『オズのポリクローム』




                 第九幕  大きな鳥

 お昼の焼きそばとたこ焼き、それにコーラやサイダーを楽しんでからでした。神宝はお空を見ながら皆にお話しました。
「鵬って鳥は知ってるかな」
「あっ、聞いたことがあるよ」
 すぐにです、ジョージが応えました。
「チャイナタウンのお年寄りからね」
「そうなんだ」
「うん、中国にいるっていう物凄く大きな鳥だよね」
「そうなんだ、その大きさはね」
 とにかくというのです。
「物凄くて。下にいたら急にお空が暗くなる位にね」
「姿が大きいから日光を遮って」
「そう言われてるんだ」
「具体的にはどれ位の大きさかな」
 カルロスは神宝にその鵬の具体的な大きさを尋ねました。
「一体」
「ううん、九千里とかいうけれど」
「九千里っていうとどれ位?」
「昔の中国の一里が四百メートルだから」
「ええと、それだと」
「何か凄い大きさだよね」
「うん、そんな大きい鳥は有り得ないよ」
 カルロスはその大きさを聞いて具体的に想像出来ないのでこう言いました。
「どれだけ大きいのかな」
「そこまで大きいと」
 それこそとです、ジョージも言います。
「オズの国より大きいんじゃないかな」
「そうだよね」
「地球より大きいのかな」
「幾ら何でもそこまで大きくないよ」
 神宝も地球よりはというのです、
「幾ら何でも」
「そうだよね、流石に」
「うん、けれどね」
「それでもなんだね」
「物凄く大きい鳥なんだ」
「その鵬は」
「そうした鳥もいるけれど」 
 神宝は考えつつお話します。
「オズの国にはいるかな」
「その鵬も」
「オズの国には四霊獣がいるけれど」
 青龍、白虎、朱雀、玄武がです。
「この生きものはどうかな」
「ああ、鵬ならね」
 ドロシーが神宝に答えました。
「いるわよ」
「いるんですか」
「ええ、黒くてとても大きい鳥よね」
「オズの国にもいるんですか」
「いるわ、ただ九千里も大きいかというと」
 それは、といいますと。
「流石にね」
「そこまではですか」
「いかないわ」
 流石にというのです。
「幾ら何でもね」
「そうですか」
「ええ、九千里とかはね」
 それこそというのです。
「ないわよ」
「そうなんですね」
「具体的な大きさはね」
 ドロシーは神宝にオズの国にいる鵬の大きさについてお話しました。
「五十メートル位かしら」
「朱雀さん位ですか」
「朱雀さんよりかは小さいかもね」
 そこまで大きくはないというのです。
「朱雀さんがオズの国で一番大きな鳥さんよ」
「そうなんですね」
「ええ、だから鵬さんもね」
「その朱雀さんよりはですか」
「小さいわ。それでいつもお空を飛んでるの」
 そうしているというのです。
「巣で休む以外は」
「じゃあ今も」
「飛んでると思うわ、このお空をね」
 オズの国のこのお空をというのです。
「だからひょっとしたら会うかも知れないわよ」
「見たいですね」
 ジョージは期待している笑顔です。
「是非」
「その鵬さんを」
「はい、オズの国のお空はお魚も飛んでいて」
「そうした鳥さんも飛んでいるのよ」
「それならです」
「鵬さんもよね」
「見たいです」
 是非にというのです。
「その鳥さんを」
「そうなのね、じゃあお空を見ていたらね」
「ひょっとしたらですね」
「見られるかも知れないわよ」
「そうですか。じゃあ見ていれば」
「会えるかもね」
 こうジョージに答えたドロシーでした、飛行船はお空の高い場所を飛んでいますが周りには鳥さん達もお魚さん達も一杯飛んでいます。
 そしてです、その中にでした。
 一際大きな、本当に身体は五十メートル羽根を広げたら一キロはあるかも知れないとんでもなく大きな黒い鳥さんが飛んでいました。飛行船の上に。
 その鳥さんを見てです、ナターシャが言いました。
「あれが鵬さんなのね」
「そうよ」
 ドロシーがナターシャに答えました。
「あの鳥さんがね」
「そうなんですね」
「あの鳥さんは私結構見るわ」
 ポリクロームも言います。
「凄く大きいわよね」
「そうですよね」
 恵梨香はポリクロームのその言葉に応えました。
「驚く位。ただ」
「ただ?」
「鵬さんは何を食べられてるんでしょうか」
「お魚だよ」
