『オズのポリクローム』




                 第十一幕  騎士団長の教えてくれた場所

 一行はお城の中に入りました。そのお城の中はといいますと。
 お城の中も石造りでとても壮麗な感じでした、ステンドガラスが廊下やお庭の方にあって赤や青、黄色や緑の光をお城の中に入れていて。
 所々に金や銀の甲冑や大理石の像、絵等が飾られています。廊下にはビロードの絨毯が敷き詰められています。
 その中を進んで、です。ジョージは言いました。
「何か凄いお城ですね」
「そうよね」
 ドロシーがジョージのその言葉んい頷きます。
「お城というよりは」
「宮殿ですね」
「宮殿に教会が入った」
「そんな感じですよね」
「見て」
 ドロシーは廊下の上を指差しました、廊下の天井はとても高くて。
 そこにも絵がありました、ルビーやサファイアのシャングリラを中心に置いてです。
 天使達が動物達と楽しく遊んでいたりお空を飛んでいる絵が描かれています。ドロシーは皆にその絵を見せて言うのでした。
「天井にまでね」
「絵がありますね」
「それもシャングリラまで」
「しかもあのシャングリラって」
「宝石ですし」
「ええ、凄いわ」
 本当にというのです。
「それも一色だけじゃなくて」
「五色ですね」 
「オズの国の五色にです」
「白もありますね」
「ダイヤのシャングリラも」
「お空の世界の色よ」
 ポリクロームが五人に言ってきました、ここで。
「白はね」
「あっ、雲ですね」
「雲の白ですね」
「オズの五つの国にはそれぞれの色があって」
「お空の色は白」
「雲の白がなんですね」
「そうなの、そしてそこにね」
 さらにというのです。
「私達それぞれの精霊の色があるのよ」
「ポリクロームは虹色だね」
「虹の精霊さん達は」
 臆病ライオンと腹ペコタイガーが言ってきました、勿論二匹もお城の中に案内してもらって中を進んでいるのです。
「雷の精霊さん達は雷の色」
「そうなっているんだね」
「そうよ、私達はそれぞれの司っているものの色よ」
 ポリクロームは二人に答えました。
「そうなっているの」
「私達はです」
 天使さんが言ってきました。
「金色です」
「あっ、頭の輪」
「その輪の色ですね」
「天使さんには絶対にある」
「その輪の色ですね」
「そうです、この輪は天使の力の象徴ですが」
 その尊い力のというのです。
「この輪が金色なので」
「天使さん達の色も」
「金色なんですね」
「そうなんですね」
「そうなっています」
 実際にというのです。
「ですからこのお城の中には金色のものも多いです」
「あっ、確かに」
 ここで気付いたのは腹ペコタイガーでした。お城の中を見回して。
「ガラスの金とかはね」
「うん、あちこち細かいところが」
 臆病ライオンも気付きました。
「金だね」
「そうだね」
「こうしたところに使ってるんだ」
「そこも面白いね」
「うん、あとね」
「あと?」
「さっき栗鼠君や兎君達が沢山いたけれど」
 ここで臆病ライオンは話題を変えてきました、この島に着いた時のことに。
「君食べたいと思わなかったね」
「思ったよ」
 腹ペコタイガーは臆病ライオンに正直に答えました。
「実際にね」
「それでも言わなかったんだ」
「うん、言うとね」
 それこそというのです。
「皆に悪いと思ってね」
「気を使ったんだ」
「僕の中の良心が許さなかったんだ」
「思っていても口に出すことを」
「今回は特にね」
「それは何よりだね、ただね」
「ただ?」
「君のその行動はとても賢明だったよ」
 こう言って親友を褒め称えるのでした。
「いつもみたいに言ってしまえばね」
「それで、だよね」
「うん、気まずい状況になっていたから」
 だからだというのです。
「言わなくてよかったよ」
「本当にね」
「食べたいと思っても」
「言わない、それもね」
「大事なことだね」
「思うことは仕方ないにしても」
