果物達もというのです。
「青や紫の林檎もあるわよ」
「まさにーーオズの国ーーですね」
「そうよね、色は違っていてもね」
 それでもというのです。
「美味しいわよ」
「そのことはーー同じーーですね」
「そうなの」 
 バナナにオレンジとネーブル、そして柿も採っています。
「どれもね」
「色は違えどーー味は」
「同じなのよ」
「外見でーー判断ーー出来ないことーーですね」
「そうなるわね」
「果物ーーも」
「他のものもそうでね」
 果物以外のものもというのです。
「果物もなのよね」
「それがーーオズの国ーーですね」
「そうなのよね、じゃあ頂きましょう」
 果物を全部採ってからです、アンはその場に敷きものを二つ敷いてチクタクと一緒に座りました。そしてテーブル掛けも出して。
 そこから牛乳を出して言うのでした。
「果物にはね」
「牛乳ーーですか」
「この組み合わせが最高なのよ」 
 白い牛乳を見て言います。
「何といってもね」
「だからーーですね」
「そう、牛乳を出したの」
「果物にーー牛乳ーーですか」
「どちらも美味しくなるのよ」 
 一緒にお口に入れるとです、その時は。
「だから牛乳にしたの」
「そういえばーー王女はーー牛乳も」
「好きよ」 
 実際にと答えたアンでした。
「それも大好きよ」
「左様ーーですか」
「では食べるわ」
「今ーーから」
「そうしましょう」
 こうお話してです、そしてです。
 アンは実際に果物を食べはじめました、最初に食べたのは大好物の中の大好物である林檎です。黄色いウィンキーの林檎を囓って。
 そのうえで、でした。アンは満面の笑顔で言いました。
「凄く甘くて酸っぱくて」
「美味しいですか」
「歯ざわりもシャキシャキしてて」
 食べつつにこにことしています。
「最高よ」
「それはーーいいことーーですね」
「本当にね、それじゃあ」
「どんどんーーですね」
「果物を食べていくわ」
「柿ーーも」
「それもね」
 勿論という返事でした。
「食べるわ」
「柿もーー美味しいーーのですね」
「凄くね」
「甘いのーーですか」
「甘いわ、渋みもあってね」
「渋み?」
「そうした味覚もあるの」
 何も食べないので味覚を知らないチクタクへの言葉です。
「甘い、辛い、酸っぱい、苦い、塩味にね」
「渋いもですか」
「あるの、そして柿はね」
「渋みーーですか」
「あるの」
 そうだというのです。
「だから独特の味なの」
「他の果物ーーとーー違って」
「林檎は酸っぱさがあるの」
 甘さに加えてです。
「葡萄もね、林檎とはまた違った酸っぱさがあって」
「葡萄のーー酸っぱさーーですか」
「そうなの、ネーブルにもあるわ」
「ではバナナや枇杷は」
「こちらは甘さが強くて酸っぱさはないわ」
 バナナや枇杷はというのです。
「特にバナナはね」
「そちらはーーですか」
「食感も柔らかくてね」
「そしてーー柿はーー渋い」
「その味覚があるのよ」
「酸っぱいのーーではーーなく」
「そうなの、そしてこれがね」
 柿がというのです。
「これがまた美味しいのよね」
「柿をーー召し上がられる時ーーも楽しみですね」
「まさにね、どんどん食べていくわ」
「では」
 実際にです、アンは果物をどんどん食べてでした、そして牛乳も飲みます。その柿を食べてそれでこんなことも言いました。
「柿は日本のものなのよね」
「日本の果物ーーですか」
「元々はね」
「そうーーですか」
「いや、日本はいい国よ」
 柿を食べつつにこにことしています、他の果物を食べている時と同じく。
「こんな果物もあるなんてね」
「恵梨香さんのーーお国ですね」
「あっ、そうね」
 チクタクの言葉にです、アンも気付いたお顔になって頷きました。
「あの娘日本人だったらね」
「まさにーーですね」
「ええ、柿の国の娘」
「ではーーあの娘も」
「多分好きよ」
 恵梨香も柿をというのです。
「柿もね」
「左様ーーですか」
「じゃあ恵梨香も来てるから」
「お会いしたーー時は」
「ええ、柿を出すわ」 
 まさにこの果物をというのです。