 神宝が恵梨香に答えました。
「いつもお魚を食べてるんだ」
「そうなのね」
「身体が大きいから相当に食べるらしいよ」
 このこともドロシーにお話するのでした。
「お魚にしても」
「そうなのね」
「うん、それにしても鵬までいるなんて」
「驚いたかしら」
「はい、オズの国は凄いですね」
「昔はいなかったのよ」
 かつてのオズの国はというのです。
「鵬もね」
「そうなんですね」
「それが今はいてね」
「ああして飛んでるんですね」
「オズの国は今は色々な生きものがいる国なの」
 その時代のアメリカが反映される国だからです。アメリカには中国系の人もいるので中国の伝説の生きものもいるのです。
「そうなのよ、あとね」
「あと?」
「他にも沢山中国の伝説の生きものがいるから」
「四霊獣や鵬さん以外にも」
「いるわよ。鳳凰だってね」
「鳳凰。フェニックスですね」
 鳳凰と聞いてです、ジョージは言いました。
「あの鳥もいるんですね」
「そうよ、あの鳥もいるから」
「是非見たいですね」
「そうよね、フェニックスを見られたらいいことがあるのよ」
「それもとてもいいことがですよね」
「あの鳥さんは人々に幸福をもたらしてくれる鳥だから」
 だからだというのです。
「見たらそれだけでね」
「いいことが起こるんですね」
「幸福がもたらされてね」
 そのうえでというのです。
「だから凄くいいのよ」
「そうですね、あと青い鳥もですね」
「あの鳥さんもオズの国にいるから」
「見られたらですね」
「いいことがあるわよ」
 こちらの鳥さんもというのです。
「とてもね」
「そうですか、じゃあ見られた時は」
「その幸運を楽しんでね」
「そうさせてもらいます」
 是非にとです、笑顔で答えたジョージでした。そうして皆で鵬を見ていますと。
 不意にです、腹ペコタイガーがこんなことを言いました。
「あの鳥さんを食べようとは思わないけれど」
「どうかしたの?」 
 臆病ライオンが親友に応えます。
「鵬さんを食べたいとか言うと思ってたけれど」
「いや、それはないから」
「大き過ぎて」
「そう、だからね」
 それはないというのです。
「ただね、鵬さんが食べる量は」
「ああ、そのことを言うんだ」
「うん、さっき神宝が言ってたけれど」
「相当に多いよね」
「そうだよね」
「どれだけ食べるのかな」
「鯨を何匹もとか?」 
 臆病ライオンはこんなことを言いました。
「やっぱり」
「鯨をなの」
「うん、あの大きさだとね」 
 その羽根を広げた姿を見つつです、臆病ライオンは腹ペコタイガーにお話しました。
「それ位はね」
「食べるかな」
「君も鯨一頭とか無理だよね」
「そんなの一度にはとても食べられないよ」
 それこそと答えた腹ペコタイガーでした。
「僕でもね」
「そうだよね、けれどね」
「あの鳥さんなら」
「それ位はね」
 それこそというのです。
「何頭でもだと思うよ」
「それは凄いね」
「身体が大きいからね」
「それだけ食べるんだね」
「そうだと思うよ。そういえば鯨も」 
 お空を見ればです、鯨も飛んでいます。二十メートル位はあるザトウクジラもお空を普通に飛んでいます。
「いるね」
「そうだね」
「君は鯨は食べたことある?」
「ないよ」 
 腹ペコタイガーは臆病ライオンに答えました。
「お魚は食べるけれどね」
「鯨はだよね」
「うん、鯨はないよ」
 食べたことがないというのです。
「日本では食べるらしいけれどね」
「鯨?たまにあるけれど」
 その日本人の恵梨香が腹ペコタイガーに答えます。
「私たこ焼きの方が好きよ」
「そこでまたたこ焼きなんだ」
「だってたこ焼きの方が美味しいから」
 恵梨香にしてみればです。
「それにいつも食べられるでしょ」
「日本でなら」
「そう、だからね」
「恵梨香はたこ焼きの方がいいんだ」
「ずっとね」 
 そうだというのです。
「好きよ」
「ううん、まあ恵梨香も鯨は滅多に食べないんだ」
「高いしね。お家でも滅多に買わないから」
「だからなんだ」
「私も滅多に食べないの」
 そうだというのです。
「それに食べてもね」
「たこ焼きの方がだね」
「美味しいと思うわ」
「というか恵梨香ってたこ焼き好き過ぎだね」
「鯨じゃなくて、だから」
「うん、まあ鯨はね」
