『オズのポリクローム』




                  第三幕  飛行船に乗って

 朝起きてです、まずは。
 皆で朝御飯を食べました、今日の朝御飯はオートミールです。大麦を牛乳で炊いたそれをスプーンで食べてです。
 恵理香はオズマにです、こう言いました。
「そういえばなんですけれど」
「どうしたの?」
「はい、オートミールですけれど」
「日本ではよね」
「はい、実はあまり食べないです」
「そうよね、日本ではお米のお粥よね」
「それがオートミールみたいになっています」
 恵理香はこうオズマに答えました。
「最近オズの国でもお粥食べますけれど」
「ええ、日本のお粥も中国のお粥もね」
 そのどちらもというのです。
「食べる様になったわ」
「そうですね」
「けれどこうしてね」
「オートミールもですね」
「今もよく食べるのよ」
「これはやっぱりアメリカですね」
「そう、アメリカではオートミールを食べるからね」
 それでとです、オズマは恵理香に答えました。
 ですがその恵理香にです、ジョージはこう言いました。
「最近そうでもないよ」
「アメリカでもオートミールはあまり食べないの」
「朝はね、コーンフレークとかが多いよ」
「オートミールじゃなくて」
「だって手軽に食べられるから」
 これがコーンフレー樹を食べる理由だというのです。
「だからね」
「コーンフレークはお皿の上に出して」
 神宝もそのコーンフレークについてお話します。
「そこに牛乳をかけたらいいからね」
「すぐに用意が出来るよね」
「うん、それで食べられるよ」
「栄養もたっぷりだしね」 
 最初からかなり入れているのです。
「だからね」
「それでなんだね」
「僕もよく食べるから」
「そういえばジョージはオズの国でもよくコーンフレーク食べるね」
 今度はカルロスがジョージに言いました。
「おやつでも」
「うん、手軽に美味しく食べられるから」
「だからだよね」
「食べるよ」
「そういうことだね」
「そうだよ、まあとにかくね」
 ジョージはあらためて言いました。
「アメリカでも最近はそうだよ」
「オートミールを食べることが減ってるの」
「そうなんだ」
 恵理香にも答えたのでした。
「僕もそうでね」
「そうなのね」
「けれどこのオートミールは」
 ナターシャは静かにそのオートミールを食べつつお話します。
「かなり美味しいわね」
「うん、そうだね」
 味についてはです、ジョージもその通りと答えます。
「おかわりが欲しい位だよ」
「何杯でもどうぞ」
 ジョージにです、オズマは微笑んで答えました。
「そして楽しんでね」
「そうさせてもらいますね」
「食べる回数は減っていても嫌いではないわよね」
「大好きですよ」
 ジョージはオートミール自体についてはです、オズマにこう答えました。
「今も」
「そうよね、それじゃあね」
「はい、オートミールを食べて」
「そしてね」
「それからですよね」
「飛行船を出すから」
 その朝御飯の後でというのです。
「いよいよね」
「はい、その飛行船に乗って」
「皆でお空に行ってね」
「今回は私が皆と一緒に行くよ」
「私もよ」
 魔法使いとドロシーが五人に言ってきました。その中で魔法使いは五人に対して微笑んで言ったのでした。
「飛行船は私が動かすからね」
「魔法使いさんがですか」
「飛行船を動かしてくれるんですね」
「うん、気球だけじゃなくててね」
 飛行船もというのです。
「行って来るよ」
「わかりました」
「それじゃあお願いします」
「今から」
「飛行船の操縦は」
「そうさせてもらうよ」
「あと僕達もね」
「一緒に行っていいかな」
 臆病ライオンと腹ペコタイガーも名乗り出てきました、二匹はオズマのすぐ横で自分達のオートミールを食べています。
「何かお空の上にもね」
「行ってみたくなったんだ」
「だからね」
「一緒に行っていいかな」
「勿論だよ」
「是非一緒にね」
