『オズのボタン=ブライト』




                 第四幕  また消えた子

 お菓子を食べて晩御飯も食べてです、オズマは皆に言いました。
「ではお風呂に入ってね」
「はい、そうして身体を奇麗にして」
「あったまってですね」
「今日は寝ましょう」 
 じっくりというのです。
「そうしましょう」
「お風呂も楽しむのじゃ」
 王様もこう言います。
「これも遊びじゃよ」
「入浴を楽しむですね」
「それですよね」
「そうじゃ」
 その通りという返事でした。
「ではな」
「はい、それじゃあ」
「今からですね」
「お風呂に入って」
「そうしてその後は寝て」
「また明日じゃ」
 明日にというのです。
「皆で遊ぶぞ」
「それではな」
 こうしてです、皆でお風呂に入るのでした。この宮殿のお風呂も男女別々になっています。それで、です。
 カルロスはジョージと神宝、それにボタンと一緒に入りました。浴室はとても広い円形の湯舟が中央にあってです。
 お魚の口からお湯が出ています、床はタイルで身体を洗う場所にはそれぞれシャワーと鏡がセットであります。
 その浴室を見てです、カルロスはこう言いました。
「何かお風呂屋さんみたいな」
「うん、そうだよね」
「日本にあるね」 
 ジョージと神宝はカルロスのその指摘に頷きました。
「そうした感じだよね」
「この浴室って」
「ほっほっほ、皆で入る場所じゃからな」
 王様が来てです、皆に笑顔で話してきました。
「だからな」
「それで、なんですか」
「こうした風になっておるのじゃ」
「日本のお風呂屋さんみたいな感じなんですか」
「むしろあれじゃな」
「あれとは」
「大浴場じゃな」
 それになるというのです。
「ここはな」
「そういえばそうですね」
 カルロスも言われて頷きます。
「この浴室は」
「わしは一人で入るよりもな」
「皆で入るのがお好きなんですか」
「そうなのじゃ」
「だからこうした風なんですね」
「わし専用の浴室はないのじゃ」
 この宮殿にはというのです。
「お風呂は皆でじゃ」
「それが王様ですね」
「うむ、ではこれからな」
「皆で、ですね」
「入ろうぞ」
「わかりました」
 カルロス達は王様の言葉に頷いてです、皆ででした。
 まずは身体を洗ってから湯舟に入りました、お湯の中はとても温かくて。
 カルロスはほっとしたお顔になってです、王様に言いました。
「いいお湯ですね」
「あったまるじゃろ」
「はい、凄く」
「身体も温まってな」
「それにですね」
「気持ちもじゃ」
 そちらもというのです。
「すっきりするのじゃ」
「ここのお風呂も」
「そうじゃ、お風呂もよいのう」 
 遊び好きの王様の言葉です。
「大好きな遊びの一つじゃ」
「お風呂に入ることも遊びですね」
「身体を奇麗にして心もすっきりする」
「そうなる遊びですか」
「そうじゃ」
「遊びは色々ですね」
「その通りじゃ、では遊ぼうぞ」
 こうしてお風呂に入ってです。
「是非な」
「それじゃあ」
「わしは一日二回も三回も入ることがある」
 お風呂に入って遊ぶことをというのです。
「毎日一回は絶対にじゃ」
「王様は本当に遊び好きですね」
「遊ぶことが生きがいでな」
 そしてというのです。
「入浴もじゃ、では今日もな」
「入浴で遊んで」
「心ゆくまで楽しもう」
 こう言ってでした、実際にです。
 王様はカルロス達と一緒に入浴も楽しみました、それはボタンも同じですが。
 ボタンは湯舟の中でうとうととしています、カルロスはその彼に声をかけました。
「寝たら駄目だよ」
「あっ、僕寝てた?」
「寝かけてたよ」
「そうだったんだ」
「お風呂の中って気持ちよくなるからね」
「うん、今は寝るつもりはなかったけれど」
 それでもというのです。
「気持ちよくて」
「それでだね」
「うん、言われるまでね」
「うとうとしてたんだ」
「お風呂の中で寝たら」
「そのまま沈んでね」
 お湯のその中にです。
「お湯を飲んでしまうよ」
「お口やお鼻から」
「そうしたらびっくりしたり下手したら溺れるから」
「よくないんだね」
「そう、だからね」
「お風呂の中ではだね」
「寝ない方がいいんだ」
