『オズのボタン=ブライト』




                 第十幕  お菓子の牧場

 この日は皆で宮殿で色々として遊びました、その中で。
 カルロスはボタンにです、微笑んで言いました。
「今回はボタンと一緒にいるけれど」
「それでもだね」
「うん、何度かいなくなってるけれど」
「遠くには行ってないね」
「ボタンは何処に行くかわからないのに」
 それでもというのです。
「今回は違うね」
「そうだよね」
 ボタン自身も言うのでした。
「皆の近くにいるね」
「偶然だけれど」
「偶然が続いているんだね」
「うん、そうなるんだね」
「ボタンは偶然の子よ」
 ここで言ったのはつぎはぎ娘です、今は皆で音楽を聴いています。一曲終わったところでそれでお話をしているのです。
「だからね」
「偶然だね」
「そう、あたし達の傍にいるのよ」
「そういうことなんだね」
「だから明日偶然によ」
「何処かに行くこともだね」
「あるわよ」
 こう笑って言うのでした。
「そういうものよ」
「偶然って続くんだね」
「それもまた偶然なのよ」
 オズマが微笑んでカルロスにこう言ってきました。
「続くのもね」
「そして急に終わることも」
「偶然なのよ」
「偶然はわからないんだね」
「わからないのが偶然よ」
 それこそまた言ったオズマでした。
「誰にもね」
「姫様にもですね」
「そう、わからないものなのよ」
「ううん、難しいですね」
「難しくもないの」
 オズマは微笑んだままカルロスに言いました。
「偶然は何時何があるかわからないものだから」
「わからないことがですね」
「当然なのよ」
「わからなくて当然と思うことですね」
「そういうことよ」
「そういうことですか」
「そう、じゃあいいわね」
「わかりました、じゃあボタンが明日の朝いなくなっても」
 カルロスはボタンを観つつオズマに応えました。
「当然っていうことで」
「そう思っていてね」
「はい」
「まあボタンがいなくなることはね」
 恵梨香が言います。
「いつもだから」
「そう、急にね」
 ジョージは恵梨香のその言葉に頷きました。
「朝起きたらなんてね」
「それでまた偶然僕達の前にいるんだよね」 
 神宝は微笑んでボタンを見ています。
「寝ていて」
「そうした子ということで」
 ナターシャはこう言うのでした。
「いいのね」
「ほっほっほ、ボタンは絶対にオズの国におる」
 王様はこの真実を指摘しました。
「扉の外で寝ていてもすぐに戻って来る」
「だから別にね」
 木挽の馬は王様の言葉に同意でした。
「悲しんだり驚くこともないんだよ」
「ボタンの家はオズの国全てじゃ」
 こうも言った王様でした。
「この子はお家の何処かにいるのじゃよ」
「じゃあお家の何処かにいつもいる」
 カルロスは王様のお言葉を聞いてこの考えに至りました。
「そういうことですか」
「うむ、寝ている間にお家の何処かに移る」
「そうなっているんですね」
「だからな」
「それで、ですね」
「別に驚くこともなくな」
「慌てることもなく」
 カルロスも言うのでした。
「近くにいればですね」
「それでよくてな」
「遠くにいてもですね」
「また会えるぞ」
「絶対にですね」
「そうじゃ、偶然な」
「その偶然の時を待つ」
 まさにと言ったカルロスでした。
「そういうことですね」
「その通りじゃ、では明日はな」
「明日は?」
「牧場に行くか」
「この国の牧場ですか」
「そうじゃ、そこに行って遊ぼうぞ」
「ううん、牧場といっても」 
 カルロスは王様のお話を聞いて直感的に思いました。
「オズの国ですから」
「ええ、外の世界の牧場とは違うわよ」
 ジュリアがカルロスにお話しました。
「またね」
「やっぱりそうなんですね」
「そう、オズの国の牧場だから」
「外の世界とはまた違う」
「楽しい牧場よ」
「じゃあどんな牧場か楽しみにしています」
「君達もきっと喜んでくれるよ」
 王子はカルロス達に優しく微笑んでお話しました。
