『オズのビリーナ』




                 第八幕  ドワーフ族と闇エルフ族

 朝早く起きてです、皆はまずは朝御飯を食べました。この日の朝はオムレツとサラダ、それにトーストでした。
 そのトーストを食べつつです、ナターシャは言いました。
「今日はいよいよ」
「ええ、そうよ」
 ビリーナがナターシャに答えました、自分の御飯の麦の粒を食べながら。
「ドワーフ族と闇エルフ族のね」
「二つの種族のところに行って」
「それでよ」
「どうしていがみ合ってるのか」
「そしてその原因も確かめてね」
「それでよね」
「いがみ合いを解決するわよ」
 こうナターシャにお話するのでした。
「いいわね」
「ええ、その為にも行きましょう」
「先にね」
「もうすぐよね」
「ええ、もうすぐよ」
 それこそというのです。
「その現場に行くわ」
「放っておいてもいいけれどね」
 ガラスの猫はキャットフードを食べているエリカの横でこんなことを言いました、見れば自分のガラスの身体の手入れに余念がありません。
「正直なところ」
「どうしてなの?」
「だっていつもいがみ合ってるからよ」
 だからとです、ガラスの猫はナターシャに答えました。
「喧嘩まではならないから」
「少し仲が悪い感じだから」
「そう、それ位ならね」 
 それこそというのです。
「何でもないわよ」
「それでなの」
「しかも通り過ぎても種を採りに行けるみたいだし」
「そのこともあって」
「そう、無視してもいいけれどね」
「そうよね、私達にあまり関係ないし」
 エリカも言います。
「じゃあいいじゃない」
「そう思うけれどね、私達は」
「そうそう」
「猫らしい考えね」
 ビリーナは二匹の言葉を聞いてこう彼女達に言いました。
「あんた達はそれでいいけれどね」
「オズの国のことを考えたら」
「そうもいかないのね」
「そうよ」
 まさにというのです。
「問題は解決しないといけないのよ」
「それが政治ね」
「関係ないでは済まされないのね」
「そういうことよ」
 こう言うのでした。
「じゃあいいわね」
「ええ、わかったわ」
「それじゃあ私達も何かするわね」
「出来ることがあればね」
「そうさせてもらうわね」
「私もオズの国の名士になってるから」
 鶏の国の女王としてです。
「そうなってるからね」
「だからなのね」
「頑張るのね」
「騒動があったらね」
 それを見たらというのです。
「解決しないとね」
「ビリーナは最初からそうだったね」 
 キャプテンはオムレツを二枚のトーストに挟んでそのうえで食べています、そうしながらビリーナに言います。
「ドロシーと会ってから」
「そうよ、お節介焼きとも言われるけれど」
 それでもというのです。
「何かあったらね」
「動かずにはいられないよ」
「そうした性分なのよ」
 こう自分のことを言うのでした。
「だから今回もね」
「その騒動を解決して」
「それから種を採りに行くわよ」
「ノームの人達が仲裁しようとしてるらしいから」
 トロットは牛乳を飲みつつこのことについて言及しました。
「だからね」
「ええ、ノームの人達とも協力して」
「やっていきましょう」
「そうしていきましょう」
「是非ね」
「ただ、私はね」 
 ビリーナはここでまた自分のことをお話しました、今度お話することはどういったものかといいますと。
「あの人達には怖がられてるから」
「卵のことでね」
「このことは注意しないとね」
「あの人達は卵は絶対に駄目だから」
 それこそ見るだけで、です。
「私を見るだけでね」
「もうガタガタ震える位だから」
「そこは本当に注意しないと」
「協力出来ないわね」
「追い払うにはいいけれど」
 その場合はです。
「けれどね」
「協力するとなると」
「逆になるから」
「そうよね」
「ノーム族のことは知ってるけれど」
 ナターシャがここで言いました。
「貴女を怖がる理由がね」
「ええ、そうでしょ」
「私達もね、ただそれは」
「それは?」
「ドワーフやエルフの人達もなの?」
 この人達はどうかというのです。
「そうなの?」
「いえ、別にね」
