『オズのポリクローム』




                 第十幕  オズの国の天使達

 皆は旅を続けています、そうしてお空を見ていますが。
 その中で、です。ジョージはお空を見ながらポリクロームに尋ねました。
「ポリクロームさんは虹の精霊ですよね」
「ええ、そうよ」
「そして僕達は雷の精霊さんの雷玉を探していますけれど」
「それがどうかしたの?」
「精霊さんは他にもおられます?」
 こうポリクロームに尋ねたのです。
「虹の精霊さん、雷の精霊さん以外にも」
「ええ、いるわよ」
 その通りとです、ポリクロームはジョージに答えました。
「お空にもね」
「そうなんですね」
「雨の精霊さん、雪の精霊さん、雲の精霊さんに」
「多いですね」
「色々な精霊さんがおられるわよ」
「そうだったんですね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「それぞれの精霊さんのお家があるの」
「雲にですか」
「オズの国のお空にはね」
「そうなんですね、色々な精霊さんがおられるんですね」
「そうなのよ」
「オズのl国のお空って面白いですね」
 ジョージはポリクロームのお話を聞いてしみじみと思うのでした。
「鳥さん達だけでなく」
「お魚さん達もいてね」
「色々な精霊さん達もいて」
「暮らしているのよ」
「お空って奇麗ですけれど生きものはいないって思っていました」
 雲が届く様な範囲になるとです。
「そう思っていましたけれど」
「実は違うのよ」
「そうなんですね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「オズの国のお空は楽しいわよ」
「皆がいるから」
「そうなの」
「そうですか。面白いお空ですね」
 ジョージはポリクロームのお話を聞いてしみじみと思いました、ですが。
 魔法使いはそのジョージにです、このことをお話しました。
「あっ、普通にこの高さでもお空には生きものが沢山いるよ」
「そうなんですか?」
「うん、外の世界でもね」
「けれどお空には」
「虫が一杯いるんだ」
 この生きもの達がというのです。
「実はね」
「えっ、この高さでもですか」
「そうだよ、流石に高過ぎると寒いし空気が薄いからいないけれど」
 それでもというのです。
「これ位の高さならね」
「いるんですね、虫さん達が」
「そうなんだよ」
「そうですか、何か凄いですね」
「うん、オズの国でもそうでね」
 この国のお空もというのです。
「小さな魚君達や鳥君達が食べてるんだよ」
「成程、この高さでもですか」
「あとこの国のお空にはプランクトンも一杯いるから」
「じゃあプランクトンもですか」
「虫君や魚君達の食べものになっているんだ」
「面白いですね」
 ジョージは魔法使いのお話も聞いてでした、しみじみとして言いました。
「オズの国の空って」
「そうだね、とてもね」
「はい、勉強になります」
「僕達の目には見えなくてもね」
 それでもというのです。
「お空にはそうした生きものが一杯いるんだよ」
「オズの国でも」
「そうなんだ、お空は誰もいない様で」
「沢山の生きものがいるんですね」
「そうだよ」
 まさにというのです。
「そうしたお空なんだよ」
「そうですか、わかりました」
「さて、まだまだ飛ぶよ」
 ここで話題を変えた魔法使いでした。
「雷玉を探しにね」
「結構飛んでますね」
「そうだね、けれどね」
「絶対に見付かりますね」
「このお空にあるからね」
 オズの国のお空にです。
「見付かるよ」
「その時を待っていればいいんですね」
「そうだよ、じゃあお茶を飲もう」
 魔法使いはその時間になったのを見て皆に言いました。
「これからね」
「ええ、じゃあお茶を出すわね」 
 ドロシーが早速魔法使いに応えてでした、テーブル掛けを出しました。
「今日は中国茶がいいかしら」
「中国茶ですか」
 神宝は自分のお国のお茶と聞いてお顔をぱっと明るくさせました。
「いいですね、じゃあ一緒に食べるものは」
「飲茶はどうかしら」
「余計にいいですね」
「ただ、飲茶だと」
 それならとです、ドロシーは少し考えてから言いました。