「是非ね」
「それはーーいいことーーですね」
「そうよね、皆で柿も林檎も食べましょう」
 恵梨香は林檎も忘れていません、彼女にとっては第一の果物だからこそ。
「是非」
「お会いーーして」
「ドロシー王女もいるのよね」
「はいーーそうです」
「あの娘も好きなのよ、柿は」
「あの方はーー嫌いな食べものはーーないーーですね」
「そう、そしてね」
 柿もというのです。
「柿大好きだから」
「ではーーまたこの森にーー寄れば」
「そうじゃなかったらテーブル掛けに出して」
 そうしてというのです。
「食べるわ」
「ではーーその様ーーに」
「是非ね」
 こうしたことをお話してでした、二人で。
 そして果物を全て食べて牛乳も飲んでです。二人でまた出発します。
 ドロシー達も同じで今一行はメリーゴーランド山脈の上を飛行船で通っています、その飛行船の中から下のくるくる回る山脈を見てです。
 大尉はしみじみとしてです、こんなことを言いました。
「あの山は中に入ると大変だけれど」
「それでもね」
「うん、こうして上から見ると面白いですね」
 トトに応えて言います。
「とても」
「そうだよね」
「中にいると」
「僕なんかあちこち飛ばされて」
 トトは自分の小さな身体のことからお話しました。
「大変だよ」
「そうですね、トトは」
「辿り着けてもね」
「向かい側まで」
「凄く大変だよ」
「私もあちこち跳ね飛ばされて」
 大尉も自分のことから考えて言うのでした。
「果たしてどうなるか」
「わからないね」
「そうなります」
 実際にというのです。
「身体がボコボコになりますね」
「大尉さんはブリキの身体ですからね」
 ジョージも言います。
「ですから」
「そうです、身体がボコボコになります」
「傷付かないけれど」
「そうなるんですよ、私は」
「だからですね」 
 神宝も大尉にお話します。
「この山脈は苦手ですね」
「飛行船でないと」
 通れることは通れるにしてもというのです。
「嫌ですね」
「身体がボコボコになるから」 
 カルロスは山脈と大尉を交互に見ています。
「どうしても」
「この飛行船が出来て何よりです」
 大尉は心からこう言うのでした。
「本当に」
「私達もあの山脈に入ったら」
 その場合のことをです、ナターシャは考えました。
「やっぱり跳ね飛ばされ続けて大変ね」
「誰もがそうなりますよ」
 大尉はナターシャにも応えました。
「それこそ」
「うん、ちょっとね」
 それこそです、恵梨香も思いました。
「向かい側まで辿り着けるにしても」
「向かい側までに辿り着けないことはないですから」 
 大尉はこのことは保証しました。
「ご安心下さい」
「ううん、僕もあまりね」
 ジョージは休まずくるくる回っている山達を見てしみじみとして言いました。
「直接入りたくないわね」
「私は入ったことがあったわ」
 ドロシーがジョージに言ってきました。
「飛行船が通るまではね」
「いつもですか」
「そう、山脈に入ってね」
「跳ね飛ばされながらですか」
「向かい側に行ってたわ」
「痛くなかったですか?」
 ジョージはドロシーのお話を聞いて怪訝なお顔で尋ねました。
「山の中に入って」
「痛くはないの」
「そうですか」
「ただ、スカートだとね」
「あっ、跳ね飛ばされる時にですね」
「めくれたりするから」
 だからというのです。
「そのことを気をつけないといけないの」
「僕達は気にしなくていいですけれど」
 男の子のジョージ達はです、彼と神宝、カルロスはくるぶしまでの長ズボンを穿いています。ですがドロシーだけでなくナターシャと恵梨香は。
「ドロシーさん達は」
「そう、スカートでしょ」
「だからですね」
「めくれてもね」
「大丈夫な様に」
「気をつけてるの」
 そうしているというのです。
「ちゃんとね」
「そうですか」
「スカートの下にズボンを穿いてね」
「そのうえで山に入るんですか」
「そうしていたわ」
 飛行船がない時はです。
「トトをしっかり抱いてね」
「僕だけであの中に入ったことはないよ」