「それはないの」
「ええ、ないわ」
 そうしたことはというのです。
「あの人達は別に卵には何もないから」
「怖がることもないの」
「むしろ食べる位だから」
「あら、そうなの」
「別に何もないわ」
「だといいけれど」
「あくまでノーム族の人達だけよ」
 卵、ひいては鳥を怖がるのはです。
「そこは安心してね」
「それじゃあね」
「あともうノームの人達も卵は怖がっても」
 このことは事実にしてもというのです。
「あの人達も卵に触って死んだりしないわ」
「そこは変わったの」
「そうよ」
「オズの国の人達だから」
「完全にそうなったからね」
 だからというのです。
「変わったのよ」
「それは何よりね」
「しかも悪い人達でもなくなったら」
 過去色々と騒動を起こしてきたそのノーム族であっても。
「私もここに入る時は警戒していたけれど」
「それでもなのね」
「そう、基本悪い人じゃなくなったから」
「このことは安心していいのね」
「ええ、いいわ」
 本当にというのです。
「警戒していたのもちょっと邪魔をすること位だったから」
「そこまで強くなかったの」
「そうだったの」
 実際にというのです。
「そこは断っておくわね」
「それじゃあね」
「そういうことでね、まあこうして卵料理を食べていたら」 
 ビリーナはオムレツを食べている皆をここで見ました。
「ノームの人達は普通に近寄らないわ」
「最初からよね」
「ええ、とにかく卵は駄目だから」
 このことはノームの人達にとって絶対のことです。
「死ななくなってもね」
「苦手なことは苦手なのね」
「あの人達には卵料理は出せないわよ」
「そのことはわかるわ」
「そうでしょ、あの人達だけだけれど」
「それでだけれど」
 恵梨香がここでビリーナに尋ねました。
「ドワーフの人達と闇エルフの人達は」
「どういった人達か?」
「興味があるけれど」
「そのことね」
「ええ、地下に住んでるってことはわかったけれど」
「具体的にはどんな人達か」
「ゲームでは知ってるけれど」
 それでもというのです。
「オズの国のあの人達はどういった人達かしら」
「そこが気になるわね」
 ナターシャも言います。
「どうしても」
「それがそれぞれ風俗習慣が違うのよ」
「そんなに?」
「外見も何もかもがね」 
 ドワーフ族と闇エルフ族とでです、ビリーナは二人の女の子にお話しました。
「違うのよ」
「そうなの」
「そう、生活なんてね」
「全然違うの」
「どちらも宝石とか金や銀は好きだけれど」
 それでもというのです。
「飾り方は違うに」
「同じものを好きでも」
「そうなっているのね」
「具体的に言うと長くなるわ」
 ビリーナはこう断りました。
「だからそれぞれの場所に行った方がわかりやすいから」
「その時になのね」
「お話してくれるのね」
「そうするわね」
 こう二人に言いました、そして三人の男の子にも言いました。
「あんた達もそれでいいわね」
「うん、それじゃあね」
「百聞は一見に然ずだしね」
「そうさせてもらうね」
「そういうことでね、とにかく行ってからよ」
 それからというのです。
「そういうことでね」
「まあどうせ下らない理由でいがみ合ってるのよ」
 エリカは後ろ足で首の後ろをかきつつ言いました、丁度御飯を食べ終わったところです。
「いつものことだから」
「何でもなのよね」
 トロットもぼやきます。
「ドワーフ族とエルフ族はね」
「そうよね、何でもないことでね」
「いがみ合うのよ」
「そうよね」
「ノームの人達も迷惑ね」
「全くよ、間に入って」
「果たしてどんな理由でどういった揉め方か」
 このことはとトロットとしても気になります、どうしても。
「気になるわ」
「下らない理由にしても」
「私達から見ればそうだけれど」
「あの人達にとっては別ね」
「いがみ合うだけの理由がある」
「あの人達の間ではね」
 周りから見ればどうでもいいことだけれど当事者の人達にとってはいがみ合うだけのものがあるというのです。
「どうしてもね」
「訳がわからないけれど」
「まあとにかく」