「お昼の方がいいかしら」
「蒸し餃子や焼売とかですか」
「麺や小龍包もあるわね」
「はい、飲茶ですと」
「それならね」
 そうしたものを食べるとなると、というのです。
「お昼御飯の方がいいかしら」
「じゃあ今はお茶だけにしたらどうかしら」
 ポリクロームはこう提案しました。
「私はお露しか飲まないけれど」
「そうね、今はお茶だけにして」
 ドロシーもポリクロームのその言葉に頷きました。
「それでね」
「ええ、お昼はね」
「飲茶ね」
「そうしましょう」
「わかったわ、それじゃあね」
 是非にというのです。
「お昼は飲茶、あと恵梨香のリクエストがあったから」
「たこ焼きですね」
 恵梨香はたこ焼きと聞いてすぐに反応しました。
「楽しみです」
「それも出しましょう」
「わかりました」
「恵梨香は本当にたこ焼きが好きだね」
 カルロスも唸る位です、少なくとも。
「他の食べものも好きだけれど」
「他には焼きそばとかお好み焼きも好きだけれど」
「たこ焼きが一番なんだね」
「そうしたものの中ではね」
「クレープよりも?」
「ううん、そうね」
 少し考えてからです、恵梨香はカルロスに答えました。
「多分ね」
「そうなんだ、僕はクレープが大好きだけれど」
「私日本のクレープ大好きよ」
 ここでこう言ったのはナターシャでした。
「あの一杯入っていてとても甘い感じがね」
「他の国のクレープは違うのね」
「ロシアのクレープはもっとシンプルよ」
 こう恵梨香にお話します、お国のクレープについて。
「それにバリエーションも少ないわ」
「そうなのね」
「けれどね」
「けれど?」
「本当にたこ焼きはないから」
 この食べものはというのです。
「恵梨香みたいに食べる人もいないから」
「美味しいのに」
「というか日本でも関西だけじゃないかな」 
 ジョージはこう言って首を傾げさせます。
「そんなにたこ焼き食べるのって」
「そうみたいね」
「あとお好み焼きもね」
「それも?」
「関西と広島じゃ違うんだよね」
「ええ、八条学園には広島から来てる子もいて」
 小学生の子には寮がないので親御さんと一緒に引っ越してきた子達です。
「その子達が言うにはね」
「あっちのお好み焼きがお好み焼きだよね」
「食堂や売店にもあるでしょ」
「うん、あっちのお好み焼きもね」
「大阪の、関西のとはまた違うの」
「小麦粉を使っていても」
「そうなのよ」
 こうジョージにお話します。
「お父さん達はあっちのお好み焼きは広島焼きって呼んでるわ」
「お好み焼きじゃなくて」
「そう呼んでるの、あっちの人はこっちのお好み焼き大阪焼きって呼んでるし」
「お互いにお好み焼きはこっちってことかな」
「そう思ってるみたいよ」
「成程ね」
 ここまで聞いてでした、また頷いたジョージでした。
 そうしたお話をしてです、皆でドロシーが出したお茶を飲みました。それは中国茶です。おやつは月餅が出ています。
 その月餅を見ながらです、ポリクロームは言いました。
「夜になったら」
「またお月様が見られますね」
「そうなるわね」
「それも楽しみですよね」
 ジョージもその月餅を見ながらポリクロームに応えます。
「夜になっても」
「そうよね」
「お空は夜も昼も楽しめますね」
「ええ、オズの国はね」
「外の世界もそうですけれど」
 それでもというのです。
「オズの国のお空はまた特別に」
「楽しいのね」
「そう思います」
 ポリクロームに笑顔で答えました。
「僕も」
「じゃあお昼も見て楽しんで」
「夜もそうしましょう」
「このままね」
 ポリクロームはここまでお話してでした、そして。
 自分の前にあつお露を飲んででした、先程の虹のリングのことを皆に言いました。
「あのリングをくぐったから、兄さんの作ってくれた」
「僕達にだね」
「幸運が訪れるね」
「ええ、そうなるわ」
 臆病ライオンと腹ペコタイガーにも応えます。
「私達を虹が守ってくれているわ」
「虹の幸運が」
「それが」
「そう、だから」
 それでというのです。
「楽しんでいればいいわ」
「それならね」
「このまま巡ろう」
「このお空の旅をね」
「終わる時までね」