「だから今日から楽しみにしておいてね」
「はい、わかりました」
「それじゃあです」
「王子が言われる通りにしています」
「今から楽しみにしています」
「そうしています」
 五人も王子に笑顔で応えます、そして。 
 つぎはぎ娘は新しいレコードをクラシックな蓄音機にセットして針を置きました。そのうえで皆に言うのでした。
「次の曲はじまるわよ」
「わかったよ、じゃあまた聞こうね」
「そうしようね」
「うん、ただレコードなんだね」
「CDじゃないわよ」
「しかも蓄音機なんて」
 本当に昔の蓄音機です、銅製でラッパみたいな拡声器まで付いています。
「古いね」
「わしはこうしたのも好きでな」
「古いものもですか」
「昔から持っておる」
 それこそこの蓄音機が現役だった頃からです。
「そうして聴いておるのじゃ」
「今もですか」
「CDも好きじゃが時としてな」
「レコードと蓄音機でも聴きたくて」
「こうして聴いておる」
「そうなんですね」
「ではよいな」 
 カルロス達にあらためて言うのでした。
「今日はこうしてな」
「レコードで、ですね」
「音楽を聴いていこうぞ」
「わかりました」
「レコードの曲もよいじゃろ」
 また笑って言った王様でした。
「こちらの音も」
「はい、もう僕達レコードは持っていませんけれど」
 CDばかりです。
「ですが」
「こちらもよいな」
「そうですね」
「最新の文明もよいがな」
「昔のものもですね」
「よいのじゃよ」
「そうなんですね」
 カルロスも納得しました。
「古いものも」
「ではこの曲も聴こうぞ」
 そのレコードの曲もというのです、その曲はリンキティンク王がいつも歌っているこの国の曲でした。歌っているのは国民の皆さんです。
 その曲を聴いてです、王様は手を叩いて明るく笑って言いました。
「ほっほっほ、愉快愉快」
「いい曲ですね」
「そのいい曲を国民が歌ってくれてな」
 そしてというのです。
「わしにも聴かせてくれる、これは最高じゃ」
「だからですか」
「わしは今とても満足しておる」
「そういうことですね」
「本当に最高じゃ」
 こうカルロスに言うのでした。
「こんないいことはないわ」
「成程、それじゃあ」
「うむ、次の曲も聴こうぞ」
「次の曲もですね」
「この国の曲でじゃ」
 そしてというのです。
「歌っておるのは国民の皆じゃ」
「王様のですね」
「最も大切なな」
「王様もそう思われているんですね」
「国民のことをか」
「オズマ姫と同じで」
「当然じゃ、よい王様は国民を最も大切にしてじゃ」
 そしてというのです。
「国民と友達であるのじゃ」
「そういうものだからですね」
「わしもじゃ、いい王様のつもりじゃからな」
「国民の皆さんを最も大切に思って」
「友達なのじゃ」
「そういうことですね」
「うむ、では次の曲も聴くぞ」
 こう言ってです、王様達は実際にです。
 次の曲も聴くのでした、この日も楽しく過ごした皆でした。次の日に牧場に行くことも楽しみにしながらです。
 そしてその次の日です、皆は牧場に向かいました。ボタンも一緒です。
 その皆が行った牧場はです、何と。
「あれっ、チョコレートにキャンデーに」
「ガムにね」
「キャラメル、アイスクリーム」
「それとクッキー」
「ビスケットもあるわ」
「そう、ここはお菓子の牧場なんだ」
 王子は驚く五人に言いました、見れば柵に囲われている広い牧場の中に銀紙やビニールで包まれたお菓子達がのどかに立っていたり寝ていたりしています。
「そうした牧場なんだ」
「お菓子をですか」
「ここで育ててね」
 そしてというのです。
「食べているんだよ」
「お菓子の牧場ですか」
「お菓子は木に実るだけじゃなくて」
「牧場にもですね」
「いてそしてですか」
「育てられるんですか」
「オズの国ではそうしたことも出来るんだ」
 牧場で育てることもというのです。
「こうしてね」
「凄いですね」
 カルロスも驚くことでした、このことは。
「こんなこともですね」