 五人は二匹の友人達に満面の笑顔で応えました。
「行こう、お空に」
「ポリクロームさんのところにね」
「そうしようね、それじゃあ」
「まずは朝御飯をしっかりと食べて」
 二匹もこのことは忘れていません、実際にしっかりと食べています。特に腹ペコタイガーはオートミールをもりもりと食べています。
「それからだね」
「行こうね」
「それじゃあね、皆で行こう」
 ジョージは四人に言いました。
「楽しくね」
「ジョージ凄く楽しみにしてるわね」
 ドロシーはうきうきとしているジョージに微笑んで尋ねました。
「これまで以上に」
「はい、確かに」
「お空好きなの」
「大好きなんです、ですから前に飛行船に乗った時も」
 オズの国においてです。
「凄く楽しかったです」
「そうなのね」
「ですから今回もです」
「楽しみなのね」
「そうなんです」
「それはいいわね、けれど私はね」
「ドロシーさんは?」
「最初にオズの国に来た時は竜巻に乗って来たけれど」
「あの時はどうなるかって思ったよね」
 ドロシーの足元でオートミールを食べているトトが言ってきました。
「果たしてね」
「ええ、あれが私の最初のお空の旅だったわ」
「そうでしたね、ドロシーさんの場合は」
「それでオズの国ではね」
「飛行船に乗ったりして」
「何度もお空での旅をしてるわ」 
 そうだというのです。
「最初はびっくりしたけれど今はいつも楽しんでるわ」
「そうなんですね」
「馬車でお空に乗ったこともあったわ」
 そうしたこともです、ドロシーは冒険の中で経験しています。
「その時は魔法使いさんと一緒だったわね」
「うん、あの時はガーゴイル達に追いかけられていてね」
「どうなるかって思ったわ」
「他にもピンチの連続でね」
「大変な冒険だったわね」
 そうした冒険の中でのことでした、ですが今ではドロシーにとっては楽しい思い出です。
「そして今度はね」
「飛行船で、ですね」
「雲まで行くのね」
「そうなりますね」
「ええ、私もとても楽しみよ」
 こうジョージに言うのでした、ですが。
 ここで、です。ふとでした。神宝が気付いた様なお顔になってドロシーに言いました。
「あの、それで」
「それで?」
「はい、雲っていっても沢山ありますよね」
「その雲の何処にポリクロームのお家があるか」
「ドロシーさんはご存知ですか?」
「ええ、聞いたわ。ポリクロームからね」
 まさにその本人からというのです。
「だからね」
「迷わずにですね」
「行けるわ」
「それは何よりですね」
「お空で迷うことはないから」
 このことは心配しなくていいというのです。
「安心してね」
「わかりました、それじゃあ」
「あとオズの国ですから」
 ここがお伽の国であることからです、カルロスは言いました。
「お空も普通のお空じゃないですよね」
「何かがあるっていうのね」
「はい、雲の上のお家だけじゃないですよね」
「ええ、他にもあるわよ」
「やっぱりそうですか」
「雲の上に住んでいる人達は他にもいてね」
 それにというのです。
「お空を飛んでいる生きものもいるから」
「その生きものにも会えますね」
「運がよかったらね」
「そうですか、じゃあそのことも楽しみにしています」
「是非ね、そうしておいてね」
「お空を飛ぶといえば」 
 このことからです、ナターシャが言うことはといいますと。
「この国では鳥さんや虫さんだけじゃないですね」
「ええ、本当に色々とね」
「いますよね」
「お空の生きものがね」
「やっぱりそうですよね」
「龍もいるし」
 ドロシーはここで神宝を見ました、龍といえば神宝のお国の中国だからです。
「それにドラゴンもね」
「その他にもなんですね」
「面白い生きものが一杯いるからね」
 オズの国のお空にはというのです。
「楽しみにしていてね」
「わかりました」
 ナターシャはドロシーの言葉に笑顔で頷きました。
 そして最後にです、恵理香が言いました。
「雲の上を歩けるのかしら」