「そうしましょう、それとね」
 ポリクロームはジョージにもお顔を向けてお話しました。
「さっきジョージが言ったけれど」
「天使ですか?」
「いるわよ、この国にも」
「あっ、そうなんですか」
「そう、お空にね」
「じゃあここで見ることも」
「出来るかも知れないわよ」
 実際にというのです。
「会うことが出来ればね」
「そうですか、じゃあその時が来ることを」
「お願いするのね」
「そうさせてもらいます」
 こうポリクロームに答えるのでした。
「僕も」
「そうするのね」
「はい、じゃあ今は」
「お茶を飲むのね」
「そうさせてもらいます」
 実際にこう答えてです、ジョージはお茶を飲むのでした。そしてお茶を飲みながらでした。
 ジョージは皆と楽しくお話しました、その後でなのでした。
 またお風呂に入ってその後でお昼御飯を食べます。臆病ライオンはそこで出ている海鮮麺を食べるジョージを見て言いました。臆病ライオンはお皿の上の炒飯を食べています。
「その麺も美味しそうだね」
「うん、美味しいよ」
 実際にとです、ジョージはお箸でその海鮮麺を食べつつ答えました。
「とてもね」
「そうだよね、じゃあ僕も後で食べるよ」
「そうするんだね、けれど君は」
「僕は?」
「お箸使えないけれど」
「だからお口で食べるんだよ」
 それを使ってというのです。
「いつも通りね」
「そうするんだ」
「今だってそうしてるよね」
「そうだね、そういえば」
「パスタを食べる時だってそうだよね」
「おうどんやお蕎麦もね」
 日本の麺もなのです。
「そうして食べてるよね」
「そうだね、それだとコシとかは」
「わかるよ」
「あっ、わかるんだ」
「うん、僕達の食べ方でもね」
「噛むし喉越しも味わえるよ」
 腹ペコタイガーも言います。
「ちゃんとね」
「そうなんだね」
「そうだよ、だから僕も後でね」
 腹ペコタイガーはどんどん海老焼売を食べています、そのうえでの言葉です。
「麺を食べるよ」
「海鮮麺かな」
「塩拉麺だよ」
 そちらの麺をというのです。
「食べるよ」
「広東のそれをなんだ」
「そのつもりだよ」
「うん、広東は塩なんだよね」
 神宝も言います、神宝は韮の焼き餅を食べています。
「麺は」
「そうだよね、四川が辛くて」
「北京はお醤油で味が濃いんだ」
「中国は地域によって麺の味が違うね」
「広いからね。だから中華街でもだよね」
「広東の料理が多いけれど」
 それでもとです、ジョージはアメリカの中華街即ちチャイナタウンについて神宝に答えました。
「それでもね」
「色々なお料理があるよね」
「麺もね」
「そうだよね」
「うん、僕のいた天津はね」 
 その街ではといいますと。
「北京に近いから」
「お醤油なんだ」
「そちらの麺が多いよ。あと羊料理とか」
 神宝はジョージにお話します、焼いた中国のお餅、麦をこねて焼いたものを食べながら。中国ではこうしたものもお餅なのです。
「お饅頭とかが多いんだ」
「餃子も水餃子だよね」
「そちらの餃子が多いよ、ただね」
「ただ?」
「飲茶のお店もあるから」
 今食べている様な、です。
「昔はなかったらしいけれど」
「今はあるんだね」
「そうなんだ、僕はこっちの方が好きかな」
「飲茶の方が」
「海の幸が好きだから」
 好きな理由はこうしたものでした。
「だからね」
「それでなんだ」
「うん、天津の料理もl嫌いじゃないけれど」
「広東派なんだ」
「そうなんだ」
「確かに美味しいね」 
 カルロスは海老蒸し餃子を食べています。
「この飲茶」
「そうそう、こうして色々なものを食べられるから」
 だからとです、神宝はカルロスにもお話します。
「いいんだよ」
「そうだよね」
「こうした蒸したものや麺、炒飯が出て」
 海の幸やお野菜をふんだんに使ったです。
「お茶と一緒に飲むのがいいんだよ」
「このお茶を飲むのがいいんだよ」
 魔法使いはお茶を飲みながらにこにことしつつ飲茶を楽しんでいます。
「飲茶はね」
「そう、お茶と合うんですよね」
「そしてお酒ともね」
「そちらともですか」
「私はお酒とも楽しむよ」
 飲茶をというのです。
「大人だからね」
「それじゃあ僕達も」
