『オズのポリクローム』




                 第七幕  雷の精霊

 雷の精霊さん達のお部屋の前に来たところで、です。ジョージは緊張した面持ちで皆にこうしたことを言いました。
「雷の精霊さん達だけれど」
「どうかしたの?」
 神宝がそのジョージに応えます。
「若しかして雷に打たれるとか」
「いや、ちゃんと魔法で守ってもらってるから」
 魔法使いが渡してくれた魔法の道具で、です。
「そのことは安心だけれど」
「じゃあ他に何が心配なのかな」
「いや、雷は眩いからね」
 ジョージが今心配しているのはこのことでした。
「目は大丈夫かな」
「あっ、それならね」
 魔法使いはジョージの言葉を聞いてでした。
 すぐにです、皆にサングラスを差し出しました。
「皆これを着けてね」
「サングラスですか」
「これは魔法の品じゃないよ」
 魔法使いはジョージにこのことを断りました。
「別にね」
「ごく普通のですね」
「そう、サングラスだよ」
「けれどですね」
「これをかけたらね」
 確かに普通のサングラスです、ですがかければというのです。
「雷の光も眩くないよ」
「それじゃあ今から」
「皆付けるといいよ」
 見れば小さなです、トト用のサングラスもあります。
「是非ね」
「わかりました、じゃあ今から付けます」
 ジョージが応えてでした、そのうえで。
 皆サングラスをかけました、ただポリクロームはです。
 くるくると舞いながらです、こう魔法使いに言いました。
「私は大丈夫よ」
「君の目はだね」
「そう、妖精の目だから」
 だからだというのです。
「どんな光でも眩しくないの」
「だからだね」
「虹の精霊だし」
 このこともあるというのです。
「光には強いから」
「雷の光でもね」
「大丈夫よ」
「じゃあ君はいいね」
「ええ、私はいらないわ」
 そのサングラスをというのです。
「そういうことでね」
「わかったよ、じゃあ君はね」
「ええ、このままでいいわ」
 こうしてです、ポリクロームはサングラスをかけないで、です。
 皆は精霊さんに扉を開いてもらってお部屋の中に入りました、お部屋の中は昔のギリシアの神殿の一番奥の神様を祀る様な場所でした。
 その白い雲のお部屋にはです、周りに雷を一杯漂わせたひらひらとした薄い生地の虹の精霊さん達が着ていたみたいな服を着た人達がいました。
 髪の毛は淡い緑で目は濃い緑です。何処か雷の色みたいです。青や黄色の髪の毛や目の人達もいます。老若男女の人が一杯います。
 その人達にです、魔法使いは尋ねました。
「貴方達が雷の精霊さん達ですね」
「はい」
 そうだとです、その中で一番年長と思われる顔の下半分を青いお髭で覆った青いもじゃもじゃとした髪と濃い青の目の男の人が答えました。
「左様です」
「そうですか、私達はです」
「オズの魔法使いさんですね」
 男の人は魔法使いに言葉を返しました。
「そうですね」
「はい、そうです」
「そしてオズの王女ドロシー嬢とその友人のトト」
「はい、そうです」
「僕達のことも知ってるんだ」
「オズの名誉市民である五人の子供達」
 次にジョージ達五人のことも言うのでした。
「そして虹の精霊ポリクローム嬢」
「私のことはね」
「同じ精霊同士だからね」
「ここにもお邪魔したことがあるし」
「君のことはよく知ってるよ」
「私もよ」 
 二人のやり取りはかなり砕けたものでした。
「お互いにね」
「そうだね」
「それで魔法使いさん達のことをどうして知ってるの?」
「オズの国のお空からいつも見ているからだよ」 
 だからだというのです。
「皆のことを知っているんだ」
「それでなのね」
「そうなんだ、ではあらためてはじめまして」
 男の人はあらためて皆に礼儀正しく挨拶をしました。
「私が雷の精霊の長です」
「貴方がですね」
「そうです、ようこそ我が家に」
 男の人は礼儀正しくです、また挨拶をしました。
「おいで下さいました、それでどういったご用件でしょうか」
「はい、実は飛行船でポリクローム嬢のお家に遊びに行ったのですが」
「そこで、ですか」