「ええ、歩けるわよ」 
 ドロシーはすぐにでした。恵理香のその疑問にも答えました。
「雲の上もね」
「オズの国ではそうなんですね」
「そうした雲あるし歩けない雲も」
 普通の、外の国にある雲もというのです。
「歩けるわよ」
「魔法で、ですか?」
「そう、雲の上を歩ける魔法の靴があるから」
「その靴を使えば」
「歩けるわ」
 そうだというのです。
「その靴も皆の分持って行くから」
「わかりました、それじゃあ」
「雲の上を歩くことも楽しみにしておいてね」
「そうさせてもらいます」
 恵理香も笑顔で頷きました、皆はこうしたことをお話しながらです、今は楽しく朝御飯を食べました。そのオートミールを。
 オートミールを食べてです、いよいよでした。
 皆で王宮のお庭に出ました、そこには早速です。
 飛行船が出されていました、飛行船はまだガスが入れられていません。ですがガスさえ入れればでした。
「もうすぐにでもです」
「飛べますよ」
「私達で出しておきましたので」
 軍人さん達がお話しました。
「後はです」
「これからガスを入れますか?」
「そうでしたら今から」
「あっ、ガスは私が入れるよ」
 魔法使いが軍人さん達に笑顔で言いました。
「出してくれて有り難う」
「いえいえ、かかしさんと木樵さんにもお手伝いしてもらって」
「魔法で軽く小さくなっていましたから」
「持ち運びは楽でした」
「うん、この飛行船は大きくなったり小さくなったりもするからね」
 魔法で、とです。魔法使いもその飛行船についてお話します。
「だからだね」
「はい、倉庫の中で模型みたいに小さくなっていたのをです」
「持って来ました」
「いや、本当にです」
「それだけでしたから」
 お礼には及ばないというのです。
「別にです」
「では後は私達もです」
「朝御飯を食べます」
「そうさせてもらいますね」
「ええ、一杯食べてね」 
 軍人さん達の最高司令官であるオズマが笑顔で言いました。
「朝からお疲れ様、それではね」
「はい、では今から」
「朝御飯を頂きます」
「今日はオートミールでしたね」
「そうよ、そのオートミールを好きなだけ食べてね」
 オズマは軍人さん達に笑顔のまままた言いました、そうしてでした。 
 軍人さん達は王宮の中の食堂に向かってです、後には飛行船に乗り込む皆が残りました。その中から魔法使いが出て。
 飛行船に近付いてです、ガスを入れるその上のところにです。
 魔法の箱を出して中に入れました、すると。
 飛行船のアーモンド型の袋の部分がどんどん大きくなってです、あっという間にです。
 飛行船の本来の形になりました、その飛行船を見てです。
 ジョージはごくりと息を飲んでです、皆に言いました。
「それじゃあね」
「あの飛行船にね」
「今から乗って」
「それでお空に出るのね」
「雲のところまで」
「うん、じゃあ乗ろうね」
「おっと、まだだよ」 
 はやるジョージにです、皆のところに戻って来た魔法使いが言いました。
「もうちょっと待ってね」
「まだですか」
「うん、客室の扉を開けるからね」 
 鍵を出しての言葉です。
「これでね」
「そうでしたね、まずは」
「うん、鍵を開けないと」
 それからというのです。
「中に入られないからね」
「だからですね」
「僕が鍵を開けるよ」
「それで客室に入って」
「そのうえでね」 
 そうしてというのです。
「皆で行こうね」
「そうですか、それじゃあ」
「皆ここで待っていてね」 
 魔法使いが客室に乗り込む為の扉を開けるまでです。勿論そこに操縦室もあります。食堂やそうした場所もです。
「少しだから」
「はい」
 五人で魔法使いに頷きました、そしてでした。
 魔法使いが扉を開けてです、皆そこに乗り込んで。
 それからです、扉を閉めてでした。
 飛行船はお空をゆっくりと上がりはじめました、オズマとかかし、木樵そしてモジャボロとジュリアが皆を手を振って送ります。