「オズの国ではあるんだよ」
「不思議ですね」
「そう、不思議なことがね」
 まさにと言う王子でした。
「起こる国だからね」
「それも普通に」
「外の世界で考えられないことが起こるんだよ」
「そのことは知っていましたけれど」
「驚いたね」
「はい、かなり」
「僕達もいつも驚いているよ」
 そのオズの国の中にいてもというのです。
「僕達から見ても不思議なことばかり起こるからね」
「だからなんですね」
「そう、驚いているよ」
 実際にというのです。
「いつもね、君達と同じだよ」
「そうですか」
「ただ、この牧場のことはもう知っていたから」
「驚かれないんですね」
「そうなんだ」
 そういうことだとです、王子はカルロス達にお話するのでした。
「だからだよ」
「わかりました、そのことも」
「僕もはじめて見たよ」
 ここでボタンも言ってきました。
「この牧場は」
「ボタンもなんだ」
「うん、お菓子の牧場なんてね」
「そうなんだね」
「面白いね」
「ほっほっほ、勿論どれだけでも食べてよいぞ」
 王様は皆にこう言ってきました。
「ここのお菓子達をな」
「そうしていいんですね」
「お菓子は食べる為にあるものじゃ」
 だからというのです。
「それでじゃ」
「僕達もですね」
「食べていいんだね」
「うむ」
 その通りという返事でした。
「思う存分食べるのじゃ、皆でね」
「わかったよ、けれど」
 ボタンは王様のお言葉に静かに頷きました、ですが。
 王様にです、こうも言ったのでした。
「アイスクリームもあるね」
「美味しそうじゃろ」
「うん、どうしてアイスが溶けないの?」
 ボタンがここで気になったのはこのことでした。
「どうしてなの?」
「ふむ、そのことか」
「うん、アイスって暖かい場所だと溶けるのに」
 オズの国は暖かいのに、というのです。
「どうして溶けないの?」
「溶けないアイスなのじゃよ」
「ここにあるアイスは」
「オズの国にはそうしたアイスもあるのじゃ」
「そうだったんだ」
「何しろここは不思議の国じゃ」 
 このことを指摘するのでした。
「だからな」
「そうしたアイスもあって」
「冷たいままで溶けないのじゃ」
「へえ、そうしたアイスなんだね」
「美味いぞ」
 その牧場の上で跳んだり跳ねたりしているアイス達もというのです。よく見ればお口はないのに草を食べています。
「このアイスもな」
「そうなんだね」
「では食うか」
「うん」 
 ボタンは王様の問いに微笑んで答えました。
「それじゃあね」
「皆で食べようぞ」
「ジュースやコーラもいるから」
 王子は彼等の説明もしました、見れば缶やペットボトルも牧場の中で動いています。
「飲みもののことも安心してね」
「うわ、飲みものもあるなんて」
「余計に凄いですね」
「そうしたものもあるなんて」
「飲みものまでなんて」
「いいですね」
「そう、じゃあね」
 それならとです、王子はまた言ってでした。
 そうしてです、皆でなのでした。そのお菓子やジュースを楽しむのでした。
 どのお菓子もジュースも美味しくて、です。カルロスは笑顔で言いました。
「ここも最高ですね」
「ほっほっほ、わしは嘘を言わんぞ」
「そのことは知っていましたけれど」
「こうした牧場もあるからな」
「だからですね」
「楽しむことじゃ」
 この牧場もと言う王様でした。
「よいな」
「お腹一杯食べてですね」
「うむ」
 その通りという返事でした。
「堪能しようぞ」
「堪能、満足ですね」
「そういう意味じゃ」
「そうですか、じゃあ」
「人が満足するのを見るのは好きじゃ」
 そちらも王様が好きなものです。
「いつもな」
「そして笑顔もですね」
「大好きじゃ」
 こちらはこうでした。
「やはり人は笑顔じゃ」
「じゃあ国民の皆も」
「無理した笑顔はよくないが」
「自然な笑顔はですか」
「とてもよい」
 王様のお言葉は変わりません。
「実にな」
「じゃあ僕達も」
「だから皆も笑顔になるのじゃ」