 こうボタンに言うのでした。
「あまりね」
「それじゃあね」
「そう、今はね」
「起きてだね」
「ベッドの中で寝よう」
「そうするよ」
 ボタンはカルロスの言葉に頷いてでした、今はです。
 ちゃんと起きて身体をじっくりと温めました、そしてです。
 皆じっくりと温まってからお風呂を出ました、お風呂から出た王様はすっきりとした笑顔でお部屋にいた王子に言いました。
「王子もどうじゃ」
「僕は朝に入りましたから」
「だからか」
「はい、ですから夜はいいです」
「王子はいつも朝に入るのう」
「朝にお風呂に入って」
 そしてというのです。
「すっきりさせてです」
「一日をはじめるのじゃな」
「そうすることにしていますから」
 だからというのです。
「夜はいいです」
「そういうことじゃな」
「あとオズマ姫と女の子達は」
「女の子の入浴は時間がかかるからのう」
 王様はそのこともわかっています。
「だからじゃな」
「まだですね」
「それじゃあね」
 ボタンは王様と王子のお話を聞いて言いました。
「オズマ姫達が戻ったら」
「それでだね」
「お休みの挨拶をしてね」
 そしてというのです。
「今日は寝よう」
「そうだね、じゃあね」
 カルロスはボタンの言葉に頷きました、そしてです。 
 皆でおはじきをしながら遊んでオズマ達を待ちました、すると暫くしてです。 
 奇麗なパジャマを着たオズマ達は戻ってきました、ただ奇麗なパジャマを着ているだけでなく。
 とてもいい香りがします、カルロスはそのいい香りがするオズマ達に言いました。
「ううん、凄くいい香りがするけれど」
「あれ、カルロス達もよ」
「貴方達もよ」
 恵梨香とナターシャがカルロスに答えました。
「石鹸やシャンプーのね」
「いい香りがするわよ」
「あれっ、そうなんだ」
「自分の匂いは自分では気付きにくいのよ」
 こう言ったのはジュリアです、勿論ジュリアもお風呂上がりです。
「だからね」
「それでなんですね」
「カルロス達は自分の香りに気付かないのよ」
「そうなんですね」
「そうよ、私達からすればね」
「僕達からいい香りがして」
「私自身からは感じないわ」
 その香りをというのです。
「そういうものなのよ」
「そうですか、わかりました」
「じゃあ皆お風呂に入ったから」
 オズマが皆に言いました。
「もうね」
「はい、今日はこれで」
「寝ましょう」
「私も寝るわ」
 見ればエリカも奇麗になっています、しかもジュリアにブラッシングまでしてもらって毛並みもいい感じになっています。
「これでね」
「あたし達はここにいるわね」
 お部屋でずっと遊んでいるつぎはぎ娘の言葉です。
「ここでね」
「寝る必要がないから」
「朝まで三人で遊んでいるよ」
 ガラスの猫と木挽の馬も言います。
「そして皆を待つから」
「そうしているよ」
「眠る必要がないのはよいことかのう」
 王様は三人の言葉を聞いて顎に手を当てて言いました。
「やはり」
「寝たら凄く気持ちいいよ」
 ボタンの言葉です。
「あんないいことはないよ」
「ボタンは寝ることが大好きじゃからのう」
「僕の生きがいだよ」
 まさにというのです。
「寝ることはね」
「だから君はそう言うのじゃな」
「うん、寝ることがね」
 まさにというのです。
「一番好きだよ」
「では君は寝られないとか」
「困るよ」
「寝られる人は寝たらいいのよ」 
 つぎはぎ娘が言ってきました、その布と綿の身体で。
「そして起きている人はね」
「起きてだね」
「楽しめばいいのよ」
「その人それぞれで」
「あたし達は寝ることがないから」
 だからというのです。
「起きて楽しめばいいのよ」
「そういうことなんだね」
「じゃあ皆お休み」
 つぎはぎ娘は皆に手を振って応えました。
「また明日ね」
「うん、じゃあね」
「朝からまた遊ぼう」
 カルロスとボタンが皆を代表して挨拶をしてでした、皆はそれぞれお休みの挨拶をして宮殿の人達が用意してくれたお部屋に入りました。
 王様と王子はそれぞれのお部屋に入ってオズマは用意された専用のお部屋、恵梨香とナターシャはジュリアと一緒でした。エリカもです。
 そしてカルロスと神宝、ジョージもです。