「皆さんの雲が随分と雷が激しく鳴っていたので」
「そのことが気になって」
「お伺いしました」
 こう雷の精霊さん達の長にお話するのでした。
「そうなのですが」
「実はです」
「この雷が止まらない訳は」
「私達は雷の精霊で普段は雷を制することが出来ます」
 雷を司るだけあってというのです。
「それが出来るのですが」
「しかしですか」
「それがです」
 ここで長は困った顔になりました、そのうえでです。
 魔法使いにです、こう言いました。
「私だけが制御出来なくなってしまったのです」
「そういえばどうも」
 魔法使いは長の言葉を受けてでした。精霊さん達をあらためて見回しました。すると他の精霊さん達の身体の周りの雷は漂っていても落ち着いていますが。
 長のそれは激しく鳴っています、もう荒れ狂っている感じです。
 そのことに気付いてです、魔法使いも言いました。
「貴方は」
「それが雲全体にも及んでいまして」
「今の状況に至っているのですね」
「そうです」
 こう魔法使いにお話するのでした。
「正直困っています」
「どうしてそうなったのですか?」
「実は私達の身体の中には雷を制御出来る玉があるのです」
「玉がですか」
「雷玉といいまして」
 こうお話するのでした。
「それがあるのですが」
「長さんは今はですか」
「実は身体の外に出して磨いていた時にです」
 まさにその時にです。
「場所は家の外でした、そこで磨いていますと」
「落としてしまったのですね」
「はい、そうです」
 とても残念そうなお顔での言葉でした。
「それでなのです」
「雷が制御出来なくなって」
「この有様です」
「実はね」
 ポリクロームもお話してきました。
「私達精霊はそうなの」
「身体の中に玉があるんだね」
「それぞれが司っているね」
 こう魔法使いにお話するのでした。
「玉があって時々手から出して磨いているの」
「成程、そうだったんだ」
「磨かないと曇ってね」
 そしてというのです。
「制御する力が鈍るから」
「そうした事情があったんだね」
「玉がないと私の場合は虹だけど」
「虹をコントロール出来なくなるんだね」
「そう、虹をずっと出しっぱなしになるの」
 そうなってしまうというのです。
「だから制御する為に」
「精霊さん達に玉は必要なんだね」
「そうなの」
「そういうことだったんだね」
「それでなのです」
 また長が言ってきました。
「私がこうなっていてです」
「長さんの雷がですね」
「こうしてです」
「この雲をですね」
「始終覆って鳴らしています」
「そうだったのですか」
「正直困っています」
「では、です」
 ここで魔法使いがにこりと笑って長に言いました。
「私達でその玉を探して長にお渡ししましょう」
「いえ、私で探していますので」
「いえいえ、それでもです」
「探して頂けるのですか」
「はい」
 笑顔で、です。魔法使いは長に申し出ました。
「そうさせてもらいます」
「それは有り難いですが」
「空の冒険を楽しんでいましたが」 
 魔法使いはこうも言うのでした。
「困っている人を助けることは当然のことです」
「だからですか」
「ここはお任せ下さい」
 長に言うのでした。
「是非」
「そこまで仰るのなら」
「では今から探してきますので」
「有り難うございます、私も探していますが」
 ご自身もというのです。
「この通り雷を制御出来なくなっていますので」
「だからですね」
「はい、外に行けばです」
 この雲からです。
「雷で焦がしてしまい音が五月蝿く」
「それで、ですね」
「外に出られず」
「探そうにも」
「自分では出られない状況です」
 この雲からというのです。
「それで困っていまして」
「実は私達もです」
「探しているのですが」
「これが見付からず」
「困っています」
 他の精霊さん達も魔法使いにお話します、他の皆にもです。
「それで困っていまして」
「一体何処にあるのか」
「このままではです」
「お父様はずっとこうです」
 雷を制御出来ない状況のままだというのです。 
「ですからお助け頂けるなら」