 見ればトトは今もドロシーに抱っこされています、そのうえでのジョージに答えます。
「ドロシーが危ないからって言ってね」
「実際にそうだしね」
「うん、だからね」
 それでというのです。
「僕はそうしていたんだ」
「成程ね」
「今はズボンじゃなくてもいいわね」
 ドロシーはあらためてです、ジョージ達に尋ねました。
「そうよね」
「はい、それは」
「今はスパッツや短パンがありますから」
「それを穿きますと」
「スカートの中は見えないです」
「安心出来ます」
「そうでしょ、それはね」
 ドロシーは特にナターシャと恵梨香の女の子二人を見ています。
「貴女達はよくわかるわね」
「そうですね、体育の授業の半ズボンはいつも穿いてます」
「スカートの時は」
 それこそと答えた二人でした。
「ズボンの時もそうしています」
「暖かいですし」
「そうよね、私もよ」
 ドロシーもというのです。
「いつもスパッツも穿いてるわ」
「スカートの下に」
「そうしてますね」
「見えなくて済むから」
 スカートがめくれてもです。
「しかもその分暖かいしね」
「女の子には欠かせないですね」
「もう必須ですよ」
 それこそと言う女の子二人でした。
「スパッツがないと」
「いざって時に困りますから」
「だからです」
「私達もいつも穿いています」
「私は体育の授業は受けないけれど」
 学校に通っていないからです、このことは。
「スパッツや半ズボンを持ってるから」
「それで穿かれてるんですね」
「そうですね」
「そうなの、ただ昔あったブルマとかはね」
 こちらはといいますと。
「持ってないわ」
「ブルマってあの」
「下着みたいな」
 二人はお顔を見合わせてお話をしました。
「あれはかなり」
「穿きたくないものがありますね」
「昔のブルマは半ズボンみたいなものだったから」
 ドロシーは彼女がアメリカにいた頃の服のことをお話しました。
「だから違うわ」
「そうですか」
「また違うんですね」
「僕から見てもね」
「そうだよね、ブルマはね」
 神宝とカルロスもお話します。
「下着みたいで」
「穿く女の子が可哀想だね」
「よくあんなのあったね」
 ジョージも首を傾げさせることでした。
「昔は日本じゃ普通だったみたいだけれど」
「体育の時はね」
 その日本人の恵梨香も首を傾げさせています。
「そうだったのよ」
「そうなんだね」
「半ズボンかスパッツがいいわ」
 恵梨香にしてもです、勿論ナターシャもです。
「何といってもね」
「そういうのを穿いてると」
 またドロシーが言いました。
「スカートでも大丈夫よ」
「メリーゴーランド山脈みたいな場所でも」
「ええ、もっとも私はスパッツとかよりも」
 ドロシーはジョージににこりと笑ってお話しました。
「スカートの下にストッキングを穿いてるから」
「あっ、そうですね」
「私達の着ている服はね」
 外出の時のそれはです。
「ジョージ達がずっと生まれる前のアメリカの服だから」
「スカートの下にストッキングですね」
「スパッツやj半ズボンよりもね」
「そちらですね」
「殆どスパッツなのよ」
 ドロシー達が普段穿いているストッキングはです、見れば今も穿いています。白くて奇麗なものです。
「これもね」
「だからですね」
「大抵は大丈夫よ」
「そうですか」
「ストッキングを穿かない時もあって」
「そうした時にですか」
「半ズボンやストッキングを穿いてるわ」
 そうしているというのです。
「私もオズマもね」
「ベッツイさんとトロットさんもですね」
「そうよ」
 ドロシーの友人である二人もというのです。
「二人共ね」
「そうなのね」
「そう、そしてね」
 そのうえでというのです。
「冒険もしてるの」
「そういうことですね、わかりました」
 ジョージはドロシーに対して頷きました。
「その辺り昔と今で服が違いますから」
「それが出ているわね」
「はい」
 実にと答えたジョージでした。
「よく」
「そういうことでね、じゃあこの山脈を越えて」 
 今ドロシー達が乗っている飛行船にです。
