『オズのカエルマン』




                        第八幕  迷路の森

 ネイティブの集落を越えてです、一行はさらにです。
 先に先にと進んでいきます、その中で。
 恵梨香は紫の草原の中にいてしみじみとして言うのでした。
「紫の草も奇麗ですね」
「うん、とてもね」
 カエルマンが恵梨香のその言葉に応えます。
「奇麗だね」
「はい、とても鮮やかな紫で」
「オズの国の紫の中でもね」
「草や葉の紫は奇麗ですね」
「他の国のそれぞれの色もそうだけれどね」
 マンチキンの青、ウィンキーの黄色、カドリングの赤もです。そしてもっと言えばエメラルドの都の緑もです。
「ギリキンのね」
「紫もですね」
「そう、奇麗なんだよ」
「この通りですね」
「そうなんだよ」 
 カエルマンはその紫の草原の上に黄色い服でいます、そのうえで恵梨香に楽しくお話をしています。彼もまたその紫を見て楽しみながら。
「宝石、アメジストみたいな」
「とても奇麗な紫で」
「見ていて飽きないよ」
 カエルマンはスキップさえしそうな位うきうきしています。
「僕も」
「カエルマンさんもですね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「この草原だけじゃないからね」
「奇麗な紫が見られるのは」
「森もそうだし」
「これまでの森もそうでしたね」
「そう、そしてね」
「これから行く場所も」
「奇麗な紫があるよ」
 そうだというのです。
「それも楽しみにしておいてね」
「わかりました」
「さて、もうね」
 見ればお日様が傾いてきています、カエルマンはそのお日様も見てそのうえで五人にこう言ったのでした。
「少ししたら」
「日が落ちますね」
「夕刻になれば」
 その時はというのです。
「またテントを出して」
「そして、ですね」
「休もう」
 その時にというのです。
「そうしよう」
「わかりました」
 ジョージがカエルマンの言葉に頷きました。
「今日もですね」
「ゆっくりと休もうね。それと」
「それとっていいますと」
「休む場所はいつも通りね」
「湖か川の傍ですね」
「そこにしよう」
 是非にというのです。
「そうしよう」
「その湖か川で」
「そう、身体も奇麗にしないとね」
 カエルマンはこのことも忘れていませんでした。
「駄目だからね」
「冒険の間も清潔ね」
「出来る限り毎日身体を洗わないと」
「よくありませんよね」
「身体を奇麗にすることは清潔になるだけじゃないんだ」
 カエルマンはその身体を奇麗にする時のことを楽しみにしながらジョージにお話していきます。そのよさを。
「気分もよくなるし」
「奇麗になって」
「身体じゃなく心にもいいんだよ」
「だから出来る限りはですね」
「そう、冒険の間もね」 
 今の時の様にというのです。
「奇麗にすべきなんだよ」
「そういうことですね」
「僕は特にね」 
 カエルマンは自分の事情のこともお話しました。
「お水がないとね」
「蛙だからですね」
「蛙はお水がないと駄目なんだ」
 カエルマンはとても大きな、二本足で歩いてしゃべる蛙です、服を着ていて。だからこそお水はどうしてもというのです。
「だからね」
「休む場所の傍にお水が欲しい」
「そうなんだ」
「そういえばカエルマンさんはお水を見付けることが得意ですね」 
 カルロスもカエルマンに尋ねました。
「いつも見付けられますね」
「うん、匂いがするからね」
 カエルマンはお鼻をくんくんとさせつつカルロスにも答えました。
「だからね」
「それで、ですか」
「見付けられるんだ」
「近くにあるお水の場所を」
「そうだよ、ここから一時間半程北に進んだら」 
 その北の方を指差してまた言ったのでした。
「お池があるから」
「そこを進んで」
「そう、それでね」
「お池のところで、ですね」
「今日は休もうかな」
「それがいいね」
 魔法使いもカエルマンのその提案に笑顔で頷きました。
