『オズのカエルマン』




                      第五幕  ルーンの村

 一行はギリキンの国の中を進んでいました、この国はといいますと。
「本当に何でもね」
「紫だね」
「うん、草も木もお家もね」
 ジョージとカルロスが神宝に答えます、そのギリキンの国を歩きつつ見回しつつです。黄色い煉瓦の道を歩きながら。
「紫色だね」
「何もかもが」
「うん、こういうのを見るとね」
 それこそとも言う神宝でした。
「ギリキンの国に来たって思うね」
「田畑も紫でね」
「それも鮮やかな紫で」
「本当にね」
「ここはギリキンの国だよね」
 こうしたことをお話しつつでした、ギリキンの国を見ているのでした。
 そしてです、神宝は畑の西瓜も見ました、その西瓜はといいますと。
「いや、西瓜も」
「紫なのね」 
 恵梨香が応えます。
「紫と黒のね」
「縞模様だね」
「西瓜の中もかしら」
「赤とか黄色じゃなくてね」
「紫よね」
「うん、そうだよ」
 二人にです、魔法使いが答えました。
「他の国の西瓜と一緒で」
「ギリキンの色で」
「紫だよ」
 ギリキンの色であるこの色だというのです、西瓜の中も。
「とても美味しいよ」
「何かそう聞きますと」
 ナターシャが言うことはといいますと。
「食べたくなりました」
「ギリキンの西瓜をだね」
「はい、かなり」
 クールですが実際に食べたそうなお顔です。
「そうなりました」
「そうだね、じゃあね」
「また機会があれば」
「ギリキンの西瓜を食べよう」
 その紫のそれをです。
「是非ね」
「ええ、それじゃあ」
「これから」
 こうしたことをお話してでした、一行は。
 先に進んでいきます、ギリキンの人達のお家が煉瓦のさ右にあって農作業をしたり牧場で牛や羊のお世話をしています。
 そしてです、その人達もです。
 日が下がるにつれてでした、お家の中に戻っていきます。そして徐々に赤が深まり暗くなっていく中でなのでした。
 魔法使いは皆にです、こう言いました。
「さて、夜になるから」
「もう僕達もだね」 
 カエルマンが魔法使いに応えます。
「休もうというんだね」
「そうしよう」
 こう言うのでした。
「そろそろね」
「そうだね、じゃあね」
「テントを作ろう」
 休む為のそれをというのです。
「それと身体を奇麗にする為に」
「あそこに湖があるよ」
 カエルマンは左手の少し離れた場所に湖を見付けてそうして魔法使いに対してその場所を指し示しました。
「丁渡いい具合にね」
「そうだね、それじゃあね」
「ここで休むべきだね」
「うん、あそこの近くでね」
 その湖のというのです。
「休もう」
「それどうかな」
 カエルマンは魔法使いとお話をしてからでした、ケーキと五人にも尋ねました。
「今夜はね」
「わかりました」
 最初に答えたのはケーキでした。
「今日はあそこで」
「うん、休もう」
「それじゃあ」
「僕達も」
「お願いします」 
 五人も答えてでした、そうしてです。
 一行は湖のほとりのところまで行ってでした、そこで魔法使いが小さな布を二枚取り出しますとそれがです。
 あっという間に大きなテントになりました、そのテントを出してからです。皆に対してにこりと笑って言いました。
「じゃあ今日はね」
「はい、そのテントに入って」
「そうしてですね」
「休もう、あと身体を奇麗にするのなら」
 そうしたいならともお話するのでした。
「そこの湖でね」
「傍のボディーソープとシャンプーの成る木も取って」
「そうしてですね」
「入って」
「奇麗にすればいいですね」
「だからね」
 それでというのです。
「今日はここで休もうね」
「わかりました」
「じゃあそうしましょう」
「そういうことでね、ただ身体を奇麗にするのなら」
 その時はといいますと。
「気をつけることがあるよ」
「僕達は男の子のと女の子が一緒だからね」
 カエルマンも皆にお話します。
「湖に入るにもね」
「そうですね、別々にですね」 
 神宝が応えます、カエルマンの言葉に。