 このことは誰にも止められません、頭の中で思うことは誰にも止めることも妨げることも止められないのです。
 しかしです、それでもその考えを言葉に出すことはなのです。
「言ったら駄目だからね」
「言葉が形になるから」
「どうしてもね」
「そうなるよね」
 こうお輪するのでした、そして。
 そのお話を聞いてです、トトも言いました。
「言わない、そのことも大事だね」
「そうよね、思っていても」
 ドロシーも言います。
「言葉に出さないこともね」
「時として大事だよね」
「私もそう思うわ」
「そう、言葉には不思議な力があるんだ」
 魔法使いは言葉そのものについてお話しました。
「出せばそれが形になるんだ」
「形はなくても」
「なるから、だから」
 それでというのです。
「迂闊に出したらね」
「駄目な時もあるね」
「そうなんだよ」
「だから僕が食べたいって言わなかったことは」
「よかったんだよ」 
 魔法使いは腹ペコタイガーにもお話しました。
「あの時はね」
「そうだね、じゃあこれからもね」
「時と場合を見て喋るべきだね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「これからもね」
「そうする様に心掛けるよ」
 腹ペコタイガーも言うのでした、お城の中で。
 そのお城の中はとにかく広くて様々なお部屋もありました、一行はそのお部屋の中も色々と案内してもらいましたが。 
 その中で舞踏の間に入ってです、皆はその部屋に驚きました。
「うわ、鏡が一杯あって」
「それがお部屋を飾って」
「凄く奇麗」
「シャングリラも絵も」
「装飾も」 
 お部屋の中の何もかもがというのです。
「絨毯もね」
「アラベスクの模様で」
「色々な色で刺繍があって」
 えんじ色を基調にしてです、とても奇麗な感じで様々な草や幾何学の模様が白や黒で飾られて金も使われています。
「金の糸までね」
「使ってて」
「それでお部屋の床を敷き詰めてて」
「とても奇麗ね」
「ここがです」
 案内役の天使さんも言います。
「私達がダンスの時に使うお部屋です」
「このお部屋で、ですか」
「天使の皆さんはダンスを踊られるんですね」
「そうなんですね」
「はい、そうです」
「そういえば」
 ここでジョージが言いました。
「このお城全体がそうですけれど」
「何か」
「このお部屋も天井が高いですね」
「そういえばそうだね」
 神宝もジョージの言葉に頷きます。
「このお城全体がね」
「高いよね、天井」
「かなりね」
「それはどうしてなのかな」
 カルロスは首を傾げさせます。
「ここまで天井が高い訳は」
「普通で五メートル以上あって」
 ナターシャはその目で見た具体的な高さを言いました。
「それこのお部屋は」
「十メートルはあるかしら」
「窓も一階に二つあって」
「高いわよね」
「それはどうしてかしら」
「はい、そのことはです」
 何故天井が高いのか、天使さんは五人に答えました。
「私達は天使でして」
「あっ、翼があって」
「お空が飛べて」
「それでなんですね」
「天井も高いんですね」
「そうなんですね」
「はい、ダンスの時もです」
 その時もというのです。
「飛ぶこともします」
「じゃあただ絨毯の上で踊るだけじゃなくて」
「上も飛んで、ですか」
「飛ぶんですね」
「そうなんですね」
「そうしています、それに普段も」
 廊下や他のお部屋にいる時もというのです。
「飛んで移動することも多いので」
「だからですか」
「お空を飛んで、ですか」
「移動するから」
「だから天井が高いんですね」
「飛んで頭をぶつけない為に」
 五人もここまで聞いて納得しました。
「そういうことなんですね」
「天使さん達の翼が理由なんですね」
「だから他のお部屋も天井が高くて」
「このお部屋は特に」
「そうです、中にはです」
 天使さんは笑ってこうもお話しました。
「寝ている時に寝相が悪く」
「ベッドから出て、ですね」