「これから一時間半歩いたらね」
「時間的にも丁渡いいね」
「そう、だからね」
 それで、というのです。
「お池まで行こう」
「そして休んで」
「後はね」
「晩御飯も食べよう」
「食べるものは」
 それはです、何かと言ったナターシャでした。
「なにがいいでしょうか」
「そうだね、その時に決めようか」
「休むその時に」
「うん、そうしよう」
 カエルマンはナターシャにはこう言いました。
「その時に決めても遅くないからね」
「そうですね、確かに」
「うん、あとナターシャは」
「私が何か」
「寒さに強いらしいね」
「はい、オズの国は常春なので関係ありませんが」
 それでもというのです。
「外の世界にいる時は」
「寒くてもだね」
「平気です」
 そうだというのです。
「日本の寒さ位だと」
「そうなんだね」
「ロシアの寒さのことを思うと」
 それこそというのです。
「平気です」
「そうなんだね」
「雪にも氷にも慣れています」
 冬のそうしたものに対してもというのです。
「本当に」
「あと、だけれど」
 今度はケーキがナターシャに尋ねました。
「お風呂はサウナね」
「あれが一番好きですね」
「そうよね」
「ロシアではサウナなので」
 サウナがお風呂だからというのです。
「好きです」
「そうよね」
「冒険の間はサウナには入られないですが」
「王宮にいる時は」
「いつもご馳走になっています」
「サウナは身体にもいいからね」
 神宝がここでお話に入りました。
「身体の中の悪い部分を出せるから」
「うん、汗をかいてね」
 魔法使いが神宝に応えます。
「それでね」
「いいんですよね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「僕も王宮ではよく入ってるよ」
「そして身体の中の悪いものをですね」
「出しているしサウナそのものも」
 それ自体もというのです。
「楽しんでいるよ」
「そちらもですね」
「そう、楽しんでるよ」
「サウナって汗をかいた後で」
 神宝はそのサウナのことをさらにお話しました。
「水風呂に入って」
「身体を冷やすね」
「そしてまたサウナに入ってですよね」
「ああして暑い場所、冷たい場所に交互に入ることもね」
「楽しまれてるんですね」
「そうだよ、じゃあ王宮に帰ったら」
「その時はですね」
「楽しもう」
 こうしたことをお話しながらです、皆はまずはそのお池のところまで向かいました。そしてお池のところまで来て。
 そしてなのでした、お池のところにテントを設けてです。
 テーブル掛けを開きました、それで出したメニューは。
「ううん、今日も豪勢ですね」
「とても美味しそうですね」
「どのメニューも」
「それもかなり」
「うん、今日も楽しもう」
 カエルマンも言うのでした、見ればです。
 テーブル掛けの上にです、カレーライスにです。
 ハンバーグにナポリタン、野菜サラダにアイスクリームがあります。恵梨香はそのメニューを見て言いました。
「洋食ですね」
「日本のだね」
 神宝も応えます。
「そうだね」
「ええ、ずっと洋食は欧州の食べものだと思ってたけれど」
「日本の料理だからね」
「そうなのよね」
「うん、和食じゃないけれどね」
 それでもというのです。
「これもね」
「日本のお料理よね」
「アメリカにも入ってるのね、洋食」
 このこともです、恵梨香はしみじみとして言うのでした。
「そしてオズの国にも」
「そうなんだよね、ナポリタンは結構冒険の間に出してるけれど」
 魔法使いが恵梨香にお話します。
「何時食べても美味しいよ」
「面白いスパゲティですね」
「本当にね、そうそう」
 ここで、でした。魔法使いはコロッケも出しました。お皿の上に茶色の楕円形のとても美味しそうなものも出て来ました。
「これも忘れたらね」
「コロッケもですか」
「駄目だね」
「そのコロッケも洋食のコロッケですね」
 ジョージは魔法使いに尋ねました。
「日本の」
「うん、ジャガイモのコロッケだよ」