「入らないといけないですね」
「そう、そうしないとね」
「男湯と女湯ですね」
「簡単に言うとそうだよ」
「わかりました」
 それならと頷いてでした、そうしてです。
 皆はまずはです、それぞれ男女に分かれてでした。
 湖で身体を奇麗にしました、それから。 
 あらためてです、魔法使いは皆に言いました。
「では身体も奇麗にしたし」
「はい、今から」
「晩御飯ですね」
「ちゃんと食べないとね」
 晩もというのです。
「よくないからね」
「はい、それじゃあ」
「今からですね」
「一緒に」
「食べましょう」
「うん、何を出そうかな」
 その晩御飯についても言う魔法使いでした。
「今晩は」
「ううんと、そうだね」
 カエルマンは先生のお話を聞いて言いました。
「お昼はサンドイッチとサラダでアメリカだったから」
「今度は別の国のお料理をだね」
「出してはどうかな」 
 こう魔法使いに提案するのでした。
「何かね」
「そうだね、じゃあアメリカ以外の国のお料理でいくか」
「何がいいかな」
「それなら」
 ここまで聞いてでした、神宝が言って来ました。
「中華料理どうでしょうか」
「神宝のお国の」
「はい、どうでしょうか」
「うん、いいね」
 それならとです、魔法使いは神宝の提案に笑顔で応えました。
「中華も」
「そうですよね」
「じゃあ今晩はね」
 魔法使いはここまで聞いてからでした、ケーキと神宝以外の四人にも尋ねました。
「中華でどうかな」
「いいと思います」
「僕も」
「僕もです」
「中華料理大好きですから」
「それでいきましょう」
 皆賛成でした、やっぱり中華料理の魅力は凄いです。
 こうしてこの夜は中華料理になりました、そのメニューはといいますと。
「さて、まずは野菜料理かな」
「八宝菜どうですか?」
 神宝が最初に挙げたのはこのお料理でした。
「野菜料理でしたら」
「あれはお野菜が沢山入ってるからね」
「はい、いいと思います」
「じゃあまずはそれを出して」
 実際にでした、魔法使いはテーブル掛けにです。
 八宝菜を出しました、とても大きなお皿の上に湯気を立てて置かれています。
 そしてです、さらにでした。
「後は麺かな」
「そちらもお野菜ですね」
「うん、何がいいかな」
「海鮮麺でしたらお野菜も入っていますよ」
「それも沢山だね」
「はい」
「じゃあそれも出して」 
 麺類はそれでした、さらに。
「そして次は主食だけれど」
「中国では確か」
 ジョージがこんなことを言いました、ここで。
「麺類は主食だったよね」
「最近はそうでもないけれどね」
「そうした地域もあるよね」
「北の方はそうだよ」
 中国は広い国です、だから地域によっては麺類が主食になっていたりするのです。つまり麦のお料理がです。
「餃子とかお饅頭もね」
「パンみたいなものだね」
「そうだよ、実際にパンもあるしね」
「包だね」
「あと餅ね」
 それもあるのでした。
「小麦を練って焼いた」
「そちらの餅だね」
「あれも美味しいんだよね」
「よし、じゃあ水餃子と焼いた餅を出そう」
 魔法使いは神宝とジョージにやり取りを聞いて言いました。
「それが主食だよ」
「わかりました」
「じゃあそちらも」
「あと。お豆腐もどうかな」
 魔法使いはこちらのお料理にも言及しました。
「そのお料理も出そう」
「はい、それじゃあ」
「お豆腐もですね」
「出そう、何かね」
「じゃあ蟹粉豆腐どうですか?」 
 神宝はこのお料理を出しました。
「あのお料理は」
「蟹とお豆腐の炒めものだね」
「どうでしょうか」
「よし、それにしよう」 
 お豆腐の料理はこれになりました。ここまで出してでした。
 カエルマンは魔法使いにです、このお料理はどうかと言いました。
「お魚を揚げてね」
「そこに熱いあんをかけた」
「あれもいいんじゃないかな」
「あれはとても美味しいからね」
「僕も大好きだよ」
 お水の中にいるカエルマンだから余計にです。
「だからね」
「そうだね、それじゃああれも出そう」
「デザートは」
 カルロスはそちらを尋ねました。