 それこそというのです。
「僕は食べたことはないよ」
「食べてみようとは思わないの?」
「あまりね」
 実際にとです、腹ペコタイガーは恵梨香に答えました。
「鯨より牛肉の方がいいよ」
「そうなのね」
「うん、まあとにかく」
「鵬さんは鯨も食べるかもね」
「そうだろうね、あれだけ大きいと」
 ジョージも言うのでした。
「普通に食べるかもね」
「そうだよね、あの大きさだと」
「まあ僕は別に捕鯨がどうとか言わないから」
 思ってもいないというのです。
「気にしないけれどね」
「それとだけれど」 
 トトは鵬さんを見ながらこんなことを言いました。
「あの大きさだと雷玉も飲み込めるよね」
「そうね、お口の中に入ってもね」
 ポリクロームがトトの言葉を聞いてこんなことを言いました。
「鵬さんの方もわからないと思うわ」
「あそこまで大きいとね」
「何が入ったのかもね」
「わからないよね」
「ひょっとしたら」 
 ポリクロームはこんなことも言いました。
「お腹の中に入ったままかしら」
「えっ、若しお腹の中に入っていたら」
 トトはポリクロームの言葉を聞いて驚いた様子になって言いました。
「大変だよ、どうしよう」
「ううん、そういえば飲み込まれていても不思議じゃないね」
 魔法使いも言います。
「雷玉を」
「本当にそうだったらどうするの?」
「少し鵬さんに近付こうか」
「それでお話を聞くの?」
「いや、近付いたらね」
 それでというのです。
「避雷針が反応してね」
「わかるんだ」
「あと鵬さんの中にあってもね」
 その雷玉がというのです。
「避雷針が反応して玉を引き寄せてくれるから」
「手に入れることは出来るんだ」
「そう、鵬さんのお口から出してね」
「そこまで強い引き寄せる力があるんだ」
「魔法の避雷針だよ、だからね」 
 それだけにというのです。
「それも出来るんだ」
「それは凄いね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「まずは近寄ろう」
「今から」
「そうしようね」
 こうしてでした、そのうえで。
 魔法使いは飛行船を鵬さんに近寄せました、するとです。
 避雷針には反応はありませんでした。魔法使いはその避雷針を見て言いました。
「うん、鵬さんの中にはね」
「雷玉はなかったのね」
「そう、なかったよ」 
 それでというのです。
「安心していいよ」
「そうなの」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「雷玉は別の場所にあるよ」
「安心していいよ、ただね」
「ただ?」
「雷玉は見付かっていないよ」 
 このことについても言うのでした。
「残念だけれどね」
「そのことについては」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「探し続けるよ」
「わかったよ、そのことも」
「まあこうして探していけばね」
「見付かるんだね」
「こうしたことは焦らないことだよ」
 魔法使いは落ち着いています、それも至って。
「落ち着いて探していけばね」
「見付かるわね」
「うん、その間はお空の旅を楽しんでいればいいよ」
 魔法使いはポリクロームにも微笑んで答えます。
「このままね」
「わかったわ、じゃあこのまま楽しい旅を続けましょう」
「私達は見付かるのを待つだけだよ」
「それだけのね」
「そうだよ、じゃあ高度を下げようかな」
「待って」 
 魔法使いが飛行船の高度を下げようとしたところで、でした。ここでポリクロームは魔法使いに言いました。
「鵬さんとお話がしたいわ」
「今から」
「いいかしら」
「そうだね、それもいいね」
 魔法使いはポリクロームのその言葉に頷きました、そしてです。 
 飛行船を鵬さんの方に近付けました、そうしてです。
 飛行船が鵬さんのすぐ傍に来るとその姿がよく見えました、外見は鷲や鷹に似ていて色は真っ黒です。
 その黒い羽毛を見てです、神宝は言いました。
「あの羽根が地上に落ちたことがあるらしいよ」
「そうなんだ」
「うん、それでね」 
 ジョージ達に対してお話するのでした。
「その下にあったお家が壊れて羽根の中心の中の空洞は」
