『黄金バット』




            第六十六話  奈良の大仏を護れ

 奈良市の空気はこのところとても乾いていました、その上風がとても強かったです。こうした時はちょっとのことで、です。
「何だ、火が起こったぞ」
「最近公園の方に一杯いる柄の悪い連中からだぞ」
「刺青入れていてすごんでくる連中からだ」
「その連中が煙草を消し忘れたんだ」
「それでだ」
 奈良の心ある人達は驚きました、火は奈良公園からどんどん燃え上がり何とです。
「東大寺の方に行ってるぞ!」
「あそこには大仏さんがあるんだぞ!」
「本堂もだ!」
「どちらも何かあったら駄目だ!」
「早く火を消すんだ!」
「そうするんだ!」
 皆すぐに消防署に通報しました、そして消火器やバケツに入れたお水を持ってすぐに火を消しにかかってです。
 公園にいる観光客の人達その人達を相手に商売をしている煎餅売りの人達に鹿達も避難させようとします、ですが。
「あいつ等何処行ったんだ」
「いつも騒いでいる連中は」
「消えたぞ」
「逃げたのか?」
「あいつ等が元凶だっていうのに」
 見れば今は一人もいません、そうした人達は。
 そして特に騒いでいる人は火が起こる前には公園にいたのにこの人もいません、火が起こるまでは公園の中で鹿がどうとか騒いでいたのにです。
「あいつもいないな」
「火が出るまで鹿を護るんだとか言っていたのに」
「鹿を置いて何処に行ったんだ」
「口では調子のいいこと言ってたのに」
「肝心な時には逃げるんだ」
「最低ね」
 皆忌々し気に言います、ですが。
 奈良の人達は団結して火を消そうとします、消火器やバケツを手にして日に向かいますがそこに観光客の人達外国から来ている人達も含めてです。
 鹿の愛護協会の人達の指示を受けて鹿達の避難のお手伝いをしたり奈良の人達のところに来ます、そしてそれぞれのお国の言葉で一緒に火を消そうと言って動くのでした。
「これは心強いぞ」
「皆で力を合わせて火を消そう」
「そして公園をこれ以上焼かせないぞ」
「東大寺を護るんだ」
「大仏さんもだ」
 皆で誓い合ってそのうえで火を消して鹿達を避難させようとします、そうして一致団結して動いているとでした。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
「その笑い声は!」
「黄金バットか!」
「黄金バットが来てくれたのか!」 
 見れば東大寺本堂の屋根の上にでした、黄金バットが立っていました。
 足を拡げて仁王立ちし両手は腰にあります、そうして裏地が赤い漆黒のマントを風にたなびかせています。
 黄金バットはステッキを右手に持って出すとその黄金色に輝く宝石の部分を天高く掲げました、すると宝石から虹色の光がお空に放たれてです。
 お空は忽ち暗い雲に覆われゲリラ豪雨より遥かに凄い土砂降りとなりました、ですが雨が降るのは火の上だけで。
 心ある人達それに鹿達には降りません、ただ火の上に激しく降り注いでです。
 火を完全に消してしまいました、これまでとても激しく燃え盛っていた火があっという間に消えてしまいました。
 このことに皆感激しました、そしてすぐにわかりました。
「黄金バットだ」
「黄金バットが雨を降らせてくれたんだ」
「そして火を消してくれたんだ」
「火に向かう我々を見て」
「そして助けてくれたんだ」
 このことがわかりました、そうして今も本堂の屋根の上にいる黄金バットに対して手を振ってお礼を言いました。
「黄金バット有り難う」
「助けてくれてありがとう」
「皆と鹿と大仏さんを助けてくれて有り難う」
「心から有り難う」
 こう言ってお礼を言います、黄金バットはそのお礼を受けてです。
 両手緒を上に上ゲて高々と飛んで何処かに去っていきました、ですが皆は忘れませんでした。黄金バットが奈良県の多くの宝を救ってくれたことを。何時までも忘れないのでした。


黄金バット  第六十六話   完


                      2025・11・26








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