「わかりました、じゃあ今日も」
「どれも好きなだけ食べようぞ」
 王様がまずにこにことしています。
「お菓子をな」
「見ればどのお菓子も」
 カルロスは牧場のそこのお菓子達を見て言いました。
「アメリカのお菓子ですね」
「うん、そうだね」
 ジョージもそのお菓子を見てです、カルロスの言葉に頷きました。
「包装を見ていると」
「こうしたお菓子は今はどの国にも売ってるけれど」
 神宝は包装の文字を見て応えました。
「書かれてる文字は英語だしね」
「こうしたお店で売っているお菓子はロシアにも今はあるけれど」
 ナターシャが言うことはといいますと。
「オズの国はアメリカが反映されるからなのね」
「それでアメリカのお菓子なのね」
 恵梨香もこう言って頷くのでした。
「そういうことね」
「そうみたいだね、じゃあね」
 カルロスは四人のお友達の言葉を聞いてあらためて言いました。
「皆でね」
「このお菓子を食べて」
「そうして皆で笑顔になるんだね」
「甘くて美味しいお菓子を」
「たっぷりと食べて」
「そうじゃ、ただ悩むであろう」
 こんなことも言った王様でした。
「最初に何を食べればいいか」
「実際にここに来たらいつも悩むんだよね」
 王子は王様の横で少し笑って言いました。
「どうしても」
「最初に何を食べるべきか」
「考えてしまってね」
 こうカルロスにもお話します。
「どうしてもね」
「そういうことなんですね」
「そう、だから君達も悩むよ」
「確かに、言われてみますと」
 カルロスは王子の言葉にその通りだと頷くのでした。
「最初は何を食べましょう」
「ジュースもね」
 オズマは右手の人差し指を自分の唇に当てて言いました。
「どれも美味しそうね」
「そうですね、ですから余計に」
 ジュリアは困ったお顔になっています。
「悩みますね」
「食べないと悩まないけれどね」
「うん、皆が見て楽しむ方はね」
 つぎはぎ娘と木挽の馬はこうです。
「早く皆の笑顔が見たい」
「それだけだよ」
「何でもいいんじゃない?」
 皆があれこれ考えている時にです、ボタンはといいますと。
 普通に自分の傍を通った苺のキャンデーを取ってです、包装しているビニールをはがしてからその赤が強いピンクのキャンデーをお口の中に入れました。
 そしてです、こう言うのでした。
「目に入ったものをね」
「すぐにだね」
「食べればいいんじゃない?」
 こうカルロス達にも言うのでした。
「こうしてね」
「考えないでなんだ」
「僕考えてないよ、今」
「ただ目にあるものをなんだ」
「うん、キャンデーをお口の中に入れたんだ」
 そのキャンデーを舐めながらの言葉です。
「そうしたし、それに」
「美味しいんだね」
「うん、とてもね」
「そうだね、一杯あるしどれを食べてもいいのなら」 
 カルロスもボタンの言葉を受けて言いました。
 そしてです、傍にあったスーパーで売っている様なケーキを手に取ってです、箱から開けて食べて言うのでした。
「うん、美味しいよ」
「そうじゃ、考えることはないのじゃ」
 王様もここで気付きました。
「そこにあるものを考えずに手に取ってな」
「ボタンみたいにですね」
「すぐに食べればいい」
「どのお菓子も好きなだけ食べていいですから」
「迷うことはない」
 最初に何を食べるかと、です。
「いいと思ったものを食べればいいのじゃ」
「それじゃあ王様も」
「わしはこれじゃ」
 王様は傍にあったアイスクリームを取りました、そしてそれを食べて言うのでした。
「美味しいぞ」
「そうですね、じゃあ」
「皆傍にあるものを好きに手に取ろうぞ」 
 皆にも笑顔でいいます。
「そして食べようぞ」
「はい、じゃあ」
「私達も」
 皆も頷いてでした、そのうえで。
 牧場のお菓子達をそれぞれが好きなものを好きなだけ食べるのでした。皆そうして心から楽しい笑顔になります。
 そしてその笑顔の中で、です。オズマはこうしたことを言いました。
「今日はずっと食べるから」
「だからですね」