「お礼は何でもします」
「是非共」
「わかっています、ただお礼はいいです」
 魔法使いはお礼については微笑んで穏やかに答えました。
「それはお気遣いなく」
「いいのですか?」
「そのことは」
「ですが助けて頂いたからには」
「お礼は」
「いえいえ、当然のことなので」 
 魔法使いの返事は変わりません。
「そこはお互い様ということで」
「魔法使いさん達が困られた時にですか」
「その時に」
「助けてもらうかも知れません、ですから」
 それでというのです。
「そうしたことはお気遣いなく」
「それでは」
「それではですか」
「これからですか」
「お父様の雷玉をですか」
「探して頂けますか」
「そうさせて頂きます、それでなのですが」 
 魔法使いはあらためてです、雷の精霊さん達に尋ねました。
「その雷玉とはどういったものでしょうか」
「はい、こうしたものです」
 ここでなのでした、皆にです。
 案内をしてくれた精霊さんが手の平から丸いその手の平位の大きさの玉を出してきました。その玉はといいますと。
 赤や青、黄色に緑にと。雷の色が奇麗に混ざり合って光っています。周りには小さな雷が出ていて音を鳴らしています。その玉を見せてそうして魔法使い達にお話しました。
「これがです」
「雷の玉だね」
「はい、そうです」
「わかったよ、じゃあそれを探して見付けて来るよ」
「あの、雷玉はです」
 ここで長がまた言ってきました。
「地上には落ちません」
「そうなのですか」
「空を漂います」
「そうですか、空の上をですか」
「そして私達はオズの国の精霊なので」
 長は魔法使いにこのこともお話しました。
「オズの国の空から出ることはありません」
「だから玉もですね」
「はい、オズの国の空にだけ漂います」
「場所は限られているのですな」
「そうです」
「そのこともわかりました、では」
「はい、それではですね」
「これから飛行船に乗って探してきます」
「ではお願いします、ただオズの国だけといっても空は広いです」
 長は魔法使いに心配そうに言いました。
「そこから小さな玉を見付けることは難しいです」
「だからです」
『私達もこれまで探したのですが」
「それでもです」
「見付かりませんでした」
 他の雷の精霊さん達も言ってきました。
「これまで」
「オズの国のお空の中を探したのですが」
「それでもです」
「見付かりませんでした」
「そうよね、だから飛行船で探しても」
 ポリクロームも雷の精霊さん達のお言葉を聞いて考えるお顔になって述べました。
「それではね」
「どうしたらいいかしら」
 ドロシーも考えだしました。
「すぐに見付けるには」
「そうだね、雷の玉で」
 魔法使いは案内をしてくれた精霊さんがまだ出しているその雷玉をまた見ました。そうしてそれを見つつです。
 考えてです、その精霊さんに言いました。
「ちょっといいかな」
「何か」
「うん、少し見たいものがあるけれど」
「見たいものですか」
「避雷針を出していいかな」
「あの雷を受ける」
「そう、それを出していいかな」
 こう精霊さんに言うのでした。
「少しね」
「はい」
 精霊さんは事情がよくわかりませんでした、ですが。
 助っ人を申し出てくれた魔法使いさんのお願いだからです、すぐに頷いて答えました。
「それじゃあ」
「ではね」
 魔法使いは鞄から小さな針みたいな避雷針を出して雷玉に近付けました、するとです。
 雷玉の周りを飛んで音を鳴らしていた雷が避雷針に向かっていってそして吸い込まれる様に受け止められました。その様子を見てです。 
 魔法使いは微笑んでこう言いました。
「これで見付けられるよ」
「雷玉があってもなの」
「うん、避雷針を出していればね」
 魔法使いはポリクロームにも答えました。
「こうしてね」
「雷を受けるから」
「その反応を見ればね」 
 それでというのです。
「わかるよ」
「それじゃあ飛行船に避雷針を付けて飛べば、いえもう付けてるわね」
「そう、だからね」
「このまま飛べばいいのね」
「そうして避雷針の反応を見ればいいよ」