 その皆に手を振って一時のお別れの挨拶をしてでした、それから。
 王宮が点にしか見えない高さになってからです、ドロシーが五人に言いました。
「それじゃあね」
「はい、お空の旅がはじまりましたね」
「遂に」
「そうよ、気分はどう?」
 そのお空の旅がはじまったそれがというのです。
「今回の旅がスタートして」
「ううん、いつも歩いてはじまってまして」
「飛んではじまるのははじめてですから」
「言われてみると不思議ですね」
 ジョージと神宝、カルロスの男の子三人が答えました。
「何ていいますか」
「普段と違って」
「こうしたのも面白いですね」
「私もよ、私も大抵は歩いてはじまるわ」
 その冒険がというのです。
「けれどね」
「こうして飛んでのはじまりも、ですね」
「面白い」
「そうなんですね、ドロシーさんも」
「いつもと違うことも楽しいわ」
 実際にというのです。
「こうしたこともね」
「ではその楽しい旅を」
「今からですね」
「楽しむんですね」
「あの、何かこの飛行船って」
「揺れないですね」
 ナターシャと恵理香はドロシーにこのことを尋ねました。
「風があるでしょうけれど」
「その中にあっても」
「揺れないですね」
「落ち着いていますね」
「そうよ、この飛行船は揺れないの」
「じゃあ安心して、ですね」
「お空の旅が出来ますね」
 揺れるその心配がなくとも、です。二人はそう聞いて安心して笑顔になりました。
「船はよく揺れますけれど」
「この飛行船は、ですね」
「揺れなくてですね」
「落ち着いて旅が出来ますね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「安心して旅をしましょう」
「わかりました、それじゃあ」
「まずは雲の上まで」
「ゆっくりと行く」
 操縦をしている魔法使いは皆にこう答えました。
「この旅はね」
「急がずにですか」
「ゆっくりですか」
「うん、そもそもこの飛行船はスピードはあまり出ないから」
 このこともゆっくりと行く理由だというのです。
「だからね」
「はい、じゃあゆっくりですね」
「先に進んでいくんですね」
「ポリクロームさんのお家まで」
「そうするからね、さてと」
 ここまでお話してです、魔法使いは。
 操縦をする舵から離れました、すると。
 その魔法使いにです、臆病ライオンと腹ペコタイガーが尋ねました。
「操縦はいいの?」
「舵を取らなくても」
「うん、自動操縦にしたよ」
 魔法使いは二匹の獣に微笑んで答えました。
「だから大丈夫だよ」
「ふうん、そうなんだ」
「この飛行船自動操縦も出来るんだね」
「じゃあ魔法使いさんが動かさなくても」
「ポリクロームのお家まで行けるんだね」
「そうだよ、だから私もね」
 魔法使いは皆のところに来て答えました。
「こうして皆とお空の旅を楽しむよ」
「そうするんだね」
「魔法使いさんも一緒にね」
「僕達とこうして」
「お空の旅を楽しむんだね」
「そうだよ、さて外を観ないかい?」
 魔法使いは皆にあらためて提案しました。
「窓の外をね」
「飛行船からですね」
「お空を見るんですね」
「うん、飛行船の旅の楽しみといえば」
「はい、窓の外つまりお空を見ることです」
「それですよね」
 五人も魔法使いに笑顔で答えました。
「やっぱり」
「それが一番ですよね」
「そうだよ、ほら観よう」
 魔法使いは飛行船の右手を指さしました、すると窓の外にです。
 青い小さな鳥が沢山並んで飛んでいました。その鳥達を見てです。
 カルロスは首を傾げさせてです、こう言いました。
「鳩、だよね」
「そうだよ」
 その通りだとです、魔法使いはカルロスに答えました。
「あの鳩達はね」
「そうですよね、青いから」
「マンチキンの鳩ね」
 ナターシャも言います、ですが。
 カルロスとナターシャはその青い鳩達を見て何かおかしいと思いました、それで首を傾げさせつつ言うのでした。
「何かね」
