『黄金バット』




            第三十話  フー=マンチュー博士沖縄の毒蛇

 沖縄で本来沖縄にいない筈の蛇達が沢山発見されました、その蛇達はといいますと。
「ヒャッポダ?」
「ガラガラヘビがいるぞ」
「キングコブラじゃないか」
「サンゴヘビまでいるなんて」
 見れば本当に世界中の蛇達が沢山います、沖縄といえばハブですがハブの他にも沢山の種類の蛇達がいます。数もこれまでの十倍はいます。
 この事態に沖縄の人達は大騒ぎで観光客の人達も不安になっています、ですが沖縄の知事さんは何もしません。
 基地のことばかりで蛇のことを聞いてもあっ、そうで終わりです。それで蛇のことはほったらかしですが。
 毒蛇達は街中にも一杯いてしかもお家の中でも普通に動き回っています、お店にも会社にも学校にもレジャー施設にも一杯います。道を歩いても車の中にもいます。
 皆何時蛇に噛まれるか不安でしかありません、知事さんはまず自分が入るお部屋の蛇達をボディーガードの人に追い出させて自分だけは安全なので全く気にしません。それで何の対策も取りませんしマスコミもそんな知事さんを何故か批判しませんが。
 沖縄の人達は本当にどうしたものかとなっています、知事さんが何もしようとしないのですが県庁や他の地方自治体は必死に駆除に務めています。
 ネットでも大騒ぎになっていて沖縄だけでなく日本中から人が来て必死に蛇達を駆除しますがとにかく数が多いです。しかも猛毒を持つ蛇ばかりなのでとても危険です。
 そんな中で皆頑張っています、ですが皆悪戦苦闘している中で沖縄でもう一つとんでもないことが起こりました。
 何と首里城の正門にフー=マンチュー博士が現れました、博士は堂々と言いました。
「今の沖縄の蛇達は私が呼び寄せたものだ」
「えっ、フー=マンチュー博士が?」
「博士がやったのか」
「確かに博士ならやるぞ」
「こうしたことも」
「沖縄を大混乱に陥れるつもりでか」
「こんなことをするのか」
「沖縄を毒蛇の王国にしてやる」
 博士は胸を張って言いました。
「そして人が住めない場所にしてやろう」
「何てことをしようとしているんだ」
「そんなことをさせてたまるか」
「毒蛇に負けてたまるか」
「毒蛇達を駆除するぞ」
「そして博士も」
 皆博士の言葉に騒然となりましたがそれでもです、博士の望美通りにさせてたまるかとなってでした。
 それでより一層毒蛇達に向かい博士も何とかしようとしますが。
 こうした時に自衛隊や警察を動かすべきである知事さんはといいますと。
 何と本土の親戚が病気だとか言って空港からヘリコプターを出して真っ先に東京の方に逃げてしまいました、このことにも沖縄の人達は騒然となりました。
「知事が最初に逃げたのか!」
「こうした時に何とかするのが知事だろ!」
「毒蛇だけじゃないんだぞ!」
「フー=マンチュー博士も出て来たんだぞ!」
 沖縄の人達も他の人達も物凄く怒りました、ですが東京に逃げた知事さんは雲隠れしている為何処に行ったのかわかりません。
 その間にも毒蛇達は博士が妖術でどんどん世界各地から呼び寄せて首里城からうじゃうじゃと出て来ます、この状況で皆わかりました。
「博士を何とかしないと」
「博士が毒蛇を呼び寄せているのなら」
「博士をやっつけるんだ」
「その後で毒蛇達を何とかするんだ」
 皆博士を何とかすればこの件は終わるとわかりました、それで勇敢な人達が沢山集まって首里城に向かいました。総理大臣も知事さんが何処かに行ってしまったので自分が自衛隊と警視庁に指示を出して博士を攻撃して沖縄とそこにいる人達を助けようとしました。
 皆は首里城の前に集まりました、博士は正門のところに堂々と立っています、ですがそれでもです。
 首里城の正門への階段の道には多くの種類の蛇達が文字通り階段の一段目から正門のところまで埋め尽くしています、お互いに絡み合って階段の部分が見えない位です。皆その状況を見て絶望しました。
「これは前に進めないぞ」
「若し一歩でも前に入れば大変なことになる」
「博士め沖縄に送った蛇をここに集めてきたな」
「火炎放射器か何かで焼き払おうにも」
「そんなことをしようにも」
「博士が攻撃してくるぞ」
「妖術を放とうと身構えているぞ」
 見れば博士は印を結んでいます、本当に今でも妖術を使ってきそうです。これでは迂闊に蛇達を攻撃できません。
 自衛隊や警察の人達も博士を攻撃しようにも博士は妖術でそうした人達の視界を遮ったり怪しげな生きもの達を出してきたりして牽制してくるので迂闊に動けません、それで皆困っていますと。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
 何処からか高笑いが聞こえてきました、そして首里城の上空にです。
 黄金バットが現れました、黄金バットは空中に両手を腰の横に置いてマントをたなびかせて高笑いをしています。
 そしてです、両手をお顔の前でクロスさせてから身体全体を大の字にさせました。すると全身から黄金色の眩い光が放たれて。
 首里城を照らしました、勿論蛇達がいる階段のところもです。
 すると蛇達は皆姿を消してしまいました、するとすぐに世界中のネットから報告がありました。
「蛇達が元の場所に戻っているぞ」
「ヒャッポダもガラガラヘビもサンゴヘビも」
「キングコブラもだ」
「皆元の場所に戻っているぞ」
「黄金バットが戻してくれたんだ」
「あの光でそうしてくれたんだ」
 皆このことがわかりました、そしてです。
 只一人残った博士を見てです、皆は頷き合いました。
「後はフー=マンチュ―博士だけだ」
「毒蛇はいなくなったが博士がまだいる」
「しかし博士だけなら」
「黄金バットにだけやらせたらいけない」
「俺達だって」
 こう言い合ってです、そのうえで。
 皆首里城の正門のところにいる博士に向かいました、長い階段を一気に駆け上がります。そうして皆で力を合わせて博士をやっつけようとしますが。
 呼び寄せた毒蛇達がいなくなったのを見た博士は毅然として言いました。
「私の策が敗れた、これは私の負けだ」
「そのことを認めるのか」
「自分の負けを」
「毒蛇達がいなくなって」
「そうだ、敗者は去るのみ」
 博士は人々に毅然としたまま言いました、そしてです。
 妖術の印を結んで黒い妖しい雲を出すとそれに乗って何処かへと去ってしまいました、黄金バットもその博士を見届けると何処かへと飛び去ってしまいました。
 ことの全てを見た人々は口々に言いました。
「今回も黄金バットに助けられたよ」
「一体どうなるかと思ったけれど」
「黄金バットがいてくれたからだ」
「毒蛇のことも何とかなった」
「黄金バット有り難う」
 皆黄金バットに心から感謝しました。
「黄金バットのお陰だ」
「黄金バットがいてくれてこそだ」
「今回も助かった」
「本当に有り難う」
 皆黄金バットに心から感謝しました、そうして黄金バットを讃えますが。
 逃げていた知事さんは何時の間にかしれっと戻ってきて沖縄のマスコミはそんな知事さんが早速基地がどうとか言い出したのを持ち上げます、ですが皆そんな知事さんもマスコミもしっかりと見ていた。
 マスコミの新聞を多くの人が読まなくなり広告も出さない様になりました。知事さんにはリコールが出されました。知事さんは思わず黄金バット助けてくれと言いましたが黄金バットは知事さんの為には全く動きませんでした。


黄金バット第三十話   完


                   2019・9・1








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