「ああ、あの小さい」
「そこを馬に乗った人が走れたらしいいお」
「そんなに大きかったんだ」
「そうした伝説があるんだけれどね」
「この鵬さんはそこまで大きくないね」
「うん、このお話は僕の国が清っていった頃のお話で」
 時代はその時だというのです。
「康熙帝っていう皇帝の頃のお話だよ」
「それ本当かな」
「どうかな、本当にそんな大きな鵬さんがいたとはね」 
 今自分達の傍にいる鵬さんを見ての言葉です。
「ちょっとね」
「想像出来ないよね」
「そんなに大きいと」
 それこそというのです。
「地球より大きいからね」
「だからだよね」
「そう、とてもね」
 それこそというのです。
「信じられないよ」
「そこまで大きいと」
 ここでジョージも言うのでした。
「リバイアサンより大きいよね」
「あっ、聖書に出て来る」
「ゲームでもよく出て来るよね」
「海にいる大きな竜だね」
「あの竜より大きいんじゃ」
 それこそというのです。
「そんな羽根を持っていたら」
「僕もそう思うよ」
 こんなお話を二人でするのでした、そして。
 ここで、です。ポリクロームは鵬さんに飛行船の中から声をかけました。
「いいかしら」
「あれっ、君は確か」
 その声を聞いてでした、鵬さんはポリクロームに顔を向けて応えました。
「虹の精霊の」
「私のことを知ってるの?」
「会ったことはないけれど」
 それでもというのです。
「知ってはいるよ」
「そうなのね」
「それで虹の精霊さんが僕に何の用かな」
「ええ、実は私達雷の精霊さんの雷玉を探していてね」
「それでその船でお空を飛んでるんだ」
「そうなの」
「それで僕を見てかな」
「貴方とお話をしに来たの」
 そうだというのです。
「お姿を見たから」
「そういうことなんだね」
「そうなの、貴方はいつもそうしてお空を飛んでるのね」
「そうだよ、飛びながらね」
 そうしつつとです、鵬さんはポリクロームに答えました。
「お空にいるお魚を食べているんだ」
「そうしているのね」
「それでお腹一杯になったら巣に戻っているんだ」
「成程ね」
「そうなんだ、それにしても雷玉は」
 この玉についてです、鵬さんも言いました。
「あれはね」
「見たの?」
「いや、見ていないよ」 
 鵬さんはポリクロームにこう答えました。
「それに凄く小さいものだよね」
「ええ、貴方から見ればね」
 翼を広げるとそれこそ一キロはありそうな鵬さんからしてみればです。とにかく物凄い大きさの鳥さんです。
「小さいわ」
「そうだよね、小さ過ぎるとね」
 それこそというのです。
「目に入らないよ」
「それでよね」
「うん、ひょっとしたら」
 ここでこうも言った鵬さんでした。
「気付かないうちに飲み込んでいるかもね」
「それはないね」
 こう答えたのは魔法使いでした。
「避雷針に反応がないから」
「ああ、それはないんだ」
「そう、ないよ」 
 こう答えたのでした。
「だから安心していいよ」
「だといいけれどね」
「雷玉は別の場所にあるね」
 このことは間違いないというのです。
「このお空の何処かに」
「僕が飲み込んでいないならいいよ」
 鵬さんも魔法使いの言葉を聞いて安心しました。
「それじゃあね」
「そうだね、それにしても君は本当に大きいね」
 魔法使いもその大きさをまじまじと見て実感しました。
「この飛行船も大きいけれど」
「翼を広げたらね」
 今実際に広げています、その翼の大きさは本当にかなりのものです。
「その船よりも大きいね」
「そうだね」
「もっと大きくなるの?」
 ポリクロームは鵬さんに尋ねました。
「お身体は」
「いや、僕はこれ以上は大きくならないよ」
「そうなの」
「そう、これ以上はね」
 こうポリクロームに答えるのでした。
「大きくならないよ」
「そうなのね」
「僕は神獣で生まれた時からこの大きさだけれど」
 それでもというのです。
「これ以上は大きくならないし小さくならないんだ」
「そうなのね」
「その辺りは四霊獣の人達と同じだよ」
 こうも言ったのでした。
「神獣はそうだよ」
「神獣だから」
「この大きさでね」
 それでというのです。
「ずっと生きるんだ」
「このオズの国で」
「そうなんだ」
「そうなのね、それで神獣だけれど」