「アルコールのないお酒はどうかな」
 所謂ノンアルコールです。
「オズの国はそちらの飲みものも一杯あるよ」
「そうなんですね」
「じゃあ出すけれど」 
 ドロシーが早速皆に言ってきました。
「そうした飲みものも」
「そうしてくれるんですか?」
 ナターシャはドロシーの言葉を聞いてすぐに彼女に身体を向けました。
「じゃあウォッカも」
「アルコールはないけれどね」
「味を楽しめるんですね」
「どうかしら」
「ううん、お父さんがいつも楽しく飲んでるんです」
「ロシアで」
「それを見ていますと」
 ついついというのです。
「私もと思いまして」
「じゃあ出すわね」
「はい、そうさせてもらいます」
 是非にと応えてです、そしてでした。 
 ドロシーはテーブル掛けの上にウォッカが入ったコップを出しました。ナターシャはそのコップを受け取って飲んで、です。
 そのうえで、です。こう言うのでした。
「これがウォッカの味なんですね」
「どうだったかしら」
「美味しいです」 
 ドロシーににこりと笑って答えました。
「はじめて飲みましたけれど」
「そう、よかったわね」
「はい、これはいいですね」
 こう言うのでした。
「お父さんは飲んで酔っていますけれど」
「酔えるウォッカもあるわよ」
「アルコールが入ってなくても」
「オズの国だからね」
「アルコールが入っていなくても酔えるお酒もあるんですか」
「だから子供も飲めるの」
 そうしたお酒はというのです。
「よかったらそれも出すけれど」
「それは遠慮します」
 ナターシャはにこりと笑ってドロシーに答えました。
「今はこれで充分です」
「そのウォッカで」
「はい、これで」
「わかったわ。それじゃあね」
「このお酒を飲んで」
 そしてというのです。
「満足です」
「それじゃあね、けれど」
「けれど?」
「夜にワインを飲もうかしら」
 そのアルコールが入っていなくても酔えるワインをです。
「そうしようかしら」
「それもいいかも知れませんね」
「ワインは神様の飲みものっていうから」
「うん、カンサスでもよく言ってたよね」 
 トトがドロシーに応えます。
「牧師さんがね」
「ええ、私も覚えてるわ」 
 その言葉をです。
「だからね」
「夜に飲みたいんだね」
「そう思ったのよ」
 実際にというのです。
「だってお酒はね」
「魔法使いさんもグリンダさんもね」
「夜に飲んでるでしょ」
「うん、確かにね」 
 トトはドロシーのその言葉に頷きました。
「そうしてるよね」
「だからね」
 飲むのならというのです。
「夜よ」
「今じゃなくて」
「その時に飲むわ」 
 こうトトにお話するのでした、そして。
 お昼は皆で飲茶とたこ焼きを楽しみました、たこ焼きも相当な数があって皆はつま楊枝に刺して食べました。
 そのお昼の後で、でした。
 ジョージはお腹一杯になって満足して皆に言いました。
「お腹一杯になったら」
「どうかしたの?」
「はい、気持ちよくなってきましたね」 
 ポリクロームに笑顔でお話しました。
「眠くなってきました」
「そうね、私もお露を一杯飲んだから」
 ポリクロームもというのです。
「眠くなってきたわ」
「それじゃあお昼寝をしますか?」
「いえ、私はいいわ」
「お昼寝しませんか」
「お空を見ているわ」
「そうですか」
「そちらの方が楽しそうだから」
 ジョージに言うのでした。
「だからね」
「そうですか、わかりました」
「ジョージはお昼寝するの?」
「いえ、言われてみれば」
 少し考えるお顔になってです、ジョージはポリクロームに答えました。
「夜に寝ればいいですし」
「お昼は、よね」
「はい、お空を見る方がいいですよね」
「そうよね」
「それじゃあ今は」
「ジョージもなのね」
「お空の景色を見ることにします」
 こうすると決めたのでした。
「今は」
「それじゃあね」
「ただ。やっぱり眠いですね」
 ジョージはお空の景色を見ることに決めてもでした、このことは否定出来ませんでした。身体は正直です。
「コーヒーを飲んだ方がいいかな」
「僕達は寝るよ」
「このままね」
 臆病ライオンと腹ペコタイガーはそうすると言います。