 キャプテンも食べ終わって言います。
「皆が食べ終わったら行こうね」
「そうしましょう」
 トロットもキャプテンに頷きます、そしてでした。
 皆食べ終わって出発です、そこでビリーナはナターシャ達五人に言いました。
「ドワーフの性格や外見は知ってるわよね」
「小柄で筋肉質で」 
「それでお髭を生やしてて」
「力が強くて鍛冶が得意」
「職人気質ですよね」
「気難しいところもあるけれど温厚で」
「そんな感じよ」
 その通りとです、五人に答えます。
「あの人達はね」
「やっぱり悪い人達じゃないですね」
「僕達にとっても」
「むしろ親しみやすい」
「そうした人達ですね」
「どちらかといいますと」
「そうよ」
 実際にとです、ビリーナも答えます。
「エルフの人達より強いこだわりがないの」
「むしろおおらかですね」
「ドワーフの人達の方が」
「そうですよね」
「エルフの人達も温和ですけれど自然のことには厳しくて」
「そこにこだわりが強いですから」
「そこが違うのよ」
 実際にと答えるビリーナでした。
「あの人達は、まあ親しみやすい人達よ」
「けれどエルフとはね」
 またお話するトロットでした。
「どうにもなのよ」
「そこが、ですね」
「私も不思議だけれどね」
「相性が悪いんですね」
「そうなのよ」
 どうにもというのです。
「これがね」
「そうなのね」
「ええ、じゃあまずはそこに行きましょう」
 ビリーナは皆に言ってでした、そうして先に先にと案内します。そして出発して一時間程歩いているとその前で、です。 
 身長は一メートル半位でがっしりとした身体つきの濃いお髭を生やした男の人達と漆黒の肌に緑の切れ長の眼を持った銀髪の長身の人達が睨み合っていました。二人共青いマンチキンの服を着てはいますが。
 どっちも一歩も引かない感じで言い合っていました。
「だからそれは違うんだよ」
「いや、合ってるよ」
「何で君達はそれをそうするかな」
「それは君達だよ」
「そうしたやり方じゃ駄目だよ」
「いや、合ってるよ」
 何か言い合っています、その彼等を見てです。
 ビリーナはナターシャ達にです、こう言いました。
「お髭を生やしてるのがドワーフよ」
「そうよね」 
 ナターシャが応えました。
「お話した通りの姿ね」
「それであの黒い人達が闇エルフよ」
「ええ、背もすらりとしてて」
「わかるでしょ」
「お話したそのままだしね」
「それ見たらね」 
 それこそというのです。
「わかったわ」
「ええ、それで見た通りね」
「何か言い合ってるわね」
「ほら、ノームの人達も来たわよ」
 ドワーフの人達より二十センチ位小柄でやっぱり濃いお髭を生やしています、この人達はノームの服を着ていてマンチキンの服ではありません。
 その人達が来てです、両方に言いました。
「やれやれ、今日も朝からか」
「君達も変わらないね」
「今度は何で言い合ってるんだい?」
「下らない理由かい?」
「聞いてくれるかい?ノームさん達」
 ドワーフの一人がノーム達に言いました。
「彼等が変なことを言うんだ」
「変なこと?」
「っていうと?」
「君達はジャガイモを主にどうして食べるかな」
 こうノームの人達に聞きます。
「一体」
「ジャガイモ?」
「ジャガイモをどうして食べるのか?」
「今朝はそのことを言い合ってたんだ」
「そうだったんだ」
「潰して食べるね」
 こうノームの人達に確認を取りました。
「そうだよね」
「いや、違うだろ?」
 今度は闇エルフの一人がノームの人達に言いました。
「ジャガイモは切って食べるよね」
「ああ、調理した後ね」
「切って食べる」
「そうだっていうんだね」
「どっちかって」
「そうだよ、彼等は調理したジャガイモを潰して食べるっていうんだ」
 その闇エルフはドワーフ達を見つつノーム達にお話しました。
「そして僕達の食べ方は違うって言うんだ」
「切るのは間違ってる?」
「そう言ってなんだ」
「だから言い合ってたんだ」
「そうだったんだ」
「そうだよ、ジャガイモは切って食べるものじゃないか」
 闇エルフは強い声で断言しました。
「そもそも潰して食べるなんて」