「飛んだりしている人もですね」
「おられるんですね」
「そうです」
 実際にというのです。
「私もそうした時がありました」
「あっ、天使さんもですか」
「お休みになってる時にですか」
「ベッドの外に出て」
「飛んでおられたんですか」
「実際に」
「そうした時がありました」
 こう五人に答えるのでした。
「起きた時に自分もかと思いました」
「といいますか天使さんは」
 ふとです、ジョージはあることに気付いて述べました。
「どうして寝られるんですか?」
「どうしてとは」
「はい、背中に翼がありますけれど」
 このことから言うのでした。
「仰向けにはなれないですね」
「その通りです、翼が邪魔になって」
「じゃあ横になってですか」
「そうして寝ます」
「やっぱりそうですか」
「それと椅子に座る時も」
 その時もというのです。
「翼を左右に広げて邪魔にならない様にして座ります」
「そうですか」
「ですから椅子を並べる時は」
「あっ、横に広くですね」
「間を取っています」
「何か色々とあるんですね」
「私達の翼はそうしたものです」
 こうした寝る時や座る時にも影響するものだというのです。
「そうなっています」
「成程、わかりました」
 ジョージはここまで聞いて納得しました。
「それが天使さんなんですね」
「そうです」
「そうなんですね」
「いや、天井がここまで高いと」
 一行の中で一番小さなトトからしますと。
「何か上を見上げていてね」
「疲れるの?」
「あまりにも見上げ過ぎてね」 
 ドロシーにも答えます。
「そうなるよ」
「そうなのね」
「うん、だからね」
 それでというのです。
「僕には大変だよ」
「そうよね、それじゃあね」
「それじゃあ?」
「私が抱っこすればどうかしら」
 トトをというのです。
「そうすれば上まで見られるわよ」
「苦労せずに」
「どうかしら」
「気持ちだけ受け取っておくよ」
 これがトトの返事でした。
「それだけね」
「あら、そうなの」
「うん、これでも何とか上から見上げているから」
 それでというのです。
「何とかね」
「だといいけれど」
「そういうことでね」
「トトがそう言うのならいいわ」
 ドロシーもトトの言葉に頷きます。
「じゃあね」
「それでね」
「ではです」
 また天使さんが言ってきました。
「今度は面白いお部屋に案内させて頂きます」
「今度のお部屋は」
「いらしてのお楽しみです」
 微笑んでのお言葉でした。
「そこに」
「そう、じゃあ」
 ポリクロームが応えてでした、そして。
 皆は次のお部屋に案内してもらいました、そのお部屋はとても図書室でした。お部屋といってもその大きさは。
 かなり大きな図書館位の大きさです、そして。
 図書館の本棚はどれもそのとても高い天井まで届いています、何段も何段もです。
 階段は螺旋階段で、です。手摺は金です。全体的に木造で樫の木造りで。
 その木をです、見て言いました。
 シャングリラもここでは金色です、そのシャングリラも見てです。
 ポリクロームはうっとりとして、くるくると踊りながら言いました。
「いや、この図書館は」
「如何でしょうか」
「凄く立派で」
 それでというのです。
「エメラルドの都の図書館と比べても」
「引けを取らないと」
「そう思うわ」
「あの、私プラハの図書館を写真で見たことがあるけれど」 
 ナターシャが言ってきました。
「この図書館は」
「そのプラハの図書館よりも?」
「趣は似てるけれどね」
 こう恵梨香にもお話するのでした。
「ずっと立派よ」
「そうなのね」
「ここまで立派な図書館は」
 それこそというのです。
「外の世界にはないかも」
「本当に王宮の図書館と同じ位ね」
「立派よ」
「図書室というよりは」
 それこそというのです。
「建物自体がそうだから」
「図書館って言ってもいいわね」
「そう思うわ」
 心から言うナターシャでした。
「このお部屋はね」