 ボタンと一緒に天幕のベッドがある寝室に案内してもらってです。そこでじっくりと寝ました。
 その朝です、カルロスは朝起きてでした。  
 同じベッドに寝ている皆を見てです、まずは。
 寝ぼけ眼をこすってです、まだ寝ている神宝とジョージに言いました。
「二人共起きて」
「あっ、朝だね」
「朝になったね」
「そして朝になってね」
 そしてというのです。
「ボタンがいないよ」
「えっ、また?」
「あの子またいなくなったんだ」
「あの子寝たらね」
 それでと言うカルロスでした。
「よく何処かに行っちゃうけれど」
「今回もかな」
「そうなのかな」
「何処に行ったのかな」
 首を傾げさせて言うカルロスでした。
「今度は」
「ううん、まずはね」
「起きよう」
 神宝とジョージはカルロスに応えて起き上がってでした。
 そして三人で着替えてです、まずは。
 つぎはぎ娘達がいるお部屋に行ってです、こう言いました。
「ねえ、カルロス見なかった?」
「あれっ、いなくなったの」
「そうなんだ」
 こうガラスの猫に答えます。
「またね」
「本当にまた、よね」
 ガラスの猫もお話を聞いて言いました。
「あの子は」
「寝ているとその間にね」
「何処かに行くのよね」
「どうしてそうなるかはわからないけれど」
「今回もなのね」
「うん、いなくなったから」
「それで私達にもなのね」
 ガラスの猫はさらに言います。
「これからあの子を探すことに」
「助けてくれないかな」
「というかあの子がいなくなったら」 
 それこそと応えたガラスの猫でした。
「どっちにしてもね」
「探さないといけないよね」
「そう、だからね」
「皆もだね」
「一緒に探しましょう」
「じゃあ早速ね」
 つぎはぎ娘も言ってきます。
「皆で探そう」
「あの子携帯持ってるかな」
 ここでこう言ったのは神宝でした。
「あればね」
「あの子に電話をかければね」 
 ジョージはカルロスのその言葉に頷きます。
「すぐに出るからね」
「何処にいるか確認出来るよ」
「本人にね」
「あっ、残念だけれど」 
 ここで言って来たのは木挽の馬でした。
「あの子は携帯持っていないよ」
「あっ、そうなんだ」
「携帯持っていないんだ」
「そうなんだ」
 こう二人に言うのでした。
「他の皆は持っているけれどね」
「あの子は持っていないんだね」
「携帯電話を」
「スマートフォンも持ってないよ」
 そちらもというのです。
「だから皆いつも彼が何処にいるかわからないし」
「何時会えるのかもだね」
「わからないんだね」
「そうなんだ」
「神出鬼没なのには理由があるんだね」
 カルロスは馬のお話を聞いてこのことを納得しました。
「連絡が取れないから」
「そうだよ」
「その辺りの事情もわかったよ」
「だから探そうと思ったら」
「その足でだね」
「探すしかないんだ」
「この宮殿の何処かにいればいいけれど」 
 また言って来たガラスの猫でした。
「あの子はわからないからね」
「いなくなったらね」
「オズの国の何処かかオズの国の外の世界でも」
「扉のすぐそこにいるね」
「あの子はオズの国の子よ」
 このことは絶対だというのです。
「だからね」
「オズの国にはいる」
「外に出ても」
 オズの国のです。
「絶対に扉の傍で無意識のうちにね」
「その扉に入ってだね」
「今回あんた達がオズの国に来たみたいになるわ」
「だからだね」
「あの子はオズの国にいるわ」
 今現在もというのです。
「間違いなくね」
「そうなんだね」
「けれどね」
 それでもとも言うのでした。
「オズの国の何処かは」
「それはわからないね」
「全くのランダムよ」
 ボタン=ブライトが何処にいるかはです。
「あの子は偶然と幸運に愛されている子でしょ」
「だからだね」
「そこはわからないわよ」
「ううん、じゃあ見付けることも」
「そう、偶然と運よ」
「その二つ次第なんだね」
「宮殿にいたらね」
 幸運にもそうであったらとです、つぎはぎ娘は言いました。
「運がいいってことよ」
「そうなるんだね」
「じゃあ偶然の神様にも幸運の神様にもお祈りして」
 馬が言ってきました。
「ボタンを探そう」
「そうだね、ただ」
「ただ?」