 ポリクロームは神獣と聞いて鵬さんにさらに尋ねました。
「貴方と四霊獣さん以外にもいるのかしら」
「オズの国にだね」
「ええ、それはどうなのかしら」
「いるよ、僕達みたいに大きな獣は少ないけれど」
 それでもというのです。
「いるから」
「そうなのね」
「中には凄く面白い姿の神獣もいるから」
「どんなお姿なのかしら」
「それは見たらわかるよ、まあオズの国に結構いるから」
 そうした神獣達もというのです。
「楽しみにしていてね」
「わかったわ、それじゃあね」
「僕はこれから上に行くけれど」
「上に?」
「そう、上にね」
 お空の上の方を見ての言葉です。
「行くから」
「わかったよ、ではこれでお別れだね」
 魔法使いが鵬さんに答えました。
「また会おうね」
「うん、機会があればね」
「それじゃあね」
 別れの挨拶をしてでした、そうしてです。
 鵬さんは上の方に飛んででした、消えていきました。その鵬さんを見送ってでした。ポリクロームは皆に言いました。
「それじゃあね」
「はい、それじゃあ」
「またですね」
「雷玉を探そう」
 こう皆に言うのでした。
「それを続けよう」
「わかりました」
 ジョージは魔法使いの言葉に笑顔で頷きました。
「それじゃあこのままですね」
「お空を飛び続けるよ」
「お空の旅を続けるんですね」
「そういうことだよ」
「わかりました、けれど鵬さんは飲み込んでいませんでしたね」
「うん、だからね」
「僕達の旅はまだ続きますね」
 ジョージがこう言うとです。
「まだ」
「そうだよ、飛んでいれば絶対に見付かるから」
「だから飛ぶんですね」
「待っていればいいよ」
「待つこともお仕事ですね」
「そうだよ」
 こうお話するのでした、そしてです。
 飛行船はさらに飛ぶのでした、その中で。
 ジョージはお空の下の方に虹を見ました、その虹は奇麗なリングになっています。そのリングを見てでした。
 ジョージはです、こう言ったのでした。
「お空では虹はリングなんですよね」
「そうよ、地上ではアーチでね」
 虹の精霊のポリクロームの言葉です。
「お空ではリングなのよ」
「本当はアーチが主ですよね」
「そうなの、けれどね」
「それでもですか」
「地上ではそのリングが全部出せないから」
「アーチになっているんですね」
「そうなの」
 こうジョージにお話するのでした。
「地面に着くから」
「虹が」
「そういうことなの」
「そうですね、けれど虹のリングは」
「綺麗よね」
「はい、アーチもいいですけれど」
 それでもというのです。
「リングも」
「そうよね、あのリングを出したのは二番目のお兄さんよ」
「ポリクロームさんの」
「そうよ」
「そうしたことがおわかりになるんですか」
 ジョージはポリクロームの言葉にふと首を傾げさせて返しました。
「僕にはわからないですけれど」
「誰が作った虹かは」
「はい、そうしたことはわからないですけれど」
「私達にはわかるの」
「虹の精霊さんならですか」
「そう、わかるの」
 そうだというのです。
「見ればね」
「どうしてわかるんですか?」
「私達のそれぞれの虹の作り方があって」
「それが虹に出るんですか」
「それに名前が書いてあるから」
「あれっ、そうですか?」
「私達の言葉でね、私達だけが見える様に」
「ううん、そうなんですね」
 ジョージは先生のお話を聞いて唸る様にして言いました。
「精霊さん達にだけわかるんですね」
「そうなの」
 こうジョージにお話します。
「それで私にはわかったの」
「あの虹を作ったのが誰なのか」
「そうなの、それとね」
「それと?」
「私達は虹の上を歩けるの」
「あっ、そうなんですか」
「それで虹の作り方次第でね」
 それによってというのです。
「皆も虹を渡れるわよ」
「虹のアーチの上をですか」
「そう出来るのよ」
「流石は不思議の国ですね」
 虹の上を渡れると聞いてです、ジョージは目を輝かせて言いました。
「虹をですか」
「そうなのよ」
「何かそれって」
 恵梨香がここで言いました。
「昔あったゲームみたいですね」
「昔あったって?」
「ええ、お父さんが虹を見た時に私にお話してくれたの」
 恵梨香はジョージに答えました。