「図書館よ」
「そうよね、それとね」
「それと?」
「このお部屋の本って」
「沢山あるわね」
「どれ位あるのかしら」
「そうですね、何千万冊とです」
 天使さんが答えてくれました。
「あります」
「何千万冊ですか」
「そんなにあるんですか」
「はい」
 その通りだというのです。
「一億はあるかも、いえ二億でしょうか」
「二億」
「そんなにあるんですか」
「それは凄いですね」
「そこまであるんですね」
「はい」
 まさにそうだというのです。
「とかく蔵書が多いのです」
「二億というと」
 その数を聞いてです、魔法使いが言いました。
「王宮の図書館位だね」
「はい、私達は学ぶことも好きなので」
 それでというのです。
「書も集めているのです」
「そうなんだね」
「そして読んでいます」
 図書室にある本達、まさにそれをというのです。
「時間がある時はいつも」
「では君達は知識もあるね」
「いえ、まだまだですよ」
「あれっ、本が二億もあるのに」
「二億ありましても」
 それでもとです、天使さんはジョージにもお話しました。
「全てを読めません、そして書だけを読んでもいないので」
「これだけ蔵書があって学問をされていても」
「はい、私達はまだまだです」
 こうジョージに答えるのでした。
「学問が足りません」
「そうですか」
「それにです」
 さらにお話する天使さんでした。
「二億冊全てはとても読めません」
「そういえば本一冊読むのも」
 それもとです、ジョージも言われて気付きました。
「時間がかかりますね」
「そうです、私達全てが二億冊も読んでいません」
 こうお話するのでした。
「何万か読んでいれば凄いです」
「そんな感じですか」
「はい、ただこうして様々な分野の書を置いていますと」
「あらゆる学問についてですね」
「学ぶことが出来ます」
 それが可能だというのです。
「ですから書を集め続けています」
「じゃあそれぞれの天使さんがですね」
「それぞれの興味のある分野の知識を備えていまっす」
「そういうことですか」
「はい、私は医学です」
 そちらの分野の知識があるというのです。
「ですから天界で何かあれば」
「貴方を頼らせてもらっていいんですね」
「はい」
 はっきりとです、天使さんはジョージに答えました。
「何かあればお話下さい」
「それじゃあ」
 こうしたことをお話してでした、そしてです。
 一行は図書館から博物館にも案内してもらいました、そこには古今の様々なものが置かれていました。その中にはです。 
 沢山の宝石もありました、その宝石を見てです。
 ポリクロームは目を輝かせてです、こう言いました。
「色々な宝石があって」
「奇麗ですね」
「ええ、エメラルドも沢山あるわね」
「御覧になられている通り」
「エメラルドの都から貰ったものなの?」
「そうしたものもあります」
「私の前の。オズマ姫の父君からだね」
 魔法使いもそのエメラルド達を見ながら言います。
「貰ったものだね」
「頂いたものもあります」
 実際にとです、魔法使いにも答えました。
「そうしたものも」
「やはりそうだね」
「そして山の上にあった宝石も拾っています」
「山の中にある宝石は持っていないんですね」
「はい」
 そうだとです、天使さんは神宝に答えました。
「前のノーム王とは仲が悪かったので」
「ラゲドー王とは」
「あの王様はとても悪い王様でした」
 それ故にというのです。
「ですから私達も揉めごとを避けていました」
「あの人は本当に酷い人だったんですね」
「それは皆さんがボームさんが書き残された書にある通りです」
 オズのエメラルドの都やオズのチクタクで出ていた様にです。オズの魔法くらべにおいても書かれています。
「あの様にしていたので」
「天使さん達もですか」
「避けていました」
「戦われることは」 
 そうしなかったのかとです、カルロスが尋ねました。
「そうしたことは」
「私達は人は助けますが」