「いや、ジャガイモは潰すんだよ」
「潰して食べるものだよ」
「それが一番美味しいんだ」
「何で切るんだよ」
 ドワーフの人達は一斉に反論しました。
「朝の散歩で出会ったらこうだよ」
「何でも彼等朝にジャガイモを食べていたらしくてね」
「切って食べたとか言ってたから言い返したら」
「この有様だよ」
「それは違うんだよ」 
 闇エルフ側も反論します。
「フォークとナイフで切って食べるものじゃないか」
「きちんとスライスしてね」
「それで行儀よく食べる」
「これがジャガイモの食べ方じゃないか」
「それが邪道ってね」
「何もわかってないさ」
「そもそもドワーフの料理はね」
 ノームの人達を置いて言い合います。
「潰したりとか変な食べ方ばかりで」
「どうにかしてるよ」
「料理だけじゃないしね」
「他にも色々違うよ」
「邪道ばかりで」
「何もかもが間違ってるよ」
「味付けも濃いし」
 こう言いますが。
 ドワーフの人達も彼等は彼等で言います。
「エルフの味付けなんて駄目だよ」
「薄くてね」
「もう何、っていう」
「そうそう、香辛料をもっと使わないと」
「素材を活かした味とかね」
「自然を活かした生活とかないよ」
 それこそというのです。ですが。
 お互いの話を聞いたノームの人達はうんざりとしてです、双方に言いました。
「うん、わかったからね」
「どっちもいいと思うよ」
「間違ってないから」
「それでいいよね」
 こう言いつつ双方の中に入ってでした、そのうえで。
 ドワーフの人達も闇エルフの人達も元の道に引き返ってもらいました、そのうえで彼等だけになったところでやれやれとなって言うのでした。
「全く、厄介だよ」
「何で何から何まで言い合うのかな」
「地下でも仲悪いんだね、彼等」
「ドワーフとエルフは」
「闇エルフもエルフだね」
「エルフの生活してて」
「ドワーフの人達も相変わらずだね」
 本当にというのです。
「困ったことだよ」
「お互いが正しいっていうから」
「何とかならないかな」
「今後ね」
 こうお話する彼等でした、ですが。
 その彼等を見てです、ビリーナは皆に言いました。
「予想通りね」
「仲よくしてないわね」
 トロットも言います。
「相変わらず」
「ドワーフとエルフはね」
「そうね、森でも山でもそうで」
「地下でもなのね」
「それでああして揉めている」
「どうでもいい理由でね」
 まさにとお話してです、そしてでした。
 ビリーナはトロットにです、こう提案しました。
「じゃああのノームの人達に協力して」
「それでよね」
「この騒動を解決しましょう」
「それがいいわね」
「ただ、ね」
 このことを言うことも忘れないビリーナでした、その言うことはといいますと。
「私はあの人達に怖がられてるから」
「ええ、だからね」
「隠れてるわね」
「ノームの人達とお話する時は」
「じゃあそうしてね」
「わかったわ」
 こうお話してでした、そのうえで。
 トロットは皆を連れてノームの人達のところに行きました、そのうえで言うのでした。
「おはよう、今のは見ていたわ」
「あれっ、トロット王女じゃないですか」
「またどうしてここに」
「冒険で来られたんですか?」
「そうなの、虹色の菫の種を手に入れる為にね」
 まさにその為にと答えたトロットでした。
「地下に来たけれど」
「それならこの道の先にありますけれど」
「この先は迷路になってますけれど」
「ええ、これまでも迷路だったけれど」
 道は幾つも分かれて広場もあって道も大小ありました、ですがビリーナが皆をちゃんと案内してくれたのです。
「先は、なのね」
「はい、ですから気をつけて下さいね」
「道は間違えないで」
「それで進んで下さい」
「特に危険はないですし」
「そうなのね、ただ」
 トロットはノームの人達にあらためて言いました。
「ドワーフと闇エルフの人達だけれど」
「はい、御覧の通りです」
 苦い顔で答えたノームの人達でした。
「もう顔を合わせたら何です」
「どうでもいいことで言い合うんですよ、彼等」
「お互いの何処がいい悪いか、正しい間違ってるか」