「昔虹を作ってその上に乗って先に進んだりその虹を踏んで崩して敵をやっつけるゲームがあったって」
「へえ、虹を武器にも使うんだ」
「そうしたゲームがあったの」
「それしたいね」
「今思い出したけれど」
「日本には昔そんなゲームもあったんだね」
「凄く面白かったそうよ」
 こうジョージにお話するのでした、恵梨香も。
「そのゲームは」
「お話を聞いてるだけでそう思うよ」
「他には泡を使って同じ様なことをするゲームもあったらしいし」
「そっちも面白そうだね」
「昔のゲームって面白そうなゲームが多いみたいね」
「ファミコンってあったらしいけれど」
 カルロスもお話に入ってきました。
「それのゲームが面白いかもね」
「そうよね、スーパーファミコンとかね」
「昔のゲームの方が面白いかな」
「今のゲームも面白いけれどね」
「そこのゲームもね」 
 こうしたことをお話するのでした、そのお話を聞いてです。
 ナターシャは腕を組んで考えるお顔になってこう言いました。
「私もそのゲームしてみたくなったわ」
「虹を使うゲームを?」
「泡を使うゲームもね」
 そちらもというのです。
「してみたくなったわ」
「そうなのね」
「ええ、本当に面白そうだから」
 そう思うからこそというのです。
「是非ね」
「いいね、それで何てタイトルのゲームなのかな」
 ジョージは恵梨香にそのゲームのタイトルを尋ねました。
「一体」
「レインボーアイランドっていうそうよ」
「レインボーアイランドだね」
「ええ、泡の方はバブルボブルっていってね」
「どっちも奇麗な名前のタイトルだね」
「他にはフェアリーランドストーリーってタイトルのゲームもあったらしいわ」
 恵梨香はこのタイトルもジョージに紹介しました。
「奇麗なタイトルよね」
「うん、どれもね」
「だから私も一度してみたいと思うけれど」
 それでもとです、恵梨香はここで残念そうなお顔になって言いました。
「昔のゲームでないし。それに」
「それに?」
「お父さんが言うにはどのゲームも凄く難しいらしいのよ」
「そんなに難しいんだ」
「もう無茶苦茶難しいから」
 それでというのです。
「相当に上手な人じゃないとクリア出来なかったそうよ」
「ううん、そうなんだ」
「何でも昔のゲームはどれも難しいらしいのよ」
「そんなに?」
「もう一回や二回してもね」
 それでもというのです。
「すぐにやられる位にね」
「難しいんだ」
「だからお父さんも相当苦労したらしいのよ」
「クリアするまで」
「バブルボブルもフェアリーランドストーリーもね」 
 どちらのゲームというのです。
「相当だったらしいわ」
「奇麗だけれど難しいんだ」
「そうしたゲームだったらしいのよ」
 こうお話するのでした、五人で。
 そしてです、そのお話からポリクロームは言うのでした。
「そうした虹の使い方は出来ないから」
「やっぱりそうですよね」
「そういうのは無理ですよね」
「虹を使って敵を倒すとか」
「そうしたことは」
「こちらの虹だと」
「だって敵がいないから」
 そもそもというのです。
「だからね」
「ですよね、オズの国では怖い生きものがいても」
「そんな敵とかいないから」
「だからですね」
「平和なんですね」
「そうよ、それに私達の虹自体も」
 それもというのです。
「敵を倒したり崩れる様にはなっていないの」
「消えるんですね」
「そうよ」
 まさにとです、ポリクロームはジョージに答えました。
「すうっとね」
「崩れずに」
「次第に見えなくなってね」 
 それで、というのです。
「消えるの」
「そうなるんですね」
「だからね」
「そうしたことはですね」
「ないわよ」
 まさにというのです。
「私達の虹は武器じゃないの」
「奇麗なものですね」
「渡れはするけれど」
 それでもというのです。
「虹じゃないから」
「そのことはわかりました」
「そういうことでね」
「けれど。虹を渡れるのなら」
 ジョージはそのお話にです、目をきらきらとさせて言うのでした。
「是非にです」
「虹を渡りたいのね」
「ずっと虹を見て思っていました」
 それこそというのです。
「虹の上を歩きたいって」
「だからなのね」
「はい、渡れるのなら」
「ええ、じゃあその時になったらね」
「お願いします」