「何処に避雷針があるかわかるのね」
「そうだよ、ただ雷玉の反応は小さいから」
 ここでこうも言った魔法使いでした。
「大きい避雷針にして小さな反応でもね」
「それでもなのね」
「自分から吸い込める様なね」
「そうした避雷針を飛行船に付けるのね」
「そうするよ、それと」
 さらに言う魔法使いでした。
「磁石みたいに魔法のものを吸い寄せるものにしようかな」
「ただ見付けるだけじゃなくて」
「そうしたらさらに楽だからね」
 お空の雷玉を見付けることがというのです。
「そうしよう」
「それじゃあ」
「じゃあ早速飛行船に避雷針を付けよう」
「そしてお空に出て」
「それで探そう」
 こうしてでした、魔法使いはです。
 一旦お外に出て飛行船に大きな避雷針を付けました、その避雷針に魔法の品を吸い寄せる磁石みたいな力も加えて。
 それが終わってからです、皆のところに戻って言いました。
「これでいいよ」
「それではですね」
「はい、今から言って来ます」
「そうですか、ではお願いします」
「見付けて手に入れたら持って来ますので」
「宜しくお願いします」
 長からもお願いするのでした、そしてです。
 一行は雷の精霊さん達と一旦お別れしてでした、そのうえで。
 飛行船に入って再びお空に出ました、そのうえで長の雷玉を探すのでした。 
 お空での旅が冒険になったところで、です。ジョージは飛行船の中からお空を観ながらこんなことを言いました。三百六十度見渡せる様になっているその中で。
「僕達お空に出る前にボームさんとお会いしたれど」
「それがどうかしたの?」
「うん、何かはじめてお会いした様な感じだったけれど」
 こう神宝に答えます。
「前にも一回お会いしてたね」
「あっ、そうだったね」
「そういえばそうだったね」
 神宝だけでなくカルロスもジョージに応えました。
「僕達前にね」
「ボームさんとお会いしてたね」
「そうだったね、前にもお会いしていたよ」
 このことを言うのでした。
「それでお話したけれど」
「あそこまで仲良くお話したのははじめてだったわ」
 ナターシャが言いました。
「それはね」
「だからはじめてって感じがしたのかな」
「そうじゃないかしら」
「それでなんだ、けれどね」
 それでもと言うジョージでした。
「あの人もいい人だよね」
「ええ、お話しててね」
 それでとです、今度は恵梨香が言いました。
「とても楽しかったわ」
「帰ったらまたボームさんとお話したいね」
「そうよね」
「ボームさんがいてくれたからね」 
 トトが五人に言ってきました。
「僕達の数多くの冒険のことがわかったんだよ」
「あの人が書いてくれたからだね」
「そうだよ、僕とドロシーが竜巻にお家ごとカンサスから運ばれた時もね」
 ドロシーの最初の冒険の時です。
「そしてそれからの数多くの冒険も」
「ボームさんが全部僕達に紹介してくれたね」
「そうだよ、だからね」
 それでというのです。
「あの人がいなかったら」
「誰が僕達に紹介してくれたかな」
「それはわからないね」
「そうなんだね」
「けれどボームさんがいてくれたから」
 何といってもというのです。
「皆も僕達のことを知ることが出来たんだよ」
「そうだよね、本当に有り難い人だよね」
「僕もそう思うよ、それで今はね」
「オズの王宮でだね」
「オズの国の歴史を編纂しているんだ」
 そのお仕事に携わっているというのです。
「楽しくね」
「あの人はずっとアメリカにいて」
 ジョージはここでこうも言いました。
「オズの国に入られたんだよね」
「そうなの、十四の冒険を書いてね」
 今度はドロシーがジョージにお話します。
「それからなの」
「アメリカからオズの国に入られたんでしたね」
「それからのお話は他の人が書いてくれているの」
「オズの国からボームさんが教えてくれてるんですか」
「そうなの、通信を入れてね」
「オズの国から」
「ボームさんが編纂した王室の歴史をね」
「本当にボームさんがいてくれてこそですね」
 ジョージもしみじみと思うのでした。