「あんな鳩いたかしら」
「うん、僕達の世界にね」
「少し違う感じがするわね」
「色はともかくとして」
 恵理香も言います、その鳩達を見ながら。
「公園によくいる鳩じゃないわね」
「そう、何かね」
「違うわ」
 カルロスとナターシャは恵理香にも言いました。
「妙にね」
「違う感じがするわね」
「何が違うのかしら」
「あの鳩はまさか」
 神宝はその鳩達を見てその目をじっくりとさせて言いました。
「リョコウバト!?」
「あっ、そういえば」 
 神宝の言葉を受けてです、ジョージもはっとなりました。
「あの鳩はね」
「そうだよね」
「うん、リョコウバトだよ」
「まさにね」
「まさか」
 ジョージは驚いたお顔で言うのでした。
「オズの国にリョコウバトがいるなんて」
「オズに国にはいるんだよ」
 魔法使いは微笑んでジョージと神宝に答えました。
「オズの国にはね」
「そうなんですか」
「オズの国には」
「うん、そうなんだよ」
「凄いですね」
 ジョージは驚いたまま言うのでした。
「オズの国にはまだリョコウバトがいるんですね」
「そうだよ」
「どうかしたの、ジョージ」
 恵理香はジョージがあまりにも驚いているのでその彼に尋ねました。
「凄く驚いてるけれど」
「驚くよ、あのリョコウバトはね」
 ジョージは飛行船の窓に貼り付く様にしてその鳩達を見つつ恵理香に答えました。
「アメリカにいたんだけれど」
「そうだったの」
「もういないんだ」
「いないって」
「絶滅したんだ」
 このことはです、ジョージは悲しいお顔で言いました。
「だからもういないんだ」
「そうなの」
「うん、けれどオズの国ではいるんだね」
「そうだよ、オズの国にはリョコウバトがいるんだよ」
 魔法使いはジョージの横に来て答えました。
「ああしてね」
「そうですか、素晴らしいですね」
「うん、アメリカではいなくなっても」
「オズの国ではいて」
「そしてね」
 そのうえでというのです。
「ああして私達の前にも出て来るんだよ」
「いや、素晴らしいものを見ました」
「他にはドードーとかもいるわよ」
「あっ、あの鳥もですか」
「ええ、オズの国にはね」
 いるとです、ドロシーはジョージにお話しました。
「ドードーもいるのよ」
「そうなんですね」
「よかったら見てみる?」
「はい」
 ジョージはドロシーからの誘いにすぐに答えました。
「よかったら」
「わかったわ、今度見に行きましょう」
「いや、リョコウバトだけじゃないんですね」
「ドードーもモアもヨウスコウカワイルカもいるわよ」
「あのイルカもですか」 
 ヨウスコウカワイルカと聞いてです、神宝はその目を輝かせました。
「もういないって聞いてましたけれど」
「オズの国にはいるのよ」
「そうした意味でも不思議な国なんですね」
「そうなの、この国はね」
「じゃあ僕もよかったら」
「ヨウスコウカワイルカをなのね」
「見させて下さい」
 こうお願いするのでした。
「是非」
「わかったわ、それじゃあね」
「はい、その時は」
 神宝も普段以上にテンションを上げています、ですが。
 ジョージと同じく凄く喜んでいます、カルロスはそんな二人を見て思うのでした。
「二人共どうしてそんなに嬉しいのかな」
「ひょっとして」
 恵理香が言うにはです。
「カワウソと同じなのかしら」
「カワウソって?」
「実は日本には昔はカワウソがいたけれど。アシカや狼もね」
「狼っていうと」
「ええ、もう日本に狼はいなくて」
 そしてとです、恵理香はカルロスにお話しました。
「カワウソもアシカもね」
「いないんだ」
「カワウソは見たって人もいるけれど」
 それでもとです、恵理香はカルロスに残念そうにお話するのでした。
「多分ね、お父さんとお母さんが言うには」
「もう日本にはいないんだ」
「そうなの、だからね」
「そうした生きものがオズの国にいるから」
「二人は嬉しいんだと思うわ」
「ブラジルには狼はいないね、カワウソも」