「そしてね」
「さらにですね」
「ウーガブーの国に行くわよ」
「わかりました」
「さて、どうもアン王女はね」
 この人のこともお話したドロシーでした。
「さっきオズマからメールを受けたけれど」
「アン王女のことですね」
「ええ、チクタクとね」
 ドロシーは今度は大尉にお話しました。
「二人で果物の森にいたそうよ」
「あそこですか」
「ウィンキーの北西のね」
「あそこは評判がいいですね」
 そうした場所だとです、大尉はドロシーに答えました。
「いつも」
「美味しいってね」
「はい、よく言われています」
「私も何度か行ったことがあるけれど」
「美味しい果物が一杯あるんですね」
「凄くいい場所よ」
 ドロシーはにこにことしてその森のことをお話します。
「だから行きたいって思っていたけれど」
「アン王女はその森にですね」
「いるわ」
 実際にというのです。
「今ね」
「そうですか」
「ここからだと」
 まさにとです、ドロシーは考えるお顔になって言うのでした。
「本当に一直線に行けば」
「うん、アン王女も一直線にこっちに向かえばね」
「途中で会うわね」
「そうだね」
 トトがドロシーの手の中から応えました。
「そうなるね」
「ええ、それならいいわ」
「このままだね」
「行きましょう」
 一直線にというのです。
「進路そのままよ」
「すぐに王女と会えそうだね」
「ええ、ただ自分で私達に会いに行くことは」
 アンのこのことについてです、ドロシーはくすりと笑って言いました。
「アン王女らしいわね」
「そうだよね」
「あの人は待つことが嫌いだから」
「待つよりもね」
「自分が動く」
「そうした人だから」
 それ故にというのです。
「今回もね」
「自分で僕達の方に行くんだね」
「そしてそれがね」
「いいんだよね」
「いつも自分でお国を見ているから」
 その足で隅から隅まで見て回ってです。
「ウーガブーの国はよく治まっているのよ」
「そうなんだよね」
「それじゃあね」
「うん、行こうね」
「アン王女と会いに」
 まずはそれからでした、一行は飛行船に乗ってそのうえで、でした。メリーゴーランド山脈を越えてなのでした。
 そのうえで飛行船を降りて再び黄色い煉瓦の道に入るとです、大尉が皆に言いました。
「普通に行くと何もない道ですが」
「普通は、よね」
「はい、しかし世の中は何が起こるかわかりません」
 こうドロシーにも言います。
「ですから」
「用心してよね」
「進みましょう、いざとなれば」
 大尉は自分の腰にあるサーベルを見ました、大尉の自慢のそれを。
「これがありますので」
「サーベルですね」
「はい」
 まさにとです、大尉はジョージにも答えました。
「これで難を逃れます」
「大尉のサーベルは敵を倒すものじゃないんですね」
「人を守る為のものです」
 そうだとです、大尉は再びジョージに答えました。
「その為のものです」
「そうですか」
「はい、ですから」
 それでというのです。
「戦いましても」
「その戦いは、ですね」
「人を守る為のものです」
「木樵さんと同じですね」
 神宝は大尉の主であり親友でもあるこの人のことを思い出しました、ドロシーやかかしと並ぶオズの国きっての名士でもあるこの人のことを。
「あの人の斧と」
「武器は何の為にあるのか」
 カルロスも大尉のお話を聞いて言いました。
「自分、そしてお友達を守るものですか」
「だからいざという時以外は手にしない」
 ナターシャは今は収められているサーベルを見ています。
「そういうことですね」
「武器はみだりに手にしない」 
 恵梨香も言います。
「そういうことですね」
「そうです、武器は鍛錬では振りますが普段はです」
 大尉は子供達にも穏やかで丁寧な口調でお話します。
「手にしないものです」
「そういうものですね」
「はい、守る為に」
 自分自身、そしておお友達をです。
「その為のものですから」
「今もですね」
「抜きません」
 手にもしていません、大尉は今は。
「このことは絶対に」
「それでは」