「あの人がいてくれるからオズの国のことを皆が知るんですね」
「そうよ、だからね」 
「ボームさんもオズの国の大事な人ですね」
「そうなの、私もオズマも皆もボームさんが大好きよ」
 ライマン=フランク=ボーム。まさにこの人をです。
「皆がね」
「そうですよね、じゃあ」
「エメラルドの都に戻ったら」
「そのボームさんともですね」
「楽しい時間を過ごしましょう」
「わかりました」
「雷玉を見付けて」
 ポリクロームがここでも踊っています、そのうえでの言葉です。
「その雷玉を長の人にお返ししたら」
「オズの国にですよね」
「戻るわ。それで私もね」
「ポリクロームさんもですね」
「お家に戻るわ」
 虹の精霊さん達のそこにというのです。
「そうするわ」
「都には来られないんですか?」
「ええ、そのつもりよ」
 そうだというのです。
「特に呼ばれもしていないし」
「じゃあ呼んでいいかしら」
 ドロシーはポリクロームににこりと笑って申し出ました。
「私が貴女を」
「呼んでくれるの?」
「ええ、そうするけれど」
「そう言ってくれるのなら」
 ポリクロームにしてもでした。
「喜んで」
「それじゃあね」
「ええ、雷玉を見付けて精霊さんにお返しして」
「それからね」
 王宮でというのです。
「皆で楽しくパーティーしましょう」
「それじゃあ」
「王宮のパーティーっていいですよね」
 ジョージはその王宮のパーティーについて言いました。
「僕大好きです」
「楽しいわよね」
「ご馳走もジュースも一杯出て」
 そしてというのです。
「音楽も素晴らしくて。何よりも皆がいてくれて」
「オズの国のね」
「皆がいてくれるから」
「王宮のパーティーは楽しいのよね」
「そうですよね」
「私も大好きよ」
 ドロシーもでした、このことは。
「オズの国は何をしても楽しいけれど」
「パーティーもですね」
「そう、とても楽しいから」
 だからだというのです。
「私も楽しみにしてるわ」
「そうなんですね」
「そう、ただね」
「ただ?」
「誰が来るかはわからないから」
 そのことはというのです。
「誰が来てくれてもね」
「驚かない」
「そういうことよ」
「そういえばね」
「僕達はね」 
 臆病ライオンと腹ペコタイガーが言ってきました。
「君達とはいつもは会ってないね」
「会う時とそうでない時があるよね」
「そうだよね、オズマ姫とドロシーさんに」
 ジョージも二匹に応えて言います。
「かかしさんと木樵さんにはお会いするけれど」
「僕達とはね」
「いつもじゃないね」
「魔法使いさんにはいつもかな」
 ジョージは魔法使いにもお顔を向けました。
「冒険で一緒になることもあるし」
「うん、よく一緒にいるよね」
 魔法使いもこうジョージに応えました。
「私と皆はね」
「そうですよね」
「うん、、そうだね」
「けれど僕達とは」
「こうして冒険をすることも」
 また言う二匹でした。
「あまりなくて」
「今回は珍しいかな」
「僕達も結構冒険に出てるけれど」
「君達と一緒になるのは実は少ないんだよね」
「そうだよね、だから今回一緒になれて」
 ジョージは二匹に応えて言いました。
「よかったよ」
「うん、一緒になったからね」
「楽しもうね」
「旅は一緒に楽しむものだから」
「是非ね」
「そうだよね、一緒に楽しもうね」
 ジョージも笑顔で応えました。
「この旅もね」
「うん、それでね」
「この旅だけれど」
「お空の旅で」
「これまでにない旅なんだよね」
「そうそう、いつも僕達歩いての旅なんだよね」
 ここで言ったのは神宝でした。
「飛行船を使ったこともあるけれど」
「ここまでお空ばかりなのはね」
「珍しいよね」
「船を使うことはあるけれどね」
「オズの国の海をね」
「ああ、リンキティンク王の国に行ったりとか」
 海と聞いてです、カルロスが言いました。
「今度あの人にもお会いしたいね」
「元気だよ、あの人も」
「とてもね」 
 臆病ライオンと腹ペコタイガーはリンキティンクについてもお話しました。あの賑やかで陽気な王様についても。
「それで楽しく過ごしてるよ」
「ロバだったお友達とね」