 カルロスはこう恵理香に答えました。
「アマゾンにはね、けれどね」
「生きものがいなくなることは、よね」
「わかるよ、そういうことって悲しいよね」
「ブラジルにもそうした生きものはいるのかな」
「うん、昔はオオナマケモノがいたらしいけれど」
 カルロスはリョコウバトを見ながら自分に尋ねてきたジョージに答えました。
「あとオオアルマジロもね」
「今はだね」
「いないと思うよ」
 こうジョージに答えました。
「まあアマゾンの奥はわからないけれど」
「多分だね」
「いないよ」
 こうジョージにお話するのでした。
「もうね」
「そうなんだね」
「まあこの国は色々な動物がいてね」 
 そしてとです、カルロスも言うのでした。
「若しかしたらオオナマケモノもいるのかな」
「あの生きものなら密林の中にいるよ」
 魔法使いがカルロスに答えました。
「オズの国のね」
「この国には密林もあるんですか」
「うん、そこにオオナマケモノやオオアルマジロもいてね」
『他のアマゾンの生きものもですか」
「大勢いるよ」
 そうだというのです。
「だからオオナマケモノに会いたいならね」
「その密林に行けばいいですね」
「そうだよ」
「わかりました、じゃあ機会があれば」
「密林に行ってだね」
「会いに行きます」
 その生きもの達にいうのです、こうお話してでした。
 カルロスも窓の外を飛んでいるリョコウバト達を見るのでした、見ているのは五人もドロシーも魔法使いもです。勿論臆病ライオンと腹ペコタイガーもです。
 その中でナターシャもです、こう言うのでした。
「ステラーカイギュウもいるんですよね」
「そうだよ」
 魔法使いはナターシャにも笑顔で答えました。
「オズの海にね」
「そうなんですね」
「観に行くのかな」
「機会があれば」
 その時にとです、ナターシャも答えます。
「お願いします」
「わかったよ、それじゃあね」
「はい、まだいるかどうか」
 ナターシャも何時になく感情を出しています。
「わからないですけれど」
「まだ時々だよね」
「見たっていうお話がありますから」
「ステラーカイギュウはね」
「いて欲しいです」
 ナターシャも切実なお顔になっています。
「凄く大人しくて優しい生きものですよね」
「あんな静かな生きものはいないよ」
 実際にとです、魔法使いも答えます。
「海の中にいるだけでね」
「悪いことは何もしなくて」
「海草を食べているだけだよ」
「本当にそれだけの生きものですよね」
「凄く大きいけれどね」 
 それでもというのです、魔法使いも。
「何もしない静かな生きものだよ」
「そうらしいですね」
「それではね」
「機会があれば」
 まさにその時はというのです。
「お願いします」
「わかったよ、じゃあね」 
 こうしたこともです、魔法使いは皆とお話しました。そして。
 ドロシーはです、少し考えるお顔で皆に言いました。
「私がまだカンサスにいた頃はあのハトもいたわ」
「アメリカにですね」
「ええ、数はかなり減っていても」
 それでもとです、ジョージに答えます。
「いたのよ」
「そうなんですね」
「けれどもうなのね」
「はい、僕の頃にはです」
 つまり今はというのです。
「いないです」
「そうよね、私はアメリカではこの目では見ていないけれど」
「それでもですね」
「アメリカにもまだいたのよ」
「そうなんですね」
「百年少し前はね」
 そうだったとです、ドロシーはジョージにお話するのでした。
「それでヘンリーおじさんとエマおばさんのお父さんの頃はね」
「凄く多かったんですよね」
「もう群れがお空を覆う位で」
 ドロシーはおじさんとおばさんから聞いたお話もしました。
「木に止まると木の葉よりも鳩が多い位にね」
「沢山止まったんですね」
「そうだったらしいわ、アメリカに凄く沢山いたのよ」
「それがいなくなったんですね」
「そうなの」
「ううん、残念なお話ですね」
 ジョージも悲しいお顔で言います。