「僕達はよく寝るから」
「そうした生きものだからね」 
 ライオンや虎はネコ科の生きものです、猫はとてもよく寝る生きものですが同じネコ科の生きものもそうなのです。
「ぐっすりと寝て」
「それから景色を楽しむよ」
「僕もそうするよ」
 トトもこうするというのでした。
「犬もよく寝る生きものだからね」
「君達はそうするんだ」
「ジョージ達が起きたいならいいよ」
「邪魔はしないよ」
「けれど僕達は寝るよ」
 見れば三匹共もう寝そべっています、寝る体勢に入っています。
「だからね」
「君達の好きにすればいいよ」
「どうするかは」
「そうだね、お空を見ていたいけれど」
 それでもなのでした。
「眠いから」
「だったらね」 
 それならとです、神宝がジョージに言いました。
「お風呂に入って眠気を覚まそう」
「ここでまたお風呂だね」
「うん、身体も奇麗になるし気持ちいいし」
「そのお風呂も楽しんで」
「それで眠気を覚まそうよ」
「コーヒーはその後で飲もう」 
 カルロスも提案します。
「お風呂に入った後でね」
「その後でもいいね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「まずはね」
「お風呂に入って」
「それでコーヒーも飲んで」
「眠気を覚まして」
「それでいいじゃない」
「そうだね、お風呂に入りながらも景色を見られるし」
 ジョージは二人のアドバイスに頷くのでした。
「いいね」
「うん、じゃあね」
「今からお風呂だね」
「お風呂に入ってね」
「それからコーヒーを飲もう」
「それじゃあね」
 ジョージは頷きました、そして。
 恵梨香もです、ナターシャに言いました。
「私達も入る?」
「そうね、私達も眠くなってきたし」
「お風呂に入ってね」
「眠気を覚ましてお風呂自体も楽しんで」
「それからね」
「コーヒーを飲んでなのね」
 お空を見ることを楽しもうというのです。
「そうすればいいわね」
「うん、それじゃあね」
「わかったわ、じゃあお風呂に入りましょう」
「私も入るわ」
 ドロシーも言ってきました。
「私も眠くなってきたから」
「あっ、ドロシーさんもですか」
「一緒に」
「ええ、私も今はお昼寝はしたくないから」
 それよりもお空を見たいというのです。
「だからね」
「わかりました、それじゃあ」
「一緒に入りましょう」
「ううん、私は眠くないしお風呂は今はいいし」
 魔法使いはといいますと。
「ポリクロームと一緒にいるよ」
「じゃあ一緒にお空を見ましょう」
「そうしよう、ただ私はダンスは苦手だからね」
 ポリクロームはいつも踊っていてもです。
「見ているだけでいいかな」
「ええ、一緒ならいいわ」
「それじゃあね」 
 こうお話してでした、皆はそれぞれでした。
 お風呂に入ったり寝たり最初からお空を見てでした、お昼の時間を楽しみました。ジョージ達がお風呂から出てです。
 そしてコーヒーを飲みながらお空の景色を楽しんでいるとです。
 不意にです、飛行船の前にです。
 とても大きな雲が出て来ました、ポリクロームはその雲、もくもくとした入道雲を見て皆に笑顔で言いました。
「あの雲の中にね」
「何かあるんですか?」
「お城があるの」
 ジョージにも笑顔でお話します。
「とても大きなお城がね」
「雲の中にですか」
「そう、島があって」
 そしてというのです。
「その上にお城があるの」
「天空の城ですか」
「そうよ」
 まさにその通りという返事でした。
「それがあるの」
「うわ、凄いですね」
「それでね」
 さらにお話するポリクロームでした。
「そこに天使の人達がいるの」
「その天空のお城に」
「オズの国の天使達がね」
「そうなんですか」
「行ってみる?」
「はい」 
 ジョージは目を輝かせてポリクロームに答えました。
「是非」
「そう、それじゃあね」
「うん、行こう」
 魔法使いもポリクロームに答えました。
「今からね」
「それじゃあ」
 こうしてです、飛行船はその雲の中に入りました。雲の中を飛んでいるとです。
 すぐにでした、その雲を抜けてです。飛行船の前にとても大きな島が見えました。