「どうしますか?」
「よし、それはごま団子だ」
 魔法使いは直感的にこれを思いつきました。
「それにしよう」
「わかりました、じゃあそれも出して」
「皆で食べよう」
 美味しい中華料理がどんどん出てでした、そうしてです。
 皆で楽しく食べました、そうしてその日はテントの中で男女に分かれて休んでなのでした。そうしてぐっくりと寝てです。
 朝の御飯はといいますと。
「和食ですか」
「朝は」
「それなんですか」
「うん、これはどうかな」
 魔法使いは皆にテーブル掛けの上の白いほかほか御飯を中心とした食事を見せて尋ねました。
「朝はね」
「白い御飯にめざし」
「納豆と梅干」
「茸のお味噌汁」
「海苔もありますね」
「どうかな」
 あらためて皆に尋ねました。
「朝は」
「うっ、何か」
「お味噌汁の匂いで」
「あとめざしと」
「梅干も」
「納豆もありますと」
 五人がまず言いました。
「白い御飯の匂いと合わさって」
「昨日の夜あんなに食べたのに」
「それでもです」
「何かもう凄く」
「食欲が出てきました」
「驚く位に」
「それは何よりだよ、じゃあね」
 魔法使いは五人の言葉を受けて言いました。
「今朝はこれを食べよう」
「はい、それじゃあ」
「これからですね」
「朝御飯を食べて」
「出発ですね」
「そうしよう」
「パンの朝御飯もいいですけれど」
 ケーキもその朝食を見て喉をごくりとさせました、そのうえでの言葉です。
「白い御飯の朝もいいですね」
「全くだよ」
 カエルマンもとても食べたそうです。
「何かもうね」
「これだけで」
「素晴らしい魅力があるよ」
「もうあがらえないまでの」
「これだけの朝食を生み出したなんてね」
 それこそともです、カエルマンは言うのでした。
「日本人は本当に素晴らしいよ」
「最高の朝食の一つですね」
「まさにね」
 ケーキの言葉にも頷くのでした。
「その通りだよ」
「この白い御飯が」
 炊いたそれがというのです。
「まずありますね」
「うん、この白いほかほかとした御飯が中核で」
「そしておかずもあって」
「納豆もね」
「最初僕びっくりしました」
「僕もですよ」 
 納豆についてです、神宝とジョージがカエルマンとケーキにお話します。
「糸を引いていますから」
「お豆が腐ってるのかって思いました」
「匂いも強烈で」
「日本人はこんなの食べるのかって」
「それ外国の人からよく言われるわ」
 日本人の恵梨香も二人に言います。
「食べられるのかって」
「食べものなのかって思ったよ」
「生ゴミじゃないかって」
「けれど食べたらね」
「これがね」
「美味しいでしょ」
 二人にこうも言うのでした。
「これが」
「意外とあっさりしていてね」
「食べやすいんだよね」
「腹もちもするし」
「いい食べものだよね」
「健康にもいいのよ」
 お豆だからです、納豆もまた。
「これがね」
「私は梅干に驚いたわ」
 見ればナターシャは実際に梅干をじっと見ています、赤くて小さいそれを。
「こんな酸っぱい食べものがあるなんて」
「それもよく言われるわ」
「そうよね」
「これが食べものなのかって」
「けれど慣れるとね」
「梅干もよね」
「美味しいわ」
 このとても酸っぱい食べものもというのです。
「そうよね」
「食べた後ですっきりするから」
 だからいいというのです。
「いいわね、それじゃあ」
「うん、今からね」
 カエルマンは皆に笑顔で言いました。
「食べよう」
「はい、それじゃあ」
「朝御飯も食べましょう」
「オズの国は飢え死にすることはないけれど」
 例え食べなくともです、この国で誰かが死ぬことはないのです。
 しかしです、食べないとなのです。
「空腹で苦しむことになって力も出ないからね」
「だからですね」
「食べないとですね」
「駄目なんですね」
「そう、だからね」
 それでというのです。
「食べよう」
「はい、朝も」
「それも楽しく」
 皆はカエルマンの言葉に笑顔で応えました、そうしてその日本の朝御飯も食べました。カエルマンはめざしで御飯を食べつつ言いました。