「やっぱりそうですね」
「これがとてもね」
「美味しいですよね」
「これで御飯を食べると」
 それこそ、というのです。
「凄く美味しいんだよね」
「おソースをかけて」
 カルロスは早速言いました。
「そうしてですね」
「うん、そうだよ」
「お野菜はサラダと」
「ジャガイモも欲しくなったからね」
「コロッケも出されたんですね」
「そうだよ、じゃあね」
「これから皆で」
「洋食を食べよう」
 今日の晩御飯をというのです、こうお話してでした。
 皆でフォークとナイフ、それにスプーンを使って洋食を食べるのでした。ナターシャはハンバーグ、おソースをたっぷりとかけたそれをフォークとナイフで切ってお口の中に入れつつ目を閉じて噛みながら言いました。
「この味がいいのよ」
「ナターシャもハンバーグ好きなのね」
「はい」
 こうケーキにも答えます。
「それもかなり」
「洋食のハンバーグが」
「好きです、ロシアでも食べています」
「そうなのね」
「ハンバーガーも好きで」
「あれも美味しいわね」
「ですからよく食べます」
 ハンバーグもハンバーガーもというのです。
「オズの国でも外の世界でも」
「日本でも」
「そうしています」
「ナターシャって本当にハンバーグ好きなんですよ」
「ボルシチとこれが大好きなんです」
 他の四人もケーキにお話します。
「ピロシキも好きですし」
「それとなんです」
「ボルシチ、ハンバーグ、ピロシキがあれば」
 ナターシャは微笑んで言うのでした。
「私はそれで充分です」
「その三つだけでなの」
「暖かいお家と服があって」
 それで、とです。ケーキにも言うのでした。
「お風呂があれば」
「それでなのね」
「充分です」
「何かあまり欲がないのね」
「欲を張ることは好きじゃないです」
「そうなのね」
「何かね、ロシア人ってね」
 ここでジョージが首を傾げさせて言うのでした。
「欲のない人多いよね」
「そうだよね」
 神宝もジョージの言葉に頷きます、二人共カレーライスを食べています。ルーの中に薄くスライスした牛肉とです。人参にジャガイモ、玉葱が入っています。
「ナターシャにしてもね」
「そうだよね」
「欲がなくて」
「少しのことで満足するよね」
「僕達だったらもっともっと欲しくても」
「ナターシャの場合は少しなんだよね」
「多くを欲張っても仕方ないから」
 ナターシャは二人に答えました。
「だから」
「いつもそう言ってるね」
「欲を張ってもって」
「仕方ないって」
「ナターシャは言うね」
「そう、子供の頃お祖母さんに言われたの」
 ナターシャのお祖母さんにというのです。
「欲張ったらいけないって」
「それで今も」
「欲を張らないんだね」
「少し我慢すればいいし」 
 足りないと感じても、というのです。
「だからね」
「少しのものだけで」
「満足するんだね」
「そうなの」
 こう言いつつです、ナターシャはハンバーグを食べてからコロッケも食べました、その他の食べものも。そしてなのでした。
 皆洋食を奇麗に食べ終えてです、その後は。
 アイスクリームも食べました、カルロスはそのバニラのアイスを食べてにこりとしてlこうしたことを言いました。
「最後はね」
「アイスだっていうんだね」
「はい、デザートがないと」
「そしてその中でも」
「今日は気分的にです」
 カエルマンに答えるのでした。
「アイスで」
「だからだね」
「最高の気持ちです」
 アイスを食べつつ言うのでした。
「これで後は」
「うん、身体を洗ってね」
「そして、ですね」
「歯も磨いてね」
 そしてというのです。
「後はね」
「寝るだけですね」
「気持ちよく寝よう」
 テントの中でというのです。
「そうしようね」
「朝までぐっすりとですね」
「食べて寝ないと」
 それこそというのです。
「身体はもたないよ」
「その通りですよね」
「そう、だから朝まで寝よう」
「そして朝になれば」
 その時はというのです。
「出発しましょう」