「そう言い合うんです」
「毎回毎回」
「もうそればかりで」
「大変ですよ」
 こうトロットにお話するのでした。
「それで困ってるんです」
「地下では平和でいて欲しいのに」
「それでもなんです」
「ああして言い合ってばかりで」
「お互いだけなら穏やかなのに」
「顔を合わせると言い合いますから」
「そうだね、ドワーフもエルフもね」
 キャプテンも言います。
「お互いに鉢合わせしないと穏やかなんだよね」
「それが、ですよ」
「顔を合わせると言い合いますから」
「殴り合いにはならないですが」
「困ったことです」
「この辺りは私達もいますから平和になって欲しいです」
「それがなんですよ」
「それでだけれど」
 ここでトロットが切り出します、見ればビリーナは今は皆の中にいてノーム達からは見えない様にしています、
「私達でよかったら」
「協力してくれますか?」
「彼等の言い合いをなくすことに」
「正直私達では手に余っていました」
「どうにも」
「そうみたいね、ノーム王は何て言ってるの?」
 カリコ王のことを聞くのでした。
「それで」
「正直途方に暮れておられます」
「地下でもこうかと言われて」
「どうしたものかと」
「地下が騒がしくなると」
「そうだろうね、困ったことだね」
 キャプテンもここまで聞いて頷きます。
「これは」
「しかしここでトロットさん達が来られてです」
「協力を申し出てくれましたから」
「解決しますね」
「これも地下の神々の配剤ですね」
「何かはじめて見る子達もいますが」
「この子達ね」
 トロットはノーム達の視線がナターシャ達に向いていることに気付いて応えました。
「この子達は外の世界から来た子達でオズの国の名誉市民よ」
「外の世界からというとトロット王女と同じく」
「アメリカから来た人達ですか」
「左様ですか」
「いえ、アメリカから来た子もいるけれど」
 ジョージを見ての言葉です。
「他の国からも来てるよ」
「アメリカ以外の国からも」
「左様ですか」
「ではこの子達から直接聞きたいですが」
「君達はそれでいいかな」
「はい、それでは」
 ナターシャが五人を代表して応えてです。五人はそれぞれ名乗りました、そのお国のこともお話して。
 その五人の名乗りを聞いてでした、ノーム達は口々に言いました。
「中国にブラジルにロシア」
「日本からも来ているんだね」
「皆今は日本に留学してきていて」
「それで時々オズの国に来ているんだね」
「はい、そうです」
 ジョージがノーム達に笑顔で答えました。
「今みたいに」
「それで今回は地下の世界に来ています」
 神宝もノームの人達に笑顔でお話します。
「縁がありまして」
「僕達も虹色の菫の種を手に入れに来ました」
 カルロスは種のことをノームの人達に言います。
「この地下世界まで」
「途中で会ったモグラさんに事情は聞きましたけれど」
 恵梨香は騒動のことに言及しました。
「本当にそうでしたね」
「見ての通りだよ」
「毎日何度もああした騒動を起こしているんだ」
「ドワーフとエルフは本当に仲が悪くてね」
「ああなっているんだ」
「まあ何時かはって思ってたよ」
 地下の世界でもというのです。
「ドワーフとエルフがかち合うってね」
「地下でもそうなると思っていたよ」
「王様も何時かそうなるって仰ってたけれど」
「解決案は誰にも浮かばなくてね」
「それで実際に今こうなった」
「そういうことだよ」
 こう五人にもお話するのでした、そして。
 ナターシャがです、ノームの人達に言いました。
「これまではノームの人達と闇エルフの人達はかち合わなかったのね」
「闇エルフの数は少ないんだ」
「オズの国の地下でもあまりいないんだ」
「エルフ族は森エルフや山エルフが多くてね」
「海エルフは彼等よりずっと少なくて」
「闇エルフはもっと少ないんだ」
 そうだというのです。
「地下で数ヶ所にいるけれど」
「全員合わせても相当に少ないよ」
「ドワーフ族はわし等と同じ位いて領土も広いけれど」
「闇エルフは少なくて領土も狭いんだ」
「だから今までそれぞれの国で国境を接することもなかったんだ」