「ティータイムにはお茶もお菓子も出さないわ」
 カルロスに笑顔で答えました。
「お昼もね」
「牧場のお菓子を食べているからですね、皆」
「ええ、それならね」
「出す必要はないですね」
「そうよね、お昼もね」
「僕達皆お菓子を食べるから」
「今日はいいわね」
「お菓子は御飯じゃないけれど」
 それでもと言ったのはボタンでした。
「いいんだね」
「今日はね」
「お菓子を一杯食べるから」
「ボタンはピラミッドの時もそうだったわね」
「あの時はお昼食べたよ」
「けれど今日は食べる量も違うし」
 それにというのです。
「皆がそうだから」
「それじゃあ」
「今日は皆で食べるから」
 そのお菓子をというのです。
「そうしましょう」
「じゃあ僕もだね」
「お菓子をどんどん食べてね」
「うん、そうするよ」
 実際にです、ボタンは今はクッキーを食べています。そのうえでオズマの言葉に対して応えるのでした。そうして。
 お昼になる頃にはです、皆でした。
「いやあ、食べたね」
「ええ、本当にね」
「もうお腹一杯よ」
「色々食べたし」
「満足だよ」
 カルロスに恵梨香達が応えます、とても満足しているお顔で。
「お外の世界だと太るわね」
「間違いなくね」
「それに虫歯にもなって」
「それが怖いところだったね」
「そうだね、けれど今はオズの国だから」
 それでとです、カルロスも笑顔で言うのでした。
「そうした心配もないしね」
「そうじゃ、あと栄養もあるぞ」
 王様は今はオレンジジュースを飲んでいます。
「こうした果物のジュースを飲むとじゃ」
「いいんですね」
「うむ」
 その通りという返事でした。
「ビタミンが一杯あるからのう」
「甘いものだけじゃなく」
「栄養もじゃ」
 それもと言ったのでした。
「あるからのう」
「それじゃあ」
「うむ、ではな」
「ジュースもですね」
「飲むのじゃ」
「あと糖分は実はね」
 ここで言ったのはジュリアでした。
「御飯やパンと一緒よ」
「えっ、そうなんですか」
「成分が同じなのよ」
「じゃあお菓子と御飯は」
「実は同じなのよ、栄養的には」
「そうだったんですか」
「そうなの」
 こうお話するのでした。
「実はね」
「それは意外ですね」
「そうでしょ、だから御飯やパンだけを食べるとね」
「栄養的にはですか」
「そう、あまりよくないよ」
「じゃあおかずもですか」
「食べないといけないの」 
 御飯やパン以外にもというのです。
「お魚やお肉、お野菜もね」
「バランスよくですね」
「そうよ」
「だからお菓子だけ食べたらよくないんだね」
 ボタンも言います、今はチョコレートを食べています。
「何でも食べないと駄目なんだね」
「そう、ボタンにしてもね」
「そういうことなんだね」
「オズの国では太ることもないし虫歯もないし」
 こうしたこととは無縁でも、というのです。
「やっぱり栄養のバランスがいい方がいいの」
「それはどうしてなの?」
「身体がよく動けるからよ」
「それでなんだ」
「そう、出来るだけね」
「バランスよくだね」
「食べるべきなのよ」 
 ジュリアは苺ジュースを飲んでいます、そうしつつボタンにお話します。
「皆ね」
「わかったよ、それじゃあね」 
 ボタンはジュリアの言葉に頷きました、そして。
 ボタンも苺のジュースを飲みました、そのジュースはです。
「美味しいよ」
「そうよね」
「美味しくバランスよく栄養を摂る」
「それがいいのよ」
「わかったよ、そういえば僕って」
 ここでボタンが気付いたことは。
「最近よくわかってって言ってるね」
「そういえばそうね」
「僕はいつもわかんなーーいなのに」
「わかったって言ってるわね」
「確かにね」
「僕もそうしたことを言うんだね」
 目を瞬かせて言ったボタンでした。
「そうなんだね」
「自分でもそう思っていなかったの?」
「うん」
 その通りという返事でした。
「だって僕何もかもわからないから」
「わからなくてもね」
 オズマが微笑んでボタンに言います。