「またオズマ姫が起きられてないし」
 それにというのです。
「恵梨香達もまだだから」
「ああ、それじゃあね」
「皆が起きてからね」
 その時からというのです。
「探そう」
「そうだね、それがいいね」
 神宝はカルロスのその提案に頷きました。
「僕達だけで探すよりも」
「皆で探した方が見付かりやすいよ」 
 ジョージもカルロスの提案に同意です。
「じゃあ女の子達が起きてから皆で探そう」
「王様達も来てくれたら」
 こう言ったのはガラスの猫です。
「余計にいいわね、けれどね」
「けれど?」
「あの王様はお寝坊さんよ」
 ガラスの猫はカルロスに王様のこのことを言いました。
「だからね」
「中々起きないんだね」
「夜早く寝て朝遅く起きる人なのよ」
「早寝遅起きなんだ」
「寝ることも楽しむ人だから」
 それでというのです。
「もうじっくりと寝てね」
「早寝遅起きなんだね」
「中々起きないわよ」
「何かあの人らしいね」
 お話を聞いて本当にそう思ったカルロスでした、神宝とジョージもです。王様が早寝遅起きな人であると聞いてです。
「それは」
「そうでしょ、そして王子はね」
「早寝早起きなんだね」
「今はお風呂かしら」
「お風呂に入ってなんだ」
「あの人は一日をはじめるから」
「そういえばそんなこと言ってたね」 
 カルロスはガラスの猫の言葉から昨日のやり取りを思い出しました。
「王子は朝にお風呂に入るんだね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「今はそうしてるかも知れないわ」
「そうなんだね」
「貴方達も入ったら?」
「それはボタンを探して朝御飯を食べた後だね」
 その時にというのです。
「見付けられないかも知れないけれど」
「見付けて心配を取り除いた後で楽しく食べて」
 つぎはぎ娘が言います。
「それからね」
「そう思ってるからね、それにこの宮殿は王様の宮殿だから」
「王様の許しを得てなのね」
「それからね」
「お風呂ね」
「やることをやって」
 そしてというのです。
「それからだよ」
「わかったわ、じゃあまずは」
「まずは?」
「そろそろオズマ達が起きてくる時間よ」
「あっ、そうなんだ」
「だからオズマが来たら」
 その時にというのです。
「オズマにもお話してね」
「探すのにだね」
「協力してもらいましょう」
「それとだね」
 今度は神宝が言ってきました。
「そろそろ恵梨香達も起きてくるから」
「うん、恵梨香達も起きてくる時間だね」
 ジョージも言います。
「そろそろ」
「もうとっくに起きていてね」
 つぎはぎ娘が言うには。
「着替えたり髪の毛を整えているのよ」
「身だしなみをなんだ」
「そう、きちんとしてるの」
「女の子だからね」
「女の子は大変なのよ」
 何かと、というのです。
「朝起きてすぐに皆の前には出られないの」
「男の子より時間がかかるね」
「オズマもよ」
 その彼女もというのです。
「もう起きて今はね」
「身支度を整えてるんだね」
「早起きしたジュリアに手伝ってもらってね」
「ああ、ジュリアさんは凄い早起きだからね」
「メイドさんは早く起きるのもお仕事よ」
 ガラスの猫fが言いました。
「早く起きてお仕事をはじめることもね」
「そしてだね」
「オズマの身支度を手伝ってるのよ」
「そうだね」
「あとエリカは」
 馬は彼女のことをお話します。
「生身の猫だから」
「猫はよく寝るよね」
「あの娘はお寝坊さんだよ」
「王様と一緒で」
「とにかくよく寝るからね」
 本当に猫はよく寝る生きものです、何でも日本語の『猫』という名前は『寝る子』という言葉から来たとさえ言われている位です。
「あの娘は」
「じゃあ何時起きて来るかは」
「わからないよ」
 彼女の場合はというのです。
「だからあの娘と王様はね」
「起きてこないってだね」
「思っていた方がいいかもね」
「そうなんだね」
「まあとにかくオズマ達がこっちに来てからだね」
「ボタンを探すのは」
「それまで待っていよう」
 こうカルロス達に言う馬でした。
「待つのも探すうちだよ」
「すぐに動くんじゃなくて」
「そう、必要な人が待つのもね」
「誰かを探すうちなんだね」