「戦うことはですか」
「はい、しません」
 それがオズの国の天使さんだというのです。
「ですから」
「それで、なのですか」
「私達は彼は避けているだけでした、ですが」
「退位して今の王様になって」 
 それで、とです。恵梨香も言います。
「平和になって」
「ノーム達とも普通にお付き合いが出来る様になりました」
「じゃあ宝石も」
「はい、金や銀もラゲドー王になる前の様に」
 その時の様にというのです。
「楽しくお話をして金銀や宝石を貰える様になりました」
「そうだったのですね」
「ですからこうしてです」
「博物館にも」
「宝石があります」 
 この様にというのです。
「それも沢山」
「色々な宝石が」
 ナターシャもその宝石達を見ています。
「あるんですね」
「そうで」
 こうお話するのでした、そして。 
 天使さんは一行をその博物館を案内してからです、遂にです。
 一行を天使騎士団長のお部屋に案内しました、そこは眩いばかりに輝いていました。
 柱も壁も床も黄金に輝いています、鏡の様に磨かれた大理石に金が沢山飾られていてそれで輝いているのです。
 天井には天使達がお空に舞う絵が描かれていてです、そのお部屋の奥にです。
 六枚の翼を持った緋色の法衣を着た奇麗な人がいました。髪はブロンドで腰のところまであって虹色に輝く目があります。
 お肌は雲の様に白くてです、お顔はまるで彫刻の女神の様に整っています。その人が黄金の玉座に座っています。
 その人にです、天使さん達が挨拶をしてです。
 そのうえでその人もです、高い女の人を思わせる声で一行に言ってきました。
「ようこそ、天使の城に」
「あれっ、貴方は」 
 そのお声を聞いてです、ポリクロームは言いました。
「男の人なのね」
「そうです」
 その通りとです、その人は答えました。
「僕は天使騎士団長を務めている熾天使です」
「オズの国の天使さん達の中で一番偉い人なのね」
「そうです」
 その通りだというのです。
「団長を務めさせてもらっています」
「そうなのね、やっぱり」
「そうです、そして何故私が男だとわかったのですか?」
「だって天使の人達は皆男の人だし」
 それにというのです。
「貴方の声も男の人のものだから」
「えっ、どう聞いても」
 ポリクロームの今の言葉にです、ジョージは驚いて言いました。
「この人の声は」
「女の人の声に聞こえるのね」
「そうなんですけれど」
「いえ、僕の声はです」
 団長さんからジョージに言ってきました。
「男のものです」
「とてもそうは」
「この声はカウンターテノールなのです」
「カウンターテノール?」
「男の人の声で高いものをテノールといいますが」
 その声からです、団長さんは説明しました。
「それよりもさらに高い、裏返して歌う声をです」
「そうした声をいうんですね」
「そうです」
 それがカウンターテノールだというのです。
「そうなっています」
「そうなんですね」
「はい、ただ僕は声を裏返していなくても」
「そのお声なんですね」
「そうなのです」
「それでそのお声ですか」
「はい、ポリクロームさんはおわかりですね」 
 こうポリクロームにも言うのでした。
「それは何よりです」
「あれっ、私の名前は」
「はい、虹の精霊さんのお一人ですね」
「ご存知なのね」
「オズの国のお空の精霊さん達のことは全て知っています」
 こうポリクロームにも答えます。
「既に」
「そうなのね」
「そうです、それでここにいられた理由は」
「会いに来たの」
「私達にですか」
「ええ、近くを通ったから」
 こう正直に答えるポリクロームでした。
「お邪魔したの」
「そうですか、何の御用かと思いましたが」
「駄目だったかしら」
「いえ、お客様は大歓迎です」
 団長さんはポリクロームににこりと笑って答えました。
「どなたでも」
「そう、よかったわ」
「そして皆さんは何故お空におられるのでしょうか」