「まずはめざしで食べて」
「その次はですね」
「納豆で食べるよ」
 二杯目はです、恵梨香に答えます。
「次はね」
「カエルマンさんも納豆は大丈夫ですか」
「うん、最初は驚いたけれどね」
 納豆を見てです。
「食べると存外美味しいからね」
「はい、納豆は美味しいです」
「そうだよね」
「けれど実は」
「実は?」
「関西、私達の通っている神戸もその中に入っていますけれど」
 この地域ではといいますと。
「納豆を食べなかったんですよ」
「日本でもなんだ」
「そうだったんです」
「そうだったんだね」
「関西以外では食べていましたけれど」
 けれど関西ではというのです。
「大阪とか神戸では長い間納豆を食べなかったんですよ」
「美味しいし栄養があるのに」
「物凄く嫌われていました」
「まああの外見と匂いだからね」 
 糸を引いていてしかも凄い匂いです。
「好き嫌いも出来るね」
「はい、そのこともあって」
「そうだったんだね」
「私のお祖父ちゃんもです」 
 恵梨香のお祖父ちゃんもというのです。
「納豆嫌いです」
「ずっと関西に住んでいる人は」
「はい、納豆を食べないです」
「成程ね」
「その国の食べものでも地域で食べなかったりするよね」
 神宝が納豆のことをお話する恵梨香に応えます、お味噌汁と美味しそうにすすって茸も食べながらです。
「その人の好き嫌いもあるし」
「そう、だからね」
「関西では納豆を食べなかった」
「長い間ね」
「成程ね、中国でもそうなんだよね」
「中国は広いから」
「そう、昨日の夜麺は北京とかでは主食だって言ったけれど」
 このことからお話するのでした。
「南ではお米が主食なんだ」
「炒飯とかね」
「そう、北の方では麦やコーリャンが主食で」
 それでというのです。
「南はお米なんだ」
「それぞれ地域によって主食があるのね」
「そうなっているんだ、だからね」
「中国の北では麺を主食にしているの」
「そう、餃子やお饅頭もね」
「餃子は水餃子よね」
「そう、北ではそちらが主だよ」
 それが中国の北の方の餃子だというのです。
「日本でよく食べる焼き餃子は東北の方でしか食べていないね」
「あくまで水餃子が主ね」
「主食なんだ」
 そうだというのです。
「それで南だと蒸し餃子が主でおかずになったり」
「飲茶の時に食べるよね」
 ジョージが神宝にめざしで御飯を食べつつ応えます。
「蒸し餃子とかは」
「お饅頭にしてもね」
「南では麦のものは主食になっていないんだね」
「うん、水餃子もあるけれど」
 そちらもだというのです。
「飲茶の時に食べたりね」
「おかずとしてだね」
「食べるんだ」
 そうなっているというのです。
「南ではね」
「それも地域差だね、アメリカでもあるからね」
「アメリカも広いからね」
「うん、地域差があるよ」
 やはりそうだというのです、ジョージのお国でも。
「ニューヨークとテキサス、カルフォルニアで食べるものが全然違うから」
「マイアミでもだね」
「本当にそれぞれの場所で違って」 
 そしてというのです。
「それぞれの味があるよ、あと好き嫌いもね」
「個人によってね」
「あるからね」
「だからだね」
 ここでまた言ったカエルマンでした。
「日本人でも皆が納豆を食べるかというと」
「違うんです」 
 恵梨香もカエルマンに応えます。
「そうなんです」
「そうだね」
「いや、納豆はね」
「かなりね」
 カルロスとナターシャも言うのでした、二人共その納豆で御飯を食べています。しかもかなり美味しそうにです。
「癖が強くて」
「味はいいけれど」
「好き嫌いはね」
「どうしてもあるわね」
 二人もこう言うのでした。ですが楽しそうに食べています。
 それで朝御飯を食べ終えてからでした、皆で。
 また出発しました、皆で煉瓦の道を進んでいってでした。
 そのルーンの村に着きました、村は紫の木々が生い茂っていてまるで林みたいです。ですがその林を見てです。
 神宝はカエルマンに落ち着いた声でこう尋ねたのでした。