「はい、参りましょう」 
 何かあった時の心構えをしたうえでとです、大尉は皆に行ってそのうえで先頭に立って前に進んでいきます。
 黄色い煉瓦の道を進んでいくとです、ふとでした。
 目の前に巨大な生きものがいました、それはキリンの身体にカバの大きな頭があるとても大きな生きものでした。模様も麒麟のものです。
 その生きものを見てです、ジョージは思わず身構えてしまいました。
「あれは」
「カバキリンだよ」
「そうだよね」
 ドロシーの横にいるトトに応えました。
「あの生きものは」
「そうだよ」
「凄く凶暴なんじゃ」
「いや、それは昔のお話でね」
「今はなんだ」
「大人しいから」
 だからというのです。
「安心してね」
「だといいけれど」
「あれは姿が見えない場所でのことだしね」
 そのカバキリンが凶暴だった場所はです。
「今はね」
「特になんだ」
「怖くないから」
「大人しいんだ」
「そう、安心してね」
「だといいけれど」
「はい、トトの言う通りです」
 大尉もジョージ達に微笑んで保証しました。
「ですから」
「安心してですね」
「挨拶をすればいいです」
「ならいいですが」
「けれどね」
 首を傾げさせてです、ここでこんなことを言ったドロシーでした。
「どうしてここにカバキリンがいるのかしら」
「そういえばここから少し離れた平原にいるよね」
 トトもドロシーに応えます。
「この辺りのカバキリンは」
「そうよね」
「しかも煉瓦の道を進んできてるけれど」
「カバキリンはいつも平原で草を食べてのどかでいるわね」
 今のカバキリンはです。
「それがどうしてかしら」
「こうして煉瓦の道を進んできてるのは」
「それがわからないわ」
「あれっ、誰か背中にいますよ」
「そういえば」
 神宝とカルロスは自分達に前から来るカバキリンを見て気付きました。
「二人いますよ」
「乗ってますね」
「ええと、一人はチクタク?」
「そうね」
 ナターシャと恵梨香も気付きました。
「そしてもう一人は」
「アン王女みたいね」
「あら、ここで会うなんて」
 ドロシーも二人の姿を確認して言いました。
「思わなかったわ」
「そうだね、けれどね」
「会えてよかったわ」
「そうだね」
「あっ、ドロシー王女達よ」
 そのカバキリンの背中からです、アンも言いました。アンが前に乗っていてチクタクが後ろに乗っています。
「ここで会えたわね」
「よかったーーですね」
 チクタクも応えます。
「お会いーー出来て」
「ええ、本当にね」
 実際にと応えたアンでした。
「よかったわ」
「そうでーーすね」
「そしてね」
 ここでまた言うのアンでした。
「会ったからにはよ」
「合流ーーですね」
「そうするわ」
「よかったね」
 カバキリンもその大きな口でアン達に応えました。
「ここで会えて」
「ええ、ここまで乗せてくれて有り難う」
「お礼はいいよ」
 笑顔で返したカバキリンでした。
「別にね」
「そうなの」
「だって君達が気になってね」
「話しかけてくれてね」
「事情を聞いてね」
「それなら少しでも早く行こうって乗せてくれて」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「ここまで来ただけだから」
「だからお礼はいいのね」
「別にね、じゃあね」
「ええ、ここで降りるから」
「またね」
 軽くこう挨拶を交えさせてでした、そのうえで。
 アンとチクタクは立ち止まったカバキリンの背中から降りました、そうしてカバキリンに二人で手を振って別れの挨拶をしてでした。
 カバキリンが道を引き返して帰るのを見届けてからです、ドロシー達に向きなおってそのうえで今度は彼女達に挨拶をしました。
「久し振りね」
「そうね」
 まずはこの挨拶からでした。
「貴女達を迎えに来たわ」
「私達もね」
「ウーガブーの国になのね」
「向かっているの」
「いや、会えてよかったわ」
 アンは笑顔でドロシーに言います。
「本当にね」
「私もよ、それじゃあ」
「一緒にウーガブーの国に向かいましょう」