 このこともです、団長さんは尋ねました。
「一体」
「最初は私に会いに来てくれたの」
 またポリクロームが答えました。
「お空に」
「あの飛行船で」
「そうなの、それでその時に雷の精霊さん達の雲で雷が止まらないから行ってみて」
「どなたかが雷を制御する雷玉を落とされたと」
「それでその雷玉を探しているの」
「そうした事情でしたか」
「そうなの」
 こう団長さんにお話するのでした。
「それで私達は今お空を旅しているの」
「そうですか、事情はわかりました」
「悪いことはしていないわよ」
「そのことは承知しています」 
 悪いことをしていないことはとです、団長さんも答えます。
「僕も、しかし雷玉は」
「飛行船に魔法のもの引き寄せる避雷針を付けているわ」
 またポリクロームがだん長さんにお話します。
「だからお空を飛んでいればね」
「そのうちに見付かると」
「そうなの」
「そのこともわかりました、ただ」
「ただ?」
「そのやり方ですとどうしても時間がかかりますね」
 団長さんは考えるお顔で述べました。
「そこが問題ですね」
「旅を楽しんでるから」
「いいのですね」
「ええ、時間がかかることはね」
「ならいいのですが」
 ポリクローム達がそう言うのならです。
「皆さんがそう思われているのなら」
「そうなのね」
「はい、それにしてもよくここまで来られました」
 あらためてこう言った団長さんでした。
「お空のこのお城まで」
「昔はとてもね」
 ドロシーがここでこう言います。
「私達お空のこんな高くまで来られなかったわ」
「今はオズの国にも飛行船や飛行機があるので」
「ここまで来られる様になったわ」
「そうですね」
「ここまで来ることも」
 ドロシーにしてもです。
「想像もしていなかったわ」
「かつてはですね」
「私がオズの国に住む様になってからね」
 とてもというのです。
「考えていなかったわ」
「しかし今は」
「文明が進んで」
 オズの国のそれがです。
「こうした風に行き来も出来る様になったわ」
「その通りですね」
「これからもお空の旅をしたいわ」
「その時は、ですね」
「またここに来てもいいのね」
「何時でも。この城は奇麗なのですが」 
 ここで、です。団長さんは少し寂しそうにお話しました。
「地上に降りるのも一苦労で」
「高い場所にあるから」
「私達は地上には滅多に降りません」
 もっと言うと降りにくいのです、それもとても。
「ですから」
「それで、なのね」
「はい、地上の方が来られるのなら」
「嬉しいのね」
「この城をご堪能下さい」
 是非にという言葉でした。
「食べるものはありませんが」
「ええ、とても奇麗なお城だから」
「外観も内装もお楽しみ下さい」
「それじゃあね」
 そうさせてもらうとです、ドロシーは団長さんに笑顔で応えてでした。この日はお城に一泊させてもらうことになりました。
 皆は天使さん達に案内してもらってお城の中を見て回りました。勿論外もです。
 中も外もとても奇麗で、です。芸術品も宝石も金銀もです。
 どれも奇麗です、お城の塔と塔をつなげている橋を渡ったり塔や天主にも登りました。島の端から下を見てです。
 島の下の中まで、お城の中を進んで、です。
 そこからも下を見たりしました。島全体を見回って。
 そしてです、ジョージが言いました。
「こんなに不思議の国にいるって思ったことは」
「そうそうないわね」
「はい、オズの国の中でも」 
 特にとです、ポリクロームにも答えます。
「そう思えます」
「そうなのね」
「お空に浮かぶ島があって」
「お城もあって」
「こうしてその中を見て回れるなんて」
「夢みたい?」
「本当に不思議です」
 そうした気持ちだというのです。
「信じられないです」
「けれどこれがね」
「オズの国ですね」
「お伽の国なの」
「不思議なことが起こる」
「そうした国なの」
 まさにというのです。
「だから」
「それで、ですね」