「朝を食べてね」
 こうしたことをお話してでした、皆で洋食を楽しく食べてです。
 身体も奇麗にしてそれからじっくりと休んで、でした。
 朝はトーストとハムエッグ、それにポテトサラダと牛乳を楽しんででした。それからです。出発してそれからでした。
 草原を出ました、ですが草原を出てです。
 皆すぐに目の前に思わぬものを見ました、それはといいますと。
「?この場所って」
「そうよね」」 
 恵梨香は目の前の森を見つつ神宝に答えました。
「木々がね」
「壁になってるね」
 紫の木々が壁を作ってなのです、それで。
 前が門になっています、そして看板が掲げられていますが。
『迷路の森』
 こう書かれています、その看板まで見てです。
 神宝は腕を組んで、です。皆に言いました。
「今度は迷路だね」
「そうね、それでここを通らないと」
「先に通れないみたいだね」
「それじゃあ」
 恵梨香は神宝に応えながらでした、そして。
 少し考えてです、言うのでした。
「中に入るしかないみたいだし」
「迷路だと」
 神宝もです、考えてです。
 また皆にです、こう言いました。
「ここは皆で一緒に行かないと」
「うん、はぐれたらね」
 どうなるかとです、ジョージが神宝に応えました。
「大変だから」
「皆でまとまって行こう」
「それがいいね、それと」
 ここで、です。神宝は森の上を見上げました。壁になっている木々は確かに高いですがそれでもでした。
「迷路はね」
「そう、あらかじめね」
「出口、そして迷路の状況がわかれば」
「突破することが楽になるね」
 カエルマンが神宝に言うのでした。
「ずっとね」
「そうですよね」
「ではここはね」
「ここは?」
「僕の出番だね」
 カエルマンは出番が来て大喜びでした。
「ジャンプしてそうして」
「上から見て」
「それで出口の場所や迷路の状況を確かめるよ」
 こう皆に言うのでした。
「そうしていこう」
「お願い出来ますか?」
「勿論だよ」
 カエルマンは神宝ににこにことして答えました。
「蛙のジャンプはこうした時にあるものだからね」
「上から見る為に」
「そしてジャンプで何かを乗り越える為に」
 だからこそというのです。
「今から跳ぶよ」
「じゃあお願いします」
「それではね」
 こうしてでした、カエルマンは早速です。
 大きくジャンプしました、そして。
 ジャンプしたその上から迷路の森の状況を見ました、そうしてから着地してです。皆に笑顔で言いました。
「出口は北だったよ」
「北ですか」
「だから迷路を突破したらね」
「それで、ですね」
「青龍の場所までね」
「行けるんですね」
「そのままね」
 こう皆にお話するのでした。
「だからまずは突破しよう」
「わかりました」
「そしてね」
 ここでまた言うカエルマンでした。
「迷路の状況だけれど」
「そっちはどうした感じですか?」
「木々が壁になっていてね」
 そしてというのです。
「それが角の様になっていてね」
「あっ、テーマパークとかでよくある」
「ああした迷路になっているよ」
 それが迷路の状況だというのです。
「木々の間は通り抜けられないよ」
「じゃあ本当に木と木の壁の迷路をですね」
「通ってね」
「そうして出口まで行かないといけないんですね」
「そうだよ」
「わかりました」
 神宝はここまで聞いて頷きました、そしてです。
 ナターシャは入口の看板を見つつです、カルマンに言いました。
「問題は」
「うん、何かな」
「難しい迷路ですよね」
「結構ね」
「それじゃあ迷って入口に戻ったりしたら」
「それが問題だね」
「そうですよね」
「そのことが気をつけていかないとね、それならね」
 ここでまた言ったカエルマンでした。
「木々の壁の間は通路になっていてね」
「その通路に何が」
「うん、通路の上には枝葉がないんだ」
 そうした状況だというのです。
「僕もジャンプ出来るから」
「それじゃあその都度」
「僕達の場所をチェック出来るよ」