「わかることは出来るのよ」
「そうなんだ」
「最初は誰もわからないの」
 こうもです、オズマはボタンに言うのでした。
「けれど知ってわかる様になるの」
「僕も?」
「誰でも何でもよ」
 オズマはボタンに答えました。
「そうなっていくの」
「そうだったんだね」
「だからボタンもね」
「わかる様になっているんだね」
「そうなのよ」
「それでわかんなーーいって言っても」
「わかったとも言える様になっているのよ」
 何でもわからないと言っているボタンでもです、それこそ。
「そうなのよ」
「わかんなーーいばかりじゃないんだね」
「ボタンもね」
「わかったよ、じゃあ僕少しずつでもね」
「今みたいに」
「言える様になるわ」
 こうお話するのでした、そうしたお話もしながらです。
 皆でお菓子もジュースも食べていきます、そうしてお昼休みはです。
 皆ゆっくりと休みます、牧場の中に寝転んで。
 そのうえでお話します、王様は寝転びながら皆に言いました。
「牧場はこうしてな」
「寝転がってですね」
「のんびりするのもいいんですね」
「そうなんですね」
「それも楽しみの一つじゃ」
 飲んで食べるだけでなくというのです。
「お腹一杯食べてな」
「王様の楽しみ方の一つだよ」
 王子も言ってきます。
「ここでこうすることもね」
「気持ちよく寝てな」
 王様はまた皆に言いました。
「そしてじゃ」
「その後で」
「また遊ぶのじゃ」
「ここでは飲んで食べて」
「うむ」
 その通りという返事でした、カルロスのそれは。
「そうしようぞ」
「それなら」
「寝るか」
「はい、今から」
「起きる時が楽しみじゃ」
 王様がまず目を閉じてです、続いて他の皆もです。 
 目を閉じました、そして皆それぞれ一時間半程気持ちよく寝てでした。起きてまずは牧場の中を見回して。
 皆がいることを確かめてです、ボタンが言いました。
「皆いるね」
「君もいるしね」 
 カルロスはにこりと笑って彼に応えました。
「よかったよ」
「今回もね」
「君は移動しなかったね」
「そうだね」
 その通りとです、ボタンも応えます。
「そうなっていたね」
「ううん、本当に偶然はね」
「何時起こるかわからないよね」
「そうなんだよね」
「勿論僕にもだよ」
「これだけはどうしようもないね」
 カルロスはいささかしみじみとした口調になっていました。
「何時何が起こるか」
「偶然の前ではね」
「それをわかることはね」
「無理だよね」
「わかることとわからないことがある」
 こうも言ったカルロスでした。
「そうしたことだね」
「そうだよね」
「うん、本当に偶然だけは」
「オズの国の魔法でもね」
 つぎはぎ娘は寝ていません、起きたままで言っています。
「偶然はどうしようもないね」
「私もグリンダも魔法使いさんも」
 オズマの言葉です。
「偶然についてはね」
「どうしようもないでしょ」
「ええ、何も出来ないわ」
「コントロール出来ないのね」
「何一つとしてね」
 それこそというのです。
「それは無理よ」
「偶然は誰にも支配されないんだね」
 しみじみとした口調で言ったのは馬です。
「神様でないと」
「そうよ、偶然だけはね」
「神様でもないと」
「どうしようもないわ」
「オズマ姫でもだね」
「そうよ」
 それこそという返事でした。
「オズの国の誰でも偶然はね」
「コントロール出来ないね」
「そうなの、何も出来ないの」
「それで僕のことも」
「ええ、貴方が寝てね」
「何時何処に行くか」
「予測することは出来ないの」
 それがその偶然が為すことだからです。
「オズの国の誰にもね」
「じゃあ若し今夜寝て」
「それで貴方がどうなるのかはね」
「わからないの」
 実際にというのです。
「どうしてもね」
「それがわからないってことだね」
「そうなるわ」
「わからないことがわかったよ」
 オズマの言葉を聞いて頷いたボタンでした。
「今はね」
「それはわかったってことよ」