「ここがですね」
「うん、そうだよ」
 カエルマンも神宝の問いに答えます。
「ここがね」
「ルーンの村で」
「ルーンの人達がいますね」
「そうだよ、じゃあちょっと挨拶をするね」
 カエルマンは皆から一歩前に出てでした。
 そうしてシルクハットを取って一礼してからこう言いました。
「おはよう、友人達よ」
「あっ、その声は」
「カエルマンさんかな」
「左様」
 その通りだと答えるのでした。
「今日は友を連れて来ましたぞ」
「おお、それじゃあ」
「今から」
「出て来るね」
「どっちにしてもお迎えするつもりだったけれど」
 こう言ってでした、林の中からです。
 丸っこい、ボールみたいな小さな人達が宙にぷかぷかと浮かびながら出て来ました。灰色の身体で紫の服を着ていてです。
 頭のてっぺんだけがお皿みたいになっていて目は小さくて紫色です、その人達が何人か出て来てカエルマンに言って来ました。
「やあ、暫く」
「久し振りだね」
「魔法使いさんとケーキさんもいるね」
「それでその子供達がなんだ」
 五人を見て言うのでした。
「カエルマンさん達の新しいお友達だね」
「そういえば都にお客さんが来てたっていうけれど」
「その子達がなんだ」
「オズの国の新しい来訪者」
「そうなんだね」
「そうだよ」
 その通りだとです、カエルマンも答えます。
「この子達がね」
「そうだね、じゃあね」
「僕達も自己紹介させてもらうよ」
「これからね」
「そうさせてもらうよ」
 こう言ってでした、ぷかぷかと浮かんで飛びつつです。その飛び方は風船が浮かんでいるのにそっくりです。
 そうして風船みたいに五人のところに来て名乗りました。
「我等はルーン族」
「ルーン族の者だよ」
「このルーン村に住んでいてね」
「楽しく日々を過ごしているよ」
「あの、確か前は」
 神宝がそのルーン族の人達を見上げつつ尋ねました。
「この村に入って来たかかしさんや木樵さん達と」
「悶着があったよ」
「いや、あの頃は我々もね」
「何かと物騒でね」
「悪かったからね」 
 その時のことを反省している言葉でした。
「けれどね」
「今は反省してね」
「オズマ姫の下ギリキンの国に入って」
「完全にオズの国の住人になったから」
 オズの国の他の人達と同じくです。
「だからもうね」
「ああしたことはしないよ」
「お客さんは快く迎える」
「そうさせてもらっているよ」
「そうですか、それじゃあ」
 神宝もルーン族の人達の優しい口調での説明に笑顔で頷きました。そうしてカエルマンが皆に言いました。
「それじゃあね」
「はい、今から」
「ルーンの村に入ってですね」
「挨拶をするんですね」
「そうしよう」
 こう皆に言ってでした、そして。
 皆はルーン族の人達に案内されてでした、そのうえで。
 村に入っていきました、村は林になっていてです。
 木々の上の方は絡まっています、そして村の中央に行くとです。
 そこは木が生い茂っていなくて広場になっています。そこにです。
 一際立派な服のルーン族の人がいて周りに他のルーン族の人達を従えてぷかぷかと浮かんでいます。
 その人がです、一行を見て言いました。
「ようこそ」
「貴方がルーン族の王様でしたね」
「如何にも」
 王様は神宝の問いににこりと笑って答えました。
「私がルーン族の王だよ」
「そうですよね」
「よく来られた」
 王様は皆ににこりと笑って言いました。
「元気そうで何より」
「陛下もお元気そうで」
 カエルマンが王様に紳士的に応えます。
「村の人達も」
「この通りだよ。毎日楽しく過ごしているよ」
「そうなのだね」
「うむ。ところで今日は何故来られた」
「実はこれからギリキンの奥に行って」
 カエルマンは王様に自分達の旅のことをお話しました。
「青龍に会うんだ」
「青龍?」
「ううん、細かいことを話すと」
「かなり長い様だね」
「元々は中国にいるドラゴンで」
「ああ、あのアジアの国の」 
 王様もこの国のことは知っています。
「アメリカにも移民が来ている」
「その国のことは知ってるね」