「さっきもお話に出たね」
「あっ、探すには人が多い方がいい」
「そういうことだよ」
 まさにというのです、こうお話してでした。
 カルロス達はまずは女の子達を待ちました、するとすぐにでした。
 オズマとジュリア、それに恵梨香とナターシャが来ました。そして皆で事情をお話するとです。
 恵梨香は特に驚かずにです、こう言いました。
「あの子らしいわね」
「そうね」
 ナターシャも同じでした。
「いつもだから」
「あの子が起きたらいないっていうのは」
「私もひょっとしたら思ってたわ」
「私もよ」
「あの子はそうした子よ」
 オズマはもっとあっさりしています、二人よりも。
「気付いたらいない子よ」
「そうですね、僕達も知ってましたけれど」
「驚いてはいないでしょ」
「またかと思ってます」
 カルロスは正直にです、自分の気持ちを述べました。
「実際に」
「そうでしょ、だからね」
「探しはしてもですね」
「この宮殿にいなくてもね」
 それでもとも言うオズマでした。
「特に驚くことはないわよ」
「そうですよね」
「まあ見付かればね」
 それで、と言うのでした。
「それに越したことはないわ」
「そうですね、本当に」
「だからね」
「探すにしても見付からなくても」
「オズの国の何処かで元気にいるから」
 それでというのです。
「安心してね」
「わかりました、それじゃあ」
「後は王子が来てくれたら」
「今はお風呂ですね」
「王様は寝てるし」
 このことはと言うのでした。
「エリカも一緒だから」
「王様とですか」
「あの娘は王様のお部屋に行って寝たわ」
「王様は早寝遅起きって聞きましたけれど」
「ええ、そうよ」
 オズマはカルロスにその通りだと答えました。
「よく寝る人よ」
「それじゃあですね」
「あの人とエリカは起きないって思ってね」
「じゃあ王子が来られたら」
「ボタンを皆で探しましょう」
「わかりました」
 カルロスはオズマのその言葉に頷きました、そしてです。
 王子が来るのを待ちました、その王子も来てお話をしてからです。事情を理解した王子も入れて皆で探しはじめたところで。
 お部屋にです、その起きない筈の人達が来ました。
「ほっほっほ、皆揃っておるな」
「よく寝られたかしら」
「あれっ、王様」
「それにエリカも一緒だね」
 カルロスと王子が王様達を見て言います。
「早寝遅起きって聞きましたけれど」
「今日は早起きですね」
「いや、ベッドに入ってすぐな」
「よく寝られたからよ」
 こう答えた王様とエリカでした。
「今日はいつもよりも早く起きられたのじゃ」
「私もね」
「王様いつもベッドに入ってすぐに寝てますよ」
 王様の親友である王子の言葉です。
「けれど今日はですか」
「ううむ、どうも眠りが深くてな」
「それで、ですか」
「目を閉じて開いたらな」
 その時はというのです。
「気持ちよく起きていたのじゃ」
「だからですか」
「今日はいつもより早起きじゃ」
「そうですか」
「それで皆何か騒がしいが」
「はい、実は」
 カルロスが王様に言ってきました。
「ボタンがいなくなりまして」
「いなくなった?」
「はい、一緒の部屋で寝ていましたが」
「ボタンならいるぞ」
「いるんですか」
「そうじゃ」
 その通りという返事でした。
「わし等と一緒におったぞ」
「王様のお部屋で寝ていたのよ」
 エリカも言います。
「王様のベッドで」
「朝起きたらわしの横におった」
 王様も言います。
「ぐっすりと寝ておるぞ」
「宮殿にいたんですね」
「あの子は寝ている間にじゃ」
「そうなの、時々いなくなるの」
 オズマが王様にその時の事情をお話します。
「オズの国の何処か、外の世界だと扉の傍に」
「うむ、わしもその話は聞いておるが」
「今回もそうだったけれど」
「わしのベッドがじゃな」
「その移った場所だったのね」
「そうじゃな、しかしいるのならな」
 それならと言う王様でした。
「これでよいな」
「はい、本当に」
 王様のお話を聞いてまずはこう言ったカルロスでした。
 ですがそれと共にです、カルロスはやれやれといったお顔になってです。 
 そしてです、こんなことも言いました。