「驚くことはないわ」
 このお城にいてもというのです。
「別にね」
「そうですか」
「こうした国って思うことよ」
「そういうことですね、じゃあ今日はですね」
「ここでお休みね、御飯は?」
「さっきドロシーさんが持って来たテーブル掛けから出した食べました」 
 ジョージはポリクロームに答えました。
「サンドイッチを」
「それを食べたのね」
「凄く美味しかったです」
「じゃあ後はお風呂に入って」
「このお城お風呂もあるんですか」
「さっき天使さん達から勧められたわ」
 ポリクロームがというのです。
「どうかってね」
「そうですか、このお城にもお風呂あるんですね」
「どう?入る?」
「そうですね、この旅はいつもお風呂に入っていますけれど」
 飛行船の中で、です。
「それなら」
「ここでも?」
「天使さんから勧められたら」
 その時はというのです。
「ご行為に甘えようかなと」
「そうするのね」
「そう考えています」
「じゃあ天使さんからお声がかかると思うから」
 お風呂はどうかと、です。
「その時はね」
「入らせてもらいます」
「そういうことでね」
 こうポリクロームとお話してでした、実際にです。
 そこで一人の天使さんが来てジョージにこう言ってきました。
「お風呂は如何でしょうか」
「入っていいんですか」
「はい、どうぞ」
 笑顔での返事でした。
「何時でも入られます」
「それでお風呂の場所は」
「こちらです。先程ポリクロームさんにもお声をかけましたが」
「私はドロシー達と一緒に入るわ」
「だからですね」
「今はいいわ」
 こう天使さんに答えるのでした。
「そうさせてもらうわ」
「わかりました」
「あの、それで」
 ジョージはその天使さんに尋ねました。
「天使さんは皆さん男の人ですね」
「そうですが」
「それでしたら」
 首を傾げさせての質問でした。
「女の人の為のお風呂場は」
「ありません」
 この返事ははっきりしていました」
「そのことは。ですが」
「それでもですか」
「このお城にはお風呂場が幾つかありまして」
「そのうちの一つをですか」
「はい、ポリクロームさんに用意してあります」
 旅の女の子達にというのです。
「そうさせて頂きます」
「そうしてもらえるんですか」
「はい、ですから」
 だからと答える天使さんでした。
「お気遣いなく」
「わかりました」
 ジョージもここまで聞いて頷きました、そして。
 ジョージはお風呂場に案内してもらいました、そこはお城にあるお風呂場の一つですがそこに入るとです。
 浴槽はプールみたいに大きくて周りは柱で囲まれています、ギリシアの神殿の柱そっくりの柱達がです。
 その柱も床も奇麗な石です、鏡みたいな。
 そしてその中にです。魔法使いと神宝にカルロスがいました。
 魔法使いはそのプールみたいな浴槽の中からジョージに言ってきました。
「やあ、待っていたよ」
「皆もう」
「うん、先に案内してもらっていてね」
 それでというのです。
「ここにいるんだ」
「そうなんですね」
「じゃあお風呂でね」
「奇麗になって」
「そうしてね」
「今日はこのお城で休むんですね」
「お部屋も用意してもらっているよ」
 魔法使いはにこりと笑ってジョージにこのこともお話しました。
「一人一部屋ずつね」
「あれっ、皆で寝ないんですか」
「うん、そうだよ」
 その通りだというのです。
「団長さんがお客さん用のお部屋を用意してくれたんだ」
「そうなんですか」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「お風呂に入った後は」
「そのお部屋で、ですね」
「ゆっくりと休もう」
「それで朝になれば」
「うん、また旅だよ」
 お空の旅の再会だというのです。
「飛行船を探そう」
「わかりました、それじゃあ」
 ジョージは魔法使いの言葉ににこりと頷いてでした、そうしてです。
 皆と一緒にお風呂に入って身体も奇麗にしてです。 