「それは」
「ジョージはこのお話は聞いたことがあるの?」
「いなくなったことは聞いていました」
 アメリカからリョコウバトがそうなったことはというのです。
「ですが」
「それでもよね」
「はい、そこまで沢山いたことは」
「聞いてないのね」
「そうでした」
 こうドロシーにお話しました。
「まだ」
「けれど今聞いたわね」
「それで覚えました」
「そうしたこともあったのよ」
「けれどオズの国ではですね」
「リョコウバトも他の生きものもいるから」
 だからだというのです。
「楽しんでね」
「わかりました、見ることも」
「そうしてね」
「はい、ただ」
「ただ?」
「リョコウバトは元々色が青かったそうですが」
 ジョージは今自分達が見ているリョコウバト達を見つつ言うのでした。
「あのリョコウバト達はマンチキンのリョコウバトだからですね」
「そう、青いのよ」
「そのことからですね」
「それぞれの国で色が違うから」
 リョコウバト達もというのです。
「他の鳩達もね」
「そういうことですね」
「そうよ、それでね」
「それで、ですね」
「他の生きものもよ」
 他の外の国ではいなくなった生きもの達もというのです。
「それぞれの国の色があるよ」
「じゃあカワウソも」
「そうよ」
 ドロシーは恵理香にも答えました。
「それぞれの国の色よ」
「他の生きものと同じで」
「マンチキンなら青でね」
「ウィンキーなら黄色ですね」
「そうした色になっているのよ」
「そうなんですね、わかりました」
「まあ僕達はね」
「僕達の色だけれどね」
 ここで臆病ライオンと腹ペコタイガーもお話しました。
「僕達がこの色でいたいって思っているから」
「この色なんだ」
 二匹共それぞれ他の国の生きものの毛並みです、腹ペコタイガーにしても奇麗な黄色と黒の虎模様です。臆病ライオンも立派な鬣までそうです。
「マンチキン生まれだけれどね、僕は」
「僕は元々カドリングにいたんだよ」
「あっ、そういえば」 
 ジョージは腹ペコタイガーのカドリングにいたという言葉であることに気付きました。
 そしてです、腹ペコタイガー自身に尋ねました。
「腹ペコタイガーさんって」
「うん、カドリングにいてね」
「臆病ライオンさんとはじめて会ったのは」
「そうだよ、ライオン君が森の大蜘蛛を退治した時にね」
「はじめて会ったんだね」
「その時からの知り合いで」
「ずっと一緒にいるんだったね」
「思えば長い縁だね」
 腹ペコタイガーはジョージに笑ってお話しました。
「僕とライオン君は」
「本当にそうだね」
「王宮にも入ってね」
「色々な人達とも出会って友達になって」
「随分とね」
「最初の頃と比べると賑やかになったよ」
 こうお話するのでした、そして。
 腹ペコタイガーもリョコウバト達を見ました、そうしてでした。
 その長い舌を出して舌なめずりをしてこんなことを言いました。
「あの鳩達美味しいだろうね」
「また食べることを言うんだ」
「だから僕はいつもお腹が空いているんだよ」 
 その名前の通りとです、ジョージにも言います。
「だからね」
「全く、いつも誰よりも食べているのに」
「誰よりも食べてもね」
「誰よりもお腹が空くの?」
「そうなんだ」
 だからだというのです。
「それでね」
「リョウコウバトも食べたいんだ」
「食べることを許してもらったらね」
 その時はというのです。
「食べたいね」
「それでなんだ」
「うん、ただね」
「ただ?」
「食べることを許してもらってね」
 それで、というのです。
「鳩君達もいいっていうのならね」
「食べるんだね」
「そうなった場合はね」
「まあね、誰かが許してもね」
 ジョージは腹ペコタイガーにこう答えました。
「鳩君達はいいって言わないよ」
「やっぱりそうなんだ」
「言う筈がないよ」 
 とてもというのです。
「そうしたことはね」
「そうだよね、やっぱり」
「そもそもタイガーさんお空は」