「けれど、本当に何時移って」
「寝ている間にじゃな」
「何処に行くかわからない子ですね」
「それがあの子よ」
 ジュリアもカルロスに言います。
「いつもね」
「偶然にですね」
「そう、何処かに行く子だから」
「本当に偶然に愛されている子なんですね」
「そして幸運にね」
「だからいつも幸せなんですね」
「欲がないからよ」
 カルロスはというのです。
「あの子は偶然に支配されているのよ」
「そうなんですね」
「そう、だからね」
「今回みたいなことは普通ですね」
「あの子の場合はね」
「わかしました、じゃあ」
「今回はこれで終わったわ」
 ボタンを探そうというそのことはというのです。
「もうね」
「ほっほっほ、ではボタンが起きてきたらな」
 陽気に笑ってです、王様は皆に言いました。
「朝御飯にしよう」
「今日の朝御飯も凄いよ」
 王子も皆に言います。
「凄く美味しいよ」
「さて、今日の朝御飯は何かのう」
「オムライスです」
「ほう、オムライスか」
「そしてシチューです」
 この二つだというのです。
「苺もありますよ」
「それはよいのう」
「どれも王様の好物ですね」
「オムライスが特にな」
「それを食べましょう」
「オムライスは最高じゃ」
 王様はオムライスと聞いただけでもう飛び上がりそうです。
「あんな美味しいオムレツ料理はないぞ」
「あれは確か」
 恵梨香が言ってきました。
「元々は日本の洋食でしたね」
「その様じゃな」
「それがアメリカにも入って」
「オズの国でも食べていてな」
「王様の大好物なんですね」
「そうなのじゃよ」
「何か王様がオムライスお好きなのは」
 恵梨香はそう聞いて言うのでした。
「似合ってますね」
「ええ、王様がお好きそうね」
 ナターシャも言います。
「オムライスは」
「そうしたお料理よね」
「オムライスは不思議な食べものだね」
 王子もそのオムライスについて言います。
「子供が好きそうな食べものだけれど」
「それでもですね」
「オムライスは」
「うん、大人が食べても美味しいよ」
 こう言うのでした。
「とてもね」
「そうなんですよね、オムライスは」
「僕も好きだよ」
 王子もと言うのでした。
「あれはね」
「そうなんですね」
「皆で楽しく食べようね」
「そしてオムライスを食べてからな」
 シチューと苺もです。
「皆で遊ぼうか」
「最初は何をして遊ぶの?」
「そうじゃな、王子の傍にいて思ったが」
 オズマに答えるのでした。
「まずはお風呂か」
「お風呂上がりの香りを感じてなのね」
「わしもお風呂に入りたくなった」
「そこで遊ぶのね」
「お風呂に入ってな」
 まさにそうしてというのです。
「そうしたくなった」
「ではそれぞれね」
「お風呂に入ろうぞ」
 男の子と女の子に別れてというのです。
「楽しくな」
「皆おはよう」 
 ここで、でした。そのボタンがです。
 自分の手で瞼をこすりながらお部屋に入って来てです、こう言ってきました。
「よく寝た?」
「よく寝たけれど」
 カルロスがそのボタンに言います。
「君王様のお部屋にいたんだね」
「うん、気付いたらね」
「どうしてそこにいるかわかる?」
「わかんなーーい」
 いつもの返事でした。
「気付いたらいたんだ」
「やっぱりそうなんだね」
「うん、ただ今は宮殿にいるね」
「そうだね」
「それならよかったよ」
 微笑んで言ったカルロスでした。
「本当にね」
「うん、僕もそう思うよ」
「それじゃあ今から朝御飯を食べましょう」
 ボタンが来たのを見て言ったオズマでした。
「皆揃ったから」
「はい、オムライスをですね」
「そうしましょう」
「さて、食堂に行こうぞ」
 王様も言ってきました。
「今からな」
「はい、わかりました」
 カルロスが応えてでした、そのうえで。
 皆で宮殿の食堂に行ってです、お野菜と鶏肉がたっぷり入ってトマトのシチューにです、デザートの苺と。
 とても大きなオムライスを見てです、笑顔になりました。
「これがじゃ」
「はい、この宮殿のオムライスですね」
「そうですね」
「美味しくてしかも量が多い」
 非常にというのです。
「最高のオムライスじゃ」
「これを朝から食べるんですね」
「今から」