「貴女は戻ることになるわね」
「そうね」
 アンはドロシーににこりと笑って応えました。
「またね」
「そうね、ただ」
「これからウーガブーの国で何が起こるか」
「このことはね」
 どうしてもなのでした。
「わからないのよ」
「そうよね」
「いいことか悪いことか」
「それはね」
「これから起こることは」
「これからわかるから」
「何が起こっても対する」
 本当にとです、二人でお話します。二人は今向かい合ってお話をしていますが背はアンの方が年上である為高いです。
「そういうことでね」
「ウーガブーの国に行きましょう」
「今から」
「オズマ姫からーー連絡がーーありました」
 ここでチクタクが二人に言います。
「風水はーーです」
「オズの国のね」
「はいーーその乱れはーーです」
 ドロシーに答えます。
「ないーーとのことです」
「風水の乱れがないとなると」
 ドロシーはこのことから考えて言いました。
「災害はね」
「ないーーですね」
「風水が乱れるとね」
 オズの国でもこう言われています。
「災害が起こるからね」
「そうーーですね」
「四霊獣はそれぞれの場所にいるのね」
「穏やかにーーとのことです」
「じゃあね」
「災害ではーーですね」
「なさそうね」
 こう考えるのでした。
「そちらの悪いことではないわね」
「じゃあ何かしら」
 悪いことならです、アンも腕を組んで考えます。皆もう歩きはじめています。
「虫かしら」
「農作物に付く」
「正直ね」
 虫についてです、アンはこうドロシーに言いました。
「虫は厄介よ」
「そうよね、農業にとって」
「オズの国は気候が安定してて土地もよくて」
「農業をしやすいけれど」
「虫はいるから」
 こちらはどうしてもです。
「その虫をどうするかがね」
「大事よね」
「本当にね」
「それじゃあ一体」
「何かしら」
 また言うのでした。
「起こることは」
「起こるにしても」
「災害じゃないにしても」
「何が起こるのかしら」
 二人でお話します、そしてここでジョージがアンに尋ねました。
「あの、いいですか?」
「何かしら」
「オズの国にも農薬はありますよね」
「ええ、あるわ」
「それを使うことは」
「使ってもオズの国は誰も死なないでしょ」
「はい」
 このことが大事です、例え食べられても次の日の朝には身体が元に戻っています。だから家畜もいるのです。
「そうでしたね」
「だから虫もね」
「農薬を使ってもですか」
「退けられるけれど」
「それだけですか」
「農薬の効果が切れた時に来るのよ」
「また農薬を撒くにしても」
 それでもというのです。
「その間にね」
「また撒くまでの間に」
「農作物を食べに来るのよ」
「大変ですね」
「ええ、ただいい農薬よ」
 オズの国の農薬、それはです。
「ちゃんと効くし虫を退けるだけでね」
「農作物や人への影響はですね」
「ないから、除草剤もよ」
 そちらもというのです。
「悪影響はないわ」
「それはいいですね」
「ええ、けれど虫が一杯出るのなら」
 それならとです、また言うアンでした。
「困るわね」
「虫は風水とは関係があってもね」 
 ドロシーも言います。
「風水が乱れてなくても出たりするから」
「そうなのよ」
「だからよね」
「そう、普通にね」
 どうしてもというのです。
「対処していかないと駄目なのよ」
「そうよね」
「虫でないことを祈るわ」
 心からです、アンは思うのでした。
「災害でないみたいだからこのことはいいけれど」
「それでもですね」
「虫だと厄介ね」
「虫ーーでしたら」
 チクタクが言うにはです。
「農薬以外にーー対処の仕方は」
「そうね、考えてみるわ」
 アンはこうチクタクに答えました。
「これからね」
「そうーーですか」
「ええ、虫じゃないかも知れないし」
 その可能性も考えるアンでした。
「色々な場合を考えていかないとね」
「対応ーーには」
「悪い場合についてのね」
「一応ね」
 ドロシーも言います。
「災害の場合も考えていく?」
「そうね、それがいいわね」
「そうよね」