 湯舟の中に入ってお湯も楽しみました、ここで。
 ジョージは神宝とカルロスにです、トト達のことを尋ねました。
「動物の皆はどうしてるのかな」
「うん、臆病ライオンさん達もね」
「皆御飯を食べた後はおもてなししてもらってね」
 二人はそれぞれジョージに答えました。
「それでね」
「今は三匹共ブラッシングもしてもらってるそうだよ」
「ちゃんとシャンプーで洗ってもらってから」
「凄く奇麗になっているそうだよ」
「そうなんだ、ライオンさん達もなんだ」
「そうだよ」
「それで皆も個室で休むんだよ」
 彼等もというのです。
「だからね」
「皆くつろいでいるよ」
「それは何よりだね」
「それで僕達もね」
「お部屋で休むんだよ」
 一人一人というのです。
「だからね」
「今日はゆっくりと一人で寝ようね」
「そういえば」
 ここでこんなことを言ったジョージでした。
「一人で寝るのって暫く振りだね」
「うん、旅行の間はね」
「ずっと皆で寝てるからね」
 二人もこうジョージに返します。
「そう言われるとね」
「その通りだね」
「そうだよね、けれどそれもいいね」
 ジョージはにこりと笑ってこうも言いました。
「じゃあ今日はお部屋で寝ようね」
「そうしようね」
「じゃあ今から」
「お風呂を楽しんで」
「それからね」
「ゆっくり寝よう」
 こうしたことをお話してでした、皆でお風呂を楽しんでなのでした。皆はそれぞれのお部屋に案内してもらいましたが。
 ジョージは立派なお部屋と天幕付きのベッドを見て驚いて言いました。
「あの」
「何か」
「エメラルドの王宮みたいですけれど」
「色は違えどですね」
「凄いですね」
「これが普通なので」
「そうですか、王宮と同じだけ凄いですね」
 こう言うのでした、そしてです。
 ジョージはその天幕付きのベッドで休みました。それから。
 朝起きて朝食の時にでした、そこにです。
 団長さんが来てです、こんなことを言ってきました。
「皆さんが探しておられる雷玉ですが」
「はい、何か」
「何かあったんですか?」
「実は昨日皆さんとのお話の後で鏡を見ました」
 その鏡はといいますと。
「オズの国のお空の全てを見渡せる鏡を」
「あっ、オズマ姫が持っておられる」
「ああした鏡みたいなのですか」
「それがですね」
「このお城にもあるんですね」
「はい、ただオズマ姫の持っておられる鏡はオズの国の全てを見渡せますが」
 ここで団長さんは皆にお話しました。
「僕の持っている鏡はお空だけです」
「そこが違うんですね」
「オズマ姫の持っておられる鏡とは」
「そこがですね」
「はい、違います」
 そこはというのです。
「ただ、探すべきものはおそらの中にあればです」
「見付けることが出来る」
「そうなんですね」
「はい、それでなのですが」
 今日の朝御飯であるお握りを食べている皆へのお話です。お漬けものとお茶も一緒です。
「ここから西に行った雲が連なっている場所の雲の一つにあります」
「じゃあそこに行けばですね」
「雷玉が見付かって」
「それで、ですね」
「雷の精霊さんの長さんにお渡し出来ますね」
「そうなるかと」
 皆にこうもお話するのでした。
「では」
「はい、それじゃあ」
「御飯食べたら行ってきます」
「その雲のところまで」
 皆も笑顔で団長さんに応えてでした、その雲の連なっている場所に向かうことにしました。皆のお空の旅は最後の局面に向かおうとしていました。



このままのんびりと空の旅も良いけれど。
美姫 「団長のお蔭で貴重な手掛かりを得たわね」
だな。後はその場所へと向かえば、ようやく見つける事が出来るか。
美姫 「いよいよ空の旅も終わりが見えてきたわね」
どうなるのか、次回を待っています。
美姫 「待っていますね」
ではでは。



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