 カエルマンがジャンプして上から一行の迷路の中の状況をチェックしてです。それが出来るというのです。カルロスにお話するのでした。
「だからね」
「迷うことも」
「それだと少ないし」
「入口、ここに戻ることも」
「ないよ」
「そうですか、それじゃあ」
「中に入ろう」
 カエルマンは皆に笑顔で言いました。
「そしてこの迷路を通り抜けよう」
「わかりました」
「最悪ね、カエルマン君がジャンプ出来なくても」
 魔法使いはカエルマンが怪我をしたりしてそうなった時のことも頭に入れていました、不測の事態についてもです。
「迷路は片方に手をついて」
「そして、ですね」
 神宝がまほ使いに応えます。
「壁を伝っていけば」
「何時かは出口に出られるよ」
「そうしたやり方もありますね」
「うん、ただここで気をつけないといけないことは」
「それは一体」
「この森の中に何がいるか、あるかだね」
 それが問題だというのです。
「ほら、ラビリンスはね」
「中にミノタウロスがいましたね」
 神宝はギリシア神話のことを思い出しました、ここで。
「そうでしたね」
「うん、この迷宮もそうかな」
「そういえば森ですから」
「森には生き物がいるよ」
 このことも言うのでした。
「特にオズの森は必ずね」
「森の中に何がいるのか」
「それが問題だね」
「そう、この森は広いよ」
 カエルマンはここでこのことも言いました。
「出口は僕が思いきりジャンプしてやっと見えた位だから」
「北にあることが」
「そう、そしてね」
 カエルマンは神宝にさらにお話しました。
「生き物は森の中に結構いるみたいだけれど」
「具体的にどんな生き物がいるかは」
「確かめきれなかったよ」
「そうですか」
「ドラゴンがいてもね」
 これはオズの国ならばです。
「おかしくないね」
「そうですね、確かに」
 神宝もです、オズの国のことを考えて言うのでした。
「この国は色々な生き物がいますから」
「カバキリンもね」
「あの生き物もいましたね」
「あの生き物は草原にいるけれど」
「森にいる種類もいるんですか?」
「確かね、この国にもいるよ」
 森に住んでいるカバキリンもいるというのです。
「だからね」
「それで、ですね」
「うん、若しカバキリンがいたら」
「気をつけないといけないね」
「若し怖い生き物と会ったらどうします?」 
 ジョージは首を傾げさせて言いました。
「その時は」
「その時はね」
 ここで魔法使いが自分の鞄からあるものを取り出しました、それは霧吹きでした。その霧吹きを皆に見せて言いました。
「これを使おう」
「霧吹きですか?」
「中に眠り薬が入っているんだ」
 霧吹きの中にというのです。
「だからね」
「若し猛獣に出会っても」
「これを猛獣の顔にかけてね」
 霧吹きの中にある眠り薬をというのです。
「眠らせればいいよ」
「そうすればですね」
「いいよ」
「飛び掛かって来る様な猛獣だとどうしますか?」
 ケーキが魔法使いに尋ねました。
「その場合は」
「その場合はね」
 魔法使いはここでも知恵を出しました、その知恵はといいますと。
「ケーキのクッキーにね」
「霧吹きの中の眠り薬をかけて」
「うん、そしてね」
「それをその猛獣に食べさせるんですね」
「前に投げたりしてね」
「そうして食べさせて」
「眠ってもらおう」
 これが魔法使いの知恵でした。
「この眠り薬はかかったり食べたりしたらすぐに寝るから」
「そんなに強いんですね」
「そうなんだ」
「じゃああらかじめクッキーにお薬をかけておいて」
「備えはしておこうね」 
 実際にケーキが出したクッキーにです、魔法使いは霧吹きからお薬をかけました。そしてそれを今は袋の中に包んでしまっておいてです。
 そしてです、カエルマンが皆に言いました。
「じゃあね」
「はい、今から」
「出発ですね」
「そして出口を目指そう」
 皆を勇ませる言葉でした。
「これからね」
「わかりました」 
 神宝がカエルマンのその言葉に笑顔で頷きました、そしてです。