「そうだったんだ」
「けれどお互いの国の領土が広くなっていて」
 地下の中で、です。
「掘っていってね」
「それで鉢合わせしてね、遂に」
「今に至るんだよ」
「最初から鉢合わせしなかったらね」
「よかったのにね」
 ガラスの猫とエリカはお話を聞いてこう言うのでした。
「避けてね」
「合わなかったらよかったのに」
「ところがそうはいかなかったんだよ」
「だからこっちの王様も何時かはって思ってたけれど」
「実際にそうなったしね」
「なったからには今更言っても仕方ないよ」
 それこそというのです。
「起こってしまったからには起こったことについて考えないと」
「そうしないとね」
「それで、これからどうするか」
「それで王様も悩んでるんだよ」
「そうよね、じゃあまずはね」
 トロットはノームの人達の話を聞き終えてから彼等に言いました。
「カリフ王とお話したいけれど」
「はい、じゃあ案内します」
「王の宮殿まで」
「そうさせてもらいます」
「それじゃあね」
「あと」
 ここでノームの一人がこんなことを言いました。
「いますね、彼女」
「あっ、ビリーナのことね」
「雰囲気でわかります」
 はっきりと、というのです。
「それは」
「私達にとって卵とそれを産む鶏は天敵ですから」
「もうわかります」
「皆さんの中にいますね」
「そうですね」
「ええ、あえて隠れていたけれどね」
 ビリーナは声で答えました。姿は見せずに。
「いるわよ」
「その声は」
「ああ、やっぱりいるんだ」
「出来れば卵は産まないで欲しいけれど」
「いいかな」
「卵は産まないわよ」
 ビリーナもこのことを約束します。
「ちゃんとね」
「だといいけれど」
「それならね」
「王様も怖がるしね」
「わし等もだし」
「そうよね。だから卵は産まないし」
 それにと言うビリーナでした。
「姿も見せないから」
「うん、頼むよ」
「ノームは卵はどうしても駄目だから」
「宜しくね」
「こっちが大変なことになるから」
「わかってるわ、まあまずはカリフ王とお話ね」
 こうしてでした、一行はまずはノーム王とお話をすることになりました。それでノームの人達がノーム王の宮殿に案内しますが。 
 その入口に一種で来ました、それでです。
 ナターシャは入口でトロットに尋ねました。
「あの、すぐに着きましたけれど」
「これも魔法よ」
「それで、ですか」
「ノーム族は王宮まですぐに来ることが出来るの」
「そうした魔法がかけられているんですか」
「ノームの国自体にね」
「それは便利ですね」
 ナターシャはそのお話を聞いて笑顔になりました。
「グリンダさんがかけてくれたんですね」
「そうよ、ノームの人達の為にね」
「だから一瞬で来られたんですね」
「このジュエルがあるとだよ」
 ノームの一人がナターシャ達に黄金に輝く宝石を見せてきました。
「地下の何処にいてもだよ」
「王宮まで、ですね」
「行くことが出来るんだ、他の場所にもだよ」
「行くことが出来るんですか」
「地下ならね」
「凄いジュエルですね」
「ただ、普段の移動は」
 それはといいますと。
「地下の土や岩を通り抜けられる地下鉄で移動することが普通だよ」
「地下鉄ですか」
「それを使ってね」
 そのうえで、というのです。
「わし等は地下のあちこちを移動しているんだ」
「そうなんですか」
「これがまたよくてね」
 笑顔で言うノームでした。
「地下鉄を使っての移動は」
「じゃあドワーフ族や闇エルフ族の国にも」
「すぐに行けるよ」
「じゃあかなり楽ですね」
「だから行き来は安心してね」
「地上にも鉄道はあるわよ」
 ビリーナの声がまた聞こえてきました。
「ちゃんとね、けれどね」
「地面の中を通り抜けたりとか出来ないわね」
「それはないわ」
 流石にというのです。
「そうしなくても移動出来るし」
「だからなのね」
「ただお空も飛べるわ」
「あら、そうなの」
「ええ、夜空の鉄道の旅とかね」
 そうしたこともというのです。
「出来るわよ」
「銀河鉄道の夜ね」
 恵梨香はビリーナのそのお話を聞いてこのお話を思い出しました。