 お空に浮かぶその島の下は円錐形の白い岩になっていてです、上はお盆みたいで緑の草や木々が広がっています。
 その中にとても大きなお城があります。白い岩のお城は幾つも塔があって中心には一際大きな天主があります。塔と塔はアーチでつながっていて。
 建物が幾つも集められて築かれています、建物には沢山の窓が奇麗に並べられています。
 そのお城を見てです、恵梨香はうっとりとして言いました。
「まるでね」
「まるで?」
「ええ、アニメのお城みたい」
 こう皆に言うのでした。
「お空の中にこんなお城があるなんて」
「オズの国は不思議の国よ」 
 ドロシーはここでもこう言うのでした。
「だからね」
「こうしたお城もですか」
「あるのよ、ただ私もね」
 ドロシーは恵梨香に首を傾げさせつつ言いました。
「このお城があったことは知らなかったわ」
「そうだったんですか」
「ええ、天空のお城ね」
「まさにそれですよね」
「このお城に天使さん達がいるのね」
「そうですよね」
「まずは島の傍に停めて」
 飛行船をというのだ。
「それからよ」
「それからですね」
「そう、そしてね」
 そうしてというのです。
「お城に入ってみましょう」
「先に挨拶を出来たらいいけれど」
 ポリクロームはこうも言いました。
「どうかしら」
「そうね、天使さんならね」
 ドロシーはポリクロームに応えて言いました。
「お空に出ても」
「飛べるから」
「背中の翼でね」
「だからこの辺りに入ると」
「来てくれるかしら」
「来てくれたら」
 その時にというのです。
「挨拶しましょう」
「そうね、それじゃあね」
 こうしたお話をしてでした、皆はお城だけでなく飛行船の周りを見回して天使さん達がいるかどうか探しました。すると。
 飛行船の方にです、何人かです。
 白い身体が完全に隠れる服を着てです。眩いばかりの金髪と透き通る様な白いお肌を持っていてです。背中には純白の一対の二枚の翼を持った人達が来てでした。ジャスチャーで色々と言ってきたのでした。
 その手の動きを見てです、ジョージは目を瞬かせて言いました。
「手言葉?」
「うん、私はわかるよ」
 魔法使いがジョージに答えました。
「そして私も出来るからね」
「じゃあやり取り出来るんですね」
「うん、ここは任せてくれるかな」
「お願いします」
 ジョージもこう答えてでした、そしてです。
 ここは魔法使いの出番となりました、魔法使いは天使さん達とジェスチャーでやり取りをしながら皆に言います。
「どうしてここに来たのかってね」
「天使さん達はですね」
「尋ねてきてるんですね」
「うん、そしてね」
 魔法使いは皆に説明します。
「これからどうしたいのか」
「天使さん達はですか」
「僕達に聞いてきているんですか」
「そうなんですね」
「そうだよ、私はちゃんと説明してるから」
 そのジェスチャーでというのです。
「私達のこと、私達の旅の目的をね」
「それでここに来た理由も」
「それもですね」
「うん、天使さん達に会いに来たってね」
 そしてお城にお邪魔したいということもです。
「伝えているよ」
「それでお返事は」
「天使さん達のお返事は」
「何て言ってきているんですか?」
「それで」
「どうぞって言ってきてるよ」
 これが天使さん達のお返事だというのです。
「お城に来ていいってね」
「じゃあ今から」
「お城の中に入っていいんですね」
「それで天使さん達とお話していいんですね」
「そうなんですね」
「そうだよ、だからね」
 それでというのです。
「天使さん達の誘導を受けてお城に入ろう」
「わかりました」
「じゃあこれから」
「お城の中に入って」
「天使さん達とお話をするんですね」
「とてもいい人達よ」
 ポリクロームがこのことを保障します。
「私達も何度かお会いしたことがあるけれど」
「そうですか、いい人達なんですね」
「天使の人達は」
「そうなんですね」
「実際に」
「だから安心してお話してね」
 怖がることも警戒することもないというのです。
「じゃあ行きましょう」
「わかりました」
 五人はポリクロームの言葉にも笑顔で応えました、そしてでした。