 迷路の中に入りました、その中に入って先に進んでいきます。神宝は先に進みながら皆にこうしたことを言いました。
「あともう行ったという場所には」
「どうしたのかな」
「目印を付けておいた方がいいかな」
 こうジョージにも言うのでした、紫の木々の壁に包まれた迷路の中で。
「そうした方がいいかな」
「目印?」
「うん、何かね」
「目印があると確かにね」
 どうかとです、ジョージも言いました。
「迷路はいいね」
「前来た場所ってわかるからね」
「迷わなくなるよね」
「そうだよね」
 カエルマンのジャンプによるチェックと合わせてです。
「余計にいいね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「何かで目印を付けていよう」
「そうだね、ただ目印っていっても」
 それはとです、ジョージは難しい顔で言いました。
「何で目印にしようか」
「それが問題だよね」
 神宝もこのことについてふと気付いたのでした。
「そういえば」
「森といえば枝や葉だけれど」
「多過ぎるね」
 見れば通路になっている場所にもです、枝や葉が一杯落ちています。確かに枝や葉はあるにはあるのですが。
「これだけ多いとね」
「手に入れることは出来てもね」
「目印にするには」
「他の枝や葉に埋もれてしまうよ」
「そうだよね」
「だからね」
 それで、というのです。
「これはね」
「目印には使えないね」
 森の中にある枝や葉はというのです。
「これは難しいね」
「ああ、それならね」
 魔法使いはここでも鞄を出しでした、その中からです。
 あるものを出しました、それは一本の白いチョークでした。
「これを使おう」
「あっ、チョークですか」
「それを目印に使うんですね」
「このチョークも魔法のアイテムでね」
 それ故にというのです。
「地面にも書けるんだ」
「地面にもですか」
「土の上にも」
「そう、だからね」
 それでだというのです。
「目印として地面に書いていこう」
「ここはもう行ったと」
「そうですね」
「そうしていこう、神宝の言葉で思い出したよ」
 このチョークのことをというのです。
「これを使っていけばいいよ」
「じゃあ曲がり角とかに来たら」
「その時は」
「目印を付けていこう」
 こうしてでした、一行は今度はです。
 目印も付けていって先に進むのでした、時折カエルマンがジャンプをして道を確かめつつです。迷路の中を慎重に進んでいきます。
 その中で一行は時々森の中の動物を見ました、兎に鹿に栗鼠にです。
 鳥や狐もいます、そして二時間程歩いたところで左の道からです。
 十頭位の狼が出て来ました、その狼達を見てです。
 カルロスは思わず身構えました、ですがそのカルロスにカエルマンが言いました。
「狼は大丈夫だよ」
「あっ、狼は実は」
「そう、人を滅多に襲わないんだ」
「相当にお腹が空いていないと」
「そう、だからね」
「狼は大丈夫ですね」
「そうだよ、それにオズの国の狼はね」
 その彼等はといいますと。
「とても優しくて大人しいんだ」
「犬みたいにですか」
「そう、そもそも犬は狼が家畜になったもので」
「だから人も襲わないし」
「そしてそのオズの国の狼はね」
 彼等はといいますと。
「とても大人しくて優しい」
「安心出来る生き物なんですね」
「そうだよ」
「その通りだよ」
 狼のうちの一頭がここで言ってきました。
「僕達は人を襲ったりしないよ」
「実際にそうなんだね」
「そう、だから安心してね」
 こうカルロスにも答えるのでした。
「君達もね」
「わかったよ、それじゃあね」
「そういうことでね。あとね」
「あと?」
「オズの魔法使いさんにカエルマンさんに」
 狼はまずはこの二人を見ました、そして。
 ケーキも見てです、こう言いました。
「ケーキさんだね」
「私達のこと知ってるのね」
「貴女達は有名人だからね」
「それでなのね」
「僕達も知ってるよ」
 そうだというのです。