「わからないことをわかることも」
「わかることなの」
「そうなんだね」
「ええ、じゃあまた食べましょう」
「あれっ、かなり食べたのに」
 オズマの言葉を聞いてです、ボタンはふと気付きました。
「もうお腹空いてきてるよ」
「そういえば僕も」
「何か私も」
「私もどうも」
「僕にしても」
「僕もだね」 
 カルロスに続いてです、恵梨香とナターシャそしてジョージと神宝もでした。皆それぞれ色々なお菓子をお腹一杯食べたのにです。
 もうお腹が空きはじめています、それで言うのでした。
「あれだけ食べたのに」
「それでどうして」
「お腹が空くのかしら」
「幾ら何でもね」
「これはおかしいね」
「それは皆食べながらね」
 ジュリアがいぶかしむ五人に種明かしをします。
「お菓子を追い掛けて牧場の中を動き回っていたわね」
「あっ、そういえば」
「確かにそうですね」
「私達お菓子食べるのに夢中で」
「あちこち動き回ってもいました」
「牧場の中を」
「そう、皆かなり動いていたから」
 そのせいでというのです。
「お腹が空いてるのよ」
「それにここまで歩いてきておるな」
 王様も言います。
「そのこともあるな」
「僕達それなり以上に動いてるんですね」
「うむ、食べても動けばな」
「それで、ですね」
「お腹は減る」
「そういうことなんですね」
「だからわしにしても同じじゃ」
「お腹空いてるんですね」
「結構な」 
 実際にというのです。
「起き抜けじゃが食べたいぞ」
「それなら」
「さて、では食べよう」
 また牧場のお菓子達をというのです。
「午後もな」
「わかりました」
「では午後も迷わずに食べよう」
 王子は微笑んで皆に言いました。
「そうしようね」
「ボタンの言う通りにですね」
「そう、一杯あるからね」
 食べるべきお菓子達がです。
「食べようね」
「それじゃあ」
 カルロスも他の子達も頷いてでした、またお菓子を食べはじめました。それは他の皆も同じでなのでした。
 皆午後もお菓子を一杯食べました、そして夕方になって。
 そうしてです、王様が皆に言います。
「では宮殿に帰るか」
「うん、そしてだね」
「お風呂じゃ」
 王様の好きなそこにとです、ボタンに答えます。
「御飯も食べようぞ」
「今度はお菓子だけじゃないね」
「うむ、今夜はな」
 今晩のメニューはといいますと。
「ブラジル料理じゃ」
「僕の国ですね」
「どうもそれが食べたくなってな」
 だからというのです。
「シェフに頼んでおいた」
「では」
「うむ、皆で食べようぞ」
 そのシェフのメニューをというのです。
「ブラジル料理をな」
「わかりました、それじゃあ」
「さて、ブラジル料理といえば」
 目を輝かせて言う王様でした。
「シェラスコじゃがな」
「やっぱりそれが一番有名ですね」
「しかし今回はな」
「シェラスコ以外のメニューをですね」
「用意してくれている筈じゃ」
 シェフの人達がというのです。
「どういったメニューか楽しみにしつつな」
「そのうえで」
「帰ろうぞ」
 宮殿までというのです。
「よいな」
「ずっと王様と一緒に宮殿のお料理を食べてるけれど」
 王子がここで言うことはといいますと。
「一度も美味しくないって思ったことはないよ」
「そうなのよね」
 オズマも王子の言葉に頷きます。
「王様の宮殿もね」
「味付けは甘めにしても」
「甘くないとのう」
 その王様のお言葉です。
「わしは駄目じゃからな」
「子供に近い味覚ですよね、王様は」
「童心があるからじゃ」
 こう王子に返す王様でした。
「わしは甘いものが好きなのじゃ」
「というか王様は」
 カルロスが言うには。
「子供そのものじゃ」
「ほっほっほ、そう言うか」
「怒られました?」
「いやいや、褒め言葉じゃよ」
 お髭を弄りながらです、王様はカルロスに答えました。
「わしにとってはな」
「子供みたいって言われることは」
「言ったな、わしは童心がある」
「はい」
「子供の心のままなのじゃ」
「だからですか」