 飛行船は実際に天使さん達の誘導を受けて島の端丁渡波止場になっているところに来てそこに停泊しました。
 そして用意されていた桟橋を渡ってです。
 島に降りるとです、天使さん達が皆に笑顔で言ってきました。
「ようこそ天空の城に」
「よく来られました」
「ポリクローム嬢もご一緒とは」
「歓待させて頂きます」
「旅の目的は全てお話しましたが」
 魔法使いは一行を代表して帽子を取って恭しく一礼してから述べました。
「迎え入れて頂き有り難うございます」
「よき方ならです」
『私達も笑顔で迎えさせて頂きます」
「かつての靴職人ウグの様な心の持ち主でなければ」
「そうさせて頂きます」
「そうですか、それは何よりです」
 笑顔で応える魔法使いでした。
「ではこれより」
「お城の中を案内させて頂きます」
「そして私達の団長にもです」
「お会いして頂きます」
「団長さん?」
 その呼び名を聞いてです、ジョージは目を瞬かせました。
「っていいますと」
「私達は騎士団なのです」
「オズの国の聖天使騎士団です」
「戦うことはありませんがオズの国の空で困っている皆を助ける」
「それが務めなのです」
「だから騎士団ですか」
「オズの国が出来た頃からいます」
 このオズの国の空にというのです。
「その時から」
「ううん、そうなんですか」
「はい、そしてその私達の長がです」
「聖天使騎士団の団長なのです」
「我等を率いておられる」
「とても素晴らしい方です」
「ううん、私はオズの国の主だったこともあるしこの国に来て長いけれど」
 ここで魔法使いは言うのでした。
「このお城のことも天使さん達のことも知らなかったよ」
「オズマ姫はご存知ですが」
「オズの国のあの方は」
「あれ、オズマは私達に隠しごとはしないけれど」
 ドロシーが天使さん達の言葉に首を傾げさせました。
「どうして私達に教えてくれなかったのかしら」
「多分話し忘れていたんじゃないかな」
 魔法使いはこうドロシーに答えました。
「オズマがね」
「だからなのかしら」
「オズマもそうしたことがあるよ」
「私達に言い忘れることが」
「オズマも人だからね」
 それ故にというのです。
「人は間違えることもあるし」
「忘れることもあるわね」
「そう、だからね」
「オズマも天使さん達のことを私達に言い忘れていたのね」
「そうだと思うよ」
「そういえばお空をここまで旅をしたことは」
 ここでこうも言ったドロシーでした。
「なかったし」
「そもそもここに来ることだってね」
「最初考えていなかったわね」
「予定に入っていなかったね」
「だからなのね」
「オズマもお話しなかったのかもね」
「お空に行くことも少なかったし」
 今思えばです。
「だからなのね」
「オズマに悪気がないのは間違いないしね」
 このことは絶対にです、オズマはそうした意地悪や隠しごとをする娘ではありません。このことは確かです。
「だからこのことはいいとして」
「それじゃあ今は」
「うん、ここでね」
「団長さんにもお会いすればいいわね」
「そして中も見せてもらおう」
「お城の中も」
「ここを見てもね」
 波止場とその周りをです。
「緑の木々に草木に」
「お花も多いわね」
 色々な色のお花が沢山咲いています。
「それにお城も」
「うん、奇麗な石から造っていて」
「煉瓦もね」
「とても奇麗だよ」 
 白いその煉瓦達がです。
「そしてそこに苔があったり蔦があったり」
「それもいいわね」
「いや、まさにお空に浮かぶ」
「不思議のお城ね」
「そう言われますと気恥ずかしいです」
 天使さんのお一人が実際にこう言いました。
「褒められると」
「ただ事実を言ってるだけだけれど」
「それでもなのね」
「この島は私達の家です」
 天使さん達の、というのです。
「そのお家をあまり褒められますと」
「ううん、確かにね」
「私達も恥ずかしいわ」
「王宮のことを言われると」
「そうよね」
「それは私達も同じなので」
 だからというのです。
「あまり、です」
「わかったよ、じゃあね」
「これで止めるわ」
「その様にお願いします」
 こう言うのでした、そしてです。 
 実際にです、二人はお城のことを言うのを止めました。しかし。