「あのお話みたいに」
「それは物語?」
「そう、日本のね」
 まさにそれだとです、恵梨香はビリーナに答えました。
「お空を飛ぶ列車でお友達と一緒に旅をするお話なの」
「随分奇麗そうなお話ね」
「奇麗だけれど悲しいの」
「どうして悲しいのかしら」
「最後お友達が死んじゃうから」
 だからとです、恵梨香はビリーナにお話しました。
「悲しいの」
「そうしたお話なの」
「奇麗で悲しいの」
 それが銀河鉄道の夜という作品です。
「だから一度読んだら忘れられないの」
「じゃあオズの国の鉄道もなのね」
「夜空を飛ぶのならね」
 それならというのです。
「そうしたイメージかも知れないわね」
「成程ね」
「ええ、じゃあ今から」
「カリフ王にお会いしましょう」
「どうぞ」
 ノームの人達が案内してくれてでした、そうしてです。
 一行はノーム王のお部屋に入りました。土の中に金や銀、宝石で飾られたそのお部屋の中に少し痩せた長いお髭のノームが玉座に座っていました。
 ノームの一人が王様に一礼してから述べました。
「トロット王女とその御一行が来られました」
「おや、また急に」 
 玉座に座っている王様、カリフ王はお部屋に入って来たトロット達をその報告と一緒に見て声をあげました。
「来たね」
「ええ、実はドワーフ族と闇エルフ族のお話を聞いてね
「来たんだ」
「お邪魔したの」
 トロットがカリフ王にお話します。
「こちらにね」
「ということは」
「協力させてくれるかしら」
「君達がかい」
「ええ、これはオズの王国のことだからね」
「解決しないといけない」
「そうしたものだから」
 それでというのです。
「是非共ね」
「それは悪いね」
 カリフ王はトロットの申し出を聞いて有り難そうですがそれでいて申し訳なさそうなお顔になってそのうえでトロットに言いました。
「手伝ってもらうなんて」
「だからこれはね」
「オズの国のことだからだね」
「私もオズの国の王女だから」
 それ故にというのです、再び。
「こうした時に動いてこそよ」
「オズの国の王女だっていうんだね」
「だから気にしないで」
「そこまで言うのならね」
「それにお互い知らない訳じゃないし」
 トロットはにこりと笑ってこうも言いました。
「そうでしょ、私達は」
「うん、今では我々も君達とはね」
「お友達よね」
「最初は酷いものだったけれど」
 オズの国の人達とノーム族の関係、それがです。
「変わったね」
「そうなったし」
「いいんだね」
「友達を助けることは当然のことよ」
 まさにというのです。
「だから気にしないで」
「それじゃあ一緒に頼むよ」
「ドワーフ族とエルフ族は何処でもああだし」
「それは聞いていたよ、わしも」 
 カリフ王は玉座で困ったお顔になって述べました。
「彼等の相性の悪さは、しかしね」
「実際にその目で見て」
「実感したよ」
 つくづくという言葉でした。
「そうなんだとね」
「殴り合いにならないだけましね」
「それはオズの国だからね」
 争いのない国だからです。
「彼等もそこまではしないよ」
「幸いなことにね」
「そのことは幸いにしてもだよ」
「ああしていつも言い合っていがみ合っていると」
「同じ地下に済む人間としては困るんだ」
「だから仲裁に乗り出していたのね」
「そうだよ、けれど中々上手くいっていなかったから」
 それでとです、カリフ王はトロット達を見ながら言います。
「君達の助力頼もしく思うよ」
「じゃあ頑張るわね」
「頼むよ、それと」
 ここでカリフ王はこうも言ったのでした、急に剣呑な様子になって。
「鶏の彼女もいるね」
「やっぱりわかるのね」
「気配でわかるから」
「ノームの人達にとって苦手なものだから」
「それでだよ」
 まさにというのです。
「わかるよ」
「卵を産むから」
「隠れている分にはいいけれどね」
「姿を見せてよね」
「そうそう、その声で確証が取れたよ」
 ビリーナのその声を聞いての言葉です。
「鶏は勘弁して欲しいよ」
「特に卵はよね」
「それはここでは産まないでもらいたい」
「わかってるわよ」