「ここに前ムシノスケ教授が来てくれて」
 それで、というのです。
「色々とお話してくれた中にね」
「中国のこともだね」
「お話してくれたから」
「それで知ってるんだね」
「その国のこともね」
 王様もというのです。
「知ってるよ、それでその国のドラゴンがいるんだ」
「この国にね」
「僕の国です」
 神宝が右手を挙げて王様に言いました。
「僕中国から来ているんです」
「ああ、君がなんだ」
「はい、それで僕の国のドラゴンで」
「このオズの国にもいるんだ」
「僕の国で言うと神様で」
 神宝は王様に青龍についてこのことからお話するのでした。
「東の方にいて木のこととかを司っているんです」
「へえ、偉いドラゴンなんだね」
「とても」
「しかしだよ」
 ここで王様も気付きました。
「君はさっき東と言ったね」
「はい」
「けれどギリキンの国はだ」
「オズの国の北ですね」
「そう、だからそこがおかしいね」
「はい、僕達もそのことが気になっていまして」
 それでとです、神宝もお話します。
「これから青龍のところに行って」
「そして青龍に会って」
「はい、東に戻ってもらいます」
「そうする為にだね」
「ギリキンの国にいまして」
「それでさらに北に進んで」
「わかったよ」
 ここまで聞いてでした、王様は頷きました。
 そしてです、こうも言うのでした。
「それではね」
「はい、それじゃあ」
「無事な旅を祈ろう。それに」
「それに、とは」
「君達は我が国の大切なお客人だ」
 このことからも言うのでした。
「何かプレゼントをあげよう」
「それは何かな」
 魔法使いが王様に尋ねました。
「プレゼントというと」
「うん、大したものではないけれど」
「これをどうぞ」
 ルーン族の人達が出て来てでした。
 そしてです、皆に対して干した林檎や杏、レーズンといったものを籠の中に一杯入れて出してきました、それを皆の前に出してです。
 王様はにこりと笑ってです、皆に言うのでした。
「おやつにでもね」
「うわ、こんなに沢山ですか」
「頂いていいんですか?」
「干した林檎に杏、それにレーズン」
「一杯ありますね」
「しかもとても美味しそうですね」
「遠慮は無用だ」
 王様はにこりと笑って浮かびながらこうも言いました。
「オズの国では遠慮は好まれないからね」
「だからですか」
「これだけの干した果物をですか」
「頂いていいんですか」
「そうしても」
「本当に」
「二度は言わないよ」
 これが王様の返事でした。
「ではいいね」
「はい、それじゃあ」
「有り難うございます」
「ふむ」
 五人がお礼を言ったところで、でした。
 王様は感心してです、カエルマン達に言いました。
「いい子達だね」
「うん、礼儀正しくてね」
「優しそうだし」
「そうだよ、この子達はね」
 カエルマンは王様ににこにことしてお話しました。
「とてもいい子達なんだ」
「それは何よりだよ、では」
「まただね」
「来てくれるといいよ」
 是非にと言う王様でした。
「何時でもね」
「そうしていいんですか」
「僕達も」
「うん、また言うけれど遠慮は無用だよ」
 またこう言うのでした。
「何時でも来てくれ給え」
「わかりました」
「それじゃあ」
「この果物も頂いて」
「また来させてもらいます」
「縁があれば」
「是非ね。ただここから北は」
 王様は皆にこうも言いました。
「魔法使いさんやカエルマン君は既に行ったことがあるけれど」
「ルンダ坂だね」
「そう、あれがあるからね」 
 だからだというのです。
「気をつけてね」
「あそこは険しいからね」
「険しい山と坂が連なっているから」
「わかっているよ」 
 カエルマンが王様に答えます。
「そのことは」
「うん、それならね」
「あそこも無事越えて行くから」
「では健闘を祈るよ」
「それではね」
 こうお互いにお話をしてでした、一行はルーン村を後にすることにしました。そうして干した果物も頂いてです。
 一行はルーン村を後にしました、そしてその出口で。