「これを食べればお腹一杯じゃ」
 それこそというのです。
「だからな、これからじゃ」
「はい、食べて」
「そしてですね」
「今日も遊ぶんですね」
「そうするんですね」
「そうじゃ、遊ぶにはな」
 まず、というのです。
「食べてからじゃ」
「それじゃあですね」
「今から」
「うむ、いただきますじゃ」
 王様が音頭を取ってです、そしてでした。
 皆でいただきますをしてから食べました、そのオムライスの味は。
「あっ、確かに」
「チキンライスも美味しくて」
「オムレツの生地もよくて」
「これはまた」
「そうであろう、このケチャップもな」 
 オムライスの上にかけているそれもというのです。
「実によくてな」
「いや、いいですね」
「ケチャップも美味しいです」
「それに量も多くて食べがいもあって」
「最高ですね」
「シチューもね」 
 王子はこちらのお話もしました。
「食べるといいよ」
「あっ、こっちも」
「確かに美味しいですね」
「いいトマトですね」
「お野菜もじっくり煮込まれていて」
「鶏肉も味付けよくて柔らかくて」
「かなり美味しいね」
 にこりと笑って言う王子でした。
「こちらも」
「ケチャップもこのシチューもトマトですね」
 カルロスは王子にこのことを聞きました。
「そういえば」
「うん、そうだね」
「このトマトも」
「トマトはいいお野菜だね」
「色々と使えますね」
「こうしてね」
「ケチャップだけでなく」
 そしてです。
「シチューにも」
「他のお料理にも使えてね」
「いいお野菜ですね、本当に」
「カドリングのトマトは特に赤いから」
 それだけにというのです。
「食欲もそそるしね」
「カドリングの赤ですね」
「どうかな、この赤いトマトは」
「赤さが余計に食欲もそそりますし」
 カルロスは笑顔で応えました。
「いいですね」
「ではね」
「はい、オムライスもシチューも楽しんで」
「朝をはじめよう」
「苺もよいぞ」
 王様はデザートのそれも忘れていません。
「朝の苺は最高じゃ」
「王様苺もお好きですか」
「好きも好き、大好きじゃ」
 それこそというのです。
「こちらもな」
「何か赤いものが好きみたいな」
「カドリングじゃしな」
「ああ、赤いものの国ですから」
「それもあるじゃろうな」
「そうなんですね」
「まあ他の色も好きじゃがな」
 王様はそうだというのです。
「おもちゃみたいに色々な色があるのが一番いい」
「この宮殿みたいにですね」
「そういうことじゃ、では食べた後は遊びじゃ」
「お風呂にも入って」
「今日も楽しく遊ぶぞ」
「僕も遊ばせてもらうね」
 ボタンもオムライスとシチューを食べつつ言います。
「皆と一緒に」
「いやいや、そこで若し嫌だと言われるとな」
 王様が困った様に言ってきました。
「わしが困る」
「そうなんだ」
「御前さんは遊んでないとどうしておる」
「寝てるよ」
 実にこの子らしい返事です。
「やっぱりね」
「そうじゃな、それで何処か行かないまでもな」
 それでもというのです。
「遊ぶ人は一人でも多い方が楽しい」
「だからなんだ」
「御前さんも参加してくれないとじゃ」
「嫌なんだね、王様は」
「わしは退屈なことと寂しいことがどうして駄目じゃ」
「本当にそうした人なんだよ」
 王子もボタンにお話します。
「だからね」
「僕もだね」
「そう、君も是非ね」
「遊びにだね」
「参加してもらわないと」
「それじゃあ」
「皆で楽しく遊ぼう」
 王子からも誘うのでした。
「いいね」
「それじゃあね」
 ボタンも頷いてでした、そのうえで。
 皆と楽しく遊ぶのでした、皆で遊ぶととても楽しいものでした。



朝起きたらボタンがいないとか。
美姫 「ボタン探しが始まるかと思ったけれどね」
違ったな。ボタンの居所はすぐに分かったしな。
美姫 「無事だし良かったわ」
確かにな。その後は朝食に遊びにと。
美姫 「楽しそうで何よりね」
だな。次はどうなるのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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