「ないといってもね」
「今のところでね」
「若し風水が急に乱れたら」
 その場合はというのです。
「災害が起こるから」
「だからね」
 それだからこそというのです。
「災害への対応もね」
「していきましょう」
「そういうことでね」
 二人でこうお話をするのでした。
 そしてです、アンはまた言いました。
「さて、それじゃあ今から戻るけれど」
「道中何かあった?」
「それはね」 
 アンはドロシーにこれまでの道中のことをお話しました、村のことや山道のこともですがドロシーはそうしたことについてもこう答えました。
「そんなところね」
「特によね」
「ええ、別にね」
「大変じゃないわね」
「オズの国の冒険では」 
 まさにというのです。
「普通にね」
「そうね」
「じゃあ普通通りね」
「戻りましょう、ウーガブーまで」
 アンはドロシーに明るくいいました、そしてこんなことも言いました。
「ドロシーと一緒になるのも久し振りだしね」
「うふふ、そうね」
「それにね」 
 アンはここでジョージ達五人も見て言いました。
「貴方達もいるしね」
「僕達もですか」
「ええ、一緒に冒険するのははじめてよね」
「はい」
 そうだとです、ジョージはアンに答えました。
「アン王女とこうしてじっくりお話するのも」
「そうよね」
「これからどうなるかわからないですけれど」
「楽しんでいきましょう」
「宜しくお願いします」
「私オズの国以外の国のことはよく知らないの」
 ここでこうお話したアンでした。
「外の世界のことはね」
「そうなんですか」
「ええ、そうなの」
 実際にというのです。
「アメリカのこともね」
「そういえばアン王女のお国は」
 ここで神宝がウーガブーの国ついて気付きました。
「オズの国の山の中にありましたね」
「かつてはウィンキーの端の端にあったわ」
 アンは神宝にも答えました。
「実際に山の中でね」
「だからですね」 
 カルロスはアンのその話を聞いて頷きました。
「外の世界のことも」
「最初はオズの国のこともね」 
 この国のこと自体もだったのです。
「よく知らなかったのよ」
「あっ、そういえば」
 ナターシャはアンが最初に外に出た時のお話を思い出しました、チクタクが中心となってノーム王と対決した時です。
「あの時王女さんオズの国を征服しようとしていましたね」
「そうだったわね」
 アンはナターシャの言葉ににこりと笑って返しました。
「今では懐かしい思い出よ」
「その時からオズの他の場所とも交流が出来たんですね」
 最後に恵梨香が言います。
「そうだったんですね」
「そうよ、懐かしいわね」
 とてもとです、アンは懐かしいお顔にもなっています。
「あの時からはじまったのよね」
「私達とのお付き合いがね」
 ドロシーがにこりと笑って応えました。
「そうだったわね」
「ええ、今思うとね」
「本当に懐かしいわね」
「そうした思い出よ」
 実際にというのです、こうアンに答えるのでした。 
 そしてそうしたお話しているとです、チクタクはトトに言いました。
「それでーートト」
「どうしたの?」
「はいーーこれからーーですが」
 トトにお話するのはこのことからです。
「カバキリンのーー平原にーー入ります」
「そうなるんだね」
「彼等にーー挨拶ーーしましょう」
「うん、是非ね」
「いい人達ーーですから」 
 だからというのです、こうお話してです。
 一行はまずはカバキリン達のいる平原に向かうのでした、合流してウーガブーの国に向かうその途中で。



ようやくアンたちと合流できたか。
美姫 「特に問題もなくて良かったわね」
だな。ウーガブーの国へと向かいながら、何が起こるか色々と考えて。
美姫 「でも、本当に何が起こるのかしらね」
何が起こるのか、次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」
ではでは。



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