 見送りに来た王様がです、皆にこうも言いました。
「次に来た時。君達は持っていなかったが」
「はい、先の尖ったものはですね」
「それはですね」
「この村に持ち込まない」
「そうですね」
「我々は刺されたら」
 若しそうなったらというのです。
「破裂してしまうからね」
「そうですね、だからですね」
「針とか槍とかみたいなのは」
「この村には持ち込まない」
「絶対にですね」
「この村の法律でね」
 それこそというのです。
「定められているから」
「はい、気をつけます」
「ここにまた来た時も」
「そうしたものは持って来ません」
「絶対に」
「そうしてくれ給え、若し持って来ていたら」
 その時はといいますと。
「村の入口にね」
「置いておくんですね」
「それは」
「そうしてくれたらいい」
 こうお話するのでした。
「いいね」
「若しくは」
 ここで魔法使いも皆にお話します。
「僕の様にね」
「鞄なりの中に入れて」
 また王様が五人に言います。
「絶対に出さない」
「村の中にいる時は」
「そうしないと駄目ですね」
「そうしてくれ給え」
 王様は強く言いました。
「わかったね」
「はい」
 五人は王様に一斉に答えました。
「そうします」
「そういうことでね、いや本当にね」
 王様は浮かびつつ苦笑いで言うのでした。
「あれだけは駄目だよ」
「先の尖ったものは」
「針や槍はですか」
「ルーン族の人達にとっては」
「どうしても」
「破裂してもしなないよ」
 それはないというのです。
「オズの国では誰も死なないから」
「けれどですね」
「破裂したところを戻して空気を入れなおさないといけないから」
「だからですね」
「大変だから」
「そうしたものは最初から」
「持ち込まない、出さない」
 それこそというのです。
「そういうことでね」
「それが一番ですね」
「そうだよ、じゃあね」
「はい、また」
「来てくれたら嬉しいよ」
 こう一時のお別れの挨拶をしてなのでした。
 一行はルーンの村を後にしました、するとです。
 ここでカエルマンは皆にです、こう言いました。
「それじゃあ次はね」
「はい、豹さんがいるですね」
「森ですね」
「そこを通ることになるよ」
 こうお話するのでした。
「これからね」
「ええと、僕達大丈夫ですよね」
「豹がいても」
「食べられたりとかは」
「ありませんよね」
「オズの国ですから」
「うん、それはないよ」
 このことはです、カエルマンは皆ににこりと笑って答えました。別に皆に食べられることはないというのです。
「別にね、それにあの豹は今はね」
「そういえば」
 神宝もここで少し前のことを思い出しました。
「あの豹さんは今は」
「うん、自分で料理を作ってね」
「そうしてですね」
「そう、それで食べているから」
「別に僕達を襲ったりもですね」
「しないよ」 
 こう神宝達にお話するのでした。
「だから安心してね」
「わかりました」
「じゃあ先に進もう」
「豹さんの森に」
「そこからさらに先があるからね」
 今回の旅はというのです。
「むしろまだまだ序盤だね」
「序盤なんですね」「そう、序盤だよ」 
 まさにというのです。
「はじまったところだよ」
「先は長いよ」
 魔法使いも皆にお話します。
「これからだから」
「よし、それじゃあ」
「これから」
 こうお話してでした、皆でさらに進むのでした。皆の旅はこれからでした。




ルーンの村も無事に通過したな。
美姫 「みたいね。尖った物を持っていなかったしね」
だな。お土産もたくさん貰ったようだし。
美姫 「道中のおやつには良いわね」
で、次は豹のいる森という事らしいが。
美姫 「聞く限りではここも危険はないようね」
なら、何事もなく通過出来るかな。
美姫 「まあ、そう油断してもいけないけれど、気を張りすぎても疲れるしね」
程々が一番だな。
美姫 「そうね。次回も待っていますね」
待っています。



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