「魔法をかけてもらわないとね」
 その力を借りないと、というのです。
「飛べないよ」
「そうだよね、じゃあね」
「あの鳩君達は食べられないね」
「諦めるしかないね」
「じゃあ何を食べようかな」
「何でもあるじゃない、この国だと」
 ジョージは腹ペコタイガーにこのことはあっさりと答えました。
「それこそ」
「鳩でも何でもだね」
「うん、テーブル掛けからも出してもらえるし」
「勿論今回も持って来てるわよ」
 ドロシーがここでジョージ達に笑顔で言ってきました。
「テーブル掛けはね」
「そうですね、じゃあ」
「お昼になればだね」
「ええ、腹ペコタイガーもね」
 その彼もというのです。
「好きなのを言ってね」
「そして食べてだね」
「楽しんでね」
「それじゃあ鳩料理を出してもらおうかな』 
 ここでこうも言った腹ペコタイガーでした。
「リョコウバト君達じゃなくてもね」
「ええ、じゃあその時に言ってね」
「そうするね」
「鳩か、いいね」
 鳩料理と聞いてです、神宝は実に楽しそうに言いました。
「あれ美味しいんだよね」
「えっ、鳩って食べられるの?」
「食べられるよ」
 神宝は自分の言葉に驚く恵理香にあっさりと返しました。
「それで美味しいよ」
「そうなの」
「日本人は鳩食べないんだ」
「食べられるなんて知らなかったわ」
「そうなんだね、けれどね」
「中国じゃ食べるのね」
「いや、中国以外でも食べるよ」
 鳩はというのです。
「欧州とかベトナムでもね」
「そうなのね」
「うん、結構食べるから」
「ううん、鳩もなのね」
「そういえばアメリカでも」
 ジョージはリョコウバトを見つつこんなことも言いました。
「あの鳩も食べてたっていうし」
「アメリカでも鳩を食べるの」
「そうなんだ」
「アメリカ人って結構色々食べるのね」
 ナターシャはそのジョージに言いました。
「意外と」
「そうだね、色々な国から人が来てるから」
「それでなのね」
「色々なものを食べるからね」
「だから鳩もなのね」
「食べるよ」
 ジョージはこうナターシャに答えました。
「実際にね」
「そうなのね」
「けれどロシアも」
「アメリカや中国程じゃないわ」
 ロシアにも色々な人がいるけれど、というのです。
「我が国も多民族国家だけれどね」
「それでもなんだ」
「というかどっちも凄いわ」 
 ナターシャはジョージと神宝も見てお話しました。
「中国なんてお空を飛ぶものは飛行機以外はよね」
「うん、鳥ならね」
「それこそ鳩だけじゃなくて」
「何でも食べるよ」
 神宝も実際にそうだとナターシャに答えます。
「そうだよ」
「そうよね、四本足だと机や椅子以外、河や海のものは船以外」
「草木は毒がないとね」
 こちらもというのです。
「何でも食べるよ」
「ロシアはそこまでいかないから。あと」
 恵理香もです、ナターシャは見ました。
「日本人も何でもなのよね」
「そうかしら」
「ええ、色々なものを食べるじゃない」
「そんなに?」
「ええ、そう思うわ」
「日本人は別に」
「食べてるよ」 
 カルロスはナターシャと同じ意見でした。
「実際八条学園でも色々な食材があるじゃない」
「別にね」
「だって鰐も何でも食べるから」
「その鳩のお料理もあるじゃない」
 ナターシャは鳩もお話に出しました。
「フランス料理とかであるでしょ」
「あっ、そうなの」
「ええ、そういうのを見たら」
「日本人も色々食べるよ」
 実際にそうだとです、二人で恵理香にお話するのでした。そうしたお話もしながら皆でリョコウバト達を見ていました。



遂に飛行船で出発。
美姫 「空の旅は初めてね」
ああ。しかも、今回は結構、大所帯だな。
美姫 「いつにもまして賑やかね」
だな。今回の旅はどうなるのか。
美姫 「次回も待っていますね」
待っています。



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