「あの人ロバだった時は凄い不平ばかりだったけれど」
 このことはナターシャが言いました。
「変身が解けて変わったわね」
「元に戻ったのかしら」
 恵梨香はこう考えました。
「戻れて」
「そうなるのかな、けれどね」
 また言うジョージでした。
「リンクティンク王にもお会いしたいね」
「何時かね」
「あの人のお国にも行って」
「そうしてね」
「あの人とも楽しくね」
「遊びたいね」
 四人にも言うのでした。
「その時は」
「機会があったら行ってみたらいいわ」
 ドロシーがその五人に言います。
「あの人のところにもね」
「また次の機会に」
「あの人も楽しい人だから」
「そうですよね、賑やかで」
「オズの国には色々な国があるの」
 その中にです。
「その中にリンキティンク王の国もあってね」
「他の国もですね」
「そう、あるから」
 それでというのです。
「色々と行ってみればいいわ」
「そうしたらですね」
「楽しいから」
「ジンジャーブレッドの国もありましたね」 
 神宝はふとこの国のことを思い出しました。
「ハイランド、ローランドと」
「ええ、あるわ」
「そうした国々にもですね」
「機会があれば行ってみればいいわ」
「そうですよね」
「これまでも色々な国に行きましたけれど」
 カルロスが言うお国はといいますと。
「アンヤコレヤさんのお国とか」
「ええ、黄金の林檎を取りにね」
「ウーガブーの国も楽しかったですね」
「その他にも色々行ったわね、貴方達も」
「カドリングにあった国々にも」
 こうした国々にもです、皆は行っています。
「あそこの国々も楽しかったですね」
「何かオズの国の中にいると」
 恵梨香が考えるお顔で言います。
「その中に色々な国があって不思議ですね」
「国の中に国があることが」
「それも沢山」
「そうね、けれどそれがね」
「オズの国なんですね」
「オズの国にはどんな国でもあるの」 
 一つの国の中にというのです。
「大きく四つの国に分かれていてね」
「マンチキン、カドリング、ウィンキー、ギリキンと」
 ナターシャがドロシーに応えました。
「あってですね」
「ええ、それでなのよ」
「そしてその四つの国の中に」
「さらに沢山の国があるのよ」
「その全てが国で」
「オズマが治めている国の中にあるのよ」
「そうしたお国なんですね」
「外の世界とまた違うの」
 国のあり方がというのです。
「一つの国だけれどその中に沢山の国があるの」
「ううんと、アメリカは州の一つ一つが国で」
 ジョージは自分のお国のことをお話に出しました。
「それでその州が集まってアメリカになっていますけれど」
「そうよね、けれどオズの国はね」
「そのアメリカとまた違うんですね」
「国のつくりがね」
「そうなんですね」
「そう、また違うから」
 アメリカとは、というのです。
「そこはね」
「アメリカともですね」
「国家連合と言っていいけれど」
 それでもというのです。
「アメリカとはね」
「また違った国家連合ですね」
「まず大統領じゃないでしょ」
「はい、オズマ姫が国家元首ですから」
「王女よ、国家元首は」
「女帝でも女王様でもなく」
「王女よ」
 ここがかなり違うのです、他の国と。オズマは国家元首ですが女帝でも女王でもなくです。王女なのです。
「そこが違うし」
「他の国も皇帝や王様がおられても」
「その上にオズマがいるから」
「オズマ姫を全ての君主とした、ですね」
「君主連合なのよ」
 それがオズの国だというのです。
「要するにね」
「そうした国もあるんですね」
「国家のあり方はそれぞれよ」
「ですか、わかりました」
「そういうことでね」
「ううん、外の世界のどの国とも違いますけれど」
 それでもとです、ジョージは言いました。
「とてもいい国ですね」
「だから私もずっとこの国に住んでいるのよ」
「何度かこの国に来られて」
「そうして定住したの」
 オズの国の王女になってです。
「そして皆とも会えているのよ」
「そういうことですね」
 こうしたことをです、ジョージはドロシーとお話しました。このオズの国の国家としてのあり方もです。そしてです。