「そう言われることはな」 
 まさにというのです。
「わしにとっては褒め言葉なのじゃ」
「そうなんですね」
「だからそう言われて嬉しいぞ」
「だといいですが」
「うむ、わしは永遠の子供じゃ」
 そうだというのです。
「そして遊びを楽しんでいくのじゃ」
「子供だからですね」
「左様、遊ぶのじゃ」
「何でも遊ぶんですね」
「そうじゃ」
 カルロスに答えるのでした。
「牧場も迷路もアスレチックもな」
「ツーリングもですね」
「公園もじゃ」
「そしておはじきとかトランプもですね」
「何でも楽しむ」
 それこそというのです。
「遊んでな」
「そういうことですね」
「うむ、ではな」
「帰ってもですね」
「遊ぶとしよう」
「何か王様って」
 ボタンが言うには。
「寝る時以外は遊んでないかな」
「ほっほっほ、その通りじゃ」
「寝たら遊べないしね」
「しかし楽しむことは出来る」
 寝ることもというのです。
「それはな」
「そうだね、寝ることって凄く気持ちいいからね」
「だから寝て楽しむのじゃ」
 その寝ることをというのです。
「そうしているのじゃ」
「そうなんだね」
「勿論今夜も楽しむぞ」
 その寝ることをというのです。
「気持ちよくな」
「それじゃあね」
「うむ、楽しもうぞ」
 こうしたことをお話するのでした、そして実際に皆は牧場から宮殿に帰ってまた遊びました、今回カルロス達は遊んでばかりで。
 カルロスはふとです、皆に夕食の時に言いました。
「遊んでばかりだね、今回は」
「うん、確かにね」
「本当にずっとだよね」 
 ジョージと神宝がカルロスに最初に応えます。
「このリンキティンク王の国に来てから」
「僕達遊んでばかりだね」
「灯台にも行ったけれど」
「宮殿に着いてからはね」
 ナターシャと恵梨香も言います。
「私達ずっとね」
「遊んでいるわね」
「オズの国は確かに遊ぶことが多いけれど」
 それでもとも言うカルロスでした。
「今回は特にだね」
「そうだね、何か」
「遊んでばかりだね」
「起きて寝るまで」
「もう遊んでばかりね」
「そうした国だからいいんだよ」
 王子が五人に微笑んでお話しました。
「この国は遊ぶ国だから」
「オズの国の中でもですね」
「特にそうした国だからね」
 それで、というのです。
「いいんだよ」
「そうなんですね」
「だから明日もね」
「はい、遊んでもですね」
「いいんだよ、王様や僕だけでなく国民の皆も遊んでるしね」
「それぞれの遊びをですね」
「しているからね」
 だからと言う王子でした。
「それに王様と僕は国民の皆の遊びを実際にやってみてどんなのがチェックするのがお仕事だからね」
「そうなんですか」
「王様はこれでもお仕事にも真面目なんだよ」
「ほっほっほ、仮にも王様じゃ」
 王様も言います。
「だから働いてもおるぞ」
「そうなんですね」
「そうじゃ、明日も働くぞ」
「遊ぶことが即ちですね」
「わしの仕事で楽しみなのじゃよ」
 こう言って晩御飯も楽しむ王様でした、見ればその食材もです。
「このお料理も全部?」
「うむ、国民が作ったものでな」
「それを食べてだね」
「どれだけ美味しいか確かめておるのじゃ」
 こうボタンにお話します。
「王様であるわしがな」
「そうなんだね」
「うむ、お皿も他の食器もじゃ」
 そうしたものもというのです。
「国民が作ってくれたものでな」
「それもだね」
「使ってな」
「確かめているんだ」
「そうじゃ、よい食器じゃ」
 こう言うのでした、そしてその食器も楽しく使ってお料理を楽しむのでした。



お菓子で出来た牧場じゃなくて。
美姫 「お菓子を育てるって凄いわね」
今回ものんびりと過ごしせたわね。
美姫 「うん。ボタンがまた何処かに行ったりしなくて良かったわ」
だな。次は何をするのか。
美姫 「次回も待っていますね〜」
ではでは。



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