「雲の上は歩けるからね」
 魔法使いも言います。
「虹も歩けたらね」
「じゃあどっちも」
「そう、いけるよ」
「凄いですね、虹も雲も」
 どちらもと言うジョージでした、とても嬉しそうに。
「歩けたらって思ってました」
「そう、誰でもね」
「何度もそう思うよね」
「雲や虹の上を歩けたら」
「そうしたことを夢見るわ」
 四人も言います、そして。
 臆病ライオンと腹ペコタイガーもトトに言いました。
「僕達もね」
「そう思う時あるよね」
「雲の上を歩けて」
「虹を渡れたらって」
「うん、それが出来たらってね」
 実際にとです、トトも二匹に答えます。
「僕もよく思うよ」
「私もよ。私もオズの国に来て長いけれど」
 ドロシーも言うのでした。
「雲の上は歩いたけれど」
「私のお家や雷の精霊さんのお家に来た時に」
「虹はまだだから」
 それでというのです。
「是非ね」
「それじゃあその機会が来たら」
「その時はね」
 まさにというのです。
「渡りたいわ」
「それじゃあそうした虹をね」
 その時にとです、ポリクロームも答えます。
「作るわね」
「是非ね」
「そういうことでね」
「じゃあね」
 こうしたことをお話するのでした、その虹のリングを見ながら。
 そしてです、ジョージは魔法使いに言いました。
「あの、虹のリングをくぐりません?」
「飛行船でだね」
「虹も幸運の象徴ですね」
「よくそう言われるね」
「ですから」
 だからこそというのです。
「あの虹のリングをくぐって」
「幸せがある様にだね」
「神様にお願いしましょう」
「いいね、それじゃあね」
 魔法使いはジョージの言葉に頷きました、そしてです。
 飛行船を動かして虹のリングの真上に来てです。そこから。
 ヘリコプターみたいに垂直に降りてリングをくぐりました。それが終わってからでした。
 魔法使いはにこりと笑ってジョージに言いました。
「これでいいね」
「あの、今」
「どうしたのかな」
「垂直に降りましたけれど」
「ヘリコプターみたいな動きだったっていうんだね」
「そのままでしたよね」
「うん、この飛行船はそうした動きも出来るんだ」
 こうジョージにお話するのでした。
「今みたいにね」
「垂直に降りたりですか」
「上昇したり横や後ろにも動けるよ」
「それは凄いですね」
「普通の飛行船じゃないからね」
「オズの国の飛行船だからね」 
 だからこそというのです。
「そうした動きが出来るんだ」
「そうなんですね」
「そうだよ、だからね」
 それでというのです。
「今みたいな動きも出来るから」
「またこうした時があると」
「うん、そうした動きをするからね」
 操縦してというのです、そうしたお話をしてでした。
 皆はその虹のリングをまた見ました、今は真上にあるリングを。ジョージはそのリングを見てこうしたことも言いました。
「天使の輪みたいだね」
「天使の頭にある」
「あの輪?」
「虹だけれど」
「そうだっていうのね」
「うん、そんな感じだよね」 
 ジョージは四人にも言います。
「飛行船のね」
「そういえばそうね」
 ドロシーはジョージのその言葉に頷いて述べました。「あの虹のリングがね」
「天使の頭の、ですよね」
「そうなるわね」
「虹は幸運の象徴ですから」
「くぐっただけでなく」
「はい、頭にもです」
 そこにもというのです。
「宿って」
「そしてよね」
「僕達の今回の旅に幸せが宿りますね」
「そういうことね、じゃあこれからも楽しく旅をして」
「雷玉が見付かることをお願いしましょう」
 幸せの虹のリングにもというのです、そうしたことをお話しながらでした。一行は虹のリングを後んしいて飛行船を進めるのでした。




今回は大きな鳥、鵬が出てきたけれど。
美姫 「確かに飲み込んでいる可能性もあったのよね」
まあ、その辺りは魔法使いのお蔭ですぐに分かるみたいだから良かったけれど。
美姫 「そうじゃなかったら、飲み込んだかどうかの判断にも苦労するものね」
だな。新しい出会いや虹を見つつ、雷玉探しはまだ続くと。
美姫 「次はどんなお話かしらね」
次回も待っています。



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