 ビリーナは皆の中に隠れたままカリフ王に答えました。
「そこはちゃんとしておくわ」
「くれぐれもね」
「だから安心してね」
「そうさせてもらうよ、しかし」
「しかし?」
「君の知恵と機転は今回も役に立つだろうね」
「その自信はあるわ」 
 ビリーナ自身にしてもというのです。
「任せておいてね」
「うん、君は苦手だが期待しているよ」
「期待してもらって結構よ」
「ここでこう言うのがビリーナなのよね」
 トロットはビリーナのその言葉を聞いて言いました。
「いつも自信たっぷりで」
「私は自信の塊よ」
 ビリーナ自身もこう言います。
「むしろ自信のない私なんて私じゃないでしょ」
「それはその通りね」
「わしもそう思うよ」
 トロットもカリフ王も言います。
「自信のないビリーナなんて」
「君じゃないよ」
「私が協力するからにはこの問題は解決したわ」
 まさにというのです。
「その時点でね」
「そう言う自信があるし」
「根拠もあるわよ」
「その根拠は何かな」
「私の勘と頭脳よ」
 この二つだというのです。
「これで充分でしょ」
「言うものだね」
「けれどこれでわかるでしょ」
「君も知っているしね」
 カリフ王にしてもというのです。
「苦手だけれど長い付き合いだけあって」
「そうよね」
「じゃあ君のその勘と知恵もね」
「閃きもよね」
「頼りにさせてもらうよ」
「そういうことよ、じゃあ早速」
 ビリーナは今度は皆に声をかけました。
「問題の解決に動くわよ」
「まずはどうするんだい?」
「双方のお国に行くのよ」
 こうキャプテンに答えました。
「ドワーフ族、闇エルフ族のね」
「どちらにもだね」
「行ってどうしたお国か見て」
「そしてどうしていがみ合うのかも聞いて」
「問題を解決するわよ、いいわね」
「うん、じゃあ早速行こう」
「では列車を貸すよ」
 カリフ王は快くです、一行に申し出ました。
「ドワーフ族の列車をね」
「地下なら何処でもすぐに行けるっていう」
「その列車をなの」
「そう、車掌も付けてね」
 そしてとです、カリフ王はガラスの猫とエリカに答えました。
「そうさせてもらうよ」
「あら、王様太っ腹ね」
「気前がいいわね」
「ノーム族の中ではスリムなのね」
「懐は広いのね」
「こうしたことは体型ではないのだよ」
 二匹の猫達のジョークにユーモアで返したのでした。
「心だから」
「王様もそうしてくれる」
「そうなのね」
「如何にも。ではロビン」
 カリフ王が鈴を鳴らすとです、一人の若いノームがお部屋に入ってきました。お肌の色は真っ黒で髪の毛やお髭は茶色です。見れば濃紺の車掌さんの服を着ています。
「トロット王女達の案内を頼む」
「畏まりました」
 その若いノームはカリフ王の言葉に敬礼で応えました。
「それでは」
「うむ、頼んだぞ」
「では皆さん宜しくお願いします」
 そのノーム、ロビンは一行にお顔を向けて彼等にも敬礼をしました。
「この度は」
「はい、こちらこそ」
「宜しくお願いします」
「それならです」
「今回の旅の助力をお願いします」
「是非」
「うん、君達ともね」
 ロビンはナターシャ達五人にも笑顔で応えます。
「楽しくね」
「やっていきましょう」
「では早速出発よ」
 またビリーナが言います。
「ドワーフ族の国と闇エルフ族の国に」
「わかったわ、行きましょう」
 ナターシャがそのビリーナに応えました。
「今からね」
「それじゃあね」
 ビリーナはナターシャに陽気に応えました、そしてでした。
 一行は菫の種を天に入れる前にまずはドワーフ族と闇エルフ族のいざかいを止める為に動くのでした。オズの国の住人として解決すべき問題である為に。



早速、言い合っている二人を見つけたな。
美姫 「そうね。でも、今回の言い合っている内容って」
まあ、主張はそれぞれだしな。
美姫 「ともあれ、一向はドワーフと闇エルフの国に行くみたいね」
さてさて、どうなるかな。
美姫 「次回も待っていますね〜」
待っています。



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