 そうしたことをお話しながらです、皆は飛行船でオズの国のお空を飛んでいました。魔法使いは二時間位飛んだところで、でした。
 皆にです、穏やかな笑顔で言いました。
「こうしてお空を飛んでいるうちにね」
「そのうちにですね」
「雷玉もですね」
「見付かりますね」
「そうなりますね」
「うん、今雷の精霊さん達はお家に集まっているから」
 こおのことからお話する魔法使いでした。
「雷は精霊さん達のお家にある以外は雷玉にしかないよ」
「あっ、雷を動かす精霊さん達がお家にいるから」
「それ以外の雷は、ですよね」
「他にはですよね」
「雷玉しかですね」
「ありませんね」
 五人も気付きました。
「だからですね」
「こうして飛んでいれば」
「それで、ですね」
「何時かは雷を受けて」
「雷玉も引き寄せますね」
「そうだよ、多少時間はかかるかも知れないけれど」
 それでもというのです。
「必ず見付かって手に入れられるよ」
「そうですね、じゃあ」
「こうして飛んでいればいいですね、僕達は」
「そうしていればですね」
「何時かは完全に見付かって」
「それで雷玉を長さんにお渡し出来ますね」
「そうなるよ、では飛んでいる間はね」
 その間はとです、魔法使いは笑顔で言いました。
「お空を見たりお風呂に入ったり食べたりしてね」
「楽しめばですね」
「それでいいですね」
「そうしよう、じゃあもうそろそろ夜だよ」
 魔法使いは微笑んだまま皆に言いました。
「食べよう」
「はい、それじゃあ」
「夜になればですね」
「夜空を見て楽しんで」
「御飯もですね」
「さて、何を食べようかな」
 魔法使いは笑顔でお話するのでした、そうしてです。
 皆夕方のお空を見ました、赤くなったお空を見てです、皆は今回の旅を心から楽しみながら雷玉を探すのでした。
 その夕焼けを見つつです、ジョージはこんなことを言いました。
「じゃあ御飯までに」
「ああ、それまでにだね」
「お風呂に入ってだね」
 神宝とカルロスがそのジョージに応えました。
「身体を奇麗にして」
「それでだよね」
「そう、そしてね」
 そうしてというのです。
「それからね」
「御飯だね」
「晩御飯を食べればいいね」
「そうしたらどうかな」
「うん、いい考えだね」
 魔法使いがジョージの提案に笑顔で応えました。
「では私も入ろう」
「お風呂も楽しむべきですね」
「お風呂はいいものだよ、身体が奇麗になるし」
 それにというのです。
「しかも身体があったまってほぐれてね」
「そのこともいいですよね」
「そう、そして気分もリフレッショするからね」
 気分転換にもなるからいいというのです。
「とてもいいんだよ」
「確かにお風呂に入りますと」
「そうだね、身体も奇麗になって」
「気分もすっきりするね」
「生まれ変わったみたいに」
「だからいいんだよ、要するに今回はね」 
 このお空の旅はといいますと。
「ずっとお空にいるからお空を飛びながらの温泉旅行とも思っていいよ」
「何かとても不思議な旅ですね」
「その不思議な旅が出来るのがオズの国なんだよ」
 普通ではないそうした旅もというのです。
「不思議な楽しいことばかりの国だから」
「旅もそうなるんですね」
「そういうことだよ、ではいいね」
「はい、じゃあお風呂にも入って」
「そうしてお空も楽しもう」
「わかりました」
 こうしてです、皆はまたお風呂に入りました。そうして夜になるといよいよ晩御飯を食べるのでした。そちらの楽しみもありました。



原因は雷玉という物を失くしたからか。
美姫 「これを見つけてくれば良いみたいね」
だな。とは言え、広い空の中から玉一つというのは大変そうだけれどな。
美姫 「方法自体は楽だけれどね」
後はどれぐらいの時間が掛かるかだな。
美姫 「無事に見つかると良いわね」
ああ。次回も待っています。
美姫 「待っていますね」
ではでは。



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