「貴女達のことは」
「ううん、魔法使いさんとカエルマンさんだけでなく」
「オズの国一のクッキー作り」
 狼はケーキににこにことして言うのでした。
「有名だよ」
「私もなのね」
「そうだよ、だからね」
 狼はその長い舌を出してにこにことしだしました、そしてです。
 他の狼達もです、にこにことなってでした。ケーキに言いました。
「ケーキさんのクッキーをね」
「ここで会ったのも何かの縁だし」
「今あればだけれど」
「よかったらね」
「僕達にね」
「ご馳走してくれるかな」
「クッキーならね」
 そえならとです、ケーキははっとしたお顔になってでした。
 左手に持っているバスケットから黄色い袋に入っているものを取り出しました、ですがここでナターシャが言いました。
「あの、眠り薬をかけた」
「あのクッキーのことね」
「それではないですよね」
「あのクッキーは紫の袋よ」
「それに入れたんですね」
「そう、だからね」
「そのクッキーは大丈夫ですね」
 そうだというのです。
「食べても」
「そう、食べても寝たりしないわ」
「だからそのクッキーをですね」
「狼さん達にプレゼントするわ」
「わかりました」
 ナターシャもここまで聞いて頷きました、そしてです。
 狼達はそのクッキーを食べてです、とても嬉しそうに言いました。
「いや、噂以上」
「そうだよね」
「ケーキさんのクッキーの味はね」
「凄いよ」
「凄く美味しいよ」
 こう言うのでした。
「こんな美味しいお菓子があるなんてね」
「そしてそのお菓子を食べられるって」
「魔法使いさん達も幸せだよ」
「本当にね」
「少しいいかな」
 カエルマンはそのとても嬉しそうな狼達に尋ねました。
「君達に聞きたいことがあるけれど」
「うん、何かな」
「僕達に何か聞きたいことがあるっていうと」
「一体何かな」
「この森に人を襲う様な獣はいるかな」
 尋ねたのはこのことでした。
「カリダみたいなのは」
「ううん、カリダはいないけれど」
「熊がいるよ」
「普段は大人しいけれどね」
「最近ね」
「妙に機嫌が悪いんだ」
 狼達はこうカエルマンに答えました。
「それで僕達もね」
「あまりね」
「その熊には近寄っていないんだ」
「不機嫌なのがわかるから」
「だからその熊にはね」
「注意してね」
「そうなんだ、わかったよ」
 カエルマンは頷きました、それで。
 皆にです、こう言いました。
「じゃあ熊に会ったら」
「そうですね」
 恵梨香がカエルマンに深刻な感じのお顔で答えました。
「気をつけないと」
「熊はね」 
 オズの国の熊はといいますと。
「大抵は大人しいけれど」
「そうでない熊もいますよね」
「うん、僕も襲われたことがあるしね」
 魔法使いはかつてドロシー達と一緒にした冒険のことからお話しました。またこの国に戻って来た時のことです。
「姿が見えない熊にね」
「そうでしたね」
「そう、だからね」
 それでとです、魔法使いは恵梨香にもお話するのでした。
「熊には気をつけないと」
「いけないですね」
「うん、だからね」
 それでというのです。
「その熊がどうして不機嫌か気になるけれど」
「避けますか」
「会えばその時は」
 まさにというのです。
「クッキーの出番だね」
「わかりました」
 ケーキは魔法使いのその言葉に頷きました。
「用意はしています」
「まあ気をつけてね」
 狼達は一行に忠告するのでした。
「熊は怖いからね」
「そうだよね、君達は実は優しいけれど」
 カエルマンが狼のその言葉に応えます。
「不機嫌な熊ときたら」
「あんな怖いものはないよ」
「その通りだね」
「虎や豹より怖いよ」
 狼はこうも言いました。
「あとクズリもいるけれど」
「あっ、クズリは」
 ナターシャがクズリと聞いてすぐに反応しました。
「確かに怖いわね」
「そっちの黒い服のお嬢ちゃんはクズリを知ってるんだね」
「ええ、私の国では有名だから」
 ロシアではというのです。
「クズリのことは」
「身体は小さいけれどね」