 お城は確かに奇麗です、草木の間には兎や栗鼠、小鳥達もいます。彼等は天使さん達と楽しく戯れてもいます。
 苔や蔦が趣を醸し出している壁にです、屋根は先端が尖っていて十字架もあります。高く広くとても大きいです。
 そのお城を見ている皆にです、天使さん達はあらためて声をかけました。
「では」
「これから中に案内させてもらいます」
「こちらにどうぞ」
「はい、じゃあ」
「お願いします」
 五人が応えてでした、そうして。
 皆は天使さん達に案内されて城の中に向かうのでした。そこには臆病ライオンと腹ペコタイガー、それにトトもいます。
「いや、ここはね」
「天使さん達だけじゃなくて」
「他にも一杯いるね」
「色々な生きもの達が」
「そうね」
 ポリクロームは案内されて先を進みつつくるくると踊っています。
「ここはね」
「うん、栗鼠君や兎君に」
「小鳥さん達もいて」
「生きものも豊かだね」
「見て蝶々もいるわ」
 丁渡ポリクロームの傍にモンシロチョウが飛んできました。
「ここにね」
「奇麗だね」
「お花に誘われてだね」
「来たんだね」
「ハナアブもいて」
 この虫もいます、見れば花に集まる虫達が沢山います。
「生きものも多いわね」
「そのことがね」
「いいよね」
「このお空に浮かぶ島でもね」
「生きものが一杯いるんだね」
「そうです」
 天使さんのうちの一人がポリクローム達に答えました。
「あと水も豊富ですよ」
「あっ、確かに」
 トトはここで丁渡横を見ました、そこにです。
 噴水がありました、噴水からは奇麗なお水が一杯出ています。イタリアにあるトレビの泉を思い出させる様な奇麗な泉です。
「奇麗な噴水だね」
「はい、ああした泉もです」
「この島には一杯あるんだ」
「お水は幾らでも湧き出てきます」
「そうした島なんだ」
「中にお水がどれだけでも出る魔法の石がありまして」
 オズの国だからこそある石の一つです。
「そこからです」
「お水が一杯出て」
「それで私達もお水を好きなだけ使えて」
 それでとです、トトにお話するのでした。
「草花も生きもの達も育ちます」
「そうなんだね」
「はい、そうです」
 そうした島だというのです。
「l私達はお水だけで暮らしていけますが」
「精霊だからね」
「はい、私達も精霊です」
 今度はポリクロームに答えるのでした。
「このオズの国の」
「精霊はお水、お露だけで生きていけるから」
「ですから」
 それで、というのです。
「お水さえあれば」
「問題はないわね」
「そうなのです」
 だからだというのです。
「この島で暮らしていけます」
「そうね、あとこのお城は」
「何でしょうか」
「どうして築かれたのかしら」
「はい、それはです」
 すぐにです、天使さんはポリクロームに答えました。
「オズの国が出来た時に私達が築きました」
「貴方達自身が」
「そうしました」
「そうなの、これだけのお城を築けるなんて」
「私達の技術で」
「あっ、築城技術ね」
「出来ました、お城を造るのは大変でしたが」
 それでもというのです。
「こうして今はです」
「これだけ立派なお城が出来て」
「私達はその中で暮らしています」
「貴方達のお家なのね」
「その通りです」
「ううん、とても奇麗で」
 それで、とです。ポリクロームは言うのでした。
「幾ら見ても飽きないわ」
「そう言って頂いて何よりです」
「では今からなのね」
「はい、お城の中に案内させて頂きます」 
 是非にというのです。
「そして我等の団長に会って頂きます」
「それじゃあね」
「どうぞ」
 ここで皆お城の中に入りました、大きくて壮重な趣の樫の木の扉です。ゆっくりと開かれたその扉をくぐってお城の中に入るのでした。



空の上の更に空高く。
美姫 「今度は天空城まで来たわね」
みたいだな。しかも、住人は天使。
美姫 「本当に不思議な国よね」
だな。天使に案内されて城の中へか。
美姫 「次回はお城の中からね」
一体、城の中はどうなっているのか。
美姫 「次回も待っていますね」
ではでは。



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