「実はね」
「そう、僕達なんかよりずっと怖いよ」
「そうよね」
「クズリって動物園にもいるけれど」
「そんなに怖いんだね」
 恵梨香とカルロスはぴんとこない感じです。
「小さいのに」
「そうなんだ」
「そうなの、だから気をつけてね」
 ナターシャは二人にこう忠告しました。
「クズリにも」
「ええ、わかったわ」
「そうするよ」
「熊とクズリだね」
 ジョージは狼の話をこうまとめました。
「注意しないといけないのは」
「そうだね、特に熊だと思うけれど」
 神宝がそのジョージに応えます。
「クズリにもね」
「注意しないとね」
「クッキーは何時でも出せるから」
 ケーキはもう手に眠り薬をかけたクッキーが入った袋を持っています。何時でも投げられる様にもしています。
「安心してね」
「はい、お願いします」
「僕も用意しておくよ」
 魔法使いも霧吹きを出しています。
「だから安心してね」
「わかりました」
「じゃあいざという時は」
「僕達が何とかするからね」
 魔法使いはにこりと笑って言って子供達を安心させました。
「君達がしなければならないことはね」
「はい、怖がって逃げ出さないことですね」
 リーダー格のジョージが答えました。
「そしてはぐれないこと」
「僕達の後ろに隠れているんだよ」
 そうした猛獣が出て来た時はというのです。
「いいね」
「わかりました」
「後ろは僕が守るからね」
 カエルマンも五人に言います。
「だから安心するんだよ」
「それじゃあ僕達は踏み止どまります」
 神宝はカエルマンの言葉に微笑んで答えました。
「それで」
「そういうことでね」
「ご馳走様」
 お話が一段落したところでクッキーを食べ終えた狼達が言ってきました。
「美味しいクッキーを有り難う」
「いや、楽しませてもらったよ」
「それじゃあね」
「熊とクズリには気をつけてね」
 こう言ってでした、狼達は一行の前からきえて森の通路の先に消えていきました。そして後に残った一行はです。
 魔法使いが目印を付けてからカエルマンがジャンプしてそして道を確かめてです。その案内で正しい道を進んでいくのでした。
 この時です、魔法使いは鞄から方位磁針も出してチェックしました。
 そしてです、こう言いました。
「方位磁針は大丈夫だね」
「それは効いていますか」
「うん、何ともないよ」
 見れば普通に北を指し示しています。
「方向は確かめられるよ」
「そうですか、じゃあ北に行けば」
 神宝はカエルマンの言葉を聞いて笑顔で頷きました。
「いいですね」
「おおむねね」
「そういうことですね」
「迷路で大事なことはね」
 それは何かといいますと。
「方向も確かめることだから」
「それを忘れると」
「厄介なことになるよ」
「その磁石はいつも持っておられるんですか?」
「そうなんだ、冒険の時はね」
 それこそとです、魔法使いも神宝に答えます。
「いつも方角を確かめる必要があるから」
「それでなんだ」
「そう、いつも持っているんだ」
「方角は大事だから」
「それでだよ」
 まさにというのです。
「いつも時々見てチェックしているんだ」
「冒険の必須アイテムですね」
「そうだよ、では行こう」
「それではね」
 こうしたことをお話してでした、魔法使いは方角も確かめつつでした。迷路を進んで行くのでした。青龍のところに向かう為に。



今度は迷路の森か。
美姫 「進むのはカエルマンと魔法使いのお蔭でそう迷わずに進めそうね」
だな。けれど、全く問題がないという訳でもないみたいだな。
美姫 「機嫌の悪い熊がいるみたいね」
出来れば会わずに抜けたい所だけれどな。
美姫 「万が一の備えもしてあるし、多分、大丈夫だと思うけれど」
それでも油断は禁物だな。
美姫 「無事に迷路を抜け出す事が出来るかしら」
次回も待っています。
美姫